覺
海
大
徳
の
事
相
大
山
公
淳
一 、 大 徳 の 教 相 系 譜 凡 そ 眞 言 宗 學 に 於 い て 古 來 事 相 教 相 と い ふ 両 面 が 考 へ ら れ て ゐ る 。 そ の 事 相 と は 如 來 甚 深 の 祕 密 藏 は 言 説 を も つ て 人 に 示 す 能 は ず 、 世 間 有 爲 の 事 相 を 假 つ て 喩 と す と い ひ 、 若 し は 因 縁 の 事 相 に 託 し て 以 つ て 深 旨 を 表 は す と い ふ の 意 味 で あ つ て 、 こ れ ら の 言 葉 は 共 に 大 日 經 疏 に 出 つ る 所 と す 。 教 相 と は 所 謂 教 理 教 論 の こ で で あ つ て 、 崇 義 に 對 す る 哲 學 的 理 論 的 研 究 方 面 を 總 稱 す る の 名 で あ る 。 蓋 し か ゝ る 事 教 二 相 の 名 を 生 じ 、 各 そ の 學 系 を 講 成 し 命 脈 を 異 に す る に 至 り し は 何 塒 代 の 事 で あ る が 、 寧 ろ そ は 後 世 に 屬 す る こ と で あ つ て 、 我 高 祖 大 師 若 し は そ の 御 弟 子 中 の 御 手 許 に 於 い て は 未 見 ら れ な い 所 の も の で あ る 。案 ず る に 野 澤 両 流 分 派 の 本 た る 聖 寳 尊 師 益 信 僧 正 の 前 後 に 出 る も の で は な か ら う か 、 夫 れ は 兎 に 角 と し て 、 今 覺 海 大 徳 の 教 相 系 譜 を 調 べ て 見 る こ 嬉 ゝ す 。 尤 も こ れ は 事 相 系 譜 を 調 査 す る 前 提 と し て 見 る も の で あ つ て 、 そ の 詳 細 を つ く す わ け に は ゆ か な い こ と を 遺 憾 と す る 。 且 つ て 或 無 題 の 寫 本 に 覺 海 法 印 の 法 流 相 承 に 四 豪 傑 が あ る 。 謂 く 法 性 ・ 道 範 ・ 尚 祚 ・眞 辨 是 れ で あ る と い ふ の を 見 た こ と が あ る が い 更 に 貞 應 三 年 即 覺 海 大 徳 の 事 相 四 一覺 徳 大 徳 の 事 相 四 二 大 徳 の 上 天 せ ら れ た と い ふ 翌 年 の 後 七 月 と い ふ か ら 閏 七 月 で あ ら う 、 そ の 時 御 室 の 仰 せ に よ つ て 宗 禪 檢 校 の 許 に 於 い て 道 範 等 の 學 侶 を 集 め て 法 談 が 設 け ら れ た 、 そ の 時 覺 玉 房 と い ふ 人 が そ の 談 義 を 抄 し 筆 授 し た の が 大 疏 除 暗 鈔 と い ふ 書 物 に な つ て ゐ る 。 そ れ は 久 し く 寫 本 と し て 傳 へ ら れ て ゐ た の で あ る が 、 今 か ら 約 百 四 五 十 年 程 以 前 に 刋 本 と し て 出 剣 さ れ る こ と に な つ た 。 そ の 節 南 山 の 學 匠 妙 瑞 師 が 出 利 す る に 際 し て 序 文 を 記 さ れ た 。 そ の 序 文 の 中 に 師 記 し て ﹁ 海 師 ( 覺 海 を 指 す ) 徒 有 道 範 ・ 法 性 二 大 徳 ﹂ 云 云 と 記 し て ゐ ら れ る 。 つ い で な が ら 此 の 除 暗 鈔 に 就 い て 妙 瑞 師 は ﹁ 如 此 鈔 範 師 ( 道 範 )專 筆 聽 海 不 語 林 葉 矣 ﹂ と い ひ 、 又 就 今 此 第 三 卷 中 解 如 來 持 句 所 住 如 來 爲 佛 土 器 界 能 住 佛 身 理 智 不 ご 本 地 身 也 此 海 大 徳 貽 範 師 相 承 義 也 又 第 四 卷 釋 薄 伽 梵 即 毘 廬 遮 那 句 能 住 唯 理 本 地 法 身 所 住 唯 智 本 地 法 身 者 是 法 性 相 承 也 も つ て そ の 書 の 内 容 の 尊 重 す べ き も の な る を 知 る べ く 、 又 海 大 徳 よ り 出 つ る 南 山 教 學 の 根 據 を 知 る に 足 る で あ ら う 。 後 代 宥 快 法 印 等 に よ つ て 大 成 せ ら れ た 南 山 義 學 の 淵 源 は か く の 如 く に し て 傳 へ ら れ た の で あ る こ と を 知 る 。 又 、 南 山 釋 迦 文 院 の 學 僧 維 寳 師 、 海 大 徳 の 徳 を 編 し て ﹁ 寳 性 の 法 性 ・ 正 智 の 道 範 共 の 徳 澤
を
受
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、
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南
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於
三
密 分 覺 海 之 金 波 甞 醍 醐 之 賢 味 ﹂ と 、 更 に 南 山 教 相 血 脈 を 開 く と 次 の 如 く に な つ て を つ て 、 到 底 こ れ を 否 定 す る こ と は 出 來 な い こ と で あ ら う 。但 し 、 右 の 圖 中 寳 性 と あ る は 寳 性 院 の 開 基 法 性 阿 闍 梨 の こ と ゝ す 。 右 の 系 譜 は 最 極 祕 事 と し て 先 徳 の 深 く 秘 藏 す る 所 に て 、 今 誌 上 公 表 す る こ と は 冐 犢 の 誹 謗 と 責 任 と を 菟 れ 得 な い こ と ゝ 思 ふ け れ ど 。 海 大 徳 の 我 教 學 吏 上 に 於 け る 位 置 を 鮮 明 せ ん が 爲 に 特 に 出 す こ と ゝ し た 。 因 に そ の 奥 書 を 出 す と 、 右 血 脉 は 下 覺 海 大 徳 の 事 相 四 三
覺 海 大 徳 の 事 相 四 四 の 如 く に 傳 へ ら れ て 、 現 在 野 町 正 智 院 の 書 庫 に 藏 せ ら れ て ゐ る 。 此 書 雌 厳 極 秘 藏 云 法 器 云 求 法 旁 非 可 秘 惜 故 授 頼 智 大 法 師 畢 應 永 二 十 九 年 三 月 十 八 日 權 正 僧 都 成 雄 寳 徳 二 年 六 月 一 日 此 書 先 徳 厳 秘 藏 云 多 年 給 仕 云 懇 望 旁 非 可 秘 借 故 授 宥 盛 大 法 師 畢 權 少 信 都 法 印 頼 智 夊 明 十 一 年 九 月 二 十 一 日 此 書 雖 當 山 先 徳厳 秘 號 云 多 年 懇 望 云 懇 望 旁 非 可 秘 錯 故 授 快 増 入 寺 畢 懽 少 信 都 宥 盛 こ れ を も つ て 南 山 教 學 史 上 に 於 け る 海 大 徳 の 地 位 を 知 る べ く 、 後 代 に 於 け る 教 學 の 勃 興 は 、 全 く 海 大 徳 門 弟 薫 育 の 賜 物 に 外 な ら な ・い こ と を 思 は ず に は ゐ ら れ な い 。 傳 燈 廣 録 卷 中 ﹁ 高 野 山 座 主 金 剛 峯 寺 華 王 院 檢 技 覺 海 傳 ﹂ の 條 下 に 編 者 誌 し て 入 二 高 野 山 孜 孜 鑚 仰 義 辨 飛 花 論 戰 碎 鋒 云 云 (八 葉 學 會 本 百 九 十 六 紙 右 ) と 、 そ の 高 風 眞 に 仰 ぐ べ き で は な い か 。 予 は 本 誌 上 に 發 表 さ れ た る 他 諸 師 の 高 見 を 右 血 脉 に よ つ て 深 く 追 憶 さ れ ん こ と を 讀 者 に 切 望 す る 。 二 、 大 徳 の 事 相 系 譜
前
節
の
終
に
出
し
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簿
燈
廣
録
の
同
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き
所
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座 主 名 覺 海 字 南 勝 中 略 )蚤 薙 髪 入 二 大 僧 正 之 室 受 密 灌 嗣 法 燈 觀 錬 功 成 神 識 雷 發 繼 承 随 心 院 信 正 親 嚴 勤 修 寺 碩 匠 文 泉 之 傅 と あ る 。 右 の 文 の 初 に 云 ふ 大 僧 正 と は 醍 醐 の 定 海 大 僧 正 を 指 す の で は あ る け れ ど 、 海 大 徳 事 相 系 譜 の 調 査 に は 一 方 な ら ぬ 苦 心 を 用 し た 。 そ れ は 多 く 用 ゐ ら れ て ゐ る 普 通 の 血 脉 で は ど う し て も 知 る を 得 な か つ た か ら で あ る 。 種 々 苦 心 の 結 果 得 た る も の を 誌 す と 次 の 如 く で あ る 。 先 海 大 徳 剃 度 の 師 醍 醐 山 三 寳 院 定 海 大 僧 正 に 就 い て 見 る に 、 大 僧 正 は 三 賢 院 の 第 二 世 に し て 醍 醐 の 座 主 第 十 六 世 と い ふ こ と に な つ て ゐ る 。 而 し て ﹁ 覺 海 ﹂ の ﹁ 海 ﹂ は ﹁ 定 海 ﹂ の ﹁ 海 ﹂ 字 を 禪 り 受 け ら れ て あ る こ と も 知 ら れ る 。 そ れ 程 縁 の 深 い 師 定 海 大 僧 正 に は 付 法 の 資 十 五 人 あ る 。 そ の 中 に は 松 橋 流 の 祖 と な つ た 一 海 阿 闍 梨 や 元 海 大 僧 都 、 或 は 石 山 筑 前 の 阿 闍 梨 隆 賀 な ど と い ふ 諸 師 が 見 ら れ る 。 勿 論 覺 海 大 徳 は そ の 一 人 で あ る 。 