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日本経済危機の実相と課題

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(1)

論 説

日 本 経 済 危 機 の 実 相 と 課 題

1 金 融 不 況 の 本 質 と 問 題 点 I ‑1

清 水 嘉 治

1 目次

改めて問題を考える

一戦後最大の不況の現実

ωなぜ消費は伸びなかったのか

②個人消費の停滞と耐久消費財産業

㈹複合不況と自動車産業の合理化

ω失業率の急上昇の性格

三日本金融不況の特異性

ω不良債権処理の現状

②金融再生の本来的任務と課題

㈹預金者無視の金融救済策の矛盾

四㌦日本経済戦略会議﹂の問題点

ω﹁創造的競争社会﹂とは何か

働セーフティネットと﹁二十一世紀金融システム﹂とは

㈹おわりに

(2)

改 め て 問 題 を 考 え る

生 活 不 安 を 直 視 せ よ

日本のバブルが崩壊したのは一九九一年一月であった︒あれから八年が経過した︒いまだに日本経済は︑本格的景

気回復をみない︒九七年には︑北海道拓銀︑日興証券など一流企業を始めとして多くの企業が倒産した︒九七年の金

融不況は︑かなりドラマチックであった︒同年四月以降︑政府は︑九六年の長期不況の中での若干の好循環に誘われ

て・消費税五%アップ︑社会保険費︑医療費アップを実現し︑九兆円の税収を決めた︒だが︑九七年秋頃から景気は

後退し︑消費は落ち込み︑鉱工業生産指数も低下し︑失業者数も急増した︒こうした事態に対して政府は︑後手後手

の経済政策を打ち出した︒政府は︑高度成長期に成長の動力源となった公共投資指導型の経済政策を選択した︒かつ

ての大型産業︑鉄鋼︑セメント工作機械︑建築土木関連産業の需要喚起を通じた成長経済システムは︑実質的に限界

に達しているにもかかわらず︑政府は︑大型公共投資を通じた景気回復にその活路を求めたのである︒経済体質や行

政機構の体質改革なしに︑三兆円の減税政策による消費拡大策を求めても︑それは後手後手の経済政策の選択になら

ざるをえない︒経済評論家でなくとも︑政府が︑九七年四月からの消費税などの引き上げによる国民の所得九兆円を

吸収したのは失策であり︑それが長期不況をさらに深刻なものにした︒消費者は︑消費抑制を余儀なくされた︒この

事態は︑大手百貨店︑中小商店の売上高の減少︑自動車の販売台数の減少︑一部の輸出関連産業を除いておしなべて

製造業︑流通業の不況︑とくに景気指標となる鉱工業生産の低下をもたらした︒

こうした状況は︑基本的には︑消費税率引き上げが消費を縮小し︑したがって生産流通への関連需要効果を生みだ

さず︑景気はおしなべて悪化し︑恐慌の予兆をもたらすことになった︒これは︑日本経済の体質改革の問題とも関連

(3)

日本経 済 危 機 の実 相 と課 題  

3 してくる︒とくに九七年の政府の経済政策は一方における経済改革の一環としての行政改革と他方における年金など

社会福祉確保のための経済改革を実行することによって経済の安定を図ることにあった︒だが︑日本の経済不況は︑

深刻になり︑金融恐慌直前ともいわれる大手銀行を中心とする金融業における異常な不良債権の累積をみた︒戦後経

験したことのないコ○○兆円﹂(金融監督庁によると五七兆円)ともいわれた不良債権の重圧に大手銀行は︑経営力を失

い︑地方の中小銀行も︑破産したり︑倒産寸前に直面した︒

金融機関の連続した不良債権による経営破綻の要因は︑関連企業︑とりわけ建築業︑不動産業︑住宅産業への莫大

な債務累積によるものである︒とくにこうした資産価格の低価と︑株価の低下は銀行・金融業︑関連企業の債務を増

人させている︒金融不況︑建設・不動産不況は︑製造業の不振︑商業の業績不振︑雇用不安︑失業者の増大をもたら

している︒日本経済は︑構造的﹁危機﹂︑﹁混迷﹂﹁不安﹂の連鎖にまきこまれている︒九九年四月から五月にかけて公

的資金注入︑土木中心の公共投資による関連企業の株価上昇をみたが﹁不安﹂は継続している︒

とくに国民と企業の﹁不安﹂は今日も続いている︒九九年二月二卜三日経企庁が発表した﹁国民生活選好度﹂調査

の結果をみると︑市民は健康や将来の生活費などが気がかりで︑自分の老後に不安を抱く人々が急増し︑七〇%以上

に上っていることがわかった︒経済不況は︑国民の生活不安に連動している︒不安を感じる人の比率は︑バブル期以

前よりも大幅に増加しており︑長期不況に伴う給与の伸び率低下︑少子高齢化︑財政危機による年金支払いへの懸念︑

世界一超低利子率○.一二%︑ベア﹁ゼロ﹂続出への不安などが背景にあると思われる︒とりわけ将来への不安意識

の高まりは︑消費者が消費を抑えて貯蓄に回す傾向を生み︑不況を深刻化させる要因のひとつとなっている︒あえて

意識調査の結果に触れたのは政策担当者に認識して貰いたいからである︒日本経済の現実︑とくにこの不況の主要な

実態︑原因︑政策課題︑戦略のあり方を究明することが重要ではないかと考えるからである︒

(4)

商 経 論 叢 第35巻 第1号

さきの調査は︑全国の七十歳未満の成人五千人を対象に実施したもので︑回答率七六.五%である︒﹁老後の不安を

感じたことがある﹂との答えをしたものは全体の七三・○%で︑バブル期前の一九八六年に総理府が実施した同様の

調査で四五・四%だったのに比べ︑増加ぶりが著しい︒男女とも︑同じ水準だったほか︑八六年には男性で四分の一

以下︑女性で三割弱だったニレ歳代が︑今回は五〇%以上になり︑不安が中高年にとどまらず︑若い世代にまで広がっ

ていることがわかった︒

老後に不安を感じる理由としては︑﹁生活費など﹂の五二・○%︑﹁健康﹂の五〇・二%の二つの理由が高い︒これ

に﹁介護﹂の︑一九・五%が続いた︒﹁老後に不安﹂が七割超したというのは異常である︒その順番として︑①生活費︑

②健康︑③介護である︒このような意識をみると日本の経済政策︑とくに不況対策は貧困そのものであるといわざる

をえない︒とくに不況を招いた政府︑大蔵省の政策選択のミス︑とりわけ︑大蔵省の政策担当者(とくに当時の大臣︑次

官︑銀行局︑証券局の各局長)の責任は大きい︒

こうした国民・市民の生活不安意識が高まっている中で︑改めて日本の大不況の実相と原因︑新しい政策課題を考

えてみたい︒はじめに︑あえて住民の︑市民の︑国民の意識をふまえて日本経済の課題とは何かに迫ったのは︑市民

社会科学者としての責任からだ︒戦後五十年を経て日本人の量としての所得は高くなったものの生活の質は高くなっ

ていない︒こうした中で︑未曽有の不況に直面した︒わたくしは︑いまこの不況に対して︑どのように克服していく

かの問題意識をもたなければひとりの科学者として無責任にならないかと思った︒それには︑まずこの日本経済の大

不況の主な実態をわかりやすく把握し︑わかりやすく問題点を明らかにし︑国民の共有課題とすべきではないかとも

思った︒従来日本経済の大不況をどう把握するかについて経済学者のモラルも問われたがモラルだけでは説得力をも

たない︒いま重要なことは︑日本経済の大不況の主要な実態をわかりやすく示し︑高度な研究水準をもって問題点を

(5)

