特 集 南 ア ジ ア ・日 本 ・世 界
グローバ ル 化 とイン ド国内政 治
− 新たな共同研 究に向けて−三輪博樹
1 は じめ に 国際 社 会 に お け るイ ン ドの 経済 的 ・戦略 的 な位 置 付 けは、90年 代 初 頭 か ら本格 化 した 同国 の経 済 自由化 、98年 に実施 され た核 実 験 な どを経 て、 近年 にな って大 き く変 化 した 。他 方で 、 イ ン ドの 国内 に 目を向 ける と、 中 間層 の拡 大 な ど、経済 的 ・社会 的 な状況 に大 きな変化 が見 られ る ように な り、そ れ に ともな って、 国内 の政 治状況 も以 前 とは大 き く異 な った もの に なっ てい る。 この ような イ ン ド国内 の状 況 につ い ては、NHKの 報 道 な ど に よって 我 が 国で も紹 介 されて い るが[NHKス ペ シャ ル取 材 班2007]、 我 が国 にお け るイ ン ドに対 す る関心 は、 どち らか と言 えば経 済的 ・戦 略的 な面 に偏 ってお り、 イ ン ド国 内の政 治 や社 会 の状 況 に対す る関心 は、 さほ ど高 くない ように思 われ る。 しか し、 「世 界最 大 の民 主 主義 国 家 」で あ る イ ン ドで は、 国 内政 治 も非 常 に活発 に展 開 されて お り、後述 す る よ うに、 中央や 州 での政 治 的 な動 き に よって連邦 政府 の政 策 が左右 され る とい うこ とも、頻繁 に見 られて い る,, したが って 、 イ ン ド国内 の政治 ・社 会 の状況 を理 解す るこ とは、我 が 国が 効果 的 な対 印戦略 を構 築 して い く上 で も重要 で あ る。 この よ うな認 識 を踏 まえて 、本論 で は、 イ ン ド政治 に関す る研 究 動 向や 、今後 の研 究上 の課 題 執筆者紹介 み わ ひ ろ き ● 筑 波 大 学 大 学 院 人 文 社 会 科 学 研 究 科 比 較 政 治 学 、イ ン ド政 治 ・2002 、「イ ン ドにお ける カ ース ト政 治-「 利 益 集 団 」と しての カ ース トー」、堀 本 武 功 ・広 瀬 崇 子(編)『 現 代 南 ア ジ ア3民 主 主 義 へ の と りくみ 』、東 京 大 学 出 版 会 、149-171頁 。 ・2006 ,"The Transition of Party System in lndia: From Polarized Pluralism toModerate Pluralism", Journal of the Japanese Association for South Asian Studies, No.18, pp.96-116.
グロー バ ル化 とイ ン ド国内 政 治― 新 たな共 同 研 究 に向 け て― な どにつ いて検 討 す る。 第2節 で は、 イ ン ドに関 す る世界 の 政治 学界 の研 究動 向 につ い て、初 歩 的 な 内容分 析 に よ って概 観す る。第3節 で は、現 在 の イ ン ド政治 に見 られる特徴 につ いて、 「政党 政 治 にお ける変化 」 と 「『グ ローバ ル化 』 と地 方政 治」 とい う、2つ の観 点 か ら検討 す る.第4節 で は、 第3節 までの検 討 内容 を踏 ま え、我 が 国 にお け るイ ン ド政 治研 究 の現 状 に つ いて検 討 した後 に、 共 同研 究 の必 要性 に 関す る筆 者 の考 え を述 べ る.
2 インド政治に関する研究動向の概観
現在 の イ ン ドにつ い て、世 界 の政 治学界 で は どの よ うな研 究 テー マが 主 流 と な っ て い る だ ろ う か.本 節 で は、 世 界 政 治 学 会(InternationalPolitical Science Association)に よ っ て 刊 行 さ れ て い るlnternaliona/ Political Science Abstracts (IPSA)の 内容 を検 討す る こ とに よって、 イ ン ドに
関す る世 界 の 政 治学 界 の研 究 動 向 を概 観 してみ た い。DPSAは 、 世界 各 国 の 政治 学 関連の学 術 誌(主 に欧米 言語 に よる もの)に 掲 載 され た論文 の情 報 と、そ の 内容 の要 約 を ま とめ た もので あ り、51年 か ら継 続 して刊 行 さ れ て い る.収 録 されて い る論 文の 本数 は年 々増加 して お り、最 近 で は、1 年 あ た りお よそ8000本 の論 文 の情 報 が収 録 され て い る。89年 か らはCD-ROMの 形 式で も刊 行 され てい る。本 論 で は、89年 か ら2006年 途 中 までの 、 約12万2000本 の 論文 の 情報 が収 録 され たCD-ROMを 使 用 した1。 このCD-ROMを 用 い て、 イ ンデ ックス に 「India」とい うキー ワー ドを 持 つ論 文 を検索 す る と、2798本 の 論 文 が抽 出 され る。 