又 醍 醐 寂 圓 の 流 と い ふ も の を 見 る に 、 小 野 仁 海 の 次 に 寂 圓 あ り 、 そ の 次 は 醍 醐 中 理 趣 房 阿 闍 梨 頼 照 、 次 は 教 王 房 禪 慧 、 此 の 人 に 就 い て は 極 樂 寺 第 二 世 心 一 上 人 と 註 し て め る 。 そ の 教 王 房 の 資 に 九 人 あ つ て 松 橋 元 海 ・侍 從 律 師 行 海 ・ 淨 光 房 範 賢 ・ 次 に 覺 海 ・佐 渡 阿 闍 梨 聖 尊 ・ 心 蓮 房 仁 意 ・淨 智 房 慶 快 ・ 石 山 の 教 西 ・妙 法 房 己 講 院 嚴 ・慧 光 房 定 信 ・乗 海 ・ 鮪 源 ・ 仁 呆 ( 重 受 ) と な つ て ゐ る 。 但 し 右 の 列 名 で は 十 三 人 に な る や う で あ る が 本 に は 付 法 九 人 と し て 右 の 名 を 列 ね て あ る 。 次 に 隨 心 院 流 を 見 る に 親 嚴 の 次 に 石 山 交 泉 房 が あ つ て 次 に 我 が 覺 海 大 徳 と な つ て ゐ る 。 覺 海 大 徳 の 事 相 四 五覺 海 大 徳 の 事 相 四 六 そ し て 此 の 流 で は 我 海 大 徳 に 付 法 の 資 四 人 あ る こ と に な つ て ゐ る 。 曰 く 宮 内 卿 阿 闍 梨 理 海 ・ 中 納 言 律 師 盛 海 ・ 大 將 法 眼 定 耀 ・覺 患 。 但 し 傳 燈 廣 録 に は 海 大 徳 の 付 法 四 人 あ り と し て 第 一 に 宮 内 卿 阿 闍 梨 珍 海 と 幽 て ゐ る 。 而 し 今 の 血 脉 譜 に 照 合 す る 時 は 珍 海 は 三 寳 院 定 海 付 法 の 資 十 五 人 の 中 の 一 人 と な つ て を つ て 、 宮 内 卿 阿 闍 梨 は 今 出 し た 如 く 理 海 と な つ て ゐ る 。 何 れ の 相 逹 か 見 る に 由 な く 、 明 師 の 御 教 示 を 待 つ 次 第 で あ る 。 以 上 に 瑜 伽 傳 燈 録 畧 系 譜 小 野 の 冊 に 出 す 所 で あ る が 、 更 に 佛 教 大 年 表 を 見 て ゐ る と 眞 言 宗 の 系 譜 の 中 に 於 い て
範
俊
-嚴
覺-實
範
-實
任
-郎
澄
-先
海
-覺
海
と 出 て ゐ る 。 こ れ は 何 れ の 血 脉 に 據 つ た も の か 知 ら な い が 、 こ れ に よ る と 我 海 大 徳 は 實 範 と あ る か ら 中 川 流 を 受 け て ゐ ら れ る こ と に な る 。 こ れ を 石 流 相 承 血 脉 集 に 照 合 す る と 朗 澄 の 次 が 光 海 と な り 次 が 覺 海 と な つ て ゐ る 。 即 ﹁ 先 海 ﹂ の ﹁ 先 ﹂と ﹁ 光 海 ﹂ の ﹁ 光 ﹂ と の 逹 い で あ る 。 こ れ は 何 れ か 寫 本 の 誤 り で は あ る ま い か と 思 ふ け れ ど 、 何 れ が 是 で 何 れ が 非 と も 決 し 兼 ね る 次 第 で あ る 。 而 し ﹁ 光 海 ﹂ と は 石 山 寺 に 現 存 す る 寫 本 の 上 で 見 た 字 で め る か ら 多 分 こ れ が 眞 實 か と 思 ふ 。 且 つ 石 流 血 脉 集 の 石 山 本 に は 覺 海 の 下 に ﹁ 當 寺 佳 阿 闍 梨 ﹂ と あ り 、 加 之 石 山 寺 藏 經 の 中 に 次 の 如 き も の が あ る 。 即 ﹁ 阿 毘 逹 磨 類 足 論 卷 十 八 ﹂ の 奥 に は 正 治 元 年 五 月 十 八 日 於 東 大 寺 塔 本 坊 以 東 南 院 本 一 交 了 三 論 覺 者 洲 門 覺 燈承 元 二 季 七 月 十 日 於 石 山 寺 如 形 一 見 畢 後 必 可 見 直 洲 門 覺 海 又 、 衆 事 分 阿 毘 曇 卷 十 二 の 奥 に は 承 元 二 年 七 月 十 日 於 石 山 寺 如 形 一見 畢 覺 海 但 し 此 處 に 云 ふ ﹁ 覺 海 ﹂ と は 果 し て 我 海 大 徳 で あ る か ど う か 、 疑 問 の な い で は な い が 、 石 流 相 承 血 脉 集 よ り い ふ 時 は 、 ど う し て も 我 海 大 徳 で な く て は な ら ぬ 。 朗 澄 師 の 寫 本 に な る ﹁ 灌 頂 事 ﹂ と い ふ 治 承 五 年 の も の 、 及 び 建 久 四 年 の 眞 言 書 類 集 な ど と い ふ 書 物 が 殘 さ れ て 現 存 す る を も つ て 見 て も 大 概 は 推 定 さ れ よ う 。 さ す れ ば 海 大 徳 は 石 山 に 居 ら れ た こ と が あ る と 云 は ね ば な ら な く な る 。 そ し て そ の 年 代 は 承 元 の 頃 と い ふ か ら 大 徳 昇 天 の 前 十 五 年 の 頃 、 南 山 檢 挾 に 任 せ ら る ゝ 約 十 年 程 前 の 頃 に な つ て ゐ る 。 普 通 傳 ふ る 所 で は 高 野 入 山 以 後 の 大 徳 は 殆 ん ど 山 外 不 出 と さ れ て ゐ る の で あ る が 、 右 の 血 脉 に 於 い て 相 違 な い も の と す れ ば 大 徳 の 傳 記 の 上 に 少 し 變 更 さ る ゝ も の が な く て は な ら ぬ こ と を 思 ふ 。 上 に 記 す る 所 は 佛 教 大 年 表 及 び 石 流 相 承 血 脉 集 に よ つ た の で あ る が 、 或 一 本 を 見 る に 嚴 覺 ・ 良 勝 ・ 朗 澄 ・先 海 ・覺 海 と い ふ 系 譜 も 見 る 。 次 に 中 院 流 で あ る が 、 先 中 院 流 大 血 脉 を 開 く に 、 元 祖 明 算 の 資 に 北 室 院 檢 技 解 脱 房 良 禪 あ り 、 そ の 付 洩 に 數 多 あ る 中 大 智 房 俊 義 な る 人 が あ る 。 こ の 人 は 後 改 名 し て 基 舜 と 云 つ た が 、 そ の 付 法 に 五 智 房 融 覺 海 大 徳 の 事 相 四 七
覺 海 大 徳 の 事 相 四 八 源 ・ 淨 法 房 兼 海 ・ 圓 物 房 覺 義 と い ふ 三 人 が あ る 。 そ し て 覺 義 の 次 に 高 野 阿 彌 陀 院 寛 秀 嚴 密 房 あ り 、 そ の 次 に 我 南 勝 房 覺 海 が あ る 。 南 勝 房 は 又 南 證 房 に も 作 る 。 覺 海 の 次 に 源 朝 ・ 印 修 ・智 海 と い ふ 三 人 の 付 法 弟 子 が あ る こ と に な つ て ゐ る 。 源 朝 師 に 就 い て 野 山 明 王 院 の 先 師 過 去 帳 を 見 る に 、 中 興 第 四 代 と し 、 假 名 は 淳 見 房 、 人 王 八 十 四 代 順 徳 院 御 宇 建 保 の 比 、 覺 海 闍 梨 に 隨 つ て 両 部 の 職 位 を 受 け 、 正 治 二 年 よ り 建 保 元 年 に 至 る 十 五 ヶ 年 明 王 院 に 佳 し て ゐ ら れ た 師 に な つ て ゐ る 。 猶 智 海 師 は 假 名 現 勝 房 、 或 は 異 本 に は 理 證 房 と 云 ひ 、 人 王 八 十 三 代 土 御 門 御 宇 正 治 二 年 に 覺 海 闍 梨 よ り 両 部 灌 頂 を 受 け て ゐ ら れ る 。 そ し て 久 安 元 年 よ り 正 治 二 年 に 至 る 五 十六 年 同 じ く 明 王 院 の 先 住 と し て 佳 し て ゐ ら れ る 。 印 修 師 に 就 い て は 知 る に 由 な い 。 右 の 中 院 流 系 譜 で は 阿 彌 陀 院 寛 秀 の 次 に 我 海 大 徳 と 付 法 を 同 じ う す る 人 に 貞 秀 密 智 房 と い ふ の が あ る け れ ど 、 そ れ も 如 何 な 人 か 今 知 る に 由 し な い 。 そ し て 海 大 徳 付 法 の 資 三 人 に し て 以 下 を 見 な い 。 然 ら ば そ の 系 版 は そ の ま ゝ に て 絶 え た も の と 愚 は れ る 。 絶 え な い に し て も 、 師 の 内 の 付 怯 に し て 、 正 統 を 餘 に 求 め た が 爲 に 、 若 し は 餘 に 僖 へ た が 爲 に 遂 に 、 そ の 系 譜 が 知 ら れ な く な つ た の で あ ら う 。 緬 し て 上 述 の 血 脉 に 於 い て 法 性 ・ 道 範 師 等 を 求 む る に 、 良 禪 の 次 に 大 光 房 兼 賢 と い ふ 人 が あ り 、 次 に 正 智 院 常 修 房 定 賢 ・勝 光 房 明 任 と な り 、 そ の 付 法 と し て 法 性 ・ 道 範 な ど が あ る の で あ る 。 け れ ど 又 一 本 の 寫 を 見 る と 覺 海 大 徳 の 付 法 と し て 前 の 源 朝 及 び 法 性 ・道 範 ・ 尚 祚 ・ 眞 辨 と 列 ね た の も あ る 。 教 相 系 譜 か ら 推 す と こ れ が 至 當 と も 考 へ ら れ る が 果 し て ど う で あ ら う 。 高 野 山 相 承 系 譜 で は 阿 闍 梨 寛 琳 は 尋 蓮 上 人 の 入 室 潟 瓶 で あ
