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北海道指定希少野生植物の保全研究: 分類の再検討

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2018 年 2 月 8 日

北海道指定希少野生植物の保全研究:

分類の再検討, 日韓中露の遺伝構造解析, 植物園保全株の由来推定・植え戻し・生態展示 環境資源学専攻 生物生態・体系学講座 植物生態・体系学 田村 紗彩

1.背景と目的

北海道では,絶滅危惧植物の中でも特に保護すべき 24 種を指定希少野生植物に選定している。

しかし,これには近縁種との間に分類学的混乱があるといった問題や,東北アジアの同種集団との 遺伝子流動の有無を調べずに北海道のみで保全しているといった問題がある。本研究では,指定希 少野生植物のより効果的な保全に資することを目的として,1.分類学的混乱の解消,2.種の分布 域全体の遺伝構造の解明と進化的重要単位(ESU)の検討,3.北海道内における遺伝構造と管理 単位の検討,4.植物園で保有する由来不明の生息域外保全株の由来推定,5.道指定種の保全の重 要性を伝える生態展示の実施,を行った。1 はユウバリクモマグサ(ユキノシタ科)を対象とし,

2–5はエンビセンノウ(ナデシコ科)を題材とした。本発表では主に2–4を扱う。

2.方法

エンビセンノウは,日本(北海道,青森,長野),韓国(江原道),中国東北部(吉林省),極東 ロシア(沿海地方)の湿性草地に生育する。分布域を網羅して野外集団と標本のサンプルを用い,

核マイクロサテライトマーカーと葉緑体DNA塩基配列データにより,地理的遺伝構造と分布拡大 シナリオを推定し,これに基づき,東北アジアにおける ESU を検討した。また,北海道の全集団 からのサンプルを用いて道内の遺伝構造を解析し,地域スケールにおける管理単位の検討を行った。

さらに,北大植物園で生息域外保全している由来不明株のマイクロサテライト遺伝子型と,種の分 布域を網羅した遺伝子型データを対照することで,由来推定を行った。

3.結果と考察

東北アジアの分布全域における遺伝構造解析から,およそ,北海道,ロシア沿海地方,中国東北 部,韓国,長野の5クラスターが認められた。北海道とロシア沿海地方,長野と韓国および沿海地 方南部の集団が各々遺伝的に近縁で,一方で北海道と長野の集団間には比較的大きな遺伝的分化が 見られた。遺伝的多様性は北海道,長野で低く,中国,ロシア,韓国で高かった。本種は,東北ア ジア大陸部を祖先地域とし,ロシアから北海道への北ルートと朝鮮半島から本州への南ルートの2 ルートで日本へ分布拡大したと推察された。日韓中露の集団の最も近い共通祖先の年代は13(40–

0.3)万年前と推定され,氷期の日本海の縮小・陸橋形成が分布拡大を促したと考えられる。種の分 布拡大ルートの両端にあたる北海道と長野の集団はESUとして区別され,生息域内・生息域外保 全においては種分化を含めた進化可能性の保全,潜在的な異系交配弱勢の防止に留意すべきである。

北海道集団は3クラスターに分かれたが,集団の地理的配置との間に相関はなく,同じクラスタ ーに地理的に遠い集団が含まれる例も見られた。近年の開発で湿地が減少し,大きな祖先集団が分 断化した結果と考えられる。道内集団間に適応分化はないと推察されるため,道内集団は単一の管 理単位とし,各クラスターの固有アリル保有株について生息域外保全すべきである。

北大植物園の由来不明の生息域外保全株は,長野県八ヶ岳に由来することが推定された。北大植 物園では北海道産の株も栽培している。栽培下での遺伝子汚染を防ぐため,1植物園あたり1地域 由来の株を生息域外保全すべきである。

参照

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