た だ し、 これ らの 論文 の 中 には、要 約文 な どで イ ン ドにつ い て言及 してい るだ けで、 イ ン ド とは無 関係 な内容 を扱 ってい る論文 も含 まれてお り、 すべ て の論文 が イ ン ド政 治 をテ ーマ としてい る とは限 らな い。 しか しそれ で も、全体 の傾 向 を 把 握 す る上で は、 あ る程 度 は有効 で あ る と思 われ る. 図1は 、 こ の2798本 の論 文 の うち、2005年 まで の2750本 につ い て 、 年 ごとの論 文数 の推移 を示 した もので あ る.な お、 ここで示 した の は論 文 の 発 表 年 で は な く、IPSAに 収録 され た年 であ る こ とに注意 され た い。 この 図か ら もわか る よ うに、1年 あ た りの 論文 数 は、90年 代 後 半 まで は120∼ 150本 で あ った の に対 して、90年 代 末 以 降 は200本 前後 に まで増 加 して お り、全 体 と して も増 加傾 向 にあ る.こ の結 果 は、IPSAに 収 録 され て い る 論 文全 体 の 数が 増加 して い る とい う こ とと無 関係 で はな いか も しれ な い。 しか し、 イ ン ド政治 を扱 っ た論文 や、 イ ン ドに言及 した論文 の絶対 数 が増
加 して い る とい う事 実 そ の もの は、 イ ン ドに対 す る政治 学 的 な関心 が 高 まって い るこ とを示す もので あ る と言 え よ う. それ で は、 これ らの論文 は、具体 的 に どの よ うなテー マ を扱 ってい るの だ ろ うか.表1は 、前述 した2798本 の論 文の 中 で、 国 内政治 や 国際 政 治 な どに関す る特 定 の用語 を表 題文 の 中 に含 んでい る論文 が 何本 あ るか を、そ れ ぞれ の用語 ご とに示 した もので あ る。表 の上段 に示 した、 国内 政治 に 関 す る用語 につい て見 てみ る と、数 が比較 的多 い の は、表題 の 中 に 「民 主主 義 」「選挙 」「経 済」な どの用語 を含 んだ論文 で あ る。 これ に対 して、「宗 教 」 や 「カース ト」 な ど、 イ ン ドの 国内政 治 におい て重 要 とされ る事柄 に関す る用語 を含 んだ 論文 の 数 は、政 治 学 の論 文 の 中で は比 較 的少 な い。 一方 、 表 の下段 に示 した、 国際 関係 や安全 保 障 な どに関す る用語 につ いて見 て み る と、 数が 比較 的多 いの は、 「核 」「安 全保 障」 「パ キス タン」 「中国」 な ど の用語 を含 ん だ論文 で あ る。 また、表 の 上段 と下段 を比 べ て み る と、「民 主 主義 」や 「選挙 」 な ど、 国内政 治 に関す る用 語 を含 んだ論 文 よ りも、 国 際 関係 や安 全保 障 に関す る用 語 を含 んだ論 文 のほ うが多 い こ とが わ か る。 図1 イ ン デ ックス に 「India」 を含 む 論 文 数 の 推 移(1989∼ 2005年)
(出 所) International Political Science Abstracts 1989-2006/04 (Montreal:Internatlonal Political Science Association) (CD- ROM版. Silver Platter International,NV)の 検 索 結 果 よ り、筆 者 作 成 。
グ ローバ ル 化 とイ ン ド国内 政 治 ― 新 たな共 同研 究 に向 け て― 続 い て 図2は 、特 定 の用 語 を表 題 文 の中 に含 ん でい る論 文 の うち、数 が 多 い もの や特 徴 的 な増減 のパ ター ンを示 して い る もの につ い て、89年 か ら2005年 まで の 年 ご との 論文 数 の推 移 を、 そ れぞ れ の用 語 ご とに示 した もの であ る。 図の 上段 で は、国 内政 治 に関す る用語 を含 ん だ論 文数 の変化 を示 した。 「選挙 」 に関す る論 文 は、98年 に突 出 して多 い.Ipsrfの 実 際 の デ ー タ を確 認 して み る と、 これ らの 論 文 の ほ とん どは、96年 の連 邦 下 院 選 挙 を扱 っ た もので あ った。 この選挙 は、 イ ン ド人 民党(BJP)が 初 め て 第 一党 となっ た選挙 で あ るこ とな どか ら、研 究 者 の関心 が高 か った もの と 推 察 され る。 た だ し、98年 を除 くと、「選 挙 」 に関 す る論文 の 数 に さほ ど 大 きな変化 は見 られ ない。 これ に対 して 、 「民 主 主義 」 や 「経済 」 に関す る論 文 につ いて は、年 ご との増 減 はあ る ものの 、全体 と しては増加 傾 向 に あ る。 また、 この図 に は示 してい な いが、 「連 邦制 」 に関す る論 文 も、 絶 対数 は少 ない なが ら も全体 と して は増加 傾 向 にあ った。他 方 、「社会 」 「宗 教 」「カー ス ト」 につ い て は、論 文数 の 増減 につ いて特 に 目立 った傾 向 は 見 られ なか った。 図2の 中段 と下段 で は、 国 際 関係 や安全 保 障 な どに関す る用 語 を含 ん だ 論文数 の変 化 を示 した 。 この図 か らもわ か る ように、 いず れの論 文 の数 も、 全体 と して は増 加傾 向 にあ る.た だ し、 「核 」 に 関す る論 文 は、 イ ン ドの 表1政 治 学関連 のキー ワー ドを表題 に含 む論 文 数(1989∼2006年) (出 所)図1に 同 じ 。
