期 間 外 損 益 の 表 示 と 公 開 性
龍 家 勇 一 郎
目
次
一 ︑
序 言
二 ︑ 期 間 損 益 の 繰 越 利 益 剰 余 金 に よ る 粉 飾 と そ の 例 示
三 ︑ 期 間 外 損 益 の 表 元 と 二 つ の 損 益 計 算 親 四 ︑ 繰 越 利 益 剰 余 金 の 性 格 と 期 間 外 損 益 の 表 示
五 ︑ 財 務 諸 表 の 公 開 性 と 期 間 外 損 益
六 ︑
緒 論
一
︑ 序 言
期間外損益の表示については︑我国の企業会計原則では剰余金計算書の中での利益剰余金計算書における繰越利益
剰余金の増加高・減少高として示すようになっている︒即ち︑﹁企業会計原則﹂の揖益計算書原則七Aは﹁利益剰余金
の区分は二刑期未処分利益剰余金から前期剰余金処分額を控除し︑これに前期以前の損益計算における過不足額の修
正額︑当期の固定資産の売却揖益等を加減して︑繰越利益剰余金期末残高を算定し︑これに当期の純利益を加えて︑
細閣外損益の表元と公開性 九一
経 営 と 経 済
丸
当期末処分利益剰余金を表示する﹂とあって︑固定資産売却損益︑前期損益修正等の期間外損益は繰越利益剰余金の
期末残高として︑前期繰越利益剰余金と合計して示すのである︒
これは我国の企業会計原則の損益計算書が当期業績主義で表示される結果︑期間外損益は剰余金計算書で説明され
なければならないのは当然のことである︒当期業績主義損益計算書では将来の企業の牧益力を表示する基礎となり︑
投資家︑外部債権者︑その他一般に﹁営業成績のあるべき婆﹂を表示して︑損益計算書の根本目的に添うと思われる
が︑期間外損益を繰越利益剰余金の加減として表示するところに問題があり︑損益計算書が他の財務諸表とともに会
社内容の公開明示を以て目的とする限り︑投資家その他一岐に誤解を生ぜしめないように健全な判断の基礎たり得る
よう︑また各項目の性質や内容を明示し得るように作成されなければならぬ︒
繰越利益剰余金に対するある種の附加分または控除分が損益計算書から分離された利益剰余金計算書に報告される
ことについて︑反対の起るのは︑この利益剰余金計算書が期間損益粉飾の具に供されることを恐れてである︒期間利
益をもっと多く示したい︑或いは期間利益を少く突示したいという希望は︑企業の会計政策のあらゆる両につき空と
うものであるが︑こ L では特に都合の悪い損失額を当期純利益について︑収益から差引こうとせず︑また当期に欠損
金が生じたにも拘らず直接に利益剰余金計算書中に持ち込むことによって︑期同外損益を一不す繰越利益剰余金の操作
により営業成積の悪いのを︑恰かも営業成績が満足すべきものであるかのように粉飾することであ石︒
何か粉飾の方法がないものかと探しているものにとっては︑損荏項目を報告するのに︑損益計算書と利益剰余金計
算書の二本建であることが︑好都合の隠れ場所を提供するものとして歓迎に値することは言うまでもない︒特に明間
外損益をアメリカの如く特別項目として表示するのではなくて︑練越利益剰余金の増加︑減少として明示することが
投資者及びその他一般債権者を惑わすものであると思われる︒こ
lL
に︑明同外損花の表一不と公開性について︑今後の
商法及び企業会計原則の改正には考尽する必要があるのではなかろうか︒
二︑期間損益の繰越利益剰余金による粉飾とその例示
最近︑筆者はある公共機関から︑以前取引所に上場されていた︑ある株式会社の︑ある営業期末における経理状況︑
特にその期末における支払能力について監査を求められ︑鑑定をしたことがあった︒その期末の支払能力を調査する 必要上︑それ以前の数期にわたる営業報告書及び有価証券報告書を比較検討する機会を得たが︑その会社の経理状況 が悪化するにつれて︑営業報告書と有価証券報告書両者の聞の各勘定科目の金額に較差が見られ︑特に純利益の表示
に対し︑貸借対照表及び損益計算書の両面にわたり粉飾の後がはっきり一不されていた︒就中︑経理状況の最も悪化せ
し某期末は︑その期末には当期純損失として大蔵省提出の有価証券報告書に表示してあるに拘らず︑投料︑者及び一般
大衆に明示する常業報告書中の貸借対照表には︑繰越利益剰余金の操作により純利益として明示している事実があっ た 損益計算書の作成に当って︑これに包含される損益内容を如何にするかによって︑当期雫績主義と包括主義との二 つの行き方に分れることは衆知のことである
