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雑誌名 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系

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括型発達支援」の課題 : 摂食障害センターおよび 摂食障害当事者組織の訪問調査から

著者 田部 絢子, ?橋 智

雑誌名 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系

巻 71

ページ 161‑175

発行年 2020‑02‑28

その他の言語のタイ トル

Issues of Eating Disorder and

''Children‑Family Comprehensive Developmental Support'' in Sweden : Survey on a Center for Eating Disorder and Organization of Persons with Eating Disorder

URL http://hdl.handle.net/2309/152421

(2)

* 1 立命館大学産業社会学部准教授・2012 年度東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科博士課程発達支援講座修了

* 2 東京学芸大学特別支援科学講座特別ニーズ教育分野教授(184-8501 小金井市貫井北町 4-1-1)

1.はじめに

 日本でも食物アレルギー・生活習慣病・摂食障害・孤食など食に関する多様な発達困難・支援ニーズを有す る子ども・若者が増加し,食に関する発達支援は重要性を増している。食に関する問題は子ども本人のみなら ず家族にとっても大きな困難であり,教育・医療・福祉等の連携した発達支援が不可欠である。

 摂食障害は子どもの心身の成長・発達を妨げ,将来にわたって健康や生活に大きな影響を及ぼすとともに,

生命の危険や後遺症の可能性もある重篤な疾患である。ICD-10 によれば 「 生理的障害及び身体的要因に関連 した行動症候群 」 の一つであり,①不食を徹底する 「 制限型 」,むちゃ食いに対する排出行為で代償しながら 低体重を維持している 「 むちゃ食い/排出型 」 等の「神経性食欲不振症(AN:神経性無食欲症,神経性食思不 振症,思春期やせ症)」,②むちゃ食いを繰り返しながらも体重増加を防ぐために種々の不適切な代償行為を伴 い,ANと違ってやせに至らない「神経性過食症(BN:神経性大食症)」,③「特定不能の摂食障害(EDNOS)」

に分類される。

 厚生労働省によれば日本の摂食障害患者は 1980 年から 20 年間で約 10 倍に増加し,特に 1990 年代後半の 5 年

間だけでANは 4 倍,BNは 4.7 倍と急増している。しかし,医療機関に訪れるのは一部であり,実際にはさら

に多いと推定される。ANは 10 代,BNは 20 代が多く,推定発症年齢は 10 代の占める割合が年々増加して若年 発症の傾向を示し,10 歳から発症する例も稀ではない。さらに近年,DSMやICDの摂食障害基準ではとらえ きれないような非定型の特徴をもつ者も目立ってきている(日本小児心身医学会摂食障害WG:2008,作田:

2016)。

 摂食障害は,こころの奥にある対処困難な行き詰まりやこころの負担(不安・緊張・怖れ・抑うつ・ストレ ス等)が食事や体型に対するこだわった考え(強迫観念)にすり替えられ,その結果,食行動の異常を引き起 こし,食行動の異常は身体的な異常(高度のやせと命の危険)をもたらす(深井:2018)。様々な心理社会的 ストレスに対して,過食や拒食といった手段で対処しようとしているとも捉えることができ,やせることで周 囲から賞賛されたり,努力すれば体重が減少する経験を通して一時的な自尊心の高まりを感じていることも多 い。その発症や経過に心理社会的要因が密接に関わっており,患者の多くは発症前に何らかの苦痛や孤独を感 じている場合が多く,低い自尊心が内在している(髙倉:2017)。

 また,摂食障害患者は自らが病気であるという認識やその重篤さに対する認識が乏しい故に,自ら援助や治 療を求めようとしない傾向があり,家族も摂食障害に気づいていない場合が多い(摂食障害に関する学校と医 療のより良い連携のための対応指針:2017)。気づいた時には病状が深刻化していることも多く,摂食障害で

スウェーデンにおける摂食障害と

「子ども・家族包括型発達支援」の課題

―― 摂食障害センターおよび摂食障害当事者組織の訪問調査から ――

田 部 絢 子

* 1

・髙 橋   智

* 2

特別ニーズ教育分野

(2019 年9月 17 日受理)

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は食行動の異常が改善した後も心理的課題や家族関係における軋轢,学校・社会不適応などの心理社会的困難 さを認め,生活機能に多くの問題を抱えることがある。早期回復には体重減少や症状が軽度のうちに発見し,

専門的治療を開始することが重要である。

 摂食障害は患者本人のみならず家族にとっても大きな困難であり,本人と家族を包括した支援,教育(療 育)・医療・福祉・当事者組織等による長期的発達支援が不可欠である。しかし,深井(2018)は,摂食障害 の治療において内科医や小児科医は「心理療法ができないため治療を引き受けにくい」,精神科医も「死に至 るほどのやせた状態では治療を引き受けにくい」実態があると指摘している。

 こうした日本の状況をふまえ,筆者らは 2018 年 3 月と 2019 年 3 月の 2 回,摂食障害を有する子ども・若者 および家族への社会的・包括的支援システムを構築しているスウェーデンにおいて,訪問調査を行った。本稿 では,スウェーデンの摂食障害センターと摂食障害当事者組織への訪問面接法調査を通して,スウェーデンに おける摂食障害の子ども・若者と家族への発達支援の状況を明らかにし,摂食障害の早期発見と本人・家族を 孤立させない発達支援のあり方を検討することを目的とする。

