日本語の会話 における
言語的 /非 言語的な参加態度の示 し方
―― 初対面の母語話者 /非 母語話者 による 4者 間の会話の分析 ――
中 井 陽 子
キーワー ド
言語的、非言語的、参加態度 の表 出、不参加態度 の表 出、同時行動
1. :ま じめに
時 に、非母語話者 は、言語 的 ・非言語 的な知識 ・能力 の不足 のため、母語話 者 との会話 に入 り込 んでいけず、会話 の中で取 り残 されて しまうこ とがある。
本研 究 では、特 に、視線、手 の動 き、身体 の姿勢の動 き、同時行動 に焦点 を当 てて、いかに会話の参加者が言語的・非言語的 に会話への参加態度 を示 し合 っ てい るのか を分析 し、非母語話者が積極 的に会話 に参加 してい くための手がか
りの一つ を探 る。
2.先
行研究2.1
参加態度 の示 し方Goodwin(1981:96)は 、あ る参加者が視線や身体の向 き等 によって、他 の参 加 者 の方 に向い てい るか向い てい ないか とい う観察 を基 に、参加態度 の表出 (engagement displays)を 分析 してい る。例 えば、他 の参加者 に対 して参加 し ようとい う態度 (engagement)を 示 しているとは、共 に会話 に参加 し、その瞬 間の会話 に対す る注 目を表 わ してい るこ とだ としている (p.96,125)。 一方、
参加 しよ うと しない態度 (dヽengagement)を示 してい る とは、会話相手 の方 に向いてお らず、話す などの共同行為へ の不参加 を示す ものだ とい う (p.101)。
そ して、相互の不参加態度の表出 (display Of mutuJ disengagement)と は、会
―‑ 79 ‑―
話 の中の沈黙 の間に特徴 的 に起 こる と し、視線 や上体 を互 い に離す行為が観察 され る と している。 しか し、 この ような間 も、参加者達 は、互いの行動 にかな り注意 を払 ってい る とい う。
会話夕Ⅸl)の 1行日に起 こった
6秒
間の沈黙 にあたる図1では、参加者全員が 下 を向 き、ジュース を注いだ り、飲 んだ りする行動 を して、会話へ の不参加態 度 を示 している。一方、3行
日にあたる図2で
は、互いに視線 を向け、前傾姿 勢 になって、積極 的 な参加態度 を示 し合 っている。図
1:不
参加態度の表出(会話夕駅1)1行 日)
2.2
同時 行 動 (SynchrOnizalon)Erickson(1976)と Enckson and Shuttz(1982)は 、カウンセラー と学生の面 接 の分析 で、会話 が うま くい ってい る時 には、両者 の体 の動 き (頭、腕 、上 体 、足
)と
言語行動が同調 して同時 に行 われたのに対 し、反対 に、問題 のあ る 瞬 間 (uncOmfortable moments)に は、 この ような両者 の同調 した同時行動が 起 こ りに くかった としている。そ して、 この ような問題のある瞬間は、異文化 間、異人種 間の面接 に起 こ りやすか った と している (Erたkson 1976と Enck―son and Shultz 1982)。 この こ とか ら、Bennett(1980)は 、 円滑 な コ ミュニ ケー シ ョンヘ の成功 は、 リズムの流れ を形成する能力 によって決 まる とし、そ れは、文化 的体験の蓄積 を通 して習得 されるとい う。
さ らに、
Kendon(1990100)は
、参加者Aが
左腕 を左 に動かす と参加者Bが
右腕 を右 に動 かす、参加者
Aが
後 ろに もたれる と参加者Bも後 ろに もたれ る と い った、二人の参加者の間で起 こる似通 つた動 きは、「鏡 のイメージ (mirror images)」 の よ うである としてい る。 この ように同 じような動 きをす る とい う図
2:参
加態度の表出(会話夕虫1)3行 日)
こ とは、互いに注意 を払い合いなが ら、「共 にいる (with)」 とい うことを表 わ す と してい る (Kendon 1990:114)。 したが って、
