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透過式突堤の漂砂制御機能に関する模型実験

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Academic year: 2022

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(1)

0.20mのケースでは1時間造波した.透過式突堤の上手及 び下手において流速を計測し,透過式突堤を通過する流 れを確認した.また,測量結果をもとに,各ケースでの 造波前後の地形変化量と沿岸漂砂量を算出し,Case-3〜

14の突堤設置位置であるX=10mにおける沿岸漂砂量と,

Case-1〜2のX=10m位置における沿岸漂砂量を比較して,

各突堤の沿岸漂砂低減率(=1-突堤がある場合の沿岸漂 砂量/突堤がない場合の沿岸漂砂量)を算出した.さらに,

Groins are facilities to control the sand drift for maintenance and the recovery of the shoreline. In Japan, impermeable groins with the concrete block are general. However, groins of the timber piles remain in the Netherlands, and there is a possibility to adopt permeable groins as a construction method also in Japan according to the needed function of littoral drift control. Moreover, the permeability of the groins is a control element as well as the length of the groin in moderately easing influence of the longshore sediment transport control to the downstream. The model experiments were done in a tank aiming to clarify control function of the permeable groins on littoral drift.

1. はじめに

突堤は汀線の維持・回復のため漂砂を制御する施設で あり,日本ではコンクリートブロック等による不透過式 が一般的である.しかし,オランダでは木杭の突堤が残 存しており(van Lynden, 2007),日本でも,必要とされ る漂砂制御機能によっては従来の突堤に代わる工法とし て採用できる可能性がある.また,沿岸漂砂下手の海岸 への影響を適度に緩和する上で,突堤の長さとともに,

突堤の透過性も制御要素として考えられる.このような 透過式突堤の漂砂制御機能を明らかにすることを目的と して,平面水槽において模型実験を行った.

2. 実験条件

実験は,当所所有の幅24.0m,長さ30.0m(造波板定位

置から18.0m)の平面水槽を用いて行った.実験状況を

写真-1と写真-2に,実験模型の平面図および断面図を図-1,

図-2に示す.実験地形は1/10の一様勾配海浜とし,汀線 を波向きに対して10°傾け,中央粒径0.3mmの東北珪砂 を用いて造成した.透過式突堤は木杭(径4mm)を用い て作成した.杭の間隔は,予備実験で堆砂効果が認めら

れた1.5mm,2.0mmとした.初期汀線から沖側の堤長は,

設定した沖波波高0.05m,0.20mに対応する表層移動限界 水深までとした.また,突堤基部より陸側から遡上波が 回り込まないように,各沖波波高に対応した遡上距離ま で伸ばしている.波浪条件および突堤模型諸元は表-1の ように設定し,波高0.05mのケースでは2時間,波高

1 正会員 国土交通省国土技術政策総合研究所 河川研究部海岸研究室研究官 2 正会員 工修 国土交通省国土技術政策総合研究所

河川研究部海岸研究室主任研究官 3 正会員 国土交通省国土技術政策総合研究所

河川研究部海岸研究室長

写真-1 実験状況

写真-2 透過式突堤近影

(2)

杭の設置間隔と沿岸漂砂低減率との関係を整理し,透過 式突堤の漂砂制御機能について検討した.

3. 実験結果及び沿岸漂砂低減率の算出

(1)堤長3.37mの場合

波高を0.20mとしたCase-4,Case-8,Case-12における

流速の計測結果を図-3,図-4に示す.図-3のように,透 過式突堤を設置したCase-4及びCase-8では,突堤を通過 する沿岸方向の流れが発生しており,特に汀線付近では 流速が大きかった.また,杭の間を通過する流れととも に,砂も通過していたことを目視で確認している.これ に対し,不透過式突堤を設置したCase-12では突堤に沿 った強い沖向きの流れが観測されている(図-4).

