分析枠組みから見た管理会計研究
-文献分析による検討-
横 田 絵 理
乙 政 佐 吉
坂 口 順 也
河 合 隆 治
大 西 靖
妹 尾 剛 好
Summary 管理会計研究の進展によって,新たに管理会 計技法が発掘・開発される一方,マネジメン ト・コントロールのとらえ方も拡張されている。 本研究では,近年のわが国の管理会計研究を対 象とした文献分析を通じて,マネジメント・コ ントロールの主要なフレームワークと,管理会 計研究技法との対応関係の現状を明らかにした 上で,今後の課題を提示する。 Key Words ① マネジメント・コントロール ② 文献分析 ③ 管理会計研究 ④ 日本的管理会計 ⑤ 戦略的管理会計Ⅰ はじめに
ビジネス環境の変化に伴って,Anthony (1965)によって提示されたマネジメント・コ ントロール以外にも,会計機能以外の側面を内 包したマネジメント・コントロールのフレーム ワークが提示されている(Merchant 1998; Simons 1995)。同時に,管理会計技法について もまた,1980 年代後半以降,予算管理や利益・ 経営計画といった伝統的管理会計技法に加えて, アメーバ経営や原価企画をはじめとする日本的 管理会計技法,あるいは,Balanced Scorecard (BSC),品質管理会計,Activity Based Costing/ Activity Based Management (ABC/ ABM)のような欧米発の革新的な戦略的管理 会計技法が新たに管理会計の研究対象となって いる。 しかしながら,わが国の管理会計研究の多く は管理会計技法を論点としている(廣本ほか 2012)ため,マネジメント・コントロールのと らえ方が拡張されている中で,マネジメント・ コントロールのとらえ方の拡張とさまざまな管 理会計技法との対応関係は必ずしも明示的には なっていない。 両者のあいだの対応関係が不明瞭な状況は, 管理会計に関わる議論の前提に大きな差を生じ させるため,管理会計の研究者間での相互理解 2015 年 9 月 28 日受付 2016 年 4 月 22 日掲載決定(受理)や研究蓄積,および,研究者と実務家とのコミ ュニケーションの阻害をもたらす危険性を孕ん でいる(上總 1993; 吉田ほか 2012)。それゆえ, 近年のわが国の管理会計研究において議論され ている内容とマネジメント・コントロールのフ レームワークとの対応関係を整理しておくこと は,今後の研究の方向性を模索する上で重要で あろう。 以上から,本研究では,マネジメント・コン トロールの主要なフレームワーク(Anthony, Merchant, Simons)と,マネジメント・コン トロールに関するわが国の管理会計研究との関 連性を明らかにすることを目的とする。
Ⅱ マ ネ ジ メ ン ト ・ コ ン ト
ロールのフレームワーク
Anthony(1965)によるマネジメント・コン トロールの定義以降も,管理会計研究において は,さまざまなマネジメント・コントロールの フレームワークが提示されている。 本研究では,さまざまに提示されているマネ ジメント・コントロールの中でも,Anthony, Merchant,Simons それぞれが提示したマネジ メント・コントロールのフレームワークに焦点 を絞る。後述する通り,三者それぞれが,マネ ジメント・コントロールを異なる視点(階層, 対象,方法)からとらえているためである(1)。 三者それぞれのマネジメント・コントロール のフレームワークの概要について示すと,まず, Anthony(1965)は,コントロールとプランニ ングとを明確に区分できないことから,新たに 「戦略計画」「マネジメント・コントロール」「オ ペレーショナル・コントロール」の三つのプロ セスからなるフレームワークを提示した。 Anthony は,マネジメント・コントロールを, 組織目標の達成や戦略実行のために,ミドル・ マネジャーが与えられた権限の中で資源を有効 に活用するプロセスととらえている(Anthony 1965; Anthony and Govindarajan 2007)。 Anthony によるマネジメント・コントロールは, 「戦略計画」と「オペレーショナル・コントロー ル」とのあいだに位置づけられるとともに,両 者とは区別されている。 マネジメント・コントロールは,ミドル・マ ネジャーおよびミドル・マネジャーを支援する スタッフ,もしくは,ミドル・マネジャー同士 のやりとりを通じて実行される。マネジメン ト・コントロールにトップ・マネジメントも関 与するものの,Anthony(1965)は「ライン・ マネジャーはマネジメント・コントロールにお ける焦点である」(Anthony 1965, 49)として いる。 対して,「戦略計画」はトップ・マネジメン トおよび本社スタッフによって立案される。 「オペレーショナル・コントロール」はミド ル・マネジャーとロアー・マネジャーや自動シ ステムとのやりとりを介して実行される。 したがって,Anthony のフレームワークは, コントロールとプランニングとが混在する実際 の活動に着目しながら,組織階層との関連から 分類されているといえる(加登 1999; 福嶋 2012)。 Anthony(1965)によるマネジメント・コン トロールの定義は,会計情報を基軸としてプラ ンニングをコントロールに統合するマネジャー の役割を明確にした点において貢献を果たして いる。しかしながら,多くの論者によって批判 される中で,マネジメント・コントロールのと らえ方は,水平的(非会計的なコントロールの 包含),もしくは,垂直的(戦略や業務の包含) の二つの方向に拡張している(福嶋 2012)。 水平的拡張の代表としては,Merchant が挙 げられる。Merchant は,マネジメント・コントロールを「管理者が組織の戦略と計画を遂行 して,必要な場合に修正することを確実にする よ う 支 援 す る た め に 行 う 全 て の こ と 」 (Merchant and Van der Stede 2012, ⅻ)と
