被服設計における基礎研究 : スカート原型につい て
著者 山田 民子
雑誌名 東京家政大学研究紀要 2 自然科学
巻 35
ページ 105‑115
発行年 1995
出版者 東京家政大学
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010565/
〔東京家政大学研究紀要 第35集 (2),P.105〜115,1995〕
被服設計における基礎研究 スカート原型について
山 田 民 子
(平成6年9月24日受理)
Afoundation study for clothing designs 一 Basic patterns of Skirt −
Tamiko YAMADA
(Received September 24,1994)
緒 言
青年女子の身体計測値の結果より,近年,青年女子の 体型が変化して来ていることがわかった.特に後腰部角 度,前胴高,後胴高に大きな変化が見られた.後腰部角 度においては1970年の計測結果では19.92°(n=50,c,
v=3.74)であったが1990年では23.56°(n=252,c.v=
4.34)であり前胴高より後胴高の方が高いという結果が 得られた1>.
1970年時の体型は後腰部角度が小さく偏平な体型が多 かったのに対し近年では,後腰部が大きく張り出してい る体型が多くなって来ている.又前腰囲と後腰囲を比較 した結果,後腰囲の方が広いということがわかった.
本報では後腰部角度が23.0°のスカート原型(8本ダー ツ)にっいて検討した.
前スカート,後スカートの脇線に前後の差をっけずダー ッは均等に配分したもの(A)と,前スカート,後スカー
トに前後の差を1cmっけ後スカートを幅広くし,ダー ツは体型に合わせて分量を考えたスカート(B)の2種類 をトワールで作成した.着装して動作を加えた時に変化 量の多い箇所を写真判定により測定箇所とした.動作時 と静止時を三次元座標読取機により計測し変化量を求め て比較検討を行った.
C.B. L. S.L. S.. 賦
実験方法 1.被験者 1名
後腰部角度 23.0°
胴囲 65.Ocm 腰囲(Middle Hip)87.7cm
図1 資料スカート(A)
(脇線は身幅の中央でダーツは均等に配分したもの)
C.B. L. S.L. S. L.
C.F.し
服飾美術科 被服構成学実験研究室
図2 資料スカート(B)
(脇線は身幅の中央より1cm前スカートの方へ移動し、
ダーツは体型に合わせて配分したもの)
腰囲(Hip)
前胴高 後胴高
91.5cm 98.1cm 99.Ocm 18.Ocm(前中心)
(図1,2)
腰丈(Hip下がり)
2.スカートの製図 2種 3.用 布
シーチング 綿100%
組成 平織 厚さ 0.34mm
密度(本/c㎡)縦 20.6 横 22.4
4.計測機
座標読取装置(ドレープトレーサ)
試作したドレープトレーサの写真を写真1に,概念図 を図3に示した.試作装置はX−Y平面内で動く三個の ジョイントを持っアーム,Z軸方向にアーム全体を上下 させるスライドレールと試料を回転させるターンテーブ ルをおもな構成要素とし,それぞれの回転部にはエンコー ダが配置されている.試料測定点における各ジョイント とターンテーブルの角度データはカウンターボードを介
Laser morking Joinヒ1
口ロロロ⇒T・P…。・d Computer 口 o
Sample Turn table
写真1 ドレープトレーサー
してパソコンに取り込まれる.また,各ジョイントはアー ムの取り付け部に設置されたレーザマーカからの光に沿っ て調整されて原点が決定されると共に,試料に照射され たレーザ光の位置は測定点としても利用できる.測定点 のX−Y平面上での座標は図4により各アーム長と角度
Shaft l
﹁ /
Surface of
Sample
図3 ドレープトレーサーの概念図 図4 測定点の座標の求め方
被服設計における基礎研究一スカート原型について一
データを用いて算出できる2).サンプル回転軸の中心か ら測定点Pまでの距離をR,角度をθとすれば測定点の 極座標(R,θ)は次式より求めることができる.
R=,E7Y7−F ( B F:[丁一
A=11・sinα1十12・sin(α1十α2)十 13●sin(α1十α2十α3)
B=(1且十12十13)−C
C:=11・cosα1十12●cos(α1十α2)十 13●cos(α1十α2十α3)
L:一直線上状態のアームの先端からターンテーブル の中心までの距離(25mm)
1監:関節1のレバーの長さ(300mm)
1、:関節2のレバーの長さ(300mm)
13:関節3のレバーの長さ(200mm)
α1,α、,α、:アームの屈曲角度
また回転台の移動角度をφとすると測定点Pの測定角 度θは
A
で求めることができる.
