がん対策推進委員会答申
平 成 2 2 年 3 月
日 本 医 師 会
がん対策推進委員会
平成 22年 3 月 日 本 医 師 会 会 長 唐 澤 祥 人 殿 がん対策 推進委 員 会 委員長 垣 添 忠 生 がん対策 推進委 員 会答申 平成20 年7月 2 4日に開 催した 第 1回委員 会にお い て 、貴職 より 「がん検 診の今 後 のあり方 -検診 受 診率向上 と精度 管 理システ ム- 」 について 諮問を 受 けました 。 これを 受けて 、本委員会 では平 成 20年度 、平成 2 1年度の 2年間 にわたり 検討を 行 い、こ の た び 審 議 結 果 を 取 り ま と め ま し た の で 、 ご報告い たしま す 。
がん対策推進委員会
委 員 長 垣添 忠生(国立がんセンター名誉総長) 副 委員 長 畑 俊 一 ( 北海 道 医 師会副 会 長) 委 員 青木 大 輔 ( 慶應 義 塾 大学医 学 部産婦人 科学教 授 ) (平 成 20 年 8 月 19 日よ り) 〃 井関 雅子( 順天堂大学医学部附属順天堂医院麻酔・ペインクリニック教室先任准教授 ) 〃 江口 研二( 帝京大学医学部内科学講座教授/日本緩和医療学会理事長) 〃 大内 憲明( 東北大学大学院医学系研究科・医学部外科病態学講座腫瘍外科学分野教授 ) 〃 川島 崇( 群 馬県医 師 会理事 ) 〃 川田 清彌( 香 川県医 師 会理事 )( 平成 21 年 5 月 11 日まで) 〃 久米 川 啓( 香 川県医 師 会理事 )( 平成 21 年 5 月 12 日より) 〃 斎 藤 博( 国立がんセンターがん予防・検診研究センター検診研究部長 ) ( 平成 20 年 8 月 19 日より ) 〃 坂本 哲也( 秋 田県医 師 会常任 理 事) 〃 祖父 江友孝 ( 国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部長) 〃 空地 顕一( 兵 庫県医 師 会常任 理 事)( 平成 20 年 11 月 18 日より ) 〃 竹田 省( 順天堂大学医学部附属順天堂医院産婦人科学講座主任教授) 〃 釣船 崇仁( 長 崎県医 師 会常任 理 事) 〃 土岐 保正( 兵 庫県医 師 会常任 理 事)( 平成 20 年 10 月 27 日逝去) 〃 中川 正美( 愛 知県医 師 会理事 ) 〃 松 田 一 夫( 福 井 県 健康管 理 協会県 民健康セン ター所 長 ) (平成 20 年 8 月 19 日よ り) 〃 目澤 朗憲(東京都医師会理事)提 言
わが国のがん検診実施体制を抜本的に改革するため、本委員会は下記の事項を日本 医師会に提言し、併せて日本医師会より国に対して提言するよう要望する。 ・日本医師会会員は、かかりつけ医の立場から、患者に対して当該地区のがん検診実 施状況も踏まえた、個別かつ具体的ながん検診の受診勧奨を行うことが望まれる。 ・がん検診の受診勧奨に関わるかかりつけ医の現場での説明、受診勧奨に資する使い 勝手のよいハンドブック等、資料の作成が望まれる。 ・国、保険者、自治体、医療関係者が一体となってがん検診の基盤を整備することが 強く望まれる。即ち、国が精度管理のための中央組織を設置するとともに、自治体 に対してがん検診対象者名簿を整備し、個別受診勧奨を行い、受診率の向上、事業 評価を進めることを指導すべきである。 ・がん検診と特定健診の一元化が強く望まれる。その場合の実施主体は自治体と保険 者が想定されるが、現状では保険者に一元化することが望ましい。 国のがん対策推進協議会における、「がん対策・予算提案ワーキンググループ」がと りまとめた「平成 22 年度がん対策予算に向けた提案書~元気の出るがん対策~」に よれば、がん検診受診率 50%を達成するには、毎年少なくとも 1,500 億円の検診費 用の増額が必要とされる。その費用の負担は、市町村財源では不可能であり、特定 健診のような国からの補助金をつけて保険者、事業者負担とするか、または国から の交付金に戻す必要がある。いずれにしても、一体的、一元的な制度構築が必要で あり、保険者の一元化も視野に入れた取り組みが望まれる。 ・平成 21 年度から、がん検診に関わる地方交付税が 1,298 億円と倍増されたこと、女 性特有のがん検診推進事業費 216 億円が補助されたことは、がん検診費用を国の予 算によって賄うという、新たな可能性を示唆するものである。上記の地方交付税と 女性特有のがん検診推進事業費の合計が奇しくもがん対策推進協議会試算の 1,500 億円とほぼ同額となる。女性特有のがん検診事業を女性特有のがんのみならず胃・ 大腸・肺がんにも広げ、最終的にがん検診を国の事業として実施することが、わが 国のがん検診の抜本的改革に繋がるものと考える。・本委員会では、がん検診受診率 50%を達成するための費用負担についても種々議論 したが、英国、オーストラリア、韓国のように政府予算とすることが、受診率向上 はもとより、事業評価(精度管理)も一元化されることから、国の責務としてがん 検診が実施されることを強く提案したい。 ・科学的根拠に基づくがん検診を実施するために、新しい検診方法に対する評価研究 (ランダム化比較試験など)を実施するための支持組織(データセンターなど)を 強化するとともに、得られた研究成果をまとめて検診ガイドラインを作成・更新す る公的な常設機関を設置する必要がある。 ・現行の企業(職域)におけるがん検診の実態を明確にし、精度管理の徹底がなされ た検診を普及することが望まれる。また、職場を通じたがん検診の受診勧奨を効果 的に進めるためにも、産業医の活用とがん検診に関する教育を推進する必要がある。 加えて、職域におけるがん検診の将来の実施体制や、実施の可否を含めたあり方そ のものについても検討されるべきである。
目 次
は じ め に ... 1
1 . が ん 検 診 の 現 状 ... 2
( 1 ) わ が 国 の が ん 対 策 ... ... ... 2 ( 2 ) 政 府 予 算 ... ... ... 3 ( 3 ) が ん 検 診 の 実 施 体 制 ... ... ... 4 ( 4 ) 日 本 医 師 会 の 取 り 組 み ... ... ... 6 ( 5 ) が ん 登 録 ... ... ... 6 ( 6 ) 海 外 の 状 況 ... ... ... 6 ( 7 ) 現 状 に お け る 問 題 点 ... ... ... 72 . 検 診 受 診 率 向 上 ... 9
( 1 ) 受 診 率 の 算 定 方 法 ... ... ... 9 ( 2 ) 対 策 型 検 診 と 任 意 型 検 診 ... ... 10 ( 3 ) 受 診 勧 奨 ... ... ...11 ( 4 ) ま と め ... ... ... 133 . 精 度 管 理 シ ス テ ム ... 14
( 1 ) 従 来 の が ん 検 診 精 度 管 理 と が ん 対 策 推 進 基 本 計 画 に 沿 っ た 今 後 の あ り 方 . 14 ( 2 ) 品 質 保 証 の 手 法 を 取 り 入 れ た 新 し い 精 度 管 理 体 制 の 実 施 状 況 ... 16 ( 3 ) 精 度 管 理 水 準 の 現 状 と 対 策 ... ... 19お わ り に ... 22
巻 末 資 料 ... 23
市区町村におけるがん検診の実施状況等調査結果(平成21年1月1日現在) (厚生労働省) .... 24 が ん 検 診 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 概 要 ... ... 33は じ め に
が ん は 身 体 の 中 に 、 い つ か わ か ら な い う ち に 発 生 し 進 展 す る 。 当 然 、 初 期 の う ち は 症 状 が な い 。 が ん に は 各 々 、 特 有 の 自 然 史 が あ る 。 体 内 に 発 生 し て か ら 発 症 す る ま で の 期 間 が 長 く 、 か つ 国 民 の 健 康 に 強 く 影 響 す る 数 の 多 い が ん は 検 診 の よ い 対 象 と な る 。 世 界 的 に も 子 宮 頸 が ん 、 乳 が ん 、 大 腸 が ん な ど を 対 象 と し て 検 診 が 精 力 的 に 進 め ら れ て き た 。 わ が 国 で も 、 こ の 三 つ の が ん に 加 え て 、 胃 が ん 、 肺 が ん の 五 つ の が ん を 対 象 と し た が ん 検 診 が 国 策 と し て 展 開 さ れ て き た 。 し か し 、 わ が 国 の が ん 検 診 に は 大 き な 問 題 が あ る 。 そ れ は 、 検 診 受 診 率 が 低 い こ と と 、 精 度 管 理 が 不 十 分 な こ と だ 。 200 7 年 4 月 、 が ん 対 策 基 本 法 が 施 行 さ れ 、 こ れ に 基 づ き 国 及 び 都 道 府 県 の が ん 対 策 推 進 基 本 計 画 が 策 定 さ れ た 。 こ れ に よ り 、 わ が 国 の が ん 対 策 は 総 合 的 か つ 計 画 的 に 推 進 さ れ る こ と と な っ た 。 が ん 検 診 は そ の 中 の 重 要 な 一 項 目 で 、 検 診 受 診 率 を 5 年 以 内 に 5 0 % を 目 標 と す る こ と 、 そ し て す べ て の 市 町 村 に お い て 、 精 度 管 理 ・ 事 業 評 価 が 実 施 さ れ る と と も に 、 科 学 的 根 拠 に 基 づ く が ん 検 診 が 実 施 さ れ る こ と を 目 標 と す る 、 と 書 き 込 ま れ た 。 だ が 、 現 状 の ま ま で は ど ち ら の 目 標 も 達 成 困 難 と 思 わ れ る 。 日 本 医 師 会 も こ の こ と に 強 い 危 機 感 を 覚 え 、 2 00 7 年 ~ 200 8 年 、 が ん 対 策 推 進 委 員 会 が 設 け ら れ た 。 プ ロ ジ ェ ク ト と し て 「 が ん 検 診 の あ り 方 」 の 検 討 と「 緩 和 ケ ア に 関 す る 医 師 の 意 識 調 査 、マ ニ ュ ア ル の 作 成 」が 進 め ら れ 、 20 0 8 年 3 月 、唐 澤 祥 人 会 長 宛 て に 同 委 員 会 は 答 申 を 提 出 し た 。し か し 、「 が ん 検 診 の あ り 方 」 に つ い て は 、 短 期 間 の 検 討 で あ っ た た め 不 十 分 な 点 が 多 く 、 20 08 年 4 月 以 降 、 日 本 医 師 会 の 常 置 委 員 会 と し て 設 置 さ れ 、 引 き 続 き 検 討 を 進 め て き た 。 以 下 、 が ん 検 診 の 現 状 、 検 診 受 診 率 向 上 、 精 度 管 理 シ ス テ ム 、 に つ い て 日 本 医 師 会 の 立 場 で 検 討 結 果 を 記 述 す る 。 新 し い 検 診 手 法 の 導 入 と そ の 評 価 、 あ る い は が ん 検 診 を わ が 国 の 医 療 保 険 制 度 の 中 に ど の よ う に 位 置 づ け る か 、 と い っ た 議 論 は 更 に 引 き 続 き 継 続 す る 必 要 が あ ろ う 。