 訪問調査であるが,2018 年 3 月,スウェーデンの首都ストックホルムにある「ストックホルム県立摂食障 害センター(SCÄ:Stockholms centrum för ätstörningar)」の子ども・若者診療部門を訪問し,センター長(医 師),カウンセラー,院内学校教師,子ども本人へのインタビューを行った。ストックホルム県立摂食障害セ ンターの特徴は,①治療のなかに学校教育が組み込まれていること,②患者である「子ども」だけでなく,

「家族」も当事者として一緒に治療に参加する家族包括型の支援を重視した治療を通して発達支援を行ってい ることである。

 2019 年 3 月にはストックホルムの摂食障害当事者組織「FRISK&FRI」を訪問して,スタッフおよび摂食障 害当事者へのインタビューを行った。摂食障害者の有する発達的困難を解決していくには,医療に加えて長期 にわたる本人・家族への「支え」「伴走」が不可欠であり,当事者組織はまさにその役割を担っている。

 なお,「ストックホルム県立摂食障害センター」「FRISK&FRI」の訪問調査に際しては,事前に「ストック ホルム県立摂食障害センター」「FRISK&FRI」の管理職・責任者に「調査目的,調査内容,調査結果の利用・

発表方法,個人情報保護,研究倫理」等についての文書を渡して検討していただき,調査についての了解を得 ている。

2.スウェーデンにおける摂食障害を有する子ども・若者の現状

 欧米では日本よりも早く摂食障害が顕在化し,摂食障害患者数は 1990 年代にピークを迎え,その後減少傾 向にあると報告されている。

 スウェーデンでは 100 種以上の疾患治療に関するデータを登録管理するデータベースシステム「国家品質 登 録(national quality register)」 が 運 用 さ れ, 摂 食 障 害 に 関 す る デ ー タ 管 理 は「Riksät(Nationellt kvalitetsregister för ätstörningsbehandling:摂食障害の国家品質登録)」という機関が担当している。Riksätでは,

治療介入のタイプ,治療の結果および患者の経験および治療に対する満足度等について記録している。これに よればスウェーデンでは若い世代を中心に 75,000 〜 100,000 人が摂食障害に苦しんでいると推定され,摂食障 害を有する人々はケアを受けないことも多いため,実数はこれらを上回るとされている。

 Welch, E.ら(2016)は「国家品質登録」のデータのうちBED(Binge eating disorder:むちゃ食い障害)の診 断基準に当てはまる 850 人の患者を対象に,精神疾患との合併状況の調査を行い,むちゃ食い障害は大うつ病,

双極性障害,不安障害等と高い精神医学的関連を有し,とくにうつ病と自殺企図のリスクが上昇することを明 らかにしている。

 Clinton,D. and Birgegård, A.(2017)は,スイスで 2016 年に発表された摂食障害の生涯有病率調査の結果をも とに,スウェーデン人口に当てはめると 15 歳〜 60 歳の合計 19 万人(女性 14 万 7 千人,男性 4 万 3 千人)が 摂食障害を有している可能性があり,このうち 4 万 7 千人以上の女性と 2 万 2 千人の男性は医療に繋がってい ないと指摘している。日本では治療を受けている摂食障害患者は 2 万 6 千人と推計されているが(厚生労働省 研究班 2016 年調査),スウェーデンの人口は 1,022 万人で日本の約 12 分の 1 であることを考えると,スウェー デンにおいて摂食障害患者への支援が大きな社会的課題であることがわかる。

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 Gustafsson, S.A. ら(2011)は,スウェーデンの摂食障害ユニットで治療を受ける 18 名の女性(15 歳〜 19 歳)

を対象に面接法調査を行い,日常生活における社会的・文化的圧力への対処方法について分析した。摂食障害 は社会文化的な文脈の中で理解される必要がある社会的疾患であるが,調査対象者は「自分自身や周りの状況 を変えたいという思い」と「期待に応えられない状況・応えないという選択」のバランスを保つことに困難を 抱えており,特に摂食障害のある思春期の女子には「周囲の状況,自他の願い,様々な行動の可能性」の 3 点 を見極めるためのガイダンスと支援が必要とされている。

 摂食障害の心理的特徴の中核として,体重や体形へのこだわりや不満がある。世界的な患者数増加の背景に は 「 やせを礼賛し,肥満を蔑視する 」 現代社会の影響がうかがわれる。日本においても 20 代女性の平均体重は 毎年軽くなり,標準体重の「− 10%」の一歩手前の状況となっている。マスコミや雑誌,インターネット,

SNSなどでは,スリムな体型になるための記事・広告が日々膨大に流されており,個々人の病因は異なって いても,全体として考えると昨今の摂食障害の増加にはこうした社会的影響も否定できない。

 スウェーデンでは摂食障害の患者をモデル起用することに強い批判が出ており,ストックホルム県立摂食障 害センターのセンター長も抗議のコメントを出している。また,最近では摂食障害の男性患者の増加,スポー ツ選手やダイエットに励む高齢者が摂食障害に陥るケースの増加も指摘されていることは日本と同様である。

 国際的にも評価が高い「イギリス国立医療技術評価機構NICE治療ガイドライン」によれば,摂食障害の子 どもの治療には「きょうだい」を含めた家族の参加が重要であり,外来による治療を主としながら認知行動療 法や家族療法などが行われている。

