九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
金属材料の高温変形挙動の予測に関する研究
宮川, 英明
https://doi.org/10.11501/3079423
出版情報:Kyushu University, 1994, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
__...-
第 4 早
固溶強化合金の高温変形挙動の 予測
4.1
緒言
前章で固溶強化合金および固溶強化に分散強化が複合した複合強 化合金の高温変形応力の経路依存性を実験的に明らかにした。 すな わち、 高温変形応力の経路依存性は定性的には合金の種類や温度に よらず同様で、 同じ時間で同じひずみに到達しでも、 変形応力は経 路に依存して異なる。 したがって、 このような変形応力の変形経路 依存性を定量的に再現できる任意の経路に沿った変形応力の予測法 の開発が必要である。
本章では実用合金として重要な固溶強化合金について、 高温変形 の基本原理に基づいた変形応力の予測法およびクリープ曲線の予 測法を提案する。 予測に必要なノマラメータを先ずAl-5at%Mg合金 の定速引張試験の定常状態、の実測値から求め、 次いでこの予測ノマラ
メータの温度および組成依存性について検討する。
この予測法を第2章で 示したいくつかの異なる 変形経路に適用 し、 得られた予測曲線と実測曲線とを比較し、 溶質雰囲気引きずり 機構が働いている条件のもとでは予測曲線が変形応力の実測曲線を 精度よく再現することを示す。
AI-Mg合金のクリープ試験にも本予測法を適用し、 予測曲線が実 測されたクリープ曲線を再現することを示し、 本予測法が広い温度 および組成範囲の合金に対して適用できることを明らかにする。 ま た、 予測法から得られる定常状態におけるひずみ速度の応力指数、
変形応力に占める内部応力の割合および転位密度は、 これまで報告 されているこれらの実測値とほぼ一致することを示す。
4.2 変形挙動の予測法
4.2.1
内部応力の予測法
国溶強化合金の高温変形応力σは転位の長距離相互作用に基づく 内部応力σiと転位の溶質雰囲気引きずり抵抗である有効応力σeの
和で表すことができる(15)。 有効応力成分は転位の運動に対する摩 擦応力であるので、 この応力成分のなす仕事は材料内には蓄積され ず、 熱として散逸するものである。 したがって、 材料内に蓄積され るエネルギーは主にσiと直接関与する転位密度ρの増加によるもの と考えられる。
内部応力の増分dσiは塑性変形による増加(θσi/θε) と回復によ る減少-(θσi/θt)の競合で与えられるので、
UUi 円庁?
dσi==(
云
)dε+(討
)dt == hdε一凶( 4.1)
となる(叫(問。 ここで、(θσi/θε)は回復の効果を含まない加工硬化 率hであり、 一(θσi/θt)は加工硬化の効果を含まない回復速度rで ある。
塑性変形による転位密度の増分は転位密度と転位の移動した距離 に比例すると考えられる。 したがって、 転位が動いた微小距離を dx
とおくと、 転位密度の増加量dρは次式で与えられる。
dρ==ßρdx (4.2)
ただし、 Fは転位の増殖係数である。 らせん転位と溶質原子の相互 作用は弱いので、 同じ応力のもとでは刃状転位に比べ、 らせん転位 の方がはるかに速く運動する。 したがって、 ここで考えている転位 密度は刃状転位密度にほぼ等しい。
一方、 ひずみ増分 dεは dxと
dε=
長
ρ凶 (4.3)の関係にある(Mはテーラ一因子、 p17参照)。 ここで、 係数2は 刃状転位よりも高速で運動するらせん転位の変形への寄与を考慮し
たことによる。 したがって、 式(4.2)と(4.3)から
が得られる。
dρ==ß
竺
2b dε (4.4)転位の増殖係数Fは転位のすべり運動による正負転位の会合によ る対消滅で減少する。 この減少分を-dρーとすると、 - dρーは転位 密度ρに比例し、 平均転位間隔に逆比例し、 転位の運動距離に比例
すると考えられる。 平均転位間隔が1/ゾ戸であること、 および式 ( 4.3)を用いると、
一札=Mdx=a
d
dε (4.5)が得られる。 ただし、 aは比例定数である。
転位対消滅のないときのFの値をßoとおくと、 式(4.4)と(4.5) からdρは
φ=仇- ayIP)
主
dε (4.6)となる。 転位密度が飽和する定常変形状態ではdp==Oであるから、
このときの転位密度をρ叫とおくと、 式(4.6)からa==ßo/ v;;sarと なり、
dρ= ßo
(
1一目 立dε (4.7)
が得られる。
ところで、 固溶強化合金の高温変形では、 転位密度ρと内部応力 σiの聞に
σi==αMGbyIP (4.8)
の関係があることが知られている(54)(55)(56)。 ここで、 αは内部応力 の発現機構に関係した定数(4.3.2.4節(p68)で詳述)、 Gは剛性率 である。 したがって、 純粋な加工硬化率hは式(4.7)と(4.8)より
h ==
生
= δσi生
=Affatーσiθε θρθε .. ....u
σi
となる。 ただし、 psatに対応する内部応力をσ戸とし、
A n v ==
{
αG)2bM3ßI。4σfat
(4.9)
(4.10)
とおいた。
一方、 純粋な回復速度rは
r== θt
竺
1 θσiθρθt 3p ( 4.11)である。 転位密度の消滅速度は捕捉する転位と 捕捉される転位密度 の積で与えられ、 拡散係数 Dに比例するので
30 �
一一== -roDρ4
θt ( 4.12)
となる。 ここでroは比例定数である。 したがって、式(4.8)、(4.11) お よび(4.12)から
r == RoDσ
?
