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〔報 告〕
ウズベキスタンにおける
文化遺産保存修復技術実技講習と国際貢献
古庄 浩明
はじめに
ウズベキスタン共和国は、中央アジアの中 心に位置し、タシュケント・ヒヴァ・ブハラ・
サマルカンドなど、古代からシルクロードの 要所として都市が栄えてきた 現在でもその 様子を伝える文化遺産が数多く所在している
(第1図)
ウズベキスタン共和国を含む中央アジア諸 国は、長らく小国の分立状態であったが、19 世紀後半にロシア帝国に統一され、その後、
ソビエト連邦の統治下にはいり、1991年のソ 連崩壊にともない独立をはたした国々である、
旧ソ連統治下の中央アジアでは、ロシア人 考古学者・保存修復者の主導により文化遺産 の考古学調査研究・保存修復が行われてきた が、崩壊後は政治的混乱・経済的立ち後れな
ロシア 中宍アシア モンコル
ts・ズベキス・。共和国 中 国
イラン
インド
第1図 ウズベキスタン共和国
どから、考古学や保存修復学など文化遺産の 保護がないがしろにされた、また、それらを 指導する研究者の多くがロシアや他国へ移住
したため、考古学・保存修復学の教育カリキュ ラムや研究環境整備が遅れた そのために、
文化遺産専門家が不足し、若手専門家の育成 が十分に行われず、また、文fヒ遺産そのもの も放置されて荒れ放題となり、その崩壊が目 に見えて進行していったのである・
そこで、2008年からウズベキスタン芸術ア カデミーの要請を受けて、それまで日本の考 古学調査隊が行ってきた発掘調査で出土した 考古遺物の整理作業を、現地の学生に教える
ことになった.これが本事業の出発点である・
2011年からは3年度計画で、「ウズベキスタ ン共和国で急務となっている若手考古学者や 保存修復者の人材育成に貢献し、日本の優れ た専門技術の移転を図る」ことを目的に、国 際交流基金の本体事業として「ウズベキスタ
ンにおける文化遺産保存修復技術実技講習」
を実施した、本文では、国際交流基金の本体 事業の終了にあたり、本事業内容について説 明するとともに、日本の国際貢献の問題点に ついて論究したい、
36 法華文化研究 第4n号
一、経緯
1995年から2001年にかけて、金沢大学(現 中央大学)教授、田辺勝美氏を団長とするダ
いレ エニレ
ルベルジン・テパの発掘調査がおこなわれ、
筆者は1998年からこの発掘調査に参加した(第 2図):発掘調査が進むにつれ、多量に出土し た土器や石器などの考古遺物の整理をどのよ うに行うかが大きな課題となった=考古資料 などの文化財は、海外持ち出し禁止が原則で あり、ウズベク国内で出土した遺物の整理・
実測・写真撮影などを、限られた日程の中で 日本人隊員だけで行うことは到底不可能だっ たからである、そこで、2002年から現地の考
古学・保存修復学専攻の学生に整理作業の手 順や方法を教えて、遺物の修復や実測を実施 してもらい、データを日本に持ち帰る事業を、
平山郁夫国際文化のキャラバンサライの創設 とともに始めた{第3図)これが本ワーク ショップの前身である.
その後、この事業は、2006年から2010年に 京都造形大学(現東北大学)教授芳賀満氏が エ ロ団長で実施されたカンピル・テパの発掘調査 に伴う出土遺物の整理作業にも活用されたた め、事業として継続することとなった、
2008年、ユネスコ・アジアー文化センター
〔ACCU}奈良事務所が、文化遺産ワーク ショップをウズベキスタン平山郁夫国際文化
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第2図 ダルベルジン・テパの調査風景
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第3図 実測風景
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第4図 ACCUワークショッブ
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第5図 ワークショップ風景
hスへ土スダンにお,÷る之化遺産保τ弄修復技術実技講習と国「祭貢献 古宝
のキャラバンサライで開くこととなった(第 4図1それにともなって、ウズベキスタン芸 術アカデミーの要請を受けて、本事業も名称 を「ウズベキスタンにおける文化遺産保存修 復技術実技講習」と変更し、±器実測に加え、
保存修復基礎論・考古学基礎論など、講義内 容を拡充して、ワークショップとして独立し
て行うことになった
2009年度には文化財保護・芸術研究助成財 団の助成をうけて実施し、2010年度には、国 際交流基金からの助成を受けた,さらに、2011 年度から2013年度まで、国際交流基金の本体 事業として、本ワークショップが行われたの である
このように、本事業は、はじめから国際貢 献を目標としてはじまったものではなく、日 本側の必然によりはじまった教育活動であっ た それがウズベク側の要請により、次第に ワークショップとして拡充・昇華していった という経過をたどった、いわば両国で文化遺 産の調査研究・保存修復活動を行う過程で、
