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子どもの心の診療所(東京).indb

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(1)

平成

27年度 「子どもの心の診療医」養成研修会

久留米大学小児科 永光信一郎

頭痛・腹痛への初期対応

頭痛・腹痛への初期対応

本日のお話のアウトライン

 小児の頭痛について

 反復する腹痛について

 痛みに対する心身医学的対応

 症例提示

講義④ 頭痛・腹痛への初期対応

(2)

• 頭痛は10歳以下の子の8.3%に、10歳以降は17-20%

• 反復性腹痛は、学童の10-15%に、中学生の20%

Silber TJ Pediatr Rev 2011;32:56-64

• 小児科クリニックに受診した子どもの5%が反復性腹痛、20~55%

の子どもが頭痛をもっており、10代においては、10%の子が、頻

回の頭痛、腹痛、嘔気、疲労感を呈していた。

• 性差があり、男児が4%に対して、女児が11%

• 低所得群に多い。

Hyams et al. 1996

• 平成11年10月18日(月)に全国565箇所の小児科に訪れた

36,378人の患者のうち、5.8%の子が心身症であった

厚生科学研究班

腹痛・頭痛を訴える子どもの頻度

第1 部:一次性頭痛 1.片頭痛 2.緊張型頭痛 3.群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛 4.その他の一次性頭痛 第2 部:二次性頭痛 5.頭頸部外傷による頭痛 6.頭頸部血管障害による頭痛 7.非血管性頭蓋内疾患による頭痛 8.物質またはその離脱による頭痛 9.感染による頭痛 10.ホメオスターシスの障害による頭痛 11.頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頭 蓋の構成組織の障害に起因する頭痛あるいは顔面痛 12.精神疾患による頭痛 第3 部:頭部神経痛、中枢性・一次性顔面痛およびその他の頭痛 13.頭部神経痛および中枢性顔面痛 14.その他の頭痛、頭部神経痛、中枢性あるいは原発性顔面痛

国際頭痛分類

14のタイプと225のサブタイプ

(3)

前兆のない片頭痛 A. B~Dを満たす頭痛発作が5回以上ある B. 頭痛の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効な場合) (18未満の小児・思春期は2~72時間) C. 頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす 1. 片側性:18未満の小児・思春期では両側性(前頭側頭部) 2. 拍動性 3. 中等度~重度の頭痛 4. 日常的な動作により頭痛が増悪する、もしくは頭痛のために日常的な 動作を避けようとする D. 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす 1. 悪心または嘔吐(あるいはその両方) 2.光過敏性および音過敏性 E. ICHD-3のその他の診断によらない

片頭痛の診断基準

前兆のある片頭痛 A. B~Dを満たす頭痛発作が2回以上ある B. 少なくとも以下の1項目を満たす完全可逆性の前兆がある 1. 視覚 2. 感覚 3. 発語または言語(その両方) 4. 運動 5. 脳幹 6. 網膜 C. 少なくとも以下の4つの特徴のうち2項目を満たす 1. 少なくとも1つの前兆は5分以上かけて徐々に進展するか、2つまたは それ以上の前兆が引き続き起きる 2. それぞれの前兆の持続時間は5~60分 3. 少なくとも1つの前兆は片側性 4. 頭痛が前兆の60分以内に生じる

片頭痛の診断基準

(4)

稀発反復性緊張型頭痛 A. 平均して1ヶ月に1日未満(年間12回未満)の頻度で発現する頭痛が10回 以上あり、かつB~Dを満たす頭痛 B. 頭痛は30分~7日間持続する C. 頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす 1. 両側性 2. 性状は圧迫感または締め付け感(非拍動性) 3. 強さは軽度~中等度 4. 歩行や階段の昇降のような日常的な動作により頭痛が増悪しない D. 以下の両方を満たす 1. 悪心または嘔吐はない(食欲不振を伴うことがある) 2.光過敏性や音過敏性 はあってもどちらか一方のみ E. その他の疾患によらない

