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⼦欧米,アジアの経験から学ぶ 保険研究・教育の展望⼧

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Academic year: 2021

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【司会:岡田 太】これから20分までパネルディスカッションとなっていま す。

⚓つの学会にはそれぞれ特徴があったかと思います。日本保険学会に与え る示唆も考えて,もう一度,それぞれの学会に必要なディシプリンについて 伺います。併せて,柳瀬先生よりアメリカの ARIA が改革を進める中で,

実務との距離が離れてきているという問題提起も頂きました。逆に言えば,

日本保険学会は実務との連携が伝統的にありますので,それをどのように考 えたらいいのか,そのことについて伺いたいと思います。柳瀬先生の ARIA,

藤井先生の EGRIE,APRIA については大倉先生も長く研究をされています ので中林先生と大倉先生,⚔名の皆さんからディシプリンと実務との関係に ついて見解を頂きたいと思います。

【柳瀬典由】ディシプリン,つまり,研究の枠組みの話ですが,ARIA は初 期の頃,実際の保険契約の現場あるいは保険ビジネスの現場でどういうこと が起きているかという記述的な研究が,戦前から戦後の早い段階までは多か ったわけです。しかし,どの学問分野も同じかもしれませんが,実務の方の レベルがどんどん上がってきます。上がってくると,当然,現場で起きてい ることについては実務の方がよく知っているし,海外とのアクセスもどんど ん密になり,情報収集のレベルも上がります。そういう中で,学術として何

⼦欧米,アジアの経験から学ぶ 保険研究・教育の展望⼧

平成30年度大会シンポジウム

第⚑部⽛海外学会から見る保険研究の動向⼧

パネルディスカッション

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が貢献できるのかということが,改めて問われ始めます。そこで,研究の枠 組みというかアプローチとして,ディシプリンの重要性が非常に強調される ようになったのです。

ARIA の危機感として,日本とやや違うところとして感じるのは,講座間 競争,学問間競争の激しさです。簡単に言うと,弟子を簡単には残せないと いうことです。業績競争が厳しくなってくると,分野として生き残りをかけ て,言葉は悪いのですが,なりふり構わず業績を出してアピールをしていく,

そういった中で改めて,学問としてのディシプリンの重要性が再確認されて いくということが,アメリカで起きたのではないかと思います。日本に関し ては少子化の中で,大学の講座数は減っていますし,とりわけ社会科学に対 する予算の削減はすごく強いものがあります。そういったなかで,今後ます ます,商学・経済学系の保険研究のディシプリンをどう考えるか,また,そ れを外部の人たちにももっと積極的にアピールしていかないと,かつての北 米が経験した困難と同じような状況に直面してしまうのではないかと心配し ています。

実務との距離に関しては,先ほど藤井先生の報告からもありましたように,

新しい協力関係をどのように構築すべきかが問われているのだと思います。

例えば,ディープ・パラメータの推計に関するデータのアクセスなど,出て きた結果に関して実務的直感で考えて,これは妥当な結果といえるのかどう かという議論等で,新しい形で協力し合うことができれば,ある意味,

ARIA ができなかったような関係性を世界にアピールしていけるチャンスは あると思います。それはどういう具体的な形でやるべきか,かなり課題が多 いと思います。

【司会】引き続きまして,藤井先生,いかがですか。

【藤井陽一朗】EGRIE に関しては,現状として実務とは完全に分離して我が 道を行くというスタイルを取っています。ただし,昨年参加をした時に話題

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になっていた話として,インパクト・ファクタが0õ31で,EGRIE での報告 を含めると採択率が極めて低い,激戦にもかかわらず,ジャーナルのインパ クト・ファクタが極めて低い。もう少し正当な評価をしてほしいけれども,

数式ばかり出していても誰も見向きもしてくれない。だからインパクト・フ ァクタが低いのではないかということです。EGRIE に若い人たちがかみつ いていたのは,仲良しサークル化をしていないかということで,できれば実 務の方の意見も入れて,どんどんインパクト・ファクタを上げる方向に動か ないといけないのではないかと,大げんかもしていました。現状としては極 めて抽象的なモデル分析で,ディープ・パラメータの推定という形で研究自 体は推移しています。その辺をどのように改善しようかと若手がしきりに手 を挙げて改革を訴えているのが現状です。

私の報告でも入れたのですが,日本が持っているような,ふんだんなデー タベースがあることを私もつい最近教えていただきましたので,実はこれら のデータベースを使って論文が書きやすいという状況があります。日本保険 学会で果たしていく役割としては,学会のホームページにアクセスをするこ とで,こういうデータベースがあり,こういう分析ができるところまで示唆 をしてあげることによって,私が発表した EGRIE でもかなり闘えるのかな という印象は抱いています。

【司会】では続きまして,中林先生,いかがですか。

【中林真理子】ディシプリンに関する話で言うと,APRIA は基本的には ARIA の流れを引いているのではないかと思います。細かいことは大倉先生 からも話があると思います。実務との関わりに関して⚑点だけ加えますと,