その必要性から生まれてきたワークショソプ であった
二、事業概要
1,2011年度の事業概要
2011年度は、実際に博物館で実務にたずご わっている保存修復者を対象とした、プロ フェッショナルコースを国立歴史博物館で行 い、これまで大学・専門学校の学生を対象と して行っていた考古学・保存修復学の基礎的 なワークショップを、ベーシックコースと位 置づけて平山郁夫国際文化のキャラバンサラ
イで行った
プロフェッショナルコースは、ベーシック コースで基礎を学んだのち、より専門性を高 めた実践的なコースとして位置づけ、サイバー 大学教授青木繁夫氏に内容のコーディネート をお願いした:
プロフェッショナルコース
プロフェッショナルコースは、青木繁夫氏
(サイバー大学教授}と、杉本和樹氏(奈良文 化財研究所・西大寺フォト写真家)を迎えて、
ウズベキスタン科学アカデミー傘下の国立歴 史博物館で、博物館で保存修復事業に従事し ている職員や、実際に保存修復の経験を持つ 学生16人を対象とし、ウズベキスタン国立博 ル
物館所蔵のファイアズ・テパの塑像を実際に 修復しながら保存修復の理論や技術を実践的 に習得するワークショップを行った(第5図)
IU実施日:9月6日から9月14日 12現地主催者:国立歴史博物館
3開催都市・会場名:タシュケント 国立
歴史†専#勿負官
4参加者
実習という性格上、あらかじめ参加者定 員を16人までに制限していた
国立歴史博物館職員2名
ベグザット記念芸術美術大学 約14名 (2年生以上の修復経験者のみ)
15庚施内容
「ファイアズ・テパの塑像の修復実習」
青木繁夫{サイバー大学教授)
「写真撮影実習」杉本和樹(奈良文化財 研究所・西大寺フォト)
出席率80%以上の受講者に終了証明書
37
38 法華文化研究 第40号
を交付.本講座は参加大学の正規単位と して認定された、
ベーシックコース
ベーシックコースはこれまで通り、ウズベ キスタン芸術アカデミー傘下の平山郁夫国際 文化のキャラバンサライで、大学や研究所の 考古学専攻生・保存修復専攻生・博物館学芸 員などの学生・若手研究者、合計51名を対象 に、地元研究者と日本人研究者がチームを組 み、ウズベキスタンの考古学の現状や、遺物 の保存方法や実測の方法、考古学概論、考古 学の調査研究方法、遺構遺物の修復技術、†専 物館学基礎論などの講義や実習を行った 日 本側講師は、東京国立博物館・井上洋一氏、
橿原考古学研究所・井上主税氏、大正大学・
犬竹和氏、国士舘大学・古庄浩明、ウズベク 側講師は、陶芸家・シェルナザロフ・シャメ イディン、グレートシルクロード編集長サフ チュク・クルバノブ、芸術学研究所研究部長 バホデf一ル・ツルグノブ、芸術アカデミー 情報と国際関係部部長ノディル・ノルマート フ、芸術学研究所研究部研究員アクマル・ウ ルマゾフである
1実施日:9月15日から10月1日
.2現地主催者:平山郁夫国際文化のキャラ バンサライ
「3欄催都市・会場名:タシュケント 平山 郁夫国際文化のキャラバンサライ 14参加者
タシュケント総合大学約4名
ウズベキスタン国民芸術専門学校 約40名 ベグザット記念芸術美術大学 約5名 国立テルメズ大学 1名
国立軍事博物館 1名 5嘆施内容
「土器作り実習」 シェ1レナザロフ・シャ メイディン{陶芸家)
「ウズベキスタンと中国・シルクロード の経済と文化上「世界の不思議とシルク ロードの遺跡」サフチュク・クルバノブ (グレートシルクロード編集長・考古学者)
「南ウズベキスタンにおける考古学の著 名な発見」バホディール・ツルグノブ(芸 術学研究所研究部長)
「スルハンダリア州の考古遺跡」ノディ ル・ノルマートフ(芸術アカデミー情報 と国際関係部部長)
「土器実測実習」芸術学研究所研究部研 究員(アクマル・ウルマゾフ)
「修復学基礎講座」・犬竹和(大正大学非 常勤講師)
「考古学の歴史と研究方法」古庄浩明(国 士舘大学非常勤講師)
「発掘調査の方法について」井上主税(橿 原考古学研究所調査課主!lll)
「博物館学基礎講座」井上洋一〔東京国 立博物館企画部長}
出席率80%以上の受講者に終了証明書 を交付・本講座は参加大学の正規単位と して認定された、
〔6i主要協力団体・協力者
主 催 国際交流基金 国立歴史博物 館 平山郁夫国際文化のキャ ラバンサライ
資金提供 国際交流基金
助 成 文化財保護・芸術研究助成財
ウズヘキス9ンにおけるて化遺産保存修復技術実技講習ヒ国際貢献 古庄
助
会場提供
受
協
団
言 和光大学名誉教授 前田耕作 東京文化財研究所 LL」内和也 ウズベキスタン共和国文化・
スポーツ省大臣 ッルスナ リ・クズイエフ
国立芸術学研究所 シャキ ル・ピダーエフ
平山郁夫国際文化のキャラバ ンサライ
国立歴史博物館
援 ウズベキスタン共和国芸術ア カデミー
国立芸術学研究所
力 在ウズベキスタン日本大使館 在日ウズベキスタン共和国大 使館
フ.ロフェッショナルコース・ベーシックコー スの講義内容をまとめたレジュメを出版した.