緊張型頭痛の診断基準

• 痛みの程度が強く、体を動かすと増悪するため、日常生

活への影響が大きい

• 人口統計を基盤として調査では、緊張型頭痛が多いが、

外来を受診するのは圧倒位的に片頭痛が多い。

• 一般外来では片頭痛が75%、緊張型頭痛が20%、両者

の併存が5%

• 悪心・嘔吐をともない、周囲が明るい、騒がしいと強くなる

片頭痛の特徴

(5)

• きわめて一般的で、生涯有病率は30~78%

• 発症メカニズムが明らかでない

• 頭蓋周囲の触診による圧痛の増強は特徴的。頭蓋周囲

の筋肉(前頭筋、側頭筋、僧帽筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋、

頬筋など)

• 非発作時にも認め、発作時にはさらに悪化

• かつては心因性のものとみなされていた

• 心理学的要因があるものは、ないもの比べて、慢性緊張

型頭痛、または片頭痛と慢性緊張型頭痛の併存が多い。

緊張型頭痛の特徴

頭痛の発生機序

ストレス 血小板から セロトニンの放出 片頭痛のメカニズム: 三叉神経・血管系が活性化 セロトニンの減少 頭の血管の拡張 三叉神経の興奮が他の 自律神経系を刺激 頭の血管の収縮 三叉神経の炎症 神経ペプチドの放出 三叉神経 セロトニン 血管 正常 前兆時 片頭痛時 緊張性頭痛のメカニズム: 頭頸部筋肉群の疲労 随伴症状 悪心・嘔吐 同じ姿勢を長時間保つことで、筋肉 が過剰に収縮して、血行が悪くなる。 その結果、首や肩の筋肉とつながる 頭の筋肉も強く収縮し、頭痛が起こる。

(6)

前兆のない片頭痛

反復性緊張型頭痛

発作性の頭痛

持続時間

2~72時間

30分~7日間

部位

片側性

(両側性)

両側性

性質

拍動性

非拍動性

強さ

中等度~高度

軽度~中等度

日常的動作による悪化

悪心・嘔吐

光過敏・音過敏

家族歴

濃厚

希薄

出典:小児心身医学会ガイドライン集

片頭痛

緊張型頭痛

片頭痛+緊張型頭痛

心理社会的要因関与による頭痛 (慢性緊張型頭痛) 心理社会的要因関与による頭痛 (慢性緊張型頭痛+片頭痛)

小児の頭痛のタイプと違い

出典:藤田光江 小児科臨床ピクシス

(7)

頭痛の治療について

出典:藤田光江 小児科臨床ピクシス

1.診断⇒正しい頭痛の診断 (頭痛ダイアリーの活用)

2.非薬物療法

1)誘発因子の除去

(光、音、食事[チーズ、カフェイン、チョコレート]

2)規則正しい生活

(睡眠不足、過多を避ける、深夜の携帯スマホの制限)

3)環境要因(天候、温度差、座席の移動)

4)心理社会的ストレスの有無

3.薬物療法

1)急性期治療薬

2)予防薬

頭痛の薬物治療について

特殊な片頭痛は、脳血管が収縮性に働くことで症状を起こすので使用はしない 1.急性期の薬物療法 *症状発現から時間が経つと頓服薬の効果が弱くなってくる。 消化器症状で吸収も悪くなる。十分な量の早めの服薬を推奨 アセトアミノフェン (カロナール®) イブプロフェン (ブルフェン®) 1回 10-15mg/Kg 4~6時間ごとに投与可 1回 5-10mg/Kg 4~6時間ごとに投与可 リザトリプタン (マクサルト®) ゾルミトリプタン (ゾーミック®) スマトリプタン点鼻 (イミグラン®) エレトリプタン (レルバックス®) トリプタン製剤は、セロトニン受容体に結合し、 血管の拡張や炎症を抑え、神経終末からの神経ペプタイドの遊離を抑制

(8)