ポレミークに論じ︑自己の共通課題としてその方向性を明らかにすることだと臥莞︒

一 一 戦 後 の 最 大 の 不 況 の 現 実

日本経済危機の実相 と課題  

5 ㈲なぜ消費は伸びなかったのか

政府.大蔵省の誤った経済政策指導が続く中で︑不況は長期化し︑いつの間にか国民も政策不況に麻痺してしまっ

ている感じさえする︒だが︑政府による金融不況対策はカンフル注射によって︑日本経済の体質の痛みを和げようと

するものであり︑短期的には︑不況の底から脱け出したように見えても︑さらに泥沼の状況にじわりじわり入ってい

るように思われる︒﹁民間需要が低調なため依然として極めて厳しい状況にあるが各種政策効果に下支えられて︑下げ

止まりつつある﹂だが雇用・消費は悪化している(一九九九年五月企画庁月例経済報告)︒

ところで︑この数年の日本経済の不況の実相を注視してみよう︒

ま ず 一 九 九 六 年 度 経 済 企 画 庁 の 年 次 経 済 レ ず ト ﹃ 景 気 局 面 の 評 価 と 今 後 の 蚤 ﹄ を み る と ・ 日 本 経 済 は な ぜ 長 期

にわたって低成長なのかと自問している︒とくに注目すべきことは︑物価上昇率の低下にもかかわらず消費需要が伸

びないのはなぜかという問題提起をした︒そして資産デフレ説︑低金利犯人説︑恒常所得低下仮説などを批判した︒

この批判は説得的ではなかった︒逆に︑自らこう述べた︒﹁今後の消費を展望すると︑ディスインフレや低金利によっ

て消費が景気の足を引っ張ることはない上に︑資産価格の低迷が消費にマイナスの効果を与えるとしてもそれほど大

きいものではないと考えられる︒﹂と結論づけた︒この考え方がいかに間違っていたかは︑その後の日本経済の具体的

な動きの中で明らかにされた︒

(3)当時︑わたくしはこう批判した︒第一に物価が低下しても消費が伸びないのは︑賃金も所得も伸びないからであり︑

(6)

商 経 論 叢 第35巻 第1号

この点の分析がきわめて弱い︒

第二に九六年六月からの日銀︑大蔵省の誤った金融政策によって民間銀行︑証券会社︑不動産銀行︑不動産会社︑

保険会社が︑バブル期に株価︑土地︑ビル建物などの分野に莫大な資金を投資し︑バブルを煽ぎ︑地価高騰をもたら

したからである︒とくに銀行はバブル崩壊によって莫大な不良債権を作ってしまった︒この点は︑あとで述べる︒こ

れは銀行の戦後金融史上一大汚点であった︒莫大な不良債権の累積は預金者を裏切った犯罪的行為に近い︒不良債権

のつけの一部は︑この当時︑日銀による○∴二%という超低金利政策によって穴うめし︑消費性向を鈍化させた︒超

低金利政策は︑二〇六〇万人の年金生活者の消費意欲を失った︒これも景気回復をおくらせている︒

第三に一九九四年以降の減税は︑消費性向を高めるという形での消費の増大をもたらさなかったが︑﹁可処分所得の

下支えを通じて消費の増大に寄与した﹂という︒これも間違いである︒不況の長期下のなかで賃金上昇率も低下し︑

したがって可処分所得も伸びず︑消費は低下した︒

この点︑九八年度の﹃経済白書﹄が語っている︒景気動向は九七年の政府の予想以上に厳しくなった諸要因をあげ

ている︒そのひとつの要因が︑﹁消費税率引き上げ﹂によるといっている︒だが叙述の歯切れはよくない︒﹁消費税率

引き上げによる駆け込み需要の反動減及び消費税率引き上げ︑特別減税の終了等の影響が長引いたこと﹂によると︒

(4)﹁そしてその消費抑制額は︑一兆円規模と推計される(第‑図)﹂︒

たしかに九八年に入ると︑雇用者数が減少し︑失業率が高まり雇用環境が悪くなり︑雇用所得が減少し︑個人消費

は低調になっている︒ここでただし﹁二兆円規模の所得税︑個人住民税の特別減税の実施や差し迫った金融システム

不安がやや落ち着きを取り戻したことで家計のマインド悪化にも歯止めがかかって︑三月からは消費性向に持ち直し

の動きもみら襲﹂というが・この現象は蒔的で︑消費は冷え込み︑特別減税効果も殆ど反転をしめさなか.た︒

(7)

7日 本 経 済 危 機 の 実 相 と課題

第1図 (消 費 額)

駆 け 込 み 需 要

2.4兆 円

消費の振れの要因

0.4り1〜FI

可処分所得の減少

その他の 要因 駆 け込 み需 要の反動

IVI皿mlV(期) 9697(年)

(備 考)1.駆 け込 み 需 要 等 に よ る民 間 最 終 消 費 支 出 の 動 き を 模 式 的 に 表 した も の 。 2.「 可 処 分 所 得 の 減 少 」 は,消 費 税 率 引 「=げと96年 度 ま で の 特 別 減 税 の 終 了 に 伴

う影 響 を 表 し て い る。

3.経 済 企 画 庁 「国 民 経 済 計 算 」 を 基 に,消 費 税 率 引 トげ に 伴 う駆 け 込 み 需 要 額 を 表 した 。

出 所 〕 経 済 企 画 庁,『98経 済 白 書 』 総 特 集,『 エ コ ノ ミス ト』 臨 時 増 刊98.8/10号93ペ ジ。

第2図 年収 階層別 の実質 消費 支出 の推 移 (前年同 期比:%)

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第1階 層 一一 一 一 レ \

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19959697(年)

(備 考)総 務 庁 「家 計 調 査 」(全 国 ・勤 労 者 世 帯)に よ る。

(8)