θ=φ十tan−l
B十L 更に,ドレープトレーサの緒言は
第一関節と夕一ンテーブルの中心間距離:825mm 関節角出力
第一関節:0.15度/パルス(2400パルス/回転)
第二関節:0.15度/パルス(2400パルス/回転)
第三関節:0.20度/パルス(1800パルス/回転)
ターンテーブル角出力:O.1度/パルス (3600パルス/回転)
ターンテーブル回転速度:0.01〜0,15rpm 測定方法
関節付き接触レバーをスカート上に描かれた方眼の線 を1順次測定することによって外周形状を求めていく方式 である.
測定したX,Y, Zの値から面積を求めることができ
る.
試作ドレープトレーサーにより静止時と動作時の測定 をし三次元形状を求め,二次元形状(面積)で表して縮小 率を求め比較検討した.
10×10c㎡の方眼の中に縦,横1cmの線を引いた.静 止時において1cmごとの外枠の点を測定し面積を求め 基本とした.またダーツが設定されていて10×10c㎡に満 たない箇所においても静止の状態で測定したものを基本
とした.
動作を加え同様の操作にて形状を測定した.必要に応 じてこれらの結果を立体形状として表示することができ る.Aタイプ, Bタイプ2種のスカートにっいて動作に よって大きく変化する箇所5か所を5回ずっ測定し,平 均値を求めて結果を比較検討した.
動作は足型の上に縦23.Ocm横7.5cm高さ7.5cmの板 を固定し,右足を乗せた状態で計測した.計測箇所は動 作時に多くしわが寄ったとみられる箇所を写真で判定し,
前スカートにおいては3箇所,左脇においては2箇所と
した.(図5).
1 2
H.L.
3
C.F.L.
@5
前スカート
図5 測 定 箇 所
結果及び考察
5 H.L
4
S L.
左脇スカート
タイトスカートの原型は腰囲寸法に4cm〜5cmのゆ とりを加えて作成するのが一般的である.しかし,周囲 長が同じであっても体型形状は異なる.体型によって脇 線の位置,ダーツの配分の仕方が異なって当然である.
このことから後腰部角度が23.0°の体型にっいてA,B 2種のスカートを作成し,動作時のしわによる面積の変 化を求めた.しわの少ない方が無理がないと考え,静止 時との比較検討を行った.
1.縮小率にっいて(表1)
測定箇所1,2,3の前スカートにおいてはAスカー トの縮小率は平均36.22%であり,Bスカートの平均は3 2.91%であった.計測した3箇所において,縮小率はす べてBのスカートが小さくなっている,特に計測箇所2 については計測箇所1,3より変化力沙ないことがわかっ
た,
表1
縮小率の比較
り損
定 箇
所
1 2 3 4 5
基本の面積(㎜2)8943.27 9543.07 10000.00 7503.41 6973.04
測
A 定
スカ 回数1
1 2 3 4 5
3533.48 5143.43 5335.88 4471.98 6237.90
6347.09 8152.41 7554.32 7528.36 7753.54
4981.85 6236.23 5246.22 5788.70 5521.34
7078.63 6364.47 6571.82 6214.50 6356.03
6307.28 5961.32 6261.29 5424.76 5917.36
ト平均値(m2) 4944.54 7683.54 5554.86 6517.09 5974.40
縮小率(%) 44.71 19.49 44.46 13.14 14.32
り演 定 箇
所
1 2 3 4 5
基本の面積(m2)8889.46 9335.49 10000.00 7740.65 7012.46
測
B 定
スカ 回数1
2 3 4 5
4368.35 4091.29 5420.46 4616.54 6570.51
8606。81 8860.83 7882.21 7753.54 8322.88
5510.25 4909.85 6095.50 5869.15 5662.93
6802.19 7101.82 6504.92 6785.52 6731.43
6791.01 6544.70 5792.56 6096.33 5743.66
ト平均値(m2) 5013.43 8287.29 5609.54 6785.18 6193.65
縮小率(%) 43.60 11.23 43.90 12.34 11.68
測定箇所4,5の脇の部分においても,Bスカートの 方がAスカートより縮小率が1.72%少ない.