つ て 、 建 暦 元 年 十 月 二 十 九 日 入 滅 、 年 八 十 二 、 そ の 付 法 灌 頂 の 資 に 十 人 あ り 、 中 に 明 任 勝 光 房 や 我 覺 海 な ど が あ る 。 こ れ に よ る と 明 任 師 と 我 海 大 徳 と は 同 一 師 よ り 付 法 し て ゐ ら れ る こ と に な る 。 又 中 院 流 相 承 縁 由 起 と い ふ 天 保 七 年 正 智 院 道 猷 阿 闍 梨 の 寫 本 に よ る に 寛 秀 は 大 樂 院 の 主 職 に あ り 、 そ の 資 に 覺 海 出 で 、 又 明 任 の 資 に 法 性 ・ 道 範 あ り 、 其 他 尚 祚 ・眞 辨 ・信 日 ・信 堅 ・ 覺 阿 ・ 玄 海 等 以 上 皆 山 中 の 學 侶 師 資 相 承 の 名 匠 と 記 し て あ る 。 法 性 ・ 道 範 に 就 い て は 覺 海 に 從 つ て 古 義 を 學 ぶ 、 こ れ を 覺 海 相 承 と い ふ と 註 し て ゐ る を 見 る 。 要 す る に 海 大 徳 中 院 流 入 壇 の 師 の 寛 秀 闍 梨 な る こ と は 疑 は れ な い 事 實 で あ つ て 、 檢 校 帳 に も 大 樂 院 寛 秀 闍 梨 入 壇 の 資 と 出 て ゐ る 程 で あ る 。 闍 梨 は 建 久 八 年 七 月 二 十 四 日 入 滅 と あ る か ら 海 大 徳 五 十 七 歳 の 時 に 當 る 。 そ し て 海 大 徳 付 法 の 資 に 於 い て 上 述 す る 所 中 院 流 に 七 人 若 し く は 三 人 、 隨 流 に 四 人 を 見 る 。 け れ ど そ の 注 流 口 訣 の 餘 り 傳 は る も の ゝ な い の は 、 全 く 海 大 徳 よ り の 受 法 を も つ て 正 統 に こ れ を 固 持 し 、 相 繼 ぐ も の ゝ な か つ た こ と に 歸 因 し な く て は な ら ぬ で あ ら う 。 或 は 吉 野 と 高 野 と の 領 域 問 題 の 興 つ た 時 、 我 一 山 の 大 衆 殆 ん ど 一 時 離 山 し た こ と が あ つ た 。 そ れ は 海 大 徳 登 天 の 前 五 年 の こ と で あ る か ら 、 そ の 節 そ の 門 下 に 幾 多 の 龍 象 あ り と は 云 へ 、 又 散 佚 の 恐 な し と も 考 へ ら れ な い こ と は な い 。 又 後 代 に 及 ん で 其 の 住 房 華 王 院 な ど 數 度 の 興 廢 あ り 、 聖 教 口 訣 の 失 は れ た も の ゝ 多 い こ と も 事 實 で あ ら う 。 か ぐ の 如 き 事 情 内 因 外 縁 相 待 ち 、 且 つ 中 院 流 に 於 け る 引 ・心 ・大 ・ 智 て ふ 四 方 の 如 き 、 何 れ も 海 大 徳 以 外 の 系 統 に 屬 し 、 そ れ ら の み 榮 え て 、 海 大 徳 の 正 慌 傳 は ら ず 、 口 訣 の 多 く を 見 な い と い ふ こ と は 、 今 日 の 研 覺 海 大 徳 の 事 相 四 九
覺 海 大 徳 の 事 相 五 〇 究 者 の 千 歳 に 於 け る 遺 恨 で な く て は な ら ぬ 。 而 し 王 は 常 に 王 で あ る 。 海 大 徳 の 口 訣 と し て 傳 は る も の は 少 い け れ ど 、 猶 そ の 中 に 殘 る 僅 の も の は 、 依 然 と し て 千 古 の 燈 明 と な る も の で あ る 。 そ し て 卓抜 な 我 海 大 徳 の 識 見 と 高 風 と は 、 そ れ ら に よ つ て 伺 は れ る 。 猶 名 古 屋 寳 性 院 第 四 世 と い ふ 政 祝 闍 梨 の 集 な る 眞 言 目 録 に は 定 海 大 僧 正 の 付 法 に 二 十 人 を 出 し 中 に 明 海 後 に 改 め て 實 蓮 と い ふ 、 そ の 實 違 な ど の 名 を 列 ね 、 中 に 覺 海 を 記 し 、 覺 海 の 密 弟 に 四 人 あ り と し て 覺 惠 ・ 理 海 ・ 盛 海 ・ 定 耀 僧 正 を 出 し て ゐ る 。 覺 惠 は 未 見 の 師 で 今 何 と も 云 へ な い 。 又 海 大 徳 は 石 山 の 朗 澄 よ り 傳 法 し た と 記 す も の が あ る 。 そ れ は 兎 も 角 石 流 を 相 承 し て ゐ ら れ る こ と は 疑 は れ な い も の ゝ よ う で あ る 。 三 、 海 大 徳 の 内 的 生 活 管 見 海 大 徳 の 教 相 方 面 に 關 す る も の は 他 の 諸 師 に よ つ て 、 そ の 高 見 が 幾 多 記 さ れ る こ と ゝ 思 ふ の で 小 僧 は 畧 す る こ と に す る が 、 事 相 の 方 面 の こ と を 記 す に 當 つ て 、 先 、 海 大 徳 の 内 的 生 活 を 管 見 し た い と 思 ふ 。 蓋 し 海 大 徳 の 意 氣 と 精 神 と に 至 つ て は 野 峯 名 徳 傳 に も 云 ふ 如 く 、 神 悟 天 發 、 神 識 雷 發 教 義 精 絶 に し て 、 遠 く 群 類 を拔 き 俊 烈 張 勇 高 邁 の 氣 、 眞 に 仰 ぐ べ き も の が あ る 。 大 徳 に 關 し て の 事 跡 と し て 、 最 も 著 し い も の は 、 建 保 六 年 よ り 興 っ た 吉 野 春 賢 に 關 す る 高 野 領 域 問 題 と 、 三 世 七 生 の 感 得 と 、 下 品 の 悉 地 を 成 じ て 南 山 の 守 護 に 任 せ ら れ た と い ふ 、 こ の 三 つ を 擧 げ な く て は な ら ぬ 。 そ の 第 一 は 一 山 の 統 領 と し 密
家 法 門 の 頭 首 と し て の 高 邁 な る 識 見 確 固 不 援 の 法 に 對 す る 信 念 力 の 勇 偉 な る を 現 は さ れ た る も の 、 第 二 は 内 觀 力 の 深 刻 さ と 觀 行 の 至 奥 に 至 れ る 心 地 を 示 さ れ た る も の 、 第 三 は 人 法 興 隆 令 法 久 住 の 爲 め 絶 大 な 威 力 を 殘 さ れ た も の で あ ら う 。 か ゝ る 群 類 を 絶 し た る 事 跡 を 殘 さ れ た 大 徳 一 生 の 精 神 生 活 や 如 何 、 如 何 な 心 地 三 昧 に あ つ て 生 涯 を 得 ら れ た か 、 伺 う こ と は 極 め て 困 難 で あ る が 、 幸 に 現 に 野 山 増 輻 院 の 書 庫 に 覺 海 法 橋 の 物 語 が ﹁ 諸 口 傳 鈔 ﹂ と い ふ 一 軸 寫 本 に な つ て 保 存 さ れ て ゐ る 。 今 そ れ に よ つ て 管 見 す る こ と ゝ す る 。 尤 も そ の 本 は 先 年 大 正 二 年 の 贋 京 都 東 寺 大 學 の 長 谷 賢 秀 師 が ﹁ 眞 言 宗 安 心 全 書 ﹂ を 編 輯 發 刋 さ れ た 、 そ の 時 そ の 本 の 上 卷 第 一 頁 以 下 に 出 さ れ た こ と を 附 言 し て 置 く 。 此 本 に は 先 徳 の ﹁ 秘 中 の 秘 也 ﹂ と い ふ 手 入 れ ま で さ れ て あ る が 、 海 大 徳 の 心 境 界 を 知 る べ き 唯 一 の 寳 鏡 で な く て は な ら な い 。 本 の 初 に 眞 言 教 の 脅 ひ を 出 し て 、 曰 く 、 眞 實 無 上 菩 提 願 者 都 何 處 生 何 身 不 思 自 心 常 淨 随 心 轉 色 即 事 而 眞 觀 可 成 也 所 期 淨 土 須 彌 九 山 八 海 密 嚴 道 場 也 於 色 相 佛 身 十 界 悉 曼 茶 羅 聖 衆 也 覺 身 非 可 非 佛 身 心 敗 佛 云 事 五 大 成 身 觀 熟 即 曼 茶 聖 衆 ト コ ソ イ ヲ ウ ズ レ 依 相 績 依 身 九 界 佛 界 分 別 事 流 轉 生 死 間 生 界 佛 界 各 別 之 思 別 執 甚 也 現 覺 諸 法 本 初 不 生 時 草 室 棟 柱 至 皆 是 法 界 官 殿 材 木 也 於 須 彌 山 九 山 八 海 等 觀 華 嚴 世 界 云 於 此 世 界 即 事 而 眞 法 界 道 場 建 故 也 眞 實 我 居 房 舍 密 巌 淨 土 觀 自 身 左 右 前 後 四 智 四 行 布 列 乃 至 九 會 十 三 大 會 法 界 胎 藏 界 曼 茶 羅 上 金 剛 界 三 十 七 尊 塵 刹 聖 衆 各 々 自 證 月 輪 坐 給 思 フ ベ キ 也 因 位 畤 所 起 心 々 所 觀 坐 禪 間 金 剛 界 中 入 心 王 大 日 各 々 智 印 三 昧 顕 也 實 我 固 執 心 改 於 依 他 繰 生 法 實 相 常 住 思 作 也 世 中 後 世 欣 人 々 幾 許 併 執 心 未 藹 故 於 都 牽 極 樂 論 難 易 不 同 於 密 嚴 華 藏 噛絶 思 望 人 人 無 也 云 云 覺 海 大 徳 の 事 相 五 一