商 経 論 叢 第35巻 第1号

(6)総務庁の﹁家計調査﹂によって所得階層別の消費支出の動きをみると︑高額所得者層の消費支出は増加しているが︑

平均所得層の消費支出は低下し︑さらに低所得階層の消費支出も低下した︒政府は︑家計消費の回復を期待したが︑

そうならなかったことを反省している︒だが表面的な反省の姿勢ではないか︒

家計の消費性向が︑消費者のマインドを反映することはいうまでもない︒経企庁の﹁国民経済計算﹂﹁消費動向調査﹂

などを総合して考えると︑実質可処分所得の減少が消費性向を低下させている︒ましてや消費税二%増の五%になれ

ば︑約五兆円の実質可処分所得減になり消費性向はさらに低下することは日をみるよりも明らかである︒ところが政

府は︑なんども書くが︑九七年四月から消費税計五%を導入したのである︒したがって消費性向が低下するのは当り

前である︒

先に触れた九八年度﹃経済白書﹄によると︑家計のマインドを著しく悪化した諸要因は﹁経済の将来︑金融システ

ム不安︑雇用不安︑財政収支の悪化と将来の負担増への心配﹂にあることを指摘している︒この点をより具体的に示

すべきであった︒九八年四月に一六兆円を超える規模の経済対策を決定し︑さらに四兆円の特別減税を追加をしても

消費は伸びない︒また九八年実施された減税を合わせみると標準世帯で一三万円強の可処分所得の増加になったにも

かかわらず︑消費は回復に向かわなかった︒

九九年二月を九日総務庁が発表した﹁家計調査概況﹂によると︑世帯主の年齢階層別にみた消費支出は︑四十代が

物価変動の影響を除いた実質で前年比四・二%減と最大の落ち込みになった︒消費支出の内訳をみても︑洋服や旅行

など生活必需品以外の出費を切り詰める傾向が強まっている︒消費者マインドも萎縮している︒

家計構造に入ってみると︑働きざかりの四十代の消費支出が下回った︒このことは︑不況の中での企業の合理化︑

リストラ強化による賃金︑所得の低下︑雇用の減少によるものと考えられる︒一九九八年のサラリーマン世帯の可処

(9)

日本 経 済 危 機 の実 相 と課 題  

9

第3図98年 の家計調 査 世帯主 の年齢 別家 計収支

r消 費 支韻 ・黛 世帯 第4図 基 礎的 支出 と選択 的支 出

(前年1司月比 実質増 減 率)

9019qj4

前年比実質増減率・%

0  し    0し  ヨO 平 均30歳30〜40〜50〜60歳

未 満39歳49歳59歳

出 所 〕 日 本 経 済 新 聞,1999年2月20日

一 一 基 礎 的 支111

…  選 択 的 支 出

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lIllll1

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‑4

‑6

‑8

97/15

出 所 〕 同 右

998/15912

分所得は実質○・九%減であり︑五年ぶりのマイナスである︒

四十代のサラリ⁝マンは実質二・六%減であり︑他の世代に比

べて所得の減少が目立っている︒平均消費性向は三十代が前年

比一・五ポイント低下の六七・二%︑四十代が前年比一・一ポ

イント低下の七︒一%であった︒

逆に公務員や年金受給者の消費は︑堅調に推移した(第3図)︒

消費行動をみると︑九八年の全世帯の消費支出を日常生活に

不可欠な﹁基礎的支出﹂とぜいたく品や緊急性の低い﹁選択的支

出﹂に分類する(第4図)と︑選択的支出は四四二二%となり︑

比較可能な九五年以降で最低になった︒選択的支出は︑教育

費︑洋服︑パソコン︑旅行︑自動車などに対する支出で︑九六年

以降︑三年連続の前年割れとなった︒不況期にこの選択的支出

を減らす傾向が続いている︒食料品や家賃地代︑保健医療サー

ビスなどの基礎的支出も︑九七年十二月以降二二ヵ月連続で前

年割れである︒可処分所得の低下は︑国民の消費を委縮させて

いる︒したがって︑九七年四月に強行した消費税の税率三%か

ら五%への引き上げは︑国民の生活を直撃した︒この金額は五

兆円である︒九七年九月に医療保険の患者自己負担を従来の一

(10)

商 経 論 叢 第35巻 第1号

○%を︑一〇%へ引き上げた︒この負担二兆円であるρさらに特別減税の廃止で︑一兆円負担︑したがって合計九兆円の

負担であり︑推計であるが︑一年間に一世帯(夫婦子ども二人)で約一八万円負担となっている︒

こうしてみると︑政府の景気回復の経済政策選択の基本は九八年に︑前年の九兆円を国民に返却する政策でなけれ

ばならなかった︒こうした政策選択を回避し︑大型公共投資中心の経済政策選択をすれば︑不況は長期化せざるをえ

ない︒今日の問題もここにある︒

消費萎縮の根源は︑バブルの経済体質の改革せずに︑小手先の税収を求めて歳入を図り︑かつ低所得者︑中所得者

の可処分所得を低下させる消費税増税その他の社会保障費圧縮などに求めたからである︒経済の論理からみても︑消

費の拡大なしに景気回復はないのである︒GDPの巾で個人消費比重は六〇%を占める︒この個人消費︑政府需要︑

設備投資︑在庫投資︑輸出の主要項目が総体として拡大しなければ景気回復をもたらすことはできない︒それは経済

の量的規模の拡大であり︑経済の質の発展は考慮されていない︒この点はあとでわたくしの見解を述べる︒

②個人消費需要の停滞と耐久消費財産業

個人消費の拡大は︑単なる生活的消費財だけでなく︑耐久消費財の需要と連動する︒それは生活的消費財︑耐久消

費財関連の生産の拡大をもたらし︑雇用吸収力を増大し︑賃金と所得を増大し︑流通部門の活性化を誘因する︒とこ

ろが︑政府の経済政策は生活的消費財の需要低下だけでなく︑耐久消費財の生産も委縮させてしまった︒

あえて政府・官庁の資料をふまえて検討してみる︒例えば︑家電製品をはじめとする耐久消費財の買い替えサイク

ルが不況による消費者の買い控えなどから長期化し︑このメーカーは厳しいリストラに直面している︒日立︑東芝な

どをはじめとする家電業界は設備投資を控えている︒

(11)

日本経 済 危 機 の実 相 と課 題  

11

第6図 電機大手7社 の1999年3月 期決算見通 し

連結 売1偏

当期損 益 当期損 益

第5図 主 な家 電 製 品の平 均 買 い替え 期 間 13「エ ア コ ン

7は赤字︒東芝の連結当期損益は︑税制改正による新たな税負担も反映している︒

円円円円円円円億億億億億億億

日 立 製 作 所 松F電 器産 業

N

E

c 三 菱 電 機

出 所 〕

7兆7600億 7兆5000億 6兆7000億 5兆3500億 5兆2500億 4妻』7000億 円 3妻』7000億F』

▼3750億 540億 1600億

▼170備 200億

▼1500億}エ 」

▼400億Fl risoo

480 Boa 1200 コ200

▼1500

▼900

朝 日新 聞1999年3月2日

97/III皿IVg8/IH皿IV

(注)経 済 企 画 庁 の 「消 費 動 向 調 査 」 を も と に 通 産 省 が デ ー タ を 加 工 して 作

出 所 〕 日本 経 済 新 聞,1999年3月2日 よ り作 る 。

うした電気製品をはじめとする耐久消費財の買い替えサイクルが

よって︑電気製品メーカーは︑

る︒消費マインドが動かない限り順調に伸びない︒家電メーカーは︑厳しい不況に直面

している︒内需の伸び悩みに伴い価格競争が激しくなり︑収支を悪化させている︒さら

(8)