1 . が ん 検 診 の 現 状 ( 1 ) わ が 国 の が ん 対 策 わ が 国 の が ん 対 策 は 、 19 56 年 に 成 人 病 予 防 対 策 協 議 連 絡 会 の 答 申 と し て ま と め ら れ た 当 面 の 緊 急 課 題 : ① 実 態 調 査 、 ② 医 療 施 設 の 強 化 、 ③ 専 門 技 術 者 の 養 成 、 に 始 ま る 。 そ の 後 、 19 58 年 、 196 0 年 、 19 62 年 と 3 回 に わ た っ て 悪 性 新 生 物 実 態 調 査 が 実 施 さ れ 、 196 2 年 に 国 立 が ん セ ン タ ー が 設 置 さ れ た 。 19 63 年 に は が ん 研 究 助 成 金 が 開 始 さ れ 、 196 5 年 に 、 政 務 次 官 会 議 が ん 対 策 小 委 員 会 で 「 が ん 対 策 の 推 進 に つ い て 」 の 決 議 が な さ れ た 。 こ こ で 、 「 が ん 対 策 の 5 本 柱 」:① が ん に 対 す る 正 し い 知 識 の 普 及 、② 健 康 診 断( が ん 検 診 ) の 実 施 、 ③ 医 療 施 設 の 整 備 、 ④ 専 門 技 術 者 の 育 成 、 ⑤ が ん 研 究 の 促 進 、 が 取 り 上 げ ら れ 、 そ の 後 の が ん 対 策 の 基 本 指 針 と な っ た 。 が ん 検 診 に つ い て は 、 19 82 年 に 成 立 し た 老 人 保 健 法 に よ り 、 国 の 保 健 事 業 と し て 実 施 す る こ と が 法 律 に 明 記 さ れ 、 198 3 年 か ら の 老 人 保 健 事 業 第 1 次 5 ヵ 年 計 画 と し て 、 胃 が ん 、 子 宮 頸 が ん が 、 1 987 年 か ら の 第 2 次 5 ヵ 年 計 画 と し て 肺 が ん 、 乳 が ん 、 子 宮 体 が ん が 導 入 さ れ た 。 1 992 年 の 第 3 次 8 ヵ 年 計 画 で は さ ら に 大 腸 が ん 検 診 が 加 わ っ た 。 こ れ ら の 取 り 組 み は 、 世 界 的 に 見 て も 先 進 的 な も の で あ り 、 当 時 は 、 が ん 対 策 が が ん 検 診 に 偏 重 し す ぎ て い る と い う 批 判 さ え あ っ た 。 と こ ろ が 、 1 99 8 年 に が ん 検 診 に 対 す る 補 助 金 が 一 般 財 源 化 さ れ て 以 降 、 実 施 主 体 と さ れ た 市 町 村 に お け る 財 源 が 曖 昧 に な り 、 受 診 率 が 低 迷 す る と と も に 、 都 道 府 県 レ ベ ル に お け る 精 度 管 理 も 多 く の 地 域 で 形 骸 化 し て き て お り 、 現 時 点 で は 、 わ が 国 の が ん 検 診 は 欧 米 先 進 国 や 近 隣 ア ジ ア 諸 国 に 比 べ て 遅 れ を 生 じ つ つ あ る と 言 わ ざ る を 得 な い 。 一 方 、 が ん 研 究 に つ い て は 、 が ん 研 究 助 成 金 に 加 え て 、 1 984 年 に は 「 が ん の 本 態 解 明 」を 目 標 と す る 第 1 次 対 が ん 10 ヵ 年 総 合 戦 略 が 開 始 さ れ 、1 994 年 に は 「 が ん の 本 態 解 明 か ら が ん 克 服 へ 」 を 目 標 と す る 第 2 次 が ん 克 服 新 10 ヵ 年 総 合 戦 略 に 引 き 継 が れ た 。 そ の 結 果 、 が ん の 原 因 の 究 明 や 新 し い 診 断 治 療 法 の 開 発 に 関 し て 、 一 定 の 研 究 成 果 を あ げ た 。 こ の よ う に 、 「 が ん 対 策 の 5 本 柱 」 の う ち 、 が ん 検 診 、 が ん 研 究 の 2 点 に つ い て は 、 政 策 的 な 取 り 組 み が な さ れ た が 、 残 り の 3 点 に つ い て の 取 り 組 み が こ れ ま で 十 分 で は な か っ た 。 そ こ で 、 2 00 4 年 度 よ り 開 始 さ れ た 第 3
次 対 が ん 総 合 戦 略 事 業 で は 、 「 が ん の 罹 患 率 と 死 亡 率 の 激 減 を 目 指 し て 」 を キ ャ ッ チ フ レ ー ズ と し て 、 「 が ん 研 究 の 推 進 」 に 加 え て 「 が ん 予 防 の 推 進 」と「 が ん 医 療 の 向 上 と そ れ を 支 え る 社 会 環 境 の 整 備 」を 掲 げ て 、研 究 、 予 防 及 び 医 療 を 総 合 的 に 推 進 す る こ と に よ り 、 が ん の 罹 患 率 と 死 亡 率 の 激 減 を 目 指 す こ と を 戦 略 目 標 と し た 。 特 に が ん 医 療 に つ い て は 、 2 00 1 年 か ら 2 次 医 療 圏 に 1 カ 所 程 度 を 目 安 と し て 「 地 域 が ん 診 療 拠 点 病 院 」 の 整 備 が 進 め ら れ 、 20 05 年 4 月 に 「 が ん 医 療 水 準 均 て ん 化 の 推 進 に 関 す る 検 討 会 」 報 告 書 が 取 り ま と め ら れ 、 そ れ を 受 け て 、20 05 年 5 月 に は 厚 生 労 働 大 臣 を 本 部 長 と す る「 が ん 対 策 推 進 本 部 」 が 設 置 さ れ 、 「 が ん 対 策 推 進 ア ク シ ョ ン プ ラ ン 2 005 」 が 策 定 さ れ た 。 そ の 中 で 、 「 が ん 情 報 提 供 ネ ッ ト ワ ー ク 」 の 構 築 を 推 進 す る た め 、 2 00 6 年 1 0 月 に 「 が ん 対 策 情 報 セ ン タ ー 」 が 国 立 が ん セ ン タ ー に 設 置 さ れ 、 2 00 6 年 4 月 に は 「 が ん 対 策 推 進 室 」 が 設 置 さ れ た 。 さ ら に 、2 00 6 年 6 月 に 議 員 立 法 の 形 で「 が ん 対 策 基 本 法 」が 成 立 し 、20 0 7 年 に は 「 が ん 対 策 推 進 基 本 計 画 」 に 加 え 、 「 都 道 府 県 が ん 対 策 推 進 計 画 」 が 策 定 さ れ た 。 基 本 計 画 で は 、 全 体 目 標 と し て 、 今 後 10 年 間 で が ん 死 亡 率 ( 7 5 歳 未 満 、 年 齢 調 整 ) を 2 0 % 減 尐 さ せ る こ と 、 が ん 検 診 の 個 別 目 標 と し て は 、 が ん 検 診 受 診 率 を 5 年 以 内 に 5 0 % 以 上 と す る こ と 、 及 び 、 す べ て の 市 町 村 に お い て 、 精 度 管 理 ・ 事 業 評 価 が 実 施 さ れ る と と も に 、 科 学 的 根 拠 に 基 づ く が ん 検 診 を 実 施 す る こ と が 掲 げ ら れ て い る1 )。 199 8 年 の 一 般 財 源 化 以 降 、 が ん 検 診 は 、 法 律 に 基 づ か な い 市 区 町 村 事 業 と し て 実 施 さ れ て き た 。 200 8 年 に 老 人 保 健 法 に よ る 基 本 健 診 が 、 高 齢 者 医 療 確 保 法 に よ る 特 定 健 診 に 移 行 し た 際 に 、 健 康 増 進 法 に 基 づ く 市 町 村 事 業 と し て の 位 置 づ け が な さ れ た が 、 依 然 、 市 町 村 の 努 力 義 務 で 実 施 さ れ る 保 健 事 業 で あ る 。市 町 村 側 に は 受 診 率 向 上 の イ ン セ ン テ ィ ブ が な く 、加 え て 、 特 定 健 診 の 対 象 者 の ず れ ( 被 用 者 保 険 の 家 族 は 、 国 保 加 入 者 を 対 象 と す る 市 町 村 の 特 定 健 診 の 対 象 と は な ら な い ) に よ っ て 、 一 部 の が ん 検 診 受 診 率 は 、 特 定 健 診 導 入 以 降 、 む し ろ 減 尐 す る 傾 向 に あ る 。 精 度 管 理 に つ い て も 都 道 府 県 に は 技 術 力 が な く 、 職 域 検 診 に つ い て は 全 く 管 理 さ れ て い な い 。 ( 2 ) 政 府 予 算 198 3 年 か ら 1 997 年 ま で の 老 人 保 健 事 業 に お い て は 、 が ん 検 診 に か か る 費