 スウェーデンにおける摂食障害患者の治療と支援は「摂食障害の調査および治療のための臨床ガイドライ ン」(スウェーデン精神医学協会)および 「 摂食障害治療向上のための行動に関する世界的憲章―摂食障害の 患者さんとその家族のための権利と期待―」 に基づいて行われている。スウェーデンでは専門機関における治 療体制の整備のほか,摂食障害に関する国民の認知度の上昇,とくに神経性食欲不振症(拒食症)では重篤化 する前のより早期の入院治療の開始の普及,患者と家族の治療への参加および包括的支援がめざされている。

3.ストックホルム県立摂食障害センターにおける治療と発達支援

3.1 ストックホルム県立摂食障害センターの概要

 摂食障害治療において世界最大規模の専門クリニックである「ストックホルム県立摂食障害センター」は,

ストックホルム市中心部のほか,近郊の 2 施設を含め 3 つのセンターで構成されている。摂食障害の治療は精 神疾患や依存症の治療に含まれ,特有の困難・症状に十分に対応できていない現状がある。そこで本摂食障害 センターでは摂食障害専門のクリニックとして臨床及び研究に取り組み,心身の健康回復と彼らを取り巻く環 境(家族,学校等)へのアプローチも含めた効果的な治療を行うことを目指している。治療は摂食障害セン ターを構成する各クリニックで行い,研究・開発はカロリンスカ医科大学との共同で進められている。

 摂食障害センター全体の患者数は 9 歳から 65 歳,約 1,800 人で,特に 16 歳〜 24 歳が中心である。患者全体 の 3 %が男性であり,圧倒的に女性が多い。新規患者は 1,000 人/年,その 1/3 は 18 歳以下である。スタッフ は約 140 名で,その内訳は,医師 14 名(18 歳以下の子ども・若者部門,成人部門に 7 名ずつ),看護師,栄養 士,心理士 20 名,ファミリーセラピスト 4 名,PT,病院内学校教師 1 名,ケアコーディネーター 4 名(医療 コーディネーター 2 名,子ども・若者担当ケアコーディネーター 1 名,成人担当ヘルスケアコーディネーター

1 名)である。

 摂食障害は患者本人だけでなく家族も苦しむことが少なくないため,摂食障害センターでは患者本人のみを 治療対象とするのではなく,家族をエンパワメントし,家族と協力して対処する「家族包括型の治療・支援プ ログラム」が最も効果が高いと考えられている。治療プログラムは通院型と入院型(集中型)に分けられ,そ の中に家族支援や学校教育が組み込まれている。その結果,子ども部門のケアコーディネーターの報告によれ ば,先行研究では摂食障害の治癒率は 50%程度であるのに対し,本摂食障害センターではそれよりも高く 60%程度である。

 2014 年から「重度で持続的な摂食障害(severe and enduring eating disorders, SEED)」の患者に対して新たな 特別ユニットでの治療を開始した。Molin, M.ら(2016)は,従来にはない特別ユニットのケースマネー

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ジャー(ソーシャルワーカー又は看護師)による社会生活訓練,身体コントロール,家族支援,他機関との連 携による経済的支援等が,患者のQOL向上の観点からも大きな意義を有するとしている。

 さらに医師らは,摂食障害治療中の子ども・若者にとって学校はストレス軽減において効果があるとし,治 療中も心身に切迫した危機がない限り,学校教育を受けられるように院内学校や在籍校と調整する。入院・外 来治療中ともに病院内学校に通い,病院内学校で過ごす時間は,学習支援のみならず,「学校生活を再構築し たい」という子ども・若者の退院後の学校生活への意欲や期待を醸成する機会となるように取り組んでいる。

3.2 小児診療部門における家族包括型集中ケア

 小児診療部門の患児は拒食状態にある場合が多く,患児本人への治療に加え,個別または複数家族を対象に 写真 1  ストックホルム県立摂食障害センターの外観

写真 2  摂食障害センターの内観

写真 3  インタビューの様子

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するセラピー,電話相談,自宅訪問を提供している(成人部門ではインターネットを介した診療も行われてい る)。

 治療は,患者本人と医師・栄養士・セラピスト等が患者自身の支援ニーズと臨床ガイドラインに基づいて治 療方針を決定し,個別ケアプランを作成する。入院して最初の 1 週間に行われる集中ケアには家族全員が参加 するように求め,親・きょうだい・祖父母は患児と病棟で寝食を共にする。病室は家族ごとに個室が用意さ れ, 7 組まで受け入れることができる。その際,患児は病院内学校へ,きょうだい児は摂食障害センターから 在籍校に通うか,病院内学校で教育支援を受けることができる。親は法において権利保障されている年間 90 日の看護休暇を利用することができる。

 治療は,医師・栄養士・心理士による 3 つの講義を通して摂食障害による心身への影響,摂食に関する基本 的な情報を得ることから始まり,その後は通常 3 段階で行われる。第 1 段階では,飢餓状態と体重を回復させ る食事指導・栄養管理が優先される。通常,治療に最も長い時間を要する段階で,医療関係者の支援により患 児に食物・栄養を与え,体重を回復させる。第 2 段階では,患児の食物摂取に対する習慣・責任・意欲を取り 戻し,戻った体重を回復し続けることに焦点を当てる。第 3 段階は,友人や家族との協力のもとに再び正常な 社会生活・家庭生活に戻れるよう支援を行う「移行支援」が中心となる。他に懸念がある場合は,家族または 個別にカウンセリングを続ける。