 に東アジアの通貨・金融危機による輸出低下も経営に悪影響を与えている︒日立や東芝

が厳しい経営体質の改革を進めているのは︑家電事業での赤字から脱出できないからで

ある︒また松下グループや三洋電機では︑業績低迷から管理職のボーナス支給に当って

一部を現物支給にするという︒これはきわめて厳しい措置であり︑収益低下は組合の賃

金引き上げ抑制とも関係してくるであろう︒

大手電機メーカー七社のうち四社が連結決算で赤字になる︒九九年三月期決算をみる 通産省の分析によると︑エアコンの購入から買い替えまで

の平均使用期間は九八年(十ー十二月)には︑十二年から十三

年になった︒不況が始まる前の九七年一‑三月に比べて一・

四年延び︑バブル後不況の過去最長記録に迫っている︒乗用

車も同じくO・七年長くなった︒電気洗濯機︑電気冷蔵庫︑電

気掃除機も買い替え周期は︑少しつつ延びている(第5図)︒

サイクルの長期化は足元の潜在需要を先送りしている︒こ

(7)の要因は個人消費低迷の大きな要因の一つになっている︒こ

﹁長期化﹂することに

企業合理化を進めていると同時に設備投資を抑制してい

(12)

と︑単独決算では大手七社のうち五社が赤字になる(第6図)︒黒字を維持するソニーなども大幅な減益を見込んだ︒

いうまでもなく九八年の半導体市況の悪化と不況に加え︑昨年秋の円高︑アジアなどの新興市場の経済混乱などが重

なり︑業績悪化をもたらしている︒ソニー︑松下も黒字ではあるが減益である︒日立とNECは︑連結︑単独ともに

赤字幅が拡大した︒好調を持続したソニーは︑下半期の単独決算が三百七十億円の営業赤字に︑連結決算も九八年度

の第四・四半期が六百五十四億円の税引き前赤字になった︒これは異常事態である︒経営の合理化︑新技術の開発を

迫られている︒

日本ビクターもロシア︑東欧市場︑中南米市場での販売が半減し︑百.一十億円減となった︒松下は︑連結︑単独で

利益をだしても︑一時金(ボーナス)の支給額に差を付ける新制度を導入したり︑一時金の支給総額に連動させて算出

し︑労組と交渉するという︒

こうした日本経済の有力な担い手である電機メーカーに対しても︑不況の波は厳しく襲っている︒莫大な﹁不良債

権﹂を背負った金融不況は電機分野にも間接的にインパクトを与えている︒

③複合不況と自動車産業の合理化

さきにふれた自動車についても︑﹁好調﹂と言えるのは︑一部の小型RVと軽四輪六社の一連の新規格軽乗用車くら

いである︒一般乗用車の国内販売は︑前年比三1四%減と不振が続いている︒四輪車国内販売台数の実績および予測

(第7図)をみても乗用車の販売台数は若干伸びるというが︑商業車は九八︑九九年と同水準で︑いずれも販売台数は

厳しい︒不況の重層化を反映している︒関連して新車の販売動向をみても︑九八年後半から九九年にかけ小型乗用車︑

普通乗用車は余り伸びず︑普通トラックは激減している(第8図)︒

(13)

スラi(DC)の五社が厳しい

13 日本経 済 危 機 の実 相 と課 題

第7図 四 輪 車 国 内 販 売 台 数 の 実 績 お よ び 予 測 soo

goo ■ 商 用 車

x'1.500 衣400口300

Zoo 100 0

888990919293949596979899

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〔出 所 〕 『エ コ ノ ミ ス ト』,98年12月15日72ペ ー ジ 。

第S新 車 の 販 売 動 向

(96年1月==100) 115

110 105

100‑一 一一㌦ 、

︑隔

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帽 匂 螂 餌 ト 覇 コ 肱 畑 弗 耽 鍵 勝 ㌦ 野 贈 欄 騰

自20胴咄 結局︑自動車各社が生産調

整を続け︑商業車を含め九八

年の生産は五%減の一〇〇万

台強にとどまった︒トヨタ︑

本田が好調といわれている

が︑国際的にも厳しい競争を

強いられている︒日産は︑累

計二兆五〇〇〇億円の赤字を

計上し︑本社ビルの売却のみ

ならず︑本格的なリストラを

迫られ︑実行しつつある︒

自動車メーカーは︑国内市

場での競争も激化するが︑国

際的合従連衡を求めている

(第8図)︒GM︑フオード︑ト

ヨタ︑フォルクスワーゲン

(VW)にダイムラー・クライ

(14)

第9図 日本 の 自 動 車 メ ー カ ー の 対 米,対 欧 関 係

自動車販売委託など ⊂■困国■D⊂ ■囮四口D

トヨ タ ズ ズ キ い す 貸 マ ツ ダ

廻産 ディーゼル ぐ 三 菱 良 動 車f

本 田 技 研 ぐ・

出所 〕

一 一 一一 レ 米国 会弁工場 ぐ一 一一 出 資 出 資 増

GM f 会 社

ニ 出資増

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エ ン ジ ン ・自 動 車 供 給 iI

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フ ォル ク ス ワーゲン触) 買 収i

ロ ー・ル ス ・ ロイス 〈英) ゆ オ ペ ル(独)

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提携交渉 出資検討

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ダ イ ム ラ ー ク ラ イ ス ラ ー

自動 車供給 ・生産 委託 など

エ ン ジ ン 供 給 な ど

ウ ローバ ー(英 〉 ル ノー(仏>

BMW(独) i

日 本 自 動 車 丁 会 の 資 料 に よ る。

25()

200

150

100 台o

第10図 日産の国 内生産 台数

1‑一

(計画

(実績見込み

91年 度9293949596979899

出 所 〕 日 本 経 済 新 聞1999年3月14日 号 よ り 作 る。

(15)