Kendon(1990:114)は
、相互 作用 の中での動 きの調和 は、第三者 に対 してではな く、互 い に対 して共 に「開 かれてい る (open)Jとい うことを示す一つの方法である とい う点で大変重要 である としている。2.3
視線視線 とター ンの受 け継 ぎの表示 の関係 につ いて、
Goodwin(1980275,287筆
者和訳
)は
、 聞 き手 と話 し手 の視線 を分析 し、次 の二つのルール を掲 げてい る。ルール
1:話
し手 はター ンの途 中で聞 き手の視線 を得 なければな らない。ルール
2:話
し手が聞 き手 を見ている時、聞 き手 は話 し手 を見なければな ら ない。この ように、 聞 き手が話 し手 を見 る とい う行為 は、「聞い てい る とい うこ と (hearership)」 、つ ま り、会話 に参加 しよ うとす る態度 (engagement)を 示 す 一つの方法であ り、 もし参加者が互いに目を合わさないでいる場合 は、一時的 に会 話 に参 加 しよ う と しない 態 度 (disengagement)に もな る と して い る
(Goodwin 1981)。
よって、視線が向け られているか どうかは、参加者が会話へ参加 しているか どうか を示す最 も重要な要因のひ とつであるといえる。つ ま り、参加者 は、視 線 を話 し手 に向 けることによつて、会話へ の参加態度 を示 し、視線 を向 けない
ことによって、不参加態度 を示 していることになるllt
3.会
話 データ分析3.1
会話資料 。参加者背景分析 す る会話資料 は、
20‑30代
の 日本語母語話者2人
(仮名 :高 志 、八重) と日本語学習者 (仮名 :ロ ン、スー)に
よる約45分 間の初対面の 日本語 自由会 話 を録画撮 りした ものであ る。その会話 の前半部分 の途 中(2分
30秒 間)の
会 話例(1)と会話伊12)を分析す る。撮影 当時、高志 と八重 は、米 国某大学 に留学 している大学生で、知 り合 って
‑81‑
か ら1年半程度 の親 しい友人同士であった。 ロンとスーは、同大学の
3年
生 の 日本語 クラス (授業 時 間数 500時 間以 上)に
在 籍 して い る ア メ リカ入学生 で あ った。 ロ ンは、1年
間 日本へ の留学経験がある。スーは、母親が 日本語母語 話者であ り、生 まれた時か らアメリカの家庭で 日本語 を使用 してお り、幼 い頃 か ら数回の来 日経験 もあ り、 日本語 口頭能力 は、ほ とん ど母語話者 に近か った とい える。撮影当 日、高志 と八重 は、 ロンとスーに初めて会い、4人
で45分 間 程度 自由に会話 して もらった。3.2
会話 にお ける参加態度の表 出の分析参加者が会話 において、いか に言語的・非言語的行動 を同調 させて、参加態 度 と不参加態度 を相互 に示 し合 つているか について、次の
2つ
の会話例 を もと に分析す る。3.2.1
会話伊Kl):お名前 は?会話夕虫1)では参加者 は、言語的・非言語的に他の参加者の会話への参加 を促 し、 また、既知の友人同士 (日本語母語話者2名 と日本語学習者
2名 )と
い う2つ
のグループで動 きを同調 させ なが%、 互い に参加態度 を示 し合 っているこ とが うかがえた。会話夕11)の
2分
30秒 前の会話 開始直後 に、参加者同士、名前 を名乗 るな どの 簡単 な自己紹介 をしていた。そ して、会話夕ll l)の直前 であ る40秒 前 に、スーの 生 い立 ちの話題 にな り、高志 と八重が、スーは母親が 日本人だが純粋 な白人 に 見 える とい うことを述べ ていた。 この ような話題は、スーにとって コメ ン トし に くい ものであるため、す ぐにスーは何 も言わずに微笑みなが ら下 を向いて し まった。 この結果、会話夕虫1)の1行
日の6秒
間の沈黙が起 こ り、誰 も前の話題 について話 さず、下 を向いてジュース を注いだ り、飲 んだ りす る単独 的な行為 に従事 し、不参加態度 を示 していた (図 1)。この
1行
日の6秒