図2 政 治学 関連 のキーワー ドを表 題 に含 む論文 数の 推移(1989∼2005年)
(出所)図1に 同 じ 。
グ ローバ ル 化 とイン ド国 内政 治 一 新 た な共 同研二究 に 向 けて― 核 実験 が行 われ た翌 年 の99年 に は突 出 して多 か っ たが 、 そ の後 は減少 傾 向 に ある。 「パ キス タン」に関す る論 文 は、90年代 を通 じて増加 傾 向 にあ っ た が、2000年代 に入 る と増 加 は頭打 ち となっ てい る。これ に対 して、「中国 」 に関 す る論 文 は、90年 代 前 半 には さほ ど多 くなか った が、90年 代 末 か ら は増 加傾 向 にあ る。 また、 絶対 数 は少 ない なが らも特 徴 的 な傾 向 を示 して い るの は、 「グ ローバ ル化 」 に 関す る論 文 の数 で あ る。 この用 語 を表題 文 の 中 に持 っ た論 文 は、90年 代 後 半 まで は非 常 に少 な か った が 、90年 代 末 以降 は着実 に数が増 加 して い る。 こ こまでの検 討結 果 か ら、 イ ン ド政 治 に関す る世 界 の研 究動 向 にお いて は、 イ ン ドの国 内外 の情 勢 の 変化 に敏 感 に反応 してい る様子 が見 られ る. 「核 」 に 関す る論 文 の数 が99年 に急 増 した もの の、 そ の後 は減 少傾 向 にあ る こ とは、 「核 保 有 国」 と して の イ ン ドが 国 際社 会 に受 け入 れ られ る よう にな った こ とを反映 して い るので は な いか と考 え られ る。 また、 「パ キ ス タ ン」 に関 す る論 文数 の増 加 が頭打 ち とな り、 その 一方 で 「中国 」 に関す る論 文数 が増 加 して きた こ とは、 印パ 関係 や印 中関係 におけ る情勢 の変 化 を反 映 してい る もの と思 わ れ る。 「グ ローバ ル化 」や 「民 主 主義 」 に 関す る論 文数 が増加 傾 向 にあ る こ とも、 国際社 会 にお け るイ ン ドの位 置付 けが 変 化 した こ とを示 す もの と言 え よ う。 他 方 で、 表1か ら もわか る よ うに、 全 体 として見 る と、 イ ン ドの国 内政 治 を扱 った論 文 よ りも、国 際関係 や安 全 保 障 に関す る事柄 を扱 った論文 の ほ うが多 い.イ ン ドに対 す る政 治学 的 な関心 は、 国 内政治 よ りもむ しろ、 国際 関係 や 安全保 障 な どの ほ うに よ り 強 く向 け られ てい る ようで ある。
3 現在のインド政治に見られる特徴
前 節 で述べ た よ うに、 イ ン ドに対 す る世界 の政 治学 界 の関心 は、 国際 関 係 や 安全保 障 な どの 問題が 中心 となっ てい る ようで あ り、 イ ン ドの国 内政 治 に対 す る関心 はやや低 い とい う印象 を受 ける.し か し現 実 には、現 在 の イ ン ドにおい て、純 粋 な 「国内政 治 」あ るい は 「国際政 治 」 と呼 べ る もの は少 な く、 後述 す る よ うに、 複数 の異 な った レベ ルの政 治 的 な動 きが 相互 に関連 す る とい う状 況 にな って いる。本 節 で は、 この よ うな状 況 と密接 な 関係 を有 してい る と思 わ れ る、現在 の イ ン ド政 治 にお ける特徴 につい て検 討す る。3-1 政 党政治 にお け る変化 最 近 の イ ン ドの国 内政治 にお い て注 目すべ き点 の ひ とつ は、 政党 政治 の 基 本 的 な構 図 が90年 代 に大 き く変化 した こ とで あ る。 そ して、 この変 化 に ともな って、独 立 以来 イ ン ド政治 の 中心 に位置 してい た、 イ ン ド国民 会 議 派(以 下 、 「会 議派 」)の 持 つ役割 が 変化 し、 同時 に、 国内 政治 にお け る 州 レベ ル の政治動 向 の重 要性 が高 まる こ ととなっ た。 独 立 後 か ら60年代 後 半 まで 、会 議 派 は圧倒 的 な勢 力 を保持 し、 「会 議派 シス テム 」 と呼 ば れた政 党 シス テム を維持 してい た。 しか し、周 知 の よ う に、60年 代 後 半 か ら会 議派 の勢 力 は弱体 化 し、 野党 勢 力 が結 集 して会 議 派 に対 抗 す る とい う動 きが 見 られ る よ うに な った 。 この 動 きは、77年 の ジャナ タ党 に よる連邦 政権樹 立 に よっ て、 ひ とつ の ピー ク を迎 え る こ とと な っ た。 この点 で 、77年 の 連邦 下 院 選挙 を イ ン ドの政 党 政 治 に お け る重 要 な転 換 点 と見 る こ とに異 論 は ない。 