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福岡市における男女共同参画の現在と過去

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(1)

はじめに

 福岡・東アジア・地域共生研究所では、「文化資源」、

「防災教育」、「男女共同参画」、「医療情報ネットワー ク」の4つのテーマを柱に、その課題解決を図るた めの調査研究および実践活動を展開している。

 本研究所の「男女共同参画」チームでは、これま で固定的な性別役割分業を見直す調査・研究事業、

NPO

と協働した啓発活動、福岡という場を活かした 東アジアにおける比較研究など、地域や世代、性を 横断した企画を進めてきた。本稿は、この間に調査 した福岡における女性の活動記録を紹介するもので ある。以下、男女共同参画社会という理念の浸透と 現状の課題、及び福岡市域で実践されてきた活動の 歴史的背景とその広がりについて述べる。

1.男女共同参画社会の浸透と課題

 ここで述べる男女共同参画社会とは、一人ひとり が自らの性別(ジェンダー)にとらわれずに誰もが 尊重される社会を目指すことである。日本は少子高 齢化に起因する人口減少社会に突入しており、ライ フサイクルにおける性別役割(教育・労働・結婚・

子育て・介護)を問い直すことは、社会の持続可能 性の観点からも、現代社会において最重要の課題と なっている。

 周知のように、1999年に男女共同参画社会基本法 が成立し、国や地方自治体、企業等において仕事や 家事・子育て・介護等の男女の性別役割分業、固定 的な男女観を見直すことが定められた。また、関連 法として、ストーカー規制法(2000年)、ドメスティッ ク・バイオレンス防止法(2001年)、少子化社会対 策基本法(2003年)、離婚時の分割年金制度開始(2007 年)、婚外子の遺産相続分を婚内子と同等にする民 法改正(2014年)、女性活躍推進法(2015年)など

が定められ、従来の男女の規範やライフスタイルの 再考を促す法整備がなされてきた。

 しかし日本においては、いまだ仕事と家事関連

(家事・育児)時間における男女の差は歴然と存在 している。【表1】は男女別の仕事・家事関連時間 の推移を示したものである。1986年と2011年を比較 すれば、わずかに分担時間差は縮まっているものの、

2011年では男性が女性より2時間以上仕事に時間を 費やし、家事関連時間では女性が男性に比べ3時間 多く従事していることがわかる。この調査からは、

「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業が依然 として解消されていないことを示している。また、

同調査は共働き世帯の妻が夫に比べ家事・育児を担っ ていると指摘している。

 女性のほうが家事・育児をより多く分担しなけれ ばならない一つの要因として、男性正社員の長時間 労働の常態化という社会的な背景がある。男女共同 参画が取り扱うテーマは「女性問題」だけでなく、

働き方や労働慣行など家庭と仕事の調和(ワーク・

ライフ・バランス)を改善する試みにもつながる。

 福岡市でも男女共同参画社会実現のための施策が

―  ― 9

研究機関研究所近況

基盤研究機関 福岡・東アジア・地域共生研究所

福岡市における男女共同参画の現在と過去

福岡・東アジア・地域共生研究所長 人文学部教授 星 乃 治 彦

福岡・東アジア・地域共生研究所 研究支援者 酒 井   晃

表1 1週間あたりの男女別仕事、家事関連時間の推移 家事関連時間(時間.分)

仕事時間(時間.分)

4.0 0 0.1 8

5.3 9 7.2 4

3.5 2 0.2 4

5.1 1 7.1 0

3.4 6 0.2 7

5.1 1 7.0 0

3.4 5 0.3 3

4.5 1 6.4 8

3.4 4 0.3 9

5.0 0 7.0 0

3.4 5 0.4 3

4.5 0 6.5 8

資料:総務省統計局「平成23年社会生活基本調査 生活時間に関 する結果」(21年)

(2)

1990年前後に進められた。1988年の条例化に伴い福 岡市女性センター(現、福岡市男女共同参画推進セ ンター:通称アミカス)を開設した。これは政令指 定都市では2番目の早さであり、特筆すべき点であ る。その後、政府の男女共同参画社会基本法を受け、

2004年に「福岡市男女共同参画を推進する条例」を 制定した。条例推進のための基本計画を2006年に

「福岡市男女共同参画基本計画」(第1次)としてま とめ、次いで第2次(2011年)、第3次(2016年)

を発表している。

 それでは福岡市の現状は全国的にみたときにいか なる位置にあるのか。「福岡市男女共同参画基本計 画」(第3次)においても指摘されていることでは あるが、配偶者など親密な関係性における暴力(ド メスティック・バイオレンス)は全国平均に比べて 女性への暴力が高い傾向にある【表2】。 親密な関 係性における暴力は、相手の人格を否定する精神的 暴力、物理的に身体を傷つける身体的暴力、性行為 を強要する性的暴力に分類され、近年では配偶者等 に生活費を渡さないなどの経済的暴力を加えて類型 化される場合もある。また、男性への暴力も福岡市 では高い数値を示しており、男女共同参画における

「男性問題」が重要な課題となっている。もちろん、

このデータは一例であるため、これをもって福岡に おける男女共同参画の実態ということは出来ない。

さらなる調査・研究をする必要がある。

 こうした現在の男女共同参画を考察するうえで、

福岡市において男女の規範を再考する取組みを進め たグループ・個人に注目することの意義は大きい。

次に福岡市に関連した女性のグループ・個人の過去 の実践活動を概観する。

2.福岡市域におけるグループ・個人の活動  1970年代以降に存在した横断的なネットワークと して注目すべきは、1973年に発足した福岡・女性と 職業研究会である。同会の参加メンバーは女性の教 師(幼稚園、小中高・大学)、主婦で構成されてお り、必ずしも女性問題の専門家が集まっていたわけ ではない。しかし、会の目的は女性の職業問題を再 考することであり、その成果を『働き続ける女性た ち―その現状と課題』(1977年)、『家事・育児を分 担する男たち』(1982年)としてまとめた。前者は 男女の教育差から就業観を問い直し、「働き続ける 女性」への意識調査をおこなった。後者は「働き続 ける女性」たちが周囲の軋轢や矛盾とどう向き合っ ているのか、その身近な存在である「男たち」(夫)

に焦点をあてた意識調査である。いずれも「働き続 けること」、「家事・育児を分担すること」は男性、

女性ともに必要なことであるにもかかわらず、なぜ そこに差が生じたのかを考察した。そして、男女の 固定的な役割ではない、新たな男女の関係性を模索 した内容となっている。福岡・女性と職業研究会は のちに福岡女性学研究会と改称し、活動を多方面に 展開した。その活動の一端には、前述のアミカス設 立の際におこなった同会メンバーの強い働きかけが あり、地域サークルと自治体の提携事例としての側 面も有している。

 地域女性史という視角から現状の問題へ接近した 例もある。当時の福岡県婦人対策課の企画により実 現した福岡県女性史編纂委員会編『光をかざす女た ち―福岡県女性のあゆみ』(1993年)がそれである。