 食事は摂食障害センターが調理・提供するが,どのくらい食べるかは家族と患児が相談しながら決めてい く。医師や栄養士ではなく,親が子どもに働きかけながら決めていくが,徐々に子どもが自分で決められるよ うになってきても,子どもと親の合意は欠かせない。これには親子双方にとって自信や関係性を再構築するプ ロセスが含まれている。患児を理解し,受け止め,ともに摂食障害に向き合い,支えるメンバーは多いほど予 後が良好との考えから,きょうだいや祖父母も一緒に参加することを勧めている。

 一般的に子どもの食事に関する対応は母親の比重が大きくなりがちだが,入院治療を通して父親・母親・祖 父母・きょうだいなど家族が一体となって患者と向き合う体制を整える。入院中であっても,医療スタッフよ りも親が患児をサポートするよう促し,医療スタッフは親・家族をサポートする。なお,家族は食事代として 一人一食あたり 60 スウェーデンクローナ(約 900 円)を支払うが,18 歳未満は無料である。

写真 4  食堂の様子

  5 〜 7 組の家族を対象にしたグループセラピーは, 1 回 3 時間,週あたり 4 日, 4 〜 8 週間にわたって行 われる。患児又はきょうだいの学校との両立など,家族のニーズなどに合わせて柔軟な対応が可能である。セ ラピーでは家族同士が摂食障害やそれに伴う影響などを語り合い,どのくらい食べられるようになっている か,どのようにして患児と向き合いながら取り組んでいるかなどを共有しながら,患児や摂食障害との向き合 い方を考えていく。

 数週間の入院の後に自宅療養へと移行していくが,摂食障害の治療は長期にわたるため,外来(通院型)で の支援・治療が続けられる。退院前にはケアプランを評価・検討し,医療コーディネーターが患児や家族と相

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談しながら,医師・栄養士・理学療法士の外来診療・訪問支援を調整する。さらに,患児が在籍する保育所・

学校等の関係機関と協議し,より包括的なケアを提供することもできる。このように治療の開始から退院後の 生活まで,患者本人や家族を孤立させず,支援を継続することに本摂食障害センターの特徴がある。

写真 5  ファミリー・セラピーの部屋

3.3 病院内学校「SCÄ」

 摂食障害の治療中は,短期又は長期にわたり在籍校から離れなければならないことがあり,病院内学校で教 育を保障する。本摂食障害センターにはストックホルム市が運営する学校「SCÄ」が設置され,静かで美しく 調和のとれた環境でストレスを緩和する「避難所」「安心できる場所」を目指している。スウェーデンでは病 院における学校教育が権利として保障されているが,患児のストレス軽減や治療効果においても有効であると して医師からの期待も大きく,治療中も当然,学校教育は不可欠なものとして組み込まれている。

 病院内学校では 20 歳までの子ども・若者に学校教育を提供し,教育を受ける子ども・若者数は年間 100 名 程度,そのうち 40%は患児とともにファミリーケアを受けているきょうだい児である。特別教育家の資格を 有する教師 1 名が常駐し,基礎学校(日本の小・中学校に相当)を担当している。入院中の教育保障はもちろ ん,通院治療中や退院後に在籍校に通えていない場合(不登校等)に外来診療の時間に合わせて病院内学校に 通学することも可能であり,最長 20 歳まで保障する。高校生への対応が必要な場合は,ストックホルム県立 サックス南病院パノラマ学校に所属する高校教師が派遣される。

 医師・セラピスト・ケースワーカーは病院内学校教師と緊密に連絡をとり,子ども一人ひとりへの個別調整 を行う。病院内学校教師は子ども本人,保護者,医療関係者,在籍校(ホームスクール)などと日常的に連携 しながら,必要があれば在籍校を訪問して,管理職へのアドバイスなどを行う。退院時の移行支援も同様であ る。子どもの在籍校や関係機関と摂食障害に関する情報等を共有し,学校生活における配慮等を調整するコー ディネーターとしての役割を担っている。

 摂食障害センターの病院内学校の教師であるエリザベス・ハートマン・ポンテン氏は,「ここに来る摂食障 害の子どもたちは一様に『良い成績を取りたい』と言う点が,他の病院内学校にいる生徒と異なる傾向です。

ここでの授業時間は 3 時間/週であり,少なく感じるかもしれませんが,勉強するよりも,楽しい学校生活を 送ることで『学校に戻りたい』『学校に行きたい』というイメージ・想いを膨らませ,元の学校に戻ることに 意識をつなげていくことを大切にしています。体重増加・命の危機脱出が一番,勉強は二番。治療中も途切れ ることのない『子どもらしい生活』を保障することがここでの最も重要なことです」と語る。

 調査訪問の際に,小学生年齢の子ども 5 名にインタビューする機会を得た。自分や患児であるきょうだいの 状況を受け止めながら,「ここは安心できるとてもいいところだよ」「ここではみんなと一緒に考えたり,取り 組んだりできるし,家族もスタッフも友達も一緒だからさみしくない」「日本にはこういう施設がないのなら,

摂食障害の子どもや家族はどうしているの?とてもさみしいでしょうね」などと語っていた。

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4.摂食障害当事者組織「FRISK&FRI」による当事者支援

4.1 摂食障害当事者組織「FRISK&FRI」の概要

 ストックホルムに本部がある摂食障害当事者組織「FRISK&FRI」は 1983 年に設立され,2003 年に全国組 織になった非営利団体である。スウェーデン国内においてストックホルム,マルメ,ボーレンゲなどに全 15 支部を展開している。