υ我国では︑従来︑税務用損桂計算書及び一円に対する常業報告書用損 益計算書としては︑包括主義の損益計算が採用され︑当期に発生したすべての費用及び収益をも包含して純絹椛を計
算する
Q経営内部または有価証券報告書には企業会計原則の要求する如く︑当期業績主義の損花計算書が作成される
が︑常業成績の悪い会社が期間四損益を有利に見せかけ︑増資を計画するとき︑前述した如く︑当期業給主義における
損益計算書の欠陥を悪用して︑損芯計算書と剰余金計算書の二本建で利益剰余金を表示することをよいこととして︑
これを利用していることである︒
これを営業報告書と有価証券報告書と対照しながら︑
期間外損益の表示と公開性
且つ今取扱っている項日以外は除いて例示してみよう
υ
九
梶田 組組ベ J 組処
債及資本之
I ~~#-
!JboArl.o5I 有価証券 目│営業報告書金額│報告書金額
動負債 x x x x
定負債 x x x x 表
勘 部 負 照 科 対 定 借
勘 貸
資産之部
1~~#- ,*" A rl...1 有価証券 目│営業報告書金額│ │ │報告書金額
産 第 01 期
科 定
x x x x x x x x 流
× × × × × 資
× 動 流
x x x x x x x x 固 × × × × × 産 × 資 定
固
300 , α 氾 x x x x 59 , 523
27 , 637 300 ,∞ o x x x x 1 , 847 85 , 313 資本金 資本準備金 諸積立金 銀越利益剰余金 当期純利益金 × × × × × × × × × × × × ×
延 a/c
× ×
× × ×
繰
明 4 部 │ω 竺 ×
2 , ω 田 I 2 , 934 , 4861 × × × × ×
債及資本之
I ~~f.f. =n‑.d.
rlii'lI 有価証券 目│営業報告書金額│報告書金額
勤負債 x x x x
定負債 x x x x 表
勘 部 負 照、 科 対 定 借
資産之部 │ 日!営耕吋喜 PA;11 1 功 貸 第 02 期
科
定
x x x x x x x x × × × × × 資 × 動 流 x x x x × x x x x 国 × × × × ×
産
× 資 定 固
1 , 200 , OCO x x x x 113 , 710 O
101 , 439 1 , 200 , 000 x x x x 10 , 820 1 , 451 O 資本金 資本準備金 諸債立金 繰越利益剰余金 当期純利益 当期純損失 × × × × × × × × × × × × × × × × × 産 × × × × 資 × × ×
延 繰
, 85 一一 10 己主ど i
干そ同 援~~!I!端 Q -I1lぜ 1隠--\J:(-4~組
経 営 と 経 済
九
ノ、
第 O 一期及第 O 二期に於ける貸借対照表では︑営業報告書及有価証券報告書における貸借総合計及繰越利格剰余金
と当期純利益の合計金額は両者共に一致しているが︑期間外損益項目を含む繰越利益剰余金の操作により第 O
一 期
に
於いては︑有価証券報告書に於いて当期純利益金二七︑六一二七(千円)なるに︑営業報告書では当期純利益金を八五
三一三(千円)と有利に見せかけている点が注目される︒損益計算書にありても︑適当に金額を修正して︑それぞれ
都合のよいように当期純利益を計上し︑貸借対照表上の当期純利益と合致せしめている
c次の第 O 二期にありては四
倍増資完了後の貸借対照表であるが︑前期に八五︑二一三(千円)の純利益計上あるに拘らず今期は有価証券報告書
にありでは︑当期純損失一 O 一︑四三九(千円)となっている
cそれを期間外損益を含む繰越利益剰余金の操作によ
り︑営業報昔話回にありては当期純利益一︑四五一(千円)としていることである︒
か L る報告は︑営業報告書中の貸借対照表及損益計算書しか見ない一峻株主︑及債権者にとっては︑これを信用し
増資に応じ︑営業の実体︑将来の牧益力の判断を誤認する結果となり外部を偽繭するも甚だしいといわねばならな
い ︒ こ L に繰越利益剰余金による期同外損益の表示について︑もう少し改正すべき問題を含むものといえる︒
三︑期間外損益の表示と二つの損益計算観
損益計算の作成に当って当期業績主義と包括主義との対立論争のあることは余りにも有名であり衆知の事実である
