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地方創生に向けた地産地消型バイオリファイナリー研究

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Academic year: 2021

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全文

(1)

平成

27

3

地方創生に向けた地産地消型バイオリファイナリー研究

山本 康介

1

・吉井 淳治

1

・田丸  浩

1, 2, 3

1

三重大学大学院生物資源学研究科生物圏生命科学

2

三重大学生命科学研究支援センター・バイオインフォマティクス部門

3

三重大学新産業創成研究拠点・バイオテクノロジー応用

Study on biorefinery for regional revitalization

Kosuke Y

AMAMOTO1

, Junji J

YOSHII1

and Yutaka T

AMARU1

1 Department of Life Sciences, Graduate School of Bioresources, Mie University, 2 Department of Bioinfomatics, Mie University Life Science Research Center,

3 Laboratory of Applied Biotechnology, Mie University Industrial Technology Innovation Institute, 1577 Kurimamachiya, Tsu, Mie 514-8507, Japan

Abstract

The regional issues of population decrease and a super-aging society are a serious bottleneck in Japan.

Therefore, new industries by innovation expect to foster new jobs, resulting that both of them lead to regional revitalization. Because Mie prefecture has huge petrochemical industrial complexes, technology platforms and research institutions in addition to biomass sources, this area is suitable for challenging the biorefinery in Japan. We used Clostridium cellulovorans that completely degrades biomass for biorefiney.

As a result, we have so far succeeded to produce not only biofuels but also chemical compounds from mandarin lees. Therefore, we established a bio-venture company "EcoBioful Co. Ltd." in order to promote those efforts. Furthermore, the networks among regional companies and academia having excellent technologies are tightly cooperated. In future, biorefinery as a new industry will contribute the creation of new industries and regional vitalization with developing regional innovation.

Key Words: バイオリファイナリー,みえバイオリファイナリー研究会,エコバイオフル株式会社,

イノベーション,地方創生

I .はじめに

2012

12

26

日 に 発 足 し た 第 二 次 安 倍 政 権 は,「アベノミクス」と呼ばれる “ 三本の矢 ” を 政策課題に掲げたが,経済政策の第二弾として「地 方創生」を表明した。すなわち,地方の人口減少・

超高齢化は予想以上に深刻であり,2040年には 全国

1800

市区町村の半数の存続が難しくなると 予測されている。したがって,首都・東京一極集

中の現状を打破するには,地方の暮らしが多くの 人にとってより魅力的になる必要がある。「将来 に夢や希望を持つことができるような,魅力あふ れる地方を創生し,地方への人の流れをつくる。」

を基本目標の一部に据え,中長期的な観点から政 策 を 実 施 し て い く た め に,2014年

9

3

日 に は 内閣官房に「まち・ひと・しごと創生本部」が設 置された。

三重県では,産学官連携のもと,環境・エネル

2015

1

26

日受理

514-8507 三重県津市栗真町屋町 1577

 * For correspondence(e-mail: [email protected]

(2)

ギー関連産業の育成・集積をはかる「みえグリー ンイノベーション構想」がまとめられた。この構 想は世界的な資源の枯渇,地球温暖化問題,日本 国内における電力供給の逼迫などを背景に需要の 高まりと市場規模の拡大が見込めるエネルギー・

環境関連産業分野において,三重県の地域特性・

産業特性を活かしつつ,新たなイノベーションを 創出することが出来ると期待されたためである。

本稿は,こうした背景の中で「バイオリファイ ナリー研究」を地域イノベーションの戦略とした 我々の取組みにについて紹介する。

II.バイオマス利用における効率的バイオ変換

システム

主な再生可能エネルギーである太陽光,風力,

水力,地熱,バイオマスのうち,バイオマスは唯 一,大気中の二酸化炭素を積極的に消費する。さ らに,バイオマスは直接燃焼による熱利用やバイ オマス発電プラントでの発電以外にも,バイオリ ファイナリー技術を用いた変換,特に液体燃料,

化成品原料をはじめとする様々な工業原料へと変 換可能である点において優れている。すわなち,

バイオリファイナリーとは,①原料となる植物バ イオマスを,分解・糖化しやすいよう前処理を施 し,②原料を単糖まで分解・糖化し,③得られた 糖を微生物によって発酵させ,④得られた生成物 を精製することで,バイオマスを有用物質へと変 換するプロセスの総称である。したがって,バイ オリファイナリーは環境・エネルギー・食料問題 などの社会的問題を根底から解決する可能性があ るため,世界中で研究開発が進められている。し かしながら,植物バイオマス(セルロース,ヘミ セルロースなど)は非常に安定であるため,特に 上記の工程②の技術開発が遅れており,そのブレ イクスルーが待たれている。そこで我々のグルー プは,植物バイオマスを効率的に分解・糖化する 絶対嫌気性中温菌

Clostridium cellulovorans

をバイオ リファイナリーに応用するための研究を行ってき た1-5)