( 4.13)が得られる。 ここで、
Ro == ro ( 4.14)
とした。
一方 、 十分焼きなまされた材料でも僅かながら転位は存在し、安 定で粗大な ネットワークを形成しているものと思われる。 変形初 期には、 上述の変形で増殖した転位の回復の他に、 この粗大ネッ トワークの生長による回復の効果も考えなければならないであろ
うo Os trom( 57)ゃArdell(58)らと同様にネットワークの生長モデルに Hillert(59)の結晶粒生長モデルの考え方を適用すると、ネットワーク 転位のリンク長さをfとすれば、 転位のclimb速度は
θi! ,
�
/ 1 1C) L
== kr D( 一 一 一)
θt fCE f (4.15)
で与えられる。 ここで、kT ==Gb3/(2kT)であり(57)(58)(kはボルツマ ン定数)、fCT は臨界リンク長さで、fCT より 長いリンクは生長し、
短いリンクは縮む。 リンク長さ2を近似的にl/V戸とすると、
θρ θfθη 1 1
瓦=瓦訪== -2krD(ζ- i)( Y/P)3 (4.16)
が得られる。 fcr 4:..fを満たすリンクの生長 が主に回復に寄与するも のと仮定すると 、
三 =-4叩)3 ( 4.17)
が得られる。 ただし、r�==2kr/んとした。式(4.8)、(4.11)および ( 4.17)から、 ネyトワーク転 位 の回復速 度r' は
r' == R�Dσ;exp( -8ε) ( 4.18) で与えられる九 ここで、
同 J Gb (4.19 )
とおいた。式(4.18)でexp( -8ε)の項 はこの項 が変形初期にのみ働 くことを考慮したものであり 、6は塑性ひずみによるこの項の減衰
率を表すO
した がって、式(4.1 )に式(4.9)、(4.13)および(4.18)を代入す ると内部 応 力 の増分dσiは
F σ.sat _σ; ー
dσi= [Ao l σi it- RoDσi3 - R�Dσ;exp( -8é )]dt (4.20)
寧式(4.15)の代わりに、 転位のclimb速度としてâl/ât=k�
D/ lを用いると、
Friedel
(60)が導いたように、式(4.18)は内部応力の2乗ではなく3乗に比例する
式となるO
となり、 上式を変形経路に沿って積分すれば内部応力の変化と式 ( 4.8)により転位密度の変化がわかることになる。
ところで、 一般に制御できる見かけのひずみ速度らは塑性ひずみ 速度εと試験片を含む試験機系の弾性ひずみ速度。/K の和で与えら れる。 ここで、σは変形応力の変化速度、Kは試験機系の弾性変形を 含む、試験片の見かけのヤング率で(61)、しばしばcombinedmachine
stiffnessと呼ばれているものである。 したがって、式 (4.20)は σ�at _σ . 。
dσiニ[Ao�σi
l(εa-IZ)-RoD4一時Dai2exp(
-6e) ]dt (4.21)となる。
変形応力予測に必要なノマラメータはßo(あるいはAo)、σ戸、ro(あ るいは�)、r�(あるいはR'o )、6およびαである。 これら のパラ メータは 1つの定速変形で求められる応力一ひずみ曲線と、これま での回復速度 rや内部応力σiなどの測定結果を用いて決定すること ができ、 具体的な決定法と、roについての理論的な考察については 次節で検討する。 このように して、 内部応力は初期条件が与えられ ると式(4.21 )を変形経路に沿って積分すれば求められ、 次節で示 すように、 内部応力がわかれば有効応力も予測でき、 したがって任 意の変形経路に沿った変形応力の予測が可能となる。
4.2.2 変形応力の予測法
変形が溶質雰囲気引きずり機構で律速される場合の塑性ひずみ速 度は
σ
σ B Eb ρ' 2
・ε
一一
一即(4.22)
で与えられる(54)(55)。 ここで、 σ-σiは転位の溶質雰囲気引きずり に必要な応力つまり有効応力、 Bは刃状転位の易動 度、 係数2 は刃 状転位よりも高速で運動するらせん転位の変形への寄与を考慮した ことによるものである。 したがって、 式(4.22)より変形応力は
で与えられる。
σ=σ;+ 一一一一-pM2
A ・ 2ρbB- (4.23)
式(4.8)、(4.23)および塑性ひずみ速度tと見かけのひずみ速度 らの関係(i==ら-å/K)より、 変形応力は内部応力σiがわかれば
α2M4G2b ん σ=σi+ 街?(む-
�)
によって求められる。
( 4.24)
以上のように、 変形経路が決まれば式(4.21)を積分することに よって内部応力が求められ、 式(4.24)によって変形応力が求めら れる。 この変形応力予測法を模式的に図4.1に示した。 図4.1
(
a)
は 式(4.21)を図示したもので、 ひずみ増加ムεによる加工硬化 hムεから、 時間増分ムt(この聞のひずみ増分ムε)による回復軟 化rムtを差し51し1た量が内部応力の増加量となる。 したがって、 変 形開始時の転位密度(または内部応力)と変形経路が与えられると
ムt後の内部応力σiが求められ、 この過程を逐次繰り返すことでそ の経路に沿った内部応力が計算できる。 図4.1 (b)は 式(4.24)の 計算式を示したもので、 内部応力がわかれば式(4.24)の第2項の 有効応力σeが計算でき、 これらの和である変形応力σが得られる。
hぷ=Aoσ
i匂L
に.11 (Ëa-与
1" )11 t(a)
fohω
ωφ」日
ω
rl1t = {RoDOi3+R'oDOi2eXp(-õε) } l1t
一CC」φHC一
ε+f1ε ε
Strain,
ε。=01+09 Aσi=hl1ε- r l1t
α2M4G2b ・ 0 9= っ(εa-';";)
28σi' . - K Flow stress,。
ハ Internal stress,σi
,� \ _--ーーーーーーー-ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
I \ .,..'"
" \〆f
t ハ
{ / \
./ \‘ Effective stress, 09
/ - ---ー圃ー--.
