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インボイス方式に関する論点についての考察

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Academic year: 2021

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インボイス方式に関する論点についての考察

笹 川 篤 史

Abstract

Regarding the consumption tax invoice system, it seems that there are principally two points of argument. The first point is about whether change to the invoice system is required for the introduction of the mul- tiple tax rate. The second point is about the check effect that an invoice system has. Although the check effect of an invoice system has been discussed in prior literature, this study examines ways to make the check effect even more effective.

Keywords:consumption tax, invoice method, multiple tax rate キーワード:消費税,インボイス方式,請求書等保存方式,複数税率

1.はじめに

消費税インボイス制度については,大きく2つの論点があるがあると思わ れる。1点目は,インボイス制度の持つ牽制効果について,2点目は複数税 1導入のためにはインボイス方式への変更が必要であるか否かについてで ある。インボイス制度の持つ牽制効果については,これまでも論じられてい るが,本稿では牽制効果をより実効性のあるものにするための検討を行う。

また,複数税率とインボイス方式の関係については,議論の整理を行い,仕 入税額計算のためにどのような方法が考えられるか,検討を行う。

複数税率の是非については,ここでは論じない。なお,消費税の軽減税率を導入する 場合には,軽減税率の適用を租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律の対象と することで,具体的な減収額等を明らかにし,軽減税率の適用の状況の透明化を図り,

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2.インボイス方式の定義

宮川(2007)の唱える「日本型インボイス」もあり,インボイスに関する これまでの議論の整理を行うため,まず,インボイスの定義についてみてみ る。

財務省ホームページの「『請求書等保存方式』と『インボイス方式』」では,

インボイス方式の説明として,「課税事業者が発行するインボイスに記載さ れた税額のみを控除することができる方式」としている2。また,金子

(2013,628頁)では,「インボイス(仕送状)や請求書に税額が記載されて いることを条件としてその控除を認める方式」としている。

宮川(2007)では「日本型インボイス」として,事業者登録番号を不要と する案が提案されている。久乗(2007)では,登録制度の有無でインボイス 方式をA方式とB方式に区別している。

本稿では,以下においては,登録制度の有無にかかわらず,「課税事業者 が発行するインボイスに記載された税額のみを控除することができる方式」

を「インボイス方式」として用いることとする。

3.インボイス方式の牽制効果

(1)牽制効果についてのこれまでの指摘

インボイス制度の持つ牽制効果について,水野(2011)は「取引において,

売上事業者は仕入業者から税額を取りたてようとするであろうし,これに対 して,仕入業者はインボイスを発行して相手方に税額を移転しようとするか ら,取引当事者は互いに税負担を相手に帰せしめようとするために,いわゆ

適宜,適切な見直しが行えるようにすることが考えられる。

登録番号については,「欧州においては,免税事業者と区別するため,課税事業者に固 有の番号を付与してその記載も義務づけているが,「インボイス」の様式まで特定されて いるものではない」としている。

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る相互牽制作用が働く」としている。また,金子(2013)では,附加価値税 の脱税について「前後の2つの段階の取引に伴うインボイスをクロス・チェ ックすることによって,それを容易に発見することができ、さらにそれによ って、法人および個人事業の所得の把握水準を高めることにも役立つ」とし ている。更には,インボイスを導入すれば,税収が増えるという考えもあ 3

一方,村瀬(2007)では,「税務当局がこの膨大な量のインボイスを付き 合わせて調査を行うことは非常な困難が予想され限定的なものとしかなり得 ない」と指摘されている。また,水野(2012)も,ヨーロッパのインボイス について「現実には積みっぱなしで,脱税しようと思えばできてしまうとい う状況」と指摘している4

(2)牽制効果を発揮するための方策

インボイスによって売上側と仕入側の牽制効果が働くならば,現在も領収 書により売上・仕入れの突合は可能であることから,法人税でも一定の牽制 効果が発揮されているはずであり,インボイス方式が導入されたとしても,