6 

章から構成される本書は、「藩政時代の女たち」、

「産む 育てる 暮らす」、「学ぶ 遊ぶ」、「性 売 買春」、「働く」、「たたかう」というテーマを設け、

近世から現代に至る福岡県の女性たちの生活・文化 を生き生きと描いた。また、同編『新聞にみる福岡 県女性のあゆみ―明治・大正編』(1993年)は『光 をかざす女たち』で使用した膨大な新聞記事を抜粋 し、年表としてまとめたものである。なお、編纂室 メンバーによって福岡県女性史・女性学研究協議会 が発足し、『福岡県女性史・女性学ノート』(全3号、

1993~1996年)が刊行された。これらの成果は歴史 という窓から社会がどのように構成されたのかを照 らしており、現在の男女のあり方が決して普遍的な

―  ― 1 0

表2 配偶者等の親密な関係性における暴力の意識調査

(福岡・全国)

性的暴力(%)

身体的暴力(%)

精神的暴力(%)

2 0.8 1 5.3

4 0.4

福岡市(女)

1 4.1 2 5.9

1 7.8

全 国(女)

5.2 6.1

2 6.3

福岡市(男)

3.4 1 3.3

9.5

全 国(男)

資料:(福岡)福岡市「市男女共同参画社会に関する意識調査」

(23年)(全国)内閣府男女共同参画局「男女間におけ る暴力に関する調査」(22年)

(3)

ものではないことを示している。近年では『福岡  女たちの戦後』(2016年)が創刊されている。

 このほか福岡

YWCA

がまとめた『玄海に虹かけ て―福岡

YWCA

四十年史』(1987年)、アミカスの 10年誌『現代女性図鑑’98―ふくおか女性物語』(1998

年)があり、グループや自治体での年誌編纂を通じ て、福岡における活動の軌跡を知ることが出来る。

加えて、働く女性の集いである「福岡虹の会」や、

松原の植樹をおこなう「はかた夢松原の会」といっ た活動もある。こうした豊かな活動は現在だけでな く、これからの福岡市の取組み、地域や

NPO

の活 動、また、それぞれの活動が提携することで生み出 される可能性について考えるヒントを与えてくれる。

おわりに

 福岡市におけるグループ・個人の活動は決して順 調だったわけではなく、短命に終わった団体もあり、

刊行された書籍や雑誌以外の活動の記憶や感情は記 録化されていない。また、グループ・個人の担い手 たちの高齢化も進んでおり、いま残さなければそう した活動を検証する機会そのものが失われてしまう。

過去の記録化も視野に入れつつ、男女共同参画を担 う人材の発掘を含めて、今後の男女共同参画社会実 現のための方途を模索する予定である。

―  ― 1 1

(4)

はじめに

 第76回米国糖尿病学会がニューオリンズ(ルイジ アナ州、米国)で開催された(平成28年6月10―14 日)。米国糖尿病学会は糖尿病関連では世界で最高 峰の学会で、独創性のある未公開の新規知見が発表 される。また全世界から研究者が集い、参加者は2 万人に及ぶ。従って、研究者にとっては参加者間の 交流や発表内容を通じて関連領域の動向を見極める ための情報収集のまたとない機会となる。筆者の今 回の参加は現在膵島研究所が文科省私立大学戦略的 研究基盤形成支援事業の助成をうけ推進しているプ ロジェクト“生体内膵β細胞再生”の進展を一層加 速させる目的で、β細胞再生に関与する基礎的知見、

ならびに関連するインスリン産生細胞を用いた糖尿 病の新規治療法の最新知見を得ることであった。本 稿ではそれらについて概要を紹介したい。

膵β細胞再生

 膵島は膵臓内に散在する径約 200-300

µ M

の内分泌 細胞塊で、ヒト膵臓では100万個存在し、一個の膵 島は約2

,

000

,

000個の細胞より構成される。ヒト成 人膵島は約60%がインスリン産生β細胞、約30%が グルカゴン産生α細胞、約10%がソマトスタチン産 生δ細胞、膵ポリペプチド産生

PP

細胞である。発 生初期の胎生期膵臓ではまずα細胞が次にβ細胞を 含む内分泌細胞が出現し、小細胞塊を形成する。生 後これらの内分泌細胞塊は徐々に成長し、膵島とな る。

 膵β細胞の再生を考える場合、上記の発生過程で 膵β細胞がどのように生じ、膵島を形成、維持、機 能しているかを明らかにすることが基本となる。加 えて膵島が生理的、また病的に増大することがあれ ばその機序を解明することにより再生因子を見出す ことができる。後者の例として妊娠時、また肥満時

に膵島が優位に大きくなることが知られている。動 物実験では高脂肪食の投与で肥満を誘発すると膵島 径が明らかに増大する。これらはインスリンの需要 増大に対する生体反応と考えられるがその詳細な機 序は不明である。これらの解析手段として膵島移植 の手法による移植膵島を対象にした研究がある。こ の方法は従来の膵臓内膵島を対象とした研究と異な り、簡便に移植膵島の環境を操作、設定でき、移植 膵島が増大する実験条件を確立できればその誘導因 子を比較的容易に見出すことができる。筆者はマウ ス移植膵島が、ある環境下で増大する事実を見出し、

同様の効果がヒト膵島で得られるかを米国より搬送 されたヒト膵島を免疫不全マウスに移植する実験系 で解析している。この点に於いて今回の学会でフラ ンスの研究者より興味深い発表があった。先に示し たように妊娠時、肥満時にヒト膵臓内膵島径は増大 するがその機序は不明である。これらを明らかにす るにはヒト膵島が増大することを再現できる実験手 法の確立が必須であり、唯一可能なのが脳死ドナー より提供された膵臓より単離したヒト膵島を免疫不 全マウスに移植し、移植膵島を解析する手法である。

欧米では移植に用いられない膵臓より膵島を単離し、

研究使用することが認められ、広く糖尿病関連研究 に使用されている。今回のフランスからの発表は成 人ヒト膵島を移植した免疫不全マウスに高脂肪食を 投与すると移植膵島が増大するということを見出し た世界で最初の報告であった。一般的に齧歯類(マ ウス、ラット)に比しヒトを含む霊長類膵島の再生 能は顕著ではなく、移植膵島が増大するという知見 はマウスでは幾つか明らかにされているがヒト膵島 の実験系は皆無であった。今後はどのような因子が 膵島(幹)細胞に作用し、インスリン産生細胞を含 む膵内分泌細胞を誘導しているか形態学的、分子生 物学的解析が行われると推測している。

―  ― 1 2

研究機関研究所近況

基盤研究機関 膵島研究所

第7 6回米国糖尿病学会に出席して

膵島研究所長 安 波 洋 一

(5)

 この他にもα細胞からβ細胞、β細胞からα細胞、

膵管細胞よりβ細胞、膵外分泌細胞よりβ細胞への 転換に関するシンポジウムもあった。いずれもイン スリン産生細胞を新たに創生し糖尿病の新たな治療 法を見出そうとする研究である。

インスリン産生細胞移植

 上記に関連して、従来インスリン産生細胞の移植 による重症糖尿病治療法があり、今回の学会でシン ポジウムとして取り上げられた。

 同種膵島移植:脳死ドナーより提供された膵臓よ り膵島を単離しインスリン依存糖尿病(1型)に移 植する治療法である。米国で第Ⅲ相の臨床試験が実 施され、成果が発表された。その5年グラフト生存 率は50