頭痛の予防薬について

予防治療の効果には8~12ヶ月(1~2ヶ月)を要することを説明 適応:急性期治療薬が効果がない、日常生活への支障、薬物乱用性頭痛の防止 トプラマート (トピナ®) 初期量 増量 15mg~20mg/日 眠前 50~100mg/日 シプロヘプタジン (ペリアクチン®) 初期量 増量 0.1mg/kg/日 分 1眠前, 最大4mg分 1眠前 0.2mg/kg/日 分2朝,眠前, 最大8mg 分2朝,眠前 バルプロ酸 (デパケン®、セレニカ®) 初期量 増量 10mg/kg/日 分 1眠前 最大30mg/kg/日 分2 アミトリプチリン (トリプタノール®) 初期量 増量 0.25mg/kg/日 眠前, 最大10mg/日 分 1眠前 最大1mg/kg/日(増量する場合は、徐々に行う) 塩酸ロメリジン (テラナス®、ミグシス®) 初期量 増量 思春期以降で10mg 分2 20mg分2まで増量可 プロプラノロール (インデラル®) 初期量 増量 10mg/日 分 1眠前 1~2mg/kg/日 分3

小児の慢性連日性頭痛

1.定義  頭痛が1日に4時間以上  1ヶ月に15日以上  3ヶ月以上持続 *臨床的には重要であるが、ICHD-3βには採用されていない 2.タイプ  慢性片頭痛  慢性緊張型頭痛 3.疫学  思春期での有病率は、1.5~3.5%  女性のほうが男性より2~3倍頻度が高い 4.診断基準

(9)

A. 緊張型頭痛様または片頭痛様の頭痛(あるいはその両方)が月に15日以 上の頻度で3ヶ月を超えて起こりBとCを満たす B. 1.1「前兆のない片頭痛」の診断基準B~Dを満たすか、1.2「前兆のある 片頭痛」の診断基準BおよびCを満たす発作が合わせて5回以上あった患 者に起こる C. 3ヶ月を超えて月に8日以上で以下のいずれかを満たす 1. 1.1「前兆のない片頭痛」の診断基準CとDを満たす 2. 1.2「前兆のある片頭痛」の診断基準BとCを満たす 3. 発症時には片頭痛であったと患者が考えており、トリプタンあるいは 麦角誘導体で改善する D. 他に最適なICHD-3の診断がない

慢性片頭痛の診断基準

A. 3ヶ月を超えて、平均して1ヶ月に15日以上(年間180日以上)の頻度で 発現する頭痛でB~Dを満たす B. 数時間から数日間、または絶え間なく持続する C. 以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす 1. 両側性 2. 性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性) 3. 強さは軽度~中程度 4. 歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない D. 以下の両方を満たす 1. 光過敏、音過敏、軽度の悪心はあってもいずれかの1つのみ 2. 中程度・重度の悪心や嘔吐はどちらもない E. 他に最適なICHD-3の診断がない

慢性緊張型の診断基準

(10)

小児の慢性連日性頭痛

5.治療

 心理社会的因子が関与する慢性緊張型頭痛には鎮痛剤が無効

 抗うつ薬のアミトリプチン(トリプタノール®)が緊張型頭痛に有効

 治療に抵抗する大きな要因は、慢性連日頭痛の中に、筋緊張型

頭痛の割合が大きいことと、心理社会的要因や精神疾患が共存し

ていること

(11)

2/1 2/2 2/3 2/4 2/8 2/9 2/10 2/11

(12)

心因性の頭痛への対応

 精神的な要因による頭痛は、実際的には一般外来では頻度が高い

 個体要因(強迫的性格、不安耐性の低さ、言語能力の低さ、苦痛や

困難を一定期間保持する能力が低い)

 環境要因(能力以上に設定された課題・目標、家庭内不和、行事前

後の緊張)

 持続要因(疾病利得、症状を強化・維持する強化要因がある)

 頭痛の性状や経過、発症状況など細かく聞いてあげること

 頭が痛いという患者の苦しみを受け止めてあげること

 心因性であっても、痛みが存在することを忘れてはいけない

出典:渡辺慶一郎 小児内科 2008

(反復性)腹痛の初期対応について

Recurrent abdominal pains (RAP)