定義している。Merchant において,マネジメ ント・コントロールは,「結果コントロール」 「行動コントロール」「人事コントロール」「文 化 コ ン ト ロ ー ル 」 の 四 つ に 区 分 さ れ る (Merchant 1998; Merchant and Van der Stede
2012)。 「結果コントロール」とは,組織目標の達成 に向けて従業員を動機付けるために,業績を測 定・評価したり,インセンティブを提供したり することを指す。「行動コントロール」では, 従業員の行動自体をコントロールの対象として, 従業員が組織の利益を最優先に行動するよう方 向づけられる。「人事コントロール」は,従業 員と職務の適合を図ることをいう。「文化コン トロール」では,組織の規範や価値観から逸脱 する従業員に圧力がかけられる。 すなわち,Merchant のフレームワークは, コントロールの対象に応じてマネジメント・コ ントロールを分類している。 次に,Anthony(1965)によるマネジメン ト・コントロールを垂直的に拡張した研究に, Simons の一連の研究がある。Simons は,マネ ジメント・コントロールを「管理者が組織活動 のパターンを維持または変更するために利用す る,公式的で情報を基礎としたルーティンおよ び手続き」(Simons 1995, 5)と定義する。また, マネジメント・コントロールのフレームワーク として,四つのコントロール・レバーを提示し ている(Simons 1995, 2000, 2005)。四つのコ ントロール・レバーは,「診断的コントロー ル・システム」「インターラクティブ・コント ロール・システム」「理念システム」「境界シス テム」から構成される。 「診断的コントロール・システム」は,管理 者が事前に設定された標準からの差異を修正す るために利用する公式的な情報システムである。 「インターラクティブ・コントロール・システ ム」は,管理者が従業員の意思決定活動に関与 するために利用する公式的な情報システムを意 味している。「理念システム」では,組織の基 本的な価値・目的・方向性が従業員に対して伝 達される。「境界システム」では,組織として 許容可能な活動領域の輪郭が描かれる。 Simons の四つのコントロール・レバーは, 戦略を実行したり,戦略の創発を促進したりす るためのマネジメント・コントロールの方法で ある。なお,Simons は,先述の Anthony (1965)のマネジメント・コントロールを「診 断的コントロール・システム」としてとらえて いる(Simons 1991, 49)。同様に,Merchant の「結果コントロール」も,「診断的コントロー ル ・ シ ス テ ム 」 と の 関 連 で 議 論 し て い る (Simons 1995, 59-61)。 以 上 か ら , A n t h o n y は 「 組 織 階 層 」, Merchant は「コントロールの対象」,Simons は「コントロールの方法」の観点からそれぞれ マネジメント・コントロールを特徴づけている といえる。
Ⅲ 文献分析の概要
1 .文献分析の方法 本研究では,近年のわが国の管理会計研究で 議論されている内容とマネジメント・コント ロールのフレームワークとの関連性を明らかに するために,書誌学的方法を採用した管理会計 研究(加登ほか 2010; 河合・乙政 2013; 吉田ほ か 2009; Hesford et al. 2007; Shields 1997)を 参照しながら,文献分析を実施した。文献分析 を採用した理由は,数多の既存研究を多面的に分析するとともに,コード化を通じて検討結果 を客観的に評価しながら全体的な傾向を把握す るためである(吉田ほか 2009; Hesford et al. 2007)。 具体的な実施手順は,次のとおりである。第 一に,マネジメント・コントロールのフレーム ワークおよび研究内容にかかわるわが国での現 状を把握するために,2011 年から 2013 年まで(2) に公刊されたわが国主要会計雑誌 7 誌(後述) の全論文から管理会計に関する論文を選出した(3)。 次に,マネジメント・コントロールにおいて キータームとなる「プランニング(Planning)」 もしくは「コントロール(Control)」の用語が, ①タイトル,②キーワード,③要旨,④本文の 最初のセクション,⑤本文の最後のセクション, のいずれかに含まれている論文を本研究の対象 となる「マネジメント・コントロール研究」論 文として抽出した。 抽出した論文の全数は 77 件である(4)。構成は, 『メルコ管理会計研究』6 件(7.8%),『會計』 12 件(15.6%),『会計プログレス』1 件(1.3%), 『管理会計学』16 件(20.8%),『企業会計』12 件(15.6%),『原価計算研究』23 件(29.9%),『産 業経理』7 件(9.1%)となっている。結果として, 『原価計算研究』や『管理会計学』のような管 理会計を専門とする学会誌から多くの論文を抽 出している。 第二に,前節までの議論を踏まえながら,論 点としたい項目についてコードを設定した。