用 を 国 、 都 道 府 県 、 市 町 村 が そ れ ぞ れ 3 分 の 1 ず つ 負 担 し て い た 。 19 97 年 の 5 つ の が ん 検 診 ( 胃 が ん 、 子 宮 が ん 、 肺 が ん 、 乳 が ん 、 大 腸 が ん ) へ の 国 か ら の 補 助 金 総 額 は 34 6 億 円 で あ っ た 。 が ん 検 診 は 、 19 98 年 の 一 般 財 源 化 以 降 、 市 町 村 事 業 と し て 実 施 さ れ て き た た め 、 国 の が ん 対 策 予 算 に は 含 ま れ て い な い が 、 20 09 年 度 に は 、 国 の 地 方 交 付 税 措 置 に よ る が ん 検 診 事 業 予 算 は 、前 年( 約 6 49 億 )か ら 倍 増 さ れ て 約 1, 29 8 億 円 と な っ た 。さ ら に 、2 00 9 年 度 の 補 正 予 算 と し て「 女 性 特 有 の が ん 検 診 推 進 事 業 」( 約 2 16 億 )が 認 め ら れ て 一 部 の 女 性 に 無 料 ク ー ポ ン が 配 布 さ れ 、 厚 生 労 働 大 臣 を 本 部 長 と す る 「 が ん 検 診 50 % 推 進 本 部 」 が 設 置 さ れ て 、 乳 が ん ・ 子 宮 頸 が ん 検 診 を 中 心 に 受 診 率 向 上 が 図 ら れ て い る 。 国 レ ベ ル で は 、 こ の よ う な イ ベ ン ト 的 事 業 に は 予 算 が 投 じ ら れ て い る も の の 、 対 象 者 名 簿 を 整 備 し 、 受 診 率 を 正 確 に 測 定 し た 上 で 、 精 度 管 理 を 行 う た め の イ ン フ ラ 整 備 の 推 進 に は 、 全 く 手 が つ け ら れ て い な い 。 ( 3 ) が ん 検 診 の 実 施 体 制 わ が 国 の が ん 検 診 の 実 施 主 体 は 市 町 村 と 企 業 ( 職 域 ) の 2 つ に 分 け ら れ る 。前 者 は 健 康 増 進 法( 平 成 1 4 年 度 法 律 第 1 03 号 )第 1 9 条 2 項 に 基 づ く 健 康 増 進 事 業 と し て 位 置 づ け ら れ 、 市 町 村 が 実 施 す る が ん 検 診 で あ り 、 「 が ん 予 防 重 点 健 康 教 育 及 び が ん 検 診 実 施 の た め の 指 針 」( 健 発 第 033 105 8 号 )2 ) に 示 さ れ た 検 診 内 容 が 適 用 さ れ る 。 2 0 03 年 度 以 降 、 厚 生 労 働 省 「 が ん 検 診 に 関 す る 検 討 会 」で 死 亡 率 減 尐 効 果 の 科 学 的 根 拠 に 基 づ き 、議 論 を 重 ね て 、 現 在 、 5 つ の が ん 検 診 に つ い て そ れ ぞ れ の 検 診 方 法 、 対 象 年 齢 、 受 診 間 隔 が 明 記 さ れ て い る ( 表 1 ) 。 死 亡 率 減 尐 効 果 の 科 学 的 証 拠 を ま と め た が ん 検 診 ガ イ ド ラ イ ン は 、厚 生 労 働 省 研 究 班 や 学 会 な ど に よ り 作 成 さ れ て お り 、 必 要 に 応 じ て 「 が ん 検 診 に 関 す る 検 討 会 」 に て 参 考 資 料 と し て 参 照 さ れ て い る 。 こ れ ら の 実 施 成 績 は 、 市 町 村 別 の 集 計 値 が 厚 生 労 働 省 統 計 情 報 部 に 報 告 さ れ 、 地 域 保 健 ・ 健 康 増 進 事 業 報 告 ( 地 域 保 健 ・ 老 人 保 健 事 業 報 告 ) と し て 毎 年 公 表 さ れ て い る が 、 精 密 検 査 結 果 に お け る 未 把 握 ・ 未 受 診 の 割 合 が 高 く 、 精 度 管 理 の 目 的 で 使 用 す る た め に は 、 デ ー タ の 質 を 改 善 す る 必 要 が あ る こ と が 指 摘 さ れ て い る 。 ま た 、 上 記 指 針 に 含 ま れ な い が ん 検 診 を 実 施 し て い る 市 町 村 が 相 当 数 存 在 し て い る ( 表 2 ) 。
表 1 . 市 町 村 事 業 に お け る が ん 検 診 ( 指 針 の 内 容 ) 種 類 検 査 項 目 対 象 者 受 診 間 隔 乳 が ん 検 診 問 診 、乳 房 エックス線 検 査 (マンモグラフィ)、視 診 、触 診 4 0 歳 以 上 2 年 に 1 回 子 宮 が ん 検 診 問 診 、 視 診 、 子 宮 頚 部 の 細 胞 診 及 び 内 診 2 0 歳 以 上 2 年 に 1 回 大 腸 が ん 検 診 問 診 、 便 潜 血 検 査 4 0 歳 以 上 年 1 回 胃 が ん 検 診 問 診 、 胃 部 エ ッ ク ス 線 検 査 4 0 歳 以 上 年 1 回 肺 が ん 検 診 問 診 、 胸 部 エ ッ ク ス 線 検 査 、 喀 痰 細 胞 診 4 0 歳 以 上 年 1 回 表 2 市 区 町 村 に お け る が ん 検 診 の 実 施 状 況 等 調 査 結 果 に つ い て ( 第 1 2 回 が ん 検 診 に 関 す る 検 討 会 参 考 資 料 ) 市 町 村 数 胃 が ん 検 診 ( ペ プ シ ノ ゲ ン 法 ) 2 9 ( 1 . 3 % ) 胃 が ん 検 診 ( 胃 カ メ ラ 検 査 ) 6 5 ( 2 . 9 % ) 肺 が ん 検 診 ( C T 検 査 ) 1 5 ( 0 . 7 % ) 肺 が ん 検 診 ( ヘ リ カ ル C T 検 査 ) 9 9 ( 4 . 4 % ) 乳 が ん 検 診 ( エ コ ー 検 査 ) 4 8 2 ( 2 1 . 2 % ) 前 立 腺 が ん 検 診 ( P S A 検 査 ) 9 5 7 ( 4 2 . 1 % ) 肝 が ん 検 診 ( エ コ ー 検 査 ) 2 6 ( 1 . 1 % ) 甲 状 腺 が ん 検 診 ( エ コ ー 検 査 ) 8 ( 0 . 4 % ) そ の 他 1 5 4 8 ( 6 8 . 1 % ) 回 答 の あ っ た 市 町 村 ( 再 掲 ) 2 2 7 3 ( 1 0 0 . 0 % ) 一 方 で 、 後 者 の 企 業 ( 職 域 ) に は 労 働 安 全 衛 生 法 が 適 用 さ れ る が 、 こ の 法 律 に は が ん 検 診 の 実 施 義 務 は 定 め ら れ て お ら ず 、 検 診 方 法 、 対 象 年 齢 、 受 診 間 隔 等 の 指 針 は 存 在 し な い 。 企 業 は が ん 検 診 実 施 に つ い て 、 そ の 義 務 を 負 っ て い な い の が 現 状 で あ る 。 企 業 が 労 働 者 に が ん 検 診 を 提 供 す る 場 合 で あ っ て も 、 そ の が ん 検 診 が 国 の 指 針 の 適 用 を 受 け な い 、 す な わ ち 、 科 学 的 根 拠 を 有 す る が ん 検 診 か 否 か の チ ェ ッ ク も な さ れ て い な い こ と は 大 き な 問 題 と い え る 。 職 域 に お け る が ん 検 診 に 関 し て は 、本 委 員 会 に お い て も 意 見 が 交 わ さ れ 、 健 康 増 進 法 の 努 力 義 務 に 位 置 づ け ら れ る 市 町 村 事 業 と し て の が ん 検 診 の み で な く 、 職 場 に お け る が ん 検 診 等 も 含 め た わ が 国 の が ん 検 診 に つ い て 、 が ん 対 策 推 進 基 本 計 画 に 定 め ら れ た 目 標 の 達 成 に 向 け て 努 力 す べ き で あ る こ と が 指 摘 さ れ た と こ ろ で あ る 。 し か し 、 職 域 に お け る が ん 検 診 の 検 査 項 目 、 受 診 間 隔 、 対 象 者 数 ( 率 ) 、 受 診 率 な ど の 実 態 を 提 供 者
側 か ら 把 握 す る 統 計 は 存 在 せ ず 、 乳 が ん 検 診 に お い て マ ン モ グ ラ フ ィ が 検 査 項 目 と し て 採 用 さ れ て い な い 、 あ る い は 乳 が ん 検 診 そ の も の が 実 施 さ れ て い な い 企 業 が 数 多 く 存 在 す る と い わ れ て い る 。 上 記 2 種 類 の が ん 検 診 に 加 え て 、 受 診 者 本 人 の 自 由 意 志 に よ り 全 額 自 己 負 担 で 受 診 す る が ん 検 診 ( い わ ゆ る 人 間 ド ッ ク ) が 存 在 す る が 、 こ れ ら の 実 態 に つ い て も 提 供 者 側 か ら 把 握 す る 仕 組 み は 存 在 し な い 。 ( 4 ) 日 本 医 師 会 の 取 り 組 み 日 本 医 師 会 で は 、 200 7 年 8 月 に 「 が ん 対 策 推 進 委 員 会 」 を プ ロ ジ ェ ク ト 委 員 会 と し て 設 置 し 、「 緩 和 ケ ア に つ い て の 全 国 の 医 師 の 意 識 調 査 の 実 施 及 び マ ニ ュ ア ル の 企 画 ・ 作 成 」 及 び 「 が ん 検 診 の あ り 方 に つ い て 」 に つ い て 検 討 す る よ う 諮 問 し た 。 答 申 を 20 08 年 3 月 に 唐 澤 会 長 に 提 出 し た が 、 が ん 検 診 に つ い て は 、 今 期 に お い て 「 が ん 対 策 推 進 委 員 会 」 を 常 設 委 員 会 と し た 。 20 09 年 5 月 に 郡 市 区 医 師 会 を 対 象 と し 、 市 町 村 の が ん 検 診 の 医 師 会 の 受 託 状 況 等 に つ い て の ア ン ケ ー ト を 実 施 し た 。 ま た 、 200 9 年 7 月 1 2日 に 都 道 府 県 医 師 会 の 担 当 理 事 等 に 参 加 い た だ き 「 日 本 医 師 会 が ん 対 策 推 進 協 議 会 」 を 開 催 し た 。 ( 5 ) が ん 登 録 地 域 が ん 登 録 は 、 が ん 検 診 の 感 度 を 測 定 す る 際 の 偽 陰 性 例 の 情 報 を 提 供 し う る 。 し か し 、 現 在 の わ が 国 に お け る 地 域 が ん 登 録 は 、 登 録 精 度 や 即 時 性 ( デ ー タ が 固 定 で き る ま で に 時 間 が か か る ) の 問 題 が あ り 、 が ん 検 診 の 即 時 的 な 精 度 管 理 に 直 接 利 用 す る こ と は 難 し い 。 一 方 、 が ん 検 診 の 長 期 的 な 評 価 に は 、 死 亡 率 と 罹 患 率 の 乖 離 の 確 認 な ど 、 地 域 が ん 登 録 が 重 要 な 情 報 源 と な る 。 ( 6 ) 海 外 の 状 況 わ が 国 の が ん 検 診 は 、 老 人 保 健 事 業 と し て 開 始 さ れ た 198 3 年 以 降 、 し ば ら く は 世 界 的 に も 先 駆 的 な 取 り 組 み が 展 開 さ れ て き た が 、 そ の 後 諸 外 国 に お い て も 、 乳 が ん 、 子 宮 頸 が ん を 中 心 に 、 or gan iz ed s cree ni ng と し て の 体 制 整 備 が 進 め ら れ 、 イ ギ リ ス 、 オ ー ス ト ラ リ ア 、 カ ナ ダ な ど で は 、 対 象 者 に 対 し て 7 0 ~ 80 % の 受 診 率 を 維 持 し つ つ 、 精 度 管 理 の 仕 組 み を 構 築 し て い