が︑根本的には表示すれへき内容の限界に対する見解の相違であり︑期同外損益の表示に関しての問題である︒
当期業漬主義守口吋自己
o u
o 門主古向田嵐広
2 B ω R O
円 ︒
28
同 )
で は
損 花
計 賀
幸 一
円 ば
当 期
の 鰐
常 的
経 ︑
砂 川
活 動
の 結
果 を
士 一
久 間
す
るものとし︑当期経常活動の支に帰すべからざる損益原因乃至臨時的偶発的原因︑即ち期間外損益を一切除外して︑
計算九九一不するものとし︑企業の収益力を測定することを第一義的なものとする︒従ってこの立場に立てば期間外損格
は損益計算書から除外されん別悩の計算書即ち利益剰余金計算書に於て実示されねばならない︒
包括玉説(丘一古 oZ 巴
4 0 8 2 8 5
の立場ほ︑これに反して当期業績主義が別個の計算書即ち利椛剰余金計算書に天
示すべしとする諸項目(期間外損益諸項目)についても︑それが損益項目である限り︑一個の損益計算書中に喪示す
べしとする見解である︒その意味はすべての損益項目を総括的叉は網羅的に加減すべしとの主張でありて︑その意味
でこれを総括的という表現をすべきであると主張するものもある︒
(註︑簿記会計ハンドプツグ同文舘九六一頁)
更に注意を要することは包括主義は A ︑ A ︑ A の(﹀吋
g g t g g S O B O 己
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ロ 丘
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ロ 聞
の 2
3 g g p W 3 2 F S ω
岱)に於いて見られる如く︑必ずしも包括主義的損益計算書について特別項目即ち期間外損益
の表示について区分表示を否定するものでないことである︒期間損益を計算したる後に︑これら特別項目たる期間外
損益を加減し︑最後に純利益の最終数値を表示する方式をとることである︒そして凡ゆる損益項目を損益計算書に包
括せしめることによって︑企業の実質的且つ現実的な企業利益を知ることができ︑そのような結果を開業の当初から
配列すれば︑企業の利益獲得能力並びに利益の全歴史が明瞭に表示され︑従って長期的には平均的牧益能力も浮き上
ってくるのであり︑むしろその方が当期業績主義によるよりも企業判断に危険が少ないという点にある
υ然しながら包括主義の下に於いては︑各損益項目の内容が明示されて︑その結果期間外損益項目を含む純損益が表
示されたとしても︑投資家及一度大衆は各種経常項目と非経常項目とを十分に理解し得ず︑毎期継続的に発生するも
のとして︑誤認する可能性が強く.包括主義者の主張する如く財務諸表閲覧者は判断力を相当に有しているとは限ら
ず︑むしろ実際は会社側の表示をそのま﹄受取るものが多数を占めるのではなかろうか︒
︐ ︐
この方面の先進国たるアメリカでは当期業績主義の支持者たる A
︑ ー
︑ A と包括主義の支持者たる A ︑ A ︑ A
の 両
者の聞に於いて︑根本的には解決されていないけれども︑表示方式について妥協が行われ︑一九五 O 年アメリカ証券
及取引所委員会規則において︑損益計算書の末尾の純損益の次に特別項目を特に一項追加し︑﹁純損益という無限定
項目中に算入しては純損益の意義を誤解させる結果となる如き︑特別な項目のみを記入することができる﹂とし︑最
後にこれらの総計を﹁純損益及特別項目﹂で表示することとしたのである︒即ち次の如くである︒
期 間 外 損 益 の 表 示 と 公 開 性
九 七
経 営 と 経 済 損 益 計 算 書
会社名
1 . . . . . . . . . . . . . . . . . . … ・ ・ ・ … . . . . . . . x x x
1 6 . 純利益或は純損失 xxx
九 八
1 7 .特別項目(借方叉貸方 ) xxx
1 8 . 純利益及特別項目 xxx
アメリカに於いては以上の如く妥協が行われたが︑佐藤教授も指摘する如く皮相的一致であって︑根本的な問題で なく︑而もこのような計算書様式の採用によって︑今度は投資家其他一般大衆が損益計算書末尾の純損議及特別項目 の合計を︑﹁営業上の純利益﹂と誤認する危険を生じたのである︒(註 2 現代会計学六五一頁以下﹀
たピ従来の表示方式よりベターという程度のものと思う
c