 日常生活に影響するほどの反復性発作性腹痛のエピソードが、少なくとも3ヶ月 以上の期間にわたり、3回以上独立して認められるもの 90%以上が機能性、心因性腹痛であり、残りに消化性潰瘍など器質疾患がある。  過敏性腸症候群の前段階として便通異常を伴わず腹痛を繰りかえす。  臨床的に使用しやすい概念だが、RomeIII 診断基準に含まれていない。  反復性腹痛の成因は、痛みに対して閾値の低い状態にある児童が、腸管の運 動の変化を“腹痛”として認識している可能性が高い。この腸管運動変化に、便 秘、疲労などの身体要因と不安、緊張などの精神的要因が関与している。

(13)

(反復性)腹痛の初期対応について

Recurrent abdominal pains (RAP)

5~15歳の子どもの10~15%にみられる。  日常的な症状で医療機関受診は少ない。  鑑別において、身体要因に着目すると検査過剰になり、心理的要因に着目すると 誤診、ドクターショッピング(基本的には身体疾患の解明、治療を家族は望む。)  反復性腹痛(頻度、成因不明、身体・心理要因、反復)の十分な説明  薬物療法は効果が少ない。  過敏性腸症候群に移行する者、頭痛などの他の身体症状を訴えるようになる者

小児の腹痛の原因疾患

【乳児期】 急性胃腸炎 便秘 腸重積 尿路感染 鼠径ヘルニア嵌頓 腸軸捻転 【幼児期】 【学童期】

『身体疾患』

『機能的疾患・心身症』

急性胃腸炎 便秘 腸重積 尿路感染 急性虫垂炎 急性膵炎 Shonlein-Henoch紫斑病 急性胃腸炎 便秘 急性虫垂炎 急性膵炎 精巣捻転 卵巣嚢腫茎捻転 Shonlein-Henoch紫斑病 機能性消化管障害 (乳児疝痛 機能性便秘・下痢) 機能性消化管障害 (機能性ディスペプシア 過敏性腸症候群 小児機能性腹痛) 機能性消化管障害 (機能性ディスペプシア 過敏性腸症候群 小児機能性腹痛 起立性調節障害) Rome III 基準

(14)

まず

視診

重症度・緊急度の判定

• 意識状態

• 顔色苦悶様顔貌

• 激しい啼泣

• 多呼吸

• 体動

• 独歩できるかまっすぐ立てるか?

• 臥位で膝が伸ばせるか

• 腹部膨満

• 腹部の手術瘢痕の有無

• 紫斑(特に下腿)

• 鼠径部、陰嚢のチェック

主訴が腹痛の児の診察

• いつから痛いか?(急性か、慢性か?)

• 腹痛は急激か、徐々に起こったのか?

• 腹部のどこが痛いか?

• 持続性か間欠的か?

• 嘔吐はないか?(吐物の色は?血液の混入は?)

• 排便はどうか?(便性、便回数)

• 血便の有無

• 手術の既往

• (乳幼児で嘔吐・血便が主訴の時)不機嫌はないか

• 思春期女児は、一応妊娠も念頭においておく

• 警告症状はあるか?

問診:鑑別診断を念頭において聞くことが大事!!

(15)

身体疾患の警告症状とは?

・持続する右下または右上腹部痛

・腹部膨満

・遷延性嘔吐(胆汁様)

・消化管出血(吐血)