る 。 イ ギ リ ス で は 、 1 988 年 よ り マ ン モ グ ラ フ ィ に よ る 乳 が ん 検 診 を 5 0 ~ 6 4 歳 の 女 性 に 対 し て 3 年 に 1 回 提 供 す る と い う 形 で 国 の 施 策 と し て 開 始 し た 。 家 庭 医 の 登 録 リ ス ト か ら 対 象 者 名 簿 を 作 成 し 、 そ れ を も と に 個 人 へ 受 診 勧 奨 を 行 う Ca ll /Re c all sys tem を 構 築 す る と 共 に 、 全 国 10 カ 所 に Qua lit y Assu ra nce ( QA ) Re fere nc e Cen te r を お い て 、 精 度 管 理 に 関 す る デ ー タ 収 集 の 仕 組 み を 構 築 し た 。 国 レ ベ ル で の こ れ ら の 運 営 を NH S C anc er Sc ree ni ng Prog ra mm e s (Sh ef fiel d に 事 務 所 を お く Na ti ona l H ea lth Se rvi ce の 組 織 。 Juli et ta Pat nic k 所 長 ) が 行 っ て い る 。こ の 結 果 、対 象 者 に お け る 受 診 率 は 70 ~ 80 % に 達 し 、 当 該 年 齢 層 に お け る 乳 が ん 罹 患 率 と 死 亡 率 の 乖 離 ( 罹 患 率 が 増 加 し て い る に も か か わ ら ず 、 死 亡 率 が 減 尐 し て い る ) が 確 認 さ れ て い る 。
オ ー ス ト ラ リ ア で は 、 連 邦 政 府 で 全 体 の 方 針 を 決 め 、 州 ご と に 運 営 す る 形 態 が 取 ら れ て い る が 、 イ ギ リ ス と 同 様 の Cal l/ Rec al l s yst em と 精 度 管 理 の 体 制 が 構 築 さ れ て い る 。 ま た 、 連 邦 レ ベ ル で 共 通 の 精 度 管 理 指 標 を 制 定 し 、州 の 担 当 者 が お 互 い に 別 の 州 を 訪 問 監 査 す る 仕 組 み が 整 備 さ れ て い る 。 さ ら に 、 が ん 登 録 を が ん 検 診 の 感 度 を 測 定 す る た め の デ ー タ ソ ー ス と し て 定 常 的 に 利 用 す る 体 制 が 整 っ て い る 。 近 年 、 韓 国 に お い て も 、 200 2 年 に 成 立 し た 「 が ん 管 理 法 」 の 中 で 、 国 の 事 業 と し て が ん 検 診 が 明 記 さ れ て 以 来 、 体 制 整 備 が 急 速 に 進 み 、 無 料 ク ー ポ ン 券 を 配 布 す る な ど し て 、 検 診 受 診 率 5 0 % を す で に 達 成 し つ つ あ る ( た だ し 、国 の 事 業 以 外 の が ん 検 診 受 診 を 含 ん で い る )。ま た 、韓 国 国 立 が ん セ ン タ ー を 中 心 と す る 、が ん 検 診 マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム が 整 備 さ れ つ つ あ る 。 ( 7 ) 現 状 に お け る 問 題 点 1 )新 し い 検 診 方 法 を 評 価 す る た め に は 、ラ ン ダ ム 化 比 較 試 験 ( RCT ) を 実 施 す る こ と が 国 際 水 準 で あ る 。 わ が 国 に お い て も 、 よ う や く 超 音 波 に よ る 乳 が ん 検 診 や 、大 腸 内 視 鏡 に よ る 大 腸 が ん 検 診 の 有 効 性 を 、RC T に よ り 評 価 す る 研 究 が 開 始 さ れ た が 、 研 究 実 施 の た め の 支 持 基 盤 が い ま だ 脆 弱 で あ る 。 2 ) 科 学 的 根 拠 に 基 づ く が ん 検 診 を 実 施 す る た め に は 、 ど の が ん 検 診 が 科 学 的 根 拠 に 基 づ い て 死 亡 減 尐 効 果 ( 有 効 性 ) を 有 す る と 判 断 で き る の か を 示 す 仕 組 み が 必 要 で あ る 。 ア メ リ カ で は 、 連 邦 政 府 機 関 で あ る A gen cy
for H ea lth Res ea rch a nd Q ua lit y (AHR Q) に 属 す る US P rev en tiv e Serv ic es T ask F or ce が 、 が ん 検 診 の 有 効 性 に つ い て 判 断 し 、 推 奨 の 程 度 を 公 表 し て い る 。 わ が 国 に お い て は 、 厚 生 労 働 省 研 究 班 な ど が が ん 検 診 有 効 性 ガ イ ド ラ イ ン を 作 成 し て い る が 、 公 的 な 常 設 機 関 に よ る 作 成 の 仕 組 み が 構 築 さ れ て い な い 。 3 ) が ん 検 診 の 受 診 率 向 上 や 精 度 管 理 の た め の し く み と し て 、 イ ギ リ ス で は 、 中 央 組 織 と し て NH S Ca nce r Sc re enin g Pr ogr am m es を 設 置 し 、 全 国 1 0 カ 所 の Qu ali ty A s su ra nc e R efe re nc e C ent er と と も に 、 が ん 検 診 の マ ネ ジ メ ン ト を 実 施 し て い る 。 わ が 国 に お い て は 、 こ う し た が ん 検 診 専 門 家 に よ る 組 織 が 存 在 し な い 。 参考文献 1)がん対策推進基本計画 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0615-1a.pdf 2)がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(健発第0331058号) http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_kenshin02.pdf
2 . 検 診 受 診 率 向 上 ( 1 ) 受 診 率 の 算 定 方 法 わ が 国 で 、 が ん 検 診 受 診 率 を 正 確 に 把 握 す る こ と は 極 め て 困 難 で あ る 。 前 述 の よ う に 国 民 は 大 き く 分 け て 、 市 町 村 事 業 に よ る が ん 検 診 と 、 職 域 に お け る が ん 検 診 の い ず れ か を 受 け る こ と が 可 能 で あ る 。 前 者 の 市 町 村 事 業 に お け る が ん 検 診 受 診 率 は 、 毎 年 、 市 区 町 村 → 都 道 府 県 → 厚 生 労 働 省 へ の 報 告 ( 地 域 保 健 ・ 老 人 保 健 事 業 報 告 ) が あ り 受 診 者 数 の 把 握 が 可 能 で あ る ( 表 3 )。し か し 、地 域 ご と の 対 象 者 数 の 定 義 に バ ラ つ き が あ る こ と 、乳 が ん 、 子 宮 頸 が ん 検 診 に つ い て は 、 受 診 間 隔 が 2 年 に 1 回 と な っ た た め 【 受 診 率 = ( 当 該 年 度 の 受 診 者 数 + 前 年 度 受 診 者 数 ) - 2 年 連 続 し て 受 診 し た 者 の 数 / 当 該 年 度 の 対 象 者 数 】、正 し く 把 握 さ れ て い る か ど う か 、注 視 す る 必 要 が あ る 。 一 方 、 後 者 の 職 域 に お け る が ん 検 診 受 診 率 は 、 国 ・ 都 道 府 県 に お い て 集 計 す る 手 法 を 確 立 し て い な い た め 、 殆 ど 把 握 は 不 可 能 な 状 況 に あ る 。 そ こ で 、 代 替 案 と し て 、 国 民 生 活 基 礎 調 査 に よ る が ん 検 診 受 診 率 の 把 握 が 挙 げ ら れ て い る 。 し か し 、 国 民 生 活 基 礎 調 査 は 3 年 に 1 度 の 調 査 で あ り 、 過 去 1 年 間 の 検 診 を 調 査 対 象 と し て い る こ と 、 保 険 医 療 機 関 に お け る 外 来 受 診 を が ん 検 診 と 誤 解 し て い る 可 能 性 が あ る こ と 、 さ ら に 例 え ば 乳 が ん 検 診 で は 、 マ ン モ グ ラ フ ィ 併 用 検 診 で あ る か 否 か を チ ェ ッ ク し て い な い な ど 、 受 診 率 把 握 に 用 い る に は 多 く の 問 題 点 が あ る こ と が 指 摘 さ れ て い る 。 表 3 . 市 町 村 事 業 に お け る が ん 検 診 の 対 象 者 ( 参 考 文 献 3 よ り 引 用 ) 市 町 村 事 業 に お け る が ん 検 診 対 象 者 数 = ① - ② + ③ ① 4 0 歳 以 上 の 市 町 村 人 口 ( 総 務 省 自 治 行 政 局 「 住 民 基 本 台 帳 に 基 づ く 人 口 ・ 人 口 動 態 及 び 世 帯 数 」ま た は 総 務 省 統 計 局「 国 勢 調 査 報 告 」第 1 次 資 料( 5 歳 刻 み ))( 国 勢 調 査 は 5 年 毎 ) ② 4 0 歳 以 上 就 業 者 数 ( 総 務 省 統 計 局 「 国 勢 調 査 報 告 」 第 2 次 基 本 資 料 ( 5 歳 刻 み ) 5 年 毎 更 新 ) ③ 農 林 水 産 業 従 事 者 ( 総 務 省 統 計 局 「 国 勢 調 査 報 告 」 第 2 次 基 本 資 料 5 年 毎 更 新 ) a ) 第 1 次 産 業 就 業 者 市 町 村 別 ( 1 5 ~ 6 4 歳 、 6 5 歳 以 上 の 2 区 分 ) b ) 第 1 次 産 業 就 業 者 都 道 府 県 別 年 齢 別 ( 5 歳 刻 み ) の 割 合 に 合 わ せ て 、 市 町 村 の 5 歳 刻 み の 人 数 を 推 計 ( ※ ) 子 宮 が ん 、 乳 が ん に つ い て は そ れ ぞ れ 2 0 歳 以 上 、 4 0 歳 以 上 の 女 性 と す る 。