間の沈黙 の間、ロンは、一度、高志 を見 るが、高志 は下 を 向いて不参加態度 を示 しているので、 また下 を向 き、そ して、2行
日で、 もう一度高志 を見 て、「あの―
Jと
言 つて、高志 の視線 を得 てい る。そ して、 さら に、 ロンは、膝 を叩いて (図3)、 頭 を傾 け、前傾姿勢 になって (図4)、「お図
3:ロ
ンが膝を叩いている(会話夕哄1)2行 日)
図
4:ロ
ンが前傾姿勢になっている(会話夕瞑1)2行 日)
名前 は
?Jと
、高志 の名前 は何 であ つたか忘 れ たので、確 認 の質問 を してい る。この ように、 ロンが言語 的 に (「あの ―、お名前 は?」)、 また、非言語的 に (膝を叩 く、頭 を傾 ける、前傾姿勢 になる
)高
志 の注意 を明示的に引 こうとし てい るのは、 ロンが高志 を見 た時、高志が ロンを見ていなかったか らである と い える。 そ れ は、す なわち、Goodwin(1980287)の
「ル ール1:話
し手 は ター ンの途 中で聞 き手の視線 を得 なければならない」 か らであるといえる。 ま た、スーの生い立 ちと容姿 とい う話題展 開をこれ以上続 けるには難 しい と思 わ れ る話題の後 の6秒
間の沈黙 を破 り、全 く違 う話題 を開始す るには、非言語 的 に も非常 に明示的な方法 を用 いる必要があった もの と思われる。もう一つ、会話夕Ⅸl)で興味深 い点 は、高志 の名前 を既 に知 っている高志 と八 重 とい う友人 グループと、高志の名前 を覚 えていないロンとスー とい う友人 グ ルー プの
2つ
に分かれて、同時行動 による相互の参加態度が表出 されているこ とである。それぞれのグループの中の参加者 は、互いに視線や姿勢の動 きを同 調 させ て、参加態度 を共 に示 してい るこ とが観察 され る。例 えば、2行
日で、ロ ンが 「あの―」 と言 って、高志 を見た後、高志 と八重 は、 ロンを見 ることに よって二人同時 に参加態度 を示 している (図 5)。
一方、スーは、同 じく
2行
日で、 ロ ンと共 に、高志 を見 て、前傾姿勢 になる とい う同時行動 によって、ロ ンが高志の名前 を尋ねる行為 に参加 し、高志か ら 名前 を聞 き出す ため に、 ロ ンと共 に参加態度 を示 している (図2、 図6)。また、八重 は、
3行
日の は じめは高志 を見 てい るが (図2、 図6)、 高志 が―‑ 83 ‑―
図
5:八
重 と高志が ロンを見 る (会話夕11)2行日)図
6:ス
ーが ロンと同時行動 をする/八
重が高志 を見る (図2と 同 じ)(会話側 1)3行 日)「高志です。」 と言ってロンを見 るのと同時に、ロンを見 ることによって、高 志 とグループになって、視線によって、ロンの質問に対する答えを投げ返 して いるといえる (図7)。
そ して、
4行
日でロンが「高志。Jと
名前 を聞き出 して繰 り返 した後 に、ロ ンとスーが同時に姿勢を後ろに戻 している (図8)。そ して、最後に、
6行
日で、ロンが「あ―すみません、けど、私は名前に、名前が下手なんです。」 と発話 した時に、スーと高志 と人重がロンを見 ること により、この
2つ
のグループの分割はな くな り、その後、7行
日で、4人
で共 に笑っている (図 9)。以上のように、
6秒
間の相互の不参加態度の表出の間も、参加者は、互いの図
7:八
重 と高志がロンを見る (会話夕『 1)3行 日)図
8:ロ
ンとスーが姿勢を後ろに戻す (会話夕11)4行 日)図
9:全
員が笑 う(会話夕瞑1)7行 日)―‑ 85 ‑―
言語的・非言語的な参加態度の表出に注意 を払い、 また、それに合 わせなが ら、 自分が再び会話 に参加で きる瞬間をうかがっていることがわかる。そ し て、参加者は、会話の瞬間瞬間でグループを形成 して、同調 した同時行動 に よって、参加態度 を示 し合っているといえる。
3.2.2
会話伊K2):会
計学のクラス会話夕12)では、高志 とスーが視線 を向け合 う、机 を叩 く、机 に手 を載せる、
前傾姿勢 になる、 ささや く等 とい う似 た行為 をして、参加態度 を互いに示 し 合っていることが観察 された。