論 点としたい項目は,(1)Anthony,Merchant, Simons それぞれによる一連の著作の引用の有 無,(2)議論されている組織階層(「トップ」「ミ ドル」「ロアー」「不明」の四つにコード化),(3) コントロールの対象(「結果」「行動」「人事」「文 化」「不明」の五つにコード化),(4)コントロー ルの方法(「診断的」「インターラクティブ」「理 念」「境界」「不明」の五つにコード化),(5) 研究対象となっている管理会計技法,の五項目 である(5)。いずれの項目においても複数回答が 可能となっている。 第三に,コード分類を実施する前に,複数回 のプレテストを実施した。プレテストでは,筆 者らが個々にコード分類した結果に対する全体 での相互チェックを介して,コードの妥当性, および,筆者らのあいだでのコード分類の統一 性を確認した。 最後に,二人一組の三グループそれぞれに担 当する論文を割り振った上で,三グループそれ ぞれが担当する各論文に対してコード分類を実 施した。加えて,対象となるすべての論文に対 して,筆者ら全員の協議を通じて最終的なコー ド分類を決定した(6)。 なお,分析を進めるにあたっては,筆者らの 主観の排除を目的として,初期のキーターム選 定段階から,日本的マネジメント・コントロー ルを検討する研究会での報告を通じて,筆者ら 以外の研究者との意見交換を行った。研究会で の助言は本研究の分析全体に反映されている。 2 .本研究の分析視角 近年のわが国の管理会計研究において議論さ れている内容とマネジメント・コントロールの フレームワークとの対応関係を整理するに際し て,本研究では,わが国の管理会計研究の内容 として,論点とされることが多い管理会計技法 に注目する。また,従来とは異なった機能を発 揮すると期待されている新たに発掘・開発され た管理会計技法と,マネジメント・コントロー ルのフレームワークとの対応関係を明確にする ために,本研究では,管理会計技法(以下「技 法」と省略)を,「伝統的」技法,「日本的」技 法 ,「 戦 略 的 」 技 法 の 三 つ に 分 類 す る ( 谷 2013)。 「伝統的」技法には,予算,利益計画,経営
計画といった,従前より管理会計研究において 議論されてきた技法を分類している。「日本的」 技法は,アメーバ経営,原価企画のような,わ が国実務において培われてきた技法を指す。 「戦略的」技法には,BSC や ABC/ABM をは じめとする,1980 年代後半以降,実務におけ る既存の技法の諸問題を解決するために海外に おいて考案された技法をまとめている。 なお,集計にあたって,対象論文において技 法を明示していない場合は,「技法不特定」と して分類している。本研究では,前述したマネ ジメント・コントロールのフレームワークと, マネジメント・コントロールに関するわが国の 管理会計研究との関連性を明らかにすることを 目的とするため,「技法不特定」も分析対象に 含めることが不可欠である。 対象論文の全数 77 件を技法に関して集計し た結果,「伝統的」39.0%(30/77),「日本的」 5.2%(4/77),「戦略的」13.0%(10/77)となっ ている。技法が特定できる論文数の比率は,全 体として 57.1%(44/77)を占めている(7)。「技 法不特定」は 42.9%(33/77)であった。 次節では,Anthony,Merchant,Simons それ ぞれの一連の著作をどの程度引用しているのか (対象論文の引用分析)を示した上で,前節で の議論を踏まえながら,「組織階層」「対象」「方 法」の観点から対象論文において技法がどのよ うにとらえられるのか(対象論文の内容分析) について分析を行う。
Ⅳ 文献分析の結果
1 .引用分析 本研究の対象論文において,Anthony の一 連の著作(Anthony 1965, 1988; Anthony and Herzlinger 1975; Anthony and Young 2003; Anthony and Govindarajan 2007),Merchantの一連の著作(Merchant 1982, 1998; Merchant and Van der Stede 2003, 2007, 2012),Simons の一連の著作(Simons 1990, 1995, 2000, 2005) が引用されているか否かを集計するに際して, Anthony,Merchant,Simons の一連の著作の うち一編でも引用していれば,件数にカウント している。 集計結果は,「Anthony のみ引用」6 件 (7.8%),「Merchant のみ引用」1 件(1.3%), 「Simons のみ引用」18 件(23.4%),「Anthony + Merchant」2 件(2.6%),「Anthony + Simons」5 件(6.5%),「Merchant + Simons」 1 件(1.3%),「すべて引用」3 件(3.9%),「引 用なし」41 件(53.2%)となっている。 Anthony の引用に関しては,「すべて引用」 も含めて,Merchant や Simons とともに引用 している論文数を足し合わせた比率は,20.8% (16/77)となる。Anthony(1965)以降およそ 50 年を経た現在でも,Anthony の一連の著作 を引用する一定規模の論文数が見られる。 Merchant の引用については,Anthony や Simons を併用している論文数を足し合わせた 論 文 数 の 比 率 は 9 . 1 % ( 7 / 7 7 ) で あ る 。 Merchant の一連の著作は単独でも併用でも引 用される頻度は小さいといえる。Simons の引 用に関しては,Anthony や Merchant を併用し ている論文数を足し合わせた論文数の比率は 35.1%(27/77)となる。文献分析の対象論文に おいて,Simons の引用率が最も高いことを示 している。 Anthony,Merchant,Simons の一連の著作 の引用の有無に続いて,図表 1 には,横軸に三 者の著作の引用の有無を,縦軸に技法を置いた 上で,両者の関係をクロス集計している。各セ ルには件数が表記されている。なお,横軸の三 者の著作の引用の有無に関しては,Anthony, Merchant,Simons それぞれの著作を単独で引