覺 海 大 徳 の 事 相 五 二 五 相 成 身 觀 よ り し て 即 身 成 佛 即 事 而 眞 の 思 想 信 念 を 高 調 す る 所 、 時 弊 を 超 越 し た も の で あ り 、 そ し て 都 率 極 樂 難 易 の 論 を 破 っ て 密 嚴 華 藏 の 旗 色 を 鮮 明 す る 所 眞 に そ の 時 代 に 顧 み て 大 徳 の 逵 見 と 云 は ね ば な ら ぬ 。 高 祖 の 眞 意 は 海 大 徳 を 得 て 復 活 せ り と い ふ べ く 、 後 代 に 於 け る 南 山 の 學 風 は 此 處 に そ の 腹 を 作 る と 云 は な け れ ば な ら ぬ も の が あ る 。 上 の 文 の 初 に ﹁ 眞 實 し 無 上 菩 攝 を 願 ふ と は 何 れ の 處 に 生 れ て 何 れ の 身 と な ら む と 思 は ず 自 心 を 常 に 淨 め て ﹂ 云 云 と い ひ 又 ﹁ 九 界 と 佛 界 と 分 別 す る こ と は 流 轉 生 死 の 間 な り 生 界 と 佛 界 と 各 別 の 思 は 別 執 の 甚 し き な り ﹂ と い ふ 。 小 僧 は 此 の 語 に 特 に 深 い 注 意 を は ら ふ も の で あ る 。 こ れ に 就 い て 上 記 の 文 よ り 更 に 下 に 至 つ て ﹁ 眞 實 に 強 ち に 都 率 極 樂 を も 執 せ ず 、 又 密 嚴 花 藏 に 於 い て も 偏 執 あ る べ か ら ず 、 靜 に 思 ふ 時 に は 何 に 生 れ て 何 に な ら む と も 思 は ず 、 心 だ に 淨 め つ る な ら ば 、 龍 夜 又 等 の 身 と な り た ら と も 苦 し か ら ず 、 内 證 賢 き 雜 類 の 棲 む 所 は 我 等 が 住 處 に は 似 す 、 彼 は 皆 淨 土 に て あ る な り ﹂ と 。 即 生 佛 の 別 を 見 て 佛 を 欣 求 す る と い ふ こ き は 未 一 種 の 迷 で あ つ て 、 實 は 我 心 さ へ 淨 く し た な ら ば 、 設 令 地 獄 や 龍 夜 叉 と な ら う と も 、 更 に 厭 ふ 所 で は な い 、 皆 こ れ 密 嚴 の 世 界 曼 茶 の 一 員 た り 得 る と い ふ の で あ る 。 海 大 徳 自 ら 求 め て 下 品 の 悉 地 を 得 ら れ た と い ふ 心 境 の 程 も 亦 尊 い も の な る こ と が こ れ に よ つ て 知 ら れ る 都 率 極 樂 と い ふ の も 海 大 徳 の 所 謂 心 を 淨 く す る 所 に 得 ら れ る の で あ り 、 又 即 身 成 佛 即 事 而 眞 も 此 の 外 に は な い 、 密 嚴 華 藏 亦 此 の 外 に 存 す る の で は な い 。 海 大 徳 云 ふ 、 ﹁ 十 界 に 於 い て 執 心 無 き 故 、 九 界 の 問 遊 び あ る く ほ ど に 念 々 の 改 變 に よ つ て 依 身 を 受 く る な り 。 さ や う に な り ぬ れ ば 十 界 住 不 住
自 在 也 ﹂ と 。 又 、 ﹁ 人 中 天 上 即 淨 土 な り 密 號 名 字 を 知 れ ば 鬼 蓄 修 羅 の 棲 も 密 嚴 淨 土 な り ﹂ と 、 眞 に そ の 悟 境 の 群 を 扱 く も の あ る を 知 る べ き で あ る 。 猶 臨 終 の 用 必 を 述 架 て 、 ﹁ 臨 終 な ん ど 強 ち に 人 に 知 ら れ ず 、 善 知 識 を も 用 う べ か ら す 、 自 他 の 意 各 別 な れ ば 同 じ く 觀 念 す れ ど も 、 さ す が に 我 意 に 同 せ す ( 中 略) 心 だ に も 靜 に な り な ば 、 心 を も つ て 善 知 識 と な す べ ぎ な り 、 '五 智 房 な ん ど の 臨 終 に 、 人 に も 知 ら れ ず 正 念 に 住 し て 入 滅 せ ら れ た る は 、 哀 れ に 貴 く こ そ 麑 ゆ れ ﹂ と 。 帥 臨 終 に 方 い て は 卸 寂 な 心 を =善 知 識 と し 、 正 念 に 住 し て 入 滅 す る こ と 、 肝 要 で な く て は な ら ぬ 。 見 苦 し い 死 に 様 は 到 底 末 代 に 汚 名 を 殘 す も の た る を 冤 れ な い 。 五 智 房 と い ふ の は 海 大 徳 の 少 し 先 輩 に 當 る 當 時 の 大 徳 融 源 闍 梨 の こ と で あ る 。 こ れ を 要 す る に 海 大 徳 の 内 的 生 活 は 專 ら 一 心 を 淨 め て 、 在 る 所 に 從 つ て 、 九 界 何 れ な り と 、 十 界 住 不 住 自 在 に し て 、 そ こ に 密 嚴 花 藏 の 世 界 を 開 見 せ ん と す る も の で あ つ た 。 そ し て 大 師 立 教 開 宗 の 眞 意 を 其 處 に 實 現 し よ う と せ ら れ た の で あ り 、 又 そ の 體 驗 者 で あ つ た 。 大 徳 の 崇 高 な 人 格 は そ こ に 築 か れ て ゐ た こ と を 知 る の で あ る 。 毘 盧 の 心 印 を 結 ん で 滅 を 唱 ふ と い ふ が 如 き は 上 遉 の 意 味 に 於 け る 大 徳 の 最 後 を 語 る も の で な く て は な ら ぬ 。 况 ん や 登 天 と い ふ に 於 い て そ の 然 る を 威 す る 。 猶 も 海 大 徳 の 諱 を 南 勝 と い ふ 、 こ れ 北 方 但 馬 の 國 に 生 れ て 南 山 に 登 つ た と い ふ の で 、 南 方 寳 部 の 三 味 に あ る を 理 想 と し て 自 ら 南 勝 と 呼 ん だ と い ふ の で あ る 。 或 は そ の 三 昧 に 證 入 す る と い ふ の で 南 證 と も 記 し た 。 寺 を 華 王 院 と い ひ 南 山 南 谷 に 構 ふ 。 華 王 は 開 敷 華 王 佛 、 即 胎 藏 曼 茶 羅 南 方 の 尊 體 に 名 を 依 せ 覺 海 大 徳 の 事 相 五 三
覺 海 大 徳 の 事 相 五 四 た の で 、 如 何 に 豊 な 三 味 地 に 心 を 遊 ば し め た か こ の 一 事 を も つ て も 推 定 す る に 餘 り あ る こ と で あ ら う 。 四 、 覺 源 抄 に 就 い て 覺 源 抄 と い ふ の は 、 そ の 奥 書 に 次 の 如 く 記 さ れ て あ る を も つ て 知 る べ き で あ る 。 延 寳 五 年 開 板 の 本 に よ る に 本 私 云 今 此 書 名 覺 源 抄 事 覺 者 本 馳 住 呂 南 勝 坊 阿 闍 梨 覺 海 之 覺 也 此 書 中 或 云 南 云 覺 即 此 人 口 傅 也 源 者 傅 法 院 住 信 五 智 房 阿 闍 梨 融 源 之 源 也 此 書 中 或 云 源 認 云 島 即 此 人 呼 傅 也 此 二 人 副 櫨 野三 斷 蓮 道 上 人 聞 匙 シ 創 覺 源 抄 也 起 請 蜀 状 肌 有 之 云 云 右 の 文 の 終 に 云 ふ 起 請 文 と は 如 何 な る も の か 、 未 だ 不 幸 に し て 知 ら な い の で 何 と も 云 へ な い が 、 兎 に 角 麑 源 抄 と は 、 海 大 徳 と 五 智 房 融 源 阿 簡 梨 の 口 傳 と を 主 と し て 集 鐐 し た も の な る こ と は 明 に 知 ら れ る 。 こ れ に よ つ て 覺 源 抄 一 部 四 冊 の 中 よ り ﹁ 覺 云 ﹂ 若 し は ﹁ 南 云 ﹂ と い ふ ﹁ 云 ﹂ く 付 の 箇 所 を 扱 き 出 し て 考 究 す る と 、 此 の 本 の 中 に 出 さ れ た る 海 大 徳 の 口 訣 の 最 も 正 確 な る も の を 得 る こ と が で き る で あ ら う と 思 ふ 。 尤 も そ の 外 に も 海 大 徳 の 口 訣 が 殘 さ れ て は ゐ る で あ ら う け れ ど 今 は そ れ を 略 す る 。 凡 そ 覺 源 抄 の 中 で 海 大 徳 の 口 訣 と す る も の を 十六 箇 所 に 見 る 。 そ れ は 各 問 題 に 應 じ て 一 箇 條 の 全 體 が 海 大 徳 の 口 訣 と な つ て 居 つ た り 、 他 の 諸 師 學 匠 の 説 と 並 記 さ れ た り し て は ゐ る が 。 そ し て そ れ ら の も の を 大 體 に 分 類 し て 見 る と 、 先 づ 第 一 に 教 相 に 關 す る も の に 三 箇 條 、 曰 く (卷 中 に 出 す ) 雑 部 眞 言 教 事
大 日 釋 迦 三 事 身 各 々 不 同 事 即 事 而 眞 事 次 に 曼 茶 羅 に 關 す る も の 、 日 く ( 卷 上 本 に 出 す ) 胎 曼 荼 羅 聖 衆 浅 深 有 無 事 而 部 處 坐 蓮 月 事 次 に 尊 法 に 關 す る も の 、 日 く 既 愛 染 法 所 求 事 書 石 菖 蒲 事 (卷 上 末 ) 光 明 眞 言 法 事 (卷 中 ) 舍 利 事 (卷 中 ) 次 に 印 法 に 關 す る も の 智 拳 印 即 法 報 二 身 習 事 (巻 上 本 ) 若 凡 若 聖 手 結 塔 印 事 (上 末 ) 阿 闍 梨 位 印 事 ( 同 上 ) 非 内 非 外 縛 印 事 (同 上 ) 毘 盧 遮 那 法 印 事 (巻 中 ) 覺 海 大 徳 の 事 相 五 五
