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Quality Control of Pharmaceutical Products Based on the Evaluation of Physical Properties of Ingredients inside Tablets Using Near-infrared Spectroscopy

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Academic year: 2022

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Quality Control of Pharmaceutical Products

Based on the Evaluation of Physical Properties of Ingredients inside Tablets Using

Near‑infrared Spectroscopy

著者 阿波 君枝

URL http://hdl.handle.net/10236/13883

(2)

−1−

 高品質の医薬品を提供することは、服用者の安全を保証するために重要である。近年医薬品の開発におい ては、科学的な検証・管理に基づく製剤開発及び品質管理戦略を目指す Quality by design (QbD)の概念 が注目されており、従来よりも効率的で安定的な医薬品の提供が求められている。

 医薬品の製剤学的特性は、その医薬品の品質やバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)に影響するた め適切にコントロールされなければならない。医薬品の処方は、目的とする製剤学的特性が発揮されるよう に設計されるが、従来の製剤開発戦略では設計された処方について製剤評価を実施し目的とする製剤が出来 上がったかを確認していく手法が多くの場合でとられている。製剤学的特性がどのようなメカニズムで発揮 されるかを明らかにすることができれば、従来よりも効率的に処方設計ができると期待される。製剤学的特 性は、医薬品の処方成分の物性、特に結晶形に影響されることが知られている。そこで本論文では、近赤外 分光法を用いて医薬品中の処方成分の物性を評価し、製剤化工程又は製剤の保存条件により処方成分の物性 がどのような影響を受けるかを検証した。さらに、処方成分の物性変化が医薬品の製剤学的特性にどのよう な影響を及ぼしているかを解明することにより、製剤開発及び品質管理に関する有用な知見を得ることを目 指した。

論 文 内 容 の 要 旨

 本論文は4章からなる。水溶性主薬と疎水性添加剤を含む錠剤を調製するとき、混合粉砕時間の増加に 伴って主薬が徐放化することが知られている。第1章では、近赤外イメージングを用いて混合粉砕工程によ る錠剤の溶出性への影響を検証し、主薬の徐放化のメカニズムの解明を試みたことについて報告している。

著者は、近赤外イメージング測定により得られた近赤外スペクトルの解析に Self-modeling curve resolution 

(SMCR)を適用することによって、処方成分の分散性だけでなく分子レベルでの存在状態も評価した。研 究の結果、処方成分の分散性は混合粉砕工程に強く影響され、処方成分が均一に分散するのに伴って主薬が 徐放化することが明らかになった。さらに、SMCR 解析によって得られた純成分スペクトルから、混合粉 砕工程により処方成分の結晶形が変化することが示された。以上の結果より、混合粉砕工程により処方成分 が均一に分散すること、また混合粉砕工程により処方成分の結晶形が変化し、処方成分同士の相互作用が形 成されることが、主薬の徐放化の要因であることが明らかになった。

学 位 の 専 攻 分 野 の 名 称 学 位 記 番 号 学位授与の要件 学位授与年月日 学 位 論 文 題 目

論 文 審 査 委 員 (主査)

(副査)

阿 波 君 枝

Quality Control of Pharmaceutical Products Based on the Evaluation of Physical Properties of Ingredients inside Tablets Using Near-infrared Spectroscopy

博 士(工 学)

乙理第60号(文部科学省への報告番号乙第358号)

学位規則第4条第2項該当 2014年10月15日

尾 崎 幸 洋 山 口   宏 佐 藤 英 俊

寺 田 勝 英(東邦大学教授)

教 授 教 授 教 授

(3)

−2−

 汎用な医薬品添加剤である結晶性セルロース(Microcrystalline Cellulose; MCC)は、結晶構造と非晶質 構造とで水との親和力が大きく異なることが知られている。第2章では粉砕工程による MCC の結晶性変化 と、それに伴う製剤学的特性への影響を検証した結果について述べている。錠剤中の MCC の結晶性は、近 赤外分光法により評価した。本章では、MCC の -OH 基由来の近赤外ピークのシフトに基づく解析によって、

錠剤の表面状態の違いによる近赤外光の散乱の影響を受けずに MCC の結晶性を評価することができた。研 究の結果、粉砕工程により MCC の結晶性が低下することが明らかになった。さらに、錠剤表面の顕微鏡観 察及び錠剤の吸湿性の評価によって、粉砕工程による MCC の結晶性低下に伴って錠剤の物理的安定性が低 下し、結果的に錠剤の吸湿性増大に繋がることが明らかになった。これは、MCC の粉砕により、水との親 和力の大きな非晶質構造が形成したためと考えられた。以上のように、粉砕工程での添加剤の結晶性変化が、

錠剤の製剤学的特性に変化をもたらし得ることを明らかにした。

 第3章は MCC の処方量を実際の医薬品にあわせた処方の錠剤を用いて、錠剤中の MCC の結晶性が製剤 学的特性にどのような影響を及ぼすかについて研究した結果に関するものである。MCC の処方量が20% の 錠剤を用いた研究の結果、錠剤中の MCC の結晶性低下に伴って錠剤の浸水性及び吸湿性が増大することが 明らかになった。さらに、錠剤中の MCC の結晶性低下は、主薬の加水分解を促進し錠剤の保存安定性の低 下をもたらすことが明らかになった。これは、MCC の結晶性低下により錠剤の浸水性及び吸湿性が増大し たことで、保存中に錠剤中の主薬が水分子と接触する機会が増え加水分解が進んだためと考えられた。以上 のように、処方量が20% であっても結晶性に起因する MCC の水との親和力の変化が、錠剤の製剤学的特性 に重大な影響を及ぼすことが示された。したがって、添加剤の結晶性の制御が医薬品の品質コントロールに おいて重要であることが明らかになった。