体型に合わせてダーッの配分をしたBタイプのスカー トの方がしわが少ないことがわかった.
2.縮小率の変化を表わす位置について
前スカートにおいて縮小率の大きかった測定箇所は,
1と3であった.Aタイプのスカートでは,測定箇所1 が一番縮小率が大きかったが,Bスカートでは測定箇所
3が一番大きかった.測定箇所1は脇線に近い箇所であ り,測定箇所3は中央寄りでヒッププラインより下に位
置する箇所である.
測定箇所2は,変化の少ない箇所であったがBスカー トの方がより変化が少なかった.
しかし,どの測定箇所においても縮小率の差はわずか であった.
脇においては測定箇所5の方が測定箇所4より縮小率 の差が大きかった.4における縮小率はほとんど変わり がない.ヒップラインより上の部分において変化がみら
れた.
被服設計における基礎研究 スカート原型にっいて
り「8ρc τrocc「
D8tc : 93!10!22 Arca : Te5t COndi t ions :
8943.266 0
0
翼O R J1−P j 2−P J3−P x Y z J1−D
12345678901Z34567890123456789012345678901
11−11111112222222222333333333344 7765457117899666666669778384監3666672236778888881538777222222222223482478888790238899999998877777777777777777788888888899999 99999999999999999999999999999999999999999
4555377153346668800−184886206622且801789442222211903333555566666777τ64298887864192233333344555555555555555555555444444444333
833135739137678642323742045787899177−71880987657239099888888887898817644445655330065555555667667777777777177766666666666666 99999999999999999999999999999999999999999
5464910399656385440397911637415408−775童5545433560674264085297332423量6393772573704459995925280485305304285182704−63コ88563055・︐・・︐●︒⁝°°°°°..°°°曹゜°°°°°°°°°°°°°°°°°°°σ23568910置ー5343453455643433231置O10866533229816544321 12345678900099999999 1 116612869938911523446488731004830050781956059522687432394401871096578834822254867355
1694802141833112222886072819置686且293717−1050693676413455667777−578763162220529630033444555555555555555566666666555554433333 111111111−111−1111111111ーー111111111111111
345577888889890111−300000000009990877653300000000000987765432−11111Lll塵0−24567890077777777777666566666666666665666666656677
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図6 測定点1に置ける静止時の座標と面積
D「epe 了「8c¢r
D編te : 93!lo, 22
Area ; re5t COnd i tion5 :
コ533.4S6 0
0
NO RJl−P J2−P J3−P x v Z Jl,D
12345678901234567890乳234567890−234567890ー ー1童11111112222222222333333333344 0940248監014570784602552801438349539065340量2344422618978888909888998091108788999991111111ー竃ー置 ー 1 111 竃 04127826432367476022−337046993352176726−0
董7553267981355554188888792 1 9979:9198681
999999989 9999999 9999 9 9999 999999999 9999999 9999 9 9999 935512274388858乳2050725066646724894823749101890860794654410368220062404755916803018887787787777777788889999888888998988999899999999999999999999999999999999999999999
585363266−537897688667841且24301147278−405193890重41110402504367949442920塞3950566381422000140竃997288置205566245040008i482量9124・ ・ O ・ ︐ . ● ● ・ ● O ■ O ● ● . . . . . ● . O . . ● . ・ ● 暦 O ● ・ . ・ O O ● ■ ・ ●90921−82−53843899745984竃627454407492034重90977665554456566666569900090ー墓ー2ー量11且0000
1 −11 竃−置11重ー111且111 8904178304463080586302967962188395696乳908062570475343331691643量3384943831539376810171526605697−2088且3832224156678454354490ーサ コ ロ コ コ ロ ロ り の ロ の コ ロ コ り ゆ ロ コ の ロ の のロ コ サー989967量36:0059−934606519571647530964050量
44455556654655564432211212334321121222−24355855575555579059556585558965
2.°0°°・1・°1°●877°5c.3°4°44444︒934982497793488838018887888883
110監1110965434
4
99 999 99 98 8 88 8 8 8
゜°850776107・6°8368・・︼3°°21°°4
30°°0°°°°.24°3°4°°238°45°°021518872817665068°039634355242°5117°9311932799004234且639739470594073401534856713245426686
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896 907 906 923
一5774.
