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下医大誌 49(2):89,1991
学際化と国際化の効用
東京医科大学名誉教授
加 藤 正 明
国際化は最近とくに目立つ現象だが,学際化のほうは余り活用されていないようである.
医学の情報だけでも急激に増えて,お蔭で文献を湖って集めると大変な量になる。これは一種の 情報過多症ともいえよう.戦前はドイツ語が主体で,佛英を入れても数は限られていた.それでも 自分の独創だと思っていたことが,はるか10年前にちゃんと述べられていて,がっかりしたこと
もある.
国際化に加えて学際化もますます広がっている.日本の医学領域だけでも1991年に開かれる主 な学会が431ある.これに加えて人文科学,社会科学の領域から理工学,生物学などの幅広い学際 領域がある.学際化と国際化が加わって,われわれの周辺の情報量が膨大になっている.だがこれ
らの学際情報のなかから,自分の専門領域に対する新しいヒントやひらめきを得ることが少なくな いように思われる.
クロード・ベルナールの「実験医学入門」に代表される19世紀の因果決定論は,医学を純粋な自 然科学にしょうと試みた.しかし現代の医学は多元的相関的にならざるを得なくなっている.ま た,ex juvantibus診断では診断軽視に陥りやすい.ことに臨床医学は経験科学だとされているが,
これには学際化と国際化が大いに貢献すると思われる.
以上の意味で学際化と国際化は,毎日のステレオタイプな臨床や研究,教育に対して,多くの新 鮮なアイディアや方法論のヒントを与えてくれるに違いない.
最近の若いドクターは自由に外国で勉強ができるようになり,医学以外の他の科学の領域の人た ちとっき合う機会も増えている。自分の専門領域にある程度は首をつつこまないとディレッタント になる恐れがあるが,余りに狭い領域だけの専門バカになることも問題がある.
いずれにせよ,これからの若いドクターばかりでなく,日本の医師が学際的一国際的領域で活動 していくことから,今後の日本の医学のみならず,日本の医療の新しい展開が期待できると思うの
である.
近ごろ,国際学会のみならず,学際的な学会や研究が行われるようになってきている。狭い毎日 のステレオタイプな思考からの脱脚には,学際化と国際化が有効だと思われるがいかがなものであ
ろうか.
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