靱
消費 者 約契 法 四条 おに け る契 約 消取 権 の意 義︱
︱ そ の現 状 と課
︱題
︱
宮 下 修 一
は じ め に 1 消 費 者 契 約 法 を と りま く 法 状 況 の変 化 2 消 費 者 契 約 法 の利 用状 況 3 本 稿 の目 的 お よ 構び 成 消 費 者 契 約 法 四条 を めぐ る議 論 と 裁 判 例 消 費 者 契 約 法 条四 概の 要 誤 認 に よ る契 約 取 消 権 I
¨不 実 告 知
︵四条 一項 一号
︶ 誤 認 に よ る契 約 取 消 権
Ⅱ
¨判 定 的 判 断 の提 供
︵四条 一項 二号
︶ 誤 認 に よ る契 約 取 消 権
Ⅲ
¨故 意 に よ る不 利 益 事 実 不の 告 知
︵四条 二項
︶
消費者契約法四条における契約取消権の意義
4321
5 困惑 に よ る契 約 取 消 権 I
¨事 業 者 不の 退 去
︵四 条 三項
一号
︶ 6 困 惑 に よ る契 約 取 消 権
Ⅱ
¨事 業 者 よに る消 費 者 への 退 去 妨害
︵四 条 三 項 二号
︶ ま と め︱
︱ 消 費 者 契 約 法 四条
のあ り 方 と 今 後 の課 題 1 裁 判実 務 おに け る消 費 者 契 約 法 四条 の意 義 2 特 定 商 取 引 法 上 の契 約 取 消 権 と の関 係 3
﹁重 要 事 項
﹂ 再 考 4 消 費 者 契 約 法 三 条 と の関 係 5 契 約 取 消 権 の将 来︱
︱ 民 法 と の関 係 一 は じ め に 1
消 費 者 契 約 法 を と り ま く 法 状 況 の変 化 消 費 者 契 約 法 が︑ 平 成 一三
︵二
〇
〇 一︶ 年 月四 に施 行 さ れ てか ら 早 く も 六 年 近 く が 経 過 し た
︒ こ の間
︑ 消 費 者 契 約 法 を と りま く 法 状 況 は
︑ まめ
ぐ る し い変 化 を 遂 げ てき た
︒ 平 成 一六
︵二
〇
〇 四︶ 年 月五 に は︑ 消 費 者 被 害 の急 増 を受 け て︑ 特 定 商 取 引 に 関 す る法 律
︵以 下
﹁特 定 商 取 引 法
﹂ と いう
︶ が改 正 さ れ た
︵施 行 は同 年 一 一月
︶︒ そ こ では ま ず
︑ 事 業 者 に よ る ク ー リ ング
・オ フ妨 害 があ たっ 場 合 に︑ 事 業 者 再が 度 ク ー リ ング
・オ フが 可 能 であ る旨 の文 書 を 交 付 し てか ら 所定 期の 間
︵八 日
〜 二
〇 日間
︶ を経 過 し な い限
法政研究11巻102・ 3・ 4号 (2007年)
り い つで も ク ー リ ング
・オ フを す る こと が きで ると いう 形 で︑ ーク リ ング オ・ フ権 の強 化 が 図 ら れた そ︒ れ と 同時 に︑ 不 実 告 知 や故 意 によ る 利不 益 事 実 の不 告 知 あが たっ 場 合 に︑ 顧 客 側 に契 約 取 消 権 の行 使 が認 めら れ るな ど 消︑ 費 者 の 権 利 を 拡 大 す るた め の制 度 が整 備 さ れ た
︒ ま た
︑ 平成 一人
︵二〇
〇六
︶ 年 月六 に は︑ 包 括 的 横・ 断 的 な 投資 サ ービ ス立 法 を 目 指 し て︑ 従来 の証 券 取 引 法 を改 正 す る形 で︑ 金 融 商 品 取 引 法 が制 定 さ れた
︒ こ こ はで 従︑ 来各 種 業 法 に点 在 し て規 定 さ れ て いた 広 告規 制
︑ 契 約締 結 時 o契 約 成 立 時 の書 面 付交 義 務
︑ ク ー リ ング
・オ フ︑ 虚 偽 の説 明 の禁 止
︑ 適 合 性 の原 則
︑ 招不 請 勧誘
・再 勧誘 の禁 止 な ど が
︑ 金 融 商 品 取 引 業者 に対 す る行 為 規制 と し て横 断 的 に規 定 さ れ て るい
︒ ま た
︑ 同 法 の制 定 に伴 い︑ 金 融商 品 の 販売 等 に関 す る法 律
︵以 下
﹁金 融商 品 販売 法
﹂ と うい