 会員は中学生以上の摂食障害の本人・家族等であり,ストックホルム市に 1,040 名,全国で 2,040 名の会員を 擁する。FRISK&FRIのスタッフのほとんどが摂食障害の本人かその家族である。さらに研修を受けたボラン ティア(全国で 200 名)が活動を支えている。運営費の大半は国から支給され,会費や補助金が加わる。会費 は個人会員(260SEK/年),家族会員(400SEK/年),サポート会員(200SEK/年),団体会員(500SEK/年)で ある。

 FRISK&FRI代表のステファニー氏は,スウェーデンにおける摂食障害の発症には,痩せていることへの個 人的・社会的価値観に加え,両親の別居・離婚など家庭不和,両親との接触の乏しさ,ステップファミリーな どの家族関係の不安定さ,親からの高い期待,偏った養育態度も発症促進となっていること,さらに家族のダ イエット,家族・友人等からの食事・体形・体重についての批判的コメントなども病前体験として発症に関与 している可能性を指摘している。

 スウェーデン社会においても「摂食障害は恥」「摂食障害は完治困難」と捉える傾向があるが,社会自体に 写真 6  病院内学校の教室

写真 7  ストックホルム県立摂食障害センターウェブサイト掲載の訪問調査記事

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摂食障害に陥る様々な要素があり,摂食障害の正しい理解と支援を広めていかなければ本人・家族が安心して 暮らせず,状況は好転しないと語る。

 こうした背景から,FRISK&FRIではアクションプランを作成し,人との関わりを介した支援を提供してい る。FRISK&FRIのビジョンには「誰もが自由に自分自身になることができる,摂食障害のない社会」を掲げ,

価値観として「人々の違いと平等な価値の受容と尊重」「精神的疾患への寛容性」「完全に健康であり,摂食障 害から解放されていること」「摂食障害を予防し治療するのに十分な資源のある社会」などが示されている。

 摂食障害の当事者とその周りの人を支援し,より良いケアのために働き,予防的に働くことをめざして,職 場の人間関係にストレスを抱えている人,競技成績の向上と裏腹で追い詰められ孤独で他に相談先がないこと が多いスポーツ選手,メディア等に惑わされている中高生などに特に注意しながら支援を行っている。治療が 一段落して医療的支援がなくなった後の継続的支援,学校での講演活動,電話・チャット・面談による相談活 動等も行っている。学校からの依頼を受け,全国で 1 年間に 6000 人を対象に講演を行っている。加えて国・

地方行政等への社会的発信にも注力している。

 主な会員サービスとしては,会誌「Insikt」の発行(年 4 回),会員の居住地域で開催されるイベントなどの 情報提供,メンターへの申請,ストックホルム・ヨーテボリ・マルメ等の各都市におけるサポート・グループ 等の提供がある。

写真 8  インタビューの様子

VI FICK BESÖK AV EN JAPANSK FORSKARDELEGATION

I veckan fick vi besök av en japansk delegation som även tidigare år besökt Stockholm. Det här året ville de få insyn och förståelse för på vilket sätt vår verksamhet är utformad. Samt hur vi tänker att vi kan göra för nytta för drabbade och närstående men också hur vi jobbar förebyggande och verkar för bättre vård.

Det var ett lärorikt möte. Vi tar bland annat med oss hur olika synen på ätstörningar är i en samhällskontext. Att motarbeta fördomar och stigma kring att vara drabbad av psykisk ohälsa i stort och ätstörning specifikt är något vi förstod är i tidiga dagar i Japan, något som belyser att vi här kommit en bit på väg även om det finns mycket kvar att göra. Delegationen besöker även Norge, Danmark, kanske Finland och Tyskland innan de återvänder hem.

4.2 摂食障害当事者へのインタビュー

 摂食障害を経験した成人当事者 2 名にインタビューを行った。彼らの歩んできた道のりの一端を記す。

 Aさんはスウェーデン出身の女性である。しばしば引越しをする家族のために各地を転々とし,その各地で は相談するような仲間ができず,孤立しがちだった。身近な親戚の女性たちはみなダイエットをしており,自 分もダイエットをしないと目立つし,ダイエットをすることで気持ちも落ち着いたために,のめり込んでし まった。いつのまにかエスカレートしていき,11 歳の時に児童精神科に入院した。その後,33 歳まで摂食障 害の治療を要した。

 児童精神科に入院した 11 歳頃から病院では治ったふりをすれば退院できることを知って,結局入退院を繰

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り返すことになった。33 歳の時,初めて自分の経験や気持ちを他者に相談し,素直に語ることができた。こ の時,カタルシスの重要性を知ったという。

 Bさんはドイツ出身の女性である。彼女はずっと家族関係が不安定であった。かつ,集団や社会に馴染めな いでいる幼少時代を過ごした。自分のことを真に相談できる人がいなかった。自分の置かれている状況は子ど もの自分にはどうにもできない。自分でコントロールできることといえば食事のみだった。彼女の場合は,外 見はあまり変化がなかったので周囲から気づかれにくかったが,気づかれると引っ越しを繰り返した。結局,

摂食障害の治療には 13 歳〜 30 歳までを要した。治療の過程で,オープン・ダイアローグの重要性を知った という。

4.3 患者・家族を孤立させない「ピア・サポート」

 インタビューをした摂食障害当事者が語っているように,「自分だけではない」「ともに語り,考えてくれる 仲間がいる」ことに気づき,共に歩むことは摂食障害の治療・予後において非常に重要なことである。それゆ

