別紙様式1
修 士 学 位 論 文
ス ポ ー ツ を して い る児 童 ・生 徒 の 栄 養 ・食 生 活 の評 価 に 関す る検 討
平 成24年1月6日 提 出
首 都 大 学 東 京 大 学 院
人 間健 康 科 学 研 究 科 博 士 前 期 課程 人 間健 康 科 学 専 攻 ヘ ル ス プ ロモ ー シ ョンサ イ エ ンス学 域 学修 番 号:10899602
氏 名:大 滝 裕 美
(指 導 教 員 名:稲 山 貴 代)
別紙様式3
平成23年 度 博士前期課程学位 論文要 旨
学 位 論 文 題 名(注:学 位 論 文 題 名 が 欧 文 の場 合 は 和 訳 を つ け る こ と) ス ポ ー ツ を して い る児 童 ・生 徒 の 栄 養 ・食 生 活 の 評 価 に 関す る検 討
学 位 の 種 類:修 士(健 康 科 学)
人 間健 康 科 学 研 究 科 博 士 前 期 課 程 人 間 健 康 科 学 専 攻
ヘ ル ス プ ロモ ー シ ョン サ イ エ ン ス 学 域 学 修 番 号10899602
氏 名:大 滝 裕 美
(指 導 教 員 名:稲 山 貴 代)
【背 景 ・目 的 】
本 研 究 で は スポ ー ツ をコミュニ テ ィに 所 属 す る小 学 生 、中 学 生 、高 校 生 を 対 象 として 、枠 組 み に 照 らし合 わ せ て食 生 活 を 評 価 しそ の 特 性 を 明 らか にす ること、QOLと 関 連 す る食 生 活 要 因 を 明 らか に す ることを 目的 とした 。調 査1は 地 域 にお けるスポ.̲̲̲ツクラブ の 役 割 で あ る生 涯 ス ポ ー ツの 推 進 とい う観 点 か ら、地 域 の 少 年 団 ・クラブ に 所 属 す る小 学 生 を 対 象 に した 。調 査2 は 選 手 の 強 化 ・育 成 の 推 進 とい う観 点 か ら、競 技 レベ ル の 高 い 小 学 生 ・中 学 生 ・高 校 生 を対 象 に した 。あわ せ て セ ル フ ・エ フィカ シ ー や 結 果 期 待 の 尺 度 の 検 討 を試 み ることも 目的 とした 。
【調 査1:方 法 】
サ ッカ ー 少 年 団 ・クラブ の 小 学4〜6年 生81名(解 析 対 象 者:75名 、有 効 回 答 率93%)を 対 象 とした 。 自記 式 質 問 紙 調 査 の 枠 組 み の 構 成 概 念 はQOL、 健 康 ・栄 養 状 態 、行 動 、中 間 要 因 、準 備 要 因 、属 性 、食 環 境 、運 動 と栄 養 との 関 わ りとした 。QOLと 食 生 活 要 因 との 関 連 は QOLを 従 属 変 数 とし、他 の 食 生 活 要 因 との 関 連 を 二 項 ロジステ ィック回 帰 分 析 にて 検 討 した。
【調 査1:結 果 】
調 査 の 結 果 、QOLや 食 べ る行 動 、主 食 に 関 す る準 備 要 因 、食 環 境 は 良 好 で あ った が 、食 事 づ くり行 動 や 食 情 報 交 換 ・活 用 行 動 の 積 極 的 な 回 答 は 少 な か っ た 。ま た 、QOLに セ ル フ ・ エ フィカ シ ー や 運 動 後 の 栄 養 補 給 とい っ た スポ ー ツ活 動 と関 わ りの あ る行 動 が 関 連 す ることを 確 認 した 。
【調 査2=方 法 】
対 象 はJク ラブ 育 成 チ ー ムの 小 学 生 か ら高 校 生 お よび 県 大 会 ベ スト8の チ0ム の 小 学 生 と した(調 査 対 象 者:小 学 生59名 、中 学 生114名 、高 校 生76名)。 自記 式 質 問 紙 調 査 の 枠 組 み の 構 成 概 念 はQOL、 健 康 ・栄 養 状 態 、食 物 摂 取 状 況 、行 動 要 因 、中 間 要 因 、準 備 要 因 、 属 性 、食 環 境 とした 。枠 組 み の 検 討 は 因 子 分 析(最 尤 法 バ リマ ックス 回 転)に て 行 っ た。さらに 、 算 出 した 因 子 得 点 とQOLの 関 連 をPearsonの 相 関 分 析 に て 検 討 した 。
【調 査2=結 果 】
中 学 生 お よび 高 校 生 で は 、思 春 期 の 特 性 が 反 映 され る と考 え られ る家 族 と関 わ る行 動 が 少 な い とい う結 果 を得 た 。結 果 期 待 や セ ル フ ・エ フィカ シ ー が 高 い とい う結 果 は 、調 査1と 同 様 で あ った 。因 子 分 析 で は 中 学 生 ・高 校 生 とも4因 子 で 最 適 解 を 得 た が 、小 学 生 の 解 は 得 られ な か った 。QOLと 関 連 の み られ た 因 子 は 、中 学 生 は スキ ル お よび 副 菜 摂 取 に 関 す る因 子 、高 校
生 は セ ル フ ・エ フィカ シ ー お よび 副 菜 摂 取 に 関 す る因 子 で あ った 。
【考 察 】
調 査1・ 調 査2を 通 じ、小 学 生 、中 学 生 、高 校 生 の セ ル フ ・エ フィカ シ ー は 一 般 の 小 学 生 に く らべ 高 か った ことか ら、スポ ー ツ をして い る子 どもの 食 生 活 の 特 性 として 、高 い セ ル フ ・エ フィカ シ ー が 考 え られ た 。ま た 、副 菜 摂 取 に 関 す る因 子 がQOLと 関 連 して い た ことか ら、スポ ー ツを して い る子 どもで も 、ス ポ ー ツ に とらわ れ す ぎ な い バ ランス の よい 食 事 の 重 要 性 が 示 唆 され た 。 スキル や セ ル フ ・エ フィカ シ ー とい った 準 備 要 因 の 因 子 がQOLと 関 連 して い た ことか ら、準 備 要 因 か らQOLへ の パ スを検 討 す る価 値 が あることが 示 唆 され た。結 果 期 待 や セ ル フ ・エ フィカ
シーの回答 に天井効果 がみられ たことから、スポーツをしている子 どもの食生活評 価 には、社 会的
認知理論以外 の行動科 学理 論を用いることが望まれる。
・‑←・‑
目 次
要 旨
1.緒 言 1.背 景
1‑1.ス ポ ー ツ を し て い る 児 童 ・生 徒 の 特 性
1‑2.ス ポ ー ツ をして い る児 童 ・生 徒 の 栄 養 ・食 生 活 の 課 題 2.当 該 分 野 の 課 題
II.研 究 小 史
1.調 査 ・介 入 研 究 に お け る 「枠 組 み 」とは
2.ヘ ル スプ ロモ ー シ ョン 分 野 に お け る理 論 枠 組 み:プ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル 3.国 内 の 保 健 分 野 に お け る枠 組 み を用 い た 調 査 ・研 究
4.国 内 の 栄 養 ・食 生 活 分 野 に お ける枠 組 み を用 い た 調 査 ・研 究
4‑1.栄 養 行 政 に み る栄 養 ・食 生 活 分 野 に お け る 目標 設 定 の た め の 枠 組 み:
健 康 日本21
一口■鱒一一冒冒騨■騨11112333467
一口口一一■一一■一一
・8一
4‑2.若 年 成 人 を 対 象 とした プ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル にもとつ く
理論枠組み開発の試み ・8一
4‑3.児 童/保護者/独居 高齢者/若年 成人を対象 とした枠組みを用いた 調査 ・介入研 究
5.海 外 の 枠 組 み を用 い た 調 査 ・研 究
一9一
6.枠 組 み に取り入れた行動科学理論:社 会的認知理論 皿.本 研 究 の 目 的