覺 海 大 徳 の 事 相 五 六 軍 茶 利 半 印 供 物 加 持 事 (卷 下 ) 次 に 種 子 に 就 い て は 胎 大 日 種 子 無 點 阿 字 事 (上 本 ) 染 愛 愛 染 種 子 不 同 事 (上 末 ) 以 上 の 如 く に な る 。 先 事 相 に 關 す る も の ゝ 内 容 を 少 し 述 べ て 見 る こ と ゝ す 。 先 愛 染 王 の 法 を 行 ず る 場 合 に は 、 所 願 す る 所 の 事 由 を 石 菖 蒲 に 書 き 、 そ れ を 灑 淨 の 水 に 入 れ 、 又 は 金 剛 盤 の 上 に 置 く 、 但 し 金 剛 盤 の 上 に 置 く に は 、 そ の 上 に 金 剛 盤 の 廣 さ に 切 つ た 紙 を も つ て 覆 ふ て 他 人 に 見 え な い よ う に す る と い ふ こ と に な つ て を る 。 次 に 光 明 眞 言 法 に 用 う る 阿 彌 陀 の 大 呪 に は 三 身 若 し は 四 身 の 種 子 眞 言 を 置 く と 。 舍 利 に 就 い て 釋 迦 は 大 日 の 影 像 に し て 、 是 れ 大 日 が 衆 生 を 利 益 す る 爲 の 姿 に 外 な ら ぬ 。 釋 尊 一 代 の 化 縁 盡 き て 縁 捨 即 滅 の 相 を 示 し 、 金 剛 法 界 宮 に 還 る 。 こ れ に よ つ て 釋 迦 の 舍 利 即 大 日 法 身 の 舍 利 と 習 ふ 云 云 。 こ れ .誠 .に 神 祕 の 習 ひ と 云 は な く て は な ら な い 。 次 に 智 拳 印 に 就 い て 南 云 結 臥 智 拳 印 時 左 風 指 向 外 報 身 印 也 向 丙 法 身 印 也 意 法 報 二 身 者 丙 證 外 用 二 徳 也 今 丙 外 向 方 事 可 思 合 之 と 、 こ れ に 就 い て は 言 を 附 す る こ と を 止 め る 。 若 凡 若 聖 結 印 の こ と に 就 い て 、 此 の 若 凡 若 聖 と は も と 瑜 祗 經 の 中 よ り 出 で 、 そ の 印 に 五 古 印 を も つ て 塔 印 と 習 ふ と 、 智 拳 印 を も つ て 塔 印 と 習 ふ と 普 通 の 塔 印 な
り と い ふ の と 三 種 の 異 説 に な つ て ゐ る 。 こ れ に 就 い て 海 大 徳 は 就 若 凡 若 聖 等 文 ﹂此 三 塔 何 用 其 随 一 不 苦 此 三 種 共 即 身 成 佛 印 眞 實 更 不 可 論 浅 深 也 と 。 阿 闍 梨 位 の 印 の こ と こ れ 両 部 不 二 の 印 と い ふ 。 そ の 印 の 習 に 就 い て 本 に 記 す こ と 詳 細 な れ ど こ れ も 此 處 に 出 す を 止 め る 。 非 内 非 外 の 一 心 瑜 祗 の 灌 頂 は 醍 醐 の 大 事 と す る 所 で あ る 。 こ れ よ つ て ﹁ 醍 醐 ﹂ を ﹁ 第 五 ﹂ と 表 記 す と 。 非 内 非 外 縛 と は 色 心 の 二 法 に 約 し 、 阿 鑁 の 二 字 に 約 す る 。 即 色 法 を 門 と し て 佛 性 に 入 る 人 は 阿 字 を 用 ゐ 、 心 法 を も つ て 門 と し て 佛 性 に 入 る 人 は 鑁 字 を 用 う る 。 仍 つ て 一 印 に 二 明 を 誦 す る こ と に な る 。 印 の 結 び 様 は 略 す る 。 毘 盧 遮 那 法 印 は 惠 果 御 臨 終 の 時 の 印 相 な り と 口 傅 す 、 即 彌 陀 の 定 印 と い ふ 。 但 し 此 の 定 印 は 普 通 に 云 ふ 彌 陀 の 定 印 で は な く し て 毘 盧 遮 那 彌 陀 で あ る 。 或 は 此 の 印 は 釋 迦 如 來 成 正 覺 の 印 と も 傳 ふ 又 は 説 法 の 印 と す 。 所 謂 金 剛 界 大 日 の 印 で あ る 。 地 水 火 の 三 輪 の 上 に 金 剛 座 を 敷 き 其 上 に 坐 し 、 五 智 の 賢 冠 を 被 っ て 成 佛 し た る 形 を 表 は す 。 大 指 は 則 室 で あ つ て 、 大 空 の 常 住 に し て 不 壊 な る を 座 と す る 意 、 左 の 五 指 を 五 道 に 配 當 せ ば 頭 指 は 人 道 に 當 る 。 人 道 は 即 行 者 で あ つ て 、 行 者 は 即 我 と な る 。 さ れ ば 我 既 に 五 智 所 成 の 法 界 宮 に 入 る の 義 、 是 れ 即 即 身 成 佛 の 印 と 習 ふ 。 又 前 の 地 水 火 と い ふ 三 輪 の 上 に 室 座 を 敷 い て 其 の 上 に 坐 す る 。 こ れ を 阿 彌 陀 の 印 と す る こ と 、 阿 彌 陀 は 智 惠 門 の 佛 で あ つ て . 此 の 印 は 理 智 二 佛 の 中 全 く 智 佛 の 印 に 當 る 。 故 に 説 法 の 印 と も い ひ 得 る 。 説 法 し 疑 難 を 斷 ず る 主 尊 は 彌 陀 に 外 な ら ぬ 。 こ れ に よ つ て 惠 果 釋 尊 は 同 位 の 正 覺 に あ る と 習 ふ 。 軍 茶 利 半 印 を 又 は 去 垢 の 印 と い ふ そ 覺 海 大 徳 の 事 相 五 七
覺 海 大 徳 の 事 相 五 八 の 空 輸 を も つ て 水 輪 を 捻 す る は 、 空 は 無 障 無 碍 の も の 、 又 是 れ 満 淨 の 義 を 有 す る も の 、 室 水 の 間 を 圖 に す る は 水 輪 の 形 、 誦 す る 眞 言 の 向 は 甘 露 の 意 を 有 す る 。 卸 一 切 の 物 に 於 い て 垢 障 を 除 去 す れ ば 甘 露 を 得 る の 義 を 成 ず 。 こ れ に よ つ て 此 の 意 味 を 顯 は し て 邱 を 結 ば な く て は な ら 刄 。 本 の 上 で は 猶 こ れ に 就 い て 深 秘 の 義 意 を 説 い て あ る け れ ど 今 は 略 す る 。 筆 の 便 に ま か せ て 教 相 部 の も の 、 曼 茶 羅 に 關 す る も の 、 及 び 最 後 の 種 子 に 就 い て 一 盲 を 加 へ て 記 す こ と ゝ し や う 。 大 集 經 や 楞 伽 經 の 仔 護 經 は 顯 部 の 經 か 密 部 の 經 か 、 古 來 そ の 説 を 異 に す る の で あ る け れ ど 、 大 集 經 は 唯 顯 の 經 と し 、 楞 伽 と 守 護 と の 二 經 は 三 十 七 尊 各 々 説 法 す る の 由 を 説 く 故 密 經 と す 。 勿 論 大 集 經 に は 種 々 の 陀 羅 尼 な ど を 説 く け れ ど 未 だ 大 日 の 法 を 説 か な い 。 こ れ に よ つ て 到 底 密 部 の も の た る を 得 ぬ 。 心 地 觀 經 は 大 日 の 印 盲 を 説 く 故 密 經 と す る 、 而 し そ は 大 日 の 勅 命 に よ つ て 説 く も の で 未 だ 純 密 の 經 と す る 蹕 に は ゆ か ぬ 。 楞 伽 ・ 穿 護 ・ 六 波 羅 密 等 の 經 も 亦 釋 迦 變 麹 法 身 の 所 説 に し て 雜 部 た る べ き も の で あ る 。 梵 字 四 十 二 字 門 は 皆 大 日 三 昧 の 異 名 の み な れ ぜ 、 そ の 功 徳 に 於 い て 大 日 の 三 身 は 阿 字 の 上 の 胎 藏 三 昧 中 の 三 身 で 、 釋 迦 三 身 は 訶 字 の 上 の 三 眛 中 の 三 身 で あ る 。 大 師 二 教 論 に 大 日 の 三 身 と 釋 迦 の 三 身 と 各 々 不 同 と 釋 さ れ た 、 け れ ど そ れ は 淺 深 と い ふ の で な く し て 三 昧 の 不 同 を 云 ふ た に 外 な ら ぬ 。 又 即 事 而 眞 と い ふ 。 そ は 速 疾 の 義 に 名 け る 。 け れ ど 即 事 而 眞 と は 宗 の 本 來 の 意 殊 か ら 云 へ ば 未 練 修 行 の 者 に 教 ゆ る 語 で あ つ て 、 佛 と は 何 人 ぞ と 尋 ぬ る も の あ る 時 、 そ の 人 に 向 つ て 佛 と は 汝 が 身 即 佛 と 示 す 、 則 未 佛 智 を 得 ざ る 者 の 爲 に 始 め て 本 佛 を 覺
悟 せ し め る 言 な の で あ る 。 但 し そ れ も 最 上 利 根 の 人 に 於 い て は 然 ら ず し て 心 佛 衆 生 に 於 い て 全 く 取 捨 分 別 の 念 な く 、 地 獄 ・ 天 堂 ・ 佛 性 ・ 闡 提 皆 是 れ 自 身 佛 の 名 字 の み と 大 觀 し 直 驗 す る 。 そ し て 愈 々 修 行 觀 法 を 練 逹 し 精 進 勇 猛 に し て 得 果 を 願 ひ 、 慈 悲 利 生 の 思 に 佳 し 、 弘 法 利 生 を 事 と す べ き で あ る 。 次 に 曼 荼 羅 の 内 院 外 院 何 れ も 舍 那 の 内 證 、 毘 盧 の 遍 一 切 身 の 内 の も の に 郷 な ら な い か ら 、 高 下 淺 深 の あ り 得 る 道 理 が な い 。 そ し て 金 剛 界 は 天 曼 茶 羅 の 故 に 月 輪 に 處 し . 胎 界 は 地 曼 荼 羅 の 散 に 蓮 花 に 坐 す る 。 月 輪 に 處 す る は 二 邊 を 離 れ て 上 下 二 界 の 中 間 に 住 す る 意 を 表 し 、 蓮 花 に 居 す る は 生 死 の 汗 染 を 離 る ゝ こ と を 表 す 。 又 地 は 萬 物 の 所 依 と な り 、 水 は 一 切 に 於 い て 清 淨 清 凉 の 至 極 た る べ き も の 、 其 の 中 に 生 じ た る 蓮 花 に 坐 す る こ と は 、 生 死 海 中 に あ る 吾 等 衆 生 の 全 體 が 、 即 事 而 眞 の 眞 理 に 逹 せ ん が 爲 め な る こ と を 示 す 。 月 輪 の 圓 形 な る は 破 闇 照 明 の 徳 を 表 す 、 大 室 の 輝 け る 如 く 、 自 心 に 九 識 の 闇 を 破 れ ば 、 萬 法 は 統 て 一 心 に 收 ま る 、 そ し て 諸 法 の 形 色 情 非 情 恒 沙 の 塵 敷 皆 自 心 の 功 徳 相 た る の み 、 か く て 自 心 本 性 溝 淨 の 理 水 と 萬 法 圖 明 月 輪 の 功 徳 相 と 威 慮 攝 八 し て 不 二 智 の 境 界 を な す 。 種 子 に 就 い て 、 胎 藏 界 大 日 の 種 子 は 無 點 の 阿 字 を も つ て 本 體 と す る 、 こ れ 大 悲 胎 藏 曼 茶 羅 は 一 切 衆 生 の 内 證 所 具 の 圖 像 で あ る か ら 、 衆 生 断 戚 の 由 を 顯 は ず 有 點 の 阿 字 は 用 ゐ な い で 、 本 不 生 の 眞 諦 を 表 は す 無 點 の 阿 字 を 用 う る の で あ る 。 次 に 愛 染 の 種 子 に は 吽 字 を 用 ゐ 、 染 愛 の 種 子 に はカ ク 字 を 用 う る 。 以 上 唯 覺 源 抄 に 出 つ る 海 大 徳 の 口 訣と す る も の ゝ み を 撰 び 出 し 、 一 應 述 べ 終 つ た 。 教 相 部 の も の は 除 覺 海 大 徳 の 事 相 五 九