要するに当期業績主義か包括主義かの基本問題の根本的 解決の鍵は損益計算書の本質に求められねばならない
r
損益計算書の本質は︑他の財務諸表と共に︑会社内容の公開 明示を以て︑その目的とする
f
換言すればその目的は投資家一般大衆に誤解を生ぜしめないように健全な判断の基礎
たり得ることにある︒
従ってそれは損益各項目の性質や内容を明示し得るように作成されなければならないし︑この根本条件に合致する
ものを以て︑可としなければならない︒この要件は包括主義損益計算書によサても充分可能であるが︑経常外損益︑期
間外損益を﹁その他雑益﹂﹁特別項目﹂という項目では説明が明瞭でなく︑純損益︑及特別項目の合計数値は当期業
績と誤認され易く︑叉一株当りの牧益力判定の基準とされ易いのである
c私見を以てすれば損益計算書の根本目的である企業の経営成績の明瞭化及損益計算書の誤解防止とい・つ観点に立つ
限り︑我が国企業会計原則の支持する当期業績主義を以て可としなければならない c 然し ι
れ に は 前 提 が 必 要 と 思
う︒即ち経常︑非経常︑期間損益︑期間外損益の各項目の区分原則を一一層明確化するとともに︑期間外損益の表示を
繰越利益剰余金の増減として表示するのではなく︑もっと明確化を望むものである︒これは企業の経営成績の明瞭化
及損益計算書の誤解防止という点に役立つのみならず︑叉一方では企業に対する投資家︑一般大衆の理解を深め︑誤
解を防ぐための啓蒙ともなるであろう︒
四︑繰越利益剰余金の性格と期間外損益の表示
我国の企業会計原則が当期業績主義をとる結果︑損益計算書の外に期間外損益を表示する利益剰余金計算書を必要
ならしめる︒即ち山下教授も指摘される如く(註 1
﹁ 会
計 学
の 一
般 理
論 ﹂
二
O 二頁以下)︑期間外損益計算を必要ならし
めるこつの側商があり︑その一は期間損益計算がもっ人為的な費用牧益の期間限定計算という性格から︑その期間的
損益計算には客観性を欠除するということ︑その二は企業外の原因から期間外損益の発生が不可避であるという点で ある︒即ち︑天災︑地変︑貨幣価値の変動などの外的原因から生ずる損益は︑企業活動に伴なって発生する期間損益
とは自ら区別せらるべきものであるからである︒と
更に︑﹁企業損益計算が期間的損益計算を問題とする限り︑必然的に期間外損益計算を必要とする心即ち︑期間外
損益計算は期間損益計算を前提として考えられるところのものであり︑それ自体として独立した意味をもつものでは
ない︒期間外損益計算が期間損益計算を保証する手段としての機能をもつものとして︑そこに利益剰余金計算書のも
つ本質を求めねばならない︒﹂と︒
利益剰余金の本質がもしそこにあるとすれば︑従来考えられているように︑企業会計原則の第二︑損益計算書原則
期間外損益
e 表示と公開性
プ L
九
経 営 と 経 済
一 OO
七において利益剰余金を規定し︑﹁利益剰余金計算書は前期末処分利益剰余金から前期剰余金処分額を控除し︑これ
に前期以前の損益計算における過不足額の修正記入と︑当期の固定資産売却損益等を加減して繰越利益剰余金期末残
高を算定しこれに当期の純利益を加えて︑当期末処分利益剰余金を表示する﹂としている︒そしてこの規定から︑一
般には利益剰余金計算書の目的は﹁当期末処分利益剰余金﹂の計算表示にあるとせられる
Gこ
tA
に 問 題 が あ る ︒
( 註
2 太 田 教 授 ︑ 会 計 学 ︑ 一 六 七 頁 剰 余 金 計 算 書 )
当期末処分利益剰余金の計算には必ずしもか L る利益剰余金計算書を特に必要とする理由は存せず︑包括主義の損
益計算書によっても可能であって︑損益計算書と区別して︑特に利益剰余金計算書を必要とする所以は︑期間損益計
算に対立すべき期間外損益計算に存する︒従ってその計算書の主要内容は︑むしろ期間外損益を考慮して繰越利益剰
余金期末残高の調整確定するところにある c 利益剰余金計算書が期間外損益を加減して続越利益剰余金期末残高を修
正確定するところから︑これに当期純損益を加減すれば︑そこに当期末処分利益剰余金が容易に計算されることは言
うまでもない︒それは利益剰余金のもつ本質的任務ではなくて︑結果として達成せられるところのものである︒即ち
当期末処分利益剰余金の計算というところに利益剰余金計算書の目的乃至任務があるのでなくて︑その主要任務は期
