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バレーボールにおける企業間競争

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バレーボールにおける企業間競争

~ミカサを軸に~

1190515 西川 莉子

高知工科大学経済・マネジメント学群

はじめに

テレビのバレーボール試合中継で、目に飛び込んでくる鮮 やかな黄色と青色2色のバレーボール。

現在バレーボールは、プロリーグの注目度はさほど高くな いものの、ワールドカップやオリンピックなど代表戦になる と一段と注目度が上がり、日本だけではなく世界中で熱狂し ているスポーツであると言っても過言ではない。また観戦す るだけでなく、部活動など自身が行なう競技としてもバレー ボールは非常に人気が高い。図1平成29年度全国高等学校体 育連盟、加盟・登録状況を見てみると、男女によってランキ ングは異なっているがどちらもトップ10にバレーボールが 入っていることが読み取れる。女子にいたっては競技人口が 一番多いことが分かる。この図は高校生の部活動のことにつ いて記されているが、中学生も同じような結果になっている。

このことから、中高生の女子はバレーボールの競技が圧倒的 に人気であると言える。

1 高校生が入る部活動

出所:http://www.zen-koutairen.com/f_regist.html

さまざまなスポーツが盛んな中、どのスポーツをするにも 道具(用品)が必要になる。バレーボールでは、ボールやネ ット、ホイッスルなどである。これらを提供するスポーツ用 品産業はさまざまな企業から構成されており、大企業や中小 企業が入り混じって激しい企業間競争を展開している。国内 のスポーツ用品業界ではアシックスとミズノが全体の売上高 の半分を占めており、海外にも進出している。ただその一方 で、アシックスやミズノ以外にも世界を舞台に活躍している ドメスティックニッチ、つまり中小規模である特定の製品に 特化して頑張っている企業で、かつ世界的にも有名な企業も ある。

私自身バレーボールを約14年間続けており、日頃から親し みのあるスポーツ用品をたくさん使用してきた。その中でも バレーボールに絶対に欠かせない「ボール」を製作している 企業に興味を抱いた。ボールを製作している企業は、ミカサ とモルテンの2社が挙げられる。この2社は同じ広島県にあ る企業でどちらもゴムの製造から始まっている。実は、両者 が先にあげたドメスティックニッチ企業なのである。

そこで本研究は、広島県のボールメーカーであるミカサが なぜ世界で活躍できる企業になったのか、その革新性を検討 していく。また、同じ広島県企業であるモルテンとバレーボ ールの「認定球」をめぐって激しい競争を展開しており、そ の企業間競争についても言及していく。最後にこれらの検討 を通じて、中小企業のスポーツメーカーが世界的に活躍でき る手法についてできるだけ明らかにしていくこととする。

第一章 スポーツ用品業界のはじまり

日本のスポーツビジネスは、スポーツ用品産業が生まれた 時に始まったと言っても過言ではない。「1960年代頃まで、

スポーツ用品は日用雑貨と同じ扱いだった。スポーツ用品店 は町の運動具店において細々と営業を開始した。そんな中、

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2 1960年代中盤の東京オリンピックを機に流れが一転。今まで は、卸が主導権を握って商品を製造してきたが、それを今度 はメーカーがブランド戦略を行うように切り替えた。その結 果、現在のスポーツブランドが誕生した」(ホームメイト・リ サーチマーケットピア)と言える。

そして、近年ではスポーツ用品メーカーによるファッショ ン性の強い商品分野への進出が進んできている。スポーツ用 品は単なるスポーツをするためだけの物と捉えがちだが、現 在では、ランニングブームなどからスポーツへの関心が高ま り、スポーツ用品メーカーの商品をファッションの1つとし て楽しむ風潮ができたと考えられる。そうしたニーズに目を つけ各社ともスポーツ用品メーカーとして培った技術を活用 し、オシャレかつ高機能な商品を販売している。こうした時 代の変化もまたスポーツ用品業界の発展につながっているの ではないだろうか。