60%で同じ治療目的で行われる膵臓単独移 植と同等であった。細胞移植の簡便性、安全性を考 慮すると膵島細胞移植の優位は揺るがない。ただ、

膵島移植では一人の1型糖尿病治療に2

3回の移 植、すなわち2

3人のドナー膵臓が必要であり、

この課題解決が必須である。

 異種膵島移植:移植医療全体に共通してドナー不 足は普遍的課題であり、その解決策として異なった 種属の膵島をドナーとして用いる異種膵島移植があ る。異種膵島移植の場合、どの種からの膵島をド ナーとするかの問題があるが、この点に関してはブ タ膵島を用いるコンセンサスが得られている。その 理由としてインスリン製剤に関して、以前はブタ膵 臓より抽出したブタインスリンが臨床使用され、生 物学的作用が確認されている。また繁殖力が旺盛で ドナーとしての供給に全く問題ない。しかしながら、

拒絶反応を含めた課題が山積しており、世界的にも 一部の国(ニュージーランド、アルゼンチン)でし か実施されておらず、症例数は少なく、また臨床成 績も不良である。ただ、最近遺伝子操作技術の発展 により遺伝子改変ブタが作成できるようになってお り、ヒト遺伝子をブタに導入、またはブタ体内でヒ ト膵臓を創生することができるようになっており、

今後の発展によっては臨床成績の向上が期待できる。

 

ES

細胞、

iPS

細胞から創生したインスリン産生細 胞移植:ES細胞、iPS細胞からインスリン産生細胞 を創生し、移植に用いようとする研究の最近の進歩 は目覚ましいものがある。これらの課題として創生

したインスリン産生細胞は血糖に応じたインスリン 分泌、生成能を有するか、移植後に腫瘍を形成しな いか、拒絶反応は制御できるかがある。本年になり ヒト

iPS

細胞から創生したインスリン産生細胞を新 たに開発した免疫隔離膜に封入し、糖尿病マウスに 移植した研究成果が発表された。移植後糖尿病マウ スの血糖は正常化し、拒絶反応は発現せず、腫瘍形 成もなかったという内容であった。今後は霊長類

(サル)をレシピエントとして実験が計画、実施さ れると思われるが同様の結果が得られれば実際の患 者さんへの移植となる。ただ、過去に同種移植で免 疫隔離膜を用いた研究があったが、霊長類では移植 膵島が十分機能しなかったとの報告がある。 また

ES

細胞、iPS細胞由来の分化誘導細胞を移植に用い る際には催腫瘍性の評価が必須であり、このような 課題を全て解決する移植方法が今後開発されねばな らない。

おわりに

 膵島研究所で推進している“生体内膵β細胞再生”

プロジェクトに関連して、米国糖尿病学会での発表 概要を紹介した。今後も世界の状況を十分に把握し、

先見性に富み、且つ福岡大学でしかできない独創性

(オリジナリティー)のある研究を進めるべく、皆 様方からの一層のご支援をお願いしたい。

―  ― 1 3

(6)

1.はじめに

 日本人の死因の第2位は心疾患である。その中で も、冠動脈が狭窄・閉塞する虚血心疾患が重要な位 置を占める。経皮的冠動脈形成術(

PCI

)による血 行再建は、虚血性心疾患治療の主軸であり、これま でに数多くの機器(デバイス)・手技が開発されて きた。バルーン形成術(Plain old balloon angioplasty:

POBA

)しか選択肢がなかった時代には、急性冠閉

塞が一定の頻度で発症したが、ベアメタルステント

Bare metal stent: BMS

)が実用化されると、急性冠 閉塞はもちろん冠動脈形成術後の再狭窄の頻度も少 なくなり、ステント治療が

PCI

の中心となった。 また、日本では2003年に薬剤溶出性ステント(Drug

eluting stent: DES

)が使用可能になり、ステント再狭 窄(

ISR

)においてもさらに良好な治療成績をあげ られるようになった(図1)。現在、第Ⅱ世代

DES

―  ― 1 4

研究機関研究所近況

基盤研究機関 心臓・血管研究所

ベアメタルステント( BMS )と薬剤溶出性ステント( DES ) : BMS の有効性について

池  周而1、2)、権藤 公樹1、2)、白井 和之2、3)

張   波2、4)、安永晋一郎4)、朔 啓二郎1、2)

医学部心臓・血管内科学1)、基盤研究機関「心臓・血管研究所」2) 筑紫病院3)、医学部生化学4)

Key words:糖尿病、虚血性心疾患、糖尿病治療薬、経皮的冠動脈形成術(PCI)

連絡先 福岡大学基盤研究機関

    心臓・血管研究所長 朔 啓二郎

    〒8

0 福岡市城南区七隈7丁目4

    

Tel

1 

Fax

    

e-mail:[email protected]

図1:冠動脈ステント治療の実際

(7)

と呼ばれる

Xience Alpine

(エバロリムス)、

Resolute Integrity

(ゾタロリムス)、

Nobori

(バイオリムス)

と、第Ⅲ世代 DESと呼ばれる

Ultimaster(シロリム

ス)と

Synergy

(エバロリムス)が使用可能であり、

それぞれ複雑病変でなければ10%以下の再狭窄率で ある。近いうちに

Bioresorbable Scaffold

(生体吸収 性スキャフォールド)も使用可能になる予定である が、各

DES

それぞれにストラットの形状や厚さ、素 材、マウント薬剤、ポリマー性質に違いがあり、病 変背景や患者背景によって、使い分けが行われてい る(図2)。

 上記の様に DESの進歩は目覚ましいが、特に維持 透析患者、糖尿病患者、冠動脈が小血管径の患者で は、DESを用いたとしても

ISR

発生率が高い。ス テントによる

PCI

が遠隔期に再狭窄が少ない理由は、

冠血管内径を大きく獲得し維持出来る事、つまり、

リコイルを抑制できる事にある。さらに、

DES

では 強力な新生内膜増殖の抑制効果という因子が加わる。

BMS

の遠隔期における

late loss

(晩期損失:治療直 後の血管内径

慢性期の血管径)は、ステントサイ ズ、対象血管径に関係なく、

0.7

1.0mm

の範囲に収 まることが証明されている

Pre procedural lesion reference(Lesion reference

)の小さい冠動脈に対す

PCI

では大血管に対する

PCI

と比べ、

late loss

が 同じであっても、血管内腔面積の減少度が大きくな る。心筋虚血の原因とならない最小血管径は

2.0mm

だが、

BMS

の遠隔期における

late loss

が平均

0.7

1.0mm である事を考慮すると、ステント植込み時点

で血管径は

2.7

3.0mm

以上が最低必要になる。そ れ以下のステント径しか得られない小血管において は、

BMS

では

ISR

を減らすことに限界がある。一 方、現在の主流である DES はステント

late loss が 0.2mm

0.6mm

程度と報告されており

BMS

に 比べて

ISR

が少なく、小血管径の血管形成術におい て安全で良好な臨床成績が示されている。しかし、

実臨床では、

DES

の留置に伴うステント血栓症や、

その抑制の為の抗血小板剤の長期併用内服が思わぬ 足枷になる事も多い。特に患者背景、既往、内服コ ンプライアンス等が不明である際は、慎重にステン トの種類を検討する必要がある。上記の様に、