用している場合を「1RC(Reference Cited)」, 併用にて引用している場合を「2RC」もしくは 「3RC」としてまとめている。 図表 1 の右端の二列から計算すると,「引用 な し 」 の 論 文 数 の 比 率 は ,「 技 法 特 定 」 が 45.5%(20/44)であるのに対して,「技法不特 定」は 63.6%(21/33)となっている。具体的 な技法を対象とする論文のほうが,代表的なマ ネジメント・コントロールの著作を引用しなが ら議論を展開しているといえよう。 次に,「技法特定」の内訳と引用の有無との 関係を見ていくと,Anthony,Merchant, Simons のいずれも引用していない論文数の比 率は,「伝統的」で 36.7%(11/30),「日本的」 で 50.0%(2/4),「戦略的」で 70.0%(7/10)と なっている。 「1RC」に関して,Anthony のみを引用して いる論文数の比率は,「伝統的」が 16.7%(5/30), 「日本的」および「戦略的」は 0% である。 Merchant のみの引用に関しても,「伝統的」 が 3.3%(1/30)であるのに対して,「日本的」 および「戦略的」は 0% となっている。Simons については,「伝統的」30.0%(9/30),「日本的」 25.0%(1/4),「戦略的」30.0%(3/10)と,い ずれの技法でも,Simons の一連の著作を引用 している論文が見受けられる。 「2RC」「3RC」については,Anthony + Merchant,Anthony + Simons,三者全てを引 用している論文は,「伝統的」においてそれぞれ, 3.3%(1/30),6.7%(2/30),3.3%(1/30)の比 率で見られるのみである。Merchant + Simons を引用している論文数の比率は,「伝統的」0%, 「日本的」25.0%(1/4),「戦略的」0% となっ ている。 以上をまとめると,「伝統的」では,Anthony, Merchant,Simons のいずれかの著作を引用し ている論文が多い。また,「伝統的」においては, 「2RC」および「3RC」の場合でも,Anthony を引用している論文が見受けられるのに対して, 「日本的」や「戦略的」では,単独でも併用でも, Anthony を引用している論文は見られない。 「日本的」や「戦略的」では,単独で Simons を, 併用で Merchant + Simons を引用している論 文が見受けられるのみである。 2 .内容分析 ⑴ 組織階層と管理会計技法の関係 図表 2 には,近年のわが国マネジメント・コ 図表1 引用状況と技法とのクロス集計表 (出所)筆者作成 3RC 1 0 0 1 1 2 2 0 0 2 3 5 0 1 0 1 0 1 1 0 0 1 2 3 19 2 3 24 12 36 11 2 7 20 21 41 30 4 10 44 33 77 1 0 0 1 0 1 総合計 不特定 特定合計 戦略的 日本的 伝統的 5 0 0 5 1 6 15 1 3 19 6 25
Anthony: A Merchant: M Simons: S A+M A+S M+S A+M+S
1RC 2RC 3 1 0 4 4 8 引用あり:A 引用なし :B 総合計A+B 引用あり 合計:A 9 1 3 13 5 18
ントロール研究が対象としている「組織階層」 と技法との関係をクロス集計表によって示して いる。横軸に「組織階層」,縦軸に技法をそれ ぞれ配置した上で,各セルに件数を記載してい る。また,横軸の「組織階層」に関しては,単 一の「組織階層」を対象としている場合を 「1OH(Organizational Hierarchy)」,複数の 「組織階層」をまたがる場合を「2OH」もしく は「3OH」と表記している。 図表 2 の右端および右端から二番目の列をみ ると,登場人物の組織階層に関する「不明」の 比率は,「技法特定」が 25%(11/44)である のに対して,「技法不特定」の場合は 54.5% (18/33)となっている。加えて,「技法不特定」 の 18.2% (6/33)が,「3OH」において「トップ」 「ミドル」「ロワー」の階層にまたがった議論を 展開している。したがって,「技法特定」のほ うが,具体的かつ特定の組織階層を意識した研 究を進めているといえる。 次に,「技法特定」に関して,Anthony の一 連の著作においてマネジメント・コントロール の焦点であるとされる「ミドル」を中心に比較 すれば,「ミドル」のみを対象としている論文 数の比率は,「伝統的」に 6.7%(2/30)見受け られるものの,「日本的」や「戦略的」は 0% である。 「2OH」をみると,「ミドル」とともに「トッ プ」についても言及している論文の比率は,「伝 統的」20.0%(6/30),「日本的」0%,「戦略的」 10%(1/10)となっている。「ミドル」ととも に「ロワー」についても対象としている論文数 の比率は,「伝統的」3.3%(1/30),「日本的」 50%(2/4),「戦略的」0% である。 続いて「3OH」をみると,「トップ」「ミドル」 「ロワー」全ての階層を対象としている論文数 の比率は,「伝統的」「日本的」「戦略的」のそ れぞれにおいて,26.7%(8/30),50.0%(2/4), 40.0%(4/10)となっている。 