一10‑
‑12‑
‑14一
IV.調 査1:生 涯 ス ポ ー ツ推 進 の 観 点 か ら行 っ た サ ッカ ー 少 年 団 に 所 属 す る
4・5・6年 男 子 児 童 の 食 生 活 評 価 な らび にQOLと 関 連 す る食 生 活 要 因̲̲̲.‑15‑
1.緒 言 ‑15一 2.方 法
3.結 果 4.考 察 5.結 論
2・1.対 象 者 な らび に手 順 2‑2.調 査 項 目 と方 法 2・3.解 析 方 法
V.調 査2:選 手 の 強 化 育 成 の 観 点 か ら行 っ た 競 技 レベ ル の 高 い サ ッカ ー
小 学 生 ・中 学 生 ・高 校 生 男 子 の 食 生 活 の 特 性 な らび にQOLと の 関 連
一15‑
‑15‑
‑16‑
‑17‑
̲17
‑19‑
‑21一
1.緒 言 2.方 法
3.結 果 4.考 察
2‑1.対 象 者 な らび に手 順 2‑2.調 査 項 目 と方 法 2‑3.解 析 方 法
4‑1.学 校 種 に よる相 違 点
一22‑
‑22‑
‑23‑
‑23‑
‑24‑
‑25‑
‑25‑
‑27‑
‑27一
5.結 論
4‑2.学 校 種 を通 じた 共 通 点 4‑3.食 生 活 の 構 成 要 因
V正.総 合 考 察 田.結 論 皿.文 献
皿.調 査 結 果(図 表) 表1形 態特性
表2全 体的なQOLお よび食 関連QOL
表3食 行動,食 情報交換 ・活用行動,健 康行動,生 活行動および 中間要因 表4食 知識,食 態度,意 志 ・意欲および食スキル
表5結 果期待 およびセル フ・エフィカシー,周 囲からの支援 表6運 動時の水分補給および運動後の栄養補 給
表7二 項ロジスティック回帰分析(一 次解析) 表8二 項ロジスティック回帰分析(二 次解析) 表9形 態特性
表10全 体的なQOLお よび食 関連QOL 表11食 物摂 取状況:食 べる頻 度 表12食 事づくり行 動,食 べる行動 表13食 情報交換 ・活用行動 表14食 行動 の変容段 階
表15食 知 識,食 態 度,意 志 ・意 欲 表16食 スキ ル
表17結 果 期 待
表18セ ル フ ・エ フィカ シ ー
表19周 囲 か らの 支 援,食 情 報 へ の ア クセ ス,食 物 へ の ア クセ ス 表20因 子 分 析 雲で 得 られ た 中 学 生 の 食 生 活 の 構 成 要 因 表21因 子 分 析 禽で 得 られ た 高 校 生 の 食 生 活 の 構 成 要 因
表22中 学 生 お よ び 高 校 生 の 因 子 分 析 で 抽 出 され た 因 子 得 点 とQOLと の 関 連*̲̲̲‑65・
IX.参 考 資 料 昌66働
資 料1保 健 計 画 の 企 画 と評 価 の た め のPrecede・Proceedモ デ ル の 統 括 図
89234534567890123456789012342233334444444555555555566666
資料221世 紀の健康 ・栄養 政策の概要
資料3若 年成人へ の栄養 ・食 教育の診 断・評価 指標 検討 の枠組み 謝辞
一67‑
・:
・ ・
‑70一
1.緒 言 1.背 景
1‑1.ス ポ ー ツ を し て い る 児 童 ・生 徒 の 特 性
近 年,児 童 ・生 徒 に お い て 身 体 活 動 を 高 め ることや 運 動 習 慣 を持 っ ことの 重 要 性 が 指 摘 され て い る。体 力 向 上 の み な らず,健 全 な 発 育 ・発 達 に お い て も身 体 活 動 は 重 要 で あ る1)。児 童 ・生 徒 が 体 育 以 外 で 身 体 活 動 レベ ル を高 め る方 法 として,学 校 の クラブ ・ 部 活 動 へ の 参 加,地 域 の ス ポ ー ツ少 年 団 ・クラブ へ の 参 加 が 挙 げ られ る。
「スポ ー ツ 」は 一 般 的 に 「陸 上 競 技 ・野 球 ・テ ニ ス ・水 泳 ・ボ ー ト・レ ー ス な どか ら登 山 ・ 狩 猟 な ど に い た るま で,遊 戯 ・競 争 ・肉 体 的 鍛 錬 の 要 素 を含 む 身 体 運 動 の 総 称 」(広辞 苑 第5版,岩 波 書 店)と 定 義 され てい る。また,日 本 学 術 会 議 の 提 言 に お い て は 「遊 戯 的 ・競 争 的 要 素 を持 っ 身 体 活 動 」1)と定 義 され て い る。ここで い う「身 体 活 動 」は,「骨 格 筋 の 活 動 に よ り安 静 時 よりも多 くの エ ネ ル ギ.̲̲̲消費 を伴 う身 体 の 状 態 」2)であ り,「運 動 」
と「生 活 活 動 」に 分 け られ る。 「運 動 」は 「体 育 ・保 健 や 楽 しみ の た め に 身 体 を動 か す こと。
スポ ー ツ。」(広辞 苑 第5版,岩 波 書 店),「 身 体 活 動 の うち,体 力 の 維 持 ・向 上 を 目的 と して 計 画 的 ・意 図 的 に 実 施 す るもの 」3),「身 体 活 動 の 一 部 に含 まれ るが,生 活 活 動 や 労 働 とは 異 な り,健 康 や 体 力 を増 進 す るとい う目的 意 識 や 暗 黙 の 期 待 感 をもっ て行 う身 体 活 動 や 遊 び や 楽 しみ の た め に行 う身 体 活 動 」1)と定 義 され て い る。これ らか ら,本 論 文 で は 「ス ポ ー ツ 」は 「体 力 の 維 持 ・向 上 を 目 的 とし計 画 的 ・意 図 的 に 実 施 され る遊 戯 的 要 素 ・競 争 的 要 素 ・肉 体 的 鍛 錬 の 要 素 を含 む 身 体 活 動 」として,使 用 す る。
ス ポ ー ツ をして い る児 童 ・生 徒 の 目指 す 競 技 レベ ル は さま ざまで あ る。通 常,学 校 の ク ラブ ・部 活 動 や 地 域 の スポ ー ツ少 年 団 ・クラブ に 所 属 し競 技 をす ることに な るが,単 に 体
を動 か す 習 慣 を身 に つ け た り楽 しむ た め の 活 動 か ら,地 区 大 会 や 全 国 大 会 を 目指 した トレ ー ニ ン グもあ れ ば,プ ロ傘 下 の クラブ に選 抜 され プ ロを 目指 しトレ ー ニ ン グ す る場 合 もあ る。所 属 す る組 織 に よって トレ ー ニ ン グ の 強 度 ・時 間 ・頻 度 ・メニ ュー な どが 異 な るこ とか ら,日 常 生 活 で み る身 体 活 動 レベ ル も異 な る。我 が 国 で は,身 体 活 動 レベ ル は 「主 に 身 体 活 動 量 の 指 標 で あ り,二 重 標 識 水(doublylabeledwater;DLW)法 で 測 定 さ れ た 総 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 を 基 礎 代 謝 量 で 除 した 指 標 」4)と定 義 され て い る。健 常 な 成 人 の 場 合,「 日本 人 の 食 事 摂 取 基 準[2010年 版]」で は 身 体 活 動 レベ ル 低 い:1.50,ふ つ う:1.75,高 い:2.00と な る。活 動 量 が 多 い と考 え られ るスポ ー ツ選 手 の 身 体 活 動 レベ ル は 競 技 によっ て 異 な り,プ ロサ ッカ ー:2.11〜2.55,シ ン クロナ イズ ドスイミング:2.18,ボ デ ィー ビル:2.00,水 泳(高 トレ ー ニ ング):3.00,自 転 車 競 技:4.95,ク ロスカ ン トリー スキ
