2008年1月よりわが国で臨床応用が可能となった肝 細胞特異性MR造影剤であるgadolinium-ethoxybenzyl diethylenetriamine-pentaacetic acid(Gd-EOB-DTPA、 EOB・プリモビスト)は、ダイナミック撮像による肝血 流情報とともに、肝細胞胆道相(hepatobiliary phase、 以下は肝細胞相と記載する)を評価することによって良 好な肝腫瘍の検出が可能となった。そのため現在では肝 臓MR検査における造影剤の主役になり、ヨーロッパ各 国ではすでに数年前から臨床使用され多施設共同研究で も良好な結果が報告されている1)。 プリモビストが市場に登場して以来、われわれの施設 ではgadopentetate dimeglumine(Gd-DTPA、マグネビ スト)をはじめとする従来の細胞外液性造影剤であるGd 製剤の使用の頻度は激減し、ほぼ完全にプリモビストに 置き換えられた(図1)。 このプリモビストは静脈注入後の早期相では細胞外液 性造影剤として作用するため、Gdにより得られるT1短 縮効果により肝血流動態の把握が可能となる2、3)。しか し、プリモビストはGdの量が細胞外液性MR造影剤で あるマグネビストの1/4と少ない。一方T1緩和能はマグ ネビストの約2倍であるため、従来のマグネビストのお よそ1/2のT1短縮効果を有することになる。図2は同じ 患者で、同じような投与速度で注入したマグネビストと プリモビストの早期相での造影効果の比較であるが、プ リモビストの造影効果はマグネビストと比較してかなり 劣ることがわかる。プリモビストは肝臓に非常によく取
2.EOB・プリモビスト造影MRI
− 最適な撮像タイミングによる動脈相評価 −
山下 康行,浪本 智弘
熊本大学大学院生命科学研究部 放射線診断学分野Gd-EOB-DTPA Enhanced Dynamic MR Imaging:Optimization
of Arterial Phase Imaging
Yasuyuki Yamashita, Tomohiro Namimoto Summary
Extracellular contrast medium containing gadolinium(Gd),including gadopentetate dimeglumine(Gd-DTPA),plays a major role in obtaining dynamic MR images of the liver.The new class of Gd-chelate contrast agents,gadolinium-ethoxybenzyl diethylenetriamine-pentaacetic acid(Gd-EOB-DTPA) can be used as a dynamic study agent by bolus injection in addition to its original use as a tissue-specific agent,although its Gd enhancement power with a limited dose of 0.025mmol/kg is half that of Gd-DTPA at a dose of 0.5mmol/kg.Neovascularity or arterial supply of a lesion may well be assessed by Gd-EOB-DTPA,when a carefully selected pulse sequence and well-designed injection protocol are used.
For the imaging pulse sequence,3D gradient-echo sequence with fat suppression should be used for dynamic studies along with a tailored injection protocol using either an autoinjector with saline flush or triggering software.The vascularity of hypervascular tumors such as hepatocellular carcinoma(HCC) or focal nodular hyperplasia can be properly assessed by dynamic MR with Gd-EOB-DTPA.
Department of Diagnostic
Radiology, Faculty of Life Sciences, Kumamoto University, Postgraduate School