以上をまとめれば,「伝統的」を研究対象と した論文の 56.7%(17/30)は,「ミドル」を中 心に,他の階層との関連のもとで研究が進めら れている。「日本的」では,全ての論文において, 「ミドル」および「ロワー」が研究対象に含ま れている。「戦略的」に関しては,全階層を含 めた研究が支配的であるとともに,「トップ」 を対象に含めない論文は皆無である。なお,「日 本的」においても「戦略的」においても, 「1OH」に分類される論文は見当たらない。 図表2 組織階層と技法とのクロス集計表 (出所)筆者作成 3OH 6 0 1 7 3 10 0 0 1 1 1 2 1 2 0 3 1 4 8 2 4 14 6 20 23 4 6 33 15 48 7 0 4 11 18 29 30 4 10 44 33 77 2 0 0 2 0 2 総合計 不特定 特定合計 戦略的 日本的 伝統的 6 0 0 6 4 10 8 0 0 8 4 12 トップ:T ミドル:M ロアー:L T+M T+L M+L T+M+L 1OH 2OH 7 2 2 11 5 16 特定:A 不明:B 総合計A+B 合計:A 0 0 0 0 0 0
⑵ コントロールの対象と管理会計技法の関係 図表 3 では,Merchant において提示された 「コントロールの対象」を横軸に,技法を縦軸 に配置した上でのクロス集計の結果を,各セル に件数を記載しつつ 2 段組みで表示している。 横軸の「コントロールの対象」に関しては,単 一の「コントロールの対象」を対象としている 場合を「1Ctrl(Control)」,複数の「コントロー ルの対象」を一本の論文で対象としている場合 を「2Ctrl」「3Ctrl」「4Ctrl」として分類している。 まず,「技法特定」と「技法不特定」につい て比較すると,「コントロールの対象」が「不 明」な論文数の比率は,「技法特定」4.5%(2/44), 「技法不特定」12.1%(4/33)である。「技法特定」 のほうが「不明」の比率は低い。 「1Ctrl」に関して,「結果」のみを対象とし ている論文数の比率は,「技法特定」が 68.2% (30/44)であるのに対して,「技法不特定」は 45.5%(15/33)である。「結果」のみを対象と した論文の比率は,「技法特定」のほうが高い。 「行動」のみを対象とする論文数の比率に関し ては,「技法不特定」では 6.1%(2/33)存在す るものの,「技法特定」では 0% である。 「人事」や「文化」については,「技法特定」 においても「技法不特定」においても,それぞ れを単独で対象としている論文は見当たらない。 「1Ctrl」から「4Ctrl」までの「人事」を対象 としている論文を足し合わせて比率を計算する と,「技法不特定」は 12.1%(4/33,「2Ctrl」1 件+「3Ctrl」2 件+「4Ctrl」1 件)であるのに 対して,「技法特定」は 6.8%(3/44,「3Ctrl」1 件+「4Ctrl」2 件)である。「文化」について 図表3 コントロールの対象と技法とのクロス集計表 21 2 7 30 15 45 0 0 0 0 2 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 21 2 7 30 17 47 0 0 0 0 0 0 5 0 0 5 1 6 1 0 0 1 2 3 0 0 0 0 0 0 1 1 0 2 1 3 29 4 9 42 29 71 1 0 1 2 4 6 30 4 10 44 33 77 6 0 0 6 3 9 0 0 0 0 1 1 0 0 2 2 4 6 1 1 0 2 3 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 2 4 8 12
結果:R 行動:A 人事:P 文化:C R+A R+P R+C A+P A+C P+C
R+A+P R+A+C R+P+C A+P+C R+A+P+C 特定:A 不明:B 総合計A+B 合計:A 4Ctrl 2Ctrl 1Ctrl 3Ctrl 戦略的 日本的 伝統的 不特定 特定合計 総合計 特定:A 総合計 伝統的 日本的 戦略的 特定合計 不特定 (出所)筆者作成
も同様に計算すれば,「技法特定」は 22.7% (10/44,「2Ctrl」2 件+「3Ctrl」6 件+「4Ctrl」 2 件),「技法不特定」は 21.2%(7/33,「2Ctrl」 3 件+「3Ctrl」3 件+「4Ctrl」1 件)となる。「文 化」に関してはほぼ同比率であるものの,「人 事」を対象としている論文数の比率は,「技法 不特定」のほうが高い。 なお,同一の論文の中で複数の「コントロー ルの対象」を対象としている論文数の比率を計 算すれば,「技法不特定」は 36.4%(12/33)で あるのに対して,「技法特定」は 27.3%(12/44) となっている。上の「1Ctrl」についての検討 も勘案すると「コントロールの対象」の「不明」 の比率は「技法特定」のほうが低いとはいえ, より大きな枠組みの下で研究されている傾向に あるのは,「技法不特定」のほうであるといえる。 次に,「技法特定」の中での比較を行う。「結 果」については,「伝統的」「日本的」「戦略的」 いずれにおいても,「1Ctrl」から「4Ctrl」を通 じて,「結果」を対象としていない論文は皆無 である(8)。「1Ctrl」の「結果」のみを対象とし ている論文に限定すると,論文数の比率は,「日 本的」が 50%(2/4)であるのに対して,「伝 統的」および「戦略的」はいずれも 70.0% (21/30,7/10)となっている。「伝統的」およ び「戦略的」のほうが,「日本的」よりも,「結 果」を対象とする頻度は高い。 