日本経 済 危 機 の実 相 と課 題 15

競争関係に入る︒五社は共通に年産四〇〇万台以上という規模であり︑これらの大手グループに次ぐグループが︑.一

番手企業で︑本田︑日産︑フィアット︑ルノーなどが競争しているが水を大きくあけられている︒︑一番手企業は︑トッ

プ五社のいずれかの系列に参加するか︑それとも.一番手企業の間で︑二社または三社が合併して対抗するかであると

いわれている︒この大手メーカーは多面的な販売戦略を展開し︑合併・提携をより進めるか︑または独自の分野を開

拓して市場獲得に乗り出すかを迫られている(第9図)︒ともあれ︑日本の各社の合計国内生産が.一〇年ぶりに一〇〇

〇万台割ったことも︑この不況のインパクトによる︒国内生産台数の過去最悪の台数は︑バブル期崩壊一年前の九〇

年であり︑一三四八万台であり︑海外生産台数は三七五万であり︑計一七二三万台であり︑九八年の不況下で︑国内

生産が約一〇〇〇万台︑海外生産は七〇〇万台弱で︑一七〇〇万台弱である︒不況期にもかかわらず︑クルマの生産

は︑九〇年水準を維持していた︒本田とトヨタの連結収益の大部分は︑米国︑南米︑東アジアで稼いだものである︒

東アジアの金融危機で︑現地生産は縮小した︒国内生産は実質的に低下している︒とくに日産は厳しい状況におかれ

た(第‑o図)︒日産自動車は九九年の国内生産計画も一〇万台減らし︑一四〇万台で一九七〇年以来の低水準である︒

すでにダイムラークライスラーによる資本参加も決裂し︑新しい経営再建の枠組み作りをしなければならなくなり︑

国際競争力も低下している︒日産は国際競争力に対抗しなければ経営もできなくなり︑すでにフランス大手ルノーと

資本提携をした︒日産は二兆五〇〇〇億の有利子負債の圧縮を図り︑国内はもちろんアジア地域で市場獲得をめざし

ている︒日産はフランス・ルノーと資本提携(五〇〇〇億円)で世界第三位グループとなり︑加速する国際再編を目指

している︒こうして金融不況は自動車産業にもインパクトを与えている︒日産はフランス国家資本四四%に依存して

いるルノーの配下に入る︒ルノーは六〇〇〇億円を投入し役員を派遣し︑合理化を厳しく要講している︒クルマメー

カーはグローバル化の中で米系メーカーとEU系メーカーと系列化し︑世界市場の占有率をめざして新技術(環境車を

(16)

含む)︑新経営︑新アイデア︑人的知的能力︑新素材︑風土等をふまえて激しい競争を強いられている︒

働失業率の急上昇問題

こうしてみると︑あとで述べる金融動乱は︑消費不足と連動して︑消費財︑生産財の各分野での生産縮小・雇用縮

小と連関し合っている︒とくに失業者増は深刻である︒

前述したように消費不足は︑大規模な企業破綻︑貸し渋りの中で︑一部の人手企業︑中小企業の倒産をもたらして

いる︒企業倒産数の増大︑企業のリストラは︑完全失業者数を増大させている︒総務省統計局によると︑九八年四月︑

完全失業率が四・一%に上昇した︒これは深刻である︒最近の労働力人ロの動向をみると︑非自発的失業︑世帯主の

失業︑高齢者の失業︑金融業︑公企業などにおいて合理化による失業問題など深刻である︒九七年の労働力状態をみ

ると︑一五歳以上の人口(a)が一〇︑六六一万人︑そのうち労働力人口(b)が六︑七八七万人︑就業者が六︑五五

八万人であり︑完全失業者(c)は.一三〇万人である︒非労働力人口が三︑八六三万人で︑労働力人口比率(b一a)は

六三・七%であり完全失業率(cb)は三・四%である︒この完全失業者とは︑仕事がなく︑労働省の調査週間中に︑

仕事を少しもしなかった者のうちで︑就業が可能であって仕事を探しても︑仕事がなく︑求職活動を待っている者を

いうが︑完全失業者が九七年︑九八年増加している点が特徴的である︒

東京商工リサーチによると︑バブル崩壊後の九〇年代に債務一〇〇〇万以上倒産企業の負債総額は︑八〇年代と比

べて急激に増大している︒九七年の倒産企業の負債総額は一四兆円になったのに対して逆に八七年は︑二兆円である︒

九七年の負債総額は八七年の七倍である︒これに伴って︑徐々に失業者も増加した︒

九九年三月二日総務庁が発表した労働力調査にもとついて同年一月の完全失業率をみると四・四%(季節調整値)

(17)

日本 経 済 危 機 の 実 相 と課題  

17

第ll図 日米の失業率 と日本の有効求人倍率

ll>ご 轡 率

44薦

U.6

U.5

U.4  

岨 昭

0.49  

432101

〔99596971月2345678910111210

年 年 年 一98年 一99年

出 所 〕 総 務 庁,「 労 働 力 調 査 」1999年3月 , 各 紙,同 年3月2日 号 よ り作 る。

 

あり︑戦後の混乱期を除いて︑最多記録を更新した︒ と︑一九五三年以降最も高かった九八年十一月︑十二月と並び︑

三ヵ月連続して最悪の水準になった︒米国がさきに発表した一

月の失業率は四.三%で︑九八年十︑一月に続いてニヵ月連続し

て日米逆転となった(第H図)︒日本経済の不況の性格を見事に

表現している︒完全失業率が三ヵ月続いて最悪の水準になった

のは︑八八年卜二月の失業率の季節調整値を再計算した結果︑

四.三%から四.四%に変更してもである︒労働省も﹁雇用状

勢は依然として厳しい﹂という認識である︒九八年一月の完全

失業者は二百九卜八万人であり︑前年同月比六十万人の増加で

ここで先にふれた企業倒産︑リストラなど﹁非自発的離職﹂に

よる失業者も三卜四万人増の百万人と最多を記録した︒企業の中堅・幹部的役割を果す年齢になる四卜五歳から五十

四歳の男性と世帯主の失業率はいずれも三∴二%で︑それぞれ同年前月比一・二%︑○・七%上昇して最悪になり・

いま油にのり︑活力をだせる働き盛りであり︑雇用状勢は深刻である︒

総務庁の資料によって︑九九年一月の就職者数をみると︑六三八〇万人で︑九七年の六五五八万人より約一八〇万

人減少している︒九八年同月比七五万人減である︒九九年一月に︑減少数は七五年四月の第一次オイル・ショックの

不況期(八七万人減)に次いで多かった︒農林業を除く雇用者は五三一七万人で︑三九万人減少した︒産業別にみてみ

ると︑製造業が三二万人減︑建設業が↓五万人減とそれぞれ二〇か月︑五か月連続して減少した︒従来増加傾向がみられたサービス業も二九万人減と二か月連続してマイナスとなった︒

(18)

芳・労働省によると︑一月の有効求人倍率が改善したのは︑有効求人が前月些.二%増加した・つえ︑有効求職

が三・二%減ったためである︒労働省は﹁景気の現状や先行きを示す求人倍率の悪化の流れは止まった格好だが︑持

続するかどうか見極める段階ではない﹂ときわあて慎重である︒一月の求人倍率が若干改善したのは︑公共事業投資

が・若干の効果を見せてきた結果であろう︒たしかに︑⊥ハ月頃には︑建設業への就業者が増加するであうつ︒だが︑

金融業のリストラ︑製造業のリストラなどをみると依然として雇用状況は厳しい︒高失業︑雇用流動化を前提にして

雇用対策をどう進めるかが問われている︒

日本政府はフランスやイギリスの雇用最優先の景気︑経済政策のメリットを学ぶべきであろう︒九九年三月五日に

政府が︑産業構造転換・雇用対策本部の会議で︑最悪の雇用状勢を改善するため︑二〇〇〇年末までに保健福祉︑情

報通信︑住宅関連︑観光の四分野でそれぞれ一〇万人︑一八万人︑四〇万人︑九万人︑少くとも合わせて︑約七七万

人分の雇用機会を新たに生み出すとした数値目標をまとめたが︑具体的にどのさつに雇用︑失業者を吸収するかの戦

術も財政的保証も明らかにされていない︒そればかりか年六〇万以上の失業者がでているのに七七万人の雇用対策と

は・実質的意味がないのではないか︑二〇〇万人の雇用対策を具体的に示すべきではないか︒銀行救済に六〇兆円を

つぎ込む巾で・雇用創出のために公的資金を導入し︑勤労者に安心感を与えるべきであろう︒だが政府︑労働省の雇

用対策は・この点不透明である︒九九年三月二六日︑首相の諮問機関の﹁経済戦略会議﹂の最終答申でも︑失業率は

二〇〇一年までじり高傾向が続くと一.白う見通しである︒この間に職業能力の育成︑職業紹介の自由化など︑高失業︑

雇用流動化を前提にした雇用政策やセーフティネット(社会的安全網)を整備することを求あているが︑現場からの要

求を吸収する中・長期雇用政策を具体的に示さない限り︑説得的な提言ではない︒労働者︑市民が内発的に労働意欲

をだせるような雇用機会の拡大の条件づくりを多面的に展開していくべきであろう︒この点︑研究の未開拓分野であ

(19)