DES

の使用は、大規模無作為試験において

ISR

を劇的に 減少させ、そしてイベントフリー生存率を改善させ ることが示されているが、大きめの血管径を対象と した場合、

DES

BMS

との間で血管造影及び臨床 成績における差は未だ不明である。私たちは、①

BMS

を留置する際、対象血管の

lesion reference が、ISR

―  ― 1 5

図2:最新の冠動脈ステントの種類

(8)

の予測因子として十分機能し、

ISR

に対する

cutoff

point

を算定する事が可能である、および、② ①で

算定した

lesion reference の cutoff point 以上であれ

ば、

DES

BMS

ISR

比率は同等であるという2 つの仮説を立て、その証明を当院の

PCI-Registry

で ある

Fu-Registry

から行った

2.対  象

 福岡大学病院、福岡大学筑紫病院、福岡白十字病 院において、2003年1月から2012年3月までに

PCI

を施行した全2

,

197例、2

,

653病変のうち、急性冠症候 群(

acute coronary syndrome: ACS

)及び血液透析

hemodialysis: HD

)患者を除外し、ステント留置後、

追跡の冠動脈造影検査(coronary angiography: CAG)ま で施行する事ができ、更に

QCA

データも含めた詳 細な血管造影解析データが取得可能であった全859 症例(1

,

032病変)を対象とした。平均追跡期間は確

CAG までの約3

00日である。

 スタディ1:全859症例、1

,

032病変のうち

BMS

を 留 置 し た344例405病 変 を 対 象 と し、ISR(-)群

(238症例、290病変)、

ISR

(+)群(106例、115病 変)の2群に分け、

BMS

ISR

BMS-ISR

)と関連 する因子を検討し、特に

lesion reference が BMS-ISR

の予測因子となり得るのか?更に、

ISR

の予測因子 として、その

cutoff point 値は具体的に何 mm

かを検 討した。

 スタディ2:DES group(515症例、627病変)と

BMS group

(344症例、405病変)の全849名(1

,

042病 変)を対象とし、lesion reference が

BMS-ISR

に関す る

cut off point

以上であれば、

DES

BMS

ISR

比は同等であるという仮説のもとに、①で算出され た

cut off point 以上・未満で、それぞれ DES

BMS

の中期的な臨床成績、血管造影の定量、定性解析を 比較検討した。

 主要心血管イベント(

major adverse cardiac events:

MACE)は全死亡、心筋梗塞、標的病変血行再建術

target lesion revascularization: TLR

)の3つと定義し、

心筋梗塞は

ST-T

上昇型心筋梗塞、非

ST-T

上昇型心 筋梗塞のどちらも含み、明らかな虚血性心電図変化 を有する場合、心原性酵素の上昇している場合(簡 易型トロポニン

T

陽性、

CK

が基準値の二倍以上、

CK-MB

が基準値の上限を超える)のいずれかを満

たすものとした。

3.結  果

 

BMS

留置群の

ISR

(-)群、

ISR

(+)群の2群 間で差を示した項目を使用し、BMS-ISR に関する

risk

因子を多変量解析にて検討した結果、

Lesion reference(odds ratio 0.68、95%CI 0.43-0.97、p value

0 . 03

)は

BMS-ISR

に強い相関がある事が確認され

た。そこで、ROC曲線を用いて、lesion reference が

BMS-ISR

の予測因子と成り得るかどうかを検討した

ところ、area under the curve(AUC)は0

.

704であり、

Moderate accuracy を有していた。Relative cumulative frequency distribution

法を利用し、感度・特異度曲線 を用いて

BMS-ISR

に対する

lesion reference の cutoff point

を算出したところ

BMS-ISR

に対する

lesion reference

cutoff point は 3.08mm

であり、感度・特 異度60

.

4%である事が解った。続いて

cut off point

で ある

lesion reference 3.08mm 以上・未満それぞれの

症例群において

DES

留置群と

BMS

留置群の2群比 較を行いスタディ2の証明を行った。

Lesion reference

3.08mm

では、追跡期間の臨床アウトカムに差を

認めず、

DES

BMS

両群で良好な治療結果であっ た。しかし、lesion reference 3.08mm 未満の比較にお いては、

TLR

PCI

)率が、

DES

留置群11

.

2%

vs BMS

留置群24

.

9%(p value<0.001)と

BMS

留置群で有 意に高く、それに伴い

MACE

DES

留置群12

.

9%

vs BMS 留置群2

.

4%と

BMS

留置群で有意に高率で あった(図3)。それぞれの群間において、病変背 景で有意差を呈した項目を用い多変量解析にて

ISR

に関与する

risk

因子を検討したところ、

lesion reference

cut off point 以上の症例群では、BMS

の留置は

ISR

と相関が無く(OR 0.98 95%CI 0.85-1.12, p value

0.78

)、一方、

cutoff point

未満の症例群では、

BMS

の留置と

ISR

は強い相関関係を示した(odds ratio 1.11、

95

CI 1.07-1.14

p value 0.001

)。また

MACE

発生 と

BMS

留置の関連性についても複数のモデルを用 いて検討を行ったが、

cut off point

以上の症例群にお いては、MACE と

BMS

留置には相関が無く、逆に

cut off point

未満の症例群では強い相関関係を認め

た。

―  ― 1 6

(9)

4.考  察

 

DES

BMS

の使い分けが必要となる理由の一つ に、抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy:

DAPT

)の中止に伴うステント血栓症のリスクの上 昇がある。DESが

BMS

よりもステント留置後1年 以降のステント血栓症発生率が高いことは以前から 報告があり、第2世代 DESの登場により改善されつ つあるが、未だに残された課題である。

DAPT

の継 続期間は、AHA/ACC 2007のガイドラインで DES 留置後では、無期限のアスピリン使用と、少なくと も1年間のクロピドグレル使用が推奨され、

BMS

で は留置後の無期限のアスピリン使用と、最低1ヶ月 間のクロピドグレル使用が推奨されている。

DES

DAPT

の長期継続による出血リスクに関しては、ラ ンドマーク解析

PRODIGY

試験等で数多く報告 されているが、その一方で、DES留置後の

DAPT

の 早期中止に関しても、

DAPT study

を中心に、

PARIS

Registry

等でそのリスクが報告されている。このよ

うに、

DES

留置後の

DAPT

の中止、もしくは継続に 関しては、明確な結論が出ていないのが実状である。

更には、心房細動や人工弁の留置を受けている患者 では永続的に抗凝固療法を継続する必要があり、こ のような患者に

PCI

を行う場合はさらなる出血リス クの上昇が懸念される。

5.結  論

 抗凝固薬と

DAPT

の併用投与の期間は出来るだけ 短縮が望ましい。今回、私たちの研究においても、

多くの報告と同様に

BMS

留置群の

ISR

の予測因子 として、

lesion reference

は強い相関を示していた。

Lesion reference が 3.08mm

未満の病変に対する

PCI

は、治療成績が明らかに不良であるため、BMS よ り

DES

を選択する事が望ましい。しかし、

lesion refer-

ence

3.08mm

以上ある場合は、糖尿病や、維持透

析、複雑病変、高度石灰化等の強い

ISR

のリスクを 有していない場合においては、DESでも

BMS

でも 臨床アウトカムに差が無いと考えられ、

DAPT

を早 期に中止する必要がある症例や、DAPT を最低1年 間、継続内服する事に不安がある症例では、

BMS

の 留置(使用)も検討するに値する。

―  ― 1 7

Ϭ ϱ ϭϬ ϭϱ ϮϬ Ϯϱ ϯϬ

D ĞĂƌŚ D/ d>Z;W/Ϳ d>Z;'Ϳ EdsW/ Eds'

^ D^

Ϭ ϱ ϭϬ ϭϱ ϮϬ Ϯϱ ϯϬ

D ĞĂƌŚ D/ d>Z;W/Ϳ d>Z;'Ϳ EdsW/ Eds'

^ D^

L

Lesion reference Ӎ 3.08mm

Lesion reference <3.08mm

Ύ Ύ

P value<0.001 сΎ

図3:

Lesion reference

による中期的臨床アウトカム

(10)

文  献

1)

Macaya C, et al.