︶ も 改 正 さ れ︑ 金 融商 品 販 売 業者 対に す る説 明義 務 の範 囲が 大 幅 拡に 充 さ れ る こと にな たっ
︒ さ ら に︑ 若 干 時 間 前は 後 す る が
︑ 平成 一人
︵二
〇 六〇
︶ 年 月五 には
︑ 消費 者 団 体 訴 制訟 度 を 創 設す るた め 消の 費者 契 約 法自 体 の改 正 が行 わ れ た 消︒ 費 者 団体 訴 訟 制 度 と は 内︑ 閣総 理 大 臣 の認 定 を受 け た 消費 者 団体
︵適 格 消費 者 団体
︶ に 対 し て︑ 事 業 者 よに る 不 当 な 契 約 条 項 の使 用 不や 当 な 勧 誘 行 為 等 の差 止 め を 請 求 す る権 限 を 与 え るも の であ る
︒ 同制 度 に 理 論 的 あ る いは 実 務 的 な 課 題 が 残 さ れ て いる のも 事 実 あで るが
︑ 今 回 の改 正 に よ り
︑ 従来 は実 際 に被 害 を 受 け た消 費 者 の個 別救 済 が中 心 であ った 消 費 者 裁 判 が
︑ 被 害 発 生 の未 然 防 止 を 目 的 と たし 裁 判 をも 含 む形 で質 的 変に 化 し て いく こと 期が 待 され る︒ 以 上 よの う 消な 費 者 法 制 を めぐ る 一連 の動 き の中 で︑ 消費 者 契 約 の 一般 法 と も いう べき 消費 者 契約 法 のあ り方 改が め て問 い直 さ れ て いる と い てっ も 過 言 では な いで あ ろう
︒
消費者契約法四条における契約取消権の意義
2 消 費 者 契 約 法 の利 用 状 況
︵1︶ 裁 判 例 の状 況 消費 者 契 約 法 の各 条 文 に つ いて な んら か 判の 断 が な さ れ た裁 判 例 は 公︑ 表 さ れ て いる も のだ け もで す でに 一〇
〇 件 近 く 及に ん で るい
︒ こ のう ち
︑ 稿本 とで り あ げ る消 費 者 契 約 法 四条 に関 連 す る裁 判 例 に つ いて は
︑ 二 で詳 くし 検 討 す る うよ に︑ す で に 二〇 件 以 上 公表 さ れ て いる
︒ ち な み 近に 時 急 増 し て いる の が︑ いわ ゆ る
﹁学 納 金 返 還 訴 訟
﹂ に関 す る裁 判 例 であ る 各︒ 判 決 の論 点 多は 岐 にわ た る が
︑ と り わ け そ の中 心 と な てつ いる のが
︑ 入 学手 続 後 は 入学 金
・授 業 料 等 の学 納 金 を 返 還 し な い旨 の特 約 消が 費 者 契 約 法 九 条 一号 に いう
﹁当 該 消費 者 契 約 の解 除 伴に う 損 害 賠 償 の額 を 予定 し
︑ 又 は 違 約 金 を 定 め る条 項﹂ にあ た る か
︑ ま た そ れ にあ た ると し て学 納 金 相 当 額 が
﹁当 該 消 費 者 契 約 と 同種 の消 費 者 契 約 の解 除 伴に い当 該 事業 者 生に ず ベ き 平 均 的 損な 害
﹂ と いえ る か と うい 点 で あ る
︒ こ の点 を め ぐ てっ
︑ 最 高 裁 判所 は 平 成 一人 年 一一 月 二七 日 判の 決 で︑ 消 費 者 契 約 法 が 施 行 さ れた 平 成 一三 年 月四 一日 以 降 の在 学 契 約 に は 同法 が適 用 さ れ る こと を 前 提 と し たう え で︑ 授 業 料 等 に つ いて は 三月 三 一日 ま で 在に 学 契 約 が 解 除 さ れ 場た 合 に は 大学 に平 均 的 な 損 害 が発 生 しな いこ とか ら返 還 なし け れ ば な ら な いと 判 示 たし
︵な お 入 学金 に つい ては
︑ 不相 当 に高 額 であ る など 他 の性 質 を 有 す ると 認 めら れ る特 段 の 事 情 のな い限 り
︑ 学 生 大が 学 に入 学 うし る地 位 を 取得 す る た め の対 価 と し て の性 質 を 有 す ると し て︑ 返還 義 務 負を わ な いと し て いる
︶︒ 本稿 では
