• 検索結果がありません。

中国における日系小売企業の展開についての考察 ――

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "中国における日系小売企業の展開についての考察 ――"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

97

研 究 背 景

 世界経済の急成長を背景に,ますます多くの企業は国際競争の激化に直面し始めている。特に,

大手小売企業の国際化も急速に進行している。小売業の国際化進展の問題は,急速に多国籍小売 業者の議論の焦点になりつつある。企業は海外展開を積極的に模索すると同時に,どうやって資 源をより有効に活用するのか,自社の競争力を向上させる方法を考えている。

 近年来,理論と実践の研究が進むとともに,本国の小売業が持っている競争優位性や経営ノウ ハウなどの海外への移転,特に,現地化と標準化の問題が今,研究の焦点となっている。中国は 改革開放により,国内流通を取り巻く環境も大きく変化し,小売業態の発展が急速に進行してい る。政府は経済改革・開放を進め,小売業に関する規制が緩和され,政府主導で小売業への外資 の参入が認められ,新しい業態の小売業が急速に導入された。このように中国の小売市場におけ る業態の発展は,短期間で多様な業態がほぼ同時に導入され,成長してきたという特徴を持って いる。外資である多国籍小売企業は,中国を国際戦略を展開する重要な市場とみなしている。

 このような市場環境の下において,日系企業はどのような付加価値活動を展開して,競争優位 性を築くのが望ましいのであろうか。国際経営学の第一人者である吉原英樹氏は次のように述べ ている。

 「海外子会社が成長するか,また困難な状況の中でも生き延びることができるかは,日本 親会社から移転される経営資源がいかなるものであるかに左右される。世界に通用する強い 技術や経営ノウハウが移転されるときには,海外子会社は強い競争力を発揮できる。」

 つまり,グローバル市場において競争優位性を持つ企業になるには,国内事業において競争優 位性を持つ経営資源や経営ノウハウを海外子会社へ移転することにより,グローバル市場におけ る競争力を高めると同時に,海外売上高比率を高め,持続的成長を図ることが必要になる。そこ で,日系企業がグローバル市場において競争優位性を高めて持続的に成長するには,国内で優位 性のあるブランドをグローバル市場で通用するブランドに育成することが鍵になる。なぜなら,

ブランドは企業と消費者との間に一種の「絆」とでも呼ぶべき関係性が形成するからであり,ま た標準化されたサービスを大量に流通させる重要な決め手になるからである。

 一方,藤澤武史氏は,

 「グローバルに通用するブランドへと仕上げるには,文化の多様性をうまく管理し,現地 消費者のニーズにきめ細かく応えていけるようなブランド管理を実現しなければならない。」

と指摘している。

 つまり,国内の主力ブランドをグローバルに通用するブランドへ育成するには,現地国や地域 のニーズに適応することが重要であるが,進出国や地域ごとに現地適応化を展開すると量産効果 が効かなくなり経営効率性は低下する。したがって,日系企業は国内に優位性を持つ主力ブラン ドを保持しながら,世界にも通用するグローバルブランドを育成する必要がある。そのため,主 力ブランドを現地国において展開するために必要な現地ニーズへの対応と,グローバル規模での 効率性という二律背反的な要請をどのように同時に満たすのかという課題が生じる。日系企業は,

中国における日系小売企業の展開についての考察

――標準化と適応化を中心に――

馬  俊 修士論文 アブストラクト

(2)

98

この二律背反的な経営課題をどのようにして解決するのだろうか。

 このような問題意識に基づき,本論文は,標準化と現地適応化の先行研究を踏まえ,事例を分 析しながら,新興国を中心にグローバルに事業展開するための新たなグローバル戦略の考察を試 みる。

研究の目的と意義

 中国では,WTOに加盟以降,国際化プロセスの速度が徐々に加速し,小売市場も次第に開放 されている。2004年には中国の小売市場を全面的に開放するとともに,多くの多国籍大手小売 企業が中国市場をターゲットとし,全面的に国際的な発展を始めた。たとえば,アメリカの大手 スーパーマーケットチェーンのウォルマート(Wal-Mart),フランスのカルフール(Carrefour),

日本のイオン,セブン&イレブン,ローソンなどの小売企業である。これらの企業は,本国で 培った競争優位性を他国へ移転する際に生じた難点を克服しながら,標準化と現地適応化を積極 的に進めてきている。

 こうした小売企業についての既存研究は多いが,中国における

CVS

に関する研究は小売国際 化の視点の説明だけに留まっている傾向がある。中国地元の

CVS

に注目し,現状の戦略および 戦略の有用性,その問題点,解決策についての体系的な研究はほとんどなされていない。

 本論文はまず,中国

CVS

業界の発展プロセスを辿りながら,現状の特徴の形成要因を解明す る。次に,中国に最初に進出した日系

CVS「ローソン」と中国の地元系 CVS

の中でも代表的な

「好徳」について,それぞれの発展経緯および現状を分析する。本研究の目的はローソンと好徳 を比較・分析し,中国

CVS

の現在の問題点を明らかにすることで,中国に相応しい

CVS

モデル 構築への示唆を導き出すことにある。本論文の研究意義は以下の

2

つである。

 (1) 実際のビジネスを検討する成果としての実用性である。本研究は,市場に実在する

CVS

にアプローチし,実践的な角度から多国籍小売企業が現地化と標準化を実施して,有効的に 経営戦略を調整しているかを分析する。現在,発展している中国のコンビニ業界に対して,