前述の通り,「伝統的」「日本的」「戦略的」 のいずれの論文においても「結果」が対象とさ れているため,「1Ctrl」から「4Ctrl」までを集 計すると,「結果」を対象としている論文数の 比率は,「伝統的」「日本的」「戦略的」のいず 図表4 コントロールの方法と技法とのクロス集計表 12 1 6 19 10 29 1 0 0 1 2 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2 13 1 6 20 14 34 0 1 0 1 3 4 0 0 0 0 1 1 2 0 0 2 0 2 0 0 0 0 0 0 3 1 0 4 2 6 29 4 9 42 30 72 1 0 1 2 3 5 30 4 10 44 33 77 2 1 0 3 4 7 2 0 0 2 1 3 9 1 3 13 8 21 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 11 1 3 15 10 25
診断:D インタ:I 理念:Be 境界:Bo D/I D/Be D/Bo I/Be I/Bo Be/Bo
D/I/Be D/I/Bo D/Be/Bo I/Be/Bo D/I/Be/Bo 特定:A 不明:B 総合計A+B 合計:A 4L 2L 1L 3L 戦略的 日本的 伝統的 不特定 特定合計 総合計 特定:A 総合計 伝統的 日本的 戦略的 特定合計 不特定 (出所)筆者作成
れにおいても 100% である。最も対象としてい る頻度の高い「結果」に次いでどの「コント ロールの対象」を対象としているのかを把握す るために,「行動」「人事」「文化」それぞれに ついても「1Ctrl」から「4Ctrl」までを集計す ると,「伝統的」では,26.7%(8/30)の「文化」 が「結果」に次いでいる。「日本的」もまた, 50.0%(2/4)の「文化」が「結果」に次いでい る。「戦略的」において「結果」に次ぐのは, 20.0%(2/10)の「行動」である。「伝統的」や 「日本的」では,「文化」が「結果」に次いで対 象とされているのに対して,「戦略的」では「文 化」を対象とした論文は見受けられない。 「技法特定」に関してさらに,Merchant に おいて提示された「コントロールの対象」のい くつを一つの論文の中で対象としているかとい う観点から比較を行うと,「4Ctrl」に分類され た論文数の比率は,「伝統的」3.3%(1/30),「日 本的」25.0%(1/4),「戦略的」0% となっている。 「3Ctrl」での論文数の比率は,「伝統的」が 20.0%(6/30)であるの対して,「日本的」や「戦 略的」は 0% である。「日本的」や「戦略的」 よりも「伝統的」において,「コントロールの 対象」は広範に議論されているといえる。 ⑶ コントロールの方法と管理会計技法の関係 図表 4 には,Simons が提示した「コントロー ルの方法」を横軸に,技法を縦軸に配置したク ロス集計表を 2 段組みで示している。各セルに は件数が記載されている。なお,横軸の「コン トロールの方法」に関しては,単一の「コント ロールの方法」を対象としている場合を「1L (Lever)」,複数の「コントロールの方法」を 同一の論文で対象としている場合を「2L」「3L」 「4L」として分類している。 最初に,「技法特定」と「技法不特定」との 比較を行えば,「1L」において「診断」のみを 対象とした論文数の比率は,「技法特定」が 43.2%(19/44)であるのに対して,「技法不特 定」は 30.3%(10/33)である。 「1L」から「4L」までの「診断」を対象とし ている論文を足し合わせて比率を計算すると, 「技法特定」では,93.2%(41/44)が「診断」 を対象としている。「技法不特定」においては 78.8%(26/33)である。総じて「技法特定」の ほうが「診断」を中心としているといえよう。 「インターラクティブ」「境界」「理念」につい ても同様に,「1L」から「4L」までそれぞれの 「コントロールの方法」を対象としている論文 数の比率を計算すると,「技法特定」では,「イ ンターラクティブ」43.2%(19/44),「境界」 13.6%(6/44),「理念」20.5%(9/44)となって いる。対する「技法不特定」は,「インターラ クティブ」48.5%(16/33),「境界」18.2%(6/33), 「理念」 18.2%(6/33)である。結果として,「理 念」以外の「コントロールの方法」を対象とし ている論文数の比率は,「技法特定」よりも「技 法不特定」のほうが高い。すなわち,「技法不 特定」のほうが多岐にわたる「コントロールの 方法」を対象としていることを示していると考 えられる。 「技法特定」と「技法不特定」との比較に次 いで,「技法特定」の中での比較を行うと,「1L」 に関して,「伝統的」「日本的」「戦略的」それ ぞれにおいて「診断」のみを対象とした論文数 の比率は,40.0%(12/30),25.0%(1/4), 60.0%(6/10)となっている。「戦略的」では, 「診断」のみを対象とした論文が過半数を占め ている。 また,「診断」を対象としている論文を「1L」 から「4L」まで集計してみると,「伝統的」では, 93.3%(28/30)が「診断」を対象としている。 「日本的」および「戦略的」においてはそれぞれ, 100.0%(4/4),90.0%(9/10)が「診断」を対
