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Vol.19 , No.2(1971)019田村 晃祐「『法華去惑』について」

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Academic year: 2021

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(1)

﹃ 法 華 去 惑 ﹄ に つ い て ( 田 村) 一 一 八

﹃法

一 最 澄 の 著 ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ 四 巻 は、 ほ ぼ ﹃ 守 護 国 界 章 ﹄ 中 巻 と 同 じ も の で あ り、 そ の 草 稿 で あ ろ う と い わ れ る。 所 が こ ゝ に、 単 に そ う い つ て す ま す こ と が 出 来 る か ど う か、 疑 問 を 呈 出 さ せ る 問 題 も あ る。 そ れ は、 仁 忠 の ﹃ 叡 山 大 師 伝 ﹄ に、 ﹃ 守 護 国 界 章、 十 巻 ﹄ ( 傍 点 筆 者) と 記 さ れ て い て 現 行 の ﹃ 守 護 章 ﹄ 九 巻 と は、 巻 数 を 異 に す る。 そ し て ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ は 四 巻 よ り な つ て い る の で、 も し、 こ れ を ﹃ 守 護 章 ﹄ 中 巻 の 原 型 と 仮 定 す る と、 十 巻 と い う 数 に 丁 度 適 合 す る。 こ こ に お い て、 果 し て 仁 忠 の 手 に し た ﹃ 守 護 章 ﹄ の 中 巻 は、 現 行 の ﹃ 守 護 章 ﹄ の 中 巻 で あ つ た か、 或 い は、 ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ の 方 で あ つ た か、 が 問 題 と な ろ う。 こ れ は、 そ の ま ゝ、 ﹃ 守 護 章 ﹄ は、 ど の 様 な 形 で 成 立 し た も の で あ つ た か を 解 く 鍵 と も な ろ う。 私 は 現 在、 こ の 問 題 に 明 確 な 解 答 を 与 え る こ と は 出 来 な い が、 こ の 両 者 を 比 較 す る こ と に よ つ て、 そ の 問 題 点 を 整 理 し て み た い。 そ の 順 序 と し て、 先 ず ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ は 本 来 独 立 し た 一 書 で は な く て、 ﹃ 守 護 章 ﹄ の 中 巻 で あ つ た 事 を 証 し、 次 に、 ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ の ﹃ 守 護 章 ﹄ よ り 多 い 部 分 に つ い て 考 察 し、 更 に、 ﹃ 守 護 章 ﹄ の ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ よ り 増 広 さ れ て い る 点 に つ い て 検 討 し て み た い。 二 ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ は、 現 在、 四 巻 で 独 立 の 一 書 を な し て お り、 仁 忠 の ﹃ 叡 山 大 師 伝 ﹄ に も ま た、 ﹁ 法 華 去 惑 四 巻、 守 護 国 界 章 十 巻 ﹂ と、 本 来、 別 の 書 で あ る よ う に 記 さ れ て い る が、 そ の 内 容 か ら、 実 は、 元 来、 独 立 の 書 で あ つ た の で は な く て、 ﹃ 守 護 章 ﹄ の 中 巻 で あ つ た こ と が 分 る。 ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ は、 天 台 の 教 理 に 対 す る 徳 一 の 批 判 書 で あ る ﹃ 中 辺 義 鏡 ﹄ の 中、 ﹃ 法 華 玄 義 ﹄、 ﹃ 法 華 文 句 ﹄ に 関 す る 部 分 を 論 駁 し た 書 で あ る が、 そ の 中 に、 ﹃ 守 護 章 ﹄ の 上 巻 及 び 下 巻 に 当 る 部 分 を 予 想 す る 部 分 が あ る。 ま た、 徳 一 の 文 章 に つ

