On Nagata’s example of an infinitely generated ring of invariants
向井 茂 (MUKAI, Shigeru) ∗
永田は[8]において,偶数変数多項式環へのベクトル群 Cn の標準的なべ き単作用
(t1, . . . , tn) ∈ Cn C[x1, . . . , xn, y1, . . . , yn] =: S xi →xi
yi →yi+tixi , 1 ≤i ≤n (1)
の余次元3部分空間G ⊂ Cn への制限を考察した.そして,n= 16 で Gが 一般のときに不変式環 SG が有限生成でないことを示した.(dimG = 13) 筆者は[5]第2章において,その議論を改良して n = 9 のときにも有限生成で ないことを示した 1(dimG= 6).本稿ではこれにいくつかの注意を与える とともに(§4),さらに進めて次を示したい.
定理 1 18変数多項式環への作用(1)の一般の3次元部分空間 G ⊂C9 に 関する不変式環 SG も有限生成でない.
代数群の多項式環への線型作用に対する不変式環の有限生成性は Hilbert
の第14問題と呼ばれる.定理より加法群 Ga の3個の直積に対してこの答は 否定的である.一方,Ga 自体に対して答は肯定的である(Weitzenb¨ock の 定理[15][12]).2 よって加法群の直積に対する第14問題では次が未解決で残っ ている.3
問題 Ga×Ga の多項式環への線型作用に対して不変式環は有限生成か? 4
∗Supported in part by the JSPS Grant-in-Aid for Scientific Research (A)(2)10304001.
1講演の後(10月15日)に同様のこと(n= 9,dimG= 6)がSteinberg氏[14]によって既になされ ていたことを寺西氏に教えていただいた.この場を借りて訂正し感謝する.
2Ga の線型でない作用に対する反例についてはRoberts[11]を見よ.
3Hilbert自身の創始した方法でもって、簡約代数群に対しては肯定的である.例えば,拙著[5]を参照された い.
4講演の際にも報告したが,作用(1)の2次元部分空間Gに関する不変式環は有限生成である.これ以外 にも自明でない肯定的例があるが,ここでは扱わない.
一般に作用(1)を余次元 r の部分空間Gへ制限したものの不変式環 SG
に対しては3本足の n 頂点 Dynkin 図形 T2,r,n−r5
r n−r
◦ ◦ − − − ◦ ◦ − − − ◦ ◦ ◦( ×)
◦
のルート系が対応する. よく知られているように,これの Weyl 群は
1 2 + 1
r + 1
n−r ≤ 1 (2)
のときに無限群になる.そして,G が一般なときこのせいで不変式環 SG が 有限生成でなくなる.定理はこのなかで dimG= n−r が最小になる場合で ある.また,(2)において等号の成立する次の3つの場合(アフィンDynkin
図形)の一つである.
(n, r) (9,3) (9,6) (8,4)
dimG = n−r 6 3 4
Dynkin 図形6 E˜8 E˜8 E˜7
幾何 P2の9点爆発 P5の9点爆発 P3の8点爆発
無限生成環には病的なイメージをいだくかもしれないが,ここで扱うのは 楕円曲線 C 上の2点 p, q からえられる2重次数付環
m,n∈Z
H0(C,OC(mp+nq))
のように幾何的に自然なものである.これは直線束 OC(p−q) ∈ Pic0C が 位数無限ならば有限生成でない.7実際,2重次数付環としての台は
{m+ n > 0} ∪ {(0,0)} ⊂ Z2
5図には対応する表現を示すために頂点×を追加したもの(拡大Dynkin図形)を書いた.Weyl群がレベ ル1の不変式の全体にどう「作用」するかを表す.
6最初の2つはは同じDynkin図形であるが,拡大Dynkin図形は異なる.
7この例はRees [10]以来いろんな所に顔を出している.
で,半群として有限生成でない.よってこの環は有限生成でない.8
1 永田同型
余次元 r の部分空間 G ⊂ Cn がr個の斉次1次方程式系
n i=1
a(1)i ti = n
i=1
a(2)i ti = · · · = n
i=1
a(r)i ti = 0 (3)
で定義されているとしよう.定義式の変数tiに yi/xi を代入してえられる r
個の有理式
n i=1
a(1)i yi xi,
n i=1
a(2)i yi xi, . . . ,
n i=1
a(r)i yi
xi. (4)
は G 不変である.S を x1, . . . , xn で局所化した環
C[x±11, . . . , x±n1, y1, . . . , yn] = C[x±11, . . . , x±n1, y1
x1, . . . , yn xn]
に (t1, . . . , tn) ∈ G は
yi
xi → yi xi + ti
で作用する.9 よって,局所化した作用の不変式環は C[x±11 , . . . , x±1n ] 上
(4)で生成されている.これらに単項式 n
1 xi を掛けて分母を払ってえら れる不変式 J(1)(x, y), . . . , J(r)(x, y) で生成されるSGの部分(多項式)環を
R とする.問題は R[x1, . . . , xn] ⊂SG の差であるが,これが幾何的に記述 できる.10
8この環はアフィンDynkin図形A˜1◦=◦に関係する(§4を参照せよ).