まず、
1行
日で、八重がロンとスーを交互 に見なが ら、「一緒のクラスなん ですか、陽子 さんと?」 と、ロンとスーの大学のクラスについて尋ねている。そ して、
7行
日でスーが「はい、私は日本語の、日本語 と会計学のメジャーな んです。Jと
、会計学 を専攻 していることを述べ、それに対 して、高志が8行
日で「あ―。Jと
言って興味 を示 している。そ して、15行日で、高志は、「えっ そ、今〃 ち ょっ と困ってて。」 の「今」の ところで右手で机 を叩いた後で、スーを見なが ら、自分の取 っている会計学のクラスが大変なので、スーに教え てもらいたいということをほのめか している。すると、その直後の16行日で、
スーも「まだ会計学の」 と言いなが ら、同 じく左手で机 を叩き、その手 を机の 上に置 く。スーは、机 を叩 くという高志 と同 じ行為 をすることによって、高志 と共に参加 しているという態度 を非言語的に示 しているといえる。また、スー は、手を机の上に置 くことによって、高志の会計学を教 えて欲 しいという話題 に興味 を示 しているようにうかがえる。さらに、17行日で、高志は、「ちょっ とまじな話で、本当 に。」 とい う発話 を強調す るために、右手 を
3回
縦 に振 り、両手をスーと同様 に机の上に置いて、スーの会計学専攻の話題への積極的 な参加態度 を示 している (図10)。しか し、18行日で、スーは、「いえ、いえ、いえ、 まだ」 と言つて、謙虚な 態度で高志の会計学を教えてほしいという依頼 を断っている。そ して、20行日 で、「まだ、会計学のクラスは、あの、始 まってないので。
Jと
言って、21行日 の八重の「あ、そうですか。Jと
い う発話の時に、机の上 に載せていた左手 を 少 し自分の方に引いて、不参加の態度 を示 している。そ して、23行日で、高志図10:高 志とスーが机の上に手を置いて参加態度を示 している (会話(217行日)
は、「え、 じゃあ、
Cの ?Jと
言 い なが ら、机 を1回叩 き、両手 を机 の上 に置 いて、スーに対 して、会計学の専 門クラス を取 る前 に履修す るC先
生の授業 を 取 ってい るか どうか尋 ね、スーが会計学 の話題 に再 び参加す るように促 す。そ れ を受 けて、24行 日の「はい、あの、一応 プ リビジネス?」 で、スーが プリビ ジネスの クラス を取 っている と述べ る と、25,27,29行
日で、高志 は、机 に両 手 を置 い た まま、前傾姿勢 にな り、 スー に視線 を向 けて、「あ、 ほん とに? ほ ん とに?
同 じなんです け ど。」 とス ー だ け に ささや きか け る こ とに よっ て、スー を会話 に参加す る ように促 し、 自 らの積極 的 な参加態度 を示 してい る。そ して、26‑29行
日で、スー もまた、高志 と同 じように、左 手 を机 の上 に 置いた まま、前傾姿勢 にな り、高志 に視線 を向け、「 はい。 はい。Jと
高志 だけ図11:高 志 とスーが前傾姿勢で見つめ合ってささや く(会話(225‑29行 日)
―‑ 87 ‑―
にささや きかけることによって、高志の話題への参加態度 を示 している (図 11)。
そ して、31行日で、高志がスーに、「いや、本当に、冗談抜 きで。」 と言って 笑って頼 むと、スーは、32行日で下 を向 きなが ら「いや、ち ょっ、
Jと
言った 後、机の上の左手を少 し前に出 しなが ら、「そうですか。」 と言って、参加態度を示 し、高志の依頼 を受け入れている (図12)。
そこで、高志は、33行日で、「ち よっと今、アカウンティング、ほんと困つ てる。」 と言いなが ら、机 を
3回
叩いて、スーの視線 を自分の方 に向け、スー に会計学 を本当に教えて もらいたい という気持ちを強調 している (図13)。図13:高志が机 を3回叩 く(会話夕Щ2B3行日)
図12:ス ーが手 を前に出す (会話夕哄2お2行日)
しか し、34行日で、スーは、「あ、私 も本当に困ってます。
Jと
言って会計学 を教えることはできないということをほのめか している。そ して、35行日で、スーは、「どうしようかと。」 と言って、机の上の左手 を完全に引いて下ろし、