間外損益計算を繰越利益剰余金の加減計算として行うことによって︑繰越利益剰余金期末残高を算定するところに存
すると言わねばならない︒
利益剰余金の本質を当期末処分利益剰余金の計算という点に求めるのではなくて︑その主要任務を期間外損荏計算
にありとし︑繰越利益剰余金の加減計算に求めるとすれば︑繰越利益剰余金という勘定の性格をもっと明確化する必
要があると思う︒また期間外損益項目のすべてを︑繰越利益剰余金の加減として計算することも問題があると思う︒
山下教授は︑過去期間の損益計算における計算上の誤差は︑それが発見され︑また実現されたならば︑これを過去
期間よりの繰越利益剰余金の修正項目として考えることは︑理論的な根拠をもっとともに︑また極めて実際的な方法
であると言わねばならない︑︒
( 註
3 ︑
会 計
学 の
一 般
理 論
︑
一 九 四 頁 )
まだ他の有力な論者も企業会計原則も︑期間外損益の表示を繰越利益剰余金の修正項目として考えることを理論的
な根拠をもっとともに︑実際的方法とせられるが︑筆者はこの点同意しかねるのである︿
それに反対する第一の理由としては︑繰越利益剰余金を加減することで期間外損益を表示するとすれば︑前述した
如く︑営業報告用の損益計算書には包括主義損益計算がとられ︑有価証券報告書には当期業績主義損益計算が実際的
に採用されている結果︑経営成績の不良なる会社に︑屡々悪用される恐れがあるのである︒これは商法上の財務諸表
の公開性にも関聯することであるが︑貸借対照表の公表のみを決算日に要求する結果(商法二八二ノ一一)︑企業会計
原則通りに公表せぬと︑そこに期間外損益項目を繰越利益剰余金の加減計算で粉飾された︑当期純利益が算定せられ
投資者︑一般大衆が迷惑を蒙むることになるわけである
cそこに繰越利益剰余金による期間外損益の表示の方法を︑
理論的にも︑方法的にも納得し難い点がある︒
その二は︑繰越利益剰余金という勘定の性質からである
c繰越利益剰余金は当期初めには︑前期より引きついだ未 処分利益剰余金の中︑その処分としての法定準備金︑税金︑配当金︑役員賞与金などを控除した残高をいう
n即 も
︑ 前期の利益剰余金で︑今期に自由処分の対象として繰越されたものである
c換言すれば︑使途未確定の内部活保金と 言 い 得 る の で あ る
︒
︑
これに対して︑前期損益修正項目︑臨時損益︑固定資産の売却損益等の期間外損益を次の利益剰余金計算書に示す
如く︑繰越利益勘定を加減して︑繰越利益剰余金期末残高として表示することは繰越利益剰余金勘定の性格を混用し ているものと言える︒期間外損益中︑特に固定資産売却益の如く︑問題を多く含むものにとっては︑佐藤教授も指摘
さ れ る 如 く ︑
HH特別剰余金
HH等の如く別名の表示が望ましいと思うのである
( 註
4) 佐藤孝一著︑剰余金論︑八四頁以下:
固定資産売却益は︑単純にこねを利益剰余金に振替えて︑艶当可能なものとすることは︑法律上合法的であっても︑少 くとも会計学上の見地から︑叉会社財政の健全化の見地から︑好ましいことではない︒従ってこの場合にはこの売却 額を現金現当として分現する意思のないことを一戒すために︑その利誌を﹁特別剰余金制定に貸記﹂し区別すべきであ
期 間 外 損 益 の 表 示 と 公 開 性
O
経 営 と 陸 演
利 益 剰 余 金 計 算 書 る
︒ :
: :
: :
: 至昭和×年×月×日 自昭和×年×月×日
xxx
前期末処分利益剰余金
xxx xxx xxx xxx xxx
利益剰余金処分額 法 定 準 備 金 税 金 艶 当 金 賞 与 金 別 途 積 立 金 E
•••••
14円
4 q u A
門
b
× xx
xxx
繰越利益剰余金
xxx xxx
× xx
xxx
X X X 繰越利益剰余金噌加高
間定資産売却益
前 期 損 益 修 E
ー ム 司
4円J
E
xxx xxx xxx
X X X 繰越利益剰余金蔵少高
固定資産売却的 臨 時 損 失
前 期 損 益 修 E
‑ 2 3 4 国
× xx
繰越利益剰余金期末獲高 xxx
O
× xx
× xx
当 期 純 利 益 当期末処分利益剰余金
v
筆者としては︑特別剰余金勘定が︑期間外損益勘定の明示不十分であるから︑もっとはっきりさすとすれば︑利雄
剰余金計算書の第三区分と第四区分とを一緒にして︑第三区分とし︑期間外純利益または期間外純損失として表示し