象としている。「伝統的」「日本的」「戦略的」 いずれにおいても,「診断」を対象としている 論文が支配的である。 同様に,「インターラクティブ」「理念」「境 界」それぞれについても「1L」から「4L」ま で集計すると,「伝統的」では,「インターラク ティブ」43.3%(13/30),「理念」23.3%(7/30), 「境界」16.7%(5/30)となっている。「日本的」 においては,「インターラクティブ」75.0% (3/4),「理念」50.0%(2/4),「境界」25.0%(1/4) である。「戦略的」に関しては,「インターラク ティブ」が 30.0%(3/10)であるものの,「境界」 や「理念」を対象としている研究は見受けられ ない。まとめれば,「伝統的」「日本的」「戦略的」 のいずれにおいても,「インターラクティブ」 が「診断」に次ぐ頻度で対象とされていること になる。 「技法特定」の中での比較に関してさらに, 複数の「コントロールの方法」を対象としてい る論文の比率から検討すれば,「4L」における 論文数の比率は,「伝統的」10.0%(3/30),「日 本的」25.0%(1/4),「戦略的」0% となっている。 「3L」での比率は,「伝統的」6.7%(2/30),「日 本的」25.0%(1/4),「戦略的」0% である。「戦 略的」では「コントロールの方法」が限定的に 対象とされているといえる。
Ⅴ おわりに
本研究では,マネジメント・コントロールの とらえ方とマネジメント・コントロールに関す るわが国の管理会計研究との関連性を明らかに するために,Anthony,Merchant,Simons そ れぞれによって提示されたマネジメント・コン トロールのフレームワークの要点を明示した上 で,マネジメント・コントロールに関連するわ が国の管理会計研究の 3 年間の文献を対象とし た文献分析(引用分析および内容分析)を実施 した。 近年の研究動向に関する本研究の分析結果を まとめると,第一に,引用分析から,Simons の著作は,「技法特定」でも「技法不特定」で も引用される頻度が高い。「伝統的」および「技 法不特定」に関しては,Anthony や Merchant の著作も引用する頻度は高い。しかしながら, 「日本的」や「戦略的」では,Anthony の著作 が引用されることはない。Merchant の著作を 引用している論文も限られている。 第二に,「技法特定」と「技法不特定」との 比較を行った場合,「技法特定」のほうが,具 体的かつ特定の組織階層を研究対象とした上で, 対象とする「コントロールの対象」や「コント ロールの方法」の幅も限定されている。 第三に,「技法特定」の中での比較から,「伝 統的」では,Anthony によって設定された組 織階層と技法との対応関係を超えて,「ミドル」 を中心にしつつも他の階層との関連を考慮して 研究が進められている傾向にあることを指摘で きる。また,「日本的」や「戦略的」よりも, 対象とされる「コントロールの対象」や「コン トロールの方法」の幅は広い。「伝統的」に関 しては,Anthony(1965)以降のおよそ 50 年 のあいだに多くの研究が蓄積されている。それ ゆえ,「伝統的」に関する本研究の結果は, Anthony の提示したフレームワーク内に収ま る研究を進めていくことが困難になってきてい ることを示唆していると考えられよう。 最後に,Anthony の一連の著作を引用して いないこと,および,単一の「組織階層」を対 象としていないことから,「日本的」や「戦略 的」においてもまた,一見,Anthony によっ て提示されたマネジメント・コントロールのフ レームワークを超えた研究が展開されているよ う捉えられる。しかしながら,内容分析の結果は ,「 日 本 的 」 や 「 戦 略 的 」 に お い て は , Anthony によって提示されたマネジメント・ コントロールと同等の,Merchant の「結果」 や Simons の「診断」が主に対象とされている ことを示している。 したがって,「伝統的」では Anthony のフ レームワークを超えた研究がなされているにも 関わらず,「日本的」や「戦略的」を研究対象 とした場合には Anthony のマネジメント・コ ントロールが踏襲されていることになる。 本研究での分析結果は,マネジメント・コン トロールのとらえ方の拡張が,管理会計技法を 研究する際に,さまざまな管理会計技法に対し て必ずしも一様に反映されていないことを示し ている。前述の通り,「日本的」技法や「戦略的」 技法といった,1980 年代後半以降に登場した 技法の研究において,マネジメント・コント ロールのフレームワークの変遷が十分に反映さ れているわけではない。今後は,「日本的」技 法や「戦略的」技法に関しても,「伝統的」技 法と同様に,Anthony のマネジメント・コン トロールのフレームワークを超えた研究を進め ていく余地があるといえよう。 ただし,本研究が導き出した結論には限界が ある。第一に,先行研究に基づきながら実施し た本研究の文献分析は,全般的な傾向を提示す ることには適しているものの,論文ごとの詳細 な内容を反映することができない。 第二に,マネジメント・コントロール研究を 選定する際の潜在的リスクがある。研究対象を 抽出する際に,本研究でキータームとした「プ ランニング」や「コントロール」を論文中に記 載しなくとも,マネジメント・コントロールに ついて議論している研究は存在しうる。 第三に,6 人の研究者によって厳正にコード 化作業を進めたとはいえ,恣意性が入り込む余 地を完全には除去できない。 第四に,本研究では,わが国の管理会計研究 を対象として分析を進めたものの,わが国の管 理会計研究の現状や特徴をいっそう明確にする ためには,欧米におけるマネジメント・コント ロールのとらえ方とマネジメント・コントロー ルに関する管理会計研究との関連性を明らかに しつつ,比較を行う必要がある。 最後に,本研究プロジェクトにおいてより広 範囲にデータを収集しつつも,本研究では,紙 幅の関係から論点を絞り込んでいる。