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コロナ禍と情報メディア利用行動との関係に関する考察

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Academic year: 2021

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コロナ禍と情報メディア利用行動との関係に関する考察

長谷川 幸 代

1.はじめに

現在世界中で大きな問題となっているコロナウィルスは、そのウィルスによる健康への脅威を 人々にもたらしただけでなく、私たちが慣れ親しんだライフスタイルに大きな影響を与えている。

その中の一つが、情報メディアの利用行動である。

「情報メディア」には多様な解釈が存在するが、ここでは「人間の情報伝達、コミュニケーシ ョンを媒介するもの」1)と定義する。すなわち、音声を運ぶ電話もそうであるし、インターネット は勿論のこと、図書も重要な情報メディアであると捉えることができる。本稿では、アナログ方 式、デジタル方式を問わず、マスメディアも含み、情報を送り手から受け手に渡す媒体を「情報 メディア」として扱うこととする。

これまでも学業、ビジネス、日常生活、娯楽等の様々な分野で、情報メディアとりわけインター ネット環境を利用したオンラインツールの活用によって、時間や場所に囚われない情報収集やコ ミュニケーションが可能であった。ただ、実際には対面による活動が中心であったし、過度なイ ンターネットの利用は批判の対象となる例もしばしば存在していた。

しかしながら、20年に発生したコロナ禍の影響により、今までの情報メディアの利用行動は 大きな変化を余儀なくされることとなった。現在でも、対面での活動は制限されるか、自粛を求 められることがあり、非対面による情報の伝達とコミュニケーションが様々な活動の主軸を成さ ざるを得ない状況となっている。

本稿では、そもそも情報社会における「情報メディア」の利用の変遷がどのようなものであっ たかを再考し、改めて今回のコロナ禍による情報メディア利用行動の状況や変化について概観す ることを目的とする。

2.コロナ禍以前の情報社会

1 「情報社会」と ICT

まず、現在の情報や情報メディアを取り巻く社会を検討する前に、そもそも「情報社会」ある いは「情報化社会」とはどのようなものであるのだろうか。こういった言葉が多用され、その内 容について論じられるようになった背景には、インターネットの普及が存在している。商用イン ターネットの接続サービス提供事業者(ISP)は、19年に米国において世界で初めて設立され た。日本では、18年に大学研究者等によるインターネットの実験を行う「WIDEプロジェクト」

1)さらに以下の説明も付与されている。 情報伝達に関与するものはきわめて多様なため、さまざまに概 念規定が可能である。媒介する物体・装置もしくは技術的特性に焦点を合わせる場合や、単に技術ではな く社会的なシステムであることを強調する場合がある。なお、information mediaは日本語からの訳語と しての使用例が中心で、英語圏ではあまり使われない表現である。

情報メディア 、図書館情報学用語辞典第5版、JapanKnowledge、https : //japanknowledge.com、(参 照21―01―20)

<社会・文化・デジタル>

―9―

(2)

が発足している。また、17年には携帯電話が自動車電話から大幅に小型化された端末となり、

サービスが開始された。インターネットと携帯電話の登場と普及は、私たちの生活、文化、社会、

経済を大きく変えていくことになった2)

インターネットが一般家庭に広く普及する前の15年には、ウェブスターによって原著名

Theories of The Information Society ”

(邦訳『「情報社会」を読む』21年発行)の中で、「情報 社会」に関する様々な定義が取り上げられている3)。この中では、当時すでに「情報社会」と述 べる人は多く存在し、それが何を意味しているかを検証するのは有用な議論だと述べられている。

また、「情報社会」が新しいという論拠は「テクノロジー的」「経済的」「職業的」「空間的」「文 化的」の五つに区分されている。つまり、技術的な側面での新しさだけでなく、生活や経済、文 化等の側面においても新たな変化をもたらし得るものだということが認識されていたことにな る。そして、先に述べたように実際に今現在も変革が続いている。

ところで、情報社会の中で活用される

ICT(Information and Communication Technology;情

報通信技術)には実に様々なものがあるが、特に、コミュニケーション手段としては、「インター ネット」「SNS(Social Network Service)「スマートフォン」の普及と社会的影響が顕著であ り、近年の情報社会とその中での人々の行動に大きな変化を与えた「情報メディア」と言えるで あろう。