(b)
。。 R一。
。hωωφ」vmw
Strain,
ε図4.1 式(4.21) による内部応力σiの変化(a)( (a)図の高応力側 の曲線は回復がない場合のσi-ε線図)、 および式( 4.24)による有 効応力σeおよび変形応力σの予測計算法(b)の概念図。
4.2.3 クリープ挙動の予測法
前節では 変形経路を与えて変形応力 を予測する方法について述べ たが、 これらの式を変形すると各負荷応力に対するクリープ曲線も
予測できる。
応力一定 のクリープ変形 では、式(4.21)でå==Oとすれば よい。
このとき、 ら=εとなり、tは式(4.24)より、 その時点でのσiより 求められる。 一方、 クリープひずみの増分は dε==idtより
で求められる。
dé == _
ε= ョ2B σ; ( σ-σi)dt
α2M4G2 b ( 4.25)
負荷応力σが与えられているので、 刻々の σi が求められれば式 ( 4.21)と(4.25)から塑性ひずみの 時間変化が計算でき、式(4.25)を
積分することに よって、 クリープ曲線を求めることができる。
4.3
予測法の検討
固溶強化合金の変形挙動予測法では、 パラメータとして式(4.6) で導入した角、式(4.9)のσ戸、式(4.12)、(4.17)および式(4.18) で導入したfO、見、6および式(4.8)のαが含まれている。 各ノマラ メータの決定法と変形応力 予測結果の検討を次の順序で示す。 はじ めに、 Al-5at%Mg合金の573Kにおける定速引張試験の実測デー
タをもとに 予測ノマラメータを決め、 与えた変形経路に沿って実測し た曲線が再現できるか否かについて 検討する。 次に、 異なる温度お
よび組成をもっAI-Mg合金に本予測法を適用し、 予測ノマラメータ
の 組成 依存性 および温度依存性について検討し、広い温度および組 成範囲に適用できるよう 予測ノマラメータの改良を行い、任意の経路 に沿った引張試験およびクリープ曲線がどの程度の精度で予測可能 であるかを検討する。 さらに、定常状態 におけるひずみ速度の応力
指数、変形応力に占める内部応力の割合および変形応力と転位密度 について、予測結果と実測結果の比較を行 う。
4.3.1 AI-5at%恥fg合金における予測パラ メ ー タの決
定法と予測結果の検討
573KにおけるAl-5at%Mg固溶強化合金の定速引張試験の定常 状態で得られた測定値を用いて予測ノマラメータの値を求めた。 さら に、得られたノマラメータを用いて同合金の 変形応力を予測 し、実測
応力一ひずみ曲線を再現できるか否かを検討した。ここで は、その 方法と 検討結果について述べる。
573Kの Al-5at%Mg合金を対象としており、温度、組成ともに一 定であるので、ßo、ro、r;の代わりに式(4.21) に陽に現われる定
数Ao、Ro、R'o を予測ノマラメータとした 。 Ao、�、R'oとßo、ro、
4の関係はそれぞれ式(4.10) 、(4.14) および式(4.19)で与えられ ている。
4.3.1.1 パラメータα
パラメータαは式(4.24) より 求められる。 こ の式は式(4.8)と (4.23) から 転位密度ρを消去した もので、ρがわからなくても定常 状態(ら==Ë )のσ、σiとtによってαを決定できる。573Kにおける
Al-5at%Mg合金の定常状態での早川ら(21)の測定値(i==4.6X 10-5S-1 でσi==25 .1 MPa、σ==36.6MPa)を式(4.24)に代入 すると、α==0.38 となる。 なお、 剛性率Gは 表2 .2 に示した値、転位の易動度B には中島と吉永(62)の理論値を用いた。 一方、 早川ら(21)は同じAl- 5at%Mg 合金の定常状態での内部応力σiと透過電子顕微鏡法で測
定した転位密度ρを式(4. 8)に代入し、α==0.48を得ている。 この α==0.48と上述した彼らの測定値(戸4.6X 10-5S-1で、σi==25.1MPa)を 式(4.24)に代入し変形応力σ を計算すると、σ==43 .4MPaとなる。
この値は同じ変形条件で彼ら が測定したσ==36.6MPaよりやや大き い。 このことは式(4.24)の定数M、G、bおよびBが正しいとす ると、 僅かではあるがρ、σiあるいはσのいずれかに測定誤差が含 まれていることが考えられる。 早川ら(21)は透過電子顕微鏡法によ る転位密度の測定において、それまで考慮されていなかった試料の 膜厚効果や回折条件に基づく転位のオフコントラストの効果も考慮 して、高い精度で転位密度を測定した。 しかし、透過電子顕微鏡法 によるρの測定には高温組織の凍結を含む試料作製の過程を経なけ らばならず、σiあるいはσに比べその測定精度は低くなる(63)。 し たがって、式(4.24)より求めたα==0.38の方が信頼性は高いであろ
う。 そこで、αは0.38とする。
4.3.1.2 パラメータAoおよびσft
大塚ら(36)はAl-5at%Mg合金について、広い温度およびひずみ速 度範囲で変形応力一ひずみ曲線を実測している。 その結果による と、 高温では回復の効果を受けて、変形応力はひずみ速度に依存し
ているが、 室温(297K)では、 回復がほとんど関与しないため、 変 形応力の最大値 (温度 が低いため定常状態は見られない)はひずみ 速度 に依存せずほぼ一定で約310MPaである。 そこで回復がない場 合の飽和内部応力 をσ戸==300MPaとした。
σjat=300MPa、 および吉永ら(64 )の573KにおけるAl-5.7at%Mg 合金の純粋な加工硬化率hの測定結果( σi /E==4.2x10 -4 のとき h/E二1.0 )を参考にして、式(4.9)よりAo ==5000MPaとした。
4.3.1.3 パラメータR。
式(4.21)において 、 ひずみの大 き い定常変形状態ではR'oの項 はOとなり、 変形応力 σも内部応力σiも時聞に対して変化しないの で、 δ==0 、 cTi ==0 となる。 したがって、
Rn == Ao(σfatーσi)tV
Dσf } (4.26)
となる。 早川ら(21)のAl-5at%Mg合金の573Kにおける内部応力 と 定常ひずみ速度の前述の測定値を式(4.26)に代入すると、
Ro == Ao(σiat-25.1)・1.04 X 106 m-2MPa-2
となり、RはAoとσfatが与えられると決定される。 ただし、上式の Aoとσftの数値は単位を MPaとしたときの値である。 また、アルミ
ニウム中のマグネシウム原子の相互拡散係数はD ==Doexp( -Q/RT) においてDo==0.34x 10 -4m2 /s、Q==126kJ /mol(附として求めた。σfat
==300MPaおよびAo ==5000MPaによりRo==1.4x1012m-2MPa-2 となる。
4.3.1.4 パラメータR'oと6
R'oと6は実験で得られアこ経路1(定ひずみ速度 )の高温降伏現象を 再現する ように、2重回帰法で求めた。得られた値はR' 0==2.38 X 1014
m-2 MPa-1と8 ==200であるo ただし、計算は 内部応力の初期値と して、 早川ら(21) がAI-Mg合金の完全焼き なまし材で求めた転位密 度 3x 1010m-2を参考にして、 初期転位密度1x 1010m-2を式(4.8 ) に代入して得られた 0.7MPaを用いた。
このように変形応力の予測に必要なノマラメータはただ1つの定速 引張試験における応力一ひずみ曲線と内部応力および純粋な加工硬 化率の定常変形状態における測 定値ですべて決定でき、 これらを用 いて任意の変形経路について応力の予測が可能となる。
4.3.1.5応力一ひずみ実測曲線との比較
以上のように、 図2.6 の経路1の実験 値のみ を用いて決定した 各パラメータを用いて予測した経路2と3の変形応力の変化を 図 4.2 (a)に、 より複雑な変形経路である経路 4と5に対する結果を
図4.2 (b)に示すo だ だし、 計算に 用いた易動度 Bは中島と吉永 (62 )の理論値 (AI-5at%Mg合金の場合、温度 573KでB==4.88X 10-15
m.s-1 Pa-1)であり、 Gには 表2.2 に示した値を用いた。
図4.2 (a)と(b)では実験結果を実線で、 予測結果を破線で示し ている。 予測曲線は、経路 2と4の変形初期を除き、実測曲線とよ
く一致している。
前述したように以上の計算では、 内部応力の発現機構に関係した
(0)
③J
① 一-
-- Calculated Measuredα=0.38
_
Al- 50tO/oMg" \. 573 K
/(二\\②
100 80 60 40 20
。n比芝~'o
.ωωω」一←ω
三 OE
0
100 Al-50tO/oMg (b)
/\ 573 K
80 60 40 20
。仏芝~hu 情的ωω」ザω
三 OE
0.15 0.10
Ea
stroi n,
0.05 Apporent
。
。
図4.2 図2.6に示した変形経路1、 2、 3、 4および5について α=0.38として予測したAl-5at%Mg固溶強化合金の変形応力(破線)
と実視IJ曲線(実線)(宮川ら(46))。
パラメータαは転位密度に関係しない定数0.38を用い ている。しか し、以下に述べるように、αは転位密度にわずかながら依存するも のと考えられる。
早川ら(21)はAI-Mg合金の高温変形組織に多くの吸引型ジヤンク
ションが観察され、実測した内部応力がこれまでに報告され ている 吸引型ジヤンクションを破壊するのに必要な応力の理論値とほぼ一 致することを示し ている。早川らの導いた内部応力と転位密度の関 係は、Carringtonら(66)およびBairdと Ga le(67)の理論に基づいた もの で、転位の線 張力W に近似度の高いW==CiGb2/(4汁).ln(r2/r1 ) を 用いると↑、 σiは次式で与えられる(21)。
ドペ!