( 2 ) 対 策 型 検 診 と 任 意 型 検 診 が ん 死 亡 率 減 尐 を 達 成 す る に は 受 診 者 全 体 が 精 度 管 理 さ れ た 検 診 を 受 診 す る こ と が 必 須 で あ る が 、 内 閣 府 に よ る 「 が ん 対 策 に 対 す る 世 論 調 査 」 に よ る と 、 対 策 型 と 呼 ば れ る 公 共 の 施 策 と し て 集 団 に 対 し 行 わ れ る 検 診 で は な く 、 受 診 者 が 自 ら の が ん 死 亡 リ ス ク の 低 下 の た め に 受 診 す る 任 意 型 検 診 を 受 け て い る 割 合 も 高 い と 考 え ら れ て い る 。 任 意 型 検 診 は 精 度 管 理 が 必 須 と さ れ て お ら ず 、 現 状 の 把 握 は 困 難 で あ る ( 表 4 )4 )。 法 整 備 を 含 め た 何 ら か の 対 策 が 必 要 で あ る 。 表 4 . 対 策 型 検 診 と 任 意 型 検 診 の 違 い 対 策 型 検 診 任 意 型 検 診 検診方法 一定である:政府、またはがん対策担当局 により定められる。 様々である:受診者個人や、検診提供 者によって様々である。 目的 集団レベルでの罹患率、死亡率の低下。 個 人 レ ベ ル で の 罹 患 率 、 死 亡 率 の 低 下。 感度 最も感度が高い検査が国家プログラムとし て使用されないこともある。感度目標が設 定され、効率の向上のためモニターされる。 通常、最も感度が高い検査が採用され る。感度がモニターされることは通常 ない。 特異度 偽陽性によって生じる不利益(不必要な検 査に伴う費用増加、有害事象)を避けるた めに、特異度は重視される。 個人レベルでは、高い特異度は重要で はない。 検査間隔 固定されている:妥当な費用で集団が最大 限の利益が得られるように設定される。 様々である。通常、対策型より頻回と なる。 資金 ヘルスケアの全体像を考慮した健康関連予 算に基づいて、集団レベルの範囲に限定さ れる。 個人の範囲、ヘルスプランの条件に制 限される。第一に個人の保険、財政状 況に依存する。 健康技術評価 必ず害より利益が上回ること。 効率は必ずしも示される必要はない。 品質管理 提供される検診が可能な限り最高品質であ ることを保障するため基準は継続的に見直 され、かつ満たされなくてはならない。 基準は設定されるかもしれないが、モ ニターされるかどうかはわからない。 基準遵守率 設定、監視されなければならない。低率で あるときは組織的な改善努力が必要。 設定、監視があるかどうかは一定して いない。集団の改善のために組織的に 適応されることはほとんどない。 対象 固定されている:特定の年齢階級の対象者 の全員。 様々である:検診を勧められた人、検 診 に 対 し て 職 域 保 険 が 適 応 と な る 人 など。 勧奨方法 能動的:対象者は全員勧奨される。 受動的:決まった方法はない。 受診への公平性 アクセスの公平性は検診プログラムに組み 込まれている。 アクセスの公平性は望ましいが、資源 の配分によりその範囲は制限される。 対 象 者 と が ん 罹 患 リスクとの関連 対象者は必ずしもがん罹患のハイリスクで ある必要はないが、検診にて最大の恩恵を 受けると予測される年齢階級でなくてはな らない。 対 象 者 は 必 ず し も が ん 罹 患 の ハ イ リ スクである必要はない。このことで低 リスク群への過剰な検診、高リスク群 への不十分な検診となる恐れがある。 利益 利用可能な資源の中で最大化される。 個人に対しては最大化される。 害 利用可能な資源の中で最小化される。 最小化する必要は必ずしも無い。
( 3 ) 受 診 勧 奨
1 ) 受 診 率 増 加 に 向 け た 受 診 者 へ の 介 入 方 法
が ん 対 策 基 本 法 に 基 づ い て 策 定 さ れ た 「 が ん 対 策 推 進 基 本 計 画 」1 )に 示 さ れ る「 5 年 以 内 に 50 % 以 上 」を 目 標 と す る に は 、新 た な 策 が 必 要 で あ る 。 米 国 の Tas k F orc e on C omm uni ty Pr even ti ve S erv ic e s 5 )で は 、 受 診 者 、 事 業 者 を 対 象 を と し た 乳 が ん 検 診 受 診 率 向 上 策 に 対 し て シ ス テ マ テ ィ ッ ク レ ビ ュ ー を 行 っ て い る ( 表 5 , 6 ) 。 こ れ ら の 根 拠 の 質 と し て 「 推 奨 さ れ る 」 方 法 を 単 独 、 ま た は 複 数 並 行 し て 行 う 事 が 効 率 を 上 げ る と さ れ て い る 。 受 診 者 へ の お 知 ら せ ( Cli ent rem ind e rs ) や ス モ ー ル メ デ ィ ア は 手 紙 や は が き 、 ビ デ オ な ど 多 く の 人 的 資 源 は 必 要 と せ ず 、 比 較 的 安 価 な 手 段 で 受 診 勧 奨 を 行 う こ と が 可 能 で あ る と 考 え ら れ る 。一 方 、「 根 拠 不 十 分 」と さ れ た も の で あ っ て も 、 受 診 者 へ の イ ン セ ン テ ィ ブ 、 マ ス メ デ ィ ア に 関 し て は レ ビ ュ ー 対 象 と な る 質 の 高 い 研 究 が 存 在 し な い こ と が そ の 原 因 で あ り 、 結 果 の 解 釈 に は 注 意 が 必 要 で あ る 。 な お 、 女 性 特 有 の が ん 検 診 推 進 事 業 に お け る 乳 が ん 検 診 無 料 ク ー ポ ン 券 の 配 布 は 自 己 負 担 額 の 減 免 に 当 た る と 考 え ら れ る 。 無 料 ク ー ポ ン 券 の 配 布 に は 、 対 象 と な る 検 診 が 乳 が ん 、 子 宮 が ん の み で あ る こ と や 、 対 象 年 齢 の 制 限 な ど 、 様 々 な 問 題 点 が 指 摘 さ れ て い る が 、 こ の 機 会 を 利 用 し て 自 己 負 担 額 の 減 免 処 置 が 及 ぼ す 効 果 を 検 証 す る こ と も 重 要 で あ る 。 表 5 . 受 診 率 増 加 に 向 け た 受 診 者 へ の 介 入 方 法 、 対 象 疾 患 と そ の 根 拠 介 入 の 方 法 乳 が ん (マンモグラフィ) 子 宮 頸 が ん (子宮頚部細胞診) 結 腸 直 腸 が ん ( 便 潜 血 反 応 ) 受 診 者 へ の お 知 ら せ 1 推 奨 さ れ る 推 奨 さ れ る 推 奨 さ れ る 受 診 者 へ の イ ン セ ン テ ィ ブ 2 根 拠 不 十 分 根 拠 不 十 分 根 拠 不 十 分 ス モ ー ル メ デ ィ ア 3 推 奨 さ れ る 推 奨 さ れ る 推 奨 さ れ る マ ス メ デ ィ ア 4 根 拠 不 十 分 根 拠 不 十 分 根 拠 不 十 分 集 団 教 育 5 根 拠 不 十 分 根 拠 不 十 分 根 拠 不 十 分 一 対 一 教 育 6 推 奨 さ れ る 推 奨 さ れ る 根 拠 不 十 分 受 診 へ の 障 壁 の 除 去 7 推 奨 さ れ る 根 拠 不 十 分 推 奨 さ れ る 自 己 負 担 額 の 減 免 8 推 奨 さ れ る 根 拠 不 十 分 根 拠 不 十 分 1.印刷媒体(手紙、はがきなど)や電話による検診受診時期のお知らせ 2.受診を促すための尐額の金銭的やその他の報奨。レビュー対象となる質をもつ文献が存在せず 3.パンフレット、リーフレット、ニュースレター、フリップチャートなどの印刷媒体とビデオ 4.テレビ、ラジオ、新聞、屋外広告。レビュー対象となる質をもつ文献が存在せず 5.レビュー対象となる7つの文献のメタアナリシスにおいて結果は一致せず 6.直接個人面談と電話にて検診受診を勧める方法 7.検診会場からの距離、受診時間の制限、児童預かり所の欠如や言語、文化的障壁など受診の障 害となる事項を減じること 8.検診費用の減額、引換券、受診者や実施施設への検診費用の償還、保険費用の減額を指す