2 移動通信サービスとコミュニケーションの変容

ICT

環境の中で、最も生活を変化させたものの一つが「移動通信サービス」である。移動通信 サービスの黎明期は10年から13年ごろまでと言われているが、代表的なツールとしてポケッ トベルが挙げられ、一方向のコミュニケーションが主流であった2)。これは、情報メディアの一 つである「ポケットベル」にごく短い文章を、電話を通して送信するもので、一大ブームともな ったが、同時双方向型のやり取りはできず、受信後に改めて別の機器(公衆電話や一般電話)か ら折り返しの電話や相手のポケットベルへの発信を行うものであった。一方向のコミュニケーシ ョンを重ねて双方のやり取りを完結するには時間を要したが、移動中に連絡が取り合える手段と して重宝された。自動車電話や携帯電話も存在したが、重量かつ大型で一般に普及するには遠い ものであった。

その後13年から18年ごろまでには、携帯電話が軽量・小型化されたこと、PHSが普及し たことにより、移動通信サービスは急速に普及し、リアルタイムの双方向型コミュニケーション が気軽に行えるようになった2)。この期の前半ではポケットベルはまだ活用されており、移動中 に手軽に連絡を取り合える便利なコミュニケーションツールとして注目され、ビジネスだけでな く日常の手軽なやり取りの手段として利用されていた。目覚ましい普及により、社会現象にもな ったが、その後は携帯電話へと移行していった。

9年から28年頃には、「フィーチャーフォン」が登場し、携帯電話の普及は一層拡大した。

また、電話としての機能だけではなく、インターネットの接続サービスも併用され、様々なオン ラインサービスが行えるようになった。画像や音楽も扱うことができ、さらには財布の中の定期 券やポイントカード、料金の支払いそのものも携帯電話で済ませることが可能となったのである。

日本では独自に進化を遂げて多機能性を備えたが、世界の市場では通用しにくくなったことから

2)総務省。令和元年版情報通信白書:進化するデジタル経済とその先にあるSociety5.0。日経印刷株式会 社、29。

3)フランク・ウェブスター著、田畑暁生訳。「情報社会」を読む。青土社、21。3p。

―10―

(3)

総務省情報流通業政局情報通信政策課情報通信経済室

「平成30年度デジタル化による生活・働き方への影響に関する調査研究成果報告書」

p.24 図表3―4をもとに筆者加筆・要約

https : //www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/r 01̲02̲houkoku.pdf 図1 移動通信サービスの進化とコミュニケーションの変容

「ガラパゴスケータイ(ガラケー)」と呼ばれたのがこのフィーチャーフォンである2)。通信速度 などは現在より遅く時間がかかることも多いが、外出先でいつでも必要とする情報にアクセスで きる機会は、私たちの生活の利便性を飛躍的に向上させた。人対人のコミュニケーションもさる ことながら、人と組織やサービスのやり取りを時間と空間を越えて可能にしたのがこの情報メデ ィアである。

7年には

Apple

によってスマートフォン「iPhone」が、翌28年には「iPhone

G」が、そ

して29年には

Android

に対応したスマートフォンが発売された。インターネットの閲覧も、パ

ソコンの画面のようにフルブラウザで利用でき、多様なアプリを展開することも可能で、普及が 進んだ2)。通信速度も高速で、扱えるデータの容量も大きくなり、短時間で様々な画像や動画の やり取りが可能となった。

このような移動通信サービスの進化とコミュニケーションの変容をまとめると、図1のように なる。移動通信サービスの黎明期には、一方向のコミュニケーションではあるものの、移動中に も連絡が取れるということが大きな利点であった。その後技術開発やサービス向上により、双方 向でリアルタイムにやり取りができるようになり、さらに費用面でもハードルが下がり、気軽な 利用が可能となった。昨今では、データ通信が高速かつ大容量化したことで、様々なマルチメデ ィアコンテンツを共有しあうことができる。この状況では、特に

Facebook、Instagram、TikTok

に代表されるような

SNS

による画像や動画の共有を通した手軽なコミュニケーションが発達し てきた。一方向から双方向へ、タイムラグのあるやり取りからリアルタイムでのやり取りへ、費 用や容量の制限下での利用から低価格かつ大容量化による手軽な利用へという変化は、今回のコ ロナ禍での情報メディア利用行動の環境の基盤ともなっている。オンライン会議システムやオン デマンド配信等の活用の背景には、このような環境の構築の歴史が存在しており、環境やツール は新たに創られたものではなく、すでに背景としてあったことが分かる。

―11―

(4)

