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中学生における親との関係性と仮想的有能感
教育臨床心理学コース 3615001 片山 緑
Ⅰ.文献研究:仮想的有能感に関する先行研究と既存の親子関係尺度の検討
中学生を対象に,親から受け入れられていないという感情が仮想的有能感を高めている のではないかという仮説を立てて調査研究を行うために,仮想的有能感の形成と親子関係 についての先行研究(木野ら,2010)他を紹介した上で,「中学生の親への思い尺度」作 成に向けて既存の親子関係尺度を比較検討しFDT2002版を採用することを決定した。
Ⅱ.実証研究1:中学生の親への思い「感謝していること」「不満なこと」についての調 査と分析
「中学生の親への思い尺度」作成に向けて,中学校1,2年生(118名)を対象に親に感 謝していること・不満なことについて記述式質問調査を行い,記述内容からKJ法により 322個のラベルを見出し,尺度項目作成のための49個の小カテゴリーを抽出した。また,
記述件数を基に量的分析を行い,「不満」より「感謝」件数が多いこと,物質的金銭的感 謝の記述が多いほど「感謝」記述が多いこと,精神的不満・身体的精神的圧迫・育て方し つけ方の不満の記述が多いほど「不満」記述が多いこと,等が明らかになった。
Ⅲ.実証研究2:「中学生の親への思い尺度」の作成と因子分析,及び因子得点から抽出 した4因子と「仮想的有能感尺度」「自尊感情尺度」得点との関係性
FDT2002版と実証研究1で抽出したカテゴリーとを照合して「中学生の親への思い尺度」
の項目を作成し,「中学生の親への思い尺度」と仮想的有能感尺度及び自尊感情尺度を用 いて中学校2年生(231名)に質問紙調査を行った。データから「中学生の親への思い尺度」
の因子分析を行った上で,「中学生の親への思い尺度」と仮想的有能感尺度及び自尊感情 尺度との関係性を分析した。結果,親からの被受容感の高さは仮想的有能感とは負の,自 尊感情との間に正の有意な相関関係があり,親が受け入れてくれると感じる者は自尊感情 が高く,親が受け入れてくれていないと感じる者は仮想的有能感が高い傾向があることが 明らかになった。その後の分散分析と多重比較により,仮想型(仮想的有能感が高く自尊 感情が低い者)は,自尊型(仮想的有能感が低く自尊感情が高い者)より親からの被受容 感が低いことが判明した。中学生の親から受け入れられていないという感情(被受容感の 低さ)が仮想的有能感を高めているという仮説は,仮想型に対しては実証された。
〈文献〉
東 洋・柏木惠子・繁多進・唐澤真弓(2002).FDT親子関係診断検査手引 株式会社 日本文化科学社
木野和代・高木邦子・速水敏彦(2010).仮想的有能感の形成に親子関係が及ぼす影響(2)
―有能感類型による検討― 日本心理学会第74回大会発表論文集,1025.