一:3 .40〜4.00,長 距 離 走:1.99〜2.99と い った 報 告 が み られ る5〜12)。児 童 ・生 徒 の 身 体 活 動 レベ ル は,同 じく「日本 人 の 食 事 摂 取 基 準[2010年 版]」で は6〜7才 は 低 い:
1.35,ふ つ う:1.55,高 い:1.75,8〜9才 は 低 い:1.40,ふ つ う:1.60,高 い:1.80,10〜
14才 は 低 い:1.45,ふ っ う:1.65,高 い:1.85,15〜17才 は 低 い:1.55,ふ つ う:1.75, 高 い:1.95と 年 齢 階 級 ご とに設 定 され て い る。ス ポ ー ツを して い る児 童 ・生 徒 の 報 告 は 限 られ て お り,我 が 国 の デ ー タ は 引 原 ら13)による高 校 野 球 選 手 の 身 体 活 動 レベ ル2.66 の み で あ る。成 人 を対 象 とした 報 告 と考 え合 わ せ ると,根 拠 とな るデ ー タ は 不 十 分 で は あ るが,児 童 ・生 徒 の 場 合 も活 動 量 が 多 い と考 え られ,身 体 活 動 レベ ル 皿(高 い)以 上
に 相 当 す ると予 想 され る。
ス ポ ー ツ は 身 体 活 動 量 の 増 加 の み な らず,心 の 発 育 ・発 達 に 影 響 す ることも指 摘 され て い る1)。 スポ ー ツを して い る児 童 ・生 徒 は 保 護 者 や 友 人,学 校 の 教 員,地 域 の 人 々 に 加 え,自 ・他 チ ー ム の 監 督 お よび コー チ,選 手,ほ か の 学 校 に 通 うチ ー ムメイトや そ の 保 護 者,チ.̲.̲ム の 運 営 スタッフ,育 成 担 当 スタッフ,世 代 の 異 な る選 手 な ど 立 場 や 年 齢 の 異 な るさまざ まな 人 と関 わ る。多 種 多 様 な 人 々 との 関 わ りが 子 ども の コミュニ ケ ー シ ョン能 力 の 発 達 に 大 きな 役 割 を果 た す と考 え られ る。また,ス ポ ー ツ に 対 す る有 能 感 は 自信 や ス トレス耐 性 を育 み,行 動 を積 極 的 にす ることも指 摘 され て い る1)。
1‑2.ス ポ ー ツ を し て い る 児 童 ・生 徒 の 栄 養 ・食 生 活 の 課 題
児 童 ・生 徒 の 食 生 活 の 乱 れ が 依 然 として 多 方 面 か ら数 多 く指 摘 され て い る。特 にこの 年 代 の 朝 食 欠 食 率 は 問 題 視 され とりあ げ られ ることが 多 い 。平 成22年 版 食 育 白 書14)
は,朝 食 を食 べ な い ことが あ る ・ほ とん ど食 べ な い 者 は 小 学5年10.8%,中 学2年 16.1%い ることを指 摘 し,学 力 や 体 力 を低 下 させ る一 因 で あると述 べ て い る。平 成20年 国 民 健 康 ・栄 養i調査15)に お い て も朝 食 欠 食 は7才 〜14才 に6.5%(女 子 児 童 ・生 徒 5.0%),15〜19才 に18.4%(女 子 生 徒10.0%)い ること,平 成12年 に くらべ 増 加 して い ることが 示 され て い る。
児 童 の 栄 養 ・食 生 活 全 般 に わ た る課 題 につ い て は 岡 田 らの 報 告16)が あ る。小 学5年 を対 象 に 学 校 単 位 で 調 査 した 結 果 か ら,食 関 連QOL:い つ も食 事 が お い しく,た の しく な い 者 が3〜4割,健 康 状 態:不 定 愁 訴(身 体 的)を 有 す る者 が6割,食 行 動:朝 食 を毎
日食 べ な い 者 が1割,食 知 識:主 菜 ・副 菜 とい う言 葉 を知 らな い 者 が6〜7割,食 態 度:
栄 養 を考 え て 食 事 で きる者 が1割,食 スキ ル:食 品 表 示 を見 て 選 べ な い 者 が6割,食 環 境:家 族 か ら支 援 を受 け てい な い 者 が3割 い るとい っ た 問 題 が 指 摘 され て い る。
一2一
一 方,ス ポ ー ツ を して い る児 童 を 対 象 とした 報 告 は 限 られ て い る。ス ポ ー ツ 少 年 団 ・民 間 スポ ー ツ クラブ に 所 属 す る小 学4〜6年 を 対 象 とした 調 査 の解 説17)で は,健 康 状 態:
ふ だ ん か ら体 調 不 良 を感 じて い る者 が1割,食 行 動:間 食 を 毎 日食 べ な い 者 が5割, 朝 食 を毎 日食 べ な い 者 が3%,食 態 度:き の こ ・海 藻 ・い も,果 物 を 毎 日食 べ ることを意 識 して い な い 者 が4割 い る。中 学 生 の 食 生 活 に っ い て 報 告 は な く,高 校 生 は 部 分 的 な 健 康 状 態,食 物 摂 取 状 況,食 行 動 お よび 準 備 要 因18〜20)の み,大 学 生 も高 校 生 と同 様, 部 分 的 な 健 康 ・栄 養 状 態 や 食 物 摂 取 状 況21)の み 報 告 され て い る。
一 般 の 児 童 ・生 徒 の 栄 養 ・食 生 活 の 課 題 は 国 や 個 々 の 研 究 者 に よっ てQOLや 健 康 状 態,食 行 動 や 準 備 要 因,強 化 要 因 な どが 報 告 され て い る。しか しス ポ ー ツ を して い る 児 童 ・生 徒 の 栄 養 ・食 生 活 に つ い て 明 らか に な っ て い るの は 食 物 摂 取 状 況 や 食 行 動, 準 備 要 因 の 一 部 に 限 られ て お り,そ の 実 態 や 課 題 は 不 明 で あ る。
2.当 該分野 の課 題
栄養 ・食 教育で は,行 動科 学理論を取り入れた多側面からの段 階的な栄養 ・食 生活 の評価か ら栄養 状態 や食 物摂 取状況 に関わる要 因を明らかにし,問 題 点の改善 に有 効な手 立てを取ることが必要である。例 えば,健 康 日本21「21世 紀 の健康 ・栄養政 策の 概 要」22)では,健 康 ・栄養状 態や食物摂取状 況は人間の行 動 の結果 ととらえ,栄 養 ・食 生活 に関連する要 因を栄養状態 と食物摂取状況,行 動と準備 要因,環 境の3つ のレベ ル に分けて評価し,栄 養施 策 につなげている。
しかし,我 が国 のスポーツをしている児童 ・生徒を対象 とした調査 報告 では,対 象集 団の栄養 ・食 生活 を説 明す る要 因や その関係 性,そ こから導 き出される問題 点や課 題 の整理や検討 がなされていない。課題解決 のための有効な対策 をとるため には,栄 養 ・ 食 生活を多側 面か ら段階的 に評価 できる枠組 みづくりのための研 究が必 要である。
II.研 究 小 史
1.調 査 ・介 入 研 究 に お け る 「枠 組 み 」とは
調 査 研 究 で は,対 象 とな る事 象 を 構 成 す るさまざ ま な 要 素 ・要 因 をあ る視 点 を持 って 整 理 ・説 明 す るさい,枠 組 み,構 成 な どで 示 す 。「枠 組 み 」とい う言 葉 は,一 般 的 に は 「① 枠 を組 む こと,そ の 枠,② 物 事 の 仕 組 み 」と説 明 され る(広 辞 苑 第5版,岩 波 書 店)。 調 査 研 究 で 用 い られ るの は,「② 物 事 の 仕 組 み 」として の 枠 組 み で あ る。この 「仕 組 み 」は,
「① もの ご との くみ た て られ 方,構 造,機 構,② くわ だ て,計 画,③ 戯 曲 ・小 説 な ど の趣 向,
構 想,プ ロット」を意 味 す ることか ら,調 査 研 究 で は,「多 様 な 要 素 ・要 因 か らな るで あ ろう 物 事(事 象)の くみ た て られ 方,構 造(構 成)」を あ らわ す もの として,枠 組 み が 用 い られ る