姿勢 を後ろに引 くことによって、高志 とのや り取 りに対する不参加態度を示 し ている。 しか し、さらに、36行目で、高志は、「え、な、今 どれをどれを取 っ てるん
?〃
どのクラス。」 と、まだスーの会計学のクラスに興味 を示 し、どの クラスを取 っているか尋ねている。そ して、37行日のスーの「いや、今は取っ てないんです、実は。」で、スーがまだ会計学のクラスを取 っていないことが 判明すると、高志は、38行日で「あつ、取つてない。」 とがっか りして、下を 向 き、スーとのや り取 りに対する不参加態度 を示 している。そ して、スーもま た、この時同時に、39行日で下を向いている。さらに、41行日で、高志が「そ うかあ。」 と言って、スーヘの依頼 をあ きらめ、下を向いて、会話への不参加 態度 を示 している。スー もそれを見て、42行日でまた「ええ。Jと
言って下を 向いて、不参加態度を示 している (図14)。以上のように、高志 とスーは、言語的・非言語的に、「鏡のイメージ」のよ うに、視線、手の動 き、姿勢、声の調子などを変えて、参加態度を示す と同時 に、互いの参加態度の表出を観察 して、瞬間瞬間で会話に参加 していっている ことが うかがえる。このような互いに同調 し合った同時行動は、他の参加者で はな く、 まさに高志 とスーだけに対 して「開かれている (open)」 ということ
図14:高志 とスーが下 を向 く (会話夕‖242行日)
―‑ 89 ‑―
を示す行動 である といえる。 また、会話夕虫2)における、高志 とスーの 目線、手 の動 き、姿勢 は、会話の中の「スーが高志 に会計学 を教 える」 とい う依頼 と承 諾 ・断 りとい う駆 け引 きの発話 と連動 して起 こってい る とい える。例 えば、
スーが机 の上 に手 を置いた り、その手 を前 に出 した りした時 は、スーが高志の 依頼 に興味 を示 し、承諾 しようとい う気持が強 くなっていることを表 し、 よ り 積極 的 な参加態度の表示 を している と考 え られる。反対 に、スーが机 の上の手
を引 くことに よって、スーが高志 の依頼 を断わる態度 を少 し示 し、 さらに、
スーが手 を完全 に引いて下 ろす ことによって、依頼 を完全 に断わ り、二人の交 渉の終了 を表 して、不参加態度の表出を していると考 え られ る。
4.ま
とめ と今後の課題本研 究 で は、
Goodwin(1981)の
参加態度 の表 出の概 念 を もとに、母語話者 と非母語話者 による4者
間の会話 を分析 した。その結果、会話の参加者である4人
の間で、参加者の組み合わせ を動的に変化 させ なが ら、言語的行動 に伴 っ て、様 々な非言語的行動 を巧みに調整 しつつ、会話への参加・不参加 の態度 を 示 している ことが明 らか になった。その具体的な特徴 として、以下の4点
が観 察 された。1)「 あの
Jと
言 った り、他 の参加者 を見 た り、膝 を叩いた り、体 を前 に傾 け た りして、言語的・非言語的 に他 の参加者の注意 を引 き、会話への参加 を 促 してい る。2)言 語的行動 に伴 って、視線 を向けた り、姿勢 を変化 させ た り、手 を机 に載 せ た り、手 を前後 に動か した りす る非言語的行動 によって、参加 ・不参加 の態度 の度合 を変化 させて表出 している。
3)4人
の参加者が しば しば2つ
の グループを形成 し、 グループ内で同調 した 視線 や姿勢の変化 な どの同時行動 を行 って、似通 った参加態度 の表出 を してい る。
4)依 頼 と承諾・断 りとい う駆 け引 きを している
2人
の参加者が言語的・非言 語 的 に似通 った行動 (視線 。手 の動 き 。姿勢 を変 える、机 を叩 く、 ささや く、笑 う等)を
す る ことによ り、互 い に会話への参加態度 を示 している。つ ま り、頭や手、上体 な どの体 の部分や視線 を会話の空間に入れて参加態度 を