た だ し、90年 代 まで の イ ン ドの 国 内 政治 におい て は、 「会議派 とそれ に対 抗 す る野 党勢 力 の対 立 」が 、政 党 政 治 の基 本 的 な構 図 とな っ て いた 。 そ して、77年 以 前 で あ って もそ れ以 降で あって も、 この構図 その もの に大 きな変 化 は見 られ なか った 。 しか し、80年 代 末か ら政 党 の勢 力分 布 が大 き く変 化 し(多 党 化 の進 展 、 会 議派 の さ らな る弱 体化 、 イ ン ド人民 党 の台 頭 な ど)、そ れ と同 時 に、連 立 政権 の形 成 と崩壊 の繰 り返 しを、各 政党 が経験 す るこ と とな った 。そ の 結 果 、90年 代 末 以 降 に は、 国 内の 政 党政 治 の構 図 その もの が変 化 し、 同 時 に政党 の行 動 パ ター ン も変化 した。会 議 派 は もはや 、 「野党 勢 力が 結 集 して倒 す ため の対 象 」で は な く、多 党化 が 進 む 中央 の政 局 にお い て、 「連 立政権 を形成 す るた めの ひ とつ の軸 」 とい う位 置付 けに なっ てい る.こ れ らの こ とか ら、政党 の勢 力分 布が変 化 しは じめた80年 代 末 とい う時期 、 よ り具体 的 には89年 の連 邦 下 院選 挙 は、 イ ン ドの政 党 政治 にお け る新 た な 転換 点 と考 え られ る. 80年 代 まで は、会 議 派 とい う存 在 を抜 き に して イ ン ド政 治 の研 究 を行 う こ とは で きなか っ た.た とえ ば、88年 に 出版 され た、 イ ン ドの 「政党 と政党 システ ム」 に関 す るマナ ー(James Manor)の 論 文で は、 ほ とん ど の部分 が会 議派 に関す る記述 に割 か れて いる[Manor 1988]。 また、90年 に 出 版 さ れ た、 イ ン ドに お け る 「統 治 能 力 」 に 関 す る コ ー リ(Atul Kohli)の 著 作 で は、会 議 派 政権 の統 治 能力 が 中 心 的 なテ ーマ とな って い る[Kohli 1990].し か し現在 で は、状 況 は80年 代 まで とは異 な って いる。 182
ク ローバ ル 化 とイ ン ド国 内政 治 ― 新 た な共 同研 究 に 向 けて― 仮 に今 この瞬 間 に会 議派 が消 滅 した として も、 イ ン ドの政党 政治 は(大 き く変質 す る こ とは免 れ ない として も)機 能 しうるで あ ろ う し、 イ ン ド政治 につ いて我 々が研 究 を続 け てい くこと も可 能 なので あ る。 また 、国 内の政 党政 治 の構 図が変 化 した ことに よ り、 イ ン ド政 治 にお け る 「地方 」 の重要 性、 よ り具体 的 には 、州 レベ ルの政 治 の重要性 が 高 ま る 結果 となっ た。現在 の中央 政局 で進展 して いる多 党化 の担 い手 は、特 定 の 州 や地域 に勢 力 が 限定 され た 「地 域 政党 」 で あ る2。そ れ ぞれ の州 にお け る政党 間の競合 の しか た は、州 ご とに異 な る もの となって お り、個 々の州 ご とにそ れぞ れ異 な った政党 システ ムが形 成 され てい る.中 央 での連 立政 権 を維 持 して い くため に は、 これ らの 「地域 政 党」 の協力 が 不可 欠 な もの とな って いる ため、 州 レベ ルの政 治 の動 きが、 連邦 政権 の安 定性 や、 政府 の 政策 決定 な どに対 して影響 を及 ぼす状 況 となって い る。 3-2 「グ ローバ ル化」 と地 方政 治3 前 節 で述 べ た よ うに、 世界 の政 治 学界 の研 究 動 向 にお い て は、「グ ロー バ ル化 」 とい う文脈 か らイ ン ド政治 を分析 した研 究が 、数 は まだ少 ない な が らも着 実 に増 加 してい る。 実 際の とこ ろ、 「グ ローバ ル化 」 とい う用語 を用 い る こ とに どれ ほ どの利 点 があ る のか 、 い まひ とつ は っ き りしな い。 しか し、 国際社 会 にお け るイ ン ドの経 済 的 ・戦 略的 な位 置付 け の変化 に と もな って、 米 国や 中国 な ど、 イ ン ドと他 国 との関係 が よ り密接 か つ重 要 な もの にな った こ とは間違 い ない もの と思 われ る。そ して 、 この よ うな状 況 の変 化 に よ り、 イ ン ドの 国内政 治 も、連 邦政 府 の外交 政策 や 国際 関係全 般 の動 きに よって大 きな影響 を受 け る よ うにな ってい る。 ご く最 近 の例 とし て は、 米 国 との原 子力 協 力協 定 をめ ぐる イ ン ド国 内 の動 きが 挙 げ られ る. 同協 定 に対 して は、連邦 政府 に対 して閣外 協力 を行 ってい た左 翼 政党 が 強 硬 に反 対 し、2007年 半 ば に は、左 翼 政 党 に よ る政権 へ の支 持撤 回 と、連 邦 下 院の解 散 ・総選 挙 の可能 性 も取 り沙汰 された。 しか しその一 方 で、前 項 で述 べ た よ うに、 国内の 政党 政治 の構 図の変 化 に よって、 州 レベ ルの政 治の動 きが、 連邦 政府 の政 策決定 な どに対 して影 響 を及 ぼす とい う、 いわ ば逆方 向 の動 きも見 られ る ように なって い る。 こ れ らの結 果 、現在 の イ ン ドで は、 ほ とん どの政策 決定 や政 治的 な事件 にお い て、州 政治 や 中央 一地方 関係 な どの ロー カル な レベ ル、 中央 政局 の レベ ル、外 交 政策 や 国際関係 の レベ ル な ど、複 数 の レベ ルの政 治的 な動 きが相
