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糖鎖である αgal( ガラクトース-α1,3-ガラクトース ) が IgE エピトープであることがわかり その感作に地域性が認められました また αgal 感作例において 遅発性の牛肉または豚肉による重篤なアナフィラキシー 血管浮腫の既往が認められ これら獣肉アレルギーの原因も αgal によるこ

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---Allergens News Network メールニュース No.21

△ マダニ咬傷から子持ちカレイアレルギー ~ガラクトース-α1,3-ガラクトース(αGal)~ △ 特異的 IgE 検査 --特異的 IgE 検査結果の解釈--2017 年 2 月 サーモフィッシャーダイアグノスティックス株式会社 発行 ---△マダニ咬傷から子持ちカレイアレルギー ~ガラクトース-α1,3-ガラクトース(αGal)~ 1. はじめに 室内塵中の‘チリダニ’(ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニなど)に経気道的または経皮的に感作さ れ、喘息、通年性アレルギー性鼻炎またはアトピー性皮膚炎の症状を起こすことは周知のことと 思います。チリダニに強く感作された例において、時としてパンケーキ粉やお好み焼き粉で繁殖し たチリダニまたは貯蔵庫ダニで食物アレルギーを起こすことが知られています1)。屋外に棲息する ‘マダニ’は吸入アレルゲンになることはありませんが、マダニに咬まれてアナフィラキシーを発症す ることがあります。また、ペットが屋外から家庭に持ち込んだマダニにも注意が必要です。 2. マダニ咬傷アレルギー マダニ咬傷の多発するオーストラリア東沿岸のニューサウスウェールズの 1 病院では、2 年間で 500 例以上がマダニ咬傷により救急外来を受診し、そのうち 34 例がアナフィラキシーでした。アナ フィラキシー例の 94%はマダニ咬傷による皮膚症状を呈し、40%はアレルギー性疾患またはアナ フィラキシーの既往があり、26%はアドレナリンが投与されました 2)。また、4 例のマダニ咬傷によ る死亡例も報告されています 3)。本邦でも和歌山県 4)、静岡県 5)でマダニ咬傷によるアナフィラキ シー例が報告されています。 複数回マダニに咬まれた症例の追跡調査によると、マダニ咬傷により強い局所反応を起こした例 は、後に獣肉アレルギーを発症したことから、節足動物と獣肉間に交差反応性成分の存在が指 摘されました6) 3. セツキシマブアレルギーと獣肉アレルギー 一方、米国でセツキシマブ初回投与時にアナフィラキシーを起こした患者の原因を検討した結果、

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糖鎖であるαGal(ガラクトース-α1,3-ガラクトース)が IgE エピトープであることがわかり、その感作 に地域性が認められました。また、αGal 感作例において、遅発性の牛肉または豚肉による重篤 なアナフィラキシー、血管浮腫の既往が認められ、これら獣肉アレルギーの原因も αGal によるこ とが明らかになりました7)。獣肉アレルギー患者は、症状を起こす以前には獣肉を問題なく摂取可

能であったことから、獣肉以外のαGal が感作源であると考えられました。マダニ咬傷 3 例の経過 観察およびマダニ咬傷頻度とαGal 特異的 IgE 濃度の関係から、マダニ咬傷が αGal の感作源と 推定されました。さらに、セツキシマブアレルギーおよび獣肉アレルギーが多発する地域は、マダ ニが媒介するロッキー山紅斑熱の多発する地域とも合致することからもマダニ咬傷が αGal の感 作源であると考えられました8,9) 本邦でもセツキシマブ初回投与後にアナフィラキシーを起こした 4 例が報告されており、これらの 患者は、αGal 特異的 IgE 陽性、獣肉の誘発歴はないものの牛肉感作があり、マダニが媒介する 日本紅斑熱の多発地域在住など、米国と類似しています10) 表 1. 獣肉アレルギー

Thermo Fisher Scientific (Uppsala, Sweden)販促資材を和訳

4. マダニ、獣肉中のαGal の検出

Chinuki らは、チマダニ属のフタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)の唾液腺タンパク分子 上にαGal の存在を11)、また、スウェーデンのグループは、マダニ属のIxodes ricinusの消化管に