NICHIDOKU-IHO Vol.55 No.2 15-26 (2010)
り込まれるため、肝実質の評価には十分な量であるが、 ダイナミックMRIにおいては半分の量で勝負しないと いけないため、どうしても早期相での造影効果が不足し がちである。そのため、十分な造影効果を得るためには 何らかの工夫が必要となる。本稿ではプリモビスト造影 MRIにおいて、動脈相の最適化について考えてみたい。
プリモビスト ダイナミックMRIで考慮すべき
造影に与えるさまざまな因子
プリモビストを用いたダイナミック撮像も造影剤注入 後しばらくはマグネビストなどの細胞外液性造影剤を用 いたダイナミック撮像と同じような動態を示す。そのた めプリモビストを用いてダイナミックMRIを行う場合 も通常のヘリカルCTやダイナミックMRI同様造影剤量、 濃度、投与速度(あるいは造影剤投与時間)を十分考慮す る必要があると考えられる4)。Gdキレート剤による臓器 の造影効果にはさまざまのファクターが関与する。造影 剤投与テクニックからみた因子として注入速度、スキャ ン開始時間(delay time)の設定などがあげられ、患者側 因子として体重、心拍出量、腎機能、肝硬変(あるいは 門脈圧亢進症)の有無などのほか、性別、年齢、食事の その他 92 Gd-EOB-DTPA 747 肝転移 125 15 CCC HCC 453 SPIO 99 血管腫 62 図1 当院での肝臓造影MRIの内訳 A 肝臓造影MRIの内訳 B Gd-EOB-DTPAの疾患別内訳 熊本大学医学部附属病院において,2008年4月21日から2009年1月31日までに747症例でプリモビ ストによるダイナミックMRIを施行した.これは肝臓造影検査の88%にあたる.プリモビスト造 影の61%がHCC,17%が肝転移疑いの患者であった. A B 図2 同じ患者で,同じような投与速度で注入したマグネビストとプリモビストの早期相での造影効果の比較 A Gd-DTPA B Gd-EOB-DTPA 同じような造影剤投与法ではプリモビストの造影効果はマグネビストと比較してかなり劣る. A B影響などが重要な因子であると思われる5)。
造影剤量と造影剤投与速度の関係
プリモビストは高いT1緩和能を有しており、T1強調 画像での撮像が中心となる。静脈注入後の早期相では細 胞外液性造影剤として作用するため、Gd成分より得ら れるT1短縮効果により肝血流動態の把握が可能となる。 プリモビストのT1短縮パワーがマグネビストの半分で あっても、ダイナミック撮像を最適化して良質な動脈相 を得ることで多血性肝細胞癌の診断が十分可能である。 一般的に造影剤の投与速度については、注入速度を高 くすると動脈の造影効果が高まり、肝臓癌などの血流の 多い腫瘍も造影能が増す6)。一方、肝臓の造影ピークま での時間ならびに動脈と実質臓器のピーク持続時間は短 くなる。動脈相の持続時間はほぼ造影剤の投与時間に比 例すると考えられ、少量の造影剤を急速に投与した場 合、動脈相の持続時間はきわめて短い。つまり造影剤量 が少ないのに、急速に投与すれば造影剤のtime density curveのピークが急峻となるため、高い血管の造影効果 を維持できる時間は短くなる。つまり大動脈や多血性肝 細胞癌の濃染時間が短くなり、撮像タイミングがとても クリティカルになる。 一方、実質臓器の造影効果はもっぱら体重あたりの総 造影剤量に規定されるため、造影効果は体重に対する造 影剤の投与量に比例する。特に転移性肝癌、膵癌などで は十分な正常組織の造影効果を得て、腫瘍部と非腫瘍部 のコントラストを得ることが重要である。プリモビスト においても体重に応じた造影剤量を投与すれば良好な肝 実質の造影効果を得ることが可能である。プリモビストにおけるダイナミックMRIの
プロトコル設定
以上のような考え方を踏まえたうえで、プリモビスト を用いたダイナミックMRIのプロトコルを設定する必 要がある。高速にスキャンできれば、少ない造影剤量で あっても、ある程度急速に造影剤を投与することで、十 分な造影効果を得ることができる。そのため少量の造影 剤で十分高い診断精度を確保できよう。最近の高機能の MRIはきわめて短い時間で臓器全体のスキャンも可能で ある。そのため、臓器全体がほぼ同一の時相でスキャン することが可能であるが、スキャンのタイミングが悪い と全く期待した造影効果が得られないこともあり得る。 そのためダイナミックMRIを施行する際には適当なス キャンパラメータの設定のみならず、撮像のタイミング の設定が重要となる。原則的に血管系を十分に染めるこ とが重要であり、造影剤のGdの量が半分に相当するた め、高速の撮像プロトコルを用いるほうが望ましい。か つ循環動態には個人差が大きいため、個別化を行うこと も必要であろう。撮像開始のタイミング