その内訳の説明として︑期間外利益項目︑期間外損失項目をそれぞれ並列し︑列挙して加減すべきものと思うのであ
かくすることにより︑期間損益と期間外損益がはっきり判明するし︑損益計算書と剰余金計算書の各任務が果せる る ︒
と思うし︑損益計算書と剰余金計算書を以て︑損益計算の説明書とした企業会計原則において︑企業損益計算を重視
する意味が出てくると思うのであるの
五︑財務諸表の公開性と期間外損益
期間外損益が利益剰余金計算書において表示むれ︑しかも損議計算書とともに企業の純損益を一不すものとすれば︑
株式会社に対して財務諸表の公開性について︑従来の如く貸借対照表の公表のみで充分でなく︑損益計算書︑剰余金
計算書も併せて公表せしめるのが企業の社会的︑公共的性格かむみると当然であ↓て︑株式会社が他の企業形態の事
業に比して︑高度の信用を保ち得る必要からでもある︒利益剰余金計算書がどうしても財務諸表の一つでなければな
らない理由は︑当期において計上されなければならない利益及び損失で︑損益計算書に記載されるものに属しないも
の︑即ち︑期間外損益項目が未処分利益剰余金の直接の増減事項とされ︑それが利益処分の対象としては︑損益計算
書による当期純損益と同質であるということにある
nとすべきであろう
f( 註 ょ ︑ 木 村 重 義 筒 ︑ 利 益 剰 余 金 計 算 書 に つ い て ︑ 産 業 経 理 . 五 巻 仁 号 )
とせられる如く︑財務表の一つとされる理由は︑期間外損益の表示を含むと︐}ろにあり︑且つ損益計算書を補有する
役割をももつものであるからである
r︑即ち︑利益剰余金計算書の財務表性は損益計算書の当期業績主義計算法にあるとすべきであるの 財務諸表の公開性
期 間 外 損 益 の 表 示 と 公 開 性
O
経 営 と 経 済
O 四
乃至公表性を問題とする場合︑商法が株式会社に対して適用される計算書類の﹁公告﹂に関する規定第二八二条の二
項に﹁取締役は前項の承認(株主総会における計算書類の承認 l 筆者註﹀を得たる後遅滞なく貸借対照表を公告する
ことを要す﹂とあり︑第四九八条の第一項第二号にこれを塀怠した場合の制裁規定があることである︒
そして株式会社がこれらの公告を行う方法については︑商法は第一六六条の第一項でこれを定款の絶対的記載事項
の一つに加え︑さらにその第三項で﹁会社の公告は官報叉は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲・げて之を為
すことを要す﹂と規定している︒つまり︑我々が官報または毎日の新聞紙上で見る貸借対照表というのは︑各株式会
社が商法のこれらの規定に基いて﹁公告﹂するものに他ならない︒従ってまた商法が特にその﹁公告﹂を要求してい
る財務諸表とは︑数ある財務諸表の中でも︑特に貸借対照表に限られているわけである
c右も︑商法はこれら﹁公告﹂に関する条文以外に計算書類や計算書類附属明細書の作成︑備置︑公示承認等を規定
する多くの条文を設けており︑商法第二八一条には︑株式会社の取締役が作成し︑監査役に提出すべき書類として︑
一
︑ 財 産 目 録 二
︑ 貸 借 対 照 表 コ 一
︑ 営 業 報 告 書 四
︑ 損 益 計 算 書
五︑準備金及び利益又は利息の配当に関する議案
の五個をあげ︑第二九二条の五には︑取締役は毎決算期より四ヶ月内にこれらの書類の附属明細書を作り︑之を本庖
及び支庖に備置くこと︑上記の計算書同様︑株主の閲覧請求や謄本ないし抄本の有償請求に応じなければならない旨
を第二入二条の二及び︑第二九三条の五に定めている︒
上述したところで判明する知く︑商法上で外部へ公表を要求しているのは︑貸借対照表のみで損益計算書は本支屈
に備置き株主や債権者の要求により公示するのみで︑公表を要求するものでない︒まして剰余金計算書は商法上の公
告又は公示する計算書類になっていない︒
期間外損益の表示は利益剰余金計算書中において示されるが︑期間外損益と称せられる項目がどんな事情から発生
するものか︑.またどのように分類されるかについて︑アメリカ会計士協会
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の会計調査公報(﹀虫
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・ 0 凶﹀の中で次のように限定している︒﹁当委員会の意見としては︑ある会計期間中に認識され ω