また、今回のワークショッフはテレビ・ラジ オ・インターネットなどのメデtアによって 紹介された
2011年度の評価
1iプロフェッショナルコースについて 全体としては予定通り事業が達成できた
しかし、ウズベク側との合意書締結に手間取 り、講座の進行に支障が出て、最終日の後片 付けが慌ただしくなってしまった:また、当 初、受講生には博物館職員を予定していたが、
職員よりも学生が多かったので、講義内容の レベルを落とさなければならなかった この
ような状況で、予定通りの事業が行えたのは、
青木・杉本、両氏共にワークショップの運営 や参加の経験が豊富で、いわゆる「現場での 対応力」があったためである,
国立歴史博物館側も、合意書締結には時間 がかかったが、会場の提供・機材の貸し出し など、事業の運営には協力的であった=来年 の開催についても、強い要請を受け、博物館 館長からの廿ポートレターをいただいた.さ
らに、ウズベク側から、「修復した遺物を含 む、ウズベクの文化財の展示会を、ウズベク と日本で行ったらどうか」という提案もあり、
今後、新たな発展を見込めそうである.
受講者からは、アンケートの結果、新しい 知識を得られたという意見が多く寄せられた・
また、来年も是非やってほしいとの意見も多 かった
ウズベキスタンにおいては、独立後20年、
保存修復学の情報はもたらされておらず、独 立以前の理論と材料で、細々と保存修復を続 けているのが現状である,したがって、近年 の新しい保存修復学の理論と実践を学ぶこと ができることに大きな反響があった=
反省事項
今回の大きな問題は、二つである・
一つは歴史博物館との合意書締結が遅れた ことである.その原因は、歴史博物館の上部 機関である、科学アカデミー総裁が、合意書 の「ワークショップの成果を共有する」とい う条文に、情報漏洩の疑念を抱いたことにあっ
た,
来年以降も合意書を締結して事業を行う予 定であるので、本事業の内容を丁寧に説明す
39
40 法華文化研究 第40号1
ると共に、以下のような対策をとることにし
た,
1.UNESCOに協力を求め、 UNESCOか ら科学アカデミー総裁あてに本ワーク ショップへの許可を与えるようにサポー トレターを出してもらうことにした、
2.大統領の令嬢が主催するフォンド・
フt 一ラムに協力を求め、フtンド・
フt一ラムからもサポートレターをもら うことにした,
3.在日ウズベキスタン大使館を通じてウ ズベキスタン外務省から科学アカデミー へ、早めに話をしてもらうことにした。
4.在ウズベキスタン日本大使館を通じて、
ウズベキスタン外務省から科学アカデ ミーへ、話をしてもらうようにお願いす る、
二つめの問題点は、当初、博物館職員クラ スの受講生を予定していたが、実際には大学 生が大半となってしまったことである、この 国においては、博物館職員など、文化的職業 についた人びとの賃金は、他の職業に比して 安い したがって、博物館職員クラスは、彼
らの生活保障と交通費・宿泊代を用意しなけ ればワークショップに参加することはできな い・これについては、今後、検討の必要があ
る、
青木繁夫氏の言葉を引用すると、「プロ フェッショナルコースは、その成果として、
r/受講生の知識の再構築をすることと、2ファ イアズ・テパの塑像を修復し展示できるよう にして本事業を一般に周知すること」の2つ
の目的があるという 2番目の目的を達成す るには、2週間程度の時間では物理的に不可 能で、日本人講師がいない間でも、現地の受 講者が日本人講師の指導にしたがって継続的 に作業を進められるような体制をとることが 望ましいと考えられる
.2)ベーシックコースについて
ベーシックコースにおいても予定していた 事業はすべて実行できた=しかし、当初、学 生があまり集まらなかった・その原因は、ウ
ズベキスタン芸術アカデミーの事務的な手続 きミスにより、大学側へ本ワークショップへ の参加要請が遅れたためである また、この 遅れが原因となって、大学生よりも若い、芸 術専門学校の学生が多くなった結果、講義内 容も対象年齢をさげたものに変更した=
受講生が自分で作成した土器を、自分で実 測するという、土器の作成方法と、考古学的 実測方法を十分に理解できるカリキュラムを 組んでいるため、受講生には大変好評であっ た,また、本年度から新たに開講した博物館 学は、ウズベキスタンではまだあまり馴染み のない学問であるので、新しい知識を得られ、
文化財の重要性が理解できたという意見がよ せられ、反響が大きかった.
本ワークショップは参加大学の正規単位と して認定されているので、終了証明書は有効 なものと見なされており、学生がこぞって受 講するようになってきた、また講義内容の有 用性も認知され、引率の先生からも、「勉強に なったので、私にも証明書がほしい」という 要望が出されたほどであった.
ウズベキスタンにお:ナる文fヒ遺産保存修復技術実技講習ヒ国際貞r献 占宅 41
出席率80%以上の受講者に終了証明書を交 付.本講座は参加大学の正規単位として認定
された、
ベーシックコースは、その前身事業も含め て10年の実績があり、ノウハウもある程度確 立されている,また、いままでに、ウズベキ スタン国内の大学や博物館に考古学・保存修 復の専門家として人材を輩出しており、ウズ ベク1則にも本ワークショップが認知されてき ている・今回は、本ワークショップの評判を 聞き及んで、テルメズ大学の学生が自費で参 加するほどであった、
ウズベク側も本ワークショップの重要性を 理解しはじめ、パートナーとして積極的に参 画する意志を示すようになってきている一そ の現れとして、平山郁夫国際文化のキャラバ ンサライ側から、遺跡を調査し、発掘実習を 行い、さらにその出土遺物を整理・保存修復 して展示するという考古学の一連の流れを全 て網羅したワークショップを提案されている.