表 6 . 受 診 率 増 加 へ の 事 業 主 へ の 介 入 方 法 と そ の 根 拠 介 入 の 方 法 根 拠 事 業 者 へ の 評 価 と フ ィ ー ド バ ッ ク 1 推 奨 さ れ る 事 業 者 へ の イ ン セ ン テ ィ ブ 2 根 拠 不 十 分 事 業 者 へ の お 知 ら せ と リ コ ー ル 3 推 奨 さ れ る 1.事業者が何度検診を施行するのかを評価し、フィードバックする。その内容は個々の事業者 や事業者全体の成績を示し、標準値、目標との比較を行う 2.検診実施を直接的、間接的に促す(金銭的、非金銭的な)報奨を意味する。3件のレビューが 行われたが、結果は一致していない 3.受診者の受診日や、要精検を事業主への連絡を電子的に、または機械的に行うこと 2 ) 受 診 率 増 加 に 向 け て 医 師 会 に 期 待 さ れ る こ と 受 診 率 低 迷 の 要 因 と し て 、 住 民 の 意 識 不 足 と 情 報 提 供 不 足 が あ る こ と は 否 め な い が 、 医 師 会 会 員 に は 、 受 診 率 増 加 に 向 け て の 重 要 な 役 割 を 担 う こ と が 期 待 さ れ る 。 具 体 的 に は 、 か か り つ け 医 師 と し て 、 個 別 が ん 検 診 と は 異 な る 症 状 等 ( 保 険 診 療 対 象 疾 患 ) で 受 診 し た 人 に 対 し て 「 と こ ろ で 、 あ な た は ○ ○ が ん 検 診 は 受 け ら れ ま し た か ? 」、「 受 け て い な い の で あ れ ば 、 △ △ 病 院 ・ 医 院 で ○ ○ が ん 検 診 の 受 診 が 可 能 で す 。」の よ う に 、よ り 具 体 的 に 個 別 が ん 検 診 の 受 診 勧 奨 を 行 う こ と が 可 能 で あ る 。 が ん 検 診 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 結 果( 巻 末 資 料 参 照 )に よ る と 、「 医 師 会 が 実 施 し て い る 受 診 勧 奨 の 方 法 に つ い て 」 の 項 で 、 い ず れ の が ん 検 診 に お い て も 、「 実 施 し て い な い ・ 無 回 答 」が ト ッ プ で あ り 、次 に 広 報 誌 、ポ ス タ ー ・ リ ー フ レ ッ ト 、 ホ ー ム ペ ー ジ 、 は が き 等 郵 送 物 、 口 頭 ( 対 面 ) と 続 い て い る 。「 口 頭 ( 対 面 )」 が 回 答 数 全 体 に 占 め る 割 合 が 1 5 % 程 度 と 極 端 に 低 い こ と は 、 医 師 が 「 か か り つ け 医 と し て の 役 割 」 を 十 分 に 果 た し て い な い こ と を 示 唆 す る も の で あ り 、図 ら ず も 今 後 の が ん 検 診 受 診 率 の 向 上 に は 、 医 師 会 会 員 の 役 割 が 極 め て 重 要 で あ る こ と を 示 し て い る 。 一 方 、「 受 診 率 向 上 の た め の 工 夫 に つ い て 」の ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 に よ る と 、「 特 定 健 診 と の 同 時 実 施 」が 最 も 多 い( た だ し 、乳 が ん ・ 子 宮 が ん で は 「 実 施 し て い な い ・ 無 回 答 」が ト ッ プ )。200 8 年 度 か ら 実 施 さ れ て い る 特 定 健 診 と の 同 時 実 施 は 、 実 施 主 体 の 問 題 等 も あ る が 、 受 診 率 向 上 に 結 び つ く 可 能 性 が あ る 。
( 4 ) ま と め が ん 検 診 に よ る が ん の 死 亡 率 減 尐 を 達 成 す る た め に は 、「 有 効 な 検 診 」を 「 正 し く 」、「 多 く の 人 に 」行 う 必 要 が あ る 。「 有 効 な 検 診 」、及 び「 正 し く 」 に つ い て は 、厚 生 労 働 省 が ん 検 診 に 関 す る 検 討 会 で も 議 論 さ れ 、そ れ ぞ れ 、 「 が ん 予 防 重 点 健 康 教 育 及 び が ん 検 診 実 施 の た め の 指 針 」2 )、「 市 町 村 事 業 に お け る が ん 検 診 の 事 業 評 価 の 手 法 に つ い て 」6 )に 盛 込 ま れ て い る 。 し か し 、「 多 く の 人 に 」受 診 率 向 上 に 関 し て は 、具 体 的 対 応 が 図 ら れ て い な い の が 現 状 で あ る 。 例 え ば 、 世 界 に お け る マ ン モ グ ラ フ ィ 検 診 の 受 診 率 に つ い て 、 経 済 協 力 開 発 機 構 ( Or gan i zati on fo r E c ono mic Co -op er ati on an d Dev elo pm ent , OEC D ) デ ー タ ベ ー ス で 閲 覧 す る こ と が で き る が 、 そ の 200 5 年 の デ ー タ を 見 る と 、世 界 各 国 に お け る マ ン モ グ ラ フ ィ 検 診 の 受 診 率( 5 0 ~ 69 歳 女 性 )は 、 ノ ル ウ ェ ー 9 8 % 、 フ ィ ン ラ ン ド 87 .7 % 、 ス ウ ェ ー デ ン 83. 6 % 、 オ ラ ン ダ 81. 9 % と 北 欧 諸 国 が 高 い が ( 平 均 5 4 . 7 % )、 日 本 は 4 .1 % と 目 を 覆 う ほ ど に 低 い7 )。 わ が 国 で は 、 200 0 年 か ら 対 策 型 と し て マ ン モ グ ラ フ ィ 検 診 が 導 入 さ れ た と し て も 、 同 じ 時 期 に 導 入 さ れ た 韓 国 の 3 3.6 % に も 大 き く 劣 る 。 こ の 検 診 受 診 率 の 低 さ は わ が 国 の 最 大 の 問 題 点 で も あ る 。 国 は 、 が ん 対 策 推 進 基 本 計 画 に 「 5 年 以 内 に 、 5 0 % 以 上 と す る こ と を 目 標 と す る 」と し 、2 009 年 度 補 正 予 算 で 急 遽「 女 性 特 有 の が ん 検 診 推 進 事 業 」 を 実 施 す る な ど の 施 策 を 講 じ つ つ あ る が 、 単 発 的 な 対 応 で は な く 、 世 界 に 範 を 示 せ る よ う な 、 科 学 性 に 基 づ い た が ん 対 策 が 強 力 に 推 進 さ れ る こ と を 期 待 し た い 。 参考文献 1)がん対策推進基本計画 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0615-1a.pdf 2)がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(健発第0331058号) http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_kenshin02.pdf 3)厚生労働省がん検診事業の評価に関する委員会:今後のわが国におけるがん検診事業の在り 方について.2008 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0301-4c_0001.pdf
4)Miles A, Cockburn J, Smith RA et al: A perspective from countries using organized screening programs. Cancer 101: 1201-1213, 2004
5)Task Force on Community Preventive Services: Recommendations for client- and
provider-directed interventions to increase breast, cervical, and colorectal cancer screening. Am J Prev Med 35: S21-25, 2008
6)がん検診に関する検討会中間報告「市町村事業におけるがん検診の事業評価の手法につい て」.2007 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0531-8a.pdf
3 . 精 度 管 理 シ ス テ ム
( 1 )従 来 の が ん 検 診 精 度 管 理 と が ん 対 策 推 進 基 本 計 画 に 沿 っ た 今 後 の あ り 方 1 ) 精 度 管 理 の 現 状 と 今 後 の 向 上 に 向 け た 基 本 的 な 考 え 方
海 外 に お け る Org a nize d scr een in g ( 組 織 型 検 診 ) で は 、 品 質 保 証 の 手 法 で が ん 検 診 の 精 度 管 理 が 行 わ れ 、 が ん 検 診 の 質 を 高 く 保 ち 、 十 分 な 受 診 率 を 確 保 ・ 維 持 す る 事 に よ っ て 、 検 診 の 導 入 後 に 乳 が ん ・ 子 宮 頸 が ん の 死 亡 率 の 減 尐 を 実 際 に 達 成 し て い る 。 一 方 わ が 国 で は た と え ば 乳 が ん の 年 齢 調 整 死 亡 率 は 右 肩 上 が り の 増 加 を 続 け て お り 、 海 外 と の 差 は こ の 組 織 型 検 診 の 体 制 の 有 無 に 原 因 が あ る と 考 え ら れ る 。 が ん 検 診 に よ る 当 該 が ん 死 亡 率 減 尐 を 目 指 す に は 、 上 記 の 組 織 型 検 診 の 方 法 、 す な わ ち 、 有 効 性 の 確 立 し た 検 診 の み を 行 う こ と を 前 提 と し 、 そ れ を 精 度 管 理 に よ っ て 高 い 質 で 提 供 し 、 さ ら に 受 診 率 を 高 く 保 つ と い う 体 制 で 行 う の が 唯 一 、 実 績 の あ る 方 法 で あ り 、 そ れ に 則 っ て 行 う の が 最 も 確 実 で あ る 。 が ん 対 策 推 進 基 本 計 画 で は こ れ を 反 映 し 、 す べ て の 市 町 村 に お い て ① 科 学 的 根 拠 に 基 づ い て が ん 検 診 を 行 う こ と 、 ② 精 度 管 理 ・ 事 業 評 価 を 行 う べ き こ と を 明 示 し て い る 。 こ れ ま で わ が 国 に お け る が ん 検 診 の 精 度 管 理 は 十 分 で は な く 、 む し ろ 死 亡 率 を 減 尐 さ せ る と い う 観 点 で は 極 め て 不 十 分 と 言 わ ざ る を 得 な か っ た 。 