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内山節教授のご退職に寄せて

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Academic year: 2021

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21 世紀社会デザイン研究 2014 No.13

— 9 —

内山節教授のご退職に寄せて

中村 陽一

NAKAMURA Yoichi

本年3月末日をもって、内山節教授が立教大学を定年退職される。内山教授は、

2002年の研究科設立以来、兼任講師、(途中、異文化コミュニケーション研究科特任 教授をはさんで)専任教員と立場は変わりながらも、創設メンバーとともに「余人を もって代え難い」役割を果たしてこられた。それだけに、いうまでもなく研究科にとっ ては非常に残念なご退職である。内山教授と同様、設立時から、兼任講師、客員教授、

特任教授として研究科の顔でもあった石川治江教授の任期満了に伴うご退職も重なり、

これで、オリジナルメンバーはいよいよ私だけになってしまうことになる(ただし、

内山教授にも石川教授にも、新年度引き続き、授業科目は担当していただけることに なっている)。私事で恐縮だが、創設準備段階からの苦楽を知る人がいなくなる喪失感 と寂寥感は深い。

とはいえ、寂しがってばかりもいられない。「社会(ソーシャル)デザイン」「コミュ ニティデザイン」ということばはますます普及拡大しており、組織名や書名はもとよ り、活動や事業のキーワードとしてその名を冠するものも数多くある。「コミュニティ デザイナー」をもって任ずる人たちも引き続き現れている。

そんななか、2015年度、研究科は創設14年目を迎え、これまで着実に進めてきた 社会デザイン研究の深化と、その社会への実践的なフィードバックをさらに充実した ものにし、時代と社会の変化により深いレベルで「応答」し続けていけるような次な るステップをめざしていかなければならなくなっている。ことばは表層でも普及しや すいだけに、その感はひとしおである。不可視のものを可視化する社会デザインであ ると同時に、簡単には語りえぬものを表層で語らない社会デザインの追究はどうすれ ば可能か、問いは尽きない。

そうした転換点にあって、これまで研究科における教育・研究に、哲学・思想といっ た紋切型の表現を超えて、ものの見方や考え方の根底から携わり続けてこられた内山 教授のご退職は、私たち残る者が知力・気力・体力をフルに発揮して、研究科として のミッションを内外で実現していく気構えを新たにする機会ととらえたい。

もっとも、内山教授には、そうした力の入り方はあまりウケがよろしくないだろう なと思う。そもそも、大学教員というのは「役割ですから」といわれそうな気がする。

私にとっても、氏は「内山教授」であるより前に、『労働過程論ノート』(編集者志望 の学生として、私が話を聞かせていただいた編集者が担当されたと後で知った)以来、

学生時代から哲学者・内山節として著作に親しんできた人であり、まさか同僚になろ うとは思ってもみなかった存在だったのだから、それもその通りである。

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ではあるのだが、(『哲学者 内山節の世界』という書物が出ているほど)哲学者・

内山節を語る人や文章は無数にあれど、「内山教授」について書いたものは、教え子の それを除き、そうはないだろうと考え、おそらく後にも先にも一度だけとなるだろう が、21世紀社会デザイン研究科教授としての内山先生について書かせていただくこと を「役割」としたい(哲学者としての膨大な業績については本号所収のご経歴や著作 リスト、そして刊行中の著作集を参照していただきたい)。

大学教員は「役割ですから」といわれそうだと先に述べた。しかし、それは決して、

冷めているとか、ましてや熱意がないといった意味合いではない。むしろ逆だと感じ る場面は度々であった。ご自身もどこかで述べておられる通り、「役割」であると思え ば集中して取り組むのが内山教授流であり、熱い人だというのが、私の偽らざる印象 である。近い関係の人たちやゼミ生たちには何をいまさらといわれそうだが、ただそ れは、研究科委員会(教授会)のような席でも時折発揮されてきた。哲学者・内山節 と内山教授が同時に現れる瞬間を見る思いがしたものである。

それゆえ、本研究科にとっても、内山教授の問題提起と発信は、数々の種を教育面 でも研究面でも蒔くものとなっている。それが、たとえば、「関係(性)」という概念 であり、「社会デザイン学自体がローカリズム論なのである」という立場である。

本研究科は、「人権意識に裏付けられた真に共生的な社会」として、「21世紀市民社 会のグランドデザイン」を描くという方向性を有している。しかし、十分に気をつけ ていないと、そこには容易にマジックワード化しかねない陥穽も潜んでいる。そんな とき、「(自立した)個」「世界」といった語り口に回収されず、束ねられず、地に足の 着いた解きほぐしを探究することを可能にしたのが、「個が関係をつくる」のではなく

「関係が個をつくっていく」という考え方であり、ローカリズムへのこだわりであった と思う。それは、研究科での講義がまとめられた『内山節のローカリズム原論』にも よくあらわれている。

既述の通り、もちろん、これで内山教授と本研究科との御縁が切れるわけではない。

新年度からは、兼任講師として授業もご担当いただき、これからは、内山教授ではな く、これまで以上に哲学者・内山節として、本研究科の院生にたいしても、折にふれ、

さまざまなアドバイスをしていただけると思う。研究科としても、教員陣としても、

まだまだ社会デザイン学への道の同行と伴走をお願いしつつ、これからのさらなるご 活躍とご健康をお祈りして、ご退職に寄せてのささやかな挨拶とさせていただきたい と思う。

2015112日             21世紀社会デザイン研究科委員長 中村 陽一

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