第二章 国内の中小スポーツ用品産業の現状と動向 第一節 株式会社ミカサ

①株式会社ミカサ概要

創業 大正6年 5月

所在地 広島県広島市安佐 北区安佐町久地 1 番地

代表取締役社長 現:佐伯 祐二 従業員数 約137

資本金 約12,000万円

出所:株式会社ミカサHP http://mikasasports.co.jp/jpn/company/

より作成

ミカサの事業には大きく分けて2つの柱があり、1つはゴ ムを活かした工業用品部門、もう1つは各種競技用ボールと スポーツグッズを製造するスポーツ用品部門である。工業用 部門では、船舶およびポンプに使用する水中軸受やボウリン グパーツなどゴムの部品を製造している。特に水中軸受は大 型フェリーや巡視船、貨物船など大型船舶で活用されている。

一方スポーツ用品部門では、本社は広島にあるが、生産拠点 はタイとカンボジアで、日本では研究開発を進めている。製

品においては、バレーボール・サッカーボール・バスケット ボール・ハンドボール、水球などさまざまな種類の競技用ボ ールを中心に製造・販売を行なっている。またスポーツグッ ズの製品も多数あり、代表する商品としては、ボールカゴや ゼッケン、ラインテープなどがあり、主にバレーボール競技 をするときに必要な道具がモロモロある。

各種競技用ボールを製造・販売するにあたって、特にバレ ーボールに関しては、国際バレーボール連盟が主催する2020 年までの大会で唯一の公式試合球として使用されることがす でに決定している(ミカサ社HP)。また生産拠点を国内から 海外に移したボールと、市場を世界に求める工業用品の2 柱で「世界」企業に成長、さらに着実な発展をにらんでいる。

②株式会社ミカサの歴史

1917年、仲田國市がミカサの前身となる増田ゴム工業所を 創業した。当時はスリッパやゴム草履、リヤカーのタイヤな どの製品を製造していた。大正時代の学校教育として当時の 広島県ではドッジボールが幅広く行われており、体力の向上 や児童の育成を手伝いたいという目的からゴムを活かした競 技用ボールの製造を始めることになった。

1950年、本格的にバレーボールの製造を開始した。その背 景には、戦後の日本は国民の体力向上を目指してスポーツ振 興に力を入れている最中で、ドッジボールを作る技術を何か に活かせないかと考えた。当時スポーツが盛んだった広島県 の中でもっとも強かった種目がバレーボールであったため、

仲田社長はバレーボールの製造に踏み切った。また、これら の技術をもっと活用し、船のプロペラに使うゴム軸受けの製 造技術を開発し、現在では工業用軸受けの分野における代表 的な企業へと成長している。

1964年にミカサのボールが国際公式球として使用された。

東京オリンピック大会が開催され当時、東洋の魔女と言われ ていた全日本女子バレーボール選手チームが金メダルを獲得 し、ボール業界はおおいに沸き立つことになった。ミカサも その一企業であり、波に乗ろうとバレーボールを中心にシフ トをチェンジ、フル生産でバレーボールの製造に打ち込んだ。

その甲斐あってミカサのバレーボールは、1969年にFIVB ら国際公式試合球として認定を受けることに成功し、1972 20回ミュンヘン大会と1980年モスクワ大会以降のオリン ピック大会の公式球に選ばれている(NTTCOMWARE,2013)

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3 過去、真っ白であったバレーボールは、1998年にミカサが新 開発した3色カラーボール「MVL200」がFIVBによって公 式試合球に認定された。この時期から、カラーバレーボール が国際試合においてもスタンダードなボールとなった。そし て、2008年には新しい「MVA200」という青色と黄色の2 のカラーボールが公式試合球として採用され、現在も使用さ れている。そこで、ミカサはバレーボールのトップメーカー として成長していく。