示 し、反対 に、体 の部分や視線 を会話 の空 間か ら外 し、不参加態度 を示 してい る といえる。 この ような非言語的な参加態度の表 出は、言語行動 と体系 的に結 びついてお り、参加者 にとって、他の参加者の会話へ の参加の度合い を視覚的 に理解す る手がか りにもなるといえる。特 に、今 回分析 した ような複数の参加 者 か らなる会話 は、参加態度 を互 い に示 しあ つた り、同時行動 を し合 った りす る参加者 同士 の組み合 わせが動 的 に変化 しなが ら進行す る とい える。 そのた め、
2者
間の会話 よ り、複数 の参加者 に よる会話 の方が、会話へ参加 しようと す る態度 の表出が参加者全員 に常 に強 く要求 される とは限 らないので、参加 ・ 不 参加の態度 の表出の度合の差が参加者間で明確 に異 なって くるといえる。そ れは、夕1えば、会話夕虫2)のように、高志 とスーによる依頼 と承諾 ・断 りの駆 け 引 きと直接 関係 のない八重 とロンが、積極的 に参加態度の表出 を しな くて もよ か った とい うことか らも分かる。今 回分析 したデー タは、 日本語母語話者 と非母語話者 による
1会
話 であ り、ここでみ られた言語的・非言語的行動の分析結果 は、個別的な事象で もある と もい えるが、 また、個人や 日本語、母語話者 ・非母語話者 などの特徴 を超 えた 普遍的 な事 象であるとも考 えられる。そ して、 これ らの会話への参加態度の表 出方法 をどの ように日本語教育へ応用で きるかについては、次の ようなことが 考 え られ る。 まず、言語的、非言語的 な参加態度 の表 出方法 について、教 師 自 身が意識 的 に捉 え、教室活動 を行 う際、学習者 の会話練習へ の参加態度 を判 断 す る際の指標 と し、学習者 をよ り積極 的 に会話練習活動へ参加 させ る ように働 きかけることがで きる といえる。 また、学習者 自身にも自身や他者の参加す る 会話 を撮影 した ビデオを見せ 、言語 的 ・非言語 的 な参加態度の表出方法 につい て、客観的 に観察・分析 し、 よ り効果的な会話への参加の仕方 を考 えさせ る機 会 を与 えるこ とがで きるであろ う。そ して、実際 に学習者が会話 に参加 してい る際 に、客観 的に自身や他者の会話 を瞬間瞬間で観察 し、会話の中で今何が起 こっているか 自らの力で的確 に判断す る能力 を育成 してい くことがで きると考 え られる。それによって、Bennett(1980)が い うような「 リズムの流 れ を形成 す る能力」 を体得 し、同時行動 な どによる、 よ り心地 よい リズム とともに、会 話 に参加 で きる ようになるのではないか と思 われ る。 また、 どうして も会話 に うま く参加で きない学習者 には、言語的行動 とともに、 まず体 を用 いて、意識
‑91‑
的 に会話相手の体の動 きに合わせた同時行動 を してみて、相手 との心地 よい リ ズム を形成 してみる練習 をす るの も有効か と思われる。 この際、学習者の第一 言語 で も用 いている普遍 的な言語的・非言語的な参加態度の表 出方法 を日本語 での会話で も有効 に活かす方法 を考 えさせ ると同時 に、 日本語特有の参加態度 の表示方法 を理解 させ る ようにするのが よいであろう。
この ような 日本語教育への応用 をよ り具体的にしてい くために も、今後 の課 題 として、研究者、教師、学習者 による、 より多 くのデータの分析 と、学習者 の第一言語 と日本語の会話での相違点、母語話者 と非母語話者の会話への参加 方法 の違 い。)を明 らか に してい くこ とが必 要であ る と考 え られ る。 また、 よ り 綿密 な非言語 的行動 の分析 のため に、数台の ビデオカメラによる角度 を変 えた 録画方法 な どを工夫す る必要 もあるといえる。
文字化表記方法
ザ トラウスキー (1993)を参考に以下のような方法で行った
図の中の矢印
‑
手や頭、姿勢の動 きを示す。… … …
) 視線の方向を示す。
下降のイ ン トネー シ ョンで文が終了す ることを示す。
ご く短い沈黙、あるいはさらに文が続 く可能性がある場合の「名詞句、副 詞、従属節」等の後に記す。