αGal の存在を示し12)、αGal の感作はマダニ咬傷によることが確実になりました11-13) 獣肉中のタンパク分子上のαGal については、Takahashi らが、牛肉のラミニン γ-1 およびコラー ゲンα-1(Ⅵ)鎖に αGal が結合していることを示しました14)。Mullins らは、獣肉アレルギー患者の 多くが哺乳類由来のゼラチンに感作され、一部の例で獣肉とゼラチンの両者でアレルギーを起こ すと報告しました15)。さらに、ゼラチン皮膚試験結果とαGal 特異的 IgE 濃度の間に強い相関性 を示し、Takahashi ら14)の結果を支持しています。Morisset らは、豚または牛の腎臓摂取後にア α Galによる肉アレルギー 通常の即時型肉アレルギー Pork-Cat症候群  感作源  マダニ咬傷によるα Gal  ウシ血清アルブミン、ウシ免疫グロブリン、  アクチン、ミオシン、鶏血清アルブミンなど  ネコ血清アルブミン  症状誘発の  トリガー  獣肉、臓物、乳、ゼラチン[哺乳類由来]  セツキシマブ、  ワクチン(哺乳類由来のゼラチンを含むもの)  筋肉タンパク  豚血清アルブミン  誘発症状  しばしば重篤  全身掻痒、蕁麻疹、胃腸症状、血管浮腫、  アナフィラキシー  比較的軽症  結膜炎、蕁麻疹、血管浮腫、呼吸困難、  アナフィラキシー  比較的軽症  腹部痙攣、下痢、吐き気、掻痒、蕁麻疹、  アナフィラキシー  肉摂取から発症  までの時間  遅発反応  一般に3-6時間後に発症  即時反応  肉摂取後2時間以内  即時反応  豚肉摂取後1時間以内  対象  主に成人  主に小児  思春期、成人  プリックテスト  多くは、市販肉エキスまたは新鮮な肉  で陰性  市販、新鮮な肉で陽性、  しばしば、ミルクでも陽性  ネコをはじめ哺乳類の上皮、肉エキス  で陽性  特異的IgE検査  牛肉、豚肉、ミルク、ネコ(皮屑)、イヌ(皮屑) で陽性  獣肉、血清タンパク、皮屑、ミルク で陽性  獣肉、哺乳類血清アルブミン で陽性

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ナフィラキシーを起こした患者血清を用いた ELISA 抑制試験を行い、豚および牛の正肉と腎臓に 含まれる αGal を検出した結果、両者ともに腎臓の αGal 含有量が正肉よりも多く、加熱後もアレ ルゲン性が残存すると報告しています 16)。橋爪は、マダニ咬傷回数にともなって牛肉、豚肉およ び羊肉の特異的 IgE 濃度が上昇することを示しています17)。αGal による牛肉アレルギー患者が 子持ちカレイ摂取後に比較的重篤なアレルギーを合併することがあり、牛肉とカレイ卵との交差 性もこれら患者血清を用いた IgE イムノブロッティングにより示されていますが、この交差性成分 がαGal であるかは明らかではありません17,18)。αGal による牛肉アレルギー患者の血液型は、A

型または O 型が多く、B 型および AB 型はほとんどありません。これは、αGal の構造と B 型抗原 の糖鎖が類似しているためと言われています18,19) 5. タイプ 2 食物アレルギー αGal は、マダニ唾液タンパク、獣肉タンパクおよびセツキシマブに共通する IgE エピトープであり、 マダニ咬傷に始まりこれらアレルギーが発症すると考えられます。これは、花粉-食物アレルギー 症候群(花粉→果実・野菜・スパイスなど)20)、ラテックス-果実症候群(ラテックス樹液タンパク→ 果実)21)、Pork-cat 症候群(ネコ上皮→豚肉)22)、Bird-egg 症候群(鳥羽毛・糞→卵黄)23) などと 同様にタイプ 2 食物アレルギー発症機序と考えられます。最近、納豆アレルギーの感作源がクラ ゲ刺傷であるという報告もあります24) 表 2. 主なタイプ 2 食物アレルギー13,20-24) アレルギー症状の発症機序が複雑になり、思いもよらないアレルゲンが、何らかのアレルゲンコン ポーネント(またはエピトープ)を介して関連しており、日常診療において、これらの関係も念頭に おくことも必要になって来ました。このような交差性のメカニズムの解明も、Molecular-based Allergy Diagnostics が進歩した結果のひとつと思います。 感作 アレルゲン 食物アレルギーの原因 マダニ咬傷 α Gal 牛肉、豚肉、羊肉、ゼラチンなど ブナ目花粉* 花粉吸入 主にPR-10タンパク バラ科果実****、キウイ、大豆、緑豆など イネ科**/ブタクサ花粉 花粉吸入 プロフィリンほか メロン、スイカ、キュウリなど ヨモギ花粉 花粉吸入 不明 ニンジン、セロリなど ラテックスタンパク吸入、経皮 へベインほか アボカド、クリ、バナナなど ネコ上皮吸入 血清アルブミン*** 豚肉 鳥羽毛・糞吸入 血清アルブミン*** 卵黄 クラゲ刺傷 ポリガンマグルタミン酸 納豆 Bird-egg症候群 *ブナ目:ハンノキ、シラカンバ、オオバヤシャブシ、ハシバミなど(カバノキ科)  コナラ、クヌギ、ブナなど(ブナ科) **イネ科:カモガヤ、オオアワガエリ、ハルガヤなど ***血清アルブミン:ネコ(Fel d 2)、鶏(Gal d 5:α リベチン) ****バラ科果実:リンゴ、モモ、サクランボ、ウメ、プルーン、アンズ、ビワ、ナシ、カリンなど 納豆アレルギー 花粉-食物アレルギー 獣肉アレルギー ラテックス-果実症候群 Poak-cat症候群