日本経済危機の実相 と課題  

19

第12図 業 況判 断の新 規求人数 へ の影響(製 造 業)

(%ポ イ ン ト 60 y左)

4Q

20

C・.O (千 人)

250

一2U

‑40

‑6Q

‑80

2UO

/

150

1(}U

50

()

1984858687888990

出 所 〕1.労 働 省 「職 業 安 定 業 務 統 計 」, 計 」 に よ り作 成 。

一100 9192939495969798(年)

日本 銀 行 企 業 短 期 経 済 観 測 調 査 」,通 産 省 通 産 統

る︒雇用の安定的保証を目指した景気対策をしない限

り︑経済の発展を期待することはできない︒ところがこ

の不況の中で︑経営者と政府は︑従来の良い雇用保険制

度を崩しつつある︒例えば大手化学メーカーの旭化成工

業などは︑従業員に運命共同体と位置づけた︒いま︑こ

の位置づけを崩して痛みを伴う構造改革という苦渋の選

択をしている︒また日野自動車工業は︑間接部門の一〇

%に相当する四〇〇人の希望退職者と﹁ワークシェアリ

ング﹂の導入を打ち出したし︑ソニーは︑上場三社︑ソ

ニi.ミュージックエンタテイメント(SME)︑ソニー

ケミカル︑ソニー・プレシジョン・テクノロジi(SP

T)を二〇〇〇年一月をメドに完全子会社にし︑二〇〇

二年末までにグループ従業員約一七万人の一〇%すなわ

ち一万七千人を削減するリストラ計画を発表した︒

公的資本投入を申請した大手銀行も︑二〇〇三年三月

までの四年間に約二万人(一.二%)を削減するという︒

その他︑外資系企業のゼネラル石油の人員削減︑経営

不振の東邦生命とアメリカのGEキャピタルが合弁して

(20)

設立したGEエジソン生命保険会社は︑九八年秋︑東邦からの出向者一九〇〇人のうち社員一八〇人の出向を解除し

た︒その他日産自動車およびその関連子会社での大幅な解雇が進んでいる︒先に触れた家電メーカーでも同様である︒

一方雇用保障が崩れていることは︑基本的には︑生産の伸びや営業業績の鈍化によるものである︒統計的にみても︑

製造業の新規求人数も低下している︒また九八年の新規求人数と有効求人数は九七年よりも増加している(第12図)︒

だが新規求人数は前年比と比べて減少している︒産業別にみると︑﹁建設業﹂は一貫して低下している︒﹁製造業﹂︑﹁卸

売︑小売業︑飲食店﹂でも︑九七年第四半期以降減少が続いている︒また同年以降︑若干増加してきた﹁サービス業﹂

においても減少している(第13図①新規求人数︑②雇用者数)︒

もちろん九九年になって︑九八年秋に投入した大型公共投資や住宅建設の拡充を見込んだマンション販売の好調︑

中小企業の貸し渋り対策として信用保証協会の特別融資制度を活用し︑公的資金︑一〇兆円の投入で︑中小企業の倒産

が減少したことは歓迎すべきであるが︑依然として厳しいといってよい︒経企庁の景気判断は﹁景気は低迷状態が長

引き︑きわめて厳しい状況にあるものの︑一層の悪化を示す動きと︑改善を示す動きとが入り交じり︑変化の胎動も

感じられる﹂というものであった︒﹁変化の胎動﹂という表現は堺屋太一長官によるものである︒﹁変化の胎動﹂を﹁心

理的にやや上方修正した﹂(引朝日新聞﹂一九九九年︑二月十︑︑口)と︒上方修正する要因は︑軽自動車やパソコン︑冷蔵庫

など一部の消費財の売れ行きをしめした前向きな動きと︑マンション販売︑公共事業の着実な進展︑公的資金投入に

よる金融システム不安の緩和︑スーパーなどの値引きによる消費者マインドの緩和などを背景に述べたものである

が︑本格的な景気の胎動ではない︒企業の三月期決算も厳しいだけでなく︑雇用状況は深刻であることを認識すべき

であり︑具体案をしめしてほしい︒総務庁の﹁労働力調査﹂でも﹁完全失業率は増大している(第11図)︒また年齢別.

性別に完全失業率をみると︑男女の若年層や男子高年齢層は引き続き高い水準にある(第14図)︒最近の口本経済新聞

(21)

21日 本 経 済 危 機 の 実 相 と課 題

第13図 新 規 求 人 数 と 雇 用 者 数 の 産 業 別 動 向

新 規 求 人 数 (臼行向rr・止ヒ、%)

20.0

15.0

10.0

5.O

o.o

‑5.0

‑‑10.O

n㎜1VIIIHIIVI 199fi97gg

雇 川 者 数

(iF.fiU年1ヒ、%) Z.0

1.6

1.2

0.8

0.4

0.o

‑0 .4

‑0 .8

‑L2

H皿IVIHmIVI 19969798

〔出 所 〕 労 働 省 「職 業 安 定 業 務 統 計 」,総 務 庁 「労 働 力 調 査 」 に よ り 作 成 。

建設 製造

(期) (年)

そ の 他 サ ー ビス

建 設 製造

運 輸 ・通信 (期)

(年)

(22)

第14図 均 衡 失 業 率 と 需 要 不 足 失 業 率 の 推 移 (/)

4.0

完 全 失 業 率(実 績) 3.5

3.0 2.5

均 衡 失 業 率z .0

1.5

需 要 不 足 に よ る 失 業 率1 .O

U.5 Q.Q

‑U .5

19909192939495969798(年)

(備 考)1.総 務 庁 「労 働 力 調 査 」,労 働 省 「職 業 安 定 業 務 統 計 」

2.失 業 と欠 員 が 等 し い と き,労 働 力 需 給 は 均 衡 して い る と み る こ と が で き,そ の 時 の 失 業 率 を 均 衡 失 業 率 と い う。

3.推 計 式 は 以Fの と お り。

1ηU一 α+β ・1ηV(UV曲 線)

U:雇 用 失 業 率(ゴ 完 全 失 業 者 』数 三(完 全 失 業 者 数 ←雇 用 者 数)x100)

Vl欠 員 率(嵩(有 効 求 人 数 一就 職 件 数)}{(有 効 求 人 数 一 就 職 件 数)+雇 用 者 数}×

iao)