この提案では、以前のように経費の全てを日 本側に求めるものではなく、「ウズベク側も出 せるものは出す」という態度に変わってきて
第6図 フィールド・コンサベーション
おり、パートナーとして本事業に積極的に参 加し、経費や責任も次第に負担してもらえる
ようになってきている、すくなくとも、平山 郁夫国際文化のキャラバンサライにおいては、
日本側にお金や機材を要求する段階から、事 業の重要性を認識し、一定の責任を果たそう とする、次のステージへと進んで来ている状 態である。
2,2012年度の事業概要
2012年度は、平山郁夫国際文化のキャラバ じンサライが行っているカルシャウール・テパ の発掘調査に参加する形をとり、フt一ルド でのコンサベーションのワークショップを行
うこととした(第6図).これに伴い、昨年の ベーシックコースとブロフェッショナルコー スの区分を発展的に解消し、フィールドコン サベーションコースとミュージアムコンサ ベーションコースに区分した.これによって 文化財保護の一連の作業を体験できるワーク ショップとすることができた また、ミュー ジアムコンサベーションの参加者としてウズ ベキスタン各地の博物館から保存修復の専門 家を招鴨した.
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第7図 X線解析
42 法華文化研究.第40号
具体的には、大学や研究所の考古学専攻生・
保存修復専攻生などを対象に、カルシャウー ル・テパで、炭化した焼失木材など脆弱な出 土遺物の取り上げのワークショップをフィー ルドコンサベーションとして行った=さらに 以前から継続している、遺物の保存方法や実 測の方法、考古学概論、遺構遺物の修復技術 などの講義や実習を、平山郁夫国際文化のキャ ラバンサライで行った.
国立歴史博物館では、ミュージアムコンサ ベーションとして、昨年に引き続き博物館学 芸員を対象とした塑像の修復保存のワーク ショップをおこなった一また最新技術の紹介 として早川泰弘氏{東京文化財研究所)によ るX線解析を使った塑像の顔料分析実習をお こなった(第7図}.
また、これらの成果を広く知ってもらい、
教育普及につなげる活動として、平山郁夫国 際文化のキャラバンサライにおいて、講師陣 や参加者が本ワークショップに伴う発表と、
本ワークショップで実際に発掘現場から取り 上げて保存修復した遺物の展示をおこなった、
今回の事業では、発掘調査からの遺物の取 り上げ、博物館での保存修復、そしてさらに、
その遺物を使った教育普及という、文化財保 護の全体の作業を実際に体験できるワーク ショップを行うことができた=通常のワーク ショップは、この作業の一部を切り取って行っ ているが、今回は、一連の流れとして全体を 体験できるカリキュラムとしたところに特徴 がある、また、それまでは交流がなかった各 地の博物館の保存修復者を一同に招聴するこ
とができ、情報交換・人的交流の場ともなっ
た:/
なお、本講座は各参加大学の正規単位とし て認定されている=また、プレスリリースも 行われ、テレビ放映、インターネット配信な どで広くウズベキスタン共和国全土に周知さ れた,文化スポーツ省大臣からも高く評価さ
れた、
q・実施日:9月7日から10月9日
t2現地主催者:平山郁夫国際文化のキャラ バンサライ・国立歴史博物館
(3i開催都市・会場名:タシュケント 平山 郁夫国際文化のキャラバンサライ・国立 歴史博物館
山参加者
タシュケント総合大学 5名 ビックザット国立芸術研究所 ll名 ホレズム・マムン科学アカデミー 2名 芸術博物館 1名
歴史博物館 2名 ブハラ博物館 1名
平山郁夫国際文化のキャラバンサライ 2名 テルメズ考古学博物館 3名
考古学研究所 1名
コーカンド地域学博物館 1名 アンディジャン地域文学文化博物館 1名 バレー建築遺跡修復 1名
15事業内容
フf一ルドコンサベーション
カルシャウール・テパの発掘現場にお いて、保存修復の専門学校生を対象とし た、遺跡の発掘と、脆弱な焼失木材のウ レタンパッキングによる取り上げの実習,
平山郁夫国際文化のキャラバンサライ
ウスヘキスタンにおけるkiヒ遺産1呆存修復技術実技講習と国際責献 古庄
において、専門学校生・大学生を対象と した、十器の製作実習、遺物の実測実習、
考古学概論、コインの基礎知識、発掘概 論の講義
実施内容
カルシャウール・テパでの遺物の取り上 げ実習
「土器作り実習」シェルナザロフ・シャ メイディン