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参考文献

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監修) 福冨 友馬 先生 国立病院機構相模原病院

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△特異的 IgE 検査 --特異的 IgE

検査結果の解釈--昨年末に欧州アレルギー・臨床免疫学会(EAACI)から「A new framework for the interpretation of IgE sensitization tests」が Allergy に掲載されました1)。この position paper は食物アレルギ

ーを中心に感作と誘発症状の関連について述べられています。また、日本小児アレルギー学会 「食物アレルギー診療ガイドライン 2016」が発行され、「第 6 章 診断と検査」では、“特異的 IgE 検査法とその解釈“ を中心に前ガイドラインより大幅にページが割かれました2) いずれも、問診による誘発症状、摂取食物、摂取からの時間などの確認を重要としています。し かし、1 回の誘発歴による陽性的中率は 50%、同一の食品摂取で 3 回の誘発歴がある場合の陽 性的中率は、ほぼ 100%といわれています 3,4)。いずれにしても、問診から得られた情報をスキン プリックテスト(SPT)または特異的 IgE 検査により確認します1-2)。SPT や特異的 IgE 検査により 確認された感作は、誘発症状を示すものではないと述べられています。実際、SPT の判定基準値 を 3mm(膨疹径)、特異的 IgE 検査のそれを 0.35UA/mL とした時、食物アレルギーにおいて、 各々の検査が陽性でも当該食物により誘発症状を呈する患者は 50%であり、陰性の場合は 10% といわれています1)。このように問診の情報なしに多項目の SPT、特異的 IgE 検査を実施すると、 臨床的偽陽性を生じる可能性が高くなります1-2) 実際は、誘発症状、誘発歴から推定されたアレルゲンと特異的 IgE 検査結果が合致した場合は、 原因アレルゲンと診断が可能であり、原因特定のための経口負荷試験は基本的に不要です。誘 発症状が典型的なアレルギー症状でない場合、複数のアレルゲンが疑われる場合などは、経口 負荷試験による確定診断が望ましいと述べられています 2)。また、明らかな誘発歴があり検査に より感作が認められない場合も重篤な例も含まれている可能性があるので、経口負荷試験による 確認が必要と述べられています 4)。また、最近ではアレルギーの原因食品であっても、症状を誘 発しない範囲であれば摂取するよう指導すべきとされており、症状誘発閾値の評価(耐性獲得の 確認を含む)には経口負荷試験は必須です2)。しかし、経口負荷試験は、コストがかかり重篤な症 状を誘発する可能性があるため、血液検査の結果を用いて経口負荷試験を実施する患者を最小 限に選択することが試みられています1) その方法として、プロバビリティカーブ(PC)およびアレルゲンコンポーネント特異的 IgE 検査(MA-D)が日常診療で利用されつつあります1-4) PC はあくまでも特定の集団を対象に統計学手法(ロジスティック回帰分析)によって作成されたも のであり、実際の診療に応用する場合には、PC 作成の元となった検討の目的や診断方法を十分 に理解して、その特性に応じて利用することが重要だとしています。また、患者の背景(年齢、性 別、合併症など)や外的因子(ストレス、ウイルス感染など)により、症状誘発の可能性(確率)は 同一特異的 IgE 濃度でも異なるので、個別患者の診療においては、原因特定なのか、耐性獲得 の確認なのか、などといった目的と、患者固有の背景や外的因子を加味して、PC から検査結果 を解釈します。それぞれの目的や背景に適合した PC を逐次選択して参照することはとても煩雑 であり、また PC が統計処理により作成されたものである以上、個別患者の状態を 100%言い当