 第4章は、錠剤中の MCC の結晶性変化を、保存中に近赤外分光法を用いてモニタリングし、保存条件や 共存する添加剤により結晶性変化の挙動が異なるかを研究した結果について述べている。錠剤中の MCC の 結晶性変化は、近赤外スペクトルの MCC の―OH 基由来のピークの強度により追跡した。その結果、MCC は乾燥条件よりも加湿条件下で保存したときに再結晶化しやすく、水分子と MCC との間の水素結合の形 成が、MCC の再結晶化を促していることが示唆された。また、錠剤に無水ケイ酸を添加することにより、

MCC の再結晶化が抑制されることが示唆された。

論 文 審 査 結 果 の 要 旨

 本論文は、近赤外分光法を用いることによって製造工程中の処方成分の物性変化を最終製品である錠剤を 用いて評価する手法の提案に関するものである。近赤外分光法は、近年、非破壊であるがままの状態でいろ いろな物質の構造や物性を調べる方法として注目を集めている。近赤外分光法を医薬品分子の構造、相互作 用、結晶性の研究などに用いた例は多くあるが、本研究のように製造工程中の処方成分の物性変化を調べ、

その変化が製剤学的特性にどのような影響を及ぼすかを検証・考察した研究はこれまでほとんどない。本 研究の独創性 , 新規性の第一はここにある。さらに本論文において著者が近赤外イメージングの解析に Self- modeling Curve Resolution(SMCR)法を適用している点は、注目に値する。さらに本論文は薬学分野と理 工学分野をつなぐものとしても興味深く、かつ価値が高い。

 最近、医薬品の開発において Quality by design (QbD)の概念が注目されていることから、今後効率的 な製剤開発と安定な製造工程の設計がますます重要になってくると考えられる。そこで本論文では、効率的 な処方設計と頑健性に優れた製造工程の設計のために製剤学的特性のメカニズムの解明が重要であると考え、

近赤外分光法を用いて処方成分の物性変化が製剤学的特性にどのような影響を及ぼすかを調べ、さらに製剤 学的特性のメカニズムの解明に繋げることを研究課題とした。

(4)

−3−

 近赤外分光法 , 近赤外イメージングを用いて錠剤中の処方成分を分子レベルで評価することによって、錠 剤保存中の処方成分の物性変化の追跡が可能になり、保存条件及び錠剤処方が処方成分の物性変化へどのよ うな影響を及ぼすかの解明に繋がった。製造工程、保存条件、錠剤処方が処方成分にもたらす影響、さらに それらが製剤学的特性にもたらす影響を明らかにしたことにより、処方成分や製造工程の設計のために有用 な知見を得た。

 本論文の重要な貢献は以下のとおりである。

(1)近赤外イメージング、近赤外スペクトルの解析に SMCR を適用することによって、処方成分の分散性 だけでなく、結晶性も評価した。この結果、処方成分の分散性は混合粉砕工程に強く影響され、処方 成分が均一に分散するのに伴って主薬が徐放化することを明らかにした。

(2)結晶性セルロース(Microcrystalline cellulose; MCC)の―OH 基由来の近赤外ピークのシフトに基づく 解析と顕微鏡観察及び錠剤の吸湿性の評価から、粉砕工程による MCC の結晶性低下に伴って錠剤の 物理的安定性が低下し、結果的に錠剤の吸湿性増大に繋がることと明らかにした。 

(3)MCC の処方量が20% の錠剤を用いて、MCC の結晶性低下に伴って錠剤の浸水性及び吸湿性が増大す ること、さらに、MCC の結晶性低下は、主薬の加水分解を促進し、錠剤の保存安定性の低下をもた らすことを示唆した。 

(4)近赤外スペクトルの MCC の -OH 基由来のピークの強度変化より、MCC は乾燥条件よりも加湿条件 下で保存したときに再結晶化しやすく、水分子と MCC との間の水素結合の形成が、MCC の再結晶化 を促していることを示唆した。

 本論文で述べた一連の研究で得られた知見は、効率的な処方設計や頑健性に優れた製造工程の設計のため の有益な知見となり、高品質な医薬品の安定供給に繋がると期待される。

 本論文の内容はすでに Analytica Chemica Acta, Applied Spectroscopy などに4編の論文として公表され ている。また1編の論文が投稿中となっている。さらに著者は9編の関連論文を出版している。著者は国内 外の会議で本論文の内容を自ら報告している。審査委員は本論文の内容を中心に面接と公開の論文発表会を 行い、著者が論文内容と用いた技法について充分な理解とともに関連する分野についても学識を有し、また 将来の研究遂行に対しても十分な能力を持つことを確認することが出来た。 さらに、 著者は、筆頭著者とし て当該分野の著名なジャーナルに査読付英語論文4編の執筆ならびに2回の国際学会発表の経験を有してお り、十分な英語能力を持つと判断した。以上のことより、審査委員会は本論文の著者が博士(工学)の学位 を授与されるに足る十分な資格を有するものと判定する。

             

参照