?
bJ in(t)
Ci == 1/( 1
-
v)
Ci == 1 α, == 0.33 α, == 0.26
刃状転位 らせん転位
Carrington et al . (66) Baird and Gale(67)
( 4.27)
ここで、ベポアyソン比、r2 (勾1/.JP ) は転位の応力場のouter cut-o狂半径、r1 は inner cu t-off半径 である。式(4.27) におけるα1
はα と a'C; _ , 1
α=
ず
ln(百万
) (4.28)の関係が ある。 α'Ci/4π=αoは経路1 の定常状態におけるσ、σiお よびtの値を式(4.22)に代入すると転位密度ρ==1 .6x 1 013m-2 が得 られるが、この転位密度と前述のα== 0.38を式(4.28)に代入すると
α0==α'Ci/41r二0.056となる。ただし、r1 ==b と した。
↑線張力Wとして、Carringtonら(66)はW二Gb2を、BairdとGale(67)は W=Gb2j2を用いているO
Carringtonら の理論では刃状転位 についてαoは0.040 t、 Baird とGaleの理論では0 .0313と なる。 一方、 早川ら(21)が理論的に考察 した吸引型ジヤンクションの破壊応力の 中で最大値を与え る 転位反 応ではαoは0.053となる。 この ように、 本研究で求め たα==0.38に 対応するαoは 吸引型ジ ヤンクションの破壊応力の最大値 にほぼ等
し い。
その他のパラメータは変えず に、 αのみ転位密度 ρの関数と し て 計算した(ただし 、 こ のαの改良 に連動し て2重回帰法で求めら れ るパラメータR'oは 1 . 4 8X 1014 m-2MPa-1と小さくなる)変形応力 は 図4.3(a)と( b)のように なる。 経路2と4の変形初期を除い て 、 いずれもαの転位密度依存性を無視して得られた結果 図4.2 ( a)と ( b)より実験結果 との一致がやや良くなって いる。
パラメータαの改良を行って も経路2と4の変形初期における予 測曲線と実測曲線の不一致は解消し なし\ 0 その原因は以下のように
考えられる。
各経路での平均転位速度v を 、i==(2/M)ρbvの関係に予測式から 求めたρ を用いて評価すると 図4.4 が得られる。 図4.3と比較 す る と明らかなように、 不一致は 転位速度が約6x 10-8m.s-1 を越 えたと ころで生じて いる。 この速度は 、 図4. 5 に示した中島と吉 永(62)の計算結果によれば、 転位速度Vと転位の溶質雰囲気引きず り抵抗Td唱が直線関係からずれ始め る速度にほぼ対応してい る。 前
t Carringtonらは、2本の転儲J誌が互いに交わる確率による平均値としてこの 値を求め、すべり面は特に考慮していない。
�Bむrdらは、すべり面 を{111}面 に限定し、 ジヤンクションの分布を 考慮し てこの値を求めている。
柄本論文では引張応力をσで、 分解せん断応力をァで表わす。
100 I
AI-5atOloMg (a)
,, 、、 573 K
、
、
、、
③
__b 60 -p.,..,. -":: _-_ ... _-:
..
�
(/) t.... 40①
判ω
トd一- Measured
0 三20 一一Calculated
LL cx.=O.056・ln(1/(bv'戸))
。
100 Al-5at。んMg
g
801
573 K (b)芝--
b - 60
示Uω
ω 】40
言。 20
LL
。
。 0.05 0.10 0.15
Apparent strain, ta
図4.3 α=O.056.1n( 1 / (bfo))を用いて予測した曲線 (破線)と実 視IJ曲線(実線)の比較。 Al-5at%Mg固溶強化合金、573K。 変形経路
lrv5は図2.6参照(宮)11ら(46))。
ハU QU FO fu『
←ーωε∞10←ミ
『ご一U05〉
CO
AI-5atOloMg 573 K
α=0.056・In(l/(b伊))
B =4.88xl0-9 ms-1 MPa-1
⑤\
WOυo-ω一。 qL
\〆@
。
。 0
.
05Apparent strain, Ea
0.10 0.15
図4.4 Al-5at%Mg固溶強化合金について求めた変形経路1、 2、
3、 4および5(図2.6参照)に対する刃状転位運動速度Vの変化。
573K(宮川ら(州)。
o_ 0
102 A 1- 5atOloMg 573 K
ロ
ハ 0 0..-、
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芝 唱
も 10 '
トJ
I
ロ 。
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ω ω ω t....
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ω ハ o Nakashima et al
。 10V
C ロ 一一B=4.88x10申9 ms-1 MPa-1
B =---.!!・41x1 0-9
。
01 01 0 t....