と解 釈 で きる。ヘ ル スプ ロモ ー シ ョン活 動 に お い て は,プ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル の 枠 組 み を用 い ることで 包 括 的 に診 断 ・評 価 を行 うことが,各 国 ・各 地 域 で 展 開 され てい る23
〜27)。食 生 活 に 関 わ る分 野 に お い ても,構 成 す るさまざ まな 要 因 とそ れ らの 関 連 性 を,行 動 科 学 理 論 も 取 り入 れ な が ら,枠 組 み を提 示 す ることで 明 らか に しようとい う取 り組 み が 始 まっ てい るも の の28〜30),ま だ 一 部 の 研 究 に 限 られ て い る。ライフステ ー ジ,属 す るコミ ュニ テ ィに よって 人 々 の 食 生 活 は 異 な る。枠 組 み の 活 用 は,ス クリー ニ ン グ とな る,ア セ スメン トの た め の 質 問 票 の 開 発,栄 養 ・食 教 育 の 介 入 プ ログ ラム の 企 画 と評 価 な ど につ な が ると期 待 され て い る31)。 した が っ て,栄 養 ・食 生 活 分 野 に お け る研 究 も,ラ イフステ ー ジ や コミュニ テ ィに応 じた 枠 組 み の 開 発 が 望 まれ る。
2.ヘ ル ス プ ロモ ー シ ョン 分 野 に お ける 理 論 枠 組 み:プ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモデ ル
プ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル は,QOLの 維 持 ・向 上 を最 終 目標 とした,ブ リテ ィッシ ュ コロンビア 大 学 教 授 のGreen(現 カ リフォル ニ ア 大 学 サ ンフ ランシ スコ校 教 授)ら が 提 唱 した ヘ ル ス プ ロモ ー シ ョン,介 入 プ ログラム推 進 の た め の モ デ ル で あ る。1974年 当 初 は, 健 康 教 育 の 費 用 便 益 分 析 を用 い た 評 価 の フレ ー ムワ ー クとして発 表 され た32)。 そ の 後 随 時 改 訂 され,1980年 に プ リシ ー ドモ デ ル33),1991年 にプ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル 34),2005年 に 一 部 を 改 訂 したプ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル として 発 表 され て い る35)。
プ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル は 資 料1に 示 す ように,ア セ スメン トで あ るプ リシ ー ドと評 価 で あ るプ ロシ ー ドの2つ の 段 階 に 分 け られ る。
プ リシ ー ド(PRECEDE)は,predisposing,reinforcing,andenablingconstructs
ineducational/ecologicaldiagnosisandevaluation(教 育1エ コロジカ ル ・ア セ スメン トと評 価 の た め の 準 備 ・強 化 ・実 現 要 因)の 略 で あ る。プ リシ ー ドの 段 階 は 診 断 の プ ロセ スで,Greenら は これ を 第1段 階 か ら第4段 階 に 分 け説 明 して い る。
第1段 階 で は 社 会 ア セ スメン トと状 況 分 析 を行 う。Greenら36)はQOLを 「個 人 や 集 団 に お い て 人 々 の ニ ー ズ が 満 た され る感 覚,そ して 幸 せ や 達 成 感 を 得 る機 会 を否 定 さ れ ることが な い 感 覚 」と定 義 して い る。そ こで,こ の 段 階 で は 対 象 者/社 会 が め ざ して い る QOLに 関 す る情 報 を収 集 し,対 象 者/社 会 のQOLに 優 先 順 位 を つ け る。
第2段 階 で は 疫 学 ア セ スメン トを行 い,QOLに 影 響 をもた らす 健 康 課 題 や,健 康 課 題 に影 響 す る要 因 の 具 体 的 な 項 目を特 定 す る。対 象 者/社 会 が 有 す る健 康 問 題 に つ い
一4・
て 情 報 収 集 し,優 先 的 に解 決 す べ き課 題 を 決 定,健 康 指 標 を設 定 す る。そ の 後,優 先 課 題 に 影 響 す る行 動 要 因,環 境 要 因,遺 伝 要 因 の 具 体 的 な 項 目を 明 らか に し,そ れ ら も測 定 可 能 な 指 標 に 変 換 す る。
第3段 階 で は 教 育/エ コロジ カル ・ア セ スメン トを行 い,行 動 要 因 と環 境 要 因,遺 伝 要 因 を 引 き起 こす また は そ れ らに 影 響 す る要 因 として,準 備 要 因,強 化 要 因,実 現 要 因 を 特 定 す る。準 備 要 因 は 個 人 や 集 団 が 有 す る知 識,態 度,信 念,価 値 観,認 識 な ど,強 化 要 因 は 周 囲 の 人 の 態 度 や 行 動 な ど,実 現 要 因 は 社 会 資 源 を指 す 。これ らは 相 互 に
作 用 し,行 動 要 因 や 環 境 要 因 に働 きか け る。
第4段 階 で は 運 営 ・政 策 ア セ スメン トと介 入 調 整 を行 う。これ まで に設 定 した 要 因 を 改 善,向 上 させ,最 終 的 に対 象 者/社 会 の 望 むQOLに 到 達 で きるよう,そ れ ぞ れ の 要 因 を 介 入 プ ログ ラム に ど の ように 取 り込 み,介 入 プ ログ ラム を どの ように 実 施 す るか を決 定 す る。
プ ロシ ー ド(PROCEED)は,policy,regulatory,andorganizationalconstructs
ineducationalandenvironmentaldevelopment(教 育 ・環 境 開 発 に お け る政 策 的, 法 規 的,組 織 的 要 因)の 略 で ある。プ ロシ ー ドの 段 階 は 評 価 の プ ロセ スで,Greenら は これ を第5段 階 か ら第8段 階 に 分 け 説 明 して い る。
第5段 階 で は 介 入 プ ログ ラムを 実 施 す る。介 入 プ ログ ラム 実 施 中,第6段 階 の プ ロセ ス評 価 も平 行 して 行 う。第6段 階 で 行 うプ ロセ ス評 価 は 準 備 要 因,強 化 要 因,実 現 要 因 の 変 化 の 評 価 で ある。第7段 階 で は 影 響 評 価(健 康 課 題 に影 響 す る行 動 要 因,環 境 要 因,遺 伝 要 因 の 変 化 の 評 価)を 行 う。第8段 階 で は 成 果 評 価(健 康 状 態 の 変 化 や,対 象 者 が 望 むQOLの 状 態 に 到 達 した か の 評 価)を 行 う。
この ように,プ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル は,健 康 状 態,さ らに はQOLに 至 るまで,そ の 影 響 す ると考 え られ る要 因 を 系 統 立 て て設 定 す ることで,そ れ ぞ れ の 要 因 を構 成 概 念 とす る理 論 枠 組 み の ひ な 型 に な るととも に,課 題 の 設 定 か ら介 入 プ ログ ラム の 実 施,評 価 まで を合 理 的 に 進 め る,と い った 特 徴 をもつ 。した が って,こ れ らの 特 徴 を 生 か す こと