 

Continued benefit of coronary stenting versus balloon angioplasty: one-year clinical follow-up of Benestent trial.

 

Benestent Study Group. J Am Coll Cardiol 1996

27

255-261.

2)

Kornowski R, et al.

 

In-stent restenosis: contri- butions of inflammatory response and arterial injury to neointimal hyperplasia.

 

J Am Coll Cardiol.

 

1998

31

224-230.

3)

Baim DS et al, for the ASCENT investigators: Final results of a randomized trial comparing the MULTI- LINK stent with the Palmaz-Schatz stent for nar- rowings in native coronary arteries.

 

Am J Cardiol.

2001

87

157-62.

4)

Baim DS et al for the NIRVANA investigators: Final results of a randomized trial comparing the NIR stent to the Palmaz-Schatz stent for narrowings in native coronary arteries. Am J Cardiol. 2001

87

152-6.

5)

von Birgelen C, et al.

 

A randomized controlled trial in second-generation zotarolimus-eluting Resolute stents versus everolimus-eluting Xience V stents in real-world patients: the TWENTE trial.

 

J Am Coll Cardiol. 2012

59

1350-61.

6)

Stone GW et al for the SPIRIT IV investigators:

Everolimus-eluting versus paclitaxel-eluting stents in coronary artery disease.

 

N Engl J Med. 2010

362

1663-74.

7)

Natsuaki M, et al.

 

Biodegradable polymer biolimus- eluting stent versus durable polymer everolimus- eluting stent: a randomized, controlled, noninferiority trial. J Am Coll Cardiol. 2013

62

181-90.

8)Ike A, et al. Associations between different types

of hypoglycemic agents and the clinical outcome of percutaneous coronary intervention in diabetic patients-From the FU-Registry.

 

J Cardiol. 2015

65

390-6.

9)

Nagata I, et al.

 

Associations between lipid profiles and MACE in hemodialysis patients with percuta- neous coronary intervention: from the FU-Registry.

 

J Cardiol. 2015

65

105-11.

10)

Ike A, et al.

 

Impact of glycemic control on the clinical outcome in diabetic patients with percuta-

neous coronary intervention--from the FU-registry.

 

Circ J. 2011

75

791-9.

11)Tada T, et al. Duration of dual antiplatelet therapy

and long-term clinical outcome after coronary drug- eluting stent implantation; Landmark analyses from the CREDO-Kyoto PCI

CABG Registry Cohort- 2. Circ Cardiovasc Interv 2012

5

381-391.

12)

Valgimigli M, et al.

 

Short-versus long-term dura- tion of dual-antiplatelet therapy after coronary stenting; A randomized multicenter trial.

 

Circu- lation. 2012

125

2015-26.

13)Mauri L, et al. 

Twelve or 30 months of dual antiplatelet therapy after drug-eluting stents.

 

N Engl J Med 2014

371

2155-66.

14)

Mehran R, et al, Cessation of dual antiplatelet treatment and cardiac events after percutaneous coronary intervention

PARIS

: 2 year results from a prospective observational study. Lancet. 2013

382

1714-22.

―  ― 1 8

(11)

1.はじめに

 2 0 1 5年9月8日、火薬学会プロペラント専門部会 が主催する宇宙航空研究開発機構( JAXA )種子島宇 宙センターの見学会に参加したのでその概要につい て報告する。

2.

JAXA

種子島宇宙センターについて

 種子島へは鹿児島から航空機か船で向かう方法が ある。筆者は航空機を使用し、3 0分程度で到着した。

また、種子島空港から宇宙センターまでは自動車で 約1時間要した。なお、福岡や東京からは日帰りも 可能であるが、かなりタイトである。島内を移動す る際、いたるところにロケットのモニュメントや絵 が見られ、宇宙への関心の高さが感じられた。

 JAXA 種子島宇宙センターは1 9 6 9年に設立され、

総面積97 0万平方メートルの日本最大のロケット発 射場である。液体燃料を使用するロケット(N-I ロケッ

ト、 H-IIA ロケット、 H-IIB ロケットなど)はいずれ

も種子島から打上げられているほか、実験用小型ロ ケットの打上げ実績もある。センター内ではロケッ トの組み立て・整備・点検・打上げ、衛星の積み込

み、打上げ後のロケットの追跡といった一連の作業 を行っている。また、他国のロケット発射場が広大 な原野に位置するのに対し、当センターは種子島南 端の海岸線に位置し、周りが緑で囲まれていること から、「世界一美しいロケット発射場」といわれて いる。

3.見学会の概要

 センターには1 3時頃到着した。入り口には N-I ロ ケットの実物大模型が立てて展示されており、迫力 があった。

 到着後約2時間施設内を自由見学した。まずは竹 崎射場を見学した。竹崎射場は現在使用されていな いが、かつては小型の実験用ロケットの打上げ場で あり、現在は発射台がそのまま展示されていた。宇 宙ステーションの宇宙環境利用に向けた実験等が行 われていた。実際に使用された射場を間近で見るこ とができた。

―  ― 1 9

研究機関研究所近況

産学官連携研究機関 安全システム医工学研究所

JAXA 種子島宇宙センター見学記

工学部助教 松 永 浩 貴

写真1 種子島宇宙センター施設マップ

写真2 

N- I ロケット実物大模型

(12)

 続いて竹崎展望台に登った。ここは、打上げの際 に報道用カメラが設置される場所であり、大型ロ ケット発射場からは約 3.6 km 離れた位置にある。展 望台からは射場の様子がよく観察することができた。

周りの海や緑も美しく、とても良い眺めであった。

 その後は広場に展示された H-II ロケットの実物大 模型を経由し、宇宙科学技術館を見学した。館内で はロケットや衛星、国際宇宙ステーションなどに関 する多くの展示があり、興味深かった。

 その後、 JAXA に用意していただいたバスに乗り、

職員の方に解説していただきながら施設見学を行っ た。ここでは、大崎第1事務所、大型ロケット発射 場、総合指令棟を回った。まず、大崎第1事務所で

は H-II ロケット7号機(実機)の機体が保管されて

いた。これは、先に打上げられた8号機の失敗を受

け、打上げが中止となったためである。ここでは H- II ロケットに関する解説のほか、様々な形のロケッ トエンジンの展示を見学した。実際の機体をすぐそ ばで見ることができ迫力を味わえたとともに、機体 に使われる材料や配管の細かい工夫も見ることがで きた。また、筆者の研究分野の一つである火薬が、