C. cellulovorans

は 超 酵 素 複 合 体 で あ る “ セ ルロソーム ” を構築して,セルロースやヘミセル ロースを強力に分解することができる。さらに,

分泌型の酵素と組み合わせることによって,植物 細胞壁を直接分解することが可能である6)。この

ような

C. cellulovorans

の植物バイオマス分解・糖

化能力と,同じ

Clostridium

属に分類される中温性 発酵菌

C. acetobutylicum

でアセトン

-

ブタノール

-

エ タノール(ABE)発酵を行うことで,従来の方法 よりも低コストでバイオ燃料を生産できる可能性 が あ る7)。 こ の 方 法 は

Consolidated Bioprocessing

CBP

)と呼ばれ,上 記 の 微 生 物 に よ っ て 糖 化・

発酵を

1

つのタンク内で同時に並行複発酵を行う ことで,これまでコストがかかっていた市販酵素 製剤を使用すること無く,また,生産システムを

1

つのタンクに集約化・簡素化できるため,大幅 な生産コストの低減が見込める。 さらに,

ABE

発酵菌のみならず,さまざまな発酵菌を組み合わ せることによって,多種多様な生産物を得ること ができる。具体的には,これまでに我々の研究グ ル ー プ は 本 シ ス テ ム を 用 い て,n-ブ タ ノ ー ル,

エタノール,2-プロパノールといったアルコー ル類やアセトン,乳酸,酪酸,酢酸といった有機 酸の生産に成功している8)。また,本システムは

C. cellulovorans

が分解可能なバイオマスであれば

適応可能である点も優れている。これまでにシュ レッダー古紙やペーパースラッジなどのセルロー ス系バイオマスやみかん残渣・搾汁粕,小豆粕,

米糠といった農業系・食品系廃棄物を原料とした 分解・糖化プロセスの構築に成功しており,世界 中が注目している廉価な “ シュガープラットフォー ム ” の形成が実現可能になっている。

III.三重県における地産地消型バイオリファイ

ナリー

三重県の主導で,県内の原料バイオマス量,バ イオマスの転換技術やバイオマス由来製品の製造 技術,製品の市場等の調査の結果,全国でも有数 の石油化学コンビナートを有し,豊富な林産資源 と農産資源,さらにバイオマス利活用に関する研 究開発においても技術基盤を有することから,日 本の中でも有数のバイオリファイナリーを実現さ せるポテンシャルの高い県であることが明らかと なってきた9)。すなわち,三重県は豊富なバイオ マスから,アルコール類や化成品原料をバイオリ ファイナリーによって生み出し,石油化学コンビ ナートで利用するといったサプライチェーンを構 築できる可能性が高いと考えられた。そこで,三 重県雇用経済部ではバイオリファイナリー技術を 用いた新産業の創出のため産学官連携の交流・連

(3)

携の場を設け,プロジェクト化に向けたネットワー ク づ く り を 行 っ て い る。 す わ な ち,

2013

5

27

日に四日市コンビナート関連企業を中心とし た「みえバイオリファイナリー研究会」が設立さ れ,その取組みの一環として

NEDO

平成

25

年度 新エネルギーベンチャー技術革新事業「未利用柑 橘類を活用したバイオ燃料生産の技術開発」が採 択された。本プロジェクトは三重県松阪市に所在 する辻製油株式会社(地元企業)と当研究室の産 学連携体制のもとに,“ 未利用柑橘類(みかん類)”

を活用した「地産地消型バイオ燃料」の普及・促 進を目指すものである(図

1

)。具体的には,三 重県御浜町を中心とする栽培柑橘類の未利用資源

(不適合品・摘果果実・搾汁残渣等)を原料として,

上記の微生物による糖化・発酵を行い,

n-

ブタ ノールをはじめとする有用物質への変換を目指す。

n-

ブタノールは,高騰する重油の代替や農機具 の燃料といったバイオ燃料として,また四日市コ ンビナートでの工業原料等として利用できると期 待 さ れ る。 こ れ ま で に, み か ん 搾 汁 残 渣 の

C.

cellulovorans

に よ る 完 全 分 解 に 成 功 し( 図

2)

10), そこから得られた糖を原料としたバイオ燃料を生 産・精製し,

2

ストロークエンジン搭載のラジコ ンカーの走行実証試験にも成功した11-13)。さらに,

本システムのスケールアップ試験を行うための,

100L

容のテストプラントを製造した。

図 1 

NEDO

新エネルギーベンチャー技術革新事業・プロジェクト俯瞰図

図 2 みかん残渣の完全分解

左:C. cellulovorans未 植 菌, 右:C. cellulovorans植 菌,

上段:攪拌後,中段:静置後(正面),下段:静置後(俯 瞰),37℃静置

384

時間後.