それだけでは税収が大幅に増加するほどの効果は期待しにくいと思われる。

法人税において,特に牽制効果が働いているとは言われてはいないのは,牽 制効果が発揮されるためには,一定以上の確率で突合が行われるという認識 を有していることが必要であるためと思われる。こうした認識の醸成はイン ボイス方式導入によってのみ自動的に行われるものではないと思われる。

このため,一定以上の頻度でインボイスの照合が行われているとの認識の 醸成が必要であると思われる,その方法の一つとして,一定額以上のインボ イスについて,法定調書とすることが考えられる。この場合にはインボイス の発行者側(売上側)及び仕入れ側の双方のデータを照合するための体制整

高橋(2010)

西沢(2011)では帳簿・請求書方式が徹底されるのであればインボイス方式とそれほ ど変わることはないとしているが,これは請求書等に消費税額が記載されていることを 前提としているためと思われる。

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備が必要となる。

課税当局において大量のインボイスの照合を行うためには,合理的な方法 が必要となると思われるが,インボイスに行政手続における特定の個人を識 別するための番号の利用等に関する法律に基づく共通番号5を記載すること により,名寄せ作業等の照合の合理化を図ることが考えられる。

また,一定以上の頻度で税務調査が行われているという認識が,牽制効果 を発揮するためには必要であると思われ,調査人員の増強や税率の上昇に伴 い滞納発生額が増加する可能性への対応も必要と思われる。

4.複数税率とインボイス方式

(1)インボイス導入が不可欠であるとの考え

複数税率とインボイス方式の関係は,加藤(2012)にあるように「軽減税 率を採用する場合,個々の取引ごとに標準税率と軽減税率のいずれが適用さ れるのかを区別して把握する必要があることから,一般にインボイス(送り 状)の導入が必要であると考えられている」と一般的に考えられている。

財務省ホームページの「『請求書等保存方式』と『インボイス方式』」では,

「複数税率の場合,請求書等に適用税率・税額の記載を義務付けたもの(イ ンボイス)がなければ適正な仕入税額の計算は困難」との説明が行われてい る。また,税制調査会(2007)では,「軽減税率を導入する場合には、仕入 税額控除がより複雑化することとなるため、事業者負担の軽減も踏まえ適切 な仕入税額控除を確保する観点から,「インボイス方式」の導入が不可欠と なろう」とされている。

水野(2011)は,「複数の税率や非課税取引を認める場合には,売上げお よび仕入れの取引ごとに税額が計算されるインボイス(税額票)が必要とな

諸外国のように課税事業者を登録制とし,登録番号をインボイスに記載するという方 法も考えられるが,この場合,共通番号と登録番号の両方を管理しなければならないと いう点に留意が必要と思われる。

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る」「インボイスが存在しないと,非課税品目や複数税率は機能しにくい。

あるいは,インボイス方式を採用しないとしても,複雑な表記を伴う帳簿が 必要になる」としている。高木(2011)では「現行の請求書等保存方式では 複数税率のもとで仕入控除税額を正確に算出することは困難である」とされ ている。

(2)必要不可欠ではないとの考え

栗原(2007)は,「自動車には6%の税率が適用されていたが,帳簿方式 でも対応可能であった」と指摘しているが,自動車ということもあり,購入 する法人にとっては取引数が多くないため対応可能であった6ということが 考えられる。

少額多品目の場合について,栗原はコンピューター会計及び会計ソフトの 普及から,「取引において適用税率が明示されていれば,事業者における帳 簿方式による処理が可能と考えられる」としている。

久乗(2012)は,複数税率が採用された場合,請求書等の記載要件がイン ボイス方式と同様になるとし,「インボイス方式と帳簿方式の違いは免税事 業者等からの仕入税額控除を認めるか否かというポイントのみの残る」とし ており,インボイス方式への移行が必要不可欠ではないとしていると思われ る。しかしながら,付加価値税額の記載を要件とした場合,免税事業者等か らの仕入は要件を満たさないこととなり,「免税事業者等からの仕入税額控 除を認める」ことはできず,インボイス方式と同様となると思われる。