アワード受賞論文のタイトルからもわかりますように,保険数理に関する分 析が非常に多くて,なおかつ,各国のアクチュアリー会などとの関連も強く なっています。これらの面での実務とのつながりが以前から強くて,今も強 いと感じています。

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【司会】大倉先生,いかがですか。

【大倉真人】少し違う視点から述べます。ARIA はアメリカの保険学会です ので,どちらかというと出てくる研究はアメリカないしはカナダを含めた北 米をフィールドにした研究が多いのです。EGRIE は藤井先生からも話があ りましたように,どちらかというと普遍的な理論が多いのです。それに対し て APRIA はアジアと一口に申しましても,中林先生の報告にもありました ように,アジアの多数の国から参加者がいます。タイトルを見ると,何とか in Japan とか,Korean 何とか,Chinese case study など,国名が入っている ものが多いのです。そうなってくると,各国の保険制度がどうなっているの か,あるいは現実の保険産業,保険市場においてどういう国別の特徴がある のかということが,当然そういう論文においては重要な役割を果たしてきま す。APRIA に参加をされる時に,例えば日本はこうなっているという話は 非常に示唆的です。特に藤井先生の報告の中にあったと思いますが,日本は 少子高齢化が世界で最先端に進んでいる,いいことか悪いことかはさておき,

そこでの取り組みがどうなっているか。特に日本の場合は情報発信が日本語 という,他国の人だと分からない言語で発信になっているので,日本の実際 はどうなっているかを APRIA の現場で述べていただく,ないしは,それに ついて何かインプリケーションを出していただくということでも十分な研究 になります。実務の方とコラボをして,日本の保険の市場の現状,現状から 導かれるようなもの,経済分析あるいは実証がだんだん主流になってきてい ることは事実ですが,全てがそうというわけではないのです。実務の方から の実務的な示唆や,研究者が持っていないような実務的な勘所,それが意外 なインスピレーションを呼んだりする時もあると思います。実務界と学会と のコラボは十分にありますし,かつ,それによって生産的なものが生み出さ れる可能性があるのではないかと思っています。

【司会】特に打ち合わせをしなかったのですが,山﨑先生に。ディシプリン

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うんぬんではなくて,アメリカで研究されていた時にファイナンス系の学会 にも参加をされていたようですので,ファイナンス系の学会と,あるいは日 本と海外の保険学会の違いなどがありましたら,あるいは共通点などを簡単 に説明していただけますか。よろしくお願いいたします。

【山﨑尚志】私はファイナンスを専門にしていますので,アメリカにいた時 はアメリカ・ファイナンス学会の年次大会に参加していました。アメリカ・

ファイナンス学会の年次大会になりますと,さらに採択率が低くて,なかな か日本で研究をしていると,そこで報告することもままならないという状況 です。

あと,在外研究に行っていた時にワシントンで ARIA が開催されていま したので,こちらにも参加しました。最初に柳瀬先生から説明もありました ように,ディシプリンが共通していると,そこの部分での参加がしやすい,

要するにファイナンス学者がこういった保険の学会に参加しやすい環境にな っているわけです。したがいまして,結局コミュニケーションになると思い ますが,コミュニケーションがしやすいことはお互いに参加しやすいという 反面,競争がかなり激しくなっているのです。ファイナンス系の学者たちが 保険系の研究にどんどん乗りだしてきて,その結果,研究の水準がどんどん 上がっているというような現状を肌で感じた次第です。

【司会】今回の報告の中で日本の保険学会はなかなか言いづらい面はあるか と思いますが,どんなことを学ぶべきかというアイデアや,同じことをやる のがいいのかどうか。それぞれ国際学会の役割もあるかもしれませんし,日 本は日本の保険学会の役割もあると思うので,一概に答えは見いだしにくい かと思います。これまで柳瀬先生は楽しそうに報告をして,海外へ行くとや はり違うのかと感じまして,我々がどんな示唆を得るべきか,もう一度順番 どおりに,柳瀬先生からお願いします。

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【柳瀬】改めていうまでもないことなのですが,わが国の保険研究の蓄積は 相当深いものがあると思います。ただし,その研究の蓄積については,共通 の⽛言葉⽜(ディシプリン)ではなく,非常に多様な⽛言葉⽜(ディシプリ ン)で表現されながら蓄積されてきたのだと思います。たとえば,今,

ARIA から学ぶことがあるとすれば,これまでの豊富な学術的蓄積を,⽛経 済⽜という⽛言葉⽜(ディシプリン)を使って表現(置き換えを)すること が大事だと思います。たとえば,法と経済学やゲーム理論など強力な⽛言 葉⽜(ディシプリン)が次々と開発されています。日本保険学会が,こうし た置き換えの部分の努力を皆でしていけるような学会になればいいと個人的 には思っています。私も山﨑先生と同じでファイナンスの学会や経済の学会 に行って発表をすることも最近多くなってきました。一番悔しいのが,保険 という分野が過小評価されるところです。それを彼らにも理解できる⽛言 葉⽜でプレゼンテーションし続ける努力が必要かもしれません。ただ,こう したアピールが全体としてできているかというと,ARIA ですら,何十年も 努力をして,それでもまだ2011年のクライシスがあるわけですから,これは かなりの時間がかかるかもしれません。とはいえ,過去からの保険学会の蓄 積を過小評価されないように,体系的,組織的に何か対応する努力は非常に 重要であり,そうしたことを皆で議論できる学会を目指すことができれば,