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い て み て も、 こ こ で 論 難 め 対 象 に な つ て い る も の だ け で 一 書 を な し て い た の で は な く て、 他 の 部 分 を 予 想 さ せ る 部 分 が あ る。 こ こ で は (一) 徳 一 の 著 作 に つ い て、 (二) 最 澄 の 論 難 中、 ﹃ 守 護 章 ﹄ 上 巻 を 予 想 す る 部 分 と、 日 下 巻 を 予 想 さ せ る 記 述 に 分 け て、 検 討 し て み た い。 (一) 徳 一 の 論 述 し て い る 部 分 の 中 に、 (A) 彼 所 立 四 教、 前 已 破 詑。 是 故。 彼 十 妙 亦 亦 不 二極 成 幻 ( 伝 教 大 師 全 集 第 二 巻、 三 十 二 頁。 以 下 頁 数 の み 記 す) 天 台 の 四 教 説 を 前 に 破 し て い る が、 四 教 が 成 立 し な け れ ば、 十 妙 の 説 も 成 立 し な い と 主 張 す る。 (B) 彼 引 二 経 経 処 処 文 叩 錐 レ 証 二 四 教 八 教 幻 而 彼 所 レ引 文。 錐 二 実 経 一而 率 二 自 臆 情 幻 分 別 解 釈。 故 今 不 レ 用。 如 二 前 已 破 幻 故 不 二 重 破 幻 ( 八 一 頁) ﹃ 去 惑 ﹄ 巻 三 の 冒 頭、 天 台 の 如 是 を 解 せ る 部 分 を 引 い て 反 論 を 加 え、 こ こ で も、 四 教 八 教 を 前 に 破 し た か ら、 こ こ で は 重 ね て 論 破 は し な い、 と 記 し て い る が、 徳 一 が 四 教 八 教 を 破 し て い る 部 分 は ﹃ 去 惑 ﹄ の 中 に は 含 ま れ ず、 ﹃ 守 護 章 ﹄ 上 巻 の 部 分 に 含 ま れ て い る。 (C) 此 義 下 当 二 分 別 一 ( 一 四 〇 頁) ﹃ 去 惑 ﹄ 第 四 に、 大 白 牛 車 に つ い て 徳 一 が そ の 説 を 述 べ、 先 ず、 二 乗 に つ い て 宅 相 ・ 出 宅 ・ 索 車 ・ 乗 牛 車 の 意 味 を 明 し、 つ い で 菩 薩 に つ い て の 意 味 を 明 か に し て、 ﹁ こ の 事 は 下 に 更 に 明 か に す る ﹂ と 認 し て い る。 こ れ は ﹃ 去 惑 ﹄ の 最 後 に 近 い 部 分 で あ つ て、 こ の 下 に 詳 し く 説 き 明 す、 と い う の は、 ﹃ 守 護 章 ﹄ 下 巻 に 変 易 生 死 と か、 五 種 姓 の 差 別 と か、 一 乗 思 想 に 関 係 あ る 諸 問 題 を 取 り 上 げ て い る 部 分 を 指 す も の と 考 え ら れ る。 こ う し て み る と、 ﹃ 去 惑 ﹄ の 中 の、 徳 一 の 部 分 も、 こ れ だ け で 完 結 し て い る も の で は な く て、 更 に 前 後 あ る 論 の 一 部 が、 こ こ に 取 上 げ ら れ た も の で あ る こ と が 分 る。 (二) 次 に、 最 澄 の 論 述 の 部 分 で、 ﹃ 去 惑 ﹄ 以 前 の 部 分、 即 ち ﹃ 守 護 章 ﹄ 上 巻 を 予 想 し て い る 箇 所 を 挙 げ よ う。 (A)( 一) の (A) に 対 す る 最 澄 の 慰 喩 の 中 に、 四 教 之 城。 前 已 築 詑。 