成長を遂げた影には、ミカサならではの技術力や営業力が おおいに優れていたからであると言える。またこの歴史の中 でキーポイントとなっているのは、バレーボールにおいて公 認団体から認められるかどうか、公式試合で使われるかどう かであった。

ここで公認球や検定球の説明をすると、公認と検定は、各 団体のボール規格に準拠した製品に与えられることが定めら れている。バレーボールには色や大きさ、空気圧などの様々 な基準があり、その厳しい基準をクリアしたもののことを検 定球と呼ぶ。また、公益財団法人日本バレーボール協会(JAV) 国際バレーボール連盟(FIVB)などの大会主催者により、公

式大会で使用することを定めたボールのことを公認球と呼ぶ。

また公式試合球に選ばれるボールは、特定のメーカーが製造 する1種類のボールに限定されることが決まっているため、

何よりも安定した品質良いボールが重要だとされる。実際に は常に複数のメーカーのボールが両団体の検定球、公認球と して認定を受けている。

ここまでは、日本のバレーボール界は公式試合球であるミ カサ社のボールが頻繁に使用されているように思えるが、日 本ではもう1つの公式試合球として使用されているボールが ある。それが株式会社モルテンである。

第二節 株式会社モルテン

①株式会社モルテン概要 創業 昭和33年11月

所在地 広島市西区横川新町18号 代表取締役 最高経営責任者 民秋清史 従業員数 657人(単体)

資本金 31,614万円(日本本社)

出所:株式会社モルテンHP

http://www.molten.co.jp/corporate/jp/about/outline/ より作成 モルテンが行っている事業は4つある。まず1つ目が競技 用ボールとスポーツエキットメントの製造と販売、2つ目が 自動車用関連部品と製造と販売、3つ目が医療・福祉・健康 機器の製造と販売、4つ目が親水機材の製造と販売、産業資 材の製造と販売となっている。

その中の競技用ボールとスポーツエキットメントの製造と 販売では、「For the real game」と題され、その時の人々の 技術や意志が100%発揮されるとき、スポーツは本物となる というように訳される。また、バスケットボールのFIBA ールドカップ試合球をはじめ、ハンドボール、バレーボール、

サッカーなどの各競技ボールやホイッスル、ランカーなどの 開発、供給を行っている。

自動車関連部品は、「Fun and Functional」と題され、自 動車の楽しさと機能性を追求し、お客様の欲求を形にすると 訳され、ゴム・樹脂を材料とする、エンジン吸気部品やシャ シー部品、内外武装品など自動車を動かす基本性能に欠かせ ない製品を開発し供給している。

医療・福祉機器では、「From the Inside Out」と題され、

内から外へ広がる豊かな人生と健康で安心して暮らせる社会 のためにというように訳され、床ずれ防止用エアマットレス や生活動作を支える手すりなど医療や福祉の現場で必要とさ れる製品を開発し供給している。また床ずれ防止用エアマッ トレスは国内トップシェアを誇っている。この3つが主にモ ルテンの柱として大きく成長していると言える。

最後にビジネスとしては小さいが、新規事業として親水用 品・産業資材がある。これは独自技術の応用によって、社会 を支える新たな可能性に挑むとある。独自技術である高分子 素材加工技術や中空体技術を応用し、社会を支える製品を生 み出している。浮き桟橋や養殖用フロートなどマリン用品や 水に関わる分野の製品を製造・販売し、高速道路や鉄道など に使われるゴム支承などの製品も製造・販売している。モル テンはこうした様々な分野の事業を行い、幅広い場所で活躍 している。ゴムやプラスチック素材として扱う「高分子化学 加工」をコア技術に、世界で多角化を進めている企業である。

②株式会社モルテンの歴史

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4 株式会社モルテンは、195811月にもともとミカサ社を 退社した人達が本社工場を広島県広島市におき、創立したこ とから始まった。ちなみに「会社の社名である「molten」と いう単語は「溶解する、鋳造する」などという意味があり、