たあらゆる損益項目を︑純益として報告される数字の決定にあずからしめることが一般的な前提とされるべきだと考
える︒いかなる場合にもせよ︑この前提に対して許される例外は︑会社の純益額に比して総額としては相当の重要性・
をもち︑当該期間の通常の︑或いは典型的な営業活動を結びつけえないことが明らかなもの︑またはその結果とみな
し得ないものに限定される c それ故︑次のような例外的な項目のみが︑その年度の純益の決定から除外される﹂とし
次の五種類の経常外項目を列挙する︒
(俗﹀前期までの営業活動と特に結びついている相当額の損益で経常的な性格のものを除いた分︒
例えば︑過年度に設定した積立金の未使用額の取崩しであるとか︑または過年度税金の修正額等︒
︿ σ ﹀転売用に取得したもの以外で︑一般に会社の営業対象としていない資産の例外的な販売から生じた相当棋の損 益 ︒ 例えば︑固定資産の廃棄取替︑土地の処分の場合の損益等
n(の)通常保険措置を講じていない型の損失で相当額に及ぶものれ戦災︑天災などでその企業として通常予想しない ものから生じた特別損失︒
(色)相当額の無形固定資産の帳消し︒
例えば︑営業権︑商標権等の完全な除去
c ( 0 )期限前に償還するにあたって︑社債発行差金または発行費用の未償却分の相当額を償却する場合︒
我国の企業会計原則においては︑期間外損益に属する項目としては︑固定資産売却損益︑前期損益修正︑臨時損失
その他という区分が示されていることは︑衆知の如くである︒右の(島)と︿ 0 ﹀が我国の期間外損益の﹁その他﹂に 当るわけである c
期 間 外 損 益 の 表 示 と 公 開 性 一 O 五
経 営 と 経 済
一 O 六
我国では︑これらの報告表示は前述した如く︑企業会計原則及び財務諸表準則等の規制により︑統一的な様式が用
らいれ︑利益剰余金計算書の中で繰越利益剰余金の増加高︑減少高として表示される様になっているので多様性がな
いが︑アメりカで当期業績主義損益計算と包括主義損格計算の論争があった頃︑会計調査公報(﹀
2 8 5 言
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・ 0 9 に発表されている調査では損益計算書と利益剰余金計算書との関係について.一九二八年
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年の米国五百社に関する統計をあげている︒即ち︑ ω
両 者 を 一 つ の ス テ イ ト メ シ ト に 統 合 し て い る 場 合 一 九
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そ の 他 一 七
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右の調査はこれら期間外損益項目の報告表示︑形式に関する調査とみなしても差支えないだろうのこの調査で判明
する如く︑損益計算書と利益剰余金計算書の両者を表示する方法が圧倒的に多いということは︑期間損益と期間外損
溢の両者を︑株主︑一般債権者に知らしめる方がよいという考え方が支配的であることを一ボすものである
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後 ︑
前述した如く︑一九五 O
年 に
A ︑ 1 ︑ A と A ︑ A ︑ A ︑の闘に表示形式につき︑妥協が行われたが︑本質的解決でな いことは論をまたぬところであろう︒
我国の企業会計原則では財務諸表の体系として︑ ω
損 益 計 算 書 ゆ 貸 借 対 照 表
ω
剰 余 金 計 算 書
ω 剰余金処分計算書 ω 財務諸表附属明細表
の五つを以てしているが︑これは前述せし商法上の計算書類とは異っている︒
そこで︑﹁商法と企業会計原則との調整に関する意見書において﹂︑その第六︑計算書類の作成のところで︑商法
第二八一条では前述の如くなっているが︑これらの計算書類のうち財産目録を削除し︑取締役の作成しなければなら
ない計算書類を左の通りに改めること︑なお損益計算書︑貸借対照表等の計算書類は正規の会計原則に従って作成中
べき旨の規定を設けることとし︑