是 故 十 妙 亦 極 成 也 ( 三 十 二 頁) 徳 一 の 十 妙 批 判 を 逆 手 に と つ て、 四 教 が 前 の 議 論 で 確 立 さ れ て い る か ら、 十 妙 も 確 立 さ れ る と い う の で あ る。 所 が、 前 に も 記 し た よ う に、 四 教 に つ い て の 論 争 は ﹃ 守 護 章 ﹄ 上 巻 の 上 で 行 わ れ て い る の で、 最 澄 が こ れ を 書 い た 時 に は、 ﹃ 去 惑 ﹄ 以 前 の 論 争 の 部 分 を 意 識 し、 そ れ と の 関 連 に お い て こ の 部 分 が 書 か れ た 事 が 分 る。 同 様 に、 ﹃ 守 護 章 ﹄ 上 巻 の 記 述 を 予 想 し て い る 部 分 を 並 べ て み る と、 (B) 四 教 八 教 道 理 証 文。 上 章 已 説。 建 立 已 畢。 ( 八 十 一 頁) (C) 山 家 四 教。 上 已 極 成 故。 依 二彼 四 教 一而 判 二経 文 幻 亦 得 二 極 成 一。 ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ に つ い て ( 田 村) 一 一 九

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﹃ 法 華 去 惑 ﹄ に つ い て ( 田 村) 一 二 〇 ( 二 一九 頁) な ど が あ る。 日 更 に、 ﹃ 守 護 章 ﹄ 下 巻 を 予 想 し て い る 最 澄 の 論 述 も 見 受 け ら れ る。 増 寿 変 易 謹 論 章。 具 出 二 二 乗 変 易 義 幻 是 故、 此 章 不 二具 出 叩 ( 二 二 九 頁) こ こ で 言 及 さ れ て い る 増 寿 変 易 諦 論 章 と い う 名 の 章 は、 下 巻 に は な い。 し か し、 そ の 内 容 か ら 見 る と、 ﹁ 弾 鑛 食 者 謬 破 定 性 二 乗 入 無 余 後 回 心 章 第 二 ﹂ を 指 す の で あ ろ う と 考 え ら れ る。 以 上 の よ う に し て、 ﹃ 去 惑 ﹄ は、 徳 一 の 側 も、 こ こ に 引 か れ つ い る 部 分 だ け で な く、 も つ と 長 い も の の 一 部 分 で あ る 事 が 分 り、 そ れ を 批 判 す る 最 澄 の 文 も、 ﹃ 去 惑 ﹄ 以 前 及 び 以 後 を 予 想 し て 書 い て あ る、 と い う こ と に な る と、 こ の ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ は、 始 め か ら、 独 立 し た 一 書 と し て 書 か れ た も の で な く、 名 前 は と も か く と し て、 実 質 的 に は、 ﹃ 守 護 国 界 章 ﹄ の 中 巻 と し て 書 か れ た も の が、 ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ と い う 題 の 下 に 別 行 さ れ た も の で あ る と 考 え ら れ る。 三 次 に、 ﹃ 守 護 章 ﹄ 中 巻 に 含 ま れ ず に、 ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ だ け に 述 べ ら れ て い る 部 分 に つ い て 検 討 を 加 え よ う。 細 か な、 一 字 二 字 の 増 減 の 箇 所 は 数 多 く あ り、 ま た 伝 教 大 師 全 集 の 編 集 者 に よ つ て、 意 味 が 通 ず る よ う に、 ﹃ 守 護 章 ﹄ か ら 補 わ れ た 文 章 も あ る が、 そ れ 等 を 除 い て、 大 き な 相 違 に つ い て 見 る と 二 箇 所 あ る。 (一) 八 八 頁 第 六 行 か ら 九 三 頁 第 二 行 に 至 る 約 千 四 百 字 の 部 分 (﹃ 法 華 去 惑 ﹄ 第 三) と、 (二) 一 〇 〇 頁 第 十 一 行 か ら、 一 〇 七 頁 第 六 行 に 至 る 約 二 千 字 の 部 分 ( 同 第 三) と で あ る。 (一) 第 一 の 部 分 は、 ﹃ 守 護 章 ﹄ 中 巻、 ﹁ 弾 三 諺 法 者 偽 訳 如 是 一章 第 十 ニ ト と ﹁ ﹁ 助 二 照 法 華 同 聞 菩 薩 歎 徳 一章 第 十 三 ﹂ に 当 る 部 分 の 間 に 入 つ て い る。 第 十 二 章 に 当 る 部 分 が、 法 華 経 の 初 に 来 る ﹁ 如 是 ﹂ と い う 語 の 解 釈 を め ぐ る 徳 一 ・ 最 澄 の 論 争 で あ る。 そ れ を 受 け て ﹃ 去 惑 ﹄ で は 徳 一 が、 班 足 王 共 二 千 王 殉 立 二 舎 於 其 地 幻 故 称 二 王 舎 鱒 又 班 足 王 得 レ 道 放 二 赦 千 王 殉 千 王 被 レ赦 二 於 其 地 囎 故 名 為 二 王 赦 ↓ 而 経 宗 借 レ 音。 為 二 屋 舎 字 一耳。 と い う ﹃ 法 華 文 句 ﹄ 一 上 ( 大 正 三 四 ・ 五 中) の 文 を 引 い て、 ' 徳 一 は ﹁ 此 義 不 レ 爾 ﹂ と い つ て 批 判 す る。 法 華 経 に 関 す る 議 論 と し て は、 ﹁ 如 是 ﹂ に つ い て の 議 論 に 続 い て、 ﹁ 王 舎 城 ﹂ に つ い て の 論 争 が 来 て、 全 く 不 都 合 は な い。 ( 但 し ﹃ 文 句 ﹄ で は、 班 王 足 で は な く 駁 足 王 と な つ て い る) 徳 一 は、 ﹃ 西 域 記 ﹄ な ど か ら、 班 足 王 の 城 は 上 茅 城 で、 頻 婆 娑 羅 王 が こ れ を 移 し た の が 王 舎 城 で あ る か ら、 こ の 解 釈 は 誤 り で あ る と い う。 そ し て 最 澄

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は、 徳 一 の 説 を、(1) 不 レ 了 二 梵 漢 ↓(2) 違 二 智 度 論 ↓(3) 不 レ 了 二 他 宗 ↓(4) 諮 二 惑 後 学 一 の 四 失 を 挙 げ て 批 判 す る。 次 い で、 者 [闇 堀 山 に つ い て、 約 教 釈 と し て、 ﹃ 像 法 決 疑 経 ﹄ に よ つ て 四 見 不 同 の 説 明 を し た ﹃ 文 句 ﹄ の 文 を と り あ げ、 徳 一 が、 娑 羅 林 に つ い て 述 べ ら れ た 四 見 不 同 を、 鷲 山 に つ い て 引 用 す る 不 可 を 述 べ た の に 対 し、 最 澄 が、 こ れ は 四 教 に あ て は め た も の で あ る と 反 論 す る。 更 に 徳 一 が、 天 台 は 城 や 山 の 名 を 釈 す が、 そ の 所 由 も 記 さ な い、 と 批 判 し、 ﹃ 法 華 論 ﹄ に よ つ て、 王 舎 城 と、 霊 鷲 山 が、 他 の 城 や 山 よ り 勝 れ て い る こ と が、 法 華 経 の 法 門 が 二 乗 に こ え て 最 勝 で あ る こ と を 顕 す、 と い う 説 を 述 べ る の に 対 し て、 最 澄 は ﹃ 法 華 文 句 ﹄ に 一 切 法 門 中 の 最 勝 な る も の と 述 べ て お り、 二 乗 で は な く て、 三 乗 に 出 過 し て い る 旨 を 説 い て い る。 以 上、 ﹃ 守 護 章 ﹄ に 欠 く 部 分 は、 王 舎 城 ・ 善 闇 堀 山 に 関 す る 説 明 に つ い て の 論 争 で あ り、 こ れ に 続 く 部 分 は、 菩 薩 の 徳 を 十 三 句 を 以 て 歎 ず る 部 分 に つ い て の 論 争 で あ る の で、 こ こ に あ つ て 適 当 な も の で あ り、 そ の 形 式 も、 他 の 部 分 よ り 特 に 異 つ て い る と も 見 ら れ ず、 ﹂元 来、 こ こ に 書 か れ て い た も の と 認 め て よ い で あ ろ う。 