3.データから見るコロナ禍以降の変化

1 外出自粛による活動の変化

0年5月18日〜20日にかけて、NTTコムリサーチの保有する消費者モニタに対して行われ た調査結果のうち「外出自粛によって増えたこと

TOP

5」を図2に示す。外出自粛により増え た活動で最も多いのは「無料の動画を見る」で27.5%であった。次いで「テレビ番組を見る」6.3%、

「掃除や片づけをする」23.1%と続く。その他の項目を見ても、比較的自分自身のための活動の 機会が増えている様子が分かる4)5)

「SNSやオンラインでコミュニケーションをとる」は、項目中では第13位で7.8%に落ち着い ている。ビジネスや学習の場でもオンラインツールが活用されてはいたが、飛躍的に増加したと は言い難い。これには二つの可能性が考えられる。一つ目は、既に以前から十分な時間が割かれ ていたため、大きく増加しなかったという可能性である。二つ目は、人々が他とのコミュニケー ションよりも、個人的な活動により時間を割きたいと考えるようになったという可能性である。

勿論、双方が相まってこのような結果になったという可能性も十分に考えられる。また、オンラ イン会議システムの様々な活用法がこの調査の段階ではまだ浸透していなかったということもあ るだろう。しかしながら、対面による活動が大幅に減じられ、代わって多くの活動がオンライン を通して行われるようになった中で、このような結果が示されたことは興味深い。

4)「映像・動画全体の視聴状況と有料動画配信サービスの利用率調査の注目の結果」 インプレスホール ディングス https : //prtimes.jp/main/html/rd/p/..html(参照 21―01―20)

(1)「映像・動画全体の視聴状況と有料動画配信サービスの利用率調査」

調査対象はNTTコムリサーチの保有する消費者モニタで、20年5月18日〜20日にPC上でのウェ ブアンケートを利用して行われた。有効回答数は2,0サンプル。サンプリングは性年齢階層別インター ネット利用人口構成比(総務省 通信利用動向調査)に可能な限り整合するように抽出された。集計は、

年代により回収率が異なっており、母集団との乖離がみられるため、性年齢階層別インターネットの利 用人口構成比に整合するように比重調整(ウェイトバック)を行ったうえで分析が行われている。

(2)「動画配信サービス利用者の利用状況調査」

上記(1)の「映像・動画全体の視聴状況と有料動画配信サービスの利用率調査」にて、以下の回答を した人が対象であり、PC上でのウェブアンケートを利用して20年5月22日〜26日に実施された。

対象者:

3ヵ月に有料動画配信サービスを利用していると回答 無料動画配信サービスをよく視聴すると回答

動画共有サービスをよく視聴すると回答 有効回答数:1,4回答

回答数:

有料動画配信サービス利用者1,5回答

無料動画配信サービスをよく視聴する利用者71回答 動画共有サービスをよく視聴する利用者1,2回答

※上記の「映像・動画全体の視聴状況と有料動画配信サービスの利用率調査」で得られた性年代別利 用者構成にできるだけ整合するように抽出されている。

5) 新型コロナウィルス「緊急事態宣言」。内閣官房。

https : //corona.go.jp/emergency/(参照21―01―24)

新型コロナウィスルによる緊急事態宣言の最初の発出は、20年4月7日。4月7日から5月6日まで の期間で、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県及び福岡県の区域を対象とした。不急不 要の外出自粛や一部店舗の営業時間短縮等が行われた。

―12―

(5)

コロナ禍の影響でネット動画利用が大幅増「テレビ視聴が増加」した人を上回る/インプレス総合研究 所調査 https : //creatorzine.jp/news/detail/1200

図2 コロナ禍の外出自粛によって増えた活動

2 インターネット利用と利用時間の詳細

0年から25年のインターネットの利用時間の推移は、増加傾向にあり、対してテレビ視聴 はやや減少傾向であった。特に、インターネット利用時間は、二十代の増加が著しく、この期間 に1日平均30分以下から10分近くに増加している。背景には、インフラに該当するサービスの 充実、課金制から定額制・常時接続といった料金体系の変化、モバイル端末の多様化があり、よ り簡単に接続し、長時間の利用に対するハードルが減じられたことがある。さらに、若年層の興 味関心を呼んで離さないであろう

SNS

の普及もある。

ところで、コロナ禍が発生してからはどうであろうか。対面による活動がオンラインに大きく 代替されるのであれば、大幅な上昇の確認が仮定できるであろう。令和2年版の「情報通信白書」