ダイナミックMRIでは造影剤をbolus で注入し、その 後に血中の造影剤の濃度のピーク付近がk-space の中央 付近(k-space の低周波領域、sequential ordering では撮 像時間の真ん中)に一致するように設定すると最も高い 動脈相のコントラストが得られる(図3)。このタイミン グがずれると十分なコントラストが得られず、腫瘍の検 出能が著しく低下する。また撮像中にマグネビスト の 濃度が急激に変化すると著しいアーチファクトを生じ、 blurring の原因となる。 最適の撮像開始のタイミングは個人差が大きく、タイ ミングを逸すると全く不満足な検査となってしまう。特 にプリモビストでは造影剤の量が少ないため、その設定 は大変クリティカルになることを認識しなければならな い。一般的には、以下のような手段が用いられる7)。 1.平均的タイミングでの撮像法 特に個別化を行わずに多くの患者での平均的な至適時 間で撮像する方法である。当然循環動態には個人差があ るため、至適時間は異なるが、ダイナミックCTやマグ ネビストのように比較的造影剤量が多い場合はピークを 維持できる時間もある程度長いため、多少ピークからず れても臨床的に問題はなかった。しかしプリモビストに よるダイナミックMRIのように容量が少なく、撮像時 間が短い場合はタイミングがずれる確率も高い。そのた め、プリモビストを用いて短い撮像時間で撮像する場合 はこの方法は勧められない。しかし4D法(後述)のよう に、非常に短い撮像時間を繰り返す場合は問題なく施行 可能と思われる。2.テスト造影法 この方法は、少量の造影剤を実際の注入と同じ生食フ ラッシュの量と注入速度で急速静注し、造影剤の到達時 間を求めるものである。実際にはturbo-FLASH 法など の高速撮像法を用いて1 秒に1 枚程度のスキャンを繰り 返す。この到達時間を用いて、撮像時間の中心(k-space の中心)が動脈相のピークに一致するように実際の撮像 のdelay time を設定する(図3)。 大動脈の造影のピークはBaeら8)によるヨード造影剤 におけるpharmacokinetic modelと実験モデルにより動 脈のピークに到達する時間は造影剤投与時間+造影剤 の到達時間に一致することが明らかにされている。つ まり、造影剤を10秒かけて注入し、造影剤の到達が15 秒であった場合、大動脈のピークはおよそ25秒となる。 一方腫瘍の濃染は少し遅れるため、その点を考えて実際 の肝臓の撮像を行わなければならない。一般的には大動 脈到達から約14秒後に多血性肝細胞癌の濃染ピークを 迎えるということがほぼわかっているため、この部分が 撮像の中心となるようにdelay timeを設定するとよい。 この方法は非常に正確に動脈相のピークを得ることが 可能であるが、造影剤の自動注入器が必要であり、施行 に手間がかかる。またそれほど問題となることはない が、本番の撮像においてすでに肝実質が若干濃染されて おり、微妙な染まりの腫瘍の場合には診断能が低下する 可能性がある。 3.Triggering softwareを用いる方法 これはテスト造影を行う代わりにいきなり造影剤を全 量投与し、自動的に造影剤到達を検出するソフトウェア (GE社製 Smart prep、 Siemens社製 CARE bolus、東芝社 製 Real prepなど)を用いることによって造影剤の到達を リアルタイムで観察する方法である。この方法でも特定 の断面を繰り返し撮像し、関心領域にregion of interest (ROI)を設定し、造影剤の到達を計測する。一定の閾値 に達したら自動的あるいはマニュアルで撮像を開始する (図4、 5)。この際、気をつけなければならないことは、 閾値に達してから撮像まではテーブル移動や息止めなど 10秒程度要することをあらかじめ計算に入れて設定す ることである。 これらの方法ではtest injection を行う必要がないため 造影剤の無駄がなく、また実際の造影効果をモニターで きるため失敗は少ない。以前は血管からのアーチファク トなどのために誤動作もあったようだが、最近の機械で は改善されている。ただこの方法はテスト造影に比し て、正確にk-spaceの中心で撮像できるわけではないた め、造影能はテスト造影法に劣る可能性があるが、臨床 的には問題ないようである。 4.高速の撮像を繰り返す方法 最近の高速のパルスシークエンスでは数秒以下でも撮 像可能である。MR-DSAのようにごく短い間隔で撮像 を繰り返せば、どこかのタイミングで良好なコントラ ストが得られる可能性も高い。これは後述の4Dのダイ ナミック撮像法と呼ばれるもので、時間分解能が高いた め、動脈相後期で肝細胞癌のコロナ様濃染を検出するこ とでAPシャントとの鑑別を行うことも可能であると考 えられる。
ダイナミックMRIで使用するパルス系列