次に造波終了後の等深線図を図-5〜7に示す.不透過 式突堤を設置したCase-12では,突堤上手から突堤先端 を回り込むように突堤沖側で堆積が生じる一方,突堤下 手側の侵食が著しい.これは,沿岸漂砂が不透過式突堤 に遮られ,下手側への土砂供給が少ないため,侵食が進 んだと考えられる.また,造波時間が短かったために,

漂砂が突堤先端を完全には回り込んでいないように見え るが,造波を継続した場合,満砂状態となった砂は強い 図-1 実験平面図

図-2 実験断面図(堤長L=3.37m)

沖波周期 T(s)0

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

1.13 1.98 1.13 1.98 1.13 1.98 1.13 1.98 1.13 1.98 1.13 1.98 1.13 1.98 沖波波高

H(m)0

0.05 0.20 0.05 0.20 0.05 0.20 0.05 0.20 0.05 0.20 0.05 0.20 0.05 0.20 堤長

L(m)

突堤無

3.37

0.50

3.37

0.50

3.37

0.50 杭の設置間隔

b(mm)

突堤無

1.50

2.00

不透過 Case

表-1 実験条件(規則波)

図-3 流速測定図(透過式突堤,堤長L=3.37m)

図-4 流速測定図(不透過式突堤,堤長L=3.37m)

(3)

沖向き流れに乗って突堤先端を回り込み,突堤下手沖側 での堆積が進行したと考えられる.それに対し,透過式 突堤を設置したCase-4,Case-8では,突堤先端付近での 堆積は顕著ではなかった.

波高0.05mとしたCase-3,Case-7,Case-11では,Case- 11の不透過式突堤で,突堤上手で汀線の前進,下手で汀 線の後退が見られたが,Case-3,Case-7の透過式突堤で は,ともに突堤上手で若干の堆積が見られたものの,下 手での目立った汀線の後退は見られなかった.

次に,各波高に対する堤長3.37mにおける沿岸漂砂量 分布図を図-8,図-9に示す.波高0.05mのケースでは,

透過式突堤は沿岸漂砂量にほとんど影響していなかった ことがわかる.波高0.20mのケースでは,不透過式突堤 を設置したCase-12は,突堤のないCase-2と比較して,

ほ ぼ 全 体 的 に 沿 岸 漂 砂 量 が 減 少 し , 特 に 突 堤 の あ る

X=10mでは沿岸漂砂量はほぼ0となっている.杭間隔

1.50mmの透過式突堤を配したCase-4では,全体的な沿岸

漂砂量の減少を確認できるが,Case-12と比較すると突堤

の影響は小さい.また,杭間隔2.00mmの透過式突堤を 配したCase-8では,さらにその影響は小さい.

堤長3.37mでの,X=10mにおける沿岸漂砂低減率を算 定した結果を図-10に示す.不透過式突堤の場合,各波 高に対してほぼ全ての沿岸漂砂を阻止していたことがわ かる.波高0.20mでは,透過式突堤は不透過式突堤と比 べ,沿岸漂砂低減率が小さく,杭間隔により沿岸漂砂低 減率に大きな差が生じた.また,高波浪時に突堤として の機能を発揮しやすい傾向があることがわかった.これ により,堤長が十分な長さである場合,海浜材料の粒径 から杭の間隔を適切に設定すれば,透過式突堤により沿 岸漂砂を制御できるものと考えられる.それに対して,

波高0.05mにおける透過式突堤において,沿岸漂砂低減 率がほぼ0%,もしくはマイナスとなった.これは図-11,

図-12に示すように,Case-1及びCase-3の地形変化にはほ とんど差が無く,また,図-8に示したように,沿岸漂砂 量が非常に小さいことから,透過式突堤の沿岸漂砂低減 図-5 等深線図(Case-4)

図-6 等深線図(Case-8)

図-7 等深線図(Case-12)

図-9 沿岸漂砂量分布(堤長L=3.37m,波高0.20m)

図-10 沿岸漂砂低減率(堤長L=3.37m)

(4)

率を定量的に議論できないと考えられる.

(2)堤長0.50mの場合

波高を0.20mとしたCase-6,Case-10,Case-14における 流速の計測結果を図-13,図-14に示す.Case-6,Case-10 は各測点において,比較的強い沿岸漂砂下手方向の沖向 き流速が発生している.Case-14では突堤先端上手側にお いて,特に強い沿岸漂砂下手方向の沖向き流速が発生し ていた.

次に造波終了後の等深線図を図-15〜17に示す.透過 式突堤を設置したCase-6,Case-10においては,突堤基部 汀線付近において若干の堆積が見られるが,沿岸漂砂の 多くは突堤先端沖側を通過し,下手沖側に堆積している.