(総務省)には、20年のインターネット利用時間が含まれた時系列データが確認できないため、

ここでは筆者の調査データを用いて確認したい。

図3には、20年5月から6月にかけて行ったインターネット利用時間調査のうち、比較的プ ライベートな内容と捉えられる三つの項目について示している6)。図4は、ビジネスあるいは学 業に関する利用時間と考えられる三つの項目を示している。横軸は利用時間であり、「0.利用 しない」「1.30分未満」「2.30分〜1時間未満」「3.1〜2時間未満」「4.2〜3時間未 満」「5.3〜4時間未満」「6.4〜5時間未満」「7.5時間以上未満」となっている。

まず、図3を見てみると「プライベートのサイト閲覧」に比較的多くの時間をかけている様子 が分かる。勿論、利用しない層も多いが、ほかの二つ「SNSの閲覧・書き込み」「プライベート の会話」の目的に比べて、「プライベートのサイト閲覧」の利用時間は多くなっている。

6)調査時期は、20年5月28日から6月4日で、fastaskにモニタ登録している対象者に対してウェブア ンケートを行った。サンプル数は51、10代から80代までを対象とし、男女比や年齢構成比はおよそ前年 の日本の人口構成比に近い割合を設定した。

―13―

(6)

図4を見てみると、全体的に利 用しない層が多く、やや「仕事上 のサイト閲覧」を利用している回 答者が見られるが、「仕事上の会 議・打ち合わせ」「オンライン授 業の受講」を目的とした利用時間 は少ない。

これらのグラフから、二つの点 が指摘できるのではないだろう か。まず、インターネットをビジ ネスや学習目的よりも、プライ ベートに利用している傾向が見ら れる。これは、やはり人々の活動 が自分たち自身に向いている可能 性が示唆されるものではないだろ うか。ただし、コロナ禍が契機と なっているかどうかは、より多く のデータを用いて前後の比較をす る必要がある。もう一つは、イン ターネットの利用法としては依然 として「閲覧」が中心であるとい うことである。プライベートであ れ、それ以外であれ、インターネ ットの主な用途は複雑なアプリ ケーションの使用やオンライン会 議システムよりも、サイトの閲覧 というインターネットの利用法と しては基本的な使い方がなされて いる。

4.考察

1 五つの次元:社会情報シス テムに見られる動向

前述の「外出自粛による活動の 変化」において、外出自粛の環境 下で人々が他とのコミュニケーシ ョンよりも、個々の活動に時間を 割きたいと考えるようになった可 能性を示した。新しいメディア環 境の中で、このような動きがある ことは、竹内らによる21世紀社会 図3 インターネット利用時間(プライベート)

―14―

(7)

情報システムにみられる大きな動 向の概観からも補強される7)。次 に示す動向は21世紀社会情報シス テムに見られる動きであり、社会 情報システムの多層的な生成を成 している。その動向は、「コモン ズからマーケットへ」「パブリッ クからプライベートへ」「ナショ ナルからローカル、グローバルへ」

「リアルからバーチャルへ」「平 常時から緊急時へ」「大衆主導か ら個衆主導へ」の六つに集約され ている。この動向をまとめたもの を、表1に示す。

ここに示した中で、コロナ禍に おける活動の変化は、社会情報シ ステムにおける動向の「パブリッ クからプライベートへ」「リアル からバーチャルへ」「大衆主導か ら個衆主導へ」の流れに一致する 部分が見られる。例えばビジネス や学習といった場面での公的な情 報メディア利用より、個人的な好 みに対応した動画の閲覧は「パブ リックからプライベートへ」の一 面であるし、映画館やイベント会 場などのリアルな場で楽しむ方法 から、時間や場所を問わずにイン ターネット上で楽しむことができ る状況は「リアルからバーチャル へ」に対応する。個々の趣味や関 心に応じた情報やコンテンツを得 るためには、大衆主導の情報より 個衆のニーズに向けて作成、発信 されたメディアが有効であり、「大 衆主導から個衆主導へ」に該当す る。

公的な活動がオンラインに切り

7)竹内郁郎、児島和人、橋本良明編著。新版メディア・コミュニケーション論!。北樹出版、25。2p。

「第4章 メディアの今日的生成と展開」より

図4 インターネット利用時間(ビジネス・学習)

―15―

(8)

替わると、実際にその外形的な変化すなわち使用するツール類の開発と普及、それに対応してい く仕組みに注目が集まりがちである。しかし、実際にはよりプライベートな情報メディア利用が 人々の間に浸透していることは、先に示した「社会情報システムの多層的な生成」の理論から見 ても自然な状況であると考えられよう。