す な わ ち 実 施 主 体 で あ る 市 町 村 に お け る 精 度 管 理 の 状 況 は ま ち ま ち で あ り 、 ま た 全 体 と し て も デ ー タ の 精 度 ・ 達 成 度 の 全 て に 渡 り 低 水 準 に と ど ま る 現 状 で あ る 。 精 度 管 理 の 系 統 的 な 手 法 は わ が 国 で は こ れ ま で 存 在 せ ず 、 そ れ が 低 水 準 の 要 因 と な っ て い る 。 組 織 型 検 診 の 精 度 管 理 に お け る 品 質 保 証 / 管 理 ( 以 下 品 質 保 証 ) の 手 法 を 採 り い れ た 体 制 構 築 が 必 要 で あ る 。 こ の よ う な 精 度 管 理 の 対 象 は が ん 対 策 と し て 行 わ れ る が ん 検 診 、 す な わ ち 健 康 増 進 事 業 と し て 行 わ れ る 市 町 村 事 業 と し て の が ん 検 診 す べ て で あ り 、 従 来 か ら の 地 域 に お け る い わ ゆ る 集 団 検 診 と 個 別 検 診 で あ る 。 し か し 、 そ れ に と ど ま ら ず 、 が ん 対 策 推 進 基 本 計 画 が 国 民 全 体 で の 死 亡 率 減 尐 を 目 指 し た も の で あ る こ と か ら 、 職 域 に お け る が ん 検 診 も そ れ に 準 じ た 精 度 管 理 に よ り 質 の 向 上 ・ 維 持 を 目 指 す こ と が 望 ま れ る 。 し か し 制 度 上 、 現 状 で は 健 康 増 進 事 業 以 外 の 検 診 に つ い て そ れ は 困 難 で あ り 、 今
後 、 制 度 変 更 の 検 討 も 必 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 2 ) 厚生労働省がん検診に関する検討会及びがん検診事業評価委員会における検討 こ う し た 中 で 20 0 4 年 度 か ら の 厚 生 労 働 省 「 が ん 検 診 に 関 す る 検 討 会 」 に お い て が ん 検 診 精 度 管 理 に 関 す る 議 論 が 行 わ れ 、 20 07 年 度 に は 同 検 討 会 の 中 間 報 告 「 市 町 村 事 業 に お け る が ん 検 診 に 事 業 評 価 の 手 法 に つ い て 」 (200 7 年 6 月 ) が ま と め ら れ た 。 そ こ で の 議 論 は 従 来 の 精 度 管 理 に 「 事 業 評 価 」 と い う 呼 称 も 当 て て 、 が ん 検 診 の 質 向 上 の た め の よ り 積 極 的 な 精 度 管 理 を 目 指 す も の と さ れ 、 精 度 管 理 を 進 め る た め に 国 ・ 都 道 府 県 ・ 市 町 村 ・ 検 診 実 施 機 関 等 の 役 割 を 明 確 に し 、 そ れ ぞ れ の 役 割 を 着 実 に 果 た し て い く こ と を 求 め た 。 こ の 中 間 報 告 の 中 で 「 事 業 評 価 の 手 法 ( 国 、 都 道 府 県 、 市 町 村 及 び 検 診 実 施 機 関 等 の 役 割 ) 」 、「 が ん 検 診 に 事 業 評 価 に お け る 主 要 指 標 に つ い て 」、「事 業 評 価 の た め の チ ェ ッ ク リ ス ト 」等 が ま と め ら れ た 。 さ ら に 20 07 年 度 に 設 定 さ れ た 厚 生 労 働 省「 が ん 検 診 事 業 の 評 価 に 関 す る 委 員 会 」 に お い て 、 が ん 検 診 検 討 会 で の 議 論 を 深 め て 、 が ん 検 診 の 精 度 管 理 事 業 評 価 に 関 す る 詳 細 な 検 討 が な さ れ た 。 ま た 、 組 織 型 検 診 の 構 築 を 目 指 し て 、 系 統 的 な 精 度 管 理 の た め に 、 品 質 管 理 の 手 法 を 取 り 入 れ た 体 制 が 検 討 さ れ た 。 そ の 結 果 、 老 人 保 健 事 業 と し て 長 く 行 わ れ て き た 体 制 に は な か っ た 評 価 指 標 や 目 標 の 設 定 、集 計 時 期・方 法 及 び 集 計 内 容 ・ 様 式 の 改 訂 な ど を 加 え た 次 項 に 述 べ る 新 し い 精 度 管 理 の 方 法 が 提 示 さ れ た 。 そ の ほ か 、 上 記 チ ェ ッ ク リ ス ト の 改 訂 と 追 加 、 「 仕 様 書 に 明 記 す べ き 必 要 最 低 限 の 精 度 管 理 項 目 」 、「 が ん 検 診 事 業 評 価 指 標 値 の 設 定 及 び 活 用 方 法 」 及 び 「 市 町 村 事 業 に お け る が ん 検 診 対 象 者 数 の 計 算 方 法 」 が 新 規 に 作 成 さ れ た 。 ま た こ の 中 で は 「 が ん 検 診 の 事 業 評 価 の 流 れ 」 と し て 国 ― 都 道 府 県 ― 市 町 村 ― 検 診 機 関 ― 国 民 、 及 び そ れ に か か わ る 専 門 機 関 を 含 め た 精 度 管 理 の 全 体 像 も 提 示 さ れ て い る 。 以 上 の 内 容 は 2 00 8 年 3 月 「 今 後 の 我 が 国 に お け る が ん 検 診 事 業 評 価 の あ り 方 に つ い て 」 報 告 書 と し て が ん 検 診 事 業 の 評 価 に 関 す る 委 員 会 で ま と め ら れ 、 厚 生 労 働 省 健 康 局 長 名 で 全 国 市 町 村 に 通 達 さ れ た 。
( 2 ) 品 質 保 証 の 手 法 を 取 り 入 れ た 新 し い 精 度 管 理 体 制 の 実 施 状 況 海 外 の 組 織 型 検 診 に お け る 品 質 保 証 の 手 法 は 三 段 階 か ら な っ て お り 、 そ れ を 基 に 精 度 管 理 を 考 え る と 第 一 段 階 と し て ① 精 度 管 理 の 目 標 と 標 準 の 設 定 、 第 二 段 階 と し て ② 目 標 到 達 に 必 要 な 検 診 の 質 と 達 成 度 の モ ニ タ リ ン グ ( 及 び モ ニ タ リ ン グ 結 果 の 分 析 ) 、第 三 段 階 と し て ③ ( 前 段 階 の 分 析 結 果 に 基 づ い た ) 精 度 管 理 水 準 の 改 善 に 向 け た 取 り 組 み - と モ デ ル 化 で き る 。こ の 三 段 階 に つ き 、主 に わ が 国 で の 実 施 状 況 は 以 下 の よ う で あ る 。 ① 精 度 管 理 の 目 標 と 標 準 の 設 定 a ) 3 種 の 指 標 死 亡 率 減 尐 を 目 指 す た め の 目 標 と 標 準 と し て「 指 標 」が 必 要 で あ り 、 事 業 評 価 の 指 標 に つ い て は 表 7 に 示 す 3 種 類 あ る 。 が ん 検 診 の 目 的 は 死 亡 率 減 尐 で あ り 、 最 終 的 な 指 標 は ア ウ ト カ ム 指 標 と し て の 死 亡 率 で あ る が 、 死 亡 率 の み で 効 果 を 見 る に は 長 期 間 を 有 し 、 ま た 市 町 村 な ど の 小 さ い 単 位 で は 評 価 は 困 難 で あ る 場 合 も あ る 。技 術・体 制 的 指 標 は 、 が ん 検 診 の 体 制 や 技 術 ・ 機 器 の 水 準 の 指 標 で あ り 、 プ ロ セ ス 指 標 は 、 従 来 か ら の 「 要 精 検 率 」「 精 検 受 診 率 」「 が ん 発 見 率 」 等 、 検 診 の パ フ ォ ー マ ン ス の 指 標 で 、 い ず れ も 1 年 を ベ ー ス に 短 期 的 に 見 る 指 標 で あ る 。 3 者 の 関 係 は 、 技 術 ・ 体 制 的 指 標 と プ ロ セ ス 指 標 の 2 つ の 短 期 指 標 に よ る チ ェ ッ ク で 継 続 的 に 検 診 の 質 を 確 保 し 、 最 終 的 に が ん 死 亡 率 減 尐 を 目 指 す と い う 関 係 に な っ て い る 。 表 7 . が ん 検 診 事 業 評 価 に 用 い る 指 標 技 術 ・ 体 制 的 指 標 検 診 実 施 機 関 の 体 制 の 確 保 ( 設 備 、 医 師 、 技 師 等 ) 、 実 施 手 順 の 確 立 等 プ ロ セ ス 指 標 が ん 検 診 受 診 率 、 要 精 検 率 、 精 検 受 診 率 、 陽 性 反 応 適 中 度 、 が ん 発 見 率 等 ア ウ ト カ ム 指 標 が ん 死 亡 率 出典:がん検診に関する検討会中間報告「市町村事業におけるがん検診の事業評価の手法について」 わ が 国 で は 、 が ん 検 診 に 関 す る 検 討 会 以 前 は 、 プ ロ セ ス 指 標 以 外 は 存 在 し な か っ た 。 ま た 、 プ ロ セ ス 指 標 に つ い て も 後 で 述 べ る 精 度 に 問 題 が あ っ た 。 b ) 技 術 ・ 体 制 的 指 標 - チ ェ ッ ク リ ス ト 現 在 わ が 国 で は 、 技 術 ・ 体 制 的 指 標 と し て が ん 検 診 チ ェ ッ ク リ ス ト