一方,インボイス方式によらない複数税率の対応として,宮川(2007)は,

事業者登録番号は不要とした上で納品書等に適用する消費税率及び消費税額 を記載させる方法を「日本型インボイス」として提案している。これに対し ては,沼田(2010)から「実質的にインボイス方式である」との指摘が行わ れている。宮川(2007)は,「免税事業者からの仕入れについても税額控除

中古自動車販売のように自動車の買取・販売業の場合には,取引数も多いと思われる が,中古自動車販売の場合,個人からの仕入れのような非課税取引もあり,取引を区分 することが一般的に行われていたため,対応可能であったと思われる。

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を認めるために,現行の第9条第2号(仕入明細書等)は存置する」として いるが,仕入税額控除の計算式を「課税仕入れの相手方から受取った請求書 等に記載された消費税額」という趣旨に変更する,としている。仕入税額控 除の計算式が「消費税額」とされている以上,第9条第2号(仕入明細書等)

を存置したとしても,免税事業者や事業者以外の者からの仕入税額は計算さ れず,免税事業者等からの仕入れ分は税額控除されず,インボイス方式と同 様となると思われる。

(3)正確な仕入税額計算を行うための方策

複数税率が導入される場合にインボイス方式への移行が必要か否かについ ては,インボイスが正確な仕入税額計算のために必要不可欠であるか否かに よると思われる。具体的な問題点としては,免税事業者等からの仕入れにつ いて,軽減税率が適用される仕入取引であっても標準税率の取引として計上 されてしまう可能性が考えられ,沼田(2010)は,軽減税率が導入された場 合における「同一取引について,売主が軽減税率を適用し,買主が標準税率 を適用する場合」を指摘している。これについては,消費税が何%の取引に 該当するかを請求書又は領収書で表示するようにすれば,同一取引について,

売主と買主が異なる税率を適用することは避けられるのではないかと思われ る。望月(2003)もこうした方法を提案している。また,杉田(2000)では,

コンピューターを利用した経理について「複数税率となった場合も,税率さ え登録すれば自動的に処理されるであろう」としている。

これについて具体的事例を考えてみると,例えば,事業会社における商品 券・収入印紙の購入するような場合,商品券・収入印紙を課税仕入れに計上 されないよう管理していると思われる。これにより,課税仕入の計算過程に おいて算入しないようにされていると思われ,非課税品目を区分しているな らば,複数税率となっても区分を増やすことで対応できるのではないかと思 われる。ただし,インボイス方式に移行しない場合,沼田(2010)が指摘す るように,国際的に特異な制度であることによる問題は残ることに留意が必

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要である。また,インボイス方式によらず複数税率を導入したとしても,税 率の記載追加のための請求書や領収書の様式変更により,システム修正の期 間,コストがインボイス方式への移行と同様に必要となることに留意が必要 である。

帳簿方式の下で一つの請求書,領収書に複数の税率の品目が混在している 場合,それぞれの品目毎に金額等の入力が必要となるのに対し,インボイス 方式ならば税額の入力だけで済むとの考えがあり得ると思われる。これにつ いては,計算方法として,積み上げ計算による仕入税額を計算するか,取引 区分による集計により仕入税額を計算するかは,事業者の実務的な判断に委 ねるという方法があると思われる。具体的には,全ての仕入先が課税事業者 であり税額を記載した領収書を発行しており,積み上げ計算が容易であると 判断する場合にはインボイス方式と同様に領収書に記載された税額を積み上 げ仕入税額を計算し,仕入先に免税事業者が含まれる等従来の帳簿方式によ る仕入税額の計算を行うといった方法が想定される。