「考古学の歴史と研究方法」古庄浩明 「土器実測実習」アクマル・ウルマゾフ 「コインの歴史」アレクセイ・ゴーリン 「ウズベキスタンの考古学」コンスタン アイ/・ンエーコー
ミュージアムコンサベーション
国立歴史博物館で、各地の博物館で働 く修復者を対象とした、ファイアズ・テ ハ出土塑像の保存修復実習 専門学校生・
大学生・博物館修復者を対象とした遺物 保存の基礎学 X線解析装置を用いた顔 料の成分分析の実践
ワークショップの成果をもとにしたコ ンフェレンスを行い、講師陣・参加者が 発表した 同時に、カルシャウール・テ パで発見された遺物と、実習で取り上げ、
歴史博物館で保存処理をした遺物の展示 解説を行った・
実施内容
青木繁夫・早II[泰弘による塑像の修復 実習とX線解析による分析実習
平山郁夫国際文化のキャラバンサライ におけるワークショップの成果の発表会、
ワークショップで取り上げた遺物等、カ
ルシャウール・テパの展示会
161主要協力団体・協力者 資金提供 国際交流基金
文化財保護・芸術研究助成財 団
共同開催 平山郁夫国際文化のキャラバ ンサライ
ウズベキスタン国立歴史博物館 助 言 和光大学名誉教授 前田耕作 東京文化財研究所 山内和也 国立芸術学研究所 シャキ ル・ビダーエフ
会 場 平山郁夫文化のキャラバンサ ライ
ウズベキスタン国立歴史博物館 協 力 ウズベキスタン共和国芸術ア カデミー
国立芸術学研究所 フtンド・フォーラム
在ウズベキスタン日本大使館 在日ウズベキスタン共和国大 使館
2012年度の評価
今回予定していた講座をすべて実行できた 上に、ウズベク側の要請でコンフェレンスを 開催し、テレビ・新聞などでも発表できた さらに、発掘現場から取り上げた遺物を、保 存修復し、それを展示するという文化財保護 の一連の流れを体験できるワークショップと なったことは画期的なことであった
ウズベク側からも、来年も開催するよう、
43
具 法華文fヒ研究 第40号
強い要請を受け、平山郁夫文化のキャラバン サライ所長・歴史博物館館長からのサポート レターをいただくことができた,また、文化 スポーツ省大臣から直接、励ましと感謝・サ ポートの言葉をいただいた=
歴史博物館でのミュージアムコンサベー ションについては順調に進んだが、カルシャ ウール・テパでのフィールドコンサベーショ ンについては、当初予定した壁画の取り上げ はできず、焼失木材の取り上げに変更した、
これは、我々到着以前に行われていた発掘調 査が遅れていたため、壁画の取り上げの段階 まで調査が進まなかったためである、その原 因は、ウズベク側調査隊の予想より遺跡の状 況が複雑であったこと、それに伴って、発掘 調査の費用が予想よりふくらんで、資金不足 になったためである.±の中にはどんな遺跡・
遺物が秘められているかは、調査してみなけ れば分からず、しばしば起こることである、
従来から行っている平山郁夫国際文化の キャラバンサライのワークショップについて は、10年を迎えるにあたり、ウズベク側自身 で運営するという次の段階に徐々に移行する ため、できるだけウズベク1則主体で行おうと 試みたが、参加者側から日本人から直接最先 端の学問を習いたいという要望が強く、急遽、
当初予定より日本人講師の講習時間を多くす るように努めた.しかし、日本語通訳者の確 保ができず、英語での講義となったので、十 分な講習ができなかった.
ミュージアムコンサベーションコースの参 加者からは、新しい知識を得られたという意 見が多かった.また、来年も是非参加したい
という意見が多く、ウズベク1則の反響は大き かった,今回は各博物館の修復者を招集した こともあり、お互いの情報交換ができたと好 評であった、ウズベキスタンの考古学・修復 学のなかでも高い評価をえた
反省事項
キャラバンサライでのワークショップも自 立の方向へと転換を図らなければならないと 思われる,そこで、できるだけウズベク側に その運営を任せ、日本側が関わらなくても事 業の継続ができるように、日本人は監督に専 念し、講義などウズベク側に任せてみること にした、キャラバンサライ側も、ワークショッ プ運営にあたり、講師陣などある程度用意で き、金銭面でも一部支出できるようになって きた:しかし、日本の先進の情報や教育を日 本人講師によって教えてほしいとの強い要望 が参加者1則から寄せられた キャラバンサラ
イでのワークショップの目的や意図、特色を 考えれば、参加者1則から出された要求は当然 であり、日本側講師陣の派遣が必要なことを 再認識する結果となった.方向転換は時間を かけて徐々に行うことが望ましいと思われる.