四 次 に ﹃ 去 惑 ﹄ に 欠 い て、 ﹃ 守 護 章 ﹄ だ け に あ る 部 分 に つ い て 研 究 を 進 め る。 こ れ は、 (一) 四 四 〇 頁 四 行 か ら、 四 五 三 頁 六 行 迄 約 三 千 五 百 字、 (ニ) 四 六 七 頁 八 行 か ら 四 七 二 頁 十 行 迄 の 約 九 百 五 十 字、 (三) 各 章 名、 (四) 各 章 初 め に あ る 序 分 と で あ る。 日 こ の 部 分 は、 ﹁ 駁 二 錘 食 者 所 レ 示 法 華 歎 徳 一 章 第 十 四 ﹂ ( 巻 中 之 中) と ﹁ 弾 二 諺 法 者 浅 八 大 義 一章 第 十 五 ﹂ (巻 中 之 下) の 二 章 で あ る。 こ れ は、 ﹁ 助 二 照 法 華 同 聞 菩 薩 歎 徳 一章 第 十 三 ﹂ に 続 く 部 分 で、 第 十 三 章 で、 ﹃ 法 華 文 句 ﹄ 二 上 ( 大 正 三 四、 一 二 c-二 二 a ・ b 意 引) の 菩 薩 の 徳 を 歎 ず る 十 三 句 の 解 釈 の 仕 方 に つ い で の、 徳 一 の ﹃ 法 華 論 ﹄ そ の 他 の 立 場 よ り す る 非 難 に、 最 澄 が 反 論 を 加 え た も の に 続 き 困 第 十 四 章 で、 更 に 詳 細 に ﹃ 法 華 論 ﹄ ( 大 正 二 六 ・ 一 一 c 一 一 二 a) の 文 を 引 い て、 噺 こ め 十 三 句 の 理 解 に つ い て の 論 争 を 行 つ て い る。 更 に、 第 十 五 章 に お い て は、 文 珠 師 利 菩 薩 が、 弥 勒 菩 薩 や 他 の 大 士 達 に 語 つ た、 世 尊 の 神 通 相 に つ い て の 八 つ の 推 測、 即 ち 八 大 義 に つ い て、 徳 一 が ﹃ 法 華 論 ﹄ ( 大 正 二 六 ・ 二 ご b ・ c) の 解 説 を 引 き 乍 ら、 自 己 の 説 を 述 べ た の に 対 し、 最 澄 が 反 論 を 加 え た も の で あ る。 そ し て、 両 書 に 共 通 す る 次 の 第 十 六 章 に お い て は、 こ の 八 大 義 を め ぐ つ て の 徳 一 ・ 最 澄 の 論 争 で あ り、 同 じ 課 題 に つ い て と は い え、 ﹃ 法 華 論 ﹄ と ﹃ 文 句 ﹄ を め ぐ る 論 争 に 不 自 然 さ は な い と 考 え ら れ る。 (二) 続 い て、 七 善 及 び、 七 善 に 関 係 し て ﹃ 喩 伽 論 ﹄ の 十 徳 に ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ に つ い て ( 田 村) 一 二一

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﹃ 法 華 去 惑 ﹄ に つ い て ( 田 村) 二 一 二 つ い て の 論 争 が あ つ て、 ﹃ 法 華 経 ﹄ 序 品 に つ い て の 論 争 を 終 り、 方 便 品 に 入 つ て、 そ の 科 段 の 立 て 方 に つ い て 論 争 し て い る の が、 こ の 口 の 部 分 ﹁ 駁 二 罐 食 者 所 示 方 便 品 科 段 一 章 第 十 九 ﹂ で あ る。 そ し て、 次 の 方 便 品 の 長 行 の 科 段 に つ い て の 論 争 ( 第 二 十 章) へ と 続 い て い く。 こ う し て 見 る と、 こ の ﹃ 守 護 章 ﹄ の み に あ る 部 分 も、 前 後 の 関 係 か ら、 本 来 あ つ た も の と 考 え て 差 支 え な い で あ ろ う。 (≡) (四) ﹃ 守 護 章 ﹄ の 最 も 大 き な 特 徴 は、 章 別 に 分 け ら れ て い る こ と、 そ し て 多 く の 章 に、 そ れ ぞ れ 序 分 が 付 せ ら れ て い る こ と で あ る。 こ 船 は、 全 巻 を 通 じ て 行 わ れ、 上 巻 が 十 三 章、 中 巻 が 二 十 六 章、 下 巻 が 十 二 章 に 分 た れ て い る。 章 分 け が さ れ て い な い ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ と 読 み く ら べ て み る と、 ﹃ 守 護 章 ﹄ の 方 が 非 常 に 読 み 易 く、 理 解 し 易 く な つ て お り、 後 で 整 理 さ れ た も の で あ ろ う と 思 わ れ る。 塩 入 亮 忠 師 が、 ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ を ﹃ 守 護 章 ﹄ の 草 本 と さ れ る よ う に ( 仏 書 解 説 大 辞 典 第 五 巻 四 九 頁、 第 十 巻 六 四 頁) ﹃ 去 惑 ﹄ が 先 に 出 来 て、 そ れ が 整 理 さ れ た も の が ﹃ 守 護 章 ﹄ で あ ろ う と 考 え ら れ る。 こ う 考 え る と、 上 巻 は 凡 て 章 毎 に 序 分 を 含 む の に 対 し、 中 巻 は 第 十 一 章 に 序 分 を 欠 き、 下 巻 は、 逆 に、 第 二、 第 三、 第 十 二 の 三 章 に 序 を も つ だ け で、 他 の 九 章 に 欠 く と い う 不 整 合 も 説 明 し 得 ら れ、 下 巻 は、 よ り 草 稿 に 近 い 形 を 残 し て い る、 と い え る の で は な い か と 思 わ れ る。 ま た、 こ の 事 は、 中 巻 の ﹁ 助 二 照 如 来 使 所 レ 伝 十 妙 章 第 二 ﹂ の 序 分 に、 ﹁ 弘 仁 九 歳 ﹂ の 年 号 が 入 つ て い る が、 こ れ は、 こ こ の 本 文 を 書 い て い る 時 の 年 号 で は な く て、 一 応 全 部 書 き あ げ ら れ、 後 で 章 分 け し、 序 文 を 付 し た 時 の も の、 即 ち、 ﹃ 守 護 章 ﹄ 完 成 の 年 時 を 示 す も の と み る こ と が 出 来 よ う。 五 以 上、 ま と め て み る と 次 の 事 が い え る で あ ろ う。 (1) ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ は も と も と ﹃ 守 護 国 界 章 ﹄ の 一 部 と し て 書 か れ た も の で あ つ た。 (2) 徳 一 の 著 作 も、 ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ に 引 用 さ れ て い る も の よ り 元 来 大 き な も の で あ つ た ば か り で な く ﹃ 守 護 章 ﹄ に 引 か れ て い る も の よ り も 大 き な も の で あ つ た。 即 ち、 ﹃ 守 護 章 ﹄ に 引 用 さ れ て い る の は、 徳 一 の ﹃ 中 辺 義 鏡 ﹄ の 全 体 で は な い。 (3) ﹃ 法 華 去 惑 ﹄ 的 な 形 の も の が 先 ず 成 立 し、 そ れ に 手 が 加 え ら れ、 或 い は 一 部 削 除 さ れ た り し て、 現 在 の ﹃ 守 護 国 界 章 ﹄ の 形 と な つ た も の と 思 わ れ る。 (4) 全 体 が 完 成 し た の が 弘 仁 九 年 と 思 わ れ る。 (5) 但 し、 ﹃ 叡 山 大 師 伝 ﹄ に 十 巻 と あ る 所 よ り 見 れ ば、 徳 一 は ど ち ら の 形 の も の を 見 た か 等、 尚、 残 さ れ る 疑 問 も 存 在 す る。

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