こ こで 均 衡 雇 用 失 業 率 をU*,均 衡 失 業 者 数 をX,雇 用 者 数 をYと す る と, 1ηU*(1ηUβ ・1ηV)=(1一 β)X=Y:一(100‑U*)×U*

よ つ て,就 業 者 数 をZと お く とs均 衡 失 業 率U**はU**=x‑:(x+Z)×100 4,推 計 結 果

D.W.

a (t値)

β (t値)

R2

1,664 (25.73)

1:' (8.76)

0.77 0.28

推 計 期 間:1990年 第1四 半 期 〜95年 第4四 半 期

5.UV曲 線 の 推 計 は90年 以 降 で 安 定 的 な 形 状 が 得 ら れ る と 考 え ら れ る 期 間 に つ い て 推 計 を 行 っ た 。

6.需 要 不 足 に よ る 失 業 率 は 完 全 失 業 率(実 績)か ら均 衡 失 業 率 を 引 い た も の で あ る 。

〔出 所 〕 「エ コ ノ ミス ト」1998年8月10日

(23)

23日 本経済危機の実相と課題

第15図 男女 別失業者 数 の対前年 同月 増滅数 万 人

50 40

3U Zo 10 0

‑10

〔出 所 〕

97.45678910111298.12345年 ・月

総 務 庁 『労 働 力 調 査 』1998年

第2表 主 要 企 業 の 採 用 動 向 99年4月

採 用 実 績 三 菱 重 工 業1425人

芝400人 日 立 製 作 所750人 三 菱 電 機400人

NEC(大 卒)700人

(短 大 卒 ・高 卒)150人 日本 ア イ ・ ピ ー ・エ ム600人 東 京 電 力930人

三菱 商 事(総 合 職)128人

(一 般 職)ゼ

住 友 商 事(総 合 職)U6人 (一 般 職)109人

全 日 本 空 輸 約580人

(客 室 乗 務 員) KDD約100人

日本 テ レ コ ム 約130人

住 友 金 属 工 業 約350人

(注)原 則 と して 大 卒 ・院 卒 ・高専 卒 の人 数。 た だ し, 高卒 も含 む企 業 もあ る。

全 日本 空 輸 の580人 は4〜9月 の入 社 予 定 を 変 更 し,

出 所〕 日本 経 済 新 聞1999年3月12日 よ り。

2000年4月 採 用 予 定 前 年 と 同 水 準 前 年 と 同 水 準 前 年 と 同 水 準 前 年 よ り若 干・ 550人

ゼ ロ 500人 500人 前 後

115人 ゼ ロ 80人 前 後

ゼ ロ ゼ ロ

約50人 80人

ゼ ロ

三 菱 重nの よ う に 短 大 卒 ・

99年8〜12月 に 入 社 予

(24)

社が主要企業の九九年四月の新卒採用計画をまとめた結果︑情報︑化学︑金融など幅広い業種で採用凍結や大幅削減

が相次ぎ︑全産業では︑九八年春の実績見込みを下回る見通しである(同紙︑]九九九年三月一︑一日号)と(第2表)︒し

たがって政府は︑雇用計画についても︑銀行救済以上に︑景気回復の一環として真正面から多面的な政策を具体化す

べきではなかろうか︒一方政府が打ち出している福祉関連予算五兆︑一千億円は︑介護︑施設︑機械︑自動車(電気)な

どの需要を中心に︑公民の両企業の連けいで新しい福祉産業の活性化と位置づけ︑雇用を積極的に吸収し︑関連企業

への雇用吸収を連動させるべきではないか︒

.一〇〇〇年の主要企業の採用動向をみていると夢がなく三〇%も雇用削減している(第2表)︒だからこそ先述した

ように目パ体的雇用充実を図るべきだ︒とくに新規労働力である高卒・大卒の就職一〇〇%を実現すべきである︒

三 日 本 金 融 不 況 の 特 異 性

ω不良債権処理の現状

金融動乱の根源は日本金融を支配した大手銀行の不良債権の超累積にある︒それはバブル崩壊で明らかになる︒

いま改めてバブル崩壊の本質を考えてみよう︒日本経済が九一年一月にバブル崩壊に直面した基本的理由は︑八〇

年代後半の﹁好景気﹂に煽られた企業間競争の中でもたらした過剰生産に消費が対応できなくなったからである︒と

くに過剰生産をもたらした過剰設備の存在は︑不良債権の超累積とともにバブル崩壊の大きな要因であった︒民間設

備投資は︑一九八八年‑九〇年の三年間にわたって一四%以上の伸びを示したあと︑九一年には︑六%強に下がり︑

九二年度はマイナス四・三%と下落している︒これは景気循環的性格を伴うものであった︒それと同時に︑金融的︑

構造的要因が伴っていた︒株︑土地︑建物など企業︑個人を問わず︑資産価格が異常に膨張した︒これを政策的に調

(25)

日本 経済 危機 の実 相 と課 題 2J

整したことによりバブルが崩壊した︒もちろん︑資産価格の高騰それ自体が需要低下とともに順次︑低下したことに

よる︒多くの企業は︑転換社債︑ワラント債など低利子で資金を導入し設備投資資金に振向けた︒さらに海外からも

安い金利を調達し設備投資に注入した︒一方︑大手企業︑中堅企業は︑株購入︑土地購入︑建物購入にもまわし︑資

産価格高騰に狂奔した︒こうした日本的経済的メカニズムが︑九一年一月に崩壊した︒多くの企業は逆に借りた資金

の返済に追われ︑高利で資金調達し︑欠損を覚悟して土地売りに集中した︒そのことは︑資金面でも設備投資がコス

トに合わなくなり︑需要に対しても過剰になった︒

企業の土地︑建物︑株式などの資産価格の高騰は︑日本経済の構造を変えるほどの異常事態であった︒これには理

由があった︒一九八〇年代後半の日本経済は︑一方で国際競争力を強化し︑対米貿易大幅黒字基調を維持し︑他方で

円高ドル安の為替構造のもとで毎年一〇兆円以上の内需拡大政策を選択した︒この結果︑日本経済は内外価格差と土

地︑建物など資産価格の高騰に直面すると同時に銀行︑証券︑不動産業の過剰投資と不良債権の累積を自覚せずに狂

奔した︒一九九一年一月︑その崩壊が始まり︑未曽有の構造的︑循環的複合不況に突入したのである︒この点を改め

て整理してみよう︒

こうした筋道を念頭において金融動乱の現状をみてみたい︒

日本経済は︑いま戦後最悪の不況に直面し︑この状況からどのように脱出するかが大きな課題となっている︒この

(11)不況を招いた基本要因は︑前にも触れたように政府大蔵省の政策ミスにある︒九九年の三月時点において︑政府と金

融監督庁は大手銀行の不良債権を処理する措置を取っている︒

その前に︑バブル期に一部の個人高所得者や企業などが内外から資金を集め︑土地や不動産︑貴金属︑株式などに

投資し︑バブル崩壊後︑それらの債務が莫人な額に達し︑自らの経営を破綻寸前にまで追い込んだ︒

(26)