3,2013年度の事業概要 事業概要
2013年度は、昨年度に引き続き、平山郁夫 国際文化のキャラバンサライでは、考古学専 攻生・保存修復専攻生を対象とした遺物の保 存方法や実測の方法、考古学概論、遺構遺物 の修復技術などの講義や実習を行った.また、
フィールドコンサベーションとして、カ1レシャ ウール・テパで、骨製品などの脆弱な出土遺
ウスヘキスタンにお[tる対ヒ遺産保存修復技術実技講習ヒ国際貢献 占「]三
物の取り上げと、壁面のはぎ取り実習を実施 した(第8図},
国立歴史博物館では、各地の博物館学芸員 を対象に、ミュージアムコンサベーションと して、塑像を対象とした修復保存のワーク ショップをおこなった・
さらに、本年度は三年間行われた本ワーク ショップの集大成として、加藤文彦在ウズベ キスタン特命全権大使を来賓として迎え、国 立歴史博物館の大講堂で、講師陣や参加者に よる研究発表と、本ワークショップで実際に 発掘現場で取り上げ、保存修復した遺物の展 示をおこなった〔第9図) これによって、発 掘調査からの遺物の取り上げ、博物館での保 存修復、そしてさらに、その遺物を使った研 究活動・教育普及という、昨年完成させた文 化財保護の一連の流れを実際に体験できるワー クショップを、さらに拡大して行うことがで きた一また、三年間の内容を配{寸資料として 作成できたことは、今後、受講者たちが各地 で復習し、伝達していく資料となり、大きな 意義がある・
1実施日:9月5から9月30日
2現地主催者:平山郁夫国際文化のキャラ
第8図 壁面のはぎ取り
バンサライ 国立歴史博物館 131開催都市・会場名:タシュケント 平山郁夫国際文化のキャラパンサライ 国立歴史博物館
i4]参加者
タシュケント総合大学 15名(キャラバ ンサライで行われる講義のみに出嘲 ビックザット国立芸術研究所 11名 ホレズム・マムン科学アカデミー 2名 国立歴史博物館 2名
古代パイケント博物館 2名 芸術学研究所 1名
ヌクス歴史研究所 1名 テルメズ考古学博物館 2名 サマルカンド考古学研究所 2名
5事業内容
フィールドコンサベーション
カルシャウール・テパの発掘現場にお いて、保存修復の専門学校生を対象とし た遺跡の発掘と、脆弱な焼失木材のウレ タンパッキングによる取り上げの実習 壁面のはぎ取り実習
平山郁夫国際文化のキャラバンサライ において、専門学校生・大学生を対象と
第9図 発表会風景
45
46 法華文化研究 第40号
した土器の製作実習、遺物の実測実習、
考古学概論、コインの基礎知識、発掘概 論の講義、
「土器作り実習一シェルナザロフ・シャ メイデ〈ン
考古学の歴史と研究方法」古庄浩明 「土器実測実習」アクマル・ウルマゾフ 「コインの歴史」アレクセイ・ゴーリン 「ウズベキスタンと日本の学術的交流と その成果」バハディール・ツルグノブ 出席率80%以上の受講者に終了証明書 を交付=本講座は参加大学の正規単位と して認定された=
ミュージアムコンサベーション
各地の博物館で働く修復者を対象とし た、ファイアズ・テパ出土塑像の保存修 復実習 青木繁夫による塑像の修復実習 国立歴史博物館の大講堂においてワー クショップの成果の発表会、ワーク ショップで取:〕上げた遺物等、カルシャ ウール・テパの展示会
歴史博物館大講堂にて在ウズベキスタ ン特命全権日本大使を迎え、ワークショッ プの成果をもとにしたコンフェレンスを 行い、講師陣・参加者が発表した、同時 に、カルシャウール・テパで発見された 遺物と、実習で取り上げ、保存処理をし た遺物の展示解説を行った=
[61主要協力団体・協力者 資金提供 国際交流基金
文化財保護・芸術研究助成財 団
共同開催 平山郁夫国際文化のキャラバ
助会協
ンサライ
ウズベキスタン国立歴史博物館 言 和光大学名誉教授 前田耕作 東京文化財研究所 山内和也 国立芸術学研究所 シャキ ル・ピダーエフ
場 平山郁夫文化のキャラバンサ ライ
ウズベキスタン国立歴史博物館 力 ウズベキスタン共和国芸術ア カデミー
国立芸術学研究所
在ウズベキスタン日本大使館 在日ウズベキスタン共和国大 使館
2013年度の評価
本年度も発掘現場で取i) Lげた遺物を保存 修復し、展示するという、文化財の一連の流 れを体験できるワークショッフ:と行うことが できた,この姿はこれから日本が海外で行う 考古学・保存修復学のワークショップの基本 形のひとつとなるであろう
平山郁夫国際文化のキャラバンサライの ワークショップについては、徐々にウズベク 1則自身で運営する形態に移行することを目ざ
し、全体の半分をウズベク側講師陣に任せる ようにした,
歴史博物館でのミュージアムコンサベー ションは、青木氏の経験の豊富さとご尽力に より成功裏に終了することができた=本事業 の集大成となる発表会も、加藤文彦在ウズベ キスタン特命全権大使を来賓として迎え、盛
ウスベキスタンにおける之化遺産保存1;多復技術実技講習ヒ国際貢献 古庄 47
大なものとなった、
このように予定していた講座をすべて実行 できた上に、三年間の集大成として歴史博物 館において発表会と展示会を開催できた.ま た、本ワークショップはテレビ・新聞などで も取り上げられ、特別番組として放送される ことになり、ウズベキスタンにおける考古学、
文化遺産保護の意識の高揚に寄与した.