は,理 論 枠 組 み の 開 発,介 入 プ ログラム の 企 画 と評 価 な どを容 易 に 実 施 して い くた め の 方 策 とな る。
な お,本 研 究 は 横 断 研 究 で あ るた め,要 因 の診 断 にあ た る第1〜 第3段 階 に 取 り組 む 。
3.国 内 の 保 健 分 野 に お け る枠 組 み を 用 い た 調 査 ・研 究
保 健 分 野 で は,上 記 の プ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル も含 め て,あ らか じめ 設 定 した 枠 組 み を用 い た 調 査 研 究 が 報 告 され て い る。
公 衆 衛 生 分 野 で は,神 馬 ・村 上23)が ネ パ ー ル の ヨー ド欠 乏 症 対 策 に お け るプ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル の 有 用 性 を 示 す こと,途 上 国 に お け るモ デ ル 適 用 時 の 留 意 点 を指 摘 す ることを 目 的 とした調 査 の 結 果 を 報 告 を して い る。調 査 対 象(者)は 既 存 資 料(ネ パ ー ル 保 健 省 発 表 の 欠 乏 症 対 策5力 年 計 画
,ユ ニ セ フ 等 国 際 機 関 発 表 の 資 料)な らび に キ ー イン フォー マ ン ト(ネパ ー ル 保 健 省 小 児 保 健 部 長 お よび 栄 養 課 長,ネ パ ー ル ユ ニ セ フ事 務 所 栄 養 部 長,カ ナ ダMicronutrientInitiativeネ パ ー ル 事 務 所 長,食 塩 公 社 社 長)で あ る。枠 組 み の 構 成 概 念 は ① ヨー ド欠 乏 症 対 策 の 最 終 目標,② ヨー ド欠 乏 症 有 病 率,③ 行 動/環 境 要 因,④ 前 提/実 現/強 化 要 因,⑤ 行 政/政 策 の5つ で あ る。要 因 整 理 の 結 果,ヨ ー ド欠 乏 症 の 改 善,国 民 の 多 くに み られ るヨー ドに 関 す る知 識 不 足 とリス ク行 動,ヨ ー ド摂 取 を促 す 環 境 の 未 整 備 を課 題 として 示 した。また,住 民 へ の ヨー ド摂 取
向 上 の た め の 健 康 教 育 よりも,ヨ ー ド含 有 量 の 安 定 して い る精 製 塩 や 粗 塩 の 流 通 促 進 の 政 策 展 開 の ほ うが 効 果 的 で あ ると提 言 して い る。本 報 告 で は,ヨ..̲.ド欠 乏 症 対 策 の 継 続 の 必 要 性 を 確 認 し,欠 乏 症 に 関 連 す る要 因 や 行 政/政 策 に つ い て 把 握 し,欠 乏 症 対 策 の 今 後 の 方 針 を 示 す ことが で きた 。
看 護 分 野 で は,清 水37)が 新 生 児 特 定 集 中 治 療 室(以 下,NICU)の ケア 内 容 に 関 す る家 族 の 認 識 とエ ンパ ワー メン トの 実 践 程 度,そ れ らに 関 連 す る家 族 な らび に 環 境 要 因 を 明 らか に す ることを 目的 とした 調 査 を報 告 して い る。厚 生 労 働 省 が 認 可 す る総 合 周 産 期 ・地 域 周 産 期 母 子 医 療 セ ンター に 入 院 して い る子 どもをもつ 母 親239名(解 析 対 象:
101名,有 効 回 答 率42.3%)を 対 象 に,自 記 式 質 問 紙 調 査 法 に て,4っ の 構 成 概 念 か らな る枠 組 み にも とつ く調 査 票 を用 い て 実 施 した 。枠 組 み の 構 成 概 念 は ①NICUの 環 境,② 家 族 の 特 性,③ 看 護 実 践,④ 家 族 の エ ンパ ワー メン トで あ る。本 報 告 で は,看 護 実 践 や 家 族 の エ ンパ ワー メン トお よび そ れ らの 下 位 尺 度 と,対 象 者 の 属 性 ・ケ ア シ ステ ム の 関 連 か ら,一 人 一 人 の 子 ども に 合 わ せ,家 族 の 意 思 を反 映 した ケ ア を 実 践 で きる NICUの 環 境 づ くりの 必 要 性 が 示 唆 され,NICUに お ける今 後 の ケ ア の あ り方 を提 示 す ることが で きた 。
福 祉 分 野 で は,三 重 野 ら38)が 短 期 入 所 施 設 に お け るケ ア 方 法 の 確 立 の た め,施 設 の 種 類 に よるケ ア の 質 の 共 通 点 と相 違 点 を 明 らか に す ることを 目的 とした 調 査 を報 告 し て い る。調 査 対 象 者 は 介 護 老 人 福 祉 施 設 ・短 期 入 所 施 設,介 護 老 人 保 健 施 設,介 護
一6一
療養型 医療施設 の職員240名(解 析対象:介 護 老人福祉 施設 ・短期入所施設の職員 30名,介 護老人保健 施設の職 員22名)で ある。3つ の構成概念からなる枠組み にもと つ く調 査票 にて 自記式 質 問紙調 査法で実施した。枠組 みの構 成概念 は① ケアの構造,
②ケアのプロセス,③ ケアのアウトカムである。本報 告では,ケ アの構 造 ・プロセス・アウト カムからなる枠 組 み によってケアの質 を評価 したことで,両 施 設 に共通す るケアの質 の 課題 を明確 にし,今 後必要な取り組 みを提示している。
歯科保健 分 野で は,松 尾 が学童 の永久歯う蝕減少 のため,永 久歯 う蝕 に影響する要 因を明らかにすることを 目的 とした調 査を,河 村 らが地域住 民の歯 科保 健行動を評価す るための歯科保 健モデルを開発す ることを目的とした調査 を報告している。
松尾24)の報告 は永久歯 う蝕 が少ない新潟 県Y小 学校 の小 学5〜6年 生 とその保護 者,永 久歯 う蝕 が全 国平均レベル の佐賀 県M小 学校 の小 学5〜6年 生とその保護者, 各校 の養護教 諭,学 校歯科 医,管 轄す る教 育委員会教 育長を対 象としている。歯 科検 診,自 記 式質 問紙調査 法お よび面接法 にて調 査を実施し,用 いた調査 票 の枠組み の 構成概 念 は①QOL,② 客観 的疫 学,③ 保健行 動,④ 環境,⑤ 準備 因子,⑥ 強化 因子,
⑦ 実現因子,⑧ 健 康教育,⑨ 政策/法規/組織である。本報 告では,プ リシード・プロシー ドモデル にもとつ く枠組 みを使用 することで,客 観的疫 学や保健行 動などの永久歯う蝕 に影響 する要因 の整理 と,関 連性 の評価 によって,永 久歯う蝕 の多さに関連する要 因 を明らかにすることができた。
河村 ・笹原39)は東 広島市/その周辺地域で実施 される1才6ヶ 月健 診対象児の保護 者1045名(回 収数838名)を 対象 に自記式質 問紙調 査法を実施 した。調 査票は7つ の構 成概念 からなる枠 組 み にもとづき,①QOL,② 口の健 康,③ 歯 科保健行 動,④ 準 備 因子,⑤ 強化 因子,⑥ 実現 因子,⑦ 環境 である。その結 果,歯 科保健 に関す る健康 教育を行 う場合,準 備 因子や歯科保健行動を強化することで,QOLが 向上する可能性 を示唆する歯科保健モデルを開発した。本報告では,プ リシード・プロシードモデル にも とつくことで,歯 科保健 に関わる多様 な要因を包括 的 に評 価 できる歯 科保健モデル の 開発 が可能 となった。
4.国 内の栄養 ・食 生活分野における枠組みを用いた調査 ・研究