英単語のmeltの過去分詞でほかに「古いものから新しいもの に脱皮する」という意味もある。古くても良いものは残しな がら新しいものを積極的に取り入れる前向きな企業姿勢で歩 むという意味を込めてこの社名を付けた。」(ゴム報知新聞 NEXT)

翌年の19592月から第一号ボールであるバスケットボ ールが完成し、スポーツ業界に参入していくことになる。

19607月には、バレーボールが日本バレーボール協会より 検定球として認められた(モルテンHP)。そして、このモル テンのバレーボールが1964年第18回オリンピック東京大会 の公式試合球となったのである。以後、モルテンは1999 にカラーボール(MTV5IT)を発売し、2009年にはフリスタ テック搭載の新バレーボール(V5M500)を発売している。

このように、ミカサとモルテンは同時期に新ボールの開発を 行っていたことが分かる。

MVA200 V5M5000

2 ミカサ社製とモルテン社製の公式試合球

https://www.sportsauthority.jp/ec/display/item/?di=616 http://www.molten.co.jp/sports/jp/volleyball/product/ball_si ze4/detail/v4m5000-l.html

第三章 マーケティングの違い 2 社を比較して 第一節 ミカサの販売戦略

創業101年になるミカサ社はその歴史から得意なゴム素材 の特性を見極め、長年、ゴムを使った製品作りにこだわり続 けている。また、ミカサの主力事業のひとつに、国内トップ シェアを誇るものがある。それは、技術者たちがオーダ―メ

イドで作る船舶の軸受などの工業用製品だ。「お客様のニーズ をいかに先取りするか。」ゴムが原因となり、軸受から発生す る音が問題となっていたが、それを解決するために滑りの良 い材料であるテフロン樹脂に着目した。これをゴムの表面に 接着することで、異音の発生をなくすことに成功し、水中軸 受が大きく進化した。そして、現在ミカサはボール、工業用 製品に次ぐ「第3の柱」となるものを模索している。ボール や工業用製品の製造で培ったゴム成型技術を、人々の「健康 づくり」に役立てるのではないかと考えている。また一般財 団法人ミカサスポーツ振興会は、社会貢献プログラムとして、

特殊な形のボールを用いた高齢者向けの運動教室を実施して いる。この取り組みは、企業、地域、行政の三位一体型が評 価され、広島県高齢者施策推進プランに認定された。世界的 ブランドであるミカサは、広島から新たなる価値の創造にチ ャレンジし続けているのである(情熱企業)。

①バレーボール製造にあたってのこだわり 構造・

素材

世界的に「バレーボールはミカサ」と言われるほどに成長 を遂げたミカサ社だが、その背景にはさまざまな試行錯誤が あった。

まずミカサ製のバレーボールの変遷から見てみると、1970 年代前半には構造上の大きな変化があった。それまではボー ルの変形を防いで耐久性を向上させるために、最も内側を形 成するゴムチューブの上に柔らかな布を貼っていた。そして 常にボールの進化を試みるミカサは、「糸巻き構造」を開発し、

およそ3000メートルにも及ぶ細い特殊な糸を巻きつけるこ とで、完全な球体の実現と適度な柔らかさを両立させた。人 手で貼っていた布に変わって糸巻き構造は機械化できるため、

生産効率が大幅に向上することができた。もう一つの大きな 変化は表皮パネルである。競技用バレーボールの表皮パネル は戦前からずっと天然皮革(牛革)が使われてきたが、ミカ サは 2001 年に株式会社クラレの人工皮革「クラリーノ」を採 用した。オリジナルの「クラリーノ」はやや硬かったため、

ミカサはクラレと共同でバレーボール専用の「クラリーノ」

を開発した。その結果、天然皮革以上のソフトな触感と理想 的な重量バランスを持つ「傑作ボール」となった。

②バレーボール製造にあたってのこだわり デザイ ン・カラー

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5 バレーボールの真っ白のボールの歴史は100年以上も続い ていた。そこで初めて公式球で青×黄×白のカラーボールが 1998年からミカサより発表され採用された。当時はスポーツ 用具化のカラーが進んでいたため、バレーボールもその流れ に乗っかったとみられる。カラーボールにすることによって、