第16図 金融機 関 ・ノ ンバ ンクか ら建設 業 ・不 動産業 へ の資 金 の流 れ

約71り

ノ ン バ ン ク

(備 考)1.日 本 銀 行 「経 済 統 計 月 報 」,全 国 信 用 金 庫 連 合 会 全 国 信 用 金 庫 統 計J,全 国 信 用 組 合 中 央 協 会 全 国 信 用 組 合 決 算 状 況 」,大 蔵 省 「ノ ンバ ン ク の 貸 付 金 の 実 態 調 査 」 等 に よ り作 成 。

2.96年 度 末 の デ ー タ を 用 い た 。(ノ ンバ ン ク の 貸 出 金 は95年 度 末)

3.ノ ンバ ン ク全 社 ベ ー ス の 業 種 別 貸 出 金 の デ ー タが 無 い た め,大 蔵 省 「ノ ンバ ン ク の 貸 付 金 の 実 態 調 査 」 の 業 種 別 構 成 比(96年 度 末)を 用 い て 試 算 し た。

出 所 〕 『エ コ ノ ミス ト』,「98経 済 自 書 」 特 集 号,正998.8.10.252ペ ー ジ。

とりわけ金融機関・ノンバンクから建設業・不動産

業への資金の流れは第16図のようになっている︒この

当時の不良債権問題の処理は①財務上︑帳簿上での引

当て・償却︑ついで②不稼働資産の売却によるキャッ

シュフローの回復・資産の再稼働そして最後に③増資

(12)などによる銀行の自己資本の順に進むと考えられた︒

政府・大蔵省は救済に乗り出し︑nらの誤った政策に

対し厳しい反省もせずに︑また銀行に対しても︑徹底し

た経営の体質を求めずに︑金融危機に中途半端に対応

しつつ︑公的資金を投入した︒この金融危機の本質と構

造については︑あとで述べる︒取り敢えず︑まず九八年

二月一六日政府の金融破綻対策として打ち出した金融

安定化二法に触れておく︒これによって政府は︑最人限

三〇兆円にのぼる公的資金を︑自ら間違った経営選択

によって生じた金融破綻を回避し︑金融システム安定

化を図るという大義名分をもって裁量的に投入できる

ことになった︒

公的資金がクローズアップされたのは︑九六年住専

(27)

日本 経 済 危 機 の実 相 と課題 27

七社に六八五〇億円を導入したときであった︒公的資金とはもとは国民の貴重な税金である︒それを放漫経営で行き

詰まった住専につぎ込むことは許されないという批判がまき起った︒政府・大蔵省の間違った金融政策の病根は重

く︑深い︒政府はコ○○兆円﹂といわれた大手銀行の不良債権の処理に直面した︒

さきの九八年二月﹁金融安定化︑一法﹂(改正預金保険法︑金融機能安定化緊急措置法)に基づく公的資金三〇兆円は二つ

の部分に分かれる︒第一は︑破綻していない金融機関の資本増強のために︑預金保険機構の中の金融危機管理勘定に

入れるもの(ご.兆円の国債交付と最大 O兆円の借入保証)︑第二は預金の金額保証のために預金保険機構の特別業務勘定

に入れるもの(七兆円の国債交付と最大一〇兆円の借入保証)である︒

九八年二月二六日︑預金保険機構の金融危機管理審査委員会は金融機関への公的資金投入の審査基準を決定した︒

もちろんこの審査基準の内容は不透明であり︑あとで問題になったが︑例えば︑長期信用銀行についての査定は︑債

務超過が当初七八〇〇億円であったが︑あとで一兆二一二〇〇億円と増額した︒この違いは︑大蔵省︑金融監督庁がい

かに不透明な審査をしたかが問われた︒

前述の金融危機管理審査委員会(委員長︑佐々波楊子)は︑九八年三月五日︑都市銀行︑長期信用銀行︑信託銀行の大

手一八行と地方銀行三行計二一の銀行に対して︑審査し︑総額.一兆一〇〇〇億円の公的資金(税金)を注入することに

した︒この注入に対して世論は︑厳しい審査のうえ︑注入される銀行の経営体質の改革を明らかにすべきであると要

望した︒にもかかわらず︑佐々波委員会は︑公平な審査の基準を明らかにせず︑審査プロセスも不透明であった︒

一九九九年二月時点を選択して当時の当初︑政府・大蔵省の肝入りで︑国策銀行として設立された日本債券信用銀

行の動きをみると︑九八年卜二月末に破綻し︑国有化された︒ここには矛盾した問題がある︒日債銀は︑九七年四月

にまとめた再建策で︑大蔵省と二人三脚で大手銀行や保険会社に支援の出資を求めた︒当時︑回収に重人な懸念のあ

(28)

る債権︑すなわち第三分類債権は七〇〇〇億円であった︒大蔵省は︑日債銀の再建については経営改革をすることに

よって可能であるから︑関連銀行は援助資金を﹁奉加帳﹂方式でお願いした︒その額は二一〇〇億円以上であった︒

大蔵省は︑すでに日債銀に対する検査に入っていた︒その結果︑九月には第三分類債権が一兆一二〇〇億円に達し

ていた︒一体この額と七〇〇〇億円の差四二〇〇億円はどうして追加されたのか︒またはじめの公的資金投入額は六

〇〇億円であった︒にもかかわらず︑日債銀は︑突如︑国有化され︑﹁奉加帳﹂方式が出資した額も紙切れ同然となっ

た︒大蔵省と金融監督庁・日銀の責任は重大である︒

日銀は︑銀行を厳しく考査する疏場にあるにもかかわらず見逃した責任は大きい︒またすでに民間企業が保有して

いた日債銀株は紙くずになった︒国有化前の日債銀株は一五八円であった︒それが零になった︒一体金融再生の中味

(14)とは何であるのか︒国民の前に明らかにすべきであろう︒この点︑今日︑依然として不透明である︒

問題を進めたい︒改あて九九年三月四日の時点で整理しておく︒政府は︑﹁経済再牛﹂のため︑最大のネックはコ

○○兆﹂円ともいわれる不良債権を解消することにあった︒政府は﹁銀行﹂の貸し渋りも︑銀行の再生にとっても公

的資金投入を重視した︒銀行側は︑不良債権をできるだけ少なくするためにも︑海外債務の縮小︑人員削減︑銀行問

合併︑重役の報酬の削減︑その他預金者へのサービスの徹底などを進め︑公的資金の導入を図ろうとしている︒だが︑

預金者にとって定期預金(一年)の利子が○・一︑一%︑さらに○%に近い状況におかれ︑預金者は︑銀行に預金しなく

なるであろう︒これは日銀が株価の低迷状況を打破すること︑すなわち景気回復のために銀行や企業は株価の上昇を

期待し︑自己資本増を図るシステムを作ったことになる︒だが預金者は︑現在の超低金利策に耐えられなくなってい

る︒銀行の個人預金量は減る︒こうすると︑貸し渋りと公的資金を求める︒人蔵省と金融監督庁︑日銀は︑銀行の不

良債権処理のために公的資金投入を︑﹁厳しい﹂基準を通じて︑歓迎する環境を作りだしている側面もある︒

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