栄養 ・食 生活分野 にお ける,枠 組 みを用いた横 断研 究 ・介入研 究は限られている。国 内の調 査報 告 は,研 究 目的 に沿って研究者 が独 自に作成 した調 査票を用い実施され たものが多く,そのため,報 告 間の比較検討 を行うことが難 しいのが現 状である。そこで,
武 見 らの グ ル ー プ は 当 該 分 野 へ の プ リシ.̲̲.ド・プ ロシ ー ドモ デ ル の 適 用 を試 み たO健 康 日本2140)の 栄 養 ・食 生 活 分 野 に お ける 目標 設 定 の た め の 枠 組 み を発 表,さ らに 行 動 科 学 理 論 を導 入 した 「若 年 成 人 へ の 栄 養 ・食 教 育 の 診 断 ・評 価 の 指 標 に 関 す る総 合 的 研 究 」28)を報 告 して い る。
4‑1.栄 養 行 政 に み る 栄 養 ・食 生 活 分 野 に お け る 目 標 設 定 の た め の 枠 組 み=
健 康 日 本21
我 が 国 の 栄 養 ・食 生 活 分 野 に は,生 活 習 慣 病 患 者 の 増 加,生 活 習 慣 病 の 若 年 化, 若 年 女 性 に お け るや せ の 増 加 の 原 因 とな るエ ネ ル ギ ー,各 種 栄 養 素 の 摂 取 量 の 相 対 的 ・絶 対 的 偏 り,社 会 環 境 の 変 化 に伴 う個 々 人 の 食 行 動 の 多 様 化,不 正 確 な 健 康 情 報 の 氾 濫 な どの 問 題 が あ る。これ らの 問 題 を 改 善 す るた め,「21世 紀 の 栄 養 ・食 生 活 の あ り方 検 討 会 」は,生 涯 を通 じた 健 康 づ くりの 観 点 か ら食 環 境 の整 備,具 体 的 な 数 値 目標 の 設 定,食 行 動 の 多 様 化 に 対 応 した 支 援 体 制 の 充 実 を 図 る必 要 が あ ると考 え た 。この 考 え方 を 基 礎 とし,「21世 紀 の 健 康 ・栄 養i政策 の 概 要 」が 作 成 され て い る22)。この 枠 組 み は 資 料2に 示 す ように 生 活 の 質,健 康 状 態,疾 病,栄 養 状 態,栄 養 素,食 物 等 の 摂 取 状 態,食 生 活,食 行 動,食 物 へ の ア クセ ス(食 環 境 の 整 備),情 報 へ の ア クセ ス(健 康 ・栄 養 教 育),基 盤 整 備(知 識,人 材,制 度,施 設),目 標 設 定,国 際 化 へ の 対 応,有 機 的 な 連 携 か らな る。国 民 のQOL,健 康 状 態,栄 養 状 態,栄 養 素 や 食 物 の 摂 取 状 況,
食 生 活,食 行 動,食 環 境 の 整 備,健 康 ・栄 養 教 育 等 を総 合 的 に評 価 で き,健 康 ・栄 養 政 策 立 案 の 基 礎 とな る情 報 を 得 ることが で きる,包 括 的 栄 養 モ ニ タリン グシ ステ ム の 形 式 とな っ て い る。プ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル を参 考 に して い ることか ら,構 成 概 念 の 関 連 性 や つ な が りが 重 視 され て い る。す な わ ち,QOLや 健 康 は 食 行 動 の 結 果 として の 栄 養 素,食 物 等 の 摂 取 状 態 に 規 定 され,食 行 動 は 食 物 へ の ア クセ ス,情 報 へ の ア クセ ス に 規 定 され ることか ら,健 康 ・栄 養 政 策 の 決 定 の た め に は,部 分 だ け を取 り上 げ るの で は な く,各 段 階 を 関 連 づ け て 評 価 す ることが 重 要 で あ る。この ように,国 民 の 栄 養 ・食 生 活 を総 合 的 に評 価 で きる枠 組 み を活 用 す ることで,栄 養 ・食 生 活 の 改 善 目標 として 掲 げ ら れ た 重 点 項 目 に 対 す る健 康 ・栄 養 政 策 の 有 効 性 を評 価 し,よ り効 果 的 な 施 策 が 可 能 と な る。
・8・
4‑2.若 年成 人を対象 と したプ リシー ド ・プ ロシー ドモデルに も とつ く 理論枠組 み開発 の試み
武見28)は,若 年成人 の主観 的な評価指標やQOLの 評価指標 を含む,栄 養 ・食教育 の新 しい評 価枠 組み が必 要と考 え,「若年成 人の食 行動 ・食 態度 の診 断 ・評価指標 に 関する研究」にて,先 の健康 日本21の 「21世紀の健康 ・栄養政策 の概要」の修正版を 発表している(資料3)。 この背景 には,① 健康教 育分野では教育 の 目標をQOLの 向 上 とするプリシー ド・プロシー ドモデル が活用され ていること,②住 民(対象者)が地域保 健活動 の活動 主体 となることが重視 され,活 動 の評価 に従来 の客観 的な指標 に加 え住 民(対 象者)の 主観 的な指標が必 要とされていること,③20才 代から40才 代 の若 年成 人 の健康 や食生活 を評 価する主観 的な指標 がないことがある。本報告 では,若 年 成人 を対象 とした複 数のグループインタビューおよび 自記式質 問紙調査 法を用いた調 査研 究が行われた。ここで,プ リシード・プロシードモデル にもとつく日本 の栄養 ・食生活分野 における評価 枠組 みが初 めて発表 されたわけだが,そ の評価 指標 の開発 に社 会的認 知理論などの行動科学理論 を取 り入れたことも大きな特徴 となっている。
4‑3.児 童1保 護 者1独 居 高 齢 者1若 年 成 人 を 対 象 と した 枠 組 み を 用 い た 調 査 ・介 入 研 究
そ の 後,こ の 栄 養 ・食 生 活 の 理 論 枠 組 み は,同 研 究 グル ー プ に よっ て,「行 動 科 学 に 基 づ く栄 養 教 育 と支 援 的 環 境 づ くりに よる地 域 住 民 の 望 ま しい 食 習 慣 形 成 に 関 す る研 究 」41),「食 事 バ ラン スガ イドを 活 用 した 栄 養 教 育 ・食 環 境 づ くりの 手 法 に 関 す る研 究 」42) の 一 連 の 調 査 研 究 の 評 価 枠 組 み に 用 い られ て い る。枠 組 み を構 成 す る主 な 構 成 概 念 は,い ず れ の 研 究 もQOL,健 康 状 態 ・栄 養 状 態,食 物 摂 取 状 況,行 動,中 間 要 因,準 備 要 因,属 性,食 環 境 で,そ の 対 象 は 世 田谷 区 小 学5年 生 とそ の 保 護 者,商 店 街 店 主, 新 潟 県 の 小 学5年 生 とそ の保 護 者,関 東 圏 の 生 活 協 同 組 合 店 舗 を利 用 す る子 育 て 世 代 男 女,肥 満 傾 向 の 勤 労 男 性 と広 範 囲 に 及 ぶ 。
栄 養 教 育 介 入 の 評 価 で は,両 親(保 護 者)と そ の 子 ども が 受 け る行 動 科 学 理 論 にも と つ い た 栄 養 教 育 プ ログ ラム の 効 果 を,児 童 の 食 知 識,食 態 度,食 行 動 の 変 化 に よって 検 討 して い る43)。①QOL(健 康 観,全 体 的 なQOL,,食 関 連QOL),② 健 康 状 態 ・栄 養 状 態,③ 食 物 摂 取 状 況(栄 養 素 摂 取 状 況,食 品 摂 取 状 況,料 理 摂 取 状 況),④ 行 動 (食 行 動,健 康 行 動,生 活 行 動),⑤ 中 間 要 因(行 動 変 容 段 階),⑥ 準 備 要 因(知 識,態 度),⑦ 属 性(個 人 的 属 性,世 帯 の 属 性),⑧ 食 環 境(周 囲 か らの 支 援),⑨ コミュニ テ ィ