覺 海 大 徳 の 事 相 六 〇 暗 鈔 と 對 照 し 、 一 般 宗 學 上 の 組 織 か ら 述 べ て 、 海 大 徳 の 識 見 を 詮 明 し な く て は な ら な い こ と を 思 ふ け れ ど 、 今 は そ れ が 小 僧 の 目 的 と な つ て ゐ な い の で 、 唯 簡 單 な 紹 介 位 の も の に 止 め た 。 事 相 上 の も の に 就 い て は 全 く 特 殊 な 口 訣 に 屬 す る も の 多 く 、 爲 に 一 般 事 相 學 上 の 組 織 よ り 推 究 し 、 若 し く は そ れ ら よ り 組 織 へ ま で 持 ち 來 ら す こ と の 爲 め に は 、 猶 多 く の 他 の こ れ に 類 す る 口 訣 書 の 拾 集 か ら し て か ゝ ら ね ば な ら ず 、 彼 れ 是 れ 大 邊 の 難 事 業 と も な る の で 、 今 は そ れ も 略 し た こ と を 謝 し な く て は な ら ぬ 。 就 中 、 印 法 に 關 す る も の は 、 事 相 學 上 の 堂 奥 を た ゝ く 程 の 口 訣 多 く 、 教 相 部 の 三 ケ 條 と 相 對 し て 、 海 大 徳 の 學 識 の 深 淵 高 逹 の 程 推 す る に 餘 る も の で 、 こ れ に 就 い て は 猶 研 究 を 進 め て 自 ら 將 來 を 待 ち 、 各 位 の 所 見 を も 聞 き 度 い も の と 思 つ て ゐ る 。 今 は 唯 略 す る こ と の 多 か つ た こ と 、 而 も 海 大 徳 の 口 と す る も の ゝ み を 叙 し た こ と を 許 さ れ た い の で あ る 。 五 、 鐃 欽 の 大 事 鐃欽 の 大 事 に 就 い て は 古 來 諸 師 の 相 傳 が あ る こ と に な つ て ゐ る が 、 そ の 中 に 海 大 徳 の も の が 一 本 傳 へ ら れ て ゐ る 。 そ れ は 既 に 葦 原 寂 照 和 尚 が 明 治 二 十 五 年 の 頃 、 魚 山 蔓 芥 集 要 覧 と い ふ 一 書 を 作 ら れ て 出 判 さ れ た 、 そ の 最 後 に 印 融 法 印 の 口 訣 な ど と 共 に 出 し て ゐ ら れ る の で あ る が 、 此 處 に は 古 寫 本 を 校 合 し て 出 す こ と ゝ し た い 。 小 僧 の 見 る を 得 た も の は 右 花 王 院 本 書 寫 畢 亦 丈 明 十 年 六 月 一 日 如 意 輸 寺 快 助 法 印 如 是 傅 來 如 件
と い ふ 奥 の あ る も の と 天 文 九 年 丙 子 南 呂 上 旬 書 寫 之 畢 院 家 本 散 失 之 間 重 而 求 書 之 右 學 頭 法 印 權 大 信 都 頼 全 春 秋 六 十 二 歳 と い ふ 奥 書 に な つ て ゐ る も の と の 二 本 で あ る 。 右 二 本 の 間 に も 文 句 に 多 少 の 出 入 あ り 、 葦 原 和 尚 の 出 さ れ た も の と も 出 沒 二 三 あ る を 見 る 。 而 し 校 合 の 結 果 に な る 全 文 を 出 す と 、﹁ 花 王 院 覺 海 南 證 房 口 傳 ﹂ と し て 、 鉞 定 惠 月 輪 形 也 餓 印 虚 圓 月 輪 印 也 鐃 不 二 月 輪 形 也 惣 鉞 三 部 月 粭 形 歟 口 中 舌 有 故 聲 出 何 定 惠 月 輸 打 合 或 釋 云 如 琴 管 聲 者 異 五 大 來 和 合 時 聲 自 出 也 亦 世 間 舞 樂 時 三 拍 子 云 事 大 鼓 三 拍 子 終 打 倉 三 業 一 心 相 應 義 表 也 舞 輿 拍 子 逹 非 舞 樂 成 觀 興 行 業 背 不 成 法 事 也 初 中 後 三 段 惣 別 三 部 可 意 得 後 段 三 部 亘 囀 薩 有 阿 字 無 事 鉞 鵜 薩 音 鐃 阿 三 部 歟 又 義 云囀 薩 打 第 二 度 終 音 阿 音 鳴 加 囀 薩 外 不 聞 阿 音 也 佛 部 金 蓮 丙 有 事 顕 也 鉞 翼 薩 童 鏡 阿 音 取 合 三 部 事 佛 部 外 金 蓮 二 部 有 云 事 顕 也 一 切 賛 四 智 結 也 四 智 不 出 三 部 三 部 不 出 理 智 繞 鉞 打 數 阿 薩囀 等 種 子 賛 四 智 誦 事 悉 表 法 門 賛 頭 鐃 鉞 打 始 立 事 初 入 行 者 因 果 法 界 宮 始 參 義 故 因 行 證 入 四 智 踊 新 阿 闍 梨 賛 也 云 以 上 海 大 徳 の 口 傳 と す る 所 の も の で あ る が 、 鉞 の 大 事 は 何 人 も 意 得 置 か ね ば な ら な い こ と で あ る か ら 、 以 下 少 し そ れ に 就 い て 諸 師 の 習 と 共 に 合 せ 記 す こ と ゝ す 。 上 の 文 の 初 に 於 い て ﹁ 鉞 は 定 惠 の 月 輪 ﹄ と い ひ ﹃ 鐃 は 不 二 月 輪 の 形 ﹄ と い ふ 。 こ れ を 印 融 法 印 の 口 訣 に 見 る に 鐃 は 大 日 如 來 の 常 恒 説 阿 字 大 室 の 形 で あ つ て 、 こ れ を 不 二 の 月 輪 と 名 け 又 虚 室 輪 と い ふ 。 而 し て 此 の 不 二 の 月 輪 よ り 定 惠 而 二 の 月 輪 を 出 す 。 是 れ を 鉞 と 名 つ く る と あ る 。 前 の 口 訣 の 意 味 は 一 層 剣 明 す る で あ ら う 。 即 両 の 鉞 を 鐃 よ り 取 り 出 す こ と は 覺 海 大 徳 の 事 相 六 一
覺 海 大 徳 の 事 相 六 二 阿 字 索 空 の 輪 よ り 定 惠 而 二 の 月 輪 を 出 す こ と で あ り 、 本 元 の 鐃 へ 鉞 を 收 む る こ と は 、 而 二 の 定 惠 を 不 二 の 一 元 へ 還 へ す こ と に な る 。 鉞 の 突 様 に 就 い て は 種 々 あ る け れ ど 、 そ の 數 は 常 に 一 定 で あ る 。 突 様 の こ と 進 上 人 の 流 に 於 い て は 、 樂 拍 子 に 突 く と て 長 短 な く 均 等 に 作 法 し 、 廣 澤 め 相 應 院 に は 只 拍 子 に 突 く と め る 。 醍 醐 に は 所 謂 醍 醐 鉞 と て 特 殊 の 習 に 屬 す る 。 そ の 數 は 普 通 初 段 十 五 、 中 段 三 十 、 後 段 二 十 四 と い ふ 規 定 で あ る 。 安 樂 院 宣 應 師 の 傳 ふ る 所 に よ る と 、 三 段 の 鉞 の 初 段 の 數 は 五 智 各 々 三 密 を 有 す る の 理 を 表 し て 三 五 十 五 の 數 を 突 き 、 中 段 の 數 は 五 智 各 々 六 大 を 具 す る 故 五六 三 十 、 後 段 の 二 十 四 は 六 大 四 曼 互 爲 能 生 の 義 に 約 し 、 六 大 よ り 四 曼 を 生 ず る に も あ れ 、 四 曼 よ り 六 大 を 生 ず る に も あ れ 、 共 に 四 六 二 十 四 の 數 を な す と 。 以 つ て 三 段 の 數 に 約 す る 標 幟 が 知 ら れ る で あ ら う 。 初 中 段 の 三 段 に 突 く こ と は 佛 蓮 金 の 三 部 に 配 す る の 心 と す 。 次 に 法 用 に よ つ て 鉞 に 合 し て 鐃 を 打 つ こ と が あ る 。 こ れ は 何 の 意 味 ぞ と い ふ に 、 鉞 は 三 部 各 別 の 音 を 打 つ の で あ り 、 鐃 は 三 部 悉 く 一 阿 に 歸 す る と い ふ の で 一 つ 打 つ て 音 を 出 す 。 こ れ 海 大 徳 の 口 訣 に 云 ふ 如 く 、 世 間 の 舞 樂 を す る 時 三 拍 子 と い ふ 。 太 皷 を 三 拍 子 し て 、 そ の 終 に 打 合 す の で あ る 。 こ れ は 三 業 一 心 に 相 應 す る こ と を 表 す る の で 、 舞 と 拍 子 と 相 逹 す れ ば 舞 樂 を 成 ぜ ず 、 觀 と 行 と 背 け ば 法 事 を 成 就 し な い 。 此 の 道 理 は 蓋 し 何 れ の 場 合 何 れ の 時 た り と も 眞 で あ ら う . 然 ら ば 鐃 と 鉞 と は 如 何 に 合 し て 打 っ か 、 先 初 段 の 佛 部 に 於 い て は 一 一 一 四 四 四 、 次 に 中 段 蓮 花 部 に あ り て は 四 三 三 四 三 三 四 三 三 、終 の 段 金 剛 部 に