信頼性の高さからロケットや衛星の分離に重宝され ていることも解説いただいた。

 続いて大型ロケット発射場を見学した。今回は立 ち入りが制限されているエリアまで入れていただき、

組みあがったロケットが運ばれる道路の上からロケッ ト組立棟および2つの射点を見学しながら様々な解 説をしていただき、ロケット打上げまでの流れにつ いて知ることができた。

―  ― 2 0

写真3 竹崎射場

写真4 集合写真1(

H- II ロケット実物大模型の前で)

写真5 見学会の様子(

H- II ロケット7号機の前にて)

写真6 集合写真2(

H- II ロケット7号機の前にて)

(13)

 最後に総合指令棟ではモニタールームを見学した。

ロケットの打上げや追尾、安全管理などについて知 ることができた。なお、筆者が見学した9/8は H-IIB ロケットの打上げ(8/1 9)からさほど日が経ってい なかったが、現場周辺の事業所にはたくさんの車が 停車していた。職員の方によれば、打上げ後の方が 打上げ時よりも忙しい場合も多いとのことであった。

4.おわりに

 今回初めて打上げ施設を見ることができ、現在筆 者が進めている推進薬の研究がどう実用化につな がっていくかを実感できたので良かった。またこの ような機会があればぜひ参加したい。今度はロケッ ト打上げも見てみたい。最後に、施設を案内してい

ただいた JAXA 職員の皆様、このような機会を企画

していただいた火薬学会プロペラント専門部会に感 謝いたします。

―  ― 2 1

写真7 大型ロケット組立棟

(14)

はじめに

 もう二度と行かないと心に決めていたインドを再 訪 問 し た。2 年 前 の 8 月 に 南 イ ン ド の ケーラ ラ

(Kerala )州コッタヤム(Kottayam)にあるマハトマ・

ガンジー大学で開催された材料の破壊に関する国際

会議( Fracture 2014)に参加したのが最初である。

プレナリー・レクチャーのスピーカーとして当研究 所から江原隆一郎教授と私の二人が招待されたため である。名誉なことであり、またグローバル化を目 指す研究所の目的に合ったのでインド行きを決めた。

大いに歓迎されて、多くの貴重な経験も得ることが できた。しかし、初めてのインドで人並みにカル チャー・ショックを受け、また飲み水の不安に加え て、モンスーンの影響で室内外の至る所が水浸しで 心身ともにほとほと疲れ果ててしまい、もうインド に行くことはあるまいと思っていた。ところが、こ の一度目の訪問のとき、せっかくの機会だからと中 継地点のバンガロール( Bangalore )に旧友のスンダー

( R. Sunder )博士を訪ねたことが2度目のインド行

きにつながった。その旅行は、はからずも前回とは 全く異なって楽しく、また極めて興味深いものとなっ た。その体験を2回に分けて、研究・教育編とビジ ネス編として報告する。

インド再訪問までのいきさつ

 インドとの最初のつながりは2 5年前の1 9 9 1年に遡 る。その年、福岡で開催された国際会議に参加した 私は、そこで若くしてアメリカ空軍研究所の上席研 究員を務めていたスンダー博士に出会った。年齢が 近いので親しくなり、己の未熟な英語に四苦八苦し ながら福岡を案内して回った。程なくして彼はバン ガロールで材料試験機を作る会社を起業して成功し、

社長と同格の研究・開発室長となった。

 2年前のインド・バンガロール訪問では、彼の会

社を見学することが目的の一つであった。その時の 私に、インドの試験機会社が一体どれ程のものかと いう興味本位的で不遜な気持ちなど全くなかったと 言うと嘘になる。ところが実際に見学してみて、そ の高度な技術・開発力、独創的な商品企画力そして 試験機の優れた品質に強い衝撃を受けた。また彼の 案内でインド科学大学( Indian Institute of Science, IIS)の複数の研究室を見学して、ナノ、バイオから 大型構造物までの幅広い基礎、応用研究が活発に行 われていることを知り、私こそが井の中の蛙であっ たと深く反省した。

 そして昨年の末、たまたま韓国に用事があった彼 に福岡まで足を延ばしてもらって、当研究所と日本 材料学会の共催による講演会を開催した。その後す ぐに今度は彼から、インド構造健全性学会(Indian Structural Integrity Society )の副会長の立場として、

バンガロールで開催される構造健全性に関する第一 回国際会議( First Structural Integrity Conference and Exhibition, SICE-2106)への参加要請があった。この 招聘合戦の連鎖は断ち切り難く、内心不承不承、参 加の返事を出した。するとさらに畳みかけるように、

この会議直前に企画されている勉強会( Pre-Conference

Workshop )の講師も依頼された。もうここまでくれ

ば引き下がるわけにもいかず、ままよ、とこれも引 き受け、かくして2度目のインド旅行となった。

インドの学究熱と研究水準

 極めて多くのインド人科学者が国外で活躍してい るのはよく知られている。例えば、アメリカ航空宇 宙局( NASA )の科学者の3 6%がインド人である。

インドが1 3億人という世界第2の人口を擁する国で あることもその一因であろう。しかし、一方の国内 の教育や研究の実態、特に熱意については直接現場 で肌に感じてみるのが一番だと思われる。

―  ― 2 2

研究機関研究所近況

産学官連携研究機関 材料技術研究所

 熱きインド―研究・教育編

材料技術研究所長 工学部教授 遠 藤 正 浩

(15)

 国際学会の前哨戦である勉強会は、国際学会に出 席する国内外の専門家にこの機会を利用して得意分 野について講義してもらい、国内の企業、研究所、

大学などの若い研究者の教育に役立てようとするイ ンド構造健全性学会の意図がうかがえた。6 0分の講 義はビデオとしてアーカイブされ、学会経由でイン ターネット公開されるそうである。私に与えられた お題は最初から決まっていて、「耐久性における混 合モード疲労の重要性(Significance of mixed-mode fatigue to durability ) 」という大きなテーマであった。

金属疲労の未解決問題が多く残っている新しい学問 分野である。そこで教育効果を考慮して全般的に初 心者向けの内容とし、この分野の研究を行う際の実 験の留意点などを含め、最近の研究をトピック的に 使いながらやさしく講義した。受講者の目つきは終 始鋭かった。講義後に若い研究者、特に大学院生が 次々にやって来て熱心に討論を求めてきた。みんな 真摯で裏がなく、もっとよく理解したいという単純 な熱意が伝わってきた。あまねく私の講義内容をよ く理解しており、質問は的確であった。若者の質問 攻めは次の国際会議のコーヒーブレイクやバンケッ ト中まで続いた。

 国際会議の研究水準はかなり高いものであった。

多くのインド人研究者による材料、機械、構造物の 耐久性と健全性に関する広範な研究発表があって活 気に溢れていた。質疑応答が活発すぎて、しばしば スケジュール無視となって時間が伸びた。何事も最 後に無理やり調整するのがインド流だとか。した がって、私の発表はセッション冒頭の招待講演であっ たので、質疑応答に多くの時間を割いてもらえたが、

同行していた本学社会人ドクターの西村氏の発表は 不幸にもバンケット直前のセッションだったため、

司会者から発表時間の短縮を言い渡され、質疑応答 なしであった。研究内容と発表が素晴らしかっただ けに気の毒であった。この会議はインド構造健全性 学会主催による第一回目の国際会議であったが、早 晩一流の国際会議に仲間入りするのは間違いないよ うに思えた。