互 に関 連す る状況 とな ってい る。 その顕 著 な事例 の ひ とつ が 、 カ シ ミー ル 問 題 で あ る。 この 問題 をイ ン ド側 か ら見 た 場合 に は、 連邦 政 府 とジ ャ ン ムー ・カシ ミール州 政府 との 関係 、 同州 を支持基 盤 とす る地域 政 党 と連邦 政 府与 党 との 関係 、 パ キス タ ンとの2国 間 関係、 南 ア ジア の安 全保 障 に 関 す る問題 、 イス ラム教武 装組 織 をめ ぐる 「テ ロ との戦 い」 の問題 な ど、 さ まざま な要 素 が絡 み合 った もの となって い る。 こ うい った状 況 は、多 か れ少 なか れ、世 界 の ほ とん どの 国 々で見 られ る こ とで はあ るが、 イ ン ドで はそ れが よ り明確 な形 で現 れ てお り、各 レベ ル の政 治 的な動 きが相 互 に 関連す る度合 い も大 きい.こ の ため、 イ ン ドを含 め た南 ア ジア地域 の政 治や 国際 関係 、安 全保 障 な どにつ いて研 究 を行 う場 合 に は、 これ らの各 レベ ルの政 治 的 な動 向 や、 それ ぞれ の関係 な どを、総 合 的 に検 討 して い く必 要 があ る。 さらに、 イ ン ドが経 済 的 に台頭 しつ つ あ る とい う現状 を考慮 すれ ば、 国 内外 の経 済 的 ・社 会 的 な状 況 に も目を向 け る必要 が ある。 現在 の イ ン ド政治 につ い て理解 しよ う とい う場 合 には、 こ の よ うな 「全体 的」 な見 方 に よる検 討 を行 うこ とが 必要 とな るので あ る. わ か りや す い 事例 と して は 、 イ ン ド国 内 の経 済特 区(SEZ)の 建 設 を め ぐる問 題 が あ る。SEZの 建 設 は、政 府 に よる経 済 自由化 政策 の ひ とつ で あるが 、そ の建 設 は州や 連邦 直轄領 の 政府 の主導 で行 われ るので 、連邦 政府 と州 政府 との関係 や、 そ れぞれ の州 内 の政治状 況 に よ って、建 設計 画 が影 響 を受 け るこ とが あ る。州 政権 が交代 した こ とに よって 、そ れ まで順 調 に進 め られて いたSEZ建 設計 画が頓 挫 す る こと もあ りうる ので ある.ま た 、SEZ建 設 に ともな う土 地 の 買収 をめ ぐっ て は、 農地 を手 放 す こ とに なる農 民 な どの 間か ら反対 運動 が起 こる場合 が あ る.こ の よ うな反対 運動 につ いて理解 し、解 決策 を考 え 出す ため には、 それ ぞ れの地域 の社 会構 造 や歴 史的 な要 因、地 元 の政治 活動 家 の動 向な どとい った、 ロー カル な レベ ルの政 治 ・社 会 状況 を把 握す るこ とが 不可 欠 であ る。 4 今 後 の 研 究 上 の 課 題 4-1 我 が国 にお けるイ ン ド政治 研究 政 党政 治 にお いて 「会議 派 シス テム」 が機 能 して いた と考 え られ る、60 年代 後半 までの時 期 の イ ン ド政 治 と、 その後 の政 治変 動 につ いて は、 わが 国 にお いて も相 当量 の研 究 の蓄 積 があ る。 た とえ ば、 イ ン ド政治 史 に関 し ては、 山 口[1975]、 中村[1981、1993]な どがあ る。 政治 経済論 や 民主 184
グローバル化 とインド国内政治一新たな共同研究に向けて― 主義 論 と して は、 山 口[1982]、 佐 藤[1989]な どが あ る。 また、 政党 政 治 に 関 して は、 森[1970]、 堀 本[1982、1997:第II部 第1章 ・第2章]、 Hirose[1994]な どが あ る。 しか し、 前 節 で も述 べ た よ うに、 現 在 の イ ン ド国 内 の政治 状 況 は80年 代 まで とは大 き く異 な った もの に なっ てお り、 そ れ を理 解 す る ため に は、前 述 した よ うな、 「全 体 的」 な見 方 に よる検 討 を行 うこ とが 必要 となる。 しか しなが ら、我 が 国 にお ける最近 の イ ン ド政治研 究 は、細分 化 が進 ん でい る とい う印象 であ り、現 在 の イ ン ド政 治 につ いて 、民主 主義 論 や政 治 経 済論 な ど、 ひ とつ の大 きな枠組 み の中 で と らえてい こ う とい う研 究 は少 ない ように思 われ る。 