於 い て は 二 二 四 二 二 四 二 二 四 で あ る 。 即 初 段 帳 て は 鉞 一 つ に 鐃 一 つ 、 乃 至 鉞 の 四 つ 目 に 鐃 一 つ 、 中 段 で は 鉞 の 四 つ 目 に 鐃 一 つ . 乃 至 鉞 の 三 つ め に 鐃 一 つ 、 後 段 で は 鉞 の 二 つ 目 に 鐃 一 つ 、 乃 至 鉞 の 四 つ 目 に 鐃 一 つ と い ふ こ と に な つ て ゐ る 。 こ れ を 圖 示 せ ば 初 段 中 段 後 段 而 し て 初 段 の一一 一 は 佛 蓮 金 、 阿 薩 婆 の 三 部 三 字 各 別 の 心 を 表 し 、 次 の 四 四 四 は 佛 蓮 金 の 三 部 各 別 に 於 い て 因 ・ 行 ・ 證 ・ 入 の 四 位 、 發 心 ・ 修 行 ・ 菩 提 ・ 涅 槃 の 四 轉 あ る 旨 を 表 し て ゐ る の で あ る 。 中 段 の 四 三 三 と す る 四 に は 前 と 同 じ ぐ 三 部 各 別 に 因 ・ 行 ・ 證 ・ 八 の 四 位 四 轉 の 意 を 示 し 、 三 に は 三 部 の 看 を 發 す る と 習 ふ 。 後 段 の 二 二 四 と す る こ と 、 海 大 徳 の 上 記 の 口 訣 に よ る に 、 鉞 の囀 薩 と い ふ 二 音 と 、 鐃 を 打 つ 時 に 發 す る 一 音 阿 と を 加 へ て 三 部 と す る 、 若 し は囀 薩 と 打 つ 第 二 度 の 終 の 音 起 阿 の 音 を 鳴 ら し 加 へ て囀 薩 と い ふ 一 ご音 の 外 に 阿 の 音 を 別 に 聞 か な い ヤ 即 蓮 金 の 二 部 の 内 に 佛 部 の 有 る と い ふ 意 味 を 顯 は す と い ふ の で あ る 。 怛 し 前 の 如 く 鉞 の 鵬 薩 の 二 音 と 鐃 の 阿 の 音 と を 加 へ て 三 部 と す る な ら ば 、 そ の 時 は 蓮 金 二 部 の 外 覺 海 大 徳 の 事 相 六 三
覺 海 大 徳 の 事 相 六 四 に 佛 部 の 存 す べ き 理 を 明 に し て ゐ る 。 或 一 傅 の 口 訣 を 見 る に 鉢 は 發 心 ・ 修 行 ・ 菩 提 ・ 涅 槃 の 上 智 の 聾 で あ つ て 、 鐃 は 因 ・ 行 ・ 證 ・ 入 等 の 所 證 の 理 即 阿 で あ る と い ふ て 、 そ の 両 者 を 區 別 し て 見 る も の も あ る 。 此 の 場 合 に 於 い て は 恒 沙 無 量 の 寓 徳 一 阿 に 歸 す る 理 を 詮 明 に す る 。 後 段 の 四 の 數 も 前 々 と 同 じ く 、 復 此 の 意 味 を 存 し て を る 。 そ れ ら の 數 に 應 じ て 鐃 を 持 つ て 一 つ 打 つ こ と は 夫 れ 夫 れ の 三 部 が 皆 一 阿 に 歸 し 、 四 轉 が 皆 一 阿 に 還 る こ と を 意 昧 す る の で あ る 。 さ れ ば 一 度 の 鉢 を 突 く に も 決 し て 輕 々 に 扱 ふ こ と は 許 さ れ な い 。 慇 懃 至 誠 の 心 を も つ て 打 つ の で な く て は な ら ぬ 。 そ れ は 振 鉛 と 同 じ く 一 一 の 音 に 從 つ て 諸 佛 を 驚 覺 し 奉 る の で あ り 、 三 部 の 聲 を も つ て 佛 蓮 を 供 養 し 奉 る の で あ る か ら 。 印 融 法 印 の 口 訣 を 見 る に 、 或 説 に 初 段 の 初 の 三 聲 は 三 部 三 身 の 義 を 表 し 、 次 に 四 四 四 と 四 が 三 反 相 綾 く は 四 種 法 身 各 々 三 身 を 具 す る こ と を 示 し 、 中 段 に 四 三 三 を 三 度 打 つ は 三 身 四 種 法 身 を 顯 は す こ と を 示 す 。 そ し て 後 段 に 二 二 四 を 三 度 打 つ は 、 理 の 十 六 尊 と 智 の 十 六 尊 と 合 し て 三 十 二 尊 、 三 度 は 體 相 用 の 三 大 を 表 す る 。 而 も 體 は 大 日 、 相 は 阿 闔 、 用 は 賢 生 ・ 彌 陀 ・ 釋 迦 で あ つ て 、 こ れ は 又 五 智 で あ り 、 三 十 七 尊 説 法 の 義 で あ る 。 法 事 に 鐃 鉞 を 打 つ て 衆 會 の 耳 目 を 驚 か す は 、 大 衆 を 威 動 し 悉 く 普 門 の 大 日 曼 荼 羅 の 境 界 を 實 現 す る の 義 で あ る と 。 次 に 猶 讃 に 就 い て 、 四 智 ・ 心 畧 の 二 讃 を 諸 尊 に 通 じ て 用 う る 。 こ れ 此 の 二 讃 は 金 胎 両 部 の 大 日 讃 で あ つ て 、 全 く 諸 尊 に 通 用 す る も の で あ る 。 何 と な れ ば 大 日 は 總 徳 、 諸 尊 は 別 徳 で あ つ て 、 そ の 内 證 は 不 二 一 如 で あ る 。 さ れ ば 諸 佛 ・菩 薩 ・ 明 王 ・ 天 等 に 至 る ま で 、 總 徳 の 讃 を も つ て 別 徳 の 諸 奪 に 通 用 せ し む る 、
そ し て 第 三 段 に 至 つ て 當 尊 の 部 主 の 讃 を 用 ゐ (前 讃 の 時 ) 、 若 し は 諸 尊 別 徳 の 讃 を 用 う ( 後 讃 の 時 ) 。 或 は 別 徳 の 讃 之 な き 尊 に は 前 讃 の 第 三 段 に 不 動 の 梵 讃 を 用 ゐ 、 後 讃 の 第 三 段 に 部 主 乃 至 は 佛 讃 を 用 う る 。 或 は 前 讃 は 修 生 始 覺 門 、 後 讃 は 本 有 本 覺 門 だ と い ふ 習 ひ も あ る 。 且 つ 四 智 讃 は 一 切 諸 讃 の 惣 結 で あ り 、 そ の 四 智 は 畢 竟 三 部 を 出 で す 、 三 部 は 理 智 の 二 に 外 な ら ぬ 。 即 鐃 鉢 の 阿 薩 瞬 と い ふ 三 種 子 と 、 讃 の 四 智 と 誦 じ 合 せ 、 そ こ に 聲 佛 事 を 成 ず る こ と に な る 。 行 者 施 主 皆 行 因 至 果 、 法 界 宮 の 心 殿 に 到 り 、 因 行 證 入 の 法 門 を讃 歎 し 實 證 す 。 庭 儀 に 於 い て 進 列 の 場 合 で あ れ 、 還 列 の 場 合 で あ れ 、 讃 頭 先 づ 始 に 立 ち 鉢 を 取 り 、 鐃 持 ち は 次 い で 鐃 を 取 る 。 こ れ ら の 式 も や は り 如 上 の 意 昧 を 存 す る も の で あ つ て 、 因 行 證 入 の 四 智 を 誦 じ て 大 阿 闍 梨 若 し は 新 阿 闍 梨 を 賛 ず る の で あ る 。 以 上 海 大 徳 の 口 訣 に よ つ て 鐃 鉞 の 大 事 を 一 應 記 し 終 つ た が 猶 一 二 附 言 し て 置 き た い 。 そ れ は 前 讃 の あ つ た 時 、 後 讃 に 於 い て 返 し 鉞 を 突 く こ と で あ る 。 返 し 鉞 は 後 讃 の 初 段 に 於 い て 四 四 四 の 十 二 、 中 段 は 同 じ く 三 十 、 後 段 は 二 二 四 を 三 度 繰 り 返 へ し 突 い て 後 に 四 四 四 一 一 一 と 突 き 返 へ す の で あ る 、 さ れ ば 総 數 三 十 九 と な る 。 則 こ れ は 後 段 の 普 通 の 數 に 更 に 初 段 の 鉞 を 逆 に 突 く と い ふ の で 返 し 鉞 の 名 が あ る 。 前 讃 と い ふ の は 一 般 に 知 ら れ て ゐ る 如 く 唱 禮 の 後 に 唱 ゑ る 讃 の 事 で 導 師 の 表 白 の 前 に 唱 ふ る 讃 は 傳 供 と い ふ べ き 習 に な つ て ゐ る 。 又 前 に 部 主 の 讃 を 用 う と い ふ た が 、 部 主 の 讃と は 當 尊 の 所 住 を 見 て 金 寳 蓮 羯 の 四 種 曼 茶 羅 中 の 何 れ な る か を 割 じ 、 金 剛 部 に 屬 す る 尊 に は 東 方 の 讃 鳥 寳 部 に 屬 す る 尊 に 越 南 方 の 讃 、 遘 花 覺 海 大 徳 の 事 相 六 五
覺 海 大 徳 の 事 相 六 六 部 所 住 の 尊 に は 西 方 の 讃 、 羯 磨 部 所 住 の 尊 に は 北 力 の 讃 を 用 う る と い ふ 風 に 、 各 尊 の 部 屬 に 應 じ て 纉 を 用 う る こ と の 不 同 な る を い ふ た の で あ る 。 鉞 の 印 は 海 大 徳 の 口 訣 に も あ る 如 く 虚 圓 月 輪 の 印 と す 。 六 、 口 訣 二 僚 此 處 に 出 し た い と 思 ふ こ と は 、 第 三 節 に 出 し た 諸 口 傅 鈔 と い ふ 一, 軸 の 寫 本 の 終 り に 出 さ れ て ゐ る 海 大 徳 悉 曇 第 十 五 章 に 關 す る 口 訣 の 一 條 で あ る 。 そ の 文 は 覺 物 語 云 第 十 五 章 ノ ア ウ キ ヤ 章 エ 云 ク と い ふ 何 に 初 ま つ て ゐ る 。 全 文 を 此 處 に 轄 載 す る こ と は 、 悉 曇 の 研 究 者 に と り て 有 意 義 の こ と ゝ 思 ふ け れ ざ 、 そ の 中 に は 悉 曇 字 數 多 あ り て 、 出 す こ と の 困 難 な る を 思 ひ 略 す る 。 知 ら ん と す る 人 は 直 接 原 本 を 見 ら れ た い も の で あ る 。 今 野 山 増 福 院 に 所 藏 せ ら れ て ゐ る 。 右 の 諸 口 傳 鈔 と い ふ の は 、 寛 保 二 壬 戌 正 月 二 十 八 日 に 妙 瑞 師 の 寫 さ れ た も の に な つ て ゐ て 、 今 の 口 訣 は 大 し て 長 い も の で は な い 。 次 に 南 山 奥 院 の 習 ひ に 就 い て 、 深 秘 の 口 訣 が あ る 。 そ れ は 明 算 ・ 教 眞 ・ 明 眞 ・ 濟 俊 ・ 實 覺 ・ 源 照 ・ 覺 海 ・ 道 範 ・ 明 澄 と い ふ 相 傳 に な つ て ゐ る と 傳 ふ る も の で あ る け れ ど 、 こ れ は 猶 研 究 を 要 す べ き も の 多 く 、 皮 的 價 値 も に は か に 判 定 出 來 な い の で 、 後 日 の 研 究 に ゆ づ り 、 今 は 略 す る こ と ゝ す 。 自 分 の 見 た の は ﹃ 高 野 山 口 傳 ﹄ と い ふ 薄 い 寫 本 の 中 で 見 た の で 、 そ の 寫 本 は 徳 川 末 期 の も の で あ つ た か と 思 ふ 。 若 し 讀 者 諸 賢 .に し て そ ん な 風 の も の で、 別 の 本 を 發 見 せ ら れ た な ら ば 、 若 し は 御 存 知 な ら ば 知 ら し て 戴 き 度 い も の