ウズベク側からも、来年度以降の開催を熱 望され、大使館へ要望書も提出されるとのこ とである.こうのよにウズベキスタンの考古
学・文化財保護に重要なワークショップとなっ たといえよう、また、本ワークショップの三 年間の内容を納めた配付資料を作成できたこ とは、内容を一過性のものとせず、将来にも 使い続けられるものとしたことにおいて大き な意味がある、全体として本事業は大成功を 収めたと言って良いであろう:参加者からは 今後も続けてほしいという意見よせられ、こ れを機会に保存修復学会を立ち上げるという 動きもある、
三、全体の評価と課題
アンケート結果
三年間のアンケートは、以下のようになった
2011年度 参加者・来場者アンケートの結果報告 回答数48名
三7 上巧
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r二 ↓ ↓ 、4士t一
;,ア)〔[呵ノ∨ ややイ・満 ヒても不満
41名 7名
s5% 工5川
2C)12年度 参加者・来場者アンケートの結果報告 回答数29名
レ J tt LI
_ v v 阿ノ9 まあ満足 ややイ・満 とても不満
79% 21nn
2013年度 参加者・来場者アンケートの結果報告 回答数21名
ヒても満足 まあ満足 やや不満 とても不満
19名 2名 名 名
90%
総回答数 98名 とても満足 83名 84%
まあ満足 15名 16%
10°。
2012年度から回答数が減少しているが、こ
れは平山郁夫国際文化のキャラバンサライで のワークショップの形態を変え、フt一ルド コンサベーションコースを設けたことで、実 際の発掘現場へ行くようになり、バスに乗れ る人数に制限があったためである、
48 法華文化研究 第40号
三年間のアンケートの結果は、分母が小さ くて十分な集計結果ではないが、総回答数98 の内、84%が「とても満足」と答え、ワーク ショップとして十分な成果があげられたこと がうかがえる=
年度ごとを見ると、2011年度から80°bを越 える満足度を示し、本事業の重要性が分かる,
2012年度には若干数値が低下しているが、こ れは、ワークショップとしての自立を促すた め、できるだけウズベク研究者に運営や講演 を任せた結果、受講者から先進の情報や教育 を日本人講師によって教えてほしいとの強い 要望が寄せられた=そのことが若干の数値の 落ち込みとなってあらわれたと考えられる,
その点を修正し、2013年度にはgo%の満足度 を得られた 最終年度に最も高い満足度が得 られたことは、本ワークショップが十分に機 能しており、受講生にとって有用であると評 価され、今後も継続することによって成果が あげられることを示している・
評価と課題
アンケート結果にもみられるように、本ワー クショップはおおむね成功裏に終了したとい
える・
学生を対象に10年以上継続してきたワーク ショップは、考古学・保存修復学に対する理 解を深める事になったばかりではなく、日本 や日本人に対しての理解を深め、本ワーク ショップの卒業生たちが各方面で「日本のサ ポーター」となってくれている、近年では卒 業生が本ワークショップの講師となり、また 共和国立歴史博物館の副館長となってカウン
ターパートとして本事業を支えてくれている.
本ワークショップの成果が現れはじめている のである、
また、博物館の専門家を対象としたコース は、現実に即したワークショップであり、す ぐにその成果が現れてくるものであり、即効 性のある国際貢献ということができよう,実 際に、2012年度のほとんどの参加者が2013年 も参加し、本ワークショップの実際の現場で の有効性と必要性を報告してくれた,
本ワークショップが日本・ウズベキスタン の双方の必要性からはじまった事業であるた めに、その貢献度の大きいといえよう、それ だけに、今後、本ワークショップをどのよう にするのかが大きな課題となる,ウズベキス タン側からも継続を望む要望書なども出され、
本事業の重要性が明確なだけに、このまま終 了してしまうのは無責任な態度になってしま うかもしれない しかし、継続していくため には資金を調達しなければならないことも事 実である
四、日本の国際貢献の課題
国際貢献には次のようなレベルがあると考 える
被援助国として、
1.援助国から金・物を得ようとする段階 2.援助国から金・物を得ることよりも知 識や技術を得ることに比重が置かれる段 階
3,援助国をパートナーとして共に事業を 進めようとする段階
4、被援助国自体が自ら資金を用意して、
ウスヘキスタンにおltる文化遺産保存修復技術実技講習と国際貢謝、 占庄
援助国の知識や技術を得ようとする段階 5.援助国からの援助を拒む段階
6.援助国として他国を援助しようとする 段階
援助国としては、まず自国の国益が優先され るものの、
1.被援助国の資源など、代償を目当てと する段階
2.援助物資・援助期間・援助内容など、
援助国側の都合で援助する段階
3.援助される国の都合に合わせて的確に 援助する段階
4,被援助国と協議・協力しながら的確な 援助を継続したり、援助後のフすローアッ プができる段階
ウズベキスタンは、独立以来発展をつづけ、