中国の小売業の国際進出と持続可能な発展に対して理論的な貢献をしたいと考える。

 (2) 2つ目は,小売業の国際展開は最先端の経営課題であるのみならず,全世界の資源整合 や各領域との協力などに深く関係があるので,国家間の長期的な協力と交流を推進すること ができるという点である。中国の消費者は,グローバル小売企業が中国国内において,豊富 な商品や販売ノウハウを展開することによって,大いにベネフィットを受ける。その生活の 質を高めることができる。日常生活におけるそうした経験は,中国と他国との国際関係を良 好にする方向で効果を持つと考えられる。本研究の小売業の研究は国際平和の基礎にも理論 的に貢献できると考える。

研 究 方 法

 本研究は,おもに各資料の収集・分析と事例研究を組み合わせるという研究方法を用いる。そ して,得られた情報と資料を基にして,仮説の検証とケース分析を考察する。

 事例研究は日系の大手小売企業「ローソン」と中国の地元系コンビニ「好徳」を対象に,両者 の経営戦略,業績などを比較・研究する。その際,特に,中国における日系小売企業「ローソ ン」は日本で培った競争優位性をどのように中国へ移転するのか,現地適応化と標準化戦略をど のように進めるのか,を焦点にして考察する。

 具体的な研究方法は以下のようになる。

 ① 問題提起:「研究の目的と意義」で述べたように,中国の小売市場における現地企業と日 系企業を比較対照し考察する。

 ② 既存研究のレビュー:「小売国際化に関する先行研究のレビュー」を行い,既存研究の整 理,市場情報の収集を行う。

 ③ データの収集と分析:対象となる企業のデータを中国現地調査を踏まえて収集し,分析す 馬  俊:中国における日系小売企業の展開についての考察

(3)

99

る。

 ④ 事例研究:上海ローソンと好徳の事例研究。マーケティング戦略と理念等の比較。

 ⑤ 観点と対策の提出:上海ローソンの成功の理由は標準化と適応化のバランスのよい組み合 わせにある。

ま と め

 本研究を通して,国際化はすでに世界経済の

1

つの潮流になっていることを明らかにした。小 売業はこの潮流を背景に,将来の発展の重点を国際競争と多国籍経営に置くことになる。本論文 で取り上げたローソンは日本の大手小売業として,業界の発展方向をリードし,自身もさまざま な困難に挑戦し,急速に発展している。

 本研究の枠組みに基づき,小売業国際化の過程を詳しく説明する。まずは,企業拡張の動機を 理解するため,小売業国際化の動因を分析する。次に,進出ルートの分析をするが,これは企業 が海外市場に進出するさまざまな形態を把握するためである。最後は,多国籍企業が海外へ進出 する際に直面する問題点と解決方法を把握するために,小売業の国際経営技能の移転と現地適応 化を分析する。

 本研究は多くの文献レビューと先行研究を収集・分析したうえで,中国に進出したローソンの 発展について詳しく述べた。特に,ローソンの国際経営技能の移転(標準化)と現地適応化の実 施と調整に注目し,この過程を商品供与と組織管理の

2

つの側面に分け,国際経営技術の移転と 現地適応化の形態を説明する。

 第

1

には,商品供与。小売業の業態発展に適応した商品供与モデルを選択し,積極的に現地化 の仕入れと物流の体系を築き,商品現地化の特徴を明らかにする必要がある。それに,日本で 培った競争優位性(商品の品質,コスト管理等)をどのように中国へ移転し,現地適応化と組み 合わせるのかが最も重要な課題である。

 第

2

には,組織管理。企業枠組みの調整と人材管理は組織管理の核心的な問題である。企業制 度と企業文化は持続可能な発展を実現する重要な要素である。現地での人材登用と育成は人材の 潜在力を最大限に高め,目標市場の需要を発見することができ,企業の経営行為と母国市場の需 要を一致させることが可能となる。

 筆者は上海に生まれ,地元系と外資系のコンビニの発展過程は小さい頃から見ている。この経 験に基づき,筆者は上海に進出した日系コンビニ「ローソン」と地元系の大手コンビニ「好徳」

を分析対象として選び,比較した。上海コンビニ市場の発展の状況と分析ポイントを以下にまと める。

 ① 上海地域コンビニ発展の状況を分析すると,その発展には促進要素(たとえば,経済環境,

人口状況,科学技術)が存在している。

 ② 上海コンビニ業界の発展の意義を分析した。

 ③ 上海コンビニ業界の発展のプロセスで存在した問題点を指摘した。

 本論文の執筆に際しては,いつかの困難があった。

 ① データ収集の側面では,中国の地元のコンビニはある集団公司の下に所属するため,財務 諸表は公開されていない。

 ② 資料整理の側面では,コンビニ発展の理論を分析する先行文献が少なく,特に,具体的な 地域のコンビニ発展の文献はもっと稀少である。

今後の課題

 今後の研究課題として,本研究は小売業に関するマーケティング戦略のみを対象として好徳と ローソン

2

社の経営特徴を分析したが,組織構造,商品供給等の比較はまだ不十分である。今後,

さらに資料の収集・分析を積み重ね,この

2

社に関する研究を深めたい。

立教ビジネスレビュー 第 7 号(2014) 97-99

参照

関連したドキュメント

本章では,現在の中国における障害のある人び

これらの先行研究はアイデアスケッチを実施 する際の思考について着目しており,アイデア

学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件

るエディンバラ国際空港をつなぐ LRT、Edinburgh Tramways が 2011 年の操業開 を目指し現在建設されている。次章では、この Edinburgh Tramways

この調査は、健全な証券投資の促進と証券市場のさらなる発展のため、わが国における個人の証券

2019年 8月 9日 タイ王国内の日系企業へエネルギーサービス事業を展開することを目的とした、初の 海外現地法人「TEPCO Energy

結果は表 2

○田中会長 ありがとうございました。..