0
1-1.04x10-2てd
10-1
10-10 10-9 10-8 10-7 10-6 10-5 10-4 10-3 Di510cat ion velocity, v 1m・5-1
図4.5 Al-5at%Mg固溶強化合金の573Kにおける刃状転位の運 動速度vと溶質雰囲気引きずり抵抗九の関係(中島と吉永(20)の理
論計算値)。
述の予測 計 算 ではこの直線領域で与えられる 易動度Bを用いてお り、 直線 関係からのずれを考慮していない。
図4.4に示した転位速度の範囲では、 図4.5の点線で示したよ うに、 vとTdの 関係は
-.-.. 4.41 X 10-9
V == ..öT-dl二 l -1.04×10-27dTd 4.29
( )
で精度よく近似できる11。 ただし、 Vの単位はm.s-1、 Tdの単位は MPaである。 直線からのずれをこの 関係を用いて考慮すると、 図 4.6の結果が得られる。 ここでは変形初期の不一致領域のみを拡大 して示しているが、 変形後期は 図4.3と同じである。 図4.3と 比較すると、 予測曲線と実測曲線の不一致は少し改善されてはいる が、 高速域の不一致は依然と して大きく、 直線 関係からのずれの効 果では説明できないことがわかる。
高速域での不一致は 転位の雰囲気からの離脱による可能性が高 い。 すなわち、 内部応力の大きさは場所によって異なるので、 転位 に働く有効せん断応力も分布を持っている。 そのため、 平均転位速 度が大きくなると、 転位の溶質雰囲気からの離脱が、 大きな有効せ ん断応力を受けている一部の 転位で起こり始め、 平均転位速度の 増加とともに、 その割合も次第に増加 していくものと考えられる。
実際、 この離脱を考慮していない予測曲線の 方 が実測曲線より高く なっている。 離脱が起こる変形条件につては第5章でより詳しく検
討する。
"Bは転位速度vの関数としてB=4.41x lO-9+1.04x lO-2vとすべきである が、 予測計算にはvよりTdの関数とした方が取扱い易し"0
100
80ト
さ60
bU ..
ω3
GL. J
40
剖Uト.a3
3
20LL
。
11
。
Path 2
11
Path4
irトI・,,・一、\、句.\』~司.�、ー、
1
一-Measured Calculated
一- B:4.88x10-9 4.41x 10圃9
…B= 1-1.04x10-21:d
m s-lMPa-1
0.02 0.04 0 0.02
Apparent strain, ta
0.04
図4.6 刃状転位の易動度Bの転位速度依存性を考慮したときの 経路2と経路4 (図2,6参照)の変形初期のσーら予測曲線(点線)、
Bを一定としたときの予測曲線(破線)および実測曲線(実線)と の比較(宮川ら(46))。
4.3.2 予測パラメータの温度依存性と濃度依存性
前節では組成 、 温度 ともに一種類に限定し、AI-5at%Mg合金の 573Kにおける変形応力の予測について検討した。 本節では、Al- 3at%Mg合金について 573Kから723Kの4つの異なる温度で 行わ
れた中島ら(68)の結果について、 本予測法の適用可能性を調べ、 各 パラメータの温度および濃度依存性について検討する。
前節では予測ノマラメータとしてAo、 RoおよびR'oを用いたが、
温度や組成依存性を含め た広範囲の条件での予測を行う場合には物 理的意味のより明確な角、roおよび4をパラメータとして用いる
ほうがよいと考えられる。
温度依存性を検討するためには拡散係数D、 剛性率Gおよび刃 状転位の易動度Bの温度依存性を考慮する必要がある。 計算に用 いたD(69)を 表4.1に示すo また、 Gは 表2.2の値を用い、B
表4.1 温度 573Krv723Kにおけるアルミニウム中のマグネシウム 原子の相互拡散係数。
T/K D/m2.s-1 573 1.11x10-16 623 9.26 X 10-16 673 5.65 X 10-15 723 2.68 X 10-14
には合金濃度と温度の関数として 中島と吉永(62)が理論的に求めた 値を用いた。
図4.7の実線は既報(68)のAl-3at%Mg合金の実測応力一ひずみ 曲線である。 この応力一ひずみ曲線の温度依存性が前 節 で求めた 予測ノマラ メータを用いて定量的に再現されるか否かを以下に検討 するo 図 4.7 の 各図中の破線は Al-5at%Mg 合金の573Kにおけ る経路1(定ひずみ速度変形)の実測曲線から決 定 した パ ラメー タの 値判を用い、 表2.2および表4.1に示した剛性率と拡散係数の温 度依存性および転位の易動度の組成依存性と温度依存性(62)を考慮
して、 各温度についてAl-3at%Mg合金の変形応力を予測した結果 である。 623K ( 図4.7(b) )では、 定常変形状態における予測応力 と実測応力はかなり良く一致しているが、 他の温度では、 特に高ひ ずみ速度域で予測応力は実測応力よりもかなり 大きくなっている。
変形応力の不一致の割合は高温ほど大きくなる傾向が認められる。
一般に、 溶質雰囲気引きずり機構による固溶強化が大きい場合に は、 転位密度の低い方が変形応力は大きくなる。 したがって、623I(
から723Kへ温度が高 くなるにつれて予測した変形応力が実測した 変形応力よりも大きくなっているのは、 転位密度の過小評価による ものであろう。 この過小評価は転位の増殖率グoが温度に依存する ことを示唆しているo また、 図4.7(b)、(c)および(d) では定常 変形状態に至るまでの遷移段階において実測曲線では高 温降伏後、
件前節で 決定した各パラメータはRo =1.4x 1012m-2MPa-2、
R'o =2.4x1014m-2MPa-1、 Ao =5000MPa 、 σfat =300M
h
、 Ó =200であり、 これ;に対応するßo、roおよ び、 机それぞれβo=8.3x106m-1、 ro = 150 、
r� =2.2 x 109m 1で、ある。
σ〉むよ〉
a 100
IA
ト30tO/oMg Éaヱ2・9x10-4ç1 (0) 501
Aト.JotO/oMg�
40�
673K 一一- Measured仏80芝
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LL 。
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丘。60 芝句、‘
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203O E
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573K Éa='.2xl0-4 S-1
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t巴3.0x 10-5 S-1
' 、
、
0.05 0.10
A l-30tO/oMg 4 _-1
(b)
623K ta=2.8x1 0-'- s- Éa=1・2x1 0-4 S-1 Éa=3.0 x1 0-5 S-1
ーーーーーーーーーーー ーーー
0.05 0.10
Apporent stroin, Ea
芝-
b
30tIl
�
20d-U4 3 0 主 10
LL 。
。 E。L 3O 芝-
b
20凶tIl qLJ .