︑ 学 納 金 返 還訴 訟 に つ いて 直は 接 と り あ げ な いが
︑ こ のよ う 消に 費 者 契 約 法 を 活 用 し 紛て 争 解決 を 図 ろう と す る裁 判 例 は
︑ 今 後 も ま す ま す 増加 し て くい こと が 予想 さ れ る
︒
法政研究H巻1・ 2・ 3・ 4号 (2007年)
︵2︶ 実 際 の相 談 状 況
︵1︶ 述で べた よう に 消︑ 費 者契 約 法 四条 を めぐ る裁 判 例 は︑ 同 法 にか か わ てっ 公表 さ れ て いる 裁 判例 全体 の中 で そ れ ほど 高 い割 合 を 占 め て いる わ け では な い︒ し か し 消︑ 費 者相 談 の現 場 に お いて は 消︑ 費 者 契 約法 条四 が 問題 と な る場 面 が き わ め て多 い︒ 国 民 生 活 セ ンタ ー が 平成 一八 年 月二 に公 表 し た報 告 に よれ ば
︑ 消費 者 契 約 法 が施 行 さ れた 平 成 一三 年 四月 一日 か ら 平 成 一七 年 月三 三 一日 ま で の 四年 間 に︑ 国 民 生 活 セ タン ー や全 国 の消 費 生 活 セ タン ー に おけ る同 法 に関 す る消 費 生活 相 談 の件 数 は 合︑ 計 六 七 七 三件 に のぼ る︒ そ うの ち
︑ 消 費 者 約契 法 四 条 に関 す る相 談 は 五七 七八 件 で︑ 相談 全 体 の人 五
・四
% 及に ん で いる
︵ちな み に
︑ 公表 裁 判 例 の数 が 多 い八
〜 一〇 条 関 連 の相 談 は 九 四
〇 件 で︑ 相 談 全 体 の 一三
・ 九
% と な てっ るい
︶︒ 四条 に 関 す る相 談内 容 の具 体 的 な内 訳を み ると
︑ 不 実 知告
︵一 項 一号
︶ 関 連 のも のが 三 五
〇 四 件 と 全 体 の半 数 以 上 を占 め
︑ つ いで 事 業 者 に よ る消 費 者 への 退去 妨害
︵三項 二号
︶ 関連 のも のが 一一
〇 件四
︑ 断定 的 判 断 の提 供
︵一 項 二号
︶ 関 連 のも のが 八
〇九 件 事︑ 業 者 の不 退去
︵三項 一号
︶ 関 連 のも のが 七 九 二件 故︑ 意 によ る 不 利 益 事 実 の不 告 知
︵二 項︶ 関連 のも のが 三 二 八件 と な てっ るい
︵︻表 1︼ 参 照
︶︒ 以 上 のデ ー タか ら は 多︑ 発 す る消 費 者 ト ラブ ルに お いて
︑ 裁 判 に至 る前 の紛 争 解 決 法 理 と し て消 費 者契 約 法 四条 が 機 能 す る場 面 が非 常 多に いこ と が わ か る︒ 四条 に つ いて は︑ 条 文 の支 言 上 は そ の適 用範 囲 が か な り限 定 さ たれ こと か ら 立 法 段 階 か 非ら 常 に 強 批い 判 が な さ れ てき た が 実︑ 務 の現 場 にお いて は
︑ 当初 の予 想 を 超 え る形 で利 用 さ れ て いる と いえ る であ うろ
︵四条 の規 定 に対 す る批 判 と 同条 を めぐ る裁 判 例 の状 況 に つ いて は︑ 後 述 す る︶︒
消費者契約法四条における契約取消権の意義
表1 消 費 者契約法 に関連す る消費生活相 談件 数
絆 D
01年度 02年度 03年 度 04年度 01〜04年 度
1,403 100.0% 2,132 1000% 1.854 100.0% 1.384 100.09ろ Q773 100.0%
1不実告知 615 43.89ろ 1,043 48.9% 1,049 56.69ろ 797 57.6% 3,504 51.7a/a 1断定的判断の提供 134 9。6% 222 10.49ろ 262 14。1% 191 13.89ろ 809 H.9%
第4条関連
の項 目 璽:II:言│II喜│ 38 2.70/a 50 2.39ろ 80 4.3% 60 43% 228 34%
1不退去 191 13.6'ら 230 lQ8% 210 11.3% 161 116% 792 11.7%