テレビ中継などの見栄えが良くなるというメリットが考えら れ、バレーボールのイメージを高めたいという意図がそこに はあった。そして、ミカサはボールの色を決める際、ボール についたシールを貼り、およそ500種類ものデザインを考え ていた。結果、その中から選ばれたものが「青×黄×白」だ った。それと、空気の入れ方である。それまでのボールに口 で空気を入れていた方法に対してミカサは、特殊な手法で「バ ブル式」を開発した。これにより、空気を保持する機能が画 期的に改善された。

2008年の北京オリンピックからは、ついに白のボールが完 全に消え、2年がかりで開発された青×黄のボール「MVA200」

が採用になった。これは花びらのようなデザインのボールで あり「ラリーが続く」ことで感動的な試合を…という狙いが あった。また、表皮パネルも、長い間続いてきた18枚パネル から8枚パネルに変更し、複雑な曲面を持つパネルをらせん 状に貼り合わせているのが特徴である。FIVBのボール規格は そう簡単には変わらないものだが、「MVA200」はその厳密な 規格を変えるだけの大きなインパクトを持っていた。ボール の色を青と黄の2色にしたことで、従来にも増して視認性が アップし、そして選手はボールの回転方向を目で追いやすく なった。

これらの開発の主眼は2点ある。一つは、レシーブ時など の衝撃吸収力を高めること。これはスポンジ状の風合いを持 つマイクロファイバー不織布上に、クッション性の高いポリ ウレタン表皮を重ねた「2重クッション構造」を採用したこ とにより解決した。もう一つのポイントとなるのは、ボール のコントロール性を高めることである。選手の汗によって、

ボールはどうしても滑りやすくなってしまう。しかし、ミカ サのボールは、正面に新たにディンプルシボ(凹加工)を施 し、同時にフラット面にも微細なシボを付けた独自の「Wシ ボ・マルチパターン構造」を採用し、従来比で表面積を約4%

も増加させた。さらに超微粒子のナノバルーンシリカを表面 に塗布し、汗に左右されない高度なコントロール性を確保し

た。この2つの特徴は、どちらもミカサとクラレが共同開発 したテクノロジーによって実現できたと言える。

ミカサはバレーボールを開発するにあたって心掛けている ことがあり、それは選手の声を聞くことである。また、

「MVA200」のボールは選手からの評判も上々で、ボールの コントロール性が高くなったことで「スパイクの変化が付け やすくなった」「表皮が汗を吸収しないのでボールが重くなら ない」などといったプレイ上の声が多く寄せられている。一 方で、観客にも「MVA200」は大きなメリットをもたらして いると言える。なぜならば、ラリーが今まで以上に続くよう になったため、興奮度は間違いなくアップするに違いないか らである。

ミカサは半世紀に渡って、国際試合などでの試合球として 活躍をし続け、今もなお、さまざまな試合で使用されている。

そこで良い製品を維持し続けるには、「ゴム分が多く、いい皮 を」とミカサの基本姿勢は材料のいいものを使うことである と佐伯社長はおっしゃっていた(ボールと軸受で世界企業)

「トップアスリートの技は微妙な品質を見極める」と佐伯社 長。少しの違いにも気づき指摘を行う選手たち。できるだけ、

同じボールを作るという作り手の意志がトップアスリート達 の満足度につながると考えられている(ボールと軸受で世界 企業)

第三節 モルテンブランドの戦略

モルテンの特徴は事業形態にある。製品としては競技用ボ ールが有名である。しかし上記の概要で述べたように、その 他にも、自動車部品や医療・福祉機器、浮き桟橋などモルテ ン企業のコア技術を生かせる分野で、多角事業を展開してい ることが分かる。