それに対し不透過式突堤を設置したCase-14では,突堤 基部の汀線付近で砂が顕著に堆積しているものの,突堤 先端付近で洗掘が生じ,さらにその沖側を砂が回り込ん でいることがわかる.

波高を0.05mとしたCase-5,Case-9,Case-13では,

Case-3,Case-7,Case-11と同様に,不透過式突堤を設置

したCase-13においては,突堤上手で汀線の前進,下手 で汀線の後退が見られたが,透過式突堤を設置したCase-

5,Case-9では,突堤上手で若干の堆積が見られたものの,

下手での目立った汀線の後退は見られなかった.また,

Case-13については,堤長が表層移動限界水深と対応して いるため,Case-12と同様に,突堤先端部の上手に堆積が 生じる一方,突堤下手側において汀線の後退が見られた.

これは沿岸漂砂が不透過式突堤に遮られたために生じた と考えられる.

堤長0.50mにおける沿岸漂砂量分布図を図-18,図-19 に示す.図-18において,不透過式突堤を配したCase-13 は突堤のないCase-1に比べ,大きく沿岸漂砂量を低減さ せていることがわかる.対して,透過式突堤を配した

Case-5及びCase-9は両ケースともCase-1と大差なかった.

次に図-19では,透過式突堤を配したCase-6,Case-10の 両ケースともにCase-2とほぼ同じだが,不透過式突堤を 配したCase-14では大きく漂砂量が増大している.

次に沿岸漂砂低減率を算定した結果を図-20に示す.沖

波波高0.05mに対して,不透過式突堤はほぼ全ての沿岸

漂砂を阻止していたことが確認できる.対して,透過式 突堤については,杭間隔1.50mm,2.00mmともに,突堤 が無い場合より沿岸漂砂量が増大している.表層移動限 界水深まで突堤が達していない沖波波高0.20mに対して はまた,不透過式突堤の沿岸漂砂低減率は-25%程度とな り,突堤が無い場合より沿岸漂砂量が増大している.

図-11 等深線図(Case-1)

図-12 等深線図(Case-7)

図-13 流速測定図(透過式突堤,延長L=0.50m)

図-14 流速測定図(不透過式突堤,延長L=0.50m)

(5)

4. おわりに

透過式突堤の漂砂制御機能を明らかにすることを目的 として,平面水槽において模型実験を行った.

本研究で得られた主要な結論は以下の通りである.

・透過式突堤の堤長が十分な長さである場合,海浜材料 の粒径から杭の間隔を適切に設定すれば,沿岸漂砂を 制御できる.今回の実験では,杭の間隔を底質粒径の 5倍にしたケースにおいて,沿岸漂砂を4割低減して いた.

・透過式突堤は高波浪時に漂砂制御機能が顕著になる傾 向がある.表層移動限界水深まで突堤を伸ばした場合,

透過式突堤の漂砂制御機能は波高0.05mのケースでは ほとんど無かったが,波高0.20mのケースでは認めら れた.

・突堤が移動限界水深まで達していない場合,突堤とし ての機能を期待できない可能性がある.特に,不透過 式突堤の場合,汀線付近において速い沖向き流速が発 生し,汀線の後退を助長する可能性がある.突堤を段

階的に施工する場合,施工途中で十分な延長を有して いない状態のまま時間が経過することとなるため,周 辺海岸の地形変化に対して十分な注意が必要であると 考えられる.

謝辞:本研究では,東京大学大学院工学系研究科の佐藤 愼司教授と筑波大学大学院システム情報工学研究科の武 若聡准教授にご指導いただいた.また,実験作業では,

財団法人土木研究センターおよび株式会社環境モニタリ ング研究所の助力を得た.ここに記して謝意を表します.

参 考 文 献

椹木 亨(1991):波と漂砂と構造物,技報堂出版pp. 271-273.

van Lynden, P. (2007): A resistible force - when man meets the sea, Stichting Visual Legacy, 106p.

図-15 等深線図(Case-6)

図-16 等深線図(Case-10)

図-17 等深線図(Case-14)

図-19 沿岸漂砂量分布図(堤長L=0.50m,波高0.20m)

図-20 沿岸漂砂低減率(堤長L=0.50m)

参照

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