の9つ の構 成概念か らなる枠組 みの 自記式 の質問紙調査票を用いることで,介 入校 に おける栄養教 育プログラムの準備 要因の食 知識と食 態度,食 行動 への効果 を評価 でき た。
同様 に,村 山 ・入 山44)は 食農教 育を実施している新潟市 内の7つ の小学校での食 育介入の評価 を,小 学5年 生とその保護者 の食知識 ・食態度 ・食行動 ・食事 内容の変 化 によって検 討している。①QOL(健 康度,食 関連QOL),② 健康状 態 ・栄養状態,③ 食 物摂 取状況(栄 養 素,食 品,料 理),③ 行 動(食 行動,食 情報 交換 ・活用行 動,健 康
行動,生 活行 動),④ 中間要 因(行 動変容段 階),⑤ 準備要 因(知 識 態度,意 思 ・意欲, スキル),⑥ 属性(個 人,世 帯),⑦ 食環境(周 囲か らの支援,食 物(フ ードシステム),食 情報)の7つ の構成概念か らなる枠組 みにもとつく自記 式の調査票 を使用 し,介入校の 児童の副菜(野 菜)に 関す る食 知識,食 態度(結 果期待),行 動変容 段階,保 護 者の食 物摂取状況(主 食 ・副 菜の摂 取状況)が 改 善したことを報告 した。本報告では,栄 養i・食 生活の理 論枠組みを用いることで,児 童や保護者 の食知識 ・食態度 ・食行動 ・食 事内容 を段 階的に評価す ることができている。
このほか,武 見 ・足 立45)は 独 居高齢者 の食行動 と食 態度 の積極性 を社会 的側 面や 個人的側面から評価 できるチェックリストを開発し,溝 口ら46)は男性社員 の「仕事意識 の 良好さ」の評価 指標 に会社 の食 環境が影 響することをパス解 析 によって明らか にし,食 生活と労働生活 の評価枠組 みを構成する指標 としての使用可能性 を示 している。さらに, 澤 田ら47)は栄養 教 育と食 環境づくりを統合したプログラムを開発 ・実施 し,肥満 勤労男 女 の食知 識,食 セルフエフィカシー,食 行 動,食 品 ・栄養 素摂 取量 の変化 を段 階的 に 評価している。
5.海 外 の 枠 組 み を 用 い た 調 査 ・研 究
国 内 に お け る栄 養 ・食 生 活 分 野 で の 枠 組 み を用 い た 研 究 報 告 が 限 られ て い るの に 対 し,海 外 で は 多 くの 研 究 者 に よる報 告 が み られ る。
Fila・Smith48)は,肥 満 予 防 を 目的 とした 介 入 プ ログ ラム計 画 の た め,ネ イテ ィブ ア メ リカ 人 の 肥 満 を 引 き起 こす 行 動 とそ の 行 動 に影 響 す る要 因 の 関 連 を 明 らか にす ることを
目的 に,ミ ネ ソタ州 の9才 か ら18才 の ネ イティブ ア メリカ 人 を対 象 とした 自記 式 質 問 紙 調 査 を実 施 して い る。用 い られ た 枠 組 み の 構 成 概 念 は ① 行 動,② 行 動 意 思,③ 態 度,④ 主 観 的 規 範,⑤ 阻 害 要 因,⑥ セ ル フ ・エ フィカ シ ー,⑦ 行 動 コン トロー ル 感 で あ る。計 画 的 行 動 理 論 にもとつ く枠 組 み の 作 成 は,要 因 間 に どの ような 関 係 が 成 り立 っ て い るか と
一10一
い う仮 説 の 設 定 を容 易 に す るととも に,行 動 とそ の 他 の 要 因 の 関 連 か ら,行 動 変 容 に導 くた め の 鍵iとな る要 因 を 示 唆 し,今 後 の 介 入 プ ログラム の 目標 設 定 に つ な が って い る。
Wattersら49)は,肥 満 や 慢 性 疾 患 の 予 防 を め ざ した 果 物 と野 菜 の 摂 取 量 増 加 を 目 標 とした 介 入 プ ログ ラム 計 画 の た め,ア フリカ 系 アメリカ 人 の 果 物 と野 菜 の 摂 取 量 と社 会 心 理 学 的 要 因 との 関 連 を 明 らか に す ることを 目的 とした 調 査 を報 告 して い る。枠 組 み の 構 成 概 念 は ① 食 事 に 関 連 す る社 会 心 理 学 的 要 因(準 備 要 因,強 化 要 因,実 現 要 因),
② 個 人 の 特 性,③ 果 物 と野 菜 の 摂 取 量 の3つ で あ る。この 枠 組 み は,プ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル を参 考 に作 成 され たも の で ,果 物 と野 菜 の摂 取 と社 会 心 理 学 的 要 因 の 関連 を 明 らか に し,果 物 と野 菜 の 摂 取 量 増 加 をめ ざした 介 入 プ ログ ラム の 企 画 の 方 向 性 を示 す ことが で きた 。
Vianaら50)は,肥 満 予 防 の た め,子 どもの 食 欲 に 関 わ る要 因 に つ い て検 討 して い る。
3才 か ら13才 の 子 どもの 母 親240名 を対 象 に,8つ の 構 成 概 念 ① 満 腹 に なることへ の 敏 感 さ,② 食 事 の 楽 しみ,③ 食 物 の 存 在 へ の 敏 感 さ,④ 食 べ る速 さ,⑤ 食 物 に 対 す る 過 敏 性,⑥ 感 情 的 に な り食 欲 がy進 す ること,⑦ 感 情 的 に な り食 欲 が 減 退 す ること,⑧ 飲 み 物 へ の 欲 求 か らな る質 問 紙 調 査 を行 っ て い る。肥 満 と正 の 関 連 を示 す 要 因(①,②,
⑥)と 負 の 関 連 を示 す 要 因(③,④,⑤,⑦)と い う仮 説 に っ い て,内 的 妥 当 性 お よび 再 現 性 が 確 認 さ れ て い る 下 位 尺 度 のCEBQ(Children'sEatingBehaviour
Questionnaire)得 点 とBMIに よる体 格 区 分 との 関 連 を評 価 した ことで,仮 説 の 検 証 が 容 易 に な った 。
Robinson‑O'Brienら51)は,子 どもの 家 庭 で の 果 物 と野 菜 の 摂 取 増 加 の た め,家 庭 で の 食 物 に 関 す る環 境 要 因 と子 ども の 果 物 と野 菜 の 摂 取 の 関 連 を 明 らか に す ることを
目 的 とした 調 査 に お い て,① 家 庭 で 提 供 され る頻 度,② 家 庭 で の 入 手 しや す さ,③ 果 物 や 野 菜 を食 べ るよう励 ま す こと,④ 家 族 との 共 食 頻 度,⑤ 果 物 と野 菜 の 摂 取 量 の枠 組 み で み た 小 学4年 生 か ら6年 生 お よび そ の 保 護 者/養 育 者 は,共 通 の 枠 組 み を使 用 す ることで,両 者 が 認 識 して い る家 庭 で の 果 物 と野 菜 の 摂 取 に 関 す る環 境 要 因 の 違 い を 明 確 にす ることが で き,子 ども,保 護 者/養 育 者 の そ れ ぞ れ の 特 性 に 合 わ せ た 今 後 の 介 入 プ ログ ラム の 立 案 へ とっ な げ て い る。
Watters・Satia52)は,肥 満 や 慢 性 疾 患 の 予 防 を め ざ した 脂 質 と飽 和 脂 肪 酸 の 摂 取 量 減 少 を 目標 とした 介 入 プ ログラム 計 画 の た め,ア フ リカ 系 ア メリカ 人 の 脂 質 と飽 和 脂 肪 酸 の 摂 取 量 と社 会 心 理 学 的 要 因 との 関 連 を 明 らか に す ることを 目 的 とした 調 査 を報 告 し て い る。プ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル を参 考 に,① 食 事 に 関 連 す る社 会 心 理 学 的 要 因,