(4)他の論点について

複数税率化された場合の条文の内容について宮川(2007)が論じているが,

免税事業者の取引排除の問題を避け,引き続き免税事業者等からの仕入れに ついても仕入税額控除を認めるとするには,税額控除の条文(消費税法第30 条第1項)の内容を「110分の10(ただし,軽減税率適用取引については108 分の8)」または「標準税率による取引については110分の10,軽減税率によ るについては108分の8」とすることが考えられる。

5.おわりに

今後,複数税率化の議論に伴いインボイスに関する議論も活発になると予 想され,本稿ではインボイス方式の牽制効果と複数税率化との関係について 論じ,免税事業者の排除7といった問題を回避しつつ,複数税率に対応する

(8)

方策について検討を行った。

インボイス導入のコストは久乗(2007)にあるように複数に分解すること ができるが,粕谷(2012)は,インボイスで負担になるものとして「相手先 の納税者番号を正確に記載する等その管理に事務負担がかかる」としている。

請求書等の要件に共通番号の記載を加える改正を先に行うことで,インボイ スを発行する事業者は取引先から共通番号の記載を求められるようになり,

共通番号を記載した請求書等が定着していくと思われる。

適正な課税の実現に向けた環境整備が行われることを期待したい。

また,西山(2009)のようなインボイスが関係した脱税スキームも考えら れ,免税事業者が課税事業者を装ってインボイスを発行するようなことも考 えられ,罰則を設けることも必要と思われる。

インボイスによる確実な転嫁を目的とするのか,牽制効果を目的とするの かによって,インボイスの性格も変わってくると思われ,目的に対応した制 度の構築,環境の整備が重要であると思われる。

インボイス方式への移行に際しての問題として,免税事業者が取引から排除されるこ とが指摘されているが,免税事業者からの仕入税額控除を段階的に縮小していくことが 考えられる。(原則として税額の記載のあるものしか認めないとし,一定期間一定の幅だ け税額の記載のないものも仕入税額控除の対象とすることが考えられる。

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参 考 文 献

粕谷幸雄(2012)「複数税率のしくみと導入のあり方」税理2012.9,57頁

加藤慶一(2012)「消費税の逆進性とその緩和策−消費税をめぐる論点①−」調査と情報−

Issue Brief−NUMBER749(2012.4.17),5頁 金子宏(2013)『租税法(第18版)』弘文堂,627,628頁

栗原克文(2007)「消費税制度に関する一考察−複数税率,仕入税額控除方式を中心として

−」『經營と經濟』第261号,28頁

久乗哲(2007)「インボイス導入の課題―中小企業実務への影響」JTRI税研131MOL.22‑

NO.4,37頁

久乗哲(2012)「インボイス方式の概要と導入の是非」税理2012.9,67頁 財務省「『請求書等保存方式』と『インボイス方式』

http://www.mof.go.jp/tax̲policy/summary/consumption/401.htm(平成25年9月 25日アクセス)

税制調査会「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」(平成19年11月)24頁

高橋洋一(2010)『消費税「増税」はいらない! 財務省が民主党に教えた財政の大嘘』講 談社,30頁

高木勝一(2011)『新版 租税論』八千代出版,218頁

内閣府「社会保障・税一体改革の論点に関する研究報告書」(平成23年5月30日)

西沢和彦(2011)『税と社会保障の抜本改革』日本経済新聞社,61頁

西山由美(2009)「消費税の課題−複数税率とインボイスの問題を中心として−」理2009.9,

25頁

沼田博幸(2010)「複数税率とインボイス制度」JTRI税研154 MOL.26‑NO.3,42,49頁 水野忠恒(2011)『租税法(第5版)』有斐閣,774頁

水野忠恒(2012)「税務当局サイドのチェック体制なしにインボイス導入は不可」税理2012.

9,4頁

宮川雅夫(2007)「日本型インボイス方式の再構築について考える」JTRI税研131 MOL.22

NO.4,32頁

村瀬正則(2007)「インボイス導入の短所」JTRI税研131 MOL.22‑NO.4,36頁 望月俊浩(2003)「消費税の複数税率化を巡る諸問題」税大論叢42号,241頁

参照

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