もち ろん 、井上[2000]、 近藤[2000]、 広瀬[2002]、 佐 藤[2002]な ど、 い くつ か の重 要 な研 究 が 発 表 されて はい るが 、全 体 として見 れば 、特 定 の政 治 的事件 や個 々 の選挙 な どを対象 とした、時事 分 析 的 な研 究 が非 常 に多 い とい う印象 を受 け る. また、 こ こで特 に述べ てお きた いの は、2008年 現 在 の連 邦 下 院 野党 第 一 党 で あ る、イ ン ド人民党(BJP)に 対 す る見 方 で あ る。周 知 の よ うに、 BJPは80年 代 末 か らgo年代 にか けて、 「ヒ ン ドゥー ・ナ シ ョナ リズ ム」 の イデ オ ロ ギ ー に よっ て有 権 者 を動 員 し、勢 力 を拡 大 させ た 。そ して、92 年 の 「ア ヨー デ ィヤ ー事 件 」 や、2002年 に グジ ャ ラー ト州 で 発 生 した反 ムス リム暴動 な どの影 響 もあ って 、わ が国 にお いて も、BJPの イデ オ ロギー や党 と して の路線 、 その行 動 内容 な どを危 険視す る傾 向が 強 い よ うに思 わ れ る(た とえ ば、内藤 ・中村(編)[2006:第11章]な ど).し か し、90年 代 後 半 か らの動 きを見 る 限 り、BJPの 党 と して の路線 や 戦略 は、党 内部 の 力学 や他 の政 党 との 関係、 国 内外 の 政治状 況 な どに よっ て も影 響 を受 けて い る(広 瀬[1994]を 参 照).し たが って、BJPの 行 動 につ い て理 解 す る た めに は、 同党 のイ デオ ロギ ーや表 面的 な主 張、 あ るい は特 定 の事件 にだ け注 目 して いたの で は不 十分 で あ り、 同党 に対 して よ り中立 的 な見方 を維 持 してい くべ きで は ないか と考 え る。 4-2 共 同研 究 の必要 性 我が 国 にお け るイ ン ド政治研 究 が細 分化 してい る理 由の ひ とつ に は、指 定 カース トや その他 の後 進階 級 な どの新 たな社会 集 団の 台頭 、宗教 や カー ス トな どに も とつ く対 立 、経 済 自由化 な どに と もな う国 内の経 済 的 ・社 会 的 な状 況の変 化 、地域 政党 の 台頭 な ど、研究 を行 ってい く上 で考慮 に入 れ
な けれ ばな らない 要素 が増加 して いる こ とが あ るので は ないか と考 え られ る。 何 度 も述べ てい る よ うに、現在 のイ ン ド政 治 を理解 す るた めに は、複 数 の レベ ル の政 治 的 な動 きや 、 国内外 の経 済 的 ・社 会 的 な状 況 な どを、 「全 体 的」 に検討 してい くこ とが必 要 となる。 また、 この よ うな検 討 を行 うた め に は、政治 学 ばか りで な く、 経済 学や 人類 学 な ど、 複数 の学 問分野 に ま たが った知識 も必 要 となるで あろ う。 しか し、 この ような状況 は、研 究 者 に対 して は、た だで さ え複 雑 な社 会構 造 を有 す る イ ン ドの政治 を研 究 して い く上 で 、 さ らな る困難 を突 き付 け る こ と とな る.現 実 的 な 問題 と して 、 ひ と りの研 究者 が、 こ うい った 「全 体 的」 な視点 を持 った研究 を、 イ ン ド 全域 につい て行 うこ とは不 可能 で あ る。 しか し、そ の よ うな研 究 が実現 し ない限 り、現 在 の イ ン ド政 治 の全貌 に迫 るこ とはで きない。 した が って、 よ り現 実 的 な方 法 は、複 数 の研 究 者 に よる共 同研 究 とい う 形 を とる こ とで 、 この よ うな視 点 を確保 す る こ とで あ る。 この方法 に よる 共 同研 究 の例 と して は、最 近 の連邦 下 院 選挙 を対 象 と した、広 瀬(編 著) [2001]、 広 瀬 ・南埜 ・井上(編 著)[2006]な どが あ る。 また、厳 密 に は 共 同研 究 で は ないが 、複 数 の研 究 者 に よっ て、 イ ン ドの経 済、 国 内政 治 、 国際 関係 につ い て と りま とめ られ た 『イ ン ド季 報 』(69年 に 『イ ン ド経 済 季 報』 として創刊 、88年 に改 題)の ような試 み も、 「全体 的」 な視 点 を確 保 す る上 では有効 で あ ろ う. 単 な る論 文集 で はな く、統 一 され たテ ーマや仮 説 に もとつ い た共 同研 究 を行 う場合 には、研 究代 表者 をは じめ とす る参加 者 の負担 が 多大 な もの に な るこ とが 予想 され る。 また、共 同研 究 を行 える だけ の研 究 費 を どこか ら 調 達す るか とい う問題 も生 じるであ ろ う.し たが って、 この よ うな研 究 を 頻 繁 に行 うこ とは難 しいか もしれ ない.し か し、前 節 まで に述べ た ような、 イ ン ド政 治 に関す る現在 の状 況 を考慮 す れば、 今後 は、 この よ うな共 同研 究 を行 ってい くこ とが不 可欠 にな るので は ないか と思 われ る.