9x1, . . . , xn は不変式だからこれは可能である.
10講演で話したように,r= 1の場合に両者は一致する.
まず,
SG = S[x−11, . . . , x−n1]G∩ S = R[x±11, . . . , x±n1]∩S (5)
に注意しよう.J(1)(x, y), . . . , J(r)(x, y) の線型結合で 単項式y1n
i=2xi を 含まないものが (r−1) 次元ある.これらで生成される R のイデアルを I1, 同様に I2,· · ·, In を定める.I1 に属するものは x1 で割ることによって不変
(多項)式がえられる.より一般に,共通部分
I1b1 ∩ · · · ∩Inbn, (b1, . . . , bn ≥ 0)
に属するものは単項式 xb11· · ·xbnn で割ることにより不変式がえられる.あと 少しの議論と(5)より次をえる.
命題 2 ([8],[7]) 不変式環 SG は拡大多重Rees環
R[x1, . . . , xn] +
b1,...,bn≥0
(I1b1 ∩ · · · ∩Inbn)x−1b1· · ·x−nbn ⊂ R[x±11, . . . , x±n1]
と一致する.
J(1)(x, y), . . . , J(r)(x, y) を斉次座標とする射影空間 Pr−1 = ProjR を 考えよう.上で定義したイデアル Ii,1≤ i ≤ n, は点
pi := (a(1)i : a(2)i : · · · :a(r)i ) ∈ Pr−1
で消える多項式の全体である.以下,これらの n 点は相異なるとしよう.そ して p1, . . . , pn を中心とする爆発
π : X = XG −→ Pr−1
を考える.XG の同型類は G の定義式(3)によらない.(r−1) 次元射影 的非特異代数多様体で,これの Picard 群は超平面の引き戻し h と例外因子
ei を基底とする階数 n+ 1 の自由アーベル群である.
さて,すべての直線束の大域切断の空間の直和
a,b1,...,bn∈Z
H0(X,OX(ah−b1e1 − · · · −bnen))
L∈PicX
H0(X, L) (6)
は環になる.これをX の全座標環(totalcoordinate ring)と呼び,T C(X)
で表す.今の場合,T C(X)は上の拡大 Rees 環に同型である.より正確には それに R の自然な次数付けを加えて n+ 1 重次数付環にしたものである.
命題 3 不変式環 SG は爆発 XG の全座標環 T C(XG) と同型である.11
2 不変式のレベル
作用(1)は線型作用なので多項式の全次数を保つ.よって不変式環は全次 数でもって次数付けられている.また f(x, y) が G不変式なら,
f(αx1, . . . , αxn, y1 + αt1x1, . . . , yn+αtnxn)
= f(αx1, . . . , αxn, y1, . . . , yn)
が成立する.よって,f(αx, y) も G不変式である.これより SG は x に関 する次数と y に関するそれで2重に次数付けられている.
定義 2n変数多項式 f = f(x, y) ∈ S に対して
l(f) := degxf −(dimG−1) degyf ∈ Z
を f のレベルと言う。
例(1)x1, . . . , xn はレベル1の不変式である.
(2)前節の不変多項式 J(1)(x, y), . . . , J(r)(x, y) は,x に関して n−1
次,y に関して線型である.よって,レベルは G の余次元 r に等しい.
命題3の同型で J(1)(x, y), . . . , J(r)(x, y) は H0(X,OX(h)) の元に,xi
は H0(X,OX(ei)) にうつる.よって次をえる.