・眠りを妨げる夜間の腹痛

・夜間の下痢

・背中、肩、下肢への放散痛

・排尿時痛

・関節痛

・肛門病変、口内炎

・皮膚出血斑

・鼠径部腫大

・陰嚢部腫大

・発育遅延

・思春期発来遅延

・持続する発熱

・体重減少

・血圧低下

・喘鳴

・チアノーゼ

・四肢冷感

・炎症性腸疾患や消化性潰瘍の家族歴

急性発症か? 慢性~反復性か? 急性虫垂炎や腹膜炎に伴う急性腹症 出血性胃腸炎や消化性潰瘍 腸重積 腸回転異常症 尿管結石疝痛発作、 食物アレルギー アナフィラキシー症状 アレルギー性紫斑病 睾丸捻転など泌尿器科的疾患 卵巣捻転など泌尿器婦人科的疾患 心血管疾患や神経疾患、薬物中毒 伴っている 警告症状を 伴っていない 伴っている 伴っていない 警告症状を 軽症感染性胃腸炎 (ウイルス・細菌) 軽症の急性胃炎、 急性便秘 潰瘍性大腸炎 クローン病 慢性膵炎 甲状腺機能障害 腹性てんかん 機能性消化管障害 (機能性腹痛 過敏性腸症候群) 神経性嘔吐 精査が必要であれば 必要に応じて消化器専門医へ 機能性腹痛や過敏性腸症候群の疑いが強い場 合はガイドラインにそって、対応をすすめる。 心理社会的評価やその対応が治療に必要な場合 には、小児心療科医や思春期専門の精神科医へ 消化器症状(腹痛 下痢 嘔吐など)

腹痛を主訴とする疾患の鑑別

(16)

RomeIIIによる新生児~小児思春期の機能性消化管障害

H 小児〜思春期の機能性消化管障害 (4~18歳) : H2 腹痛関連消化管機能障害 H2a 機能性ディスペプシア(FD) H2b 過敏性腸症候群(IBS) H2c 腹部片頭痛 H2d 小児機能性腹痛(FAP) H2d1 小児機能性腹痛症候群 (FAPS) : G 新生児・乳幼児の機能性消化管障害 (0~3歳) : G1 乳児胃食道逆流 G2 乳児反芻症候群 G3 周期性嘔吐症候群 G4 乳児疝痛 G5 機能性下痢症 G6 乳児排便障害 G7 機能性下痢症

FD: Functional dyspepsia, IBS: Irritable bowel syndrome FAP: Functional abnormal pain

FAPS: Functional abnormal pain syndrome

H2b.過敏性腸症候群 (IBS) 下記のすべての項目があること 1.腹部不快感(痛みとはいえない不快な気分)または腹痛が、 下記の2項目以上を少なくとも25%以上の割合で伴う a) 排便によって症状が軽減する b) 発症時に排便頻度の変化がある c) 発症時に便形状(外観)の変化がある 2.症状を説明する炎症性、形態的、代謝性、腫瘍性病変がない 2ヶ月以上前から症状があり少なくとも週一回以上、基準を満たしていること H2d.小児機能性腹痛 (FAP) 下記のすべての項目があること 1.偶発的または持続的な腹痛 2.他のFGID(FDやIBSなど)の基準をみたすには不十分 3.症状の原因になるような炎症性、形態的、代謝性、腫瘍病変がない H2a.機能性ディスペプシア(FD) 下記のすべての項目があること 1.上腹部(臍より上)を中心とした持続性または反復性の疼痛や不快感 2.排便によって緩和されない、あるいは排便回数や形状変化と関連がない (すなわち過敏性腸症候群ではない) 3.症状の原因になるような炎症性、形態的、代謝性、腫瘍病変がない 2ヶ月以上前から症状があり少なくとも週一回以上、基準を満たしていること

RomeIIIによる新生児~小児思春期の機能性消化管障害

(17)

■下痢型 起床時、すぐに腹部不快感や腹痛、便意が始まる。頻回の便意のため、何度もトイレに行くが、 すっきりせず不快感も軽くならないこともある。便性状は、初めは軟便で次第に下痢便となる。排 便へのこだわりは、そのまま不登校にも繋がることもある。男子に多い。子どもにとって「朝」は苦 痛の多い時間となる。 ■便秘型 下剤を用いなければまったく便意が生じない場合と、便意は頻回にあるにもかかわらず実際には 排便できない場合がある。女子に多いが、比較的頻度は少ない。 ■RAP型 頻回に臍部を中心とする腹痛を訴えるのが特徴。便通は一定しない。起床時に症状が強く、長い 時間トイレにこもることが多い。午後は自然に腹痛は治まることが多い。低年齢に多い。 ■ガス型 放屁や腹鳴、腹部膨満感などガス症状に対する恐怖・苦悩が強い。便通そのものはあまり問題 にされない。静かな狭い教室内でとくに症状が強くなる。圧倒的に女子に多い。20代になれば多 くは軽快するが、一部は治療に抵抗性を示し、精神疾患へ発展することもある22,23) 各亜型は固定的なものでなく、発達年齢や状況により相互に移行する事も多い。