最適な動脈相の撮像にはMRI装置の性能が大きく依 存するが、近年のMRIの高速撮像法の進歩は目覚しく、 肝画像診断においてもマルチスライスCTの空間分解能 に近づきつつある。肝臓のMR検査で用いられるT1 high resolution isotropic volume examination (Philips 社 製 THRIVE)やliver acquisition with volume acceleration (GE社製 LAVA)などの高空間分解能3DFT-T1強調画像 は、肝ダイナミックMRI検査の動脈相を得るための強 通過時間 造影剤 投与 撮像時間 撮像開始 図3 テスト造影法における画像収集のタイミング MR angiography のパルス系列がk-space を外から順に埋めていく 場合,造影剤の注入時間をtとすると,動脈への到達から腫瘍の濃 染が経験的に14秒とわかっているので,t+14が撮像の中心になる ようにdelay timeを設定するとよい.力な武器となっている。そのためには、臨床使用におけ るGd濃度範囲内において、用いる撮像シーケンスの撮像 時間やk-spaceデータ収集のデザインなどを考慮に入れて、 腫瘍濃染ピークを最適なタイミングで提えることができ るようなプロトコルを各施設で調整する必要がある。 一 方、 ダ イ ナ ミ ッ クMRIの 診 断 能 はin phaseで も opposed phaseでも大差ないとされているが、opposed phaseで造影した場合、脂肪の多い組織ではparadoxical な信号抑制が起こることがあり、勧められない。 1.2D法ダイナミックMRI 腹部ではspin echo法による長時間の撮像では呼吸に よるアーチファクトは避けられず、最近のMRI装置で は呼吸停止下の2Dマルチスライスのgradient echo法 のほうが画質がよいことが多い(図6)。呼吸停止下の gradient echo法はSNRが高く、良好な画像を得ることが 図4 MR透視を用いた撮像 A 2D 透視法のための撮像断面の設定 B 2D 透視モニタースキャンによる大動脈への造影剤到達の検出 モニタースキャンによって大動脈への造影剤の到達がリアルタイムで検出 可能である.Operatorは造影剤の到達を確認した後にただちに3Dのスキャ ンを行う. A B 図5 MR 透視を用いたスキャン画像化の最適化 造影剤流入に伴う血管内信号を高速撮像法(MR 透視法)によりほぼリアルタイム でモニターし,造影剤の到達とともに高分解能の3D MR angiography を行う.そ れにより良好なタイミングでダイナミックMRIが可能である. 腫瘍の濃染 動脈 3Dの高分解能画像 2D透視画像 造影剤注入 開始 造影剤検出 時間 トリガー 3D scan
可能である。従来は多くのダイナミックMRIがこの撮像 法で行われていた。2D gradient echo法ではTR 124msec 前後、TE 40msec前後で撮像する。脂肪抑制は用いられ ないことが多い。TRが長いため、マルチスライス法に て1回の撮像で15〜20枚得ることが可能である。しかし、 スライス厚 8.0mm程度とある程度厚くなり、撮像時間 も16〜20秒要するため時間分解能はよくない。2D法に おけるダイナミック検査の撮像は、多くの施設で4相程 度行うことが多い。最近、高性能のMRI装置においては、 次第に次に述べる3D法のほうがよく用いられるように なりつつある。 2.3D法ダイナミックMRI
高 速 の3D spoiled gradient echo 法 は も と も とMR angiography に用いられてきた撮像法である。最新の 機種においては特に強力な傾斜地場を使って、TR を5 msec 以下、TE を2 msec以下に設定することも可能に なった(図7〜9)。TR を5 msec 以下にすると縦磁化が回 復できないため、フリップ角は15°程度に小さくせざる を得なくなり、T1 強調画像としてはコントラストが低 下する。しかし、造影剤を併用することで、十分高いコ ントラストを得ることが可能である。このような高速 3D spoiled gradient echo 法はVIBE(volumetric interpolated breath-hold examination、Siemens社製)やLAVA(GE 社製)、THRIVE(Philips社製)と呼ばれ、名前のとおり
図6 2D gradient echo法(TR 124/TE 40 FA90)による撮像(肝細胞癌例)
動脈相にて腫瘍の濃染が明らかである(矢印).TRが長いため,SNRが良好であり,画質はよい.マルチスライス法にて1回の撮像で15〜20 枚得ることが可能である.しかし,スライス厚 8.0mm程度とある程度厚くなり,撮像時間も16〜20秒要するため時間分解能はよくない.