? 疑問符 ではな く、上昇 の イン トネーシ ョンを示す。
「―」の前の音節が長 く延ばされていることを示す。
〃 同時発話
││
笑い等の非言語的行動その他
││ 話 し手 自身
/話
し手 と同 じグループの参加者の非言語的行動 は、発話の上 に記 した。話 し手ではない参加者の非言語的行動 は、話 し手の発話の下 に 記 した。くWH ヽVH〉 ささや き声で発話 された もの
本研 究 は、 16年 度 早稲 田大 学特 定 課題研 究助 成 費 「 日本 語 母語 話 者
/非
母 語 話 者 間 の会話 にお け る言 語 的/非
言 語 的 な参 加 態 度 の示 し方」 の研 究 成 果 の一 部 で あ り、 第 14回 社 会言 語科 学 会研 究 大 会 で発 表 した もの に加 筆修 正 した もの で あ る。注
(1)考え中やため らいなどで、発話が中断 している際 も、一時的に視線 を合わせない瞬 間がある。 この ような場合 も、一時的に会話相手 との会話 を中断 して、不参加態度 を 示 しているもの とする。
(2)母語話者 と非母語話者 による参加態度の示 し方の違 いの分析 については、中井 (2005)参 照。
参考文献
ザ トラウスキー、ポリー (1993)『 日本語の談話の構造分析―勧誘のス トラテジーの考 察―』 くろ しお出版
中井陽子 (2004)「日本語の会話における言語的
/非
言語的な参加態度の示 し方―初対 面の母語話者/非
母語話者による 4者 間の会話の分析J『第14回社会言語科学会研 究大会予稿集』pp 107 110 社会言語科学会一一一一 (2005)「会話のフロアーにおける言語的
/非
言語的な参加態度の示 し方―初 対面の 日本語の母語話者/非
母語話者による4者 間の会話の分析J『第15回社会言 語科学会研究大会予稿集』pp 214 217 社会言語科学会Bennett,Adrian 1980 Rhythmic analysis of multiple levels of communicative behavior in
face―to―face interaction Aspects of nonverbal communication, ed by Ⅵralburga von Raffler―Engel Lisse:Swets and Zeitlinger
Erickson, Frederick 1976 Gatekeeping encounters: A social selection process Anth―
ropology and the public interest, ed by Peggy Sanday Ne、 v York: Academic Press pp lll‑145
‑ and Jeffrey Shultz 1982 Thc counselor as gatekeeper: Social interaction ininterviews New York:Academic Press Goodwin,Charles 1980 Restarts,pauses,and the achievement of a state of mutual gaze at
tu rn―beginning Sociological lnquiry 501 272‑302
‑ 1981 Conversational organization: Interaction between speakers and hearersNew York:Academic Press Kendon,Adam 1990 Conducting interaction Cambridgei Cambridge University Press
―‑ 98 ‑―
会話伊Kl):お名前 は? 全買 下を/27いている。
高志 ぼジュースをないでいる。
ノt重とスーはジュースを欺んでいる。
ロンカう専まを月 て、 下を膚 ぐ (図
1)
‖1( 60秒
間の沈 黙)
スーカゞ高志 を月て、前傾姿勤̲‐なる。
││
ロンカ=高志 を月る。
ロンカゞ膝 ″/7〈。こどθソ
″ンカ瀬 を″′ナて前傾姿勢になる。″7̀リ
││ ││ ││
2
ロン:
あの 一、お名前 は?