小児IBSの各病型特徴

質問A :ここ2ヶ月間に、 臍から上のお腹の痛みや不快感はありましたか? 回答(点数) 0点: 全くなし 1点: 1ヶ月に3回以下 2点: 週に1回 3点: 週に数回 4点: 毎日 2点以上 1点以下 質問A:2点以上、 質問B:2項目以上で 2点以上 質問B: どのくらいの頻度で便をしたらよくなりましたか? 普段より便が柔らかいあるいは水様でしたか? 普段より便が硬いあるいは固まり状でしたか? 普段より便の回数が多くなりましたか? 普段より便の回数が少なくなりましたか? お腹がはった感じがしましたか? IBSの疑い 1点以下ならFDや IBSなどの機能性 消化管障害の診 断には至らないが 質問は進める。 FDの疑い FAPの疑い 質問A:2点以上、 質問B:FDやIBSの 疑い条件を満たさな い 便宜的に慢性腹痛(CAP)や 反復性腹痛(RAP)と診断し、 心因の関与が強い場合は、 心因性腹痛と判定する。 質問A:2点以上、 質問B:全項目が 1点以下 質問A:1点以下、 質問B:FDやIBSの 疑い条件を満たさ ない 質問Cに進む 図5

(18)

質問A :ここ2ヶ月間に、 臍から下のや臍周りのお腹の痛みや不快感はありましたか? 回答(点数) 0点: 全くなし 1点: 1ヶ月に3回以下 2点: 週に1回 3点: 週に数回 4点: 毎日 2点以上 1点以下 質問A:2点以上、 質問B:2項目以上で 2点以上 質問B: どのくらいの頻度で便をしたらよくなりましたか? 普段より便が柔らかいあるいは水様でしたか? 普段より便が硬いあるいは固まり状でしたか? 普段より便の回数が多くなりましたか? 普段より便の回数が少なくなりましたか? お腹がはった感じがしましたか? IBSの疑い 1点以下ならFDや IBSなどの機能性 消化管障害の診 断には至らないが 質問は進める。 FAPの疑い 質問A:2点以上、 質問B:FDやIBSの疑 い条件を満たさない Rome IIIの診断基準を参照 便宜的に慢性腹痛(CAP) や反復性腹痛(RAP)と診 断、心因の関与が強い場合 は心因性腹痛と判定する。 質問A:1点以下、 質問B:FDやIBSの疑 い条件を満たさない 質問Cに進む 図5 質問C ここ2ヶ月ほどの間に、 頭が痛くなりましたか? なかなかねられませんでしたか? 腕、足、背中に痛みがありましたか? ふらふらしたり、めまいがしましたか? 園や学校を休んだり活動をやめたりすることがありましたか? FAPSの中には機能性頭痛や不眠症、起立性調節 障害、不登校などを合併している可能性が高く、質 問項目に応じて診断を進め、必要に応じて専門医 と連携する(他のガイドラインも参照)。 回答(点数) 0点: 全くなし 1点: 1ヶ月に3回以下 2点: 週に1回 3点: 週に数回 4点: 毎日 5項目のうち1つが2点以上 IBSに起立性調節障害(OD)や不登校、不眠の合併、 機能性腹痛症候群(FAPS)の疑い 図5

(19)