造影前 動脈相 門脈相1
肝臓などの腹部の造影検査の息止めのダイナミック検査 によく用いられている。通常は脂肪抑制パルス、zero-filling、parallel imagingなどの高速の撮像法を併用して、 等方性ボクセルの三次元画像が呼吸停止下に撮像可能と なっている。 3D撮像には次のようなメリットがある。第一に高分 解能の画像を得ること、特にz軸方向の高分解能化(実 効スライス厚2〜3mm程度の薄いスライス厚)が可能で ある、第二に適切なパラメータを用いることにより、臨 床使用におけるGd濃度範囲内では2D法よりも良好な増 強効果が得られることである。当初シークエンスが未熟 であったころは、3Dを用いることでSNRが低下する欠 点があったが、最近では目覚ましいMR機の技術革新(脂 肪抑制法の改善、TEの短縮、コイルの改良など)により SNRは大幅に改善している。 図10はマグネビストとプリモビストの同じ造影剤濃 度での造影効果の比較である。マグネビストに比してプ リモビストは緩和度が高いために造影効果が高い。また 2Dと比較して、3Dでは全般的に(特に高濃度域)で造影 効果が高いことがわかる。 3.多動脈相ダイナミック撮像(4Dダイナミック撮像) 若干空間分解能を犠牲にすることで時間分解能を上げ (4〜7sスキャン)、動脈相を3〜6相撮像する試みがなさ れている。この方法は通常の3D撮像において、keyhole 技術やparallel imaging技術を駆使することで分解能を 造影前 動脈相 門脈相 後期相 肝実質相 T2強調画像
図7 3D gradient echo法(THRIVE法,3.35/1.4/10 スライス厚4.5mm)によるダイナミックMRI
最新の機種においては特に強力な傾斜磁場を使って,TR を5 msec 以下,TE を2 msec以下に設定することも可能になった.動脈相にて腫 瘍の濃染が明らかである(矢印).肝実質相では腫瘍へのプリモビストの取り込みを認める.
造影前 動脈相 門脈相
後期相 肝実質相
T2強調画像
図8 3D gradient echo法(THRIVE法,3.00/1.4/10 スライス厚4.0mm)によるダイナミックMRI(肝細胞癌例) 造影前で腫瘍は軽度高信号で,動脈相にて腫瘍の濃染が明らかである(矢印).肝実質相では腫瘍は周囲肝臓とほぼ等信号となっている. T2強調画像(1135/80/90 スライス厚8.0mm)では不規則な信号である(矢印).
図9 3D gradient echo法(THRIVE法,3.00/1.4/10 スライス厚4.0mm)によるダイナミックMRI(胆管細胞癌例) 造影前で腫瘍は周囲肝実質より軽度低信号で,動脈相にて腫瘍の辺縁部が増強されている(矢印).後期相では腫瘍は淡く造影されているが, 肝実質相では腫瘍は周囲肝臓より低信号となっている(矢印). 造影前 動脈相 門脈相 後期相 肝実質相 造影剤濃度 (mM) 2D FLASH : FA 65° 3D VIBE : FA 30° ヒト血液 (全血) 造 影 効 果 比 (CR) 0 2 4 6 8 10 0 0.5 1 1.5 2 3D マグネビスト 3D プリモビスト 2D マグネビスト 2D プリモビスト 図10 3T Gd-EOB-DTPAとGd-DTPAとの 造影効果の比較 3D VIBEおよび2D FLASHでプリモビストはマグ ネビストと比べて造影効果が高いが,添付文書に 規定された薬剤投与量で比較するとマグネビス トの造影効果がプリモビストと比べて高い.
さほど犠牲にせずに4Dダイナミック撮像が可能となっ ている。最近では3.0T機においても、このような撮像 法が可能となっている(図11)。 この方法はあまり手間をかけずにどこかでよいタイミ ングが得られるが、画質がかなり低下すること、通常の ダイナミック撮像よりも多量の情報が排出されサーバー の負担が増すという欠点もあり、あまり使用されていな いようである。
造影剤によるT1値の緩和とパルス系列の
最適化
3D gradient法では短いTR によって縦緩和が押さえら れ、組織の信号は抑制されるが、造影剤を併用すること で血液の縦磁化は十分に回復できるので、十分TR の短 縮が可能である7)。 造影剤のfirst pass の濃度は体重には依存せず造影剤投 与速度(flow rate)を心拍出量で割った値に一致する。し かし一定の造影剤量を投与する場合、投与速度を速くす るとピークの大きさは大きくなるが、短時間で注入が終 了するためピークの持続時間は短くなる。 Gd造影剤によって血液のT1値(= 1,200 msec)が短縮 するが、その大きさは次式で与えられる。 1/T1 =(1/1200)+ R[Gd] R = 4.5 mM-1・sec-1、体重の8%が血液プールとし静注に よって造影剤が血液中に均一に分布すると仮定すると、 心拍出量からGd造影剤投与量に対する血管腔内のT1 値 をおよそ予測できる。ここでspoiled gradient echo 法を用いた場合の信号強 度は次式で与えられる(図12)9)。 1−exp(−TR/T1) ・sin(α)・exp(− TR/T2*) 1− cosα exp(−TR/T1) 一般には撮像時間をできるだけ短くするためにTR を 最短にする。上記の式において用いるTR、予測される 血液のT1 値(Gdキレート造影剤の投与法で変化する)に おいて最適のフリップ角を選択する必要がある(図12)。
3.0TのMRIによるダイナミックMRI
近年、腹部領域でも、3.0TのMRIを用いたダイナミッ図11 4D gradient echo法(4D THRIVE法 2.56/1.4/10 スライス厚6.0mm)
Keyhole技術やparallel imaging技術を駆使して時間分解能を上げ,複数の動脈相を撮像することが可能である.若干空間分解能は劣り, アーチファクトもみられるため,3Dに比し画質はやや劣る.