ー--- Ca(cu(ated Ea=2・8 x 1 0-4s-1
jd
k12xIW Éa::3.0x10-5S-10.05 0.10
Al-30tO/oMg
7 23K Eα:2.9xl0・4ç1
d
taz11X10451 Éa:3.1 x 1 0-5 ç1窃10
�
- ーーー±ー-�-�r/"--ー----ーーーーーーーーー-o 主
LL 。
。 0.05 0.10
Apporent strain, Ea
図4.7α=0.056.1n(
1/
(bv'P))、ßo=8.3x 106 m-1、fo=150、牛2.2x109 m-1、6=200として式( 4.21) と(4.24)により得られた定速引張試 験による変形応力予測曲線 (破線)と実測曲線(68)(実線)(宮川ら(49))。(
c)(d)
僅かながら応力が減少しているのに対 して、 予測曲線では高温降伏 後 、 僅かながら応力が増加している。
このように、 前節で決定した573Kにおけるパラメータに拡散係 数、 剛性率および転位の易動度の 温度 依存性を考慮しただけでは実 測曲線の予測に不十分であり、予測パラメータ角、ro、r�および6の
いずれかある い はすべてが温度に依存しているものと 考えられる。
前節では、 σi、tに関する早川ら(21)の 実測値と吉永(64)の純粋な 加工硬化率hおよび大塚ら(36)の室温におけるσーε線図の報告値から
Aoとσfatを推定して、 Ro ==1.4x 1012 m-2MPa-2を導いた。 すなわ ち、 ßo とσf討を決めた後でro を決めたことになる( 式(4.10)と ( 4.14)参照)。 しかし 、 温度依存性と組成依存性の検討には純粋 な加 工硬化率hより純粋 な回復速度rを基本にする方が扱い易い。 そこ で、最初にroを決めて、 次にßoを決定する。以下にその手順を示す。
4.3.2.1 roの評価
はじめに、 式(4.12)で導入した roについて理論的な考察を行う。
吉永ら(63)が正負の刃状転位の上昇速度に関するHirthとLotheの 理論(70)より導いた式で、 正負転位 対の すべり面の間隔yと平均転 位間隔fを等し いと近似すると 、上昇速度Vclは次式 で与えられる。
1.1GDO Vcl ==
(1 - v)kTfln(fjb) ( 4.30) ここで、 Qは原子容、νはポアッソン比、 kT は通常の意味である。
正負の刃状転位が上昇運動 すると転位間隔は減少するので、 その
速度-θ�/θtは
c V
一一
M一仇(4.31 )
となるものと考えられる。 さらに、ρ (==1 /�2)の密度の転位が上昇 運動で対消滅するのに必要な時間らは、式(4.30)と(4.31)より
t a == _
(b
d� ==i
1 - v)kTrl
III / � ー -J,
Vd == '1.1GD�-Jb
�ln(�
)d�(1 -v)kT n 21 / �
� ';.2G
D
-�
-f�l n( b) (4.32)となり、 転位密度の減少速度-θρ/θtは ゐ一仇 ρ 2.2GDD
(1 -v )kT �41n( � /b) ta
となる。 したがって、 転位の対消滅による回復速度rは、変形初期 にのみ効く見を含む項を別にすれば、
3 θσi
dσiθρf ==
�Dσi
i二一一一=一一一
θtdρθt 1.1 DD
(l-v) α2M2Gb2 kTln( �/b)σ
?
となる。 したがって、式(4.13)と(4.14)からfOは 2.2GD
f 0 == -( 1-v -) k-T-ln- ( �- /-b )
となり、GとTを通して温度に依存し、fを通して転位密度に依存 ( 4.33)
( 4.34)
するが、 組成には依存し ない。
前節で573KにおけるRoは1.4x1012m-2MPa-2で、あることを示 したが、fOは式(4.14)によりRoとαが知られれば求められる。
αの転位密度依存性については4.3.1項で論じたが、 AI-Mg固溶強
化合金の変形 が溶質雰囲気引きずり機構で律速さ れてい るときの 典型的な転 位密度 の値として1 x 1013m-2 を用い、 α0==0.056およ びIl二b(==2.86 x 10-10m)として、 式( 4.28)よりαを求めと0.39 となる o M==3.06、 573KにおけるGとして21GPa、 および上述
のRoから式( 4.1 4)を用いて、IOを求めると150となる。 こ れ に 対 して、 式( 4.34)によりIOを評価す ると、 。==a3/4(aは格子定数
==J2b)、f==l/v'P、ν==0.34(43)よりその値は21 となる。 両評価法で 約7倍の相違が あ る が 、 近似の粗さを考 慮すれば什、 両者は近いと 見ること ができょうo 一方、 吉永(64) がAl-5. 7at%Mg合金の 573K における定常変形で測定した回復速度(I==1 . 46MPa.s-1 )と内部応 力(σi ==23. 6MPa)の値よりI==IODσ:/(2α2M2G2b2)の関係を用いて IOを計算すると、IO==100 となる。 こ の値は 式( 4.34)より 得られ る 値21 と前節で推定した Roから得た 値150 の中間の値 になってい る。 また、IO ==100 に対 応する式( 4.34)の右辺中の係数2 .2 は10
と なる。
式( 4.34)に示したように、IOは溶質濃度 に依存しない値で、Gに 比例 し、 Tに逆比例する。 そこで、573I(における100を基準にし て、5 73K以外の温度でのIOを式( 4.34)によって評価した。 すな
わち、 同式 右辺の係数2 .2 を10 とし、 表2.2 に示したGの温度 依存性を考慮 してIOを求めた。 得られたIOを 表 4.2 に示す。
4.3.2.2 ßoの評価
↑↑式(4.29)で示した転位の上昇速度は、一対の正負の刃状転位のみの相互作用 を考慮し導かれた式であるが、実際はもっと複雑な応力場と相互作用しているも のと考えられる。
表4.2 AI-Mg固溶強化合金の温度573Krv723K における変形応 力予測ノマラメータIO、F。、見および6。
T/K r。 ßo/m-l 6
573 100 9.2 X 106 3.1 X 109 200 623 87.6 2.8 X 106 8.2 X 108 350 673 78.7 9.7x105 2.5 X 108 500 723 70.2 4.0 X 105 9.0x 107 600
式(4.21)において、 定常変形状態ではδ==0、 。i==Oであり、4を 含む項は大きなひずみでは無視できる(46)ので、
Fo == IOα4M5G4b3σfatーσiζ2Dσft σf 1 ( 4.35)
となる。 そこで、 中島ら(68)のAl-3at%Mg合金の573Krv723Kにお けるひずみ速度らと内部応力σiの実測値れを用いて、 式(4.35)に よ っ て ßoを求 めたo ただし、σ?tには Al-5at%Mg 合 金 (46)と 同 様 300MPaを用いた。 得られたßoは 表4.2 に示すように温度に依 存し、 温度が高いほど小さい。
4.3.2.3 r�と6の評価
U573K;九=1.1X 10-4s-1、 σi=30.3MPa.
623K;九二2.7x 10-4s-1、 σi=16.6MPa.
673K;ら=2.6X 10-4s一\σi=8.0MPa.