一禁 一監
(退去妨 害) 306 21.8% 407 19。1% 256 138% 135 9。8% 1,104 la3%
(4条関連全体) 1.170 83.4% 1,814 85。1% 1.620 87.4% 1,183 85.5'ろ 5787 854%
雷蓮あ磐沓1 問題契約書 198 14.1% 309 1451% 238 12.8'ろ 195 14。1% 940 13.90/a
その他 69 49% 31 1.5% 9 0.5% 23 1.7% 1.9%
︱︱∞011
︵叶おR︶申寸・∞・N・H黎目駅応魯輝
注1:データはり1年4月 1日か らり5年3月末 日までに受け付けた相談のうち、%年5月末 日までにPIO―NETに登録 されたもの。
注2:各項 目はマルチカウント。表中の割合は各相談受付期間別の全体数を100と して算出した値である。
(国民生活センター情報分析部 。相談調査部「消費者契約法に関連する消費生活相談と裁判の概況〜法施行後4年〜」国民生活36巻2号
〔平成18年〕52頁より転載)
3 本 稿 の目 的 お よび 構 成 以上 で述 べ てき た よう に︑ 消費 者 紛 争 の解 決 にあ た って 消 費 者 契 約 法 四条 は非 常 に重 要 な役 割 を 果た し てき て いる
︒ 今 後 も 同条 の活 用 を さ ら に図 てっ くい た め に は︑ 現段 階 にお け る同 条 の意 義 と 課 題 を 明 ら か にし たう え で︑ 今後 の方 向 性 を 探 る こと が 必 要 不可 欠 の作 業 と な る あで ろう
︒ こ よの う な 問 題 意 識 のも と
︑ 別 の機 会 に筆 者 は 特︑ に 四条 の契 約 取 消 権 お よび 三条 の情 報 提 供義 務 を中 心 に︑ 消 費 者 契 約 法 の改 正 課 題 を 検 討 す る 小 稿 を 発 表 し た
︒ し か し こ の論 稿 で は
︑ 立法 課 題 の検 討 を 中 心 と す る 同論 稿 の性 格 と 紙幅 の関 係 か ら
︑ と り わ け 条四 の契 約 取 消 権 を めぐ てっ は さま ざ ま な 見 解 や裁 判 例 が 公表 さ れ て いる もに か かわ ら ず
︑ そ れ ら に関 し ては くご 簡 単 な言 を及 す る とに まど り
︑ 相 当 程 度 を 省 略 せざ るを え な か たっ
︒ そ こ で本 稿 で は︑ 同条 を めぐ る学 説 お よ 裁び 判 例 の状 況 を 分 析 し つつ
︑ 消費 者 紛 争 の場 面 に おけ る同 条 の意 義 と 活 用 可 能 性 を 検 証 す る こと を 目的 と す る
︒ し た が てっ す︑ で に公 表 済 み の小 稿 と若 干 叙 述 が重 複 す る こと があ る が︑ 上 述 のよ う あに く ま で分 析 の観 点 が異 な って いる 点 留に 意 さ れた い︒ ま た
︑ す でに 消 費 者 契 約 法 を めぐ る裁 判 例 の状 況 に つ いて は いく つか の論 稿 で総 合 的 な 検 討 が試 みら れ て いる
︒ 本 稿 では
︑ そ れ ら の先 行 業 績 も 参 照 し つ つ︑ 同法 四 条 に焦 点 を 絞 てっ より 詳 細 な裁 判 例 の分 析 を試 みた う え で︑ 同法 施 行 以後 の立 法 や学 説 状 況 をも まふ え て︑ 今 後 消の 費 者 契 約 法 制 のあ る べき 姿 を展 望 し うよ と す るも の であ る
︒ 以 上 のよ う な目 的 のも と に︑ 本 稿 に お いて は︑ 次 の 二 で︑ 消 費 者 契 約 法 を め ぐ る議 論 に つ いて 裁判 例 の動 向 も ふま え な が ら 検 討 を 行 う
︒ そ うの え で 三 で︑ 消費 者 契 約法 上 の契 約 取 消権 に関 す る規 定 関に す る今 後 のあ り方 に つい て考 え て み る こと と たし い︒
消費者契約法四条における契約取消権の意義