モルテン企業にとって最も重要なことは、持続性であると 言える。つまり、倒産しないことは企業の最重要課題のひと つだ。その点において、モルテンの優位性のひとつとしてあ げられるのが長期戦略である。モルテンは株式を公開してい ない非上場会社であるため、長期戦略が立てやすい環境にあ る。また、複数の業界にまたがった事業展開を行っているた め、仮にスポーツ業界が突然の不況に見舞われても、自動車 部品と、医療・福祉機器が支えることができ、自動車業界が 低迷すれば、医療・福祉機器とスポーツ用品が収益を確保す

(6)

6 るという緊急対策をとることも可能である。よって、3 本柱 の経営は持続性を支える大きな力となるだろう。しかし、持 続することだけを考えていても、社会にとって存在価値がな くなってしまえば、企業が存在する意味合いを失う。モルテ ン企業は経営理念でうたっているように、人の和を尊重しな がら、それぞれの専門分野の技術革新を追求し、高付加価値 を提供することで、世の中をより良い場所にするために活動 している。それがモルテンの存在価値と言える。

①バレーボール製造にあたってのこだわり 構造・

素材・デザイン

モルテンは「プレイヤーの意志と技術を反映できるボール」

をコンセプトに新バレーボールの開発をスタートし、日々精 進している。このコンセプトにした理由としては、バレーボ ールのボールはサッカーボールやバスケットボールなどの競 技用ボールと比較したとき、重量が軽いために空気抵抗の影 響を受けやすいとされており、それが問題視されていた。そ こで、そういったブレを軽減させる必要があるため、目標を 掲げ、このコンセプトで取り組んでいる。

「ボールが高速で空気中を飛んでいるときに、ボールの後 ろに生じる渦が空気の乱れを引き起こす原因であることが、

大学との共同研究で明らかになった。そこで、大学と協力し 空気の乱れを科学的に分析する風洞実験やボールの軌道を測 定する飛行安定性実験を繰り返して行った。その結果、空気 の乱れを抑えボール軌道を安定させるためには「環状の突起」

を皮革の表面に配置することが最も有効であると確信した。

(モルテンスポーツ事業本部)環状の突起を皮革表面に配置 する新技術により、サーブやレシーブ、トスといった全ての プレイ面のボールコントロール性能が従来のボールと比べて 向上することに成功した。

また、この新技術に加えて、皮革内部のマイクロファイバ ー層を厚くしたことでボールの感触が劇的に柔らかくなり、

コントロールがしやすくなったという声が数多くあがってい る。これは実際に、日本やイタリア、アメリカといった各国 リーグのトップチームでフリスタテックバレーボールを使用 してもらったモニター結果によるものである。フリステック ボールは完成までに約 4 年の月日がかかった。このボールは ボールそのものの進化の方向性に影響及ぼすだろう。飛行軌 道が安定しているので、ラリーが続いて、バレーボールとい

う競技をよりスリリングで魅力的にするとも考えられる(モ ルテンスポーツ事業本部)。

そしてモルテンは、デザイン面でも大きな変化があった。

これまでの上下・左右・前後の 6 面フレームを継承しながら もフレーム内に、モルテンロゴにも象徴されている炎をかた どった流線形のパネルをそれぞれ配して判別性の高いモルテ ンオリジナルのカラーパターン「白・赤・緑」と組み合わせ ることで、ボールの回転をさらになめらかにし、視認性の向 上に努めた。最高明度の白は、照明の安定しないどのような 体育館でもボールを捉えやすくなっており、同明度の赤と緑 は、回転時のボールの動きを滑らかに見せることができる。

そのような多くの特徴を持つバレーボールだが、開発で特に 創意工夫を行ったのは、皮革表面に配置する突起の形状の選 定である。選定にあたっては限りなく存在する形状の中から 最適なものを選ぶ必要がある(モルテンスポーツ事業本部)