マネジメ ント・コントロールのとらえ方とマネジメン ト・コントロールに関するわが国管理会計研究 との関連性について現状や特徴を明らかにする 上で,本研究とは異なった視点からの検討も必 要となろう。 以上のような限界を抱えながらも,本研究は, マネジメント・コントロールのとらえ方とさま ざまな管理会計技法との対応関係を明らかにし た。同時に,1980 年代後半以降に登場した管 理会計技法に対して,Anthony のマネジメン ト・コントロールのフレームワークを超えた研 究を進めていく余地があることを指摘している。 管理会計技法が企業の利用状況に影響されるこ とに鑑みれば,マネジメント・コントロールの フレームワークから管理会計技法を検討する意 義は大きいと考えられる。それゆえ,本研究の 分析を通じて,わが国の管理会計研究における 将来の検討課題を提示したことは,学術的に重 要な貢献であると考える。 (謝辞) 本稿は公益財団法人メルコ学術振興財団の助成 (研究 2015014 号)および科学研究費による助成 ( 基 盤 研 究 ( C ), 研 究 課 題 番 号 2 6 3 8 0 6 1 6 , 15K03762, 26380633,15K03796)の成果の一部で ある。また,学会発表時の司会の澤邉紀生先生, 質問を頂いた櫻井通晴先生と大下𠀋平先生,およ
び本稿の査読者に厚く御礼申し上げる。 (注)
⑴なお,Strauß and Zecher(2013)は,Hassel-back Directory に記載されている欧米の研究者 に対する 2008 年のサーベイにおいて,マネジ メント・コントロールに関するテキストのラン ク付けを依頼した結果として,4 位とは大きな 差をつけて,1 位に Merchant and Van der Stede(2003),2 位に Anthony and Govindara-jan(2007),3 位に Simons(2000)がランク付 けされたことを示している。 ⑵本研究のプロジェクトは,2014 年 4 月から開始 されているため,2013 年までの論文を対象とし ている。加えて,わが国管理会計研究の現状の 把握を目的としたこと,かつ,Merchant の一 連の著作のうち最新の Merchant and Van der Stede(2012)の実質的な発行年が 2011 年であ ることから,2010 年代の 2011 年から 2013 年ま でを分析対象とした。 ⑶管理会計の領域は国内外を問わず拡張されてい るものの,わが国の管理会計研究の現状および 今後の研究課題を示すことを目的とするため, 調査対象をわが国主要会計雑誌に限定している。 ⑷同名タイトルにて分割掲載されている論文は, まとめて 1 件としてカウントしている。 ⑸コントロールの対象およびコントロールの方法 のコード分類に関しては,Merchant や Simons の一連の著作を引用していなくとも,論文中に Merchant や Simons によって提示されたマネ ジメント・コントロールのフレームワークに類 する記述や議論がなされていれば,筆者らの判 断に基づき,該当するコードを割り振った。 ⑹「マネジメント・コントロール研究」の選定や コードの振り分けに関して,筆者らの主観が含 まれていることを否定できない。それゆえ,透 明性を確保するために,集計コード表(補足資 料①),対象とした論文各々に対するコード分 類の結果(補足資料②),および,対象とした 論文の文献リスト(補足資料③)を,横田ほか (2015)に提示している。 ⑺技法をコード分類するにあたっては,予算管理, 利益計画といった個々の技法をコード付けした 上で,「伝統的」「日本的」「戦略的」の三つに 分類している。個々の技法にて集計すると,「伝 統的」では,予算 19 件,経営(利益)計画 6 件, 振替価格 3 件,利益目標管理 1 件,コントロー ル・チャート・システム 1 件となっている。同 様に,「日本的」においては,アメーバ経営 3 件, 原価企画 1 件,「戦略的」では,BSC5 件, ABC1 件,ライフサイクル・コスティング 1 件, 品質管理会計+ライフサイクル・コスティング 1 件,レベニューマネジメント 1 件,知的資産 経営 1 件となっている。 ⑻管理会計研究を対象とした場合,「結果」を対 象としていない論文がほとんどないことは,事 前に予想される結果であるといえる。とはいえ, 「技法不特定」では「結果」を対象としていな い論文が 6.1%あることを示している。今後, 「結果」を対象としない管理会計研究が増加す る可能性は否定できない。 【参考文献】 上總康行 . 1993.『管理会計論』新世社 . 加登豊 . 1999.『管理会計入門』日本経済新聞社 . 加登豊・松尾貴巳・梶原武久編著 . 2010.『管理会 計研究のフロンテイア』中央経済社 . 河合隆治・乙政佐𠮷 . 2013.「わが国におけるバラ ンスト・スコアカード研究の動向:欧米での研 究蓄積をふまえて」『同志社商学』65(1): 1-62. 谷武幸 . 2013.『エッセンシャル管理会計:第 3 版』 中央経済社 . 廣本敏郎・加登豊・岡野浩編著 . 2012.『体系現代 会計学 12:日本企業の管理会計システム』中央 経済社 . 福嶋誠宣 . 2012. 「コントロール・パッケージ概念 の検討」『管理会計学』20(2): 79-96. 横田絵理・乙政佐吉・坂口順也・河合隆治・大西 靖・妹尾剛好 . 2015.「わが国のマネジメント・ コントロール研究の現状報告」『慶應義塾大学 商学部ディスカッションペーパーシリーズ』 FY14-2.
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