5 おわりに
本 論で は、 イ ン ド政 治 に関す る研 究動 向 と、現在 の イ ン ド政 治 におい て 見 られ る特徴 につ い て検討 した 。第3節 で述 べ た よ うに、 現在 の イ ン ド政 治 を理 解 す る た め には、 様 々な レベ ルの 政治 的 な動 きな どを、 「全 体 的 」 に検 討 して い くこ とが 必要 とな り、 その ため に は、複 数の学 問分 野 に また 186グ ローバ ル 化 とイン ド国 内政 治 ― 新 たな 共 同研 究 に 向け て― が つた知 識 も必 要 となる.こ の よ うな状 況 を踏 まえ、第4節 で は、 複 数 の 研 究者 に よる共 同研 究 を行 う ことの必 要性 につ い て述 べ た. 第4節 で も述べ た よ うに、共 同研 究 に はい くつ か の 困難 が ともな う。統 一 された テーマ や仮 説 に も とづ く研 究 を行 う場合 には、研 究代 表者 をは じ め とす る参加 者 の負担 が大 きな もの にな る ことが予想 され る。共 同研 究が 成功 す るか どうか は、結局 の ところ、代 表者 の リー ダー シ ップ にかか って い る とい う面 もあ る。 また、研 究 に必要 な資金 を どの よ うに確 保す るか と い う問題 もあ る。しか しなが ら、イ ン ドとい う巨大 で複 雑 な研 究 対象 を扱 っ て い くため に は、そ れ相 応 の戦 略が 必要 で あ る.特 定 の分 野や 地域 な どに つ いて研 究 を深 めて い くこ とは もちろ ん重要 で あ るが 、 それ と同時 に、複 数 の研 究 者や 学 問分野 にまたが った協 力 体制 を構 築す る こ と もまた、重 要 で は ないだ ろ うか. 註
1 International Political Science Abstracts 1989 -2006/04, Montreal: International Political Science
Association (CD-ROMӁ : SilverPlatter International, N.V.).
2 ここで 言う「地 域 政 党」には、地 域 主 義 的な主 張 やイデ オロギ ーを持 った、文 字 通 りの 「地域 政 党 」 の ほか、 歴 史 的 な要 因 に よって特 定の 州 に勢 力 が 限定 されてい る政 党(両 派 共 産 党 など)や 、 特 定の 地域 に地盤 を有 する政 治家 個 人を中心 として結 成 され た政 党 など、「地 域 化 政 党」 と呼 ぶべ き政 党 も含 まれる。 3 本 項 の 記 述 にあた っては、佐 藤 隆 広 氏(神 戸 大 学 経 済 経 営研 究 所 准 教 授)と の議 論 か ら多 く の示 唆 を得 た。 同氏 に感 謝 を申し上 げる. 参 照 文 献
Hirose, Takako, 1994, Two Asian Democracies: A Comparative Study of the Single Predominant Party Systems of India and Japan, Delhi: Konark Publishers.
広 瀬 崇 子 、1994、 「イ ン ドに お け る ヒ ン ドゥー ・ナ シ ョナ リズ ム の 台 頭 一イ ン ド人 民 党 を 中 心 に 一」、 『ア ジ ア経 済 』、35-3、2-22頁 。 広 瀬 崇 子(編 著)、2001、 『10億 人 の 民 主 主 義 ―イ ン ド全 州 、全 政 党 の 解 剖 と第13回 連 邦 下 院 選 挙 ―』、御 茶 の 水 書 房 。 広 瀬 崇 子 、2002、 「南 ア ジ ア に お け る 民 主 化 と民 主 主 義 の 運 営 」、堀 本 武 功 ・広 瀬 崇 子(編)『 現 代 南 ア ジ ア3民 主 主 義 へ の とり くみ 』、東 京 大 学 出 版 会 、73-97頁 。 広 瀬 崇 子 ・南 埜 猛 ・井 上 恭 子(編 著)、2006、 『イ ン ド民 主 主 義 の 変 容 』、明 石 書 店 。 堀 本 武 功 、1982、 「政 党 制 」、山 口 博 一(編)『 現 代 イ ン ド政 治 経 済 論 』、ア ジ ア 経 済 研 究 所
、71-91頁 。
堀 本 武 功 、1997、 『イ ン ド現 代 政 治 史 一独 立 後 半 世 紀 の 展 望 一』、刀 水 書 房 。
井 上 恭 子 、2000、 「1990年 代 イ ン ドの 政 治 一多 党 化 時 代 の 政 権 構 造 一」、 『ア ジ ア 経 済 』、41-10/11、37-65頁 。
Kohli, Atul, 1990, Democracy and Discontent: India's Growing Crisis of Governability, Cambridge: Cambridge University Press.
近 藤 則 夫 、2000、 「総 論:1990年 代 の イ ン ドの 政 治 経 済 の 新 展 開 」、『ア ジ ア 経 済 』、41-10/11、 2-36頁 。
Manor, James, 1988, "Parties and the Party System", in Atul Kohli (ed.), India's Democracy: An Analysis of Changing State-Society Relations, Princeton: Princeton University Press, pp. 62-98.