第四節 バレーボールに対する 2 社の考え方 上記で述べたことから、以下のようなことが言える。

ミカサは、「ラリーが続くことで感動的な試合を」というコ ンセプトがあり、選手だけでなくテレビ中継をするときの見 栄えや観客のことを考えながら製造を行っている。また、ミ カサのやってきたこととして、糸巻き構造を開発したり、ク ラレと共同し天然皮革からソフトな触感の人工皮革を開発し たりすることにより「傑作ボール」を作り上げた。また、レ シーブ時の衝撃吸収をする力が向上したり、選手の汗で滑る ボールのコントロール性を確保させたりと、選手たちの意見 も取り入れながら開発を行った。

ミカサの強みとして、まず一つ目が競技用ボールなど製造 するにあたって、技術力・開発力が優れていたことが挙げら れる。バレーボールだけでも 1 日に約 5000 個以上に及ぶ豊か な生産実績があった。2 つ目に、常にアイデアを提案し続け ていたことが挙げられる。選手の声を聞くことや、佐伯社長 がおっしゃったように良い材料を使うことで優良製品を数多 く製造したからこそ、プロの使用に耐えうる製品を提供する ことができたと言える。3 つ目に、ミカサが他社より先駆け ていたことがありそれは、早くから海外進出を念頭に置いて いたことである。私は、これが一番重要だったと推測する。

当時の社長はFIVBに対して積極的に優秀性をアピールし

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7 ていた。その結果、世界で通用する「バレーボール界ではミ カサ」と言われるまで成長を遂げることができた。

一方でモルテンは、「プレイヤーの意志と技術に反映できる ボール」をコンセプトにしている。その理由としては、バレ ーボールが空気抵抗を受けやすいと問題視しているためであ る。故に、モルテンは選手目線の考え方が大きいことが分か る。様々な実験を行い空気の乱れを抑えたり、ボールの軌道 を安定させるために工夫したりした。その結果、全てのプレ イでコントロール性が従来に増して大幅に向上したと言える。

つまりこれらの選手目線の工夫をすることで、よりバレーボ ールが魅力的に見えるようにしたことがモルテンの強み・特 徴であるに違いないだろう。

以上のように 2 社には、様々なバレーボールに対する工夫 や考え方に相違点はあるものの、同じ競技用ボールを製造す る良きライバル企業として、切磋琢磨し製品を製造するにあ たって互いに高めあっている企業であると言える。

第四章 中小スポーツメーカーが世界的に活躍でき る手法について

上記でも述べているように、ミカサとモルテンには相違点 はあるものの、企業が成り立つうえでの共通点もあった。そ れは、互いにゴムを活用して様々な製品を造りだしていたこ と。それと、お互いの企業の技術が優れていたことによって 世界で活躍することができたと推測する。

モルテンに至っては、一つの分野に留まらず多角化してお り様々な分野を手掛けていたこと。また、モルテンは競技用 ボールのなかでもバレーボールより、バスケットボールやサ ッカーボールのほうが有名だった。そのうえサッカーボール に関しては、アディダスと技術提携をしていた。そういった こともあり、モルテンが世界的なスポーツ用品メーカーへと 駆け上っていったと言っても過言ではない。ミカサに至って は、どの企業よりも先に、当時の社長がバレーボールを積極 的に海外にアピールしたため、世界で活躍できる企業になっ た。

このように中小メーカーが世界で活躍していくためには、

まず高い技術を活かし様々な事業に見返りを求めず挑戦する こと。課題解決の視点を持っていること。そのモノや技術が 人間にどういう価値をもたらすか、というサービスの視点が

重要になってくる。また、世界に通用するブランド力は必要 であると言える。

おわりに

日頃から何気なく使用していた競技用ボールがどのよう に世界で活躍し使われるようになっていったか、その歴史な どを本研究で言及し明らかにすることによって、互いにさま ざまな試行錯誤を繰り返し行い、ブランド力を高めている。