 一方、勉強会や学会が行われた会場の外は別世界 であった。全般的に混とんとして無秩序で、いわゆ る欧米、日本的な近代社会とは似ても似つかない。

多くのインド人に十分な教育を施す環境が整ってい

るとはとても思えないものであった。経済成長の途 上にあるインドで、高等教育を受けることができた 一部の幸運な若者たちにとって未来はチャンスに満 ちていて、私が会った若者たちはこれからのインド を切り拓こうとする気概に溢れていた。ただし、彼 ら以外のインド人が怠けているかというとそうでは なく、定職を持つ多くのインド人が一所懸命働いて いる様子がひときわ印象的であった。あらゆる階層 のインド人が持つエネルギーをひしひしと感じた。

とにかくインドの人口は中国を抜いて世界一位にな ろうとしているので、その総エネルギーは膨大であ る。人口増加に伴って富裕層も激増しているので、

高い教育を受けたインド人の数がますます増えるに 違いない。これからのインドの順調な発展は現実的 であると強く感じた。バンガロールが多くの海外企 業が集積した活気ある国際都市であったから特にそ う感じたのかもしれない。しかし、このような特異 な自由都市がインドの発展をけん引していくことは 十分考えられる。

最後に

 今回は紙面の都合上、インド、特にバンガロール における研究・教育の勢いについて述べたが、次回 はインドビジネスの勢いについて感じたことを述べ たいと思う。

―  ― 2 3

国際会議と併催のワークショップ(材料強度分野の講義)

懇親会において討論を求めてくる紳士的で気さくなインド人大学院生

(16)

◆はじめに

 社会で実用されている個々の材料を他のそれら材 料と組み合わせることで優れた機能素材とできる複 合材料は、素材に含まれる各成分の生物的有害性の 検証作業が必要最小限ですみ実用化の可能性が高く 多くの分野での利用が期待されている。複合材料と は、2  

つ以上の異なる材料を一体的に組み合わせた 材料のことで、高機能化や機能強化を目的としたも のである。当複合材料研究所では、ナノ・マイクロ メートルという微小な大きさでその構造を制御する ナノテクノロジーの技術を駆使して、様々な分野で 高度な機能を発揮できる複合素材の開発を行ってき た。本研究所では特に、環境への負荷を減らした技 術を用いて高い汎用性と利用範囲の広さを併せ持つ 複合素材の開発を研究内容としている。社会ニーズ に対応した「環境低負荷製造技術」を標準化技術と して開発、応用し、共通の産業技術を創出すること による社会貢献を目指している。

 当研究所では、平成2 6年から文部科学省の科研費 のプロジェクトとして、環境低負荷を実現する機能 性溶媒として超臨界二酸化炭素を用いた再生医療用 素材の開発をはじめ多くの技術を開発してきた。超 臨界流体とは、臨界点(臨界温度;物質固有の値)

を超えた高圧流体である。臨界温度とは、いくら圧 力を加えてもそのガスを液化できなくなる温度であ り、二酸化炭素では 304K である。一般的に超臨界 流体として利用される物質は、各物質の臨界点近傍 の温度および圧力で利用されることが多い。また、

水の臨界温度は 647.3K と高温であり、超臨界状態 の水は有機物を高速に分解する性質を持つことから、

水を用いた超臨界流体プロセスは無機材料の製造に 利用されることが多い。これに対して二酸化炭素を 用いた超臨界流体プロセスは、二酸化炭素の臨界温 度が常温近傍であることから、有機物や高温に弱い

生態関連物質を対象に利用されることが多い。二酸 化炭素はその臨界温度が常温に近いことと、不燃性 であり溶媒として安全性が高いことが主な理由で、

超臨界流体として工業的応用が最も期待されている。

それ以外にも二酸化炭素は毒性が低く、低価格で、

達成しやすい臨界条件(臨界温度 Tc =3 1℃、臨界圧

Pc = 7.46MPa ) 、工業的に容易に入手可能であるこ

と、容易な分離・回収性、また、液体二酸化炭素と 比較して、超臨界二酸化炭素は大きな拡散係数、高 い浸透性、低い粘性などの性質があり、表面処理技 術として利用しやすい性質を有している。超臨界二 酸化炭素は、従来の化学工業や塗装工程などで使用 されていた有機溶媒に対する代替物質の可能性が高 く、グリーンケミストリー(環境に優しい化学技術)

を実現する手法としても期待されている。

 特に、当研究所では従来の有機溶媒に代わる生体 に優しい溶媒として超臨界状態の二酸化炭素を利用 した材料の製造方法ならびにその製品の評価方法を 開発している。この方法は、環境低負荷であるだけ でなく素材のサブミクロンからナノサイズの機能性 制御が可能で、従来法では困難であった複合材料の 開発が可能となった。そのため、我々は、微小複合 素材、微小薬剤、マイクロカプセル、生体素材、新 規バイオスカフォールド生体材料など開発が可能と なり、公的競争資金や企業との共同研究として、多 くの複合素材開発プロジェクトで成果を上げている。

◆教育・研究での効果 1)賞の受賞

・公益財団法人日本食品化学研究振興財団の公募型 研究助成事業の平成2 7・2 8年度課題研究に、当研 究所長の三島健司が「天然物からの微量有用食品 添加物の新規抽出および回収方法の開発」に採択 された。

―  ― 2 4

研究機関研究所近況

産学官連携研究機関 複合材料研究所

複合材料の実用化へ

複合材料研究所長 三 島 健 司

(17)

・第4回産業応用工学国際会議( The 4th International Conference on Industrial Application Engineering 2016 ) にて、 「Cerebral blood oxygenation changes during a hearing music task in measurement with fNIRS ( fNIRS による音楽聴取時の前頭前野における脳血液中の ヘモグロビンの酸素結合度変化)」のテーマで、

当研究所助教の三角真氏が Best Poster Award(最 優秀ポスター賞)を受賞した。

・第7回分子熱力学と分子シミュレーションに関す る国際シンポジウム( The 7th international symposium on Molecular Thermodynamics and Molecular Sim- ulation (MTMS’15) )にて、 「A fluorescence quench- ing study for interaction of apigenin to bovine serum

albumin (牛血清アルブミンに対するアピゲニンの

相互作用に関する蛍光消光研究)」のテーマで、

伊藤祥汰君(福岡大大学院2年)が Poster Award (ポ スター賞)を受賞した。

・ (公社)化学工学会第4 6回秋季大会超臨界流体部 会・基礎物性部会共催シンポジウムにて、「超臨 界二酸化炭素の圧力誘起法を用いた pH 応答性高 分子マイクロコーティング」のテーマで、伊藤祥 汰君(福岡大大学院1年)が学生賞を受賞(九州 大学伊都キャンパス)した。

2)国際学会の学内開催

 平成27年(2 0 1 5年)8月4日~7日に本学文系セ ンター低層棟4階第4会議室にて、アメリカ、ヨー ロッパ、アジアの各国ならびに日本から百名あまり の参加を得て、第7回分子熱力学と分子シミュレー ションに関する国際シンポジウム( The 7th international symposium on Molecular Thermo- dynamics and Molecular Simulation(MTMS’15)を開催した。

3)依頼講演

 これらの研究成果により、三島が下記の国際およ び国内会議の招待講演を行った。

・ 「次世代医療のためのナノ・マイクロ素材技術」

 第7回次世代医療システム産業化フォーラム20 1 1 , 大阪商工会議所7階国際会議ホール(平成2 4年1 月) (2 0 1 2 . 0 1 . 1 9)

・ 「 Integrated Water Cycle Management in Japan 」 , 1st Seminar on Ecology, Sanitation, and Water Resources

Management for the Developing Country , 21 Oct.