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てることは不可能といわざるを得ません。したがって、基本となる PC に対してどのような因子がど のように影響するのか(同一抗体価であっても、年長児ほど症状誘発しにくい、など)、を理解して おくことが肝要です1-4) MA-D は、粗抽出アレルゲンによる特異的 IgE 検査よりも臨床的感度あるいは特異度を向上させ ることが、多数のアレルゲンで報告されています1,2) 例えば、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)の診断における果実、豆類の生体防御タンパク PR-10(Gly m 4、Mal d 1、Act d 8 など)に対する特異的 IgE 検査や、小麦による食物依存性運 動誘発アナフィラキシー(WDEIA)の診断における Tri a 19(ω-5 グリアジン)特異的 IgE 検査は、 臨床的感度を向上させます。一方、穀類、豆類、ナッツ類の即時型アレルギーの診断においては、 これら食物中のプロラミンスーパーファミリータンパク(Ara h 2、Tri a 19 など)に対する特異的 IgE 検査が臨床的特異度を向上させることが報告されています1,2,4) PC と MA-D を組み合わせることで特異的 IgE 検査の精度を上げることが可能となります。イムノ キャップでは、多数のアレルゲンや対象による PC が報告され、「食物アレルギー診療ガイドライン 2016」にも掲載されており、MA-D も日本人を対象として検討されたものが多数報告されています。 表 1. イムノキャップによる MA-D の主な報告 参考文献

1. Roberts G, Ollert M, Aalberse R, Austin M, Custovic A, DunnGalvin A, Eigenmann PA, Fassio F, Grattan C, Hellings P, Hourihane J, Knol E, Muraro A, Papadopoulos N, Santos AF, Schnadt S, Tzeli K. A new framework for the interpretation of IgE sensitization tests. Allergy 2016; 71: 1540-51.

アレルゲン コンポーネント ファミリー 報告者 国 雑誌

大豆 Gly m 4 Bet v 1スーパー

ファミリー:PR-10 Fukutomi et al 日本 J Allergy Clin Immunol 2012; 129: 860-2. 小麦 Tri a 19 プロラミンスーパー ファミリー:プロラミン Matsuo et al 日本 Allergy 2008; 63: 233-6. Tri a 19 プロラミンスーパー ファミリー:プロラミン Matsuo et al 日本 Allergy 2008; 63: 233-6. Tri a 19 プロラミンスーパー ファミリー:プロラミン Ito et al 日本 Allergy 2008; 63: 1536-42. Tri a 26 プロラミンスーパー

ファミリー:プロラミン Takahashi et al 日本 Clin Exp Allergy 2012; 42: 1293-8. ピーナッツ Ara h 2 プロラミンスーパー

ファミリー:2Sアルブミン Ebisawa et al 日本 Pediatr Allergy Immunol 2012; 23: 573-81. 大豆 Gly m 8 プロラミンスーパー

ファミリー:2Sアルブミン Ebisawa et al 日本 J Allergy Clin Immunol 2013; 132: 976-8. ゴマ Ses i 1 プロラミンスーパー

ファミリー:2Sアルブミン Maruyama et al 日本 Clin Exp Allergy 2016; 46: 163-71. ソバ Fag e 3 クピンスーパー

ファミリー:7Sグロブリ Maruyama et al 日本 J Allergy Clin Immunol Pract 2016; 4: 322-3. カシュー Ana o 3 プロラミンスーパー

ファミリー:2Sアルブミン Savvatianos et al ギリシャ J Allergy Clin Immunol 2016; 136: 192-4. Cor a 9 クピンスーパー

ファミリー:11Sグロブリン Masthoff et al オランダ J Allergy Clin Immunol 2013; 132: 393-9. Cor a 14 プロラミンスーパー

ファミリー:2Sアルブミン Masthoff et al オランダ J Allergy Clin Immunol 2013; 132: 393-9. 小麦

感度向上

ヘーゼル 特異度向上

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2. 食物アレルギー診療ガイドライン 2016.

3. RobertsG. Anaphylaxis to foods. Periatr Allergy Immunol 2007; 18: 543-8.

4. Sampson HA, Ho DG. Relationship between food-specific IgE concentrations and the risk of positive food challenges in children and adolescents. J Allergy Clin Immunol 1997; 100: 444-51.

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