一︑損益計算書(利益剰余金計算書を含む﹀
二︑貸借対照表(資本剰余金計算書を含む)
三︑利溢処分計算書(欠損金の処理︑準備金の処分に関する計算書を含む)
四)営業報告書(計算書類附属明細書を含む)
を あ げ て い る ︒
その理由の中で損益計算書に関するところでは︑損益計算書については営業利荏を発生源泉に従って明瞭に表示す
る区分計算の技術が発達しているので︑この区分計算の観念を尊重する意味も含めて︑当期の営業上の利益の計算と
尚保された利益額の変動を示す計算とを区分して表示し得るように︑'利益剰余金計算書の観念を商法上においても認
める必要があるとし︑この場合利益剰余金の区分は損益計算書のうちに含めて記載してもよい︒としている︒しかし
期間外損益の公表性にはふれていない︒
我国の企業会計原則が当期業績主義をとることは期間損益を重視する結果であり︑従って期間外損益を明示するも
のとして利益剰余金計算書を必要とすることは論をまたない︒しかし︑アメリカの会社調査公.法第三二号で期間外損
益項目の範囲を厳格に限定するのも︑利益剰余金計算書が期間損益の粉飾に利用されるのを恐れるからである
η我国の場合のように︑剰余金という概念に馴染のうすい国では利益剰余金計算書と損益計算書との分離が損誌と
いう概念に対して啓蒙的︑教育的な役割を果した 4 とは認めるけれども︑今日の知く企業会計原則が相当に知れわた
り︑各企業の聞に普及し︑利益剰余金計算書による期間損益の粉飾が見られるようになるに至っては︑この点に関し
期間外損益の表示と公開性
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経 営 と 経 済
O 八 てある種の改正が要求せられるのは当然と言わなければならない
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筆者としては︑アメリカ調査公報第八号で多く見られる如く︑利益剰余金計算書は損益計算書と併立して公表すべ
きであり︑かくすることにより︑株主︑一般債権者の保護がなさ打るものと思うのである︒
六︑結
論
以ょにおいて︑我国の企業会計原則で損益計算書が当期業績主義をとる結果︑損益計算書と期間外経常外損益を明 示する利益剰余金計算審の分離が必要になったことを述べた︒その結果︑財務諸表の中で剰余金計算書の地位が相当
重視されねばならなくなったのである︒損益計算書︑剰余金計算書と貸借対照表をコ一大財務諸表として最も重視すべ
きであるという論者があるのも︑旨なるかなと思うのである︒
しかし︑一度これが公表性乃至表示の問題となると︑剰余金計算書の如きは問題外とされ勝ちであることを憂えた
からである︒
近代会計の一般的傾向たる牧益力重視という観点から期間損柱を重視するのであれば︑当然︑期間外損益計算の場 たる利益剰余金計算書は尊重されねばならぬと思うし︑その表示乃至公開性に関しても慎重なる考慮が払わるべきも
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以 上 参 考 文 献 1
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期間外損益の表示と公開性
佐 孝 一 著 佐 孝 一 著 山 勝 治 箸 山 勝 治 箸 太 哲 三 著 上 三 千 雄 箸 木 重 義 稿 ( 産 業 経 理 十 五 巻 七 月 号
﹀ 中 省 吾 稿 ( 産 業 経 理 十 五 巻 第 一 号 ) 山 忠 恕 稿 ( 産 業 経 理 十 五 巻 第 五 号
﹀ 井 達 雄 稿 ハ 産 業 経 理 十 五 巻 第 一 号 ) 江 稔 稿 ( 産 業 経 理 第 十 五 巻 六 号 ) 林 博 士 稿 ( 会 計 五 八 巻 第 二 号
﹀ 佐 藤 孝 一 稿 ( 産 業 経 理 昭 和 三 十 年 十 月 号 ) 大 住 達 雄 稿 ( 産 業 経 理 十 三 巻 第 二 号
﹀ 岡 野 嘉 一 郎 稿 ( 産 業 経 理 十 二 巻 第 二 号
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(昭和二六︑九︑一企業合計基準審議会)
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