森 利 一 、1970、 「イ ン ド国 民 会 議 派 に お け る リー ダ ー シ ップ ー連 邦 政 府 首 相 と総 裁 の 関 係 をめ ぐ って―」(1∼IV)、 『ア ジ ア経 済 』、11-3、16-43頁/11-6、31-51頁/11・-8、44- 64頁/ 11-9、 52-76 頁 。 内 藤 雅 雄 ・中 村 平 治(編)、2006、 『南 ア ジ ア の 歴 史 一複 合 的 社 会 の 歴 史 と文 化 一』、有 斐 閣 。 中 村 平 治 、1981、 『現 代 イ ン ド政 治 史 研 究 』、東 京 大 学 出 版 会 。 中 村 平 治 、1993、 『南 ア ジ ア 現 代 史1』(第2版)、 山 川 出 版 社 。 NHKス ペ シ ャル 取 材 班 、2007、 『イ ン ドの 衝 撃 』、文 藝 春 秋 。 佐 藤 宏 、1989、 「イ ン ド政 治 へ の 序 章 」、佐 藤 宏 ・内 藤 雅 雄 ・柳 沢 悠(編)『 もっ と知 りた い イ ン ド I』 、弘 文 堂 、15-47頁. 佐 藤 宏 、2002、 「イ ン ド政 治 史 へ の 政 治 経 済 学 的 ア プ ロ ー チ 」、堀 本 武 功 ・広 瀬 崇 子(編)『 現 代 南 ア ジ ア3民 主 主 義 へ の と りくみ 』、東 京 大 学 出 版 会 、267-289頁 。 山 口 博 一 、1975、 「独 立 後 政 治 史 の 試 み 」、山 口 博 一(編)『 現 代 イ ン ド政 治 史 試 論 』、ア ジ ア経 済 研 究 所 、1-24頁 。 山 口 博 一 、1982、 「イ ン ドは ど こへ ゆ くか」、山 口 博 一(編)『 現 代 イ ン ド政 治 経 済 論 』、ア ジ ア 経 済 研 究 所 、3-33頁 。 要 旨 キー ワー ド 比 較政 治学 、イ ン ド政 治 、政 党政 治、 グ ローバ ル化 国際社 会 にお け るイ ン ドの経済 的 ・戦略 的 な位 置付 けは、 近年 にな って大 き く変 化 した。 そ の結 果、 イ ン ドに対 す る世 界 の政 治学 界 の 関心 は、 どち らか と言 えば、 国際 関係 や 安全保 障 な どの 問題 が 中心 とな ってい る よう に思 わ れ る。 しか し、現在 のイ ン ドで は、純 粋 な 「国 内政 治 」 あ るい は 「国際政 治 」 と呼べ る もの は少 な く、 ほ とん どの 政策 決定 や政 治的 な 出来事 にお い て、州 政治 か ら国際 関係 までの、 複数 の レベ ルの 政治 的 な動 きが相 互 に関連 す る状 況 となっ てい る。 したが って、現 在 の イ ン ド政治 を理解 す る ため には、 この ような複 数 の レベ ル の 188
グローバル化 とインド国内政治― 新たな共同研究に向けて― 政 治 的 な動 きや 、国 内外 の経 済 的 ・社 会 的 な状 況 な どを、 「全体 的」 に検 討 してい くこ とが必 要 とな る。 また 、 この よ うな検 討 を行 うため に は、政 治 学 だ けで な く、 経済 学 や人類 学 な ど、複 数の学 問分 野 に またが った知 識 も必要 とな る。 この よ うな 状況 を踏 まえ、本 論 で は、複 数の研 究者 に よる共 同研 究 を行 うこ との必 要性 を指 摘 した.イ ン ドとい う巨大 で複雑 な研 究対 象 を扱 うた め には、特 定 の分野 や地 域 な ど につ い て研 究 を深 め てい くこ とは もちろ ん重 要 であ るが 、同 時 に、複数 の研 究者 や 学 問分 野 に また が った協力 体制 を構 築 す る こと も重要 で あ る と考 え る。 Summary
Globalization and Indian Domestic Politics: A Proposal for a New Cooperative Research
Hiroki Miwa
Key words: comparative politics, politics in India, party politics, globalization
India's economic and strategic position in the international community has changed markedly in recent years. As a result, many political scientists seem to study Indian politics mainly in terms of subjects such as international relations and security. On the other hand, they seem to have relatively little interest in domestic political matters in India. However, it is hard to find "pure" domestic politics or "pure" international politics in India today. Al-most every policy making process and political event in India involves the interactions of multiple political spheres from the international to the local.
Therefore, in order to understand politics in India today, we must analyze "comprehensively"those multilevel political processes and socio-economic circumstances both within and outside India. It also requires knowledge of various academic disciplines such as economics and anthropology in addition to political science. To this end, it is prac-tical to conduct cooperative research by a number of scholars. In order to study the politics of the huge country of India, which has a complicated society and culture, it is of course important to advance our research in a specific field of study or within a specific geo-graphic area in India. However, at the same time, it is also important to establish a system of interdisciplinary cooperative research in which a number of scholars participate.