補題 4 H0(X,OX(ah−b1e1 − · · · −bnen)) にうつる不変式 f ∈ SG に対 して次が成立する.
l(f) =ra− n
i=1
bi, a = degy f
3 定理の証明の概略
楕円曲線 C/Γ,Γ = Z+Zτ, を6次の完備線型系,例えば ℘関数とのその高 次導関数,による射
C/Γ −→P5, z → (1 :℘(z) : ℘(z) : · · · : ℘(v)(z))
でもって P5 に埋め込み,それの像を C ,9点 c1,· · ·, c9 ∈ C の像を
p1, . . . , p9 ∈ C とおく.また,C9の3次元部分空間を
G =
(t1, . . . , t9) 9
i=1
ti = 9
i=1
℘(ci)ti = · · · = 9
i=1
℘(v)(ci)ti = 0
と定める.次が定理1のより精密な形である.
定理 5 c1,· · ·, c9 ∈ C はΓ を法として Z 上1次独立,すなわち,
Z9 −→C/Γ, (b1, . . . , b9) → 9
i=1
bici, は単射 (7)
と仮定する.このとき,作用 G C[x1, . . . , x9, y1, . . . , y9] の不変式環は 有限生成でない.
§1 を復習しよう.不変有理式
9 i=1
yi xi,
9 i=1
℘(ci)yi xi,
9 i=1
℘(ci)yi xi, . . . ,
9 i=1
℘(v)(ci)yi xi.
に単項式 9
1xi を掛けて分母を払ったものがJ(1)(x, y), . . . , J(6)(x, y) ∈ SG
で,これらで生成される部分環が R である.そして,拡大 Rees 環
R[x1, . . . , x9] +
b1,...,b9≥0
(I1b1 ∩ · · · ∩I9b9)x−b1 1· · ·x−b9 9 ⊂ R[x±11 , . . . , x±19 ]
と不変式環 SG が一致する.
言い換えるとSG は P5 の9点 p1, . . . , p9 を中心とする爆発 X の全座標 環 T C(X) と同型であるが,今の場合,9点の取り方より C(またはそれの
X における固有変換)に制限する環準同型写像
T C(X) −→ T C(C;p1, . . . , p9)
|| ||
SG
a,b1,...,b9∈ZH0(C,OC(a)⊗ OC(− 9i=1bipi))
(8)
が考えられる.補題4よりレベル l の不変式は C 上の次数 l の直線束の大域 切断にうつる.
さて,無限個の不変式の構成について簡単に述べる.
定義 不変式のr(≥ 2)次元空間V ⊂ SGとr個の零でない不変式f1, . . . , fn∈ SG
の組 (V;f1, . . . , fr) は,すべての添字集合 I ⊂ {1, . . . , r} に対して,V の 元で
i∈I fi で割り切れるものの全体のなす部分空間の余次元が I の元の個 数に等しいときに裏返し可能と言う.
このような組が与えられたとき,(r−1)個の積 f1· · ·fˇi· · ·fr で割り切れ る V の元が定数倍を除いて一意に定まる.これをgi としよう.これら全ての 積 g1· · ·gn は積 f1· · ·fr の (r−1)乗で割り切れる.また,一個を除いた積
g1· · ·gˇi· · ·gr は f1· · ·fr の (r −2)乗で割り切れる.そこで,これらの商
g1· · ·gˇi· · ·gr
(f1· · ·fr)r−2, 1≤ i ≤ n
で生成される SG の部分空間を V とおく.このとき,V と
gi
f1· · ·fˇi· · ·fr, 1≤ i ≤ r (9)
の組を (V;f1, . . . , fr) の裏返しという.なお,n ≥ r = dimV ときの
(V;f1, . . . , fn) が裏返し可能とは,r個の添字集合 I ⊂ {1, . . . n} すべて
に対して (V;fi, i ∈ I) が裏返し可能と定める.また,(V;f1, . . . , fn) の
f1, . . . , fr に関する裏返しとはVと(9)ともとのままの fi, r+ 1 ≤ i ≤ n,
の組を言う.他の添字集合 I に対しても同様である.
定理の証明ではr = 6, n = 9とする.J(1)(x, y), . . . , J(6)(x, y)の生成する
SG の6次元部分空間V と当り前の不変式x1, . . . , x9 の組 (V;x1, . . . , x9)が 裏返し可能である.これをx1,· · ·, x6 で裏返したものを(V(1) : f1(1),· · ·, f9(1))
とする.このとき,これも裏返し可能である.f1(1),· · ·, f6(1) で裏返すとも とに戻ってしまうので,それ以外の6つ組でもって裏返す.こういうこと をくり返していく.12 何回も裏返しが可能なのことや,えられる不変式の
C への制限が零でないことは(7)で保証される.このようにしてえられる
(V(i) : f1(i), . . . , f9(i)) において,V(i) のレベルはいつも6で,9個の不変式
f1(i), . . . , f9(i) はレベル1で保たれる.一方,いつも y次数の小さい順に6個 を選んで裏返しをするようにしておくと,f1(i), . . . , f9(i) の y次数の最大は着 実に増加していく.補題4よりこれらは T C(C;p1, . . . , p9)の無限個の相異 なるレベル1直和成分にうつる.一方,仮定(7)より T C(C;p1, . . . , p9)
のレベル0部分は定数しかない.よって,不変式環 SG の C への制限写像
(8)による像は有限生成でない.特に,SG自身も有限生成でない.