││ ││
高志 とノt重力泊 ンを月る。こ25ノ
高志力ゞ下を月る。
ノt重力'高志 ″ 泌 。
高志 とス重″ゞロンを月る。
こ22、 2θ
'
こ図7ソ││ ││
3高
志:
ああ、高志 、高志 です。ロンとスーカ漆 勢を多夕 こ戻 す。こgθ ソ
││
4ロ
ン: 高志。5ス
ー: 高志 、 ええ、あ一。″ンカ幸訪まを月 る。
││
6ロ
ン: あ― すみ ませ ん 、 け ど、私 は名 前 に 、名 前 が下 手 な ん で す。││ ││
スーカ泊 ンを月 る。
高志 と/t重″シ ンを月 る。
7
全員: 1笑 い│
θリ会話伊
K2):会
計学 の クラスノt重力泊 ン とス ー を交 互 に月 る 。
││
1八
重: 一緒の クラスなんですか、陽子 さん と?2ロ
ン:
と、 ううん、違 い〃 ます。3ス
ー:
違います。4
ロン:
と、私 は日本語の三年生 です けど。ノt重″ツ ーを月る。
ノ建藪″ゞr7ンを月る。
││ ││
5八
重: ふ―ん、え、 メジ ャーですか?6ロ
ン: あ一。7ス
ー:
はい、私は日本語の、日本語 と会計学のメジャーなんです。8高
志:あ―。9ロ
ン:わた、私 は、えっと一、地理 と日本語の、専門だ。ス重″'高志 を月る。
ノt重¨ 膝 をr17ぐ。
││ ││
10八重
:
あ一、な、会計学 だよ。11高志
:
そ う。12八重: 教 えてもらいな。
13高志
:
え?1笑い│14スー
:
いやあ。 1笑い│高まカオ 手で材を″ 〈。
高志″法 ―を月る。
││ ││
15高志:えっそ、今〃 ち ょっと困 ってて。
―‑ 95 ‑―
スーカ墟 チ●況をr17き、左手を死に置 く。
││
16スー
:
まだ会計学の高レ 治 手をθ回縦l̲振つて、力̲眉〈。
高志力ゞ両手を死l̲‐置 く。こどJの
││ ││ ││
17高志
:
ちょっとま じな話〃 で、本当に。18スー:
高志力河 デを況l̲ど〈。
││
19高志
:
ほん とに。20スー:ま だ会計学のクラスは、あの、始まってないので。
21八
重:あ、そ うですか。││
スーカオ 手を少 ιヌ/ぐ。
22スー: ぇ ぇ。
高志″オ 手●列を″き、両手を列に置 く。
││
23高志
:
え、 じゃあ、Cの ?24スー:はい、あの、一応 プ リビジネス?
高志カラ 傾姿効‐
なる。1図■■ソ
││
25高志:〈
WHあ
、ほん とに?WH〉スーカゞ前傾姿勢l̲なる。
││
26スー:〈
WHは
い。WH〉27高志
:〈 WHほ
ん とに?WH〉28スー:〈
WHは
い。WH〉29高志
:
くWH同
じなんです けど。WH〉30スー: 1笑い│
31高志:いや、本当に、冗談抜 きで。1笑い│
スーが下を月る。
スーカオ 手を前に出す。 ″
││ ││
32スー: いや、 ちょっ、そ うですか。
高志″'両手で材をθ Ξr17いて、
″7ノ″ 夕に置(。
││ ││ ││
33高志:ちょっと今 、アカウンテ ィング、ほん と困 ってる。
││
スーカう高まを月る。
スーカ奮 手で″分の算を考す。
スー″オ チを初に置 く。
││ ││
34スー: あ、私 も本当に困 ってます。
スー″,左チを現からグ/いてFろす。スーカゞ後ろl̲姿勢を戻す。
││ ││
35スー: //ど う しよ うかな と。
36高志
:
え、な、今 どれ をどれ を取 ってるん?〃 どの クラス。
37スー
:
いや、今は取 ってないんです、実は。1笑い│高志力ゞ下を洵 ぐ。
││
38高志:あっ取 ってない。//1笑 い│ スーカゞ下を洵 ぐ。
││
39スー
: 1笑
い│ノ建曇″
'ス
ーを月る。
││
40八
重:1笑い│―‑ 97 ‑―
41高志
:
そ うかあ。││
スーカ'高志 を月る。
スーが下を/●7く。(gノク
││
42スー: ええ。