現在は文化面では被援助国の2段階から3段 階にあると思われる 一方、日本は、援助国 としては未だ2段階に止まっている感がある 日本の都合で、プログラムや組織・事務処理 方法を相手国に押しつけず、相手国の事情に 合った方法・フレキシブルな対応を模索すべ きであろう・日本側の論理を強引に持ち込む と必ず破綻し、無理が生じる,日本側と現地 とのお互いのすりあわせ、歩み寄りが必要で ある・また、いくら先進の技術や学問を相手 国へ技術移転しようとしても、受け入れ国側 の技術的・経済的・文化的レベルが対応して いなければ、いわゆる「猫に小判」という状 態になる、場合によっては、受け入れ先の国 の人びとの感情やプライドを逆撫でして日本 に対する反感を買い、かえって逆効果になる こともある・まず、相手方の歴史的・文化的
背景を理解し、状況を把握して、お互い尊敬 しあえる関係をつくることが大切である一そ の上で相手方に見合った貢献の仕方をするこ
とである 特に多民族・多宗教国家で、数力 国語が日常的に使われている国においては細 心の注意が必要である
また、長期的視野に立った援助体制を確立 し、事業終了後のフォローアップ体制を確立 する必要がある 短期で事業を終了し、その 後、フすローをしないのでは、国際貢献の成 果が上がらず、相手国に対して無責任な結果 とな1)、日本側の自己満足だけのための事業 となってしまいかねない
本ワークショッフのような教育関係の事業 は、長い年月をかけてはじめて成果が現れる
しかし、明治期のお抱え外国人講師とその後 の日本の例を挙げるまでもなく、一一度その成 果が現れると、それまでにかけた年月や労力 の何十倍もの成果が期待できる、教育関係事 業は、時間はかかるが費用対効果が高い事業 といえる 10年前、本事業の前進に参加した 学生が、社会的地位を持ち始め、歴史博物館 副館長や芸術学研究所研究員となって、日本 隊の行う各種事業に協力してくれるようになっ てきた 今後も本事業を継続することによっ て、さらに大きな成果が上げられる状態になっ てきたといえる また、継続することによっ て、本ワークショップで学んだ日本の技術で 修復された遺跡・遺物を多く見かけるように なり、ウズベク国内の人びとはもとより、観 光で訪れた外国の人びとにも日本の国際貢献 の成果をアピールできるようになるであろう・
!9
50 法華文化研究(第40号)
教育的な国際貢献とは、「継続して行うこと」
によって大きな成果を生むものであり、この ような教育面での国際貢献こそが、これから の日本の国際貢献のあり方の一つとなるもの
と考えている(第10図)。
おわりに
ウズベキスタンに限らず、中央アジア諸国 では、観光が大きな収入源となってきている。
したがって、その資源となる文化遺産に対す る意識もしだいに高くなっている。しかし、
その保存技術や理論はいまだ未熟である。今 後、文化財の保存修復・考古学的技術・理論 に対する欲求は高まってくることは明確であ る。しかし、文化財の保存修復・考古学調査 などに当たって、外国からの輸入にたよる高 価な材料と高価な器具でしか調査・修復がで きないのであれば、現地に根付くことはなく、
海外の資本・技術・援助に頼りっきりになっ てしまう。現地の事情に即した、調査・修復 の技術を確立し、教育普及していくことが急 務であろう。
くの
さらに、前書で示したような、文化遺産を 観光資源とした「文化遺産産業」を発展させ
第10図 修了式風景
る理論を早急に確立し、実行することが望ま
れる。
註
(1)ダルベルジン・テパ:スルハンダリア州ダルベ ルジン村に所在する城郭都市遺跡。クシャン朝期 の仏教寺院遺跡や八世紀頃の町並みなどが調査さ れている。
(2)調査主体は、2000年まで古代オリエント博物 館、2001年以降、南ウズベキスタン考古学調査団
(3)カンピル・テパ:スルハンダリア州ガガーリン 村近郊に所在する紀元前4世紀頃から紀元4世紀 頃の城郭都市遺跡。クシャン朝の頃の町並みが調 査されている。
(4)ファイアズ・テパ:スルハンダリア州テルメズ に所在する1世紀〜4世紀の仏教寺院遺跡。2006 年、ユネスコの日本基金で遺構の保存がはかられ た。出土遺物はソ連時代にその一部に保存処理が 施されたが、倉庫に放置されたままになり、保存 処理されたものも劣化、風化が進んでおり、早急 に対策が必要な状態である。
(5)カルシャウール・テパ:タシュケント州アルマ ザール近郊に所在する6・7世紀ごろの城郭都市 遺跡。町外れにはネストリウス派キリスト教徒の 墓地が確認されている。
(6)古庄浩明2009「中央アジア・ウズベキスタンに おける遺構保存の現状と課題」『21世紀アジア学 会紀要』第7号
参考文献
加藤九酢他1991r南ウズベキスタンの遺宝一中央アジ ア・シルクロードー』創価大学出版会
古代オリエント博物館1999「ダルベルジン=テペ発掘 調査1998年度概報」『古代オリエント博物館研究紀 要19』
古代オリエント博物館2001「ダルベルジン=テペ発掘 調査2000年度概報」『古代オリエント博物館研究紀 要21』
加藤九酢監修2005『図録 偉大なるシルクロードの遺 産』㈱キュレターズ
古庄浩明 2009「中央アジア・ウズベキスタンにおけ
プズベキスタンにお:ナる七1ヒ遺産保存修復技術実技講習と国際貢献 吉庄 51
る遺構保存の現状と課題一:21世紀アジア学会紀要』
第7号 国士舘大学21世紀アジア学会
古1.1三浩明 L)011 rウズベキスタン共和国・スルハンダ
リア地域の仏教遺跡とGPSデータ.:第17[nlヘレニ ズムーイスラーム考古学研究1ヘレニズム〜イス
ラーム考古学研究会
占宅浩明 2012一ワークショツフt一ウズベキスタンに おける文化遺産f呆存修復技術実技講習について一 :21世紀アジア学研究」第10号 国.}.:舘大学21世紀 アジア学会