ISSN 1 8 8 0 ‑ 6 5 7 0
東北公益文科大学 総合研究論集
第 39 号
交差車両のライト点灯が無信号交差点への進入行動におよぼす影響
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・神 田 直 弥 ・・・・・・3 CSCEプロセスにおけるフィンランドの役割
─ 北東アジア安全保障枠組における中立国の役割 ─ ・・・・・・・・・・・・・・玉 井 雅 隆 ・・・・・・23 戦後混乱期における生活困窮と援護の地域史
─ 1945年から1947年頃の山形県を素材にして ─ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・佐 藤 昭 洋 ・・・・・・43 山形県内企業のSDGs対応の現状と今後の進展に向けた一考察
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・倉 持 一 ・・・・・・69 英国におけるソーシャルワーカーの現状と質保証に関する制度の動向
─ 子ども・家庭領域に着目して ─ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・白旗希実子 ・・・・・・89 コロナ禍におけるソーシャルワーク実習の対応
─ オンライン実習プログラムの検討 ─ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・灰 谷 和 代 ・・・・・・99 改訂学習指導要領に見える中学校の総合的な学習の時間の課題と展望
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・梅 木 仁 ・・・・・109 設置当初の屯田兵による北海道防衛に関する一考察 ・・・・・・・・・・・・・・・門 松 秀 樹 ・・・( 1 ) 中国語圏における俳句の影響について
── 俳句の中国語訳を中心に(その三) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・呉 衛 峰 ・・・(19)
論集 39 号 執筆者一覧
神 田 直 弥 本学教員(人間工学)
玉 井 雅 隆 本学教員(国際関係論、多文化共生論)
佐 藤 昭 洋 本学教員(社会福祉施設史、社会福祉人物史)
倉 持 一 本学教員(企業の社会的責任、経営戦略論)
白 旗 希実子 本学教員(教育社会学、専門職論)
灰 谷 和 代 本学教員(子ども家庭福祉、ソーシャルワーク)
梅 木 仁 本学教員(社会科教育、教職課程)
門 松 秀 樹 本学教員(日本政治論、日本政治史)
呉 衛 峰 本学教員(日中比較文学)
研究論文
交差車両のライト点灯が無信号交差点への 進入行動におよぼす影響
神田 直弥
1.はじめに
無信号交差点における車両相互の出会い頭事故は発生件数の多い事故類型で ある。無信号交差点では一時停止標識や道路の幅員、進行方向により優先関係 が定められている。それゆえ、出会い頭事故は優先側道路を走行する車両が交 差点に接近、進入しつつある状況で、非優先側の車両が相手を優先することな く進入することにより発生することになる。無信号交差点における出会い頭事 故の発生メカニズムについて、非優先側運転者の行動に着目して分析を行った 神田・石田(2001)は、安全確認を行ったが交差車両を発見できずに進入する ことで事故に至る場合が多いと指摘している。
交差車両を発見するためには首振り確認を行う等の確認方法が重要であるが、
対象物の視認性や誘目性を高めることも有効である。視認性の向上には、対象 物と背景のコントラスト、照度、運動の有無、対象物の大きさが関係する
(Rumar, 1980)。車両と背景のコントラストを適度に保つためには、明るい色 の車を利用することがあげられる。白色やクリーム色等の明色のボディカラー の車両は、ダークグリーンや黒色のような暗色の車両よりも日中の視認性は高 い(Allen & Clark, 1964)。しかし、積雪時は白色の車両は見えづらい。また、
夕方や曇天時のように道路が影で覆われる低照度下においては、車両や背景の 輝度が低下するため、ボディカラーに関わらず車両の視認性は低下する。これ に対して、車両自体に光源を持たせる昼間点灯(Daytime Running Light; DRL)
は、低照度下においても適度なコントラストを保証する。
四 輪 車 の 昼 間 点 灯 は ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 を 中 心 に 広 く 実 施 さ れ て お り
(Commandeur, 2003; United Nations Economic Commission for Europe,
2002)、一部の国では法制化が行われている。昼間点灯による運転者への知覚
上の効果としては、非点灯車両は照度の低下に伴い検出可能な距離が減少する
一方、点灯車両の検出可能距離は照度に関わらず一定であること(Attwood,
1981)、中心視での観察場面において、点灯車両の方が誘目性が高まること
(Hörberg & Rumar, 1979)が明らかになっている。また誘目性には指標の輝 度や大きさよりも指標の空間上の配置、つまり離心率が関係する(Cole &
Hughes, 1984)が、接近車両が昼間点灯を行うと、車両の接近方向が正面から 30 度や 60 度の位置であってもライトの光度次第では検出可能距離が増大する
(Hörberg & Rumar, 1979)。また昼間点灯を実施している車両はそうでない車 両よりも接近しているように見えるという特徴を有する(Hörberg, 1977, Koornstra, et al., 1997 より引用)。先行車両の追い越し場面において対向車が ライトを点灯している場合は、そうでない場合と比較して、より遠方にいても 追い越しを断念すること、低照度下においてその傾向が顕著になることも確認 されている(Attwood, 1981)。