また世界で活躍するためには、ミカサのように積極性やオリ ジナル性が重要であることが挙げられる。その他にも、ゴム 以外に船舶の部品を製造することによって、相乗効果が生ま れていることが分かった。

私自身、バレーボール競技を通してスポーツ用品を数多く 使用してきたが、使用する製品には、それぞれ企業のさまざ まな戦術があり、創意工夫がされている。そういったたくさ んの技術者の苦労があることを理解し、これからのバレーボ ール人生を歩んでいきたいと考えている。

謝辞

大学生活におきまして多くのご指導をいただきました生島 淳准教授、約二年間を共に過ごした生島研究室の皆様に、心 から感謝申し上げます。

参考文献

http://www.molten.co.jp/sports/jp/volleyball/technolog y/interview02/index.html

「molten モルテンスポーツ事業本部 開発者インタビュー」

http://www.molten.co.jp/sports/jp/volleyball/technolog y/original/index.html

「molten モルテンスポーツ事業本部 オリジナルデザイン」

http://www.molten.co.jp/sports/jp/volleyball/technolog y/flistatec/index.html

「molten モルテンスポーツ事業本部 フリスタテック」

https://www.capla-tensyoku.jp.hiroshima/interview/post -2.html

「広島企業インタビュー 株式会社ミカサ 代表取締役社長 佐伯 祐二」

https://www.businessinsider.jp/post-175216

「中小企業が世界で勝つための3つのルール」

(8)

8 http://j-net21.smri.go.jp/well/genki/2013/09/post_663.

html

「ボールと軸受で世界企業に[ミカサ]」

https://regional.bizreach.jp/company/molten-overview/

「地方から未来の働き方を探すウェブメディア」

http://www.jounestu-k.com/web.php?menu=archives&cmd=de tail&id=195

「情熱大陸 過去の放送」

http://www.molten.co.jp/job/yaritaikoto/index.html

「社長が語るモルテン」

https://www.nttcom.co.jp/comzine/no118/long_seller/ind ex.html

「バレーボール(国際大会公式試合球)ニッポン・ロングセ ラー考」

http://news.livedoor.com/article/detail/11601909/

「明日から使える雑学」

http://www.homemate-research-sport-shop.com/usehul/120 98_shopp_002

「スポーツショップの歴史」

http://www.molten.co.jp/corporate/jp/about/brand

「モルテンブランド molten モルテン企業案内」

http://www.chugoku.meti.go.jp/info/densikoho/26fy/h260 8/egao.pdf

「旬レポ中国地域 第45回 地球を笑顔に!」

http://www.molten.co.jp/sports/jp/volleyball/technolog y/history /index.html

「モルテンバレーボールの歴史―molten モルテンスポーツ 事業本部」

https://mikasasports.co.jp/jpn/mva200/

「国際バレーボールFIVB公式試合球MVA200」

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/onlyonenoonezigy ou/1172532742340.html

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https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/onlyonenoonezigy ou/1172537111890.html

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https://middle-edge.jp/articles/tZADJ

https://www.j-smeca.jp/attach/article/article_2016_09_

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http://repository.ipu-japan.ac.jp/detail/3632018082017 5130

「バレーボール競技の公式試合球が大学生の競技に及ぼす影 響について」

体育学部体育学科 和所 泰史 株式会社アルファ 小林 千加子

環太平洋大学女子バレーボール部監督 坂本 博秋 http://www.kochi-tech.ac.jp/library/ron/pdf/2015/14/a1 160430.pdf

高知工科大学マネジメント学部 柴原 佳之

「日本のスポーツ用品企業の競争~アシックスとミズノ~」

参照

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るものの、およそ 1:1 の関係が得られた。冬季には TEOM の値はやや小さくなる傾 向にあった。これは SHARP

Âに、%“、“、ÐなÑÒなどÓÔのÑÒにŒして、いかなるGÏもうことはできません。おÌÍは、ON

このほか「同一法人やグループ企業など資本関係のある事業者」は 24.1%、 「業務等で付 き合いのある事業者」は