2 情報メディア利用における心理的側面の重要性

私たちの日常に、大きな社会的変化があった際、それに対応すべく国や自治体が動き、そして 個人個人にも行動に変化がもたらされる。通常の生活だけでなく、今回のコロナ禍ではビジネス の場面、社会教育全般を含む教育の現場に特に大きな行動様式の変化を生じさせた。この状況へ の対応には苦労を要し、技術的なスキルの習得を余儀なくされ、多大な時間が必要となり生活に も影響を与えたことは確かであろう。その中で、私たちに変化があったのは技術や生活様式全般 についてだけではないのではないか。

表1 社会情報システムの多層的な生成

社会情報システム上の動向 概要

コモンズからマーケットへ 研究者などにより情報やサービスが無料で提供され共有 される「コモンズ」から、優良で売買されるマーケットプ レイスとしての性格を強める。

パブリックからプライベートへ 表領域(公的情報)から裏領域(私的情報)への変移。

公共的な情報空間に、私的な情報空間が拡大していく。

ナショナルからローカル、グローバルへ 主にマスメディアの動向をさす。全国(ナショナル)レ ベルから、国際情報をブラウザで簡単に入手できるような グローバルな社会情報システムが拡大していく。他方で、

市区町村レベルのローカルな地域社会でも、ローカルレベ ルの社会情報システムが根付き、成長していく。

リアルからバーチャルへ 情報の送り手と受け手の間で対面的、直接的な相互作用 が行われるリアルな空間から、インターネットに代表され る現実世界とは異なる仮想のパーソナリティを創造した り、時間・空間、社会的属性等から比較的自由に構成され るバーチャルな空間がつくり出され、日常生活のあらゆる 領域に組み込まれていく。

平常時から緊急時へ 現代の「リスク社会」に対して、平常時から緊急事態の 発生を想定した社会情報システムの構築が必要となる。災 害や大事故の際には、迅速な情報収集、処理、伝達による 活動が展開され、メディア環境の進化により緊急社会情報 システムも大きく発展していく。

大衆主導から個衆主導へ かつての、情報の送り手はマスメディアで受け手は一般 大衆であるという大衆主導の社会情報システムから、より 個別化した価値観やライフスタイル、文化選好をもつ人々 の多様な個衆のニーズに合わせた社会情報システムに代わ っていく。

竹内郁郎他編著『新版 メディア・コミュニケーション論!』7)p.9―14をもとに作成

―16―

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例えば、自宅にいる時間が増え、自分に目を向ける機会が生じる。あるいは、家族と接する時 間が増え、より小さな集団に目を向ける機会が増える。このような状況では、心理的な側面に変 化が生じる可能性がかなり高いのではないだろうか。それは、プラベートを充実させるというポ ジティブな側面もあり、またコロナ禍によって様々な不安が起こるというネガティブな側面もあ る。ビジネスや学習、日常生活の様式が大きく変わる中で、最後に行きつくのはそれによって影 響を受ける個人の考え、感情等のプライベートな心理面ではないのだろうか。コロナ禍以前から、

多様な

SNS

ツールを利用した情報の発信や利用については、外向性や自己肯定感等の個人特性 との関連が示唆されている8)。今回のような災禍の際に、情報メディア利用や情報行動が大きく 変わることは確かであるが、それと同時に人々の心理的な側面の変化を合わせて検討し、議論し てく必要性がある。

5.おわりに

本稿では、コロナ禍以前の情報社会を概観し、コロナ禍以降のデータを用いて行動の変化を確 認し、情報メディア利用の考察を行った。そこで明らかになってきたことは、単純な情報メディ ア利用の変化だけではなく、以前からある情報環境が土台として存在していること、外出自粛等 により情報メディア利用の変化を余儀なくされたことで個人に意識が向き、個人的な利用が高ま った可能性があること、これにはかつてからある情報システムの動向の理論に当てはまる部分が 見られることである。

今後の課題としては、以下の点を挙げたい。一つは、情報メディア利用の変化を比較するため に有用で信頼性の高いデータを用いて、前後の比較を行い統計的な検証をすることである。もう 一つは、心理的側面の変化と合わせて関連性を確認していくことである。このような取り組みに よって、再び同じような状況に面したときに、技術的な向上や情報メディア利用の外枠だけの分 析から脱し、より人々の生活そのものや心理的変化を踏まえた新たな対策を講じる可能性がある ことに期待したい。

8)長谷川幸代。情報メディア毎の利用者特性の分析と考察:公共図書館利用との関わりを含めた検討。第 7回情報プロフェッショナルシンポジウムINFOPROPlus、20年、科学技術振興機構 オンライン、

主催:情報科学技術協会。

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参照

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