12(V;x1, . . . , x9)に添字の置換と裏返しでもってWeyl群W( ˜E8)を作用させると言うこともできる.
4 余次元3の場合についての注意
全座標環 T C(X)
L∈PicX H0(X, L) の多重次数付環としての台
{L ∈ PicX|H0(X, L) = 0}
は効果的因子(effective divisor)全体のなす半群 EffX であることに注意 しよう.これが半群として有限生成でなければ,環 T C(X) も有限生成でな い.定理1は Weyl 群の作用を使ってこの半群が有限生成でないことを示す という方針で証明できる.しかし,前節では先に不変式環を楕円曲線に制限 する方法を紹介した.ちなみに裏返しは P5 の双有理変換
P5· · · →P5, (x1 : x2 : x3 : x4 : x5 : x6) → ( 1 x1
: 1 x2
: 1 x3
: 1 x4
: 1 x5
: 1 x6
)
に対応する.
この節では G が余次元3の場合について2つの注意を与える.X = XG
は射影平面 P2 の n点
pi = (a(1)i : a(2)i : a(3)i ), 1 ≤ i ≤n
での爆発である.これは曲面なので半群EffX を直接扱うことが容易である.
例えば,次が成立する.
補題 6 C は X 上の既約曲線で自己交点数は負,(C2) < 0,とする.この とき,C の線型同値類 [C] は半群 EffX のどんな生成系にも属する.
証明. C が二つの効果的因子の和 C1+C2 と線型同値だとする.このとき,
(C.C1) + (C.C2) = (C2) < 0
である.よって,C1, C2 のどちらかは C を既約成分として含み,他方は零 である.♦
特に,第1種例外曲線
C P1,(C2) =−1 (10)
はこの EffX の生成系に属するので,命題2より次をえる.
命題 7 曲面 XG 上に無限個の第1種例外曲線が存在するなら,不変式環 SG
は有限生成でない.
一方,点が9個以上で一般の位置にあるとき,X 上に無限個の第1種例外曲 線があることが永田[9]により示されている.よって,n ≥ 9 で余次元3の
G ⊂ Cn が一般のとき,SG は有限生成でない.これが第1の注意である.
なお,半群 EffX の3次元空間
A˜1 = {a(3h− 9
i=1
ei)−me8 −ne9}
による切口は下図のとおりである.レベル l は m+n に等しく,それが0 の 3h− 9i=1ei(反標準因子)とレベル1平面内の放物線上の無限個の第1 種例外曲線
(m2 +m)(3h− 9
i=1
ei)−me8 + (m+ 1)e9, m ∈ Z
とで生成される.
半群EffX
[5](や[14])の証明はこの論法ではない.[8]に従って8次元乗法群のさらな る作用
T =
(d1, . . . , d9) ∈ C9
9 i=1
di = 1
S
xi →dixi
yi →diyi , 1 ≤i ≤9
を考え,より小さな不変式環
SG·T
a,b∈Z
H0(XG,OX(ah−b(e1 + · · ·+en)))
が有限生成でないことを示すものである.こちらの利点は環 SG·T の次元
(=4)が最小になることである.
さて,9点 p1, . . . , p9 ∈ P2 が3次曲線のペンシル
Λ : λ1f1(x, y, z) +λ2f2(x, y, z) = 0
の基点集合である場合を考えよう.これは無限個の例外曲線の存在がよく見え る場合である.もちろん特別な場合はそうでないことによく注意しておこう.
例 Hesse ペンシル
λ1(x3 +y3 + z3)−3λ2xyz = 0
の基点を爆発した曲面 X 上には9個しか例外曲線がない.
ペンシルは X の楕円ファイバー付け f = Φ|−KX| : X → P1 を与える.