が 策 定 さ れ て い る 。 こ の が ん 検 診 チ ェ ッ ク リ ス ト に よ り 、 体 制 の 水 準 が 評 価 で き る 事 が 既 に 示 さ れ て い る 。 チ ェ ッ ク リ ス ト は 必 要 最 低 限 満 た す べ き 約 3 0 数 項 目 か ら な り 、 機 能 的 に 5 つ の 群 か ら な っ て い る 。 す な わ ち 受 診 率 、 受 診 者 の 記 録 管 理 、 ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 の 精 度 、 プ ロ セ ス 指 標 の 把 握 、 精 検 受 診 率 の そ れ ぞ れ に つ い て 高 い 達 成 度 の 得 ら れ る 体 制 の た め の 項 目 群 で あ る 。 満 た さ な い 項 目 は 早 急 に 整 備 ・ 対 応 す べ き で そ れ に よ り 質 の 向 上 が 図 れ る 。 c ) プ ロ セ ス 指 標 - 数 値 目 標 プ ロ セ ス 指 標 に つ い て は 、 最 近 わ が 国 で 初 め て 5 つ の が ん 検 診 そ れ ぞ れ に つ い て 各 指 標 の 数 値 目 標 が 設 定 さ れ て い る( 表 8 )。こ れ は 最 低 限 超 え る べ き 水 準 と し て の 許 容 値 と 、 よ り 高 い レ ベ ル の 目 標 値 の 2 段 階 に 設 定 さ れ て い る 。 許 容 値 に 達 し な い 市 町 村 は そ の 項 目 に つ い て 、 以 降 の 改 善 ・ 向 上 を 図 る べ き で あ る 。 表 8 . 各がん検診に関する事業評価指標とそれぞれの許容値及び目標値(案) 乳 がん 子 宮 がん 大 腸 がん 胃 がん 肺 がん 精 検 受 診 率 許 容 値 80%以 上 70%以 上 70%以 上 70%以 上 70%以 上 目 標 値 90%以 上 90%以 上 90%以 上 90%以 上 90%以 上 未 把 握 率 許 容 値 10%以 下 10%以 下 10%以 下 10%以 下 10%以 下 目 標 値 5%以 下 5%以 下 5%以 下 5%以 下 5%以 下 精 検 未 受 診 率 許 容 値 10%以 下 20%以 下 20%以 下 20%以 下 20%以 下 目 標 値 5%以 下 5%以 下 5%以 下 5%以 下 5%以 下 精 検 未 受 診 ・ 未 把 握 率 許 容 値 20%以 下 30%以 下 30%以 下 30%以 下 20%以 下 目 標 値 10%以 下 10%以 下 10%以 下 10%以 下 10%以 下 要 精 検 率 (許 容 値 ) 11.0%以 下( ※ ) 1.4%以 下 7.0%以 下 11.0%以 下 3.0%以 下 がん発 見 率 (許 容 値 ) 0.23%以 上( ※ ) 0.05%以 上 0.13%以 上 0.11%以 上 0.03%以 下 陽 性 反 応 的 中 度 (許 容 値 ) 2.5%以 上( ※ ) 4.0%以 上 1.9%以 上 1.0%以 上 1.3%以 上 出典:がん検診事業の評価に関する検討会報告書「今後の我が国におけるがん検診事業評価の在り方について」 d ) ア ウ ト カ ム 指 標 死 亡 率 は 今 の と こ ろ わ が 国 で ま だ 利 用 は 出 来 な い が 、 最 終 的 な 指 標 で あ り 、 中 ・ 長 期 的 な 評 価 に は 不 可 欠 で あ る 。 今 後 、 欧 米 並 み に ア ウ ト カ ム 指 標 を 利 用 出 来 る よ う に す べ き で あ る 。
② 目標到達に必要な検診の質と達成度のモニタリング(及びモニタリング結果の分析) が ん 検 診 に 関 す る 検 討 会 、 事 業 評 価 委 員 会 後 の わ が 国 に お け る 実 施 体 制 は 以 下 の よ う で あ る 。 a ) 技 術 ・ 体 制 指 標 の モ ニ タ リ ン グ チ ェ ッ ク リ ス ト は プ ロ セ ス 指 標 と と も に 毎 年 、 遵 守 度 を 測 り 、 遵 守 さ れ て い な い 検 診 体 制 は 次 年 度 に は 達 成 す る こ と が 必 要 。 b ) プ ロ セ ス 指 標 の モ ニ タ リ ン グ ア ) 集 計 時 期 こ れ ま で 老 人 保 健 事 業 報 告 の 集 計 時 期 が 翌 年 5 月 と 、 検 診 の 精 検 結 果 を 回 収 す る に は 極 め て 期 間 が 短 く そ の 結 果 回 収 さ れ た デ ー タ の 精 度 が 十 分 で は 無 い 事 が 判 明 し た 。そ こ で 20 08 年 よ り 、精 検 結 果 と 関 連 す る 指 標 に つ い て は さ ら に 1 年 後 の 翌 々 年 の 5 月 が 集 計 期 限 と 変 更 さ れ 、 集 計 様 式 も ① 翌 年 5 月 の 受 診 者 数 と 要 精 検 者 数 な ど に 限 定 し た 報 告 様 式 と ② 翌 々 年 5 月 の 精 検 受 診 率 が ん 発 見 率 な ど の 報 告 様 式 の 2 様 式 に 分 け ら れ た 。 イ ) 集 計 項 目 こ れ ま で が ん 検 診 受 診 歴 別 の 集 計 が な く 、 受 診 者 集 団 の リ ス ク が 客 観 的 に 判 断 す る デ ー タ が 不 足 で 、 そ の 結 果 が ん 発 見 率 は 市 町 村 間 の 比 較 性 が な か っ た 。 20 08 年 以 降 の 報 告 様 式 よ り 初 回 受 診 者 と 非 初 回 受 診 者 の 区 別 が な さ れ 、 そ れ と 性 ・ 年 齢 階 級 別 集 計 に よ り 、 集 団 の が ん リ ス ク の 高 低 が 判 断 出 来 る 事 と な っ た 。 そ こ で よ う や く が ん 発 見 率 の 比 較 が よ り 客 観 的 に 出 来 る よ う に な り 、 精 度 管 理 に 利 用 可 能 な 状 態 と な っ た 。 ま た 、 発 見 さ れ た 早 期 が ん に つ い て は 以 前 よ り 詳 し く 、 よ り 有 用 な 集 計 が 可 能 に な っ て い る 。 さ ら に が ん 検 診 の 不 利 益 の モ ニ タ ー の た め に そ の 報 告 欄 も 設 け ら れ て い る 。 ウ ) 分 析 ま ず は 体 制 に つ い て チ ェ ッ ク リ ス ト が ど の 程 度 満 た さ れ て い る か を 把 握 す る 事 が 必 要 で あ り 、 そ れ に よ り 不 備 な 体 制 を 整 備 し て ゆ く 事 で 、が ん 検 診 の 質 の 向 上 が 図 れ る 。ま た プ ロ セ ス 指 標 に つ い て は 、 数 値 目 標 に よ っ て 達 成 度 の 評 価 を 行 い 、 向 上 を 図 る 事 が 出 来 る 。
③ 改 善 に 向 け た 取 り 組 み こ の 段 階 は こ れ ま で は わ が 国 で は 全 く 欠 落 し て い た 部 分 で あ る が 、 第 二 段 階 目 で 行 っ た モ ニ タ リ ン グ に 基 づ く 分 析 ・ 評 価 結 果 を 、 検 診 機 関 、 あ る い は 市 町 村 に 還 元 す る 事 で 改 善 の 必 要 な 項 目 を 明 示 す る 事 が そ の 目 的 で あ る 。 こ の 還 元 に よ り 精 度 が 向 上 す る 事 が 、 品 質 保 証 の 一 つ の 核 に な っ て い る 。 こ れ ま で モ ニ タ リ ン グ 結 果 を 分 析 す る 専 門 機 関 等 が 無 か っ た が 、 20 08 年 度 よ り 国 立 が ん セ ン タ ー に お い て こ の 分 析 を 行 い 市 町 村 に 還 元 す る 事 が 提 案 さ れ 、 現 在 半 ば 事 業 化 さ れ つ つ あ る 。 こ の 還 元 に よ り 改 善 ・ 向 上 が 期 待 出 来 る 。 ま た 、 2 00 7 年 よ り 優 良 な 検 診 機 関 を 選 定 す る た め に 最 低 限 必 要 な 精 度 管 理 の 条 件 と し て 仕 様 書 に 明 記 す べ き 項 目 が 決 め ら れ 、 こ の 利 用 に よ っ て 優 良 な 検 診 機 関 を 選 ぶ 事 が 可 能 に な っ て い る 。 こ の 仕 様 書 の 周 知 は ま だ 十 分 で は な い が 、 市 町 村 に お け る が ん 検 診 機 関 の 入 札 の 際 に 、 精 度 管 理 を 条 件 と し て 考 慮 す べ き 事 を 周 知 徹 底 す る 必 要 が あ る 。 ( 3 ) 精 度 管 理 水 準 の 現 状 と 対 策 1 ) 技 術 ・ 体 制 に 関 す る 精 度 管 理 水 準 200 8 年 度 末 に 全 国 1, 80 0 市 町 村 を 対 象 に が ん 検 診 チ ェ ッ ク リ ス ト に よ っ て が ん 検 診 体 制 の 水 準 が 調 査 さ れ( 回 収 率 89 % )、初 め て そ の 実 態 が 明 ら か に な っ た 。 そ れ に よ り 5 つ の が ん に つ い て の 精 度 管 理 水 準 の 概 要 を 見 る と 従 来 か ら の 集 計 項 目 で あ る 受 診 者 数 の 性 ・ 年 齢 階 級 別 の 集 計 、 対 象 者 の 把 握 、 要 精 検 、 精 検 受 診 率 等 の 項 目 は ほ ぼ 90 % 以 上 と 高 い 割 合 で 市 町 村 は 集 計 し て い る 。 し か し 精 密 検 査 の 結 果 の 把 握 と な る と 、 早 期 が ん の 割 合 は 6 0% 以 下 、 粘 膜 内 が ん ( 大 腸 ・ 胃 ) の 区 別 は 3 0% で し か 行 わ れ て い な い な ど 従 来 か ら の 集 計 に 関 し て も 低 く 、 精 度 管 理 上 、 不 十 分 な 実 態 を 表 し て い る 。 さ ら に 20 08 年 度 よ り 新 規 に 加 え ら れ た 過 去 の 検 診 受 診 歴 の 集 計 、即 ち 初 回 と 非 初 回 に わ け た 集 計 に つ い て は 受 診 者 数 、要 精 検 率 、精 検 受 診 率 、 が ん 発 見 率 、 早 期 が ん の 割 合 、 陽 性 適 中 度 、 い ず れ の 項 目 に お い て も 、 集 計 を し て い る 市 町 村 の 割 合 は 2 0 ~ 3 0 % と 非 常 に 低 か っ た 。 こ の 受 診 歴 別 の 集 計 が な け れ ば が ん 発 見 率 の デ ー タ の 比 較 可 能 性 が 確 保 で き ず 、 今