くり返す腹痛・腹部不快感(2ヶ月以上) 症状:右下または右上腹部痛 嚥下困難・遷延性嘔吐・消化管出血 炎症性疾患や消化性潰瘍の家族歴 眠りを妨げる夜間の腹痛・夜間の下痢 関節痛・肛門病変・口内炎・体重減少 発育遅延・思春期発来遅延・不明熱など 徴候:腹部腫瘤・腹部の波動・甲状腺腫大 肝脾腫・甲状腺腫大・表在リンパ節腫脹など 血 液 検 査 【 血 算 ・ 赤 沈 ・CRP ・ AST(GOT) ・ ALT(GPT)・γ‐GTP・Alp・LDH・アミラーゼ・ 甲状腺機能など】 尿潜血・尿沈渣・便培養・便潜血・虫卵・便中 好酸球・腹部単純X線・腹部エコー・H.pylori 感染症検査など(症状に応じて) 器質的疾患の 警告症状・徴候 1次検査 精査 専門医との連携・紹介 異常あり あり なし 異常なし IBSの診断 図6.      繰り返す腹痛の診断アルゴリズム X)  FDあるいはFAPの診断 精査 専門医との連携・紹介 RomeⅢの基準に沿って 診断(表4参照) 改善あり 改善なし IBSの診断 診断時の優勢症状に注目し対応する。 治療的対応(非薬物的治療) • 児/家族への病態生理の説明(腸脳相関や胃結腸反射) • 器質的疾患の否定を良い情報として説明(命に関わるような病気ではない) • 規則正しい睡眠・生活リズムや排泄習慣の指導 • 腹部の保温(FAP、IBSのRAP型・下痢型) • マッサージや浣腸(便秘型、ガス型) • 食生活指導など FD:香辛料の多い食品やカフェイン、高脂肪食を控える。 非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の多量服用に注意 FAP~IBS(RAP型・下痢型):乳製品や冷たいもの、カフェイン、高脂肪食を控える。 IBS(便秘型):水分摂取をすすめる。 IBS(ガス型):ガス貯留しやすい野菜(たまねぎや芋類など)、果物,ソルビ トール、炭酸飲料、ガムなどを控える。 FDの診断 FAPの診断 FAPSの診断 付随する症状や 課題への対応 ODや不登校のガ イドラインも参照 1.RAP型 2.便秘型 3.下痢型 4.ガス型 サブタイプの診断

機能性消化管障害の治療アルゴリズム

(20)

異常なし 異常あり FDの診断 IBSの診断 FAPの診断 制酸薬 プロトンポンプ阻害薬など 高分子重合体(ポリカルボフィルカルシウム) 消化管運動調整薬など 抗コリン薬 整腸剤など RAP型 抗コリン薬 便秘型 緩下剤 下痢型 止痢剤 整腸剤 抗コリン薬 5‐HT3受容体拮抗剤 ガス型 排ガス剤 など 効果あり 治療終了 腹部CT・MRI 胃・十二指腸内視鏡 上部消化管造影注腸 造影・DIP・Tcシンチ 低緊張性小腸造影 乳糖負荷試験 など 必要に応じ 2次検査・再評価 器質的疾患の治療 心理社会的評価・治療的対応 効果なし 効果あり 効果なし 治療終了

機能性消化管障害の薬物療法アルゴリズム

分類 一般名 商品名 薬用量 備考・注意点 臭化チメピジウム セスデン 30-60mg/日 臭化ブチルスコポラミン ブスコバン 20-30mg/日 臭化メペンゾラード トランコロン 15-30mg/日 モサプリド ガスモチン 7.5-15mg/日 マレイン酸トリメプチン セレキノン 60-200mg/日 ジメチコン ガスコン 120-240mg/日 アセチルコリンエステ ラーゼ薬 アコチアミド アコファイド 300mg/日 H2受容体拮抗薬 ファモチジン ガスター 20-40mg/日 オメプラゾール オメプラール 0.5mg/Kg/日 ラベプラゾール パリエット 0.5mg/Kg/日 ランソプラメゾール タケプロン 0.6-0.8mg/Kg/日 止痢剤 塩酸ロペラミド ロペミン 0.6-1.2mg/日 腹部膨満に注意 整腸剤 ビフィズス菌 ビオフェルミン・ラックビー 2.0-3.0g/日 腸内環境調整薬 ポリカルボフィルカルシウム ポリフル・コロネル 1,000-1,500mg/日 5-HT3受容体拮抗薬 塩酸ラモセトロン イリボー 2,5ug/日 口渇や目の調整障害、尿 閉 下痢に対して 腹痛に対して 抗コリン薬 上下腹部膨満感を 伴う腹痛に対して 腸管運動調整剤 上腹部痛(心窩部 痛)に対して プロトンポンプ阻害薬

腹痛に対する薬物療法

(21)