えにFRISK&FRIではメンター制度を設け,15 歳以上の摂食障害経験者で少なくとも 2 年間健康状態にある人

が,メンターとして自身の経験を相談者と共有しながら,本人・家族の声を傾聴し,ケアを補完していく役割 を担っている。メンターとの連絡は基本的に 5 ヶ月間にわたって行われる。メンタリングの方法は 2 通り用 意され,①メンターに週に 1 〜 2 回,例えば電子メール,電話またはテキストメッセージで相談することが できる,②毎月 1 回,メンターに直接会うかスカイプを介して会うことができる。

 摂食障害に関する相談活動では,居住地域に最も近い支部が担当する「サポートメール」,ケアやその他の 治療を補完するためのいつでもアクセス可能な「サポートチャット」,ピア・サポートを受けることができる

「サポート電話」,摂食障害の影響を受けている当事者・関係者のためのミーティングと支援グループである

「サポート・グループ」が提供されている。

 当事者・関係者のためのサポート・グループにおけるオープン・ミーティングは,各支部で開催している。

ここで参加者は自分と同じような経験をしている人々と出会う。当事者・関係者のためのオープン・ミーティ ングでは,回復に焦点が当てられている。支援グループは他の援助を補完するものであり,例えば治療やケア の代わりにはならない。このオープン・ミーティングは 18 歳以上の人々を対象としている。

 サポート・グループにおいては「当事者への支援 グループ」「関係者支援グループ」が提供されている。「当 事者への支援グループ」では,同じような経験をもつ人たちと会うことができ,心地よさや理解,感情的なサ ポートを見つけることができる。「当事者への支援グループ」は他の援助を補完するものであり,例えば治療 やケアの代わりにはならない。「当事者への支援グループ」は多くの場合,参加者に摂食障害の経験があり,

少なくともここ 2 年間は健康である 1 人または 2 人のリーダーによって開催されている。週に 1 回集まり,グ ループは 4 〜 8 人の参加者で構成されている。

 摂食障害の影響を受けている当事者との関係がうまくいかなくなることも多いので「関係者支援グループ」

に参加することを推奨している。ここでは似たような状況にある関係者(家族など)と会うことができる。

「関係者支援グループ」は 4 回ミーティングを開き,摂食障害の影響を受けている人に関わる経験について話 をする。

 議論されるテーマは,どのようにして家族が関係をとるべきか,悲しみと無力感についての自分の感情をど のように扱うことができるのかということになる。例えば,摂食障害を抱える子どものことを認められない親 も,親同士の関わりのなかで,子どもの摂食障害に何らかの家族関係や家庭の状況,家族の理解なども影響し ていることに気づいていく。家族は患者本人の支援においてとても重要な要素となるので,家族をエンパワメ ントする支援が不可欠である。また,摂食障害の親をもつ子どもへの支援は,現在のところ行われていない が,今後の重要な課題とされていた。

4.4 予防的 活動のプロジェクト

 予防的活動にも力を入れており,「ミッション:フレッシュ」「ミッション:自尊心」という名称のプロジェ クトが進行している。

 「ミッション:フレッシュ」は,摂食障害,治療方法,摂食障害の予防方法についてもっと知りたい人を対

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象とした講義プログラムで,摂食障害情報センター(KÄTS)との共同で教材開発を行っている。FRISK& FRI の全国理事会には,スウェーデン摂食障害情報センターのスタッフが 2 名参加している。

 「ミッション:自尊心」は学校へ出向き,子ども・若者と自尊心・コミュニケーションについて話し合う予 防のための講演活動である。子ども・若者には講演活動を通して,恐れずに早くにコンタクトをとることの重 要性,メディアの影響に惑わされないことを伝えている。講演では摂食障害という表現を直接的に使わなくて も,子ども・若者自身が徐々に摂食障害について理解し,子ども・若者が自分の状況に気づいて相談に結びつ くような教材を作成している。また,学校にもパンフレットを置いているが,周囲の目を気にしたりしてそれ を手に取ることも躊躇されることがあるので,ウェブサイトにも掲載している。

 学校から依頼があるということはすでに摂食障害の問題が顕在化しているということであるが,FRISK& FRIはあくまでも予防的対応に力を入れていきたいと考えているため,現実には後追い的な状況であることに 大きな危機感を感じている。

写真 9 摂食障害の講義プログラムの様子

4.5 NSPH(Swedish Partnership for Mental Health)の横断的支援

 スウェーデンでは 患者・当事者組織の協議会である「NSPH(Swedish Partnership for Mental Health)」が組織 され,NSPHはうつ・統合失調症・精神疾患・自殺・薬物依存・摂食障害・発達障害などの患者・家族組織 13 団体(2019 年 3 月現在)で構成されており,FRISK&FRIもその構成団体の一つである(表 1 )。これらの団体 は運営費の大半が国から支給され,会費やヨーロッパ共同体等からの補助金・基金によって運営されている。

 さて,摂食障害においては,過食に嘔吐など代償行為を伴った例では,伴わない制限型に比べて自傷行為,

自殺企図,アルコールや薬物乱用などの自己破壊的行為,万引き,性的逸脱などの衝動行為をともなう例が多 い。このような場合には,アルコールや薬物依存症等の当事者組織から相談のある場合も多く,当事者組織間 での連携・協働がとても重要になっている。NSPHの当事者団体のスタッフ同士がお互いに研修を行っている ことからも,患者の抱える困難が複合的であることが推察される。