723K;ら=3.0x 10-5s-1、 σi=2.5MPa.
f�と6は4.3.1節と同様に各温度の定速引張試験での高温降伏現 象を再現するように2重回帰法で決めた。 Al-3at%Mg合金につい て得られた%と6を 表4.2 に示したが、 両者とも温度に依存し ている。
式(
4.17) で導入した4はf� ==2kr jん==Gb3 j(kTfcr)で与えら れ、G、Tおよびfcrによって温度に依存する。fcrの温度依存性は 次のように考えられる。 活動化可能な転位リンクfの最小長さは、変形応力が低いほど長くなる。 また、高温になるほど変形応力は低
くくなるので、より長いリンクが存在し、ん==f2/1の関係(57)で与 えられるfcrは高温ほど大きくなる。 ここで、Fと2はそれぞれP およびfの平均値である。見の温度依存性がGとT のみによる依 存性より大きいのは、 上述したfcrの温度依存性を示唆しているも のと思われる。見の濃度依存はfcrによるが、変形応力の濃度依存 性は温度依存性に比べ小さいので、r;はあまり濃度に依存しないと 考えてよい。
573Kの6は200で、前節の同温度におけるAl-5at%Mg合金で得 た値と一致している。 したがって、6は温度には依存するが、合金 組成にはあまり依存しなし\ノマラメータであると考えられる。 6が大 きいことは変形前の転位組織の効果が変形によって消失し易いこと を意味するが、高温ほど回復速度が大きくなるので変形前の組織の 効果が短時間でなくなることを示唆している。
4.3.2.4 αの評価
さらに、Al-3at%Mg合金の定常変形応力を再現するαo
(式(
4.27)参照)は0.053 (ただし、I1を bとした )となる。 こ の値は前節の Al-5at%Mg、573Kで得られた0.056とほぼ等しく、 吸引型ジヤン クションの破壊応力の最大値を与える値0.053(21)とほぼ一致して いる。
Al- 3at%MgおよびAl-5at%Mg合金の2つの測定値から得られた αoの値(したがってαの値も )はほぼ同じになったが、 より信頼性 の高い値を得るため、 他のマグネシウム濃度や合金も含めた多数の 測定値(データ数58個)を用いて、 αの検討をする0
4.3.1.5節で、αについて検討した結果、Al-5at%Mg合金の573K の変形では、 転位の線張力に転位密度依存を考慮した方が、 αを 定数とした場合 より変形応力の予測精度がやや良くなることを示し た。 この結論が一般に成り立っか否かを明らかにするため、 多くの 測定データについて、αに転位密度依存性を考慮した場合と、 考慮 しない場合とで、 いずれがより高精度で実測値を再現できるかを以
下に検討する。
図4.8 (a)と(b)はこれまでに報告(68)(21)(71)(72)(73)(附されている 固溶強化合金の内部応力σiと転位密度ρの関係をまとめて示したも のである。だだし、内部応力は弾性率の温度依存性の効果を除くため
剛性率 G で規格化している。 図4.8(a)では、σi==αoMGb伊n(l/ bfo) の関係の当否を確かめるために、横軸にMbゾ戸ln(l/(bゾ戸))を用い、
図(b)では、 αの転位密度依存性を無視しでも良いかどうかを確か めるために、 横軸にMbゾ戸を用いている。 両者を比較すると明ら かなように、 いずれも測定点は近似直線のまわりに分布していて、
ばらつきの程度もほぼ同じである。 このことは、 試験片ごとの測
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図4.8 剛性率で規格化した内部応力(σi/G)と転位密度(ρ)の関 係・(a)横軸をMbyIP.ln(l/byIP)とした場合と、(b)刷版MbyIP とした場合(宮川ら(49))。
定値のばらつきの方が、 αのρ依存性を考慮しないことによる効果 より大きいことを意味する。 したがって、 本予測法を汎用化する際 には αは簡便に定数として取り扱ってもよいと結論できる。 図4.8 (b)の測定値から最小二乗法で勾配を求めるとαは0.36となる(こ
の値は 4.3.1.1節で得た0.38に近い)。 したがって、 温度、 組成に よらず固溶強化合金ではα==0.36を用いてよい。
4.3.2.5 実測曲線との比較
以上のようにして決定した角、ro、弘、 6および、αの5 つのパラ メータを用いて予測した応力一ひずみ曲線を図4.9に破線で示す。
ただし、 変形開始時の内部応力は十分焼きなました合金の転位密度 ρ==1 X 1010 m-2 (21),こ対応する0.7MPa とした。
実線で示した実測曲線と比較すると、573Kの高ひずみ速度域と 変形初期を除き、 予測曲線は実測曲線を良く再現していることがわ かる。573Kの高ひずみ速度域で予測曲線と実測曲線が一致しなかっ たのは、 4.3.1節で既に論じたように、 本予測法で前提としている 溶質雰囲気引きずり機構が働かなくなったためと考えられるが、 こ の解釈の正当性を以下に検討する。
図4.10 の各図は本予測法で求めた 図4.9の各図に対応する転 位速度vのひずみに対する変化を示したもので、図中の斜線領域は 中島と吉永(20)と同様の方法で求めた溶質雰囲気引きずり抵抗と転 位速度との関係において、 両者の聞に比例関係が成立しなくなる転 位速度領域を示したものである。 図4.9(a)で予測曲線と実測曲線 の不一致が大きいところでは、 転位速度が斜線領域に入っており、
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LL 。
0.05 0.10
。0.05
Apparent stra i n, Ea Apparent strain, ゐ
図4.9 α=0.36および表4.2に示したF。、fO、見、6を用いて式 ( 4.21)と(4.24) ,こより得られた定速引張試験による変形応力予測
曲線(破線)と実測曲線(68)(実線)(宮川ら(49))。
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0.05 0.10
Apparent strain,εG Apparent strain,
Ea図4.10 図4.9に示した変形応力予測線曲線に対応する刃状転位 運動速度vの変化(宮川ら(
49))。
本 予測 法 の 適 用 限 界 を越えた領域であること申がわかる。
4.3.3
ßo、同および6の 温 度 依 存 性に関する検討
前述のよう に、 固溶強化合金の高温変形応力の予測には命、ro、
見および6の温度依存性を考慮する必要がある。roの温度依存性に ついて はすでに理論的に 検 討 したので、 その他のパラメータに温度 依存性が生じる理由 について以下に述べる。
4.3.3.1
ßoの温度依存性
図4.11はこれまでの引張およびクリープ試験で求められた定常 変形状態での報告値(55)(72)(68)から上述の方法で求めた転位の増殖率
ßoの温度依存性を示したものである。 データのばらつきは大きい が、ßoは温度の上昇とともに小さくなる傾向が明瞭に認められる。
一方、 マグネシウム濃度が2.0rv5.7at%の範囲で同様なデータのば らつきを示し て いることから、ßoはほとんど濃度には依存しない ことがわかる。
式(
4.6)で導入したßoは転位の対消滅が起こらないときの増殖 率であるので、 本来、温度に 依存するとは考えられなし、。しかし、本合金のようなfcc系では、高温では{111}面以外のパイエルス障 壁の高い{OOl}面でも転位のすべり運動が可能となることから(74)、
すなわち、転位の運動の自由度が増えることから、高温では転位の 対消滅が低温よりも高頻度で起こり、転位の増殖率が低下するであ
ろう。 これ がßoに温度依存 性が生じた原因と思われる。
串本予測法の適用限界に関しては次の5章で詳しく検討する
Al-Mg 108
い24仰(謝
Q =75.7 kJ/mol
ロ O A
Al-2.0Mg Al-3.0Mg Al-5.7Mg 107
106
寸 ε ~ ohk
ロ
18 20
-1 .4,,-4 ..,-1 ア 110-&+ K 16
temperature,
aF圃 ,....