個人的には大変心強く感じます。

【司会】藤井先生はまだ⚒年目なので,なかなか答えにくいところもあるか と思います。そこで一言あればお願いします。

【藤井】私は EGRIE に何度か参加をしています。日本から来たというと,

実は非常にちやほやされます。なぜかというと,先ほどのスライドでも説明 したように,日本のデータがいろいろ欲しいと言われますが,日本人はなぜ 来ないのかと,もっと連れてこいと言われます。何となく輪の中心に連れて いかれて,非常にちやほやされます。実証研究に関して言えば,少なくとも

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海外でも十分闘えるようなデータの蓄積もあると思います。そこを軸に最初 は闘っていくことが,EGRIE に参加している側からすると,そういう印象 を強く抱きました。ついでに言いますと,EGRIE ですのでヨーロッパです から,わりと良い観光地でも開催されますので,ぜひ参加を一度してみませ んか。

【司会】中林先生,いかがですか。

【中林】APRIA に関して言いますと,APRIA 自体もいろいろ今は悩んでい る面もあって,ARIA などの経験から学ぶことが多いと思います。それと同 時に,今までの話にあまり出てこなかったのですが,日本保険学会は法律の 方もいれば,経済の方もいる,実務の方もいるという状況が非常に素晴らし いと思います。これは海外での事例では出てこなかった部分ですが,今ある この資源をどう生かすべきかを考えることが一つの視点になるのではないか と思います。

【司会】大倉先生,いかがですか。

【大倉】今の中林先生の話の付け加えになります。まさに中林先生が言われ たように,この日本保険学会は経済・経営系だけではなくて,法律系の方,

実務の方,多種多様な方が⚑つの学会という組織の中に属しているという特 徴があります。そうすると,それぞれの方の持っている研究資源がうまくコ ラボをすれば,かなりの力になるのではないかと思っています。海外の学会,

APRIA などに行って発表を聞いているとよく思うのが,海外では今ものす ごいスピードで研究が進んでいるということ,世の中がものすごいスピード で動いていることもあり,共同研究の形,⚒人以上の人が研究をして,場合 によっては⚓人,⚔人というのもよく見ます。お互いの長所を生かして⚑つ の研究をつくるというタイプが多いのです。日本の場合は,まだ,どちらか

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というと単独研究が主です。単独が駄目,複数がいいという善悪を論じるつ もりはないのです。当然,世の中のスピードや方法論の変化が速い中で,⚑

人でキャッチアップをするのと,⚔人でキャッチアップをするのであれば,

どちらがよりクオリティの高いもの,ないしはより完成度の高いものがつく れるかとなると,やはり⚔人は有利というのは否めないのです。共同研究の 進め方を考えていくのが,今後,日本保険学会,日本の保険学がインターナ ショナルで闘っていく時に考えなければならない方向になるのではないかと 思います。

【司会】最後に山﨑先生,いかがですか。

【山﨑】先ほどの先生方の報告を聞いて感じたことですが,海外の学会で発 表となると⚒つのハードルがあります。

⚑つ目は英語のハードル。日本人ですから言語的なハードルがあります。

さらに,海外の学会になってくるとかなり研究レベルも高いので,研究レベ ルのハードルという⚒つ目のハードルがあると思います。

ここから国内の学会でどうしていくべきかと言いますと,個人的な意見と しては日本でやっている学会である以上,英語で報告するとか,英語で資料 を作るとか,必ずしもその必要はないと思っています。

最近,日本の学会の中でも,英語で受け答えをするような場を設けている 学会は増えています。もちろんそれは意義のある試みですが,必ずしもマス トではないと思うわけです。では,何をすべきかと言いますと,日本語での 研究報告であっても,その内容をそのまま英語に置き換えれば十分海外の研 究水準に達するだけの内容の研究を行っていくことを,日本国内の学会で後 押しすれば基本的にはいいと思うのです。良い研究であれば,多少つたない 英語であっても向こうの人たちは受け入れてくれます。国内の学会でまずや るべきこととして,研究の水準を高めていくことが一番重要ではないかなと 思います。

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【司会】我々としても海外の学会から学ぶべき示唆が多く得られたかと思い ます保険学会は⽛学会の活性化⽜を目指して引き続き新しいチャレンジに取 り組んで参りますが,今日ここにいる皆さま方への何かしらの気付きがあれ ば幸いです。

それでは,少々時間がすぎましたけれども,これより休憩に入りまして,

当初のプログラムどおりに再開したいと思います。どうもありがとうござい ました。

参照

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