②脂 質摂 取 に関連する食 習慣,③ 個人の特性,④ 脂質 の摂 取量脂 質の摂取 の4つ の 構成 概念からなる枠組 みを用いることで,脂 質や飽 和脂肪 酸の摂 取量 の減少 を目的と
した介入プログラムの企画 を示している。
Salehiら53)は,心 疾患や がんの予防を目的とした果物 と野菜 の摂取量増加 を目標 とした介入プログラム計画のため,イランの60才 以上 の高齢者 における果物と野菜の摂 取量 に関連す る要 因を明らかにすることを目的とした調査 を報 告している。この研 究で は,7つ の構成概念か らなる枠組 みにもとついて面接法で調査 を実施 している。①個人 の特性,② 果 物と野菜 の摂 取行動の変容 段階,③ セルフ・エフィカシー,④ 周 囲からの 支援,⑤ 果 物と野菜の摂 取 に関す る知識,⑥ 果物と野菜の摂 取の阻害要因と促進要 因 の認識,⑦1日 当たりの果物 と野菜 の摂取量 の枠組みで,野 菜と果物の摂取 に関す る 行動変容段 階に応 じた介入プログラムの企画の必要性 が確 認 され ている。
6.枠 組 み に 取 り入 れ た 行 動 科 学 理 論=社 会 的 認 知 理 論
本 研 究 で 参 考 に した武 見28,41)の 理 論 枠 組 み に は 行 動 科 学 理 論 の ひ とつ で あ る社 会 的 認 知 理 論 が 取 り入 れ られ て い る。社 会 的 認 知 理 論 はBandura54)に よっ て 提 唱 され た 理 論 で,人 の 行 動 決 定 を先 行 要 因,結 果 要 因,認 知 要 因 の 三 つ の 要 因 で 説 明 して い る。
理 論 の 中 心 的 概 念 として,行 動 の 先 行 要 因 で あ る,行 動 を 実 行 す ると 自分 に とっ て い い 結 果 を得 られ ると考 える結 果 予 期,そ の 結 果 の た め に行 動 で きると考 え る効 力 予 期 の2 つ の 予 期 が あ る。効 力 予 期 は セ ル フ ・エ フィカ シ ー あ るい は 自 己 効 力 感 とも呼 ば れ,行 動 との 関 連 が 報 告 され て い る。
例 え ばHildebrand・Betts55)は 就 学 前 の 子 どもをもつ 保 護 者 の,子 どもの た め の食 事 の 準 備 行 動 とそ の 行 動 に 関 す るセ ル フ ・エ フィカ シ ー スコア との 関 連 を み た 。そ の 結 果,準 備 行 動 を 実 行 して い る保 護 者 は セ ル フ ・エ フィカ シ ー スコア も高 か っ た ことを報 告 して い る。
Parcelら56)は 小 学 生 を 対 象 に,野 菜 ・果 物 の 摂 取 スコア(以 下,FVス コア)と,野 菜 ・ 果 物 を食 べ る行 動 の セ ル フ ・エ フィカ シ ー スコア(以 下,FVセ ル フ ・エ フィカ シ ー スコア) との 関 連 を み て お り,FVス コア の 高 い 小 学 生 はFVセ ル フ ・エ フィカシ ー スコア も高 い こ とを報 告 して い る。
DiNoiaら57)は 低 所 得 層 の ア フ リカ 系 アメリカ 人 中 学 生 を対 象 に 野 菜 ・果 物 の 行 動 変 容 段 階 とそ の 摂 取 量 との 関 係 か ら,行 動 とセ ル フ ・エ フィカ シ ー の 高 さとの 関 連 を検 討 し て い る。行 動 変 容 段 階 モ デ ル で は,行 動 に 至 る過 程 か ら行 動 を 実 行 し継 続 す る過 程 ま
一12一
で を5つ の 段 階 に 分 け 定 義 してい る。行 動 を 実 行,継 続 して い る実 行 期,維 持 期 の 人 は セ ル フ ・エ フィカシ ー が 高 い ことは 過 去 にも報 告 され て い る58,59)が,DiNoiaら も野 菜 ・
果 物 の 摂 取 に 関 して 実 行 期,維 持 期 にい る中 学 生 は 野 菜 ・果 物 の1日 に 摂 取 す るサ ー ビン グ数 が 多 く,さ らにセ ル フ ・エ フィカシ ー スコアも高 い ことを確 認 した 。
この ように 栄 養 ・食 生 活 分 野 に お い ても,社 会 的 認 知 理 論 の 中 心 概 念 で あるセ ル フ ・ エ フィカ シ ー は 尺 度 として 活 用 され て い る。
皿.本 研 究 の 目 的
国 内 の 栄 養 ・食 生 活 分 野 で は,プ リシ ー ド・プ ロシ ー ドモ デ ル にも とつ く理 論 枠 組 み が 若 年 成 人28),児 童 お よび そ の 保 護 者16,44),職 域 に お け る男 性 会 社 員46)の 栄 養 ・食 生 活 の 評 価 に 用 い られ,課 題 改 善 の た め の 介 入 プ ログラム の 企 画 や 尺 度 開 発 が 取 り組 ま れ て きた 。これ らの 研 究 で は,ラ イフステ ー ジ や 属 す るコミュニ テ ィに 応 じた 下 位 尺 度 が 用 い られ て い る。スポ ー ツ をして い る子 どもは そ の 身 体 活 動 量 や 心 の 発 育 発 達 にスポ ー ツ が 影 響 す る。この ような 特 性 か ら,ス ポ ー ツ を して い る子 ども の 栄 養 ・食 生 活 の評 価 に は,若 年 成 人 や 一 般 児 童 の 栄 養 ・食 生 活 を評 価 す る理 論 枠 組 み をそ の まま適 用 で きな い 可 能 性 が 予 想 され る。しか しこれ ま で スポ ー ツ をして い る子 ども の 理 論 枠 組 み の 検 討
は 行 わ れ て お らず,栄 養 ・食 生 活 の 特 性 は 不 明 で ある。また,ス ポ ー ツ をして い る子 ども を対 象 とした 先 行 研 究17〜20)で は,調 査 項 目が 研 究 者 に よっ て 異 な ることや,中 学 生 の 調 査 報 告 が な い ことか ら,学 校 種 に よる相 違 点 も明 らか に な っ て い ない 。
以 上 の ことか ら,本 研 究 で は ス ポ ー ツ を して い る小 学 生,中 学 生,高 校 生 を対 象 とし て,枠 組 み に 照 らし合 わ せ て 食 生 活 を評 価 しそ の 特 性 を 明 らか に す ること,プ リシ ー ド・
プ ロシ ー ドモ デ ル に お い て 最 終 ゴ ー ル で あ るQOLと 関 連 す る食 生 活 要 因 を 明 らか にす ることを 目的 とした 。調 査1は 地 域 ス ポ ー ツクラブ の 役 割 で あ る生 涯 スポ ー ツ推 進 の 観 点 か ら,特 別 な 選 抜 チ ー ム所 属 や 強 化 選 手 で は な い 一 般 の 小 学 生 の 食 生 活 を枠 組 み に 照 らし合 わ せ て 評 価 しそ の 特 性 を 明 らか に す ること,QOLに 関 連 す る食 生 活 要 因 を 検 討 す ることを 目 的 とした 。調 査2は 地 域 ス ポ ー ツクラブ の 役 割 で ある選 手 の 育 成 ・強 化 の 観 点 か ら,競 技 レベ ル の 高 い 小 学 生,中 学 生,高 校 生 の 食 生 活 の 特 性 を 明 らか に す ることな らび にQOLに 関 連 す る食 生 活 要 因 を検 討 す ること,セ ル フ ・エ フィカシ ー や 結 果 期 待 の 尺 度 の 検 討 を試 み ることを 目的 とした 。
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