5.摂食障害を有 する子ども・若者と家族への発達支援の課題

 スウェーデンにおける摂食障害の子ども・若者と家族への発達支援に関する訪問調査から,摂食障害を子ど も本人の問題に帰することなく,家族をエンパワメントし,家族が摂食障害の子ども・若者の力になれること を第三者が伝えて支えることが,摂食障害の治療や発達支援の核となることが明らかになった。

 摂食障害センターのスタッフたちは「ここに親子が一緒に来たら絶対によくなる」という信念をもって治療 にあたるとともに,摂食障害の治療は時間がかかるので,「いつでもここに戻ってきていいよ」と伝え続ける。

(12)

行きつ戻りつする「自分」や「子ども」を受け入れながら向き合っていけるように親に「ゆとり」を持たせな がら対応し,再来院の時には成人になっていたとしても支援を継続する体制が整っている。

 また,治療終了後に親がうまく対応できていない場合には,個別に親を再教育・支援することが可能であ る。例えば,親自身に精神疾患や依存症などの支援ニーズがある場合,親子の入院期間を延長して一層丁寧な 治療・支援を行ったり,経済的支援などの福祉サービスとの連携,後見人や行政関係者を含めた子どものニー ズに関する話し合いなど,家族の状況に応じて入院中や退院後の生活や家族の関係性を見通した支援を調整し ていく。

 一方,子どもが餓死寸前で運ばれてきても「この子を治してくれ」と言うばかりの親も多く,家族と一緒に セラピーを受けることを拒む子どもも少なくない。摂食障害センターでは,このような家族の関係修復も含め て治療・発達支援をしていくことが,摂食障害の子ども・若者の予後を良好にしていくと考えられていた。家 族をエンパワメントしつつ,摂食障害の子ども・若者や家族を孤立させず,学校教育も含めて通院・入院中も 途切れることのない「子どもの日常」を保障することの重要性を確認できた。

 日本における摂食障害の子どもと家族の支援でも,医療と学校教育・福祉が連携して早期から介入し,子ど もと家族をエンパワメントしながら発達支援していくシステムの開発が不可欠な課題である。

 また,摂食障害の当事者・家族組織である「FRISK&FRI」を訪れた際には,摂食障害を本人の「個人的問 題」に帰することなく,本人・家族をエンパワメントするピア・サポートおよび社会的発信を当事者組織が担 うことの重要性が明らかになった。

 摂食障害患者の「近くにいる人」(家族・パートナー・兄弟など)が,摂食障害に苦しんでいる本人を手助 けするのは難しい。患者のみならず「近くにいる人」にも助言・サポートが必要であることを認識することが 大切である。それゆえにFRISK&FRIでは,患者本人の支援において重要な役割を担う「家族・近くにいる人」

へのサポート,特にピア・サポートのレベルアップが目指されていた。FRISK&FRIの取り組みから,摂食障 害の本人・家族を孤立させずエンパワメントしながら支援していくことの意義,摂食障害を抱えて生きていく ための「支え」「仲間」を保障することの重要性を確認できた。

 日本においても,摂食障害の診断基準は満たさないものの,摂食障害ハイリスクや食に関する特徴的な心理 状態(食事に対する囚われや落ち込みなど)を有する者も多く存在している(山蔦ら:2016)。給食を食べな くなった,朝食を食べない,肉や魚・油ものを極端に嫌う,料理の本やテレビ番組に特に興味が強くなった,

自分の腕や足が太いと言って不機嫌になることが多い,やせているのに以前より活発になって椅子に座ろうと せずマラソンなど運動を過剰にしたがる,自分が食べることよりも家族に食事を摂らせようとする,家族が食 事を残すと怒るなど,様々なサインや前兆は示されていることが多い。それを見逃さず,体重が減っていない か確かめることが重要である。

 摂食障害を直接的な理由として病院に行くのは抵抗がある場合でも,例えば便秘がひどい,体温が低い,身 長の伸びが少ない,髪の毛が抜ける,生理不順があるなどの身体症状や身体の不調・不具合であれば,医師に

表 1   NSPH(Swedish Partnership for Mental Health)の構成団体

NSPH

RISKSFÖRBUNDET ATTENTION (ADHD等発達障害)

RISKSFÖRBUNDET BALANS (うつ,双極性障害)

FMN (薬物依存)

FRISK & FRI (摂食障害)

RFHL (薬物依存)

RSMH (精神疾患)

SCHIZOTRENIFÖRBUNDET (統合失調症)

SHEDO (摂食障害・自傷行為)

SPES (自殺)

SUICIDE ZERO (自殺)

OCD-FÖRBUNDET (強迫性障害)

SVERIGES FONTÄNHUS RIKSFÖRBUND (統合失調症)

ÅSS (不安障害)

(13)

相談することへの抵抗が軽減されることも少なくない。

 摂食障害の重篤化・慢性化を防ぐためには早期発見・早期支援が鍵となるため,養護教諭・栄養教諭・教師 の役割は大きい。例えば,小・中学生対象の質問紙「子ども版EAT26 日本語版」は,保健室でバイタルチェッ クをする際に「心配なやせだな」と思われる子どもに対して実施することで,コミュニケーションづくりの きっかけになることが期待されている(Chiba:2016,永光:2015)。