腹痛に対する薬物療法

分類 一般名 商品名 薬用量 備考・注意点 酸化マグネシウム  カマグ 1-2g/日 長期連用では血中Mgに注 カルネロースNa バルコーゼ 1.5-3g/日 Clチャンネル作用薬  ルビプロストン  アミティーザ 24-48μg/日 悪心、軟便などに注意 アルプラゾラム コンスタン 0.6-0.8mg/日 脱力感や眠気に注意 ロフラゼプ酸エチル メイラックス  1-2mg/日 脱力感や眠気に注意 クエン酸タンドスピロン セディール 30-60mg/日 塩酸イミプラミン トフラニール 20-50mg/日 便秘や心毒性に注意 塩酸アミトリプチリン トリプタノール  30-75mg/日 便秘や心毒性に注意 安中散(中間~虚証、心窩部痛)    六君子湯(虚証、上腹部膨満感、心窩部痛) 半夏厚朴湯(中間証、咽頭。胸部違和感) 半夏瀉心湯(中間~実証、下痢、腹痛)  人参湯(虚証,冷え,下痢)  桂枝加芍薬湯(中間~虚証、腹痛)    桂枝加芍薬大黄湯(中間~虚証、腹痛、便秘) 小建中湯(虚証,腹痛,冷え、便秘)  大建中湯(虚証,腹痛,便秘) 5.0-7.5g/日分2-3 7.5g-15.0g/日分2-3 7.5g-15.0g/日分2-3 5.0-7.5g/日分2-3 5.0-7.5g/日分2-3 5.0-7.5g/日分2-3 5.0-7.5g/日分2-3 5.0-7.5g/日分2-3 5.0-7.5g/日分2-3 便秘に対して  抗不安薬 抗うつ薬 漢方製剤 複合的作用 三環系抗うつ薬 緩下剤

[家族の気持ち]

 「少しでも腹痛を軽減してもらいたい」、「なにか重大

な病気が隠れているのではないか」、など受診にあ

たっての家族の意向や心配に耳を傾けることが重要。

 こうした配慮をおこないながら、腹痛という身体症状

をていねいに診察、対応、説明おこなうことで、医師

患者関係が構築され心身対応もしやすくなる。

痛み(頭痛・腹痛)に対する心身的対応

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[本人の心理的背景]

 疾病利得:ストレスを回避できる。同情を得る。

 痛みが軽減されないと、疾病利得が強化されていく。

 無意識に生じる痛みのため、自己効力感の低下から

自己評価の低下、そして自尊感情の低下へ発展。

 融通が効かない性格傾向、依存的、感情を抑え込み、

高い理想をもつ。

 周囲より高い要求水準をもとめられていることがある。

山本直示(都立小児総合医療センター看護部) 小児看護:2011:34;962‐968

痛み(頭痛・腹痛)に対する心身的対応

[本人への対応]

 子どもは、学校での対人関係、勉強でのストレス、家

族の不和などさまざまな心理的・社会的な負担により

疲労し、頭痛や腹痛などを訴えるのである。一般的に

は、休養や問題解決、回避による負担の軽減で痛み

は徐々に消失していく。

 医療者が身体症状ばかりに注目し、子どもの本当に

訴えたい内容に気づかないと症状は固定化、悪化、さ

らにはほかの症状へと移っていく。

痛み(頭痛・腹痛)に対する心身的対応

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[本人への対応]

 仮病や虚言と扱われてしまいがちになるが、実際に子

どもたちは痛みを体験している。その訴えを真摯に聞

いてあげること

 痛みをわかってもらえたという安心感(自分を受け入

れてもらえた)が、子どもの不安を和らげ、心因性の痛

みを次第に軽減していく

 一方で痛みのみにとらわれず、背景にあるものを評価

していくことが必要

痛み(頭痛・腹痛)に対する心身的対応

山本直示(都立小児総合医療センター看護部) 小児看護:2011:34;962‐968

Take home message

 痛みを訴える子どもに対して、その成因が心因と推測

されても、子どもが訴える身体症状に真摯に向き合う

ことで問題が解決されていくことがよく経験される。

参照

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