(4)

IV.エコバイオフル株式会社

こうした研究開発の実用化と技術移転を加速化 させるため,我々のグループは

2014

7

8

日 に大学発ベンチャー「エコバイオフル株式会社(代 表取締役社長 吉井淳治氏)」を設立した。

2014

10

月に公益財団法人三重県産業支援センター 高度部材イノベーションセンター(

AMIC

)(三 重県四日市市)へ入居しており,今後さらに三重 県との連携強化を推進していく予定である。実施 体制としては,地域イノベーション大学を目指す 三重大学とその連携による要素技術の開発を推進 するとともに,国内プラント設計・製造会社との 連携による製造プラント開発,大規模農園,食品 加工会社,製紙会社等との連携によるバイオマス 資源の探索・発掘・開拓,化学会社との連携によ る製品の加工・精製委託等,といった幅広い異分 野横断型のコンソーシアム構築を行っていく必要 がある。さらに,本バイオリファイナリー研究を 成功させるためには,バイオマスの提供先,収集 のシステム,糖化・発酵技術,プラントの製造技 術,製品の利用といった,様々な分野の様々なシ ステム,技術の融合が必要であり,それらを上手 くマッチングするための緊密なネットワーク構築 も重要である。 そこで, 三重大学と地域の企業

(産)・団体(官)・人々(民)がそれぞれの分野 で力を結集し,次世代型の新産業となるバイオリ ファイナリーを地域・社会システムに機能させる ことで

"

地産地消モデル

"

の実現を目指している。

V.おわりに

大気中の二酸化炭素濃度は上昇し続けており,

地球規模の気候変動を抑制するには,温室効果ガ ス排出量の大幅かつ持続的な削減が重要な課題に なっている。そこで,再生可能エネルギーの利用 促進,またそのための技術革新や社会システムの 構築が急務となっており,これらに関連する取組 みは今後より一層,その重要度を増していくだろ う。バイオリファイナリー研究を推進していくこ とで新たなイノベーションが創出されたならば,

新産業が創成されて雇用が増大し,結果的に活力 のある地域創生や活性化に貢献できるだろう。

謝 辞

本 活 動 の 一 部 は,NEDO新 エ ネ ル ギ ー ベ ン チャー技術革新事業の支援で行われた。

引用文献

1) Sleat, R., Mah, R. A., Robinson, R. (1984) Isolation and characterization of an anaerobic, cellulolytic bacterium, Clostridium cellulovorans sp. nov. Appl.

Environ. Microbiol. 48: 88-93.

2) Tamaru, Y., Miyake, H., Kuroda, K., Nakanishi, A., Kawade, Y., Yamamoto, K., Uemura, M., Fujita, Y., Doi, R. H., Ueda, M. (2010) Genome sequence of the cellulosome-producing mesophilic organism Clostridium cellulovorans 743B. J. Bacteriol. 192:

901-902.

3

Tamaru, Y., Miyake, H., Kuroda, K., Nakanishi, A., Matsushima, C., Doi, R. H., Ueda, M. (2011) Comparison of the mesophilic cellulosome- producing Clostridium cellulovorans genome with other cellulosome-related clostridial genomes.

Microb. Biotechnol. 4: 64-73.

4) Y a m a m o t o , K . , T a m a r u , Y . . ( 2 0 1 4 ) A noncellulosomal mannanase26E contains a CBM59 in Clostridium cellulovorans. BioMed Res. Int. 2014:

438787.

5)

山本康介

, 田丸浩 . (2012) シュガープラットフォー

ム を 構 築 す る 環 境 バ イ オ 技 術:

Clostridium

cellulovorans

セルロソームによるソフトバイオマ

ス完全糖化

.

環境バイオテクノロジー学会誌

. 12:

83-86.

6

Tamaru, Y., Ui, S., Murashima, K., Kosugi, A., Chan, H., Doi, R. H., Liu, B. (2002) Formation of protoplasts from cultured tobacco cells and Arabidopsis thaliana by the action of cellulosomes and pectate lyase from Clostridium cellulovorans.

Appl. Environ. Microbiol. 68: 2614-2618.

7) Lynd, L. R., Weimer, P. J., Van Zyl, W. H., Pretorius, I. S. (2002) Microbial Cellulose Utilization: Fundamentals and Biotechnology.

Microbiol. Mol. Biol. Rev. 66 (3): 506-577.

8) Yamamoto. K., Kudo, H., Watanabe, S., Jyoshii, J., Tamaru, Y. (2014) n-Butanol production from mandarin lees by mesophilic Clostridia. MIE BIOFORUM 2014. Lignocellulose Degradation and Biorefinery. Program and Abstracts. 118-119.

9

) 一般財団法人エネルギー総合工学研究所

. (2014)

「バイオリファイナリー調査業務委託」成果報告書

.

(5)

79-98, 143-174.

10) 2014

6

24

日 日刊工業新聞

:

三重大,ミカン廃 棄物からバイオ燃料を効率生産

-

前処理なし,完全糖 化 http://www.nikkan.co.jp/news/nkx 0520140624 aaar.

html

11

2014

11

14

日 朝日新聞

:

腐ったミカン,車走 らせた 夢はバイオ燃料レース

http://www.asahi.

com/articles/ASGCC5WQYGCCOIPE01Y.html 12) 2014

11

17

日 朝日新聞

:

廃棄ミカン,燃料

に変身 三重大チーム開発,車動かす

http://www.

asahi.com/articles/DA3S11460850.html

13) 2014

12

6

日 日本農業新聞

: 廃棄ミカンが代

替ガソリンに 微生物で分解・発酵 三重大学院

http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.

php?content_id=31120

参照

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