1Gc o r『 nド Fiv
eDH 勺L aEE-- 只.v nV -E--
図4.11予測パラメータßoの温度依存性(宮川ら(49))。
図4.11に示したように1nßoはl/T に対しでほぼ直線関係にある ので、ßoは近似的に
(75.7kJ/mo1\
ßo == 1.24 叫
l , � ., �� �U�� )
(m-1) ( 4.36)と 表すことができる。 ここで、 RTは通常の意味である。 この実験 式を導くことのできる定量的理論の確立は今後の研究課題である。
4.3.3.2 r�の温度依存性
図4.12 はAl-3at%Mg合金について求めた見 の温度依存性を 示したも のである。 図より1n(見)はl/Tに対して良い直線関係に あり、
( 4.37)
で表すことができる。r�は初期転位組織の生長 に関するr'の比例係 数でr' (cxR�D)の温度依存性を拡散係数の温度依存性に等し いとし て取り扱ってきた。 したがって、見(αR'o、 式( 4.19))の温度依存性 から 、 初期 に存在する転位ネットワークの生長の活性化エネルギー は、 拡散の活性化エネルギー126kJ /mo1と式( 4.37)の81.4kJ /mo1 の差44.6kJ /mo1 となる。 この値は拡散の活性化エネルギーよりも はるかにづ\さな値 である。
小さな活性化エネルギー を与える転位ネットワークの生長過程と して転位芯拡散が知られているが 、 これまでに報告されている純ア ルミニウムの 転位芯拡散の活性化エネルギーは約90kJ /mo1(75)で、
ここで得られた44.6kJ /mo1はこの値 よりもはるかに小さし'10 また 、
A (
-
3atoloMg10"
rd = 1.21 x1 02 exoド\RTJ
( �_)
Q = 81.4 k J Imol 1010
109
108
←ーε〉ぐ
107 12 18 20
Reciprocal temperature, T-1パ0-4 K-1 14 16
図4.12予測パラメータ4の温度依存性(宮川ら(49))。
変形初期に存在する転位ネットワークの生長が転位芯拡散律速であ れば、 自己格子拡散律速の場合よりもピの内部応力指数が2 だけ大 きくなる筈である(76)。一方、 生成転位の消滅速度で決まるrは格子 拡散支配で、かっrの内部応力指数が3である。したがって、ピの内 部応力指数は5とならなければならないことになる。しかし、前述 のようにピの内部応力指数は2で、この考え方では説明できない。
この小さな活性化エネルギーとなる原因は現在のところ不明である。
4.3.3.3
Óの温度依存性
各温度の実演IJ応力一ひずみ曲線より求められた6をアレニウスプ ロットすると 図4.13 のようになり、6は温度が高いほど大きく なることがわかる。ネットワーク転位の生長速度は、温度が高いほ ど大きくなるので、この初期転位組織の効果が消滅するまでに必要 なひずみも小さくなる筈である。したがって、この必要なひずみの 逆数に比例する6は高温ほど大きくなることになる。6の温度依存 性をアレニウス型の式で近似すると、
A ( 25.5kJ
/mo1\
ó == 4.47 X
104叫\ - -�.���
�����) (
4.38)
の関係が得られる。ただし、6の温度依存性はßoや4の温度依存 性よりも少ない。
4.3.4 変形挙動の組成依 存 性
広い組成範囲の測定例として、 マグネシウム濃度が 3at%から 6.9at%の組成範囲で求められた堀内と大塚(77)のクリープ曲線があ
c..o 103
102
A 1-3atOloMg
6:4.47x104exp
�剰
Q :25.5 kJ I mol
12 13 14 15 16 17 18 19 20
Reciprocal temperature, T-1パ0-4 K-1
図4.13予測/�ラメータ6のアレニウスプロ ット(宮川ら(49))。
る。 そこ で、 彼らの測定結果について本予測法を適用し、 組成依存 性について検討する。
本予測法 で組成に強く依存するパラメータは転位の易動度Bのみ であるが、B には中島と吉永がいくつかの温度で計算した値(62)を 堀内と大塚の測定温度 623Kに内挿して求めた値を用いた。 また、
ßo、r�および6はそれぞれ式(4.36)、(4.3 7 )および(4.38)より求 めた。 これらの値を用いて予測した結果を 図4.14 に示す。 図 で は予測曲線と実測曲線との不一致が大きいように見えるが、 それは ひずみが累積するためであり、 図中に示した定常クリープ速度(im は実測値、êcは計算値)でみると、 計算値と実測値の差は最大でも 11.5%に過ぎない。 したがって、 組成依存性は刃状転位の易動度の
組成依存性のみを考慮すれば良いと考えられる。
4.3.5 変形応力の経路依存性
以上のように予測ノマラメータの温度依存性と組成依存性を考慮し て、6 73Kと573Kでの3つの変形経路に対するAl-3 at%Mg合金の 変形応力の予測を試みる。
図4.15はその結果で、( a)は673K、(b)は573Kの実験曲線と 予測曲線を示す。 また、(c)には比較のために前節のAl-5at%Mg合 金の573Kにおける結果(予測パラメータは 表4. 2 の値を用いた) も示した。 ただし、 いずれの図においても実線が実測曲線、 破線が 予測曲線 である。
図4.15 の各図より明らかなように、 変形後期ではいずれも予測 曲線は実測曲線をほぼ再現している。 しかし、 図4.15(b)の経路
14
Creep
12ト T = 632 K σ=18.6MPa
一一- Measured
AI-3.0Mg AI-5.' Mg Al・6.9Mg
Èm/l0-5s-1 Êcパσ5S-1
9.6 " .5
8.0 9.0
6.9 8.0
て 8 (Horiuchi & Otsuka) 一一Catcutated
Lv C
-ー
。�
ー�
ぴ3
6 ム 2
。
。 2 4 6 8
Time . t 1102
5図4.14 Al-3.0rv6.9at%Mg合金について得られた、 式( 4.21)と (4.25)によるクリープ予測曲線(破線)と実測曲線(77)(実線)(宮川 ら(49) )。
10