で あ る 。 以 上 海 大 徳 の 事 相 と い ふ こ と で 、 僅 か ば か り の 得 ら れ た る 材 料 を も つ て 、 一 通 り 記 し 終 つ た 。 全 く そ の 口 訣 類 も 殘 る も の 少 く 、 或 は 最 初 よ り 無 か つ た の か も 知 ら な い が 、 次 に 海 大 徳 間 講 の 表 白 を 記 し て 本 稿 を 終 り た い 。 七 、 覺 海 大 徳 問 講 表 白 野 峰 名 徳 博 覺 海 の 條 下 に ﹃ 住 二 花 王 院 輔張 二 講 席 一﹂ 云 云 と い ひ 、 傳 燈 廣 録 の 同 じ 條 下 に ﹃ 入 二 高 野 山 一孜 孜 鑽 仰 義 辨 飛 花 ﹄ と い ふ 。 こ れ ら 海 大 徳 の 南 山 勸 學 會 勃 興 に 就 い て の 功 績 は 、 水 原 師 が 草 せ ら れ た と 聞 い た の で 此 處 に は 略 す る 。 今 は 唯 南 山 教 學 勃 興 の 先 驅 者 た り し 海 大 徳 の 偉 風 を 追 想 し 、 そ の 徳 光 を 想 起 す れ ば 足 り る 。 そ し て 後 世 南 山 の 學 徒 は 、 我 海 大 徳 を 追 戀 す る の 餘 り に か 、 大 徳 の 爲 に 特 に 問 講 の 席 を 開 く に 至 れ り 、 久 し く そ れ が 行 は れ て ゐ た 。 而 し 極 く 近 年 に 至 つ て は そ れ も 止 ん で 行 は れ な く な つ た 。 そ れ だ け 南 山 の 學 風 廢 退 せ り と 云 ふ べ き の み 、 そ の 間 講 の 席 に 於 い て 用 ゐ ら れ て ゐ た 講 士 の 表 白 が あ る の で 、 今 は そ の 全 文 を 、 少 し 長 く は な る け れ ど 、 記 し て も つ て 海 大 徳 に 報 恩 の 微 志 を 表 し た い 。 但 し 題 は 本 節 の 初 に 出 し た の で 今 は 記 さ な い 。 講 經 談 論 之 庭 報 恩 謝 徳 之 砌 爲 法 昧 食 受 惠 業 證 明 冥 衆 定 降 臨 影 向 然 則 奉 姶 外 金 剛 部 五 類 諸 天 三 界 所 有 天 王 天 衆 殊 當 山 鎭 將 密 教 擁 護 丹 生 高 野 両 大 權 現 十 二 王 子 百 二 十 伴 部 類 眷 屬 勤 請 諸 神 總 日 域 朝 中 大 小 神 祗 乃 至 自 界 池 方 權 實 二 類 併 奉 爲 法 樂 華 嚴 威 光 倍 増 一 覺 海 大 徳 の 事 相 六 七
覺 海 大 徳 の 事 相 六 八 切 神 分 般 若 心 經 大 般 若 經 名 丁 奉 爲 弘 法 太 師 等 三 國 列 祖 普 賢 行 願 皆 令 滿 足 摩 訶 毘 廬 遮 那 賓 號 丁 奉 爲 金 輪 聖 皇 竇 祚 長 遠 藥 師 佛 名 丁 爲 先 徳 上 繝 増 邁 佛 道 阿 彌 陀 賢 號 丁 爲 伽 藍 安 穩 院 家 繁 榮 四 大 天 王 名 丁 為 護 持 大 衆 悉 地 圓 滿 大 日 經 名 丁 翁 列 座 諸 徳 各 願 成 就 多 聞 天 王 名 丁 爲 法 界 衆 生 平 等 援 濟 釋 迦 牟 尼 寳 號 丁 爲 所 願 成 辨 金 剛 手 菩 薩 名 丁 愼 敬 白 両 部 理 智 法 身 如 來 受 用 變 化 諸 薄 伽 梵 頓 覺 成 佛 甚 深 妙 典 大 小 權 實 切 聖 教 普 賢 金 剛 手 等 諸 大 薩 捶 不 動 降 三 世 等 諸 忿 怒 尊 座 輝 入 定 遍 照 金 剛 和 光 垂 跡 四 處 權 現 總 佛 眼 所 照 恒 沙 鹿 數 一 切 三 寳 境 界 而 言 夫 以 曩 組 投 金 杵 傅 秘 教 于 日 東 淋 明ト 玉 殿 赫 威 光 乎 南 嶺 誠 是 賢 聖 通 規 之 本 誓 神 組 合 應 之 契 盟 尤 可 稱 下
佛 々 道 同 轉 法 輪 處 界 々 図 成 摩 尼 賢 樓 下 者 乎 爰 當 院 先 徳 上 綱 者 慧 燈 高 點 而 影 聾 八 葉 峯 智 水 遠 流 而 澤 及 四 海 外 其 行 其 徳 不 可 不 敬 矣 依 茲 院 主 藤 下 同 心 諸 徳 開 講 經 論 談 之 梵 席 表 報 恩 謝 徳 之 懇 念 若 爾 先 師 大 徳 者 覺 月 弼 朗 増 徴 細 清 淨 光 心 蓮 倍 々 潔 添 自 性 宛 然 色 加 之 護 持 法 主 所 願 圓 満 列 座 諸 徳 各 成 悉 地 乃 至 法 界 利 益 平 等 至 心 勸 請 遮 那 尊 四 方 四 佛 諸 善 逝 法 身 丙 證 深 妙 典 八 萬 十 二 諸 聖 教 金 剛 手 等 諸 薩 捶 降 三 世 等 諸 忿 怒 梵 釋 四 王 諸 護 法 外 金 剛 部 威 徳 天 還 念 本 誓 來 影 向 證 知 證 成 講 演 事 至 心 懺 悔 無 始 來 自 他 三 業 無 量 罪 無 明 顛 倒 諸 迷 惑 造 作 四 重 五 逆 等 乃 至 謗 法 闡 提 罪 合 對 佛 前 皆 懴 悔 懺 悔 已 後 夏 不 作 我 等 至 心 受 三 歸 歸 三 賢 竟 持 十 善 乃 至 如 來 一 實 戒 生 々 世 々 無 闕 犯 ン 願 我 生 々 見 諸 佛 世 々 恒 聞 深 妙 典 恒 修 不 退 菩 薩 行 疾 證 無 上 大 菩 提 大 毘 盧 遮 那 成 佛 神 變 加 持 經 卷 第 一 入 眞 言 門 住 心 品 第 一 將 今 釋 此 經 任 常 法 則 可 分 三 門 初 大 意 者 大 日 如 來 坐 法 昇 而 照 機 住 秘 宮 而 投 藥 輿 自 性 所 成 眷 屬 自 受 法 樂 故 説 此 三 覺 海 大 徳 の 事 相 六 九
覺 海 大 徳 の 事 相 七 〇 密 門 是 則 大 意 也 次 題 目 者 大 毘 廬 遮 那 成 佛 神 變 加 持 經 因 陀 羅 王 者 梵 漢 和 雜 之 翻 也 大 成 神 變 加 持 經 王 者 唐 言 餘 是 梵 語 也 次 入 文 判 釋 者 凡 此 經 有 多 本 廣 本 十 萬 碩 畧 本 三 千 餘 碩 也 且 就 今 經 分 三 段 者 自 初 如 是 我 聞 至 牙 種 生 起 二 十 五 行 十 二 字 是 序 説 分 也 自 爾 時 執 金 剛 秘 密 主 至 世 出 世 持 誦 品 畢 正 宗 屬 類 品 以 下 流 通 也 一 經 科 釋 雖 日 蘭 菊 區 然 三 門 一 義 取 要 如 斯 抑 モ此惠 業 者 先 徳 綱 増 進 佛 道 之 要 路 護 持 學 侶 報 酬 荷 恩 之 重 席 也 伏 以 先 匠 大 徳 上 綱 者 事 教 中 興 之 碩 才 名 望 徹 今 古 觀 行 薫 習 之 芳 徳 精 英 偏 都 鄙 是 ヲ 以 テ 瀉 瓶 於 密 室 之 輩 師 資 同 掬 彼 遺 流 挑 鉦 於 學 窓 之 士 淮 邇 鎭 被 其 餘 光
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誰 人 逍 慕 鴻 恩 何 處 欽 中 仰 鳳 擧 仰 觀 夫 郡 生 能 引 無 礙 光 佛 周 籠 塵 刹 駟 而 銷 退 眞 覆 両 諦 之 闇 蔽 先 徳 所 尊 悲 願 金 剛 専 遊 六 道 鱒 而 施 與 現 當 二 世 之 寳 材 依 正 冥 合 之 勝 會 騨 明 佛 陀 定 降 赴 加 持 感 應 篤 信 滿 世 豈 唐 捐 重 テ 乞 フ 鐵 国 沙 界 功 徳 展 轉 有 頂 無 間 齊 成 佛 道 抑 々 返 講 肆 有 多 文 段 其 交 如 何 南 無 大 毘 廬 遮 那南 無 大 毘 廬 漉 那 成 佛 神 變 加 持 經 卷 第 一 入 眞 言 門 主 心 品 第 一 影 向 神 祗 増 威 光 先 徳 上 綱 増 法 樂 護 持 大 衆 成 悉 地 法 界 衆 生 同 利 釜 廻 向 金 一 丁 三 種 眞 言 各 モ 遍 ア バ ン ラ ン カ ン ケ ン ア ビ ラ ウ ン ケ ン ア ラ ハ シ ヤ ナ ウ 次 光 明 眞 言 廿 一 反 以 上 畢 奥 云 昔 元 治 元 甲 子 年 二 月 二 十 二 日 晝 從 本 中 院 谷 餐 蓮 院 出 火 其 砌 當 院 類 燒 依 之 表 白 等 迄 燥 亡 故 補 之 寫 得 者 也 花 王 院 一 世 宥 仁 (朱 ) 同 年 六 日 調 之 畢 ︹ 附 記︺ 覺 海 大 徳 事 相 附 記 第 六 節 に 出 し た 南 山 奥 院 の 大 事 に 就 い て 、 其 後 有 力 な 資 料 の 一 二 を 得 た の で 次 號 に 、 ﹁ 道 範 大 徳 の 高 野 秘 事 ﹂ と 題 し て 記 し た い と 思 ふ 。 猶 濟 俊 ・覺 海 ・ 道 範 と 相 承 す る 口 訣 の 一 二 を 原 文 の ま ゝ 附 記 す る こと き す 。 ﹁ 問 智 證 大 師 請 來 , 愛 染 王 正 交 弓 箭 附 勢 也 此 説 有 其 證 耶 、 答 件 像 依 上 染 愛 王 品 歟 覺 海 大 徳 の 事 相 七 一
七 二