同伴公式より(10)は C P1,(C.−KX) = 1 と同値である.よって,
X 上の第1種例外曲線は射 f の切断に外ならない.どれかひとつを選んで 原点とみなすことにより全体はアーベル群になる.これを Mordell-Weil 群
(より精密にはMW格子[13])と呼ぶ.Mordell-Weil 群は(負定値)E8 格子
E8 = {α = ah− 8
1
biei|3a− 8
1
bi = 0} ⊂ PicX,
(h2) = 1 (e2i) =−1
の効果的なルートの全体
{α ∈ E8|(α2) = −2, H0(X,OX(α)) = 0}
(f の可約ファイバーと言っても同じ)で生成される部分群による剰余群と同 型である.一般には無限群で,不変式環 SG は有限生成でない.
それに引き換え,4次元不変式環SG·T は5変数多項式環C[u1, u2, x, y, z]
の主イデアル (u1f1(x, y, z) +u2f2(x, y, z)) による剰余環になる.とくに,
有限生成である.これまでの例では SG·T が有限生成でなかった.これが第 2の注意で,SG が有限生成でなくなるのには2つの原因がある.
前節ではG = G3a に対する SG の非有限生成性を示したが,小さい方の 不変式環 SG·T に対してもそれが示せる.しかし,それには P5 の9点爆発 自体ではだめでそれの極大モデル13にうつる必要がある.これはこれで面白 いが,準備が必要なのでここでは略した.
5 最後に
代数群 Ga のm変数多項式環 C[z1, . . . , zm] への線型作用は m次べき零行列
A = (aij)1≤i,j≤m と対応する.そして,不変式はAに付随する偏微分方程式
∂Af :=
1≤i,j≤m
aijzi
∂f
∂zj = 0
の解である.よって,序文の問題は次のように言い替えられる.
問題 可換なべき零行列の対A, Bに対する不変式環,すなわち,∂A と ∂B の 共通定数環
{f(z) ∈ C[z1, . . . , zm]|∂Af = ∂Bf = 0}
は有限生成か?
不変式環の有限生成性を示す技術は Hilbert の論文[4]からあまり進展し ていない.14 何か新しい肯定的な技術開発の契機になればと提出する次第で ある.
参考文献
[1] Dolgachev, I.: Weyl groups and Cremona transformations, Proc.
Symp. Pure Math. 40(1983), 283–294.
[2] —— and Ortland, D.: Point sets in projective spaces and theta functions, Ast´erisque, 165(1988).
[3] Du Val, P.: On the Kantor group of a set of points in a plane, Proc. London Math. Soc. 42(1932), 18–51.
13反標準因子がnefになるモデルのこと.極小モデルが標準因子をnefにすることをもじった.公式用語で はない.
14例えばHilbertの原論文の解説を試みた拙稿[6]§4 を参照されたい.
[4] Hilbert, D.: ¨Uber die Theorie der algebraischen Formen, Math.
Ann., 36 (1890), 473–534.
[5] 向井 茂::モジュライ理論1,岩波書店,1998年.
[6] —— : 不変式とモジュライ,数学のたのしみ,28巻,2001年12月,日 本評論社,pp. 29–41.
[7] Mukai, S.: Counterexample to Hilbert’s fourteenth problem for the 3-dimensionaladditive group, RIMS preprint, 1343(2001).
[8] Nagata, M.: On the fourteenth problem of Hilbert, Int’l Cong.
Math., Edingburgh, 1958.
[9] ——: On rational surfaces, II, Mem. Coll. Sci. Univ. Kyoto. Ser.
A, 33(1960), 271–293.
[10] Rees, D.: On a problem of Zariski, Illinois J. Math. 2(1958), 145–
149.
[11] Roberts, P.: An infinitely generated symbolic blow-up in a power series ring and a new counterexample to Hilbert’s 14th problem, J. Algebra, 132(1990), 461–473.
[12] Seshadri, C.S.:On a theorem of Weitzenb¨ock in invariant theory, J. Math. Kyoto Univ., 1(1962), 403–409.
[13] Shioda, T.: Mordell-Weil lattices and Galois representation, I, II, III, Proc. Japan Acad. 65A(1989), 267–271, 296–299, 300-303.
[14] Steinberg, R.: Nagata’s example, in ‘Algebraic Groups and Lie Groups’, Austral. Math. Soc. Lect. Ser. 9, Cambridge Univ. Press, 1997, pp. 375–384.
[15] Weitzenb¨ock, R.: ¨Uber die Invarianten von Linearen Gruppen, Acta. Math., 58(1932), 230–250.
〒606-8502
京都市左京区北白川追分町 京都大学数理解析研究所