3109.9 2360.4
−4653.
6G31.8 1851.6 5546.4
−156.1 2586.7
−1438.
9コo
YIO・
Slo
瓢
8go
580一
8TO
850
8se
菖o一
S30一
図7 測定点1に置ける動作時の座標と面積(第1回)
被服設計における基礎研究 スカート原型にっいて
D「8pe 1「「ecer
Date : 93!10122 Area : Test Condtt ions :
一5量43.43 0
0
NO 2 J1−P J2−P J3−P 翼 Y z Jl−D
:23457890234557890123456τ890234567890−2 1−11111112222222222333333333444 483762207233368442273060−50355155439344855100987790012−12256888912820577818−889999998888899999999999999 1 9 999999999999999999999999999 9 99
103269673945356308578997426230964584511 0了7245780986640097965且92量072皇9613219400222333334333333322222212221 19 11122
9 675061835−124−63920024193401379−6552566845152018977779345390363404354484361188
8888菖8887777777888878888888999999999988999999999999999999999999999999999999999
4559438190721762855正0404234149408960844473399276783160869280003392733048017744
042500849376855且2602485687056248171且300︒ ● ︐ ● ︒ P ・ ・ ● ︒ ・ ︐ ° ・ ● ・ ° ・ ● ● ・ ° ● ● ● ● . ︒ . ・ ︒ . 9 . ・ ● ● ︒ ・69985660置29768417050008437338926429760644444211099999998990量22344556666665654411且1−−111 −11!11ーー−ー重llIl−111且506126130046923941752650503509204283355826294871285055153272804737463872363788 621216936285510845547685393530450802066
8了7070585204394729674376512竃7420226008835577888999887655455543445422222222433コ 30799577958884480029836137205塁473032733557441172422匪88790719078444590412405055568882229575326532085282820949125649055333334444567899012322211011009987665533
1−−!ー:ユ且置ー−塞ー−5960919501245150113°°51°492°6700竃35000 °68606937°67°179°°°60°°7°°且568°了73°33
328°・・︒・・5°04°°°4708960172°1°°5°°°7°.20°2609塵253°5569048222103806−088449−2
ー°6369690455183245611971456監653003494一92173235.16︒334°一一一一一一一一︐鴨一︒6口212一5414e
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図8 測定点1に置ける動作時の座標と面積(第2回)
D「1Pe T「8cc「
D8こ㊤ : 93!10!22 Area : τe5t Condit五〇n5 ;
一5335.88 0
0
NO R J 1−P J2,P J3−P
其 Y z jl−D
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図9 測定点1に置ける動作時の座標と面積(第3回)
被服設計における基礎研究 スカート原型について
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図10 測定点1に置ける動作時の座標と面積(第4回)
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図11測定点1に置ける動作時の座標と面積(第5回)
被服設計における基礎研究一スカート原型にっいて一
要 約
後腰部角度の大きい体型のスカート原型にっいて検討 するためにA,B2種のスカートをトワールにて作成し た.動作を加えて三次元座標読取機により計測し,しわ による変化量を求めて静止時と比較検討した.
その結果,後スカートと前スカートの前後の差を1c mっけ後スカートを幅広くし,ダーッは体型に合わせて 分量を考えたBのスカートの方が変化による縮小率が少
なかった.
本報は試作ドレープ測定機による実験結果を報告した.
被験者数,計測箇所,計測回数について十分であった とは言えないので今後も検討を重ねて行く.
おわりにご助言を賜りました東京家政大学・赤見仁教 授,研究生・徐延権助教授(漢陽女子専門大学),実験に 協力して下さいました石垣奈々子,佐々木理香,大津七 重,塩崎友加さんに深く感謝申し上げます.
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なお本研究は,平成五年度本学特別研究費によって行っ たものである,
又平成6年度日本家政学会関東支部会で研究発表を行っ たものの一部である.
文 献
1)橋詰静子・山田民子:東京家政大学研究記要・33,
121(1993)
2)工業技術院・繊維高分子材料研究所:研究報告,
142, (1984)