 また,文部科学省は「食に関する指導の手引き:第 2 次改訂版」(2019 年 3 月)において「個別的な相談指 導は,授業や学級活動の中など全体での指導では解決できない健康に関係した個別性の高い課題について改善 を促すために実施」し,偏食,肥満・やせ傾向,食物アレルギー,スポーツ,食行動に問題を抱える児童生徒 を対象に栄養教諭・管理栄養士・養護教諭・担任等の学校全体と家庭,医療等が連携して対応にあたることを 求めている。 2 次改訂版では新たに,摂食障害や発達障害及び感覚過敏を有する児童生徒への対応のあり方を 示した。改訂ごとに対象を拡大しながら,発達支援において子どもの食に関する課題を早期発見・支援するこ とが重要であることを示しているといえる。

 摂食障害を有する人とその家族が孤立せずに過ごせるような,摂食障害本人と家族・地域・社会を架橋する 連続的なサポートのあり方を,当事者の視点を含めて構築することが強く求められている。

6.おわりに

 本稿では,スウェーデンの摂食障害センターと摂食障害当事者組織への訪問面接法調査を通して,スウェー デンにおける摂食障害の子ども・若者と家族への発達支援の状況を明らかにし,摂食障害の早期発見と本人・

家族を孤立させない発達支援のあり方を検討した。

 今後,日本においても摂食障害の予防と早期支援の取り組みにおいて一層の注力が不可欠であり,その際に は当事者組織のピア・サポートの果たす役割も大きいと考えられる。これまでは医療が 中心となってきた摂食 障害の治療と支援においても,早期から当事者組織によるピア・サポートを組み込んで当事者・家族へのエン パワメントを行うことが求められている。

 摂食障害の治療およびアフターケアにおいて,摂食障害を子ども・家族の「個人的問題」に帰することな く,また子ども・家族を孤立させない「子ども・家族包括型発達支援システム」のあり方を究明していくこと が課題である。

附記

 本研究は 2016 年度科学研究費補助金若手研究B(研究代表:田部絢子,若手(B)16K17476),2019 年 度科学研究費補助金基盤研究C(研究代表:田部絢子,基盤(C)19K02941)の研究成果の一部である。

文献

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(15)

*1 Ritsumeikan University (56‑1 Toji-in Kitamachi, Kita-ku, Kyoto 603‑8577, Japan)

*2 Tokyo Gakugei University (4‑1‑1 Nukuikita-machi, Koganei-shi, Tokyo, 184‑8501, Japan)

「子ども・家族包括型発達支援」の課題

―― 摂食障害センターおよび摂食障害当事者組織の訪問調査から ――

Issues of Eating Disorder and “Children-Family Comprehensive Developmental Support” in Sweden:

Survey on a Center for Eating Disorder and Organization of Persons with Eating Disorder

田 部 絢 子

* 1

・髙 橋   智

* 2 TABE Ayako and TAKAHASHI Satoru

特別ニーズ教育分野

Abstract

In this paper, we clarified actual situation of developmental support for children and youth with eating disorder and their families and considered how to implement early detection of eating disorder and developmental support for person and family not to isolate, thorough the visiting interview survey on a center for eating disorder and organization of persons in Sweden.

For that survey, we had visited to the “Stockholm Center for Eating Disorder” in March 2018, and to the “FRISK&FRI, an organization of persons with eating disorder” in Stockholm in March 2019.

In the future, further efforts will be indispensable in Japan for the prevention of eating disorder and early supporting efforts, in which case the peer support from the organizations of persons will play a major role. Even in the treatment and support of eating disorders, which until now have been centered on medical treatment, it will be necessary to empower persons and families by incorporating peer support by organizations of persons from an early stage.

It is essential not to attribute eating disorders to “individual problems” of children and families in the treatment and aftercare of eating disorders, and to pursue the ideal way of “children-family comprehensive developmental support” that does not isolate children and families.

Keywords: Sweden, Eating Disorder, the Stockholm Center for Eating Disorder, “FRISK&FRI, an organization of persons with eating disorder”

Department of Special Needs Education, Tokyo Gakugei University, 4-1-1 Nukuikita-machi, Koganei-shi, Tokyo 184-8501, Japan

要旨 : 本稿では,スウェーデンの摂食障害センターと摂食障害当事者組織への訪問面接法調査を通して,ス ウェーデンにおける摂食障害の子ども・若者と家族への発達支援の状況を明らかにし,摂食障害の早期発見と

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 そのために,2018 年 3 月にスウェーデンの「ストックホルム県立摂食障害センターStockholm Center for Eating Disorder」,さらに 2019 年 3 月にストックホルムの摂食障害当事者組織「FRISK&FRI」を訪問調査した。

 今後,日本においても摂食障害の予防と早期支援の取り組みにおいて一層の注力が不可欠であり,その際に は当事者組織のピア・サポートの果たす役割も大きいと考えられる。これまでは医療が中心となってきた摂食 障害の治療と支援においても,早期から当事者組織によるピア・サポートを組み込んで当事者・家族へのエン パワメントを行うことが求められている。

 摂食障害の治療およびアフターケアにおいて,摂食障害を子ども・家族の「個人的問題」に帰することな く,また子ども・家族を孤立させない「子ども・家族包括型発達支援システム」のあり方を究明していくこと が課題である。

キ ー ワ ー ド : ス ウ ェ ー デ ン, 摂 食 障 害, ス ト ッ ク ホ ル ム 県 立 摂 食 障 害 セ ン タ ー, 摂 食 障 害 当 事 者 組 織

「FRISK&FRI」

参照

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