2013, Bali, Indonesia, (平成2 5年1 0月)

・ 「Microencapsulation of Particles with Fluoropolymer by Pressure-Induced Phase Separation of Supercritical Carbon Dioxide Solutions 」 ,the 4 th International Symposium on Aqua Science and Water Resources

( ISASWR 2014)平 成2 6年 8 月(2 0 1 4 . 0 8 . 1 3 1 6)

Shanxi University, 山西大学;中国山西省太原市

・ 「Environmentally Benign Application of Supercritical Fluid Technology to Advanced Production of Mater- ials 」 , 2nd International Conference on Ecology, Sanitation, Water, Resources, Materials and Energy

( ESWRME ) ( 2014.8.23 27 ) Fukuoka (平成2 6年8 月)2 0 1 4年

・ 「 Microencapsulation of phenylalanine with pH- responsive polymer for controlled release of drug by pressure-induced phase separation of CO

2

solution 」 ,   Proceedings of the 7th International Symposium on Molecular Thermodynamics and Molecular Simulation

(MTMS’15) (2015.8.4 7)Fukuoka University(平 成2 6年8月)

・ 「生体に優しい二酸化炭素の機能性溶媒としての 利用」 、産業応用工学会全国大会2 0 1 5、Fukuoka、

(平成2 7年9月)

・ 「科学技術ブランドで、アジアに展開する化粧品」 、 美容・健康産業を支える先端技術交流会(ジャパ ンコスメティックセンター;唐津) (平成2 8年3月)

・ 「ナノ・マイクロカプセルの製造と医療・健康食品・

化粧品への応用」、M&M 研究会(サンメッセ鳥栖)

(平成2 8年7月2 2日)

・ 「Novel Products and Evaluation Methods for Cosmetics and Medicine in Asian Network」 , 2016 International Symposium on Cosmetic Regulation, ( Taipei Inter- national Convention Center, Taipei, Taiwan) (平成2 8 年8月3日)

・ 「Bringing Research to Industry Environmentally Benign Commercialization of Supercritical Fluid Technology 」 , 2nd international conference on industrial pharmacy

( Kuantan, Malaysia ) (平成2 8年8月1 4日)

◆今後の展開

 本研究所では、ナノ・マイクロメートルの微粒領

―  ― 2 5

(18)

域において、複合材料とその評価方法の開発と実用 化を行ってきた。今後の課題として、開発した材料 を実用化する用途開発をさらに進め、工業的に利用 可能な複合材料の製造プロセスを検討する。

 さらにこれらの技術を世界標準にするため、地域 の関連機関との連携を強め、国際基準会議に参加し、

九州北部地域全体としてこれらの技術の発展に寄与 する。

―  ― 2 6

(19)

はじめに

 アジア大陸から長距離輸送して飛来する黄砂や

PM 2 . 5 (汚染大気)は、大気中では雲核として機能

し、粒子表面での化学反応により、大気環境・地球 環境に影響を与えると考えられている。また、呼吸 器や循環器の疾患等の人間の健康被害をもたらして いる報告もある[ Matsukawa et al., Circ Cardiovasc Qual Outcomes., 2014 ] 。近年、それら長距離輸送エアロゾ ルが大気環境や生態系・人間の健康環境などに与え る影響について、関心が高まっている。産学官連携 研究機関研究所「福岡から診る大気環境研究所」は、

学内外の研究機関の協力のもと様々な観測装置を福 岡大学に設置し、大気中のエアロゾルや微量気体の 観測を行っている。現在,観測を行っている装置の 一つに蛍光ライダーがある。蛍光ライダーは、福岡 大学と情報通信研究機構が合同で開発した、エアロ ゾルの蛍光スペクトルの計測が可能なライダーであ る。2 0 1 4年5月から観測を開始している。エアロゾ ルの蛍光スペクトル計測は、室内実験や地上でのサ ンプリング計測において花粉やウィルス、菌などの 生物起源微粒子(バイオエアロゾル)の検出・同定 にしばしば利用される。そのため、蛍光ライダーは、

微生物や花粉などの生物起源微粒子を含むエアロゾ ルの鉛直分布の計測に期待できる。本稿では、蛍光 ライダーシステムについて述べ、観測結果をいくつ か紹介するとともに、今後の展開について述べる。

蛍光ライダー装置

 ライダー装置は、1 8号館5階の気圏物質観測室に 設置している(図1) 。光源に Nd:YAG レーザーの 基本波( 1,064nm ) 、第2高調波( 532nm ) 、第3高調 波(355 nm )の3波長を利用している。レーザー光 はミラーで反射して鉛直上空に打ち上げられ、天井 に設置している天窓から上空の大気に送信される。

大気からの後方散乱光は、天窓下に設置している望 遠鏡で受光する。受信は3波長の弾性散乱信号を計 測し、その内 532nm と 355nm は、射出したレーザー 光の偏光面に対して平行な成分と垂直な成分を計測 している。複数の波長で計測し、複数の後方散乱係 数を導出することでエアロゾルの粒子の大きさを推 定することができる。さらに、 532nm と 355nm では 偏光解消度も導出できる。偏光解消度はエアロゾル 粒子の非球形度を示す指標で、黄砂のような非球形 粒子では0 . 1より大きい値を示し、主に球形の微小粒 子からなる PM2.5 などでは0 0 . 1の低い値を示す。

そのため、観測されたエアロゾルの偏光解消度の値 を調べれば、ある程度、エアロゾルのタイプを分別 することができる。各々の信号は、オシロスコープ によりアナログ計測される。蛍光計測は、 Nd:YAG レー ザーの第3高調波( 355 nm )を励起波長として利用 し、大気からの後方蛍光散乱光を望遠鏡で集光した 後で、グレーティング式分光器で分光する。分光さ

れた 420~520nm の波長域の蛍光散乱光は、3 2チャ

ンネルのアレイ型光電子増倍管で検出し電気信号に 変換され、フォトンカウンティング法で計測される。

 弾性散乱信号の計測は、昼夜2 4時間連続して行っ ている。装置は全て室内にあり、天窓を通して、送 受信を行っているため、雨の日も観測可能である。

蛍光計測については、夜間だけの観測を行っている。

観測開始当初(2 0 1 4年5月)は、日没後と明け方に 手動で分光器と検出器を操作し観測を行っていたが、

2 0 1 6年1月からコンピュータによる自動制御で夜間 の観測が行えるように、改良をした。観測した結果 は、クイックルックとして自動で解析を行い、ホー ムページ上から閲覧が可能である。

http:/ /www.se.fukuoka-u.ac.jp/fiteh/home/data_view/

http: / / www.se.fukuoka-u.ac.jp / geophys / am / lidar_quicklook /

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研究機関研究所近況

産学官連携研究機関 福岡から診る大気環境研究所

福岡大学での蛍光ライダーを用いた黄砂、越境汚染大気の計測

福岡から診る大気環境研究所 白 石 浩 一

参照

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