図13 Gd-EOB 1.5T と 3.0Tの画像の比較 プリモビストによる造影の観点では 3.0 T の基本的にはプリモビストの緩和能には大きな変化はない.しかし組織のT1値が延長する ため,相対的なT1コントラストは増加する.またSNRも向上するため,実際の造影効果はかなり改善する. 1.5T 3.0T 血液 脂肪 TR=10 msec フリップ角 25° 35° Gd-DTPAを投与 した血液 T1=50 msec T1=150 msec
図12 Spoiled gradient echo法におけるさ まざまなT1値,フリップ角と信号強度 Spoiled gradient echo法においてTR=10 msec として1.5 teslaのMRIにおいてさまざまのT1 値でのフリップ角(α)と信号強度の関係を示 した.Gdキレート剤を静注すると血液のT1 値は50〜150 msecとなる.
クMRIが施行される機会が増えている。3.0TのMRIで はSNRが高いため、高速の撮像をする場合に有効であ る。生体の緩和時間も磁場強度に依存し、T1緩和時間 は磁場強度に相関して増加し、1.5Tの1.2〜1.3倍延長す るため、実質臓器でのT1コントラストは若干低下する。 3.0Tにおけるプリモビストの造影の観点で、基本的に はプリモビストの緩和能に大きな変化はない。しかし組 織のT1値が延長するため、相対的なT1コントラストは 増加する。またSNRも向上するため、実際の造影効果 はかなり改善する(図13)。
プリモビスト ダイナミックMRIのプロトコル
以上のようなことを考慮して、MRIのプロトコルを 設定する必要がある。要約すると撮像timingの決定には test injection法、もしくはbolus tracking法を用いて正 確な到達時間を評価したうえで撮像すべきである。その 際、自動注入機を用いて生理食塩水による後押しをする ことは必須である。撮像シークエンスは可能であれば脂 肪抑制を併用した3D gradient-echo法を用いることが望 ましい。そしてk-spaceの中心に目的とする臓器・病変の 増強peakが一致するようにdelay timeを設定することが 重要である。撮像には動脈相、門脈相、後期相を撮像し、 15〜20分後に肝実質相を撮像する。ダイナミックMRIが有効な疾患
ダイナミックMRIの最もよい適応は肝臓癌やFNHな どの多血性の腫瘍である。多血性腫瘍の検出において、 われわれの検討ではプリモビストによるダイナミック MRIの診断能は64列のマルチスライスCTによるダイナ ミックCTとほぼ同等の診断能をもっており、臨床的に 十分有効であることを確認している。また多血性肝臓癌 におけるダイナミックCTとの診断能の比較では、ROC による検討では有意差はないものの、プリモビストに よるダイナミックMRIのAzのほうがダイナミックCTよ り優れており(0.963 vs 0.930)、特に感度が優れていた (91.4% vs 71.6%)と報告されている9)。時間分解能を挙 げることで、肝臓癌などではコロナ濃染の描出も可能と なる。血管腫でも通常のマグネビスト同様、特徴的な所 見が得られる。また膵臓発生の神経内分泌腫瘍の肝転移 や腎細胞癌などにおいてダイナミックMRIで動脈相を 評価することは有用である。 実際の各疾患の診断のポイントは本特集の他の論文を ご参照いただきたい。 【参考文献】1) Huppertz A,Balzer T,Blakeborough A,et al,European EOB Study Group:Improved detection of focal liver lesions at MR imaging;multicenter comparison of gadoxetic acid-enhanced MR images with intraoperative findings.Radiology 230: 266-275,2004
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