こうした知覚上の効果を持つ昼間点灯は、日中の車両相互の事故、とりわけ 追い越し時の正面衝突と、出会い頭事故の防止に有効であるという報告が多く な さ れ て い る(Tofflemire & Whitehead, 1997; Hollo, 1998; Sparks, et al., 1993; Cantilli, 1970; Stein, 1985)。一部、死亡事故の増加(National Highway Traffic Safety Administration, 2000)や、効果を疑問視する研究(Theeuwes
& Riemersma, 1995)もあるが、既存の研究のメタ分析を行ったElvik(1996)
は事故の減少を示しており、全体的には点灯効果は好意的に受け止められてい る。
ただし、昼間点灯の効果はライトの光度(Hörberg & Rumar, 1979)や照度 に依存する。昼間点灯が広く実施されているヨーロッパ諸国は比較的緯度が高 く、日照時間が短い。ヨーロッパにおける点灯効果の実験的な検討は、主に 1 万ルクス以下の照度で実施されている。点灯の効果と緯度の関係を示した Koornstra(1989)によれば、緯度の低下に伴い事故軽減効果も減少する。
ヨーロッパ諸国に比べて緯度の低いアメリカでは、より高い照度での効果の検 討が行われており、周辺視での観察事態において、ライトの光度によっては 43,040 ルクス以上でもより遠方で検出できることを示している(Ziedman &
Burger, 1993)。同様に緯度の低い日本では、昼間点灯に関する研究は、自動
二輪車を対象としたもの(松浦ら , 1991)や、点灯率を調べたもの(鈴木ら ,
2002)がある。ただし、四輪車の昼間点灯の影響を調べたものは、10,000から
20,000ルクス程度の照度になると、すでに車両自体の誘目性が高いため、点灯 による誘目性の向上の効果は小さいことを指摘した研究(GRE, 2003)に限ら れている。夏季の日中の照度は 10 万ルクスに達する場合もあり、より高い照 度での効果について検討する必要がある。事故の軽減効果については、都道府 県や企業レベルでの取り組みに関する実践報告のレビュー(交通工学研究会 , 2004)があり、軽減効果を指摘している。しかし、昼間点灯は企業内の安全活 動の一環として行われることが多く、効果に関する統計的検討は行われていな い。また、これらの報告では副次的な効果として点灯車両の運転者の意識高揚 が指摘されているが、昼間点灯車両が増加した場合は、意識高揚の効果が望め るかどうかは疑問であり、点灯車両に遭遇した車両の行動を調べる必要がある。
本研究では、無信号交差点において優先側道路を走行する車両の昼間点灯の 有無を操作することで、非優先側道路を走行する車両の進入行動がどのように 変化するかを実験的に検証する。これを通して、発生件数の多い無信号交差点 における出会い頭事故を防止する上での昼間点灯の有効性について検討する。
非優先側車両の進入行動は、進入時や通過待ち時の交差車両の交差点までの距 離であるラグを用いて評価する。一般に、ラグが大きい場合は受容(accept)
して先に進入する。一方で、ラグが小さいと判断をした場合は棄却(reject)
して通過待ちをする。昼間点灯の知覚的な効果を踏まえ次の2つの仮説を設定 した。
仮説1: 交差車両がライトを点灯している場合、より長いラグを棄却する。す なわち当該車両がより遠方にいる段階で通過待ちをするようになる。
仮説2: 仮説1の効果は照度に依存し、高照度になると効果が消失する。
以上の仮説を検証することを本研究の目的とする。
2.方法
見通しの悪い無信号交差点において、一時停止のある非優先側道路を交差点 に向けて走行する一般車両(以下、対象車両)の接近のタイミングにあわせ、
優先側道路より実験車両を走行させた。この際に前照灯の点灯有無を操作し、
ラグの大きさと対象車両の進入行動の関係を調べた。
2.1.調査地点
東京都内の郊外に位置する一時停止制御が行われた十字交差点5地点を対象 とした(交差点a~eとする)。いずれも対象車両が走行する非優先側道路から の左右の見通しが悪く、交差角はほぼ 90 度であり、道路反射鏡が設置されて いる。各交差点の緯度は概ね北緯35度40分である。
実験車両は 5 地点中 4 地点では対象車両から見て右方向より接近し、交差点 c のみ一方通行のため左方向から接近した。表 1 は交差点の特徴および日中の 1 時間あたりの交通量(3 時間計測の平均)である。四輪車は交差点の進入路 別に、他は合計で示している。対象車両が走行する非優先側道路の交通量が多 いのは交差点dとeであるが、dは直進が多く、eは直進と右折が多い。交差点 c と e は自転車が多いという特徴もある。表中のミラー視認距離は道路反射鏡 により視認可能な最大距離を左右方向それぞれ示しており、「停止線」は乗用 車の車両先端部が停止線上にある場合の視認距離、「入口」は交差道路の外側 線の延長線上に車両先端部が達した時の視認距離を示している。
表1 対象交差点のプロフィール
交差点 a b c d e
車線数(非優先
×優先) 1×2 1×1 1×1 1×1 1×1
幅員(m) 3.1×4.7 3.0×4.6 2.9×3.0 2.5×3.0 2.8×3.0
対象車両接近方向 東→西 北東→南西 西→東 北→南 南→北
実験車両接近方向 北→南 北西→南東 北→南 西→東 東→西
ミラー視認
距離(停止線) 右:220m
左:95m 右:148m
左:37m 右:設置無
左:42m 右:101m
左:12.6m 右:54m 左:52m ミラー視認
距離(入口) 右:220m
左:95m 右:91m
左:37m 右:設置無
左:58m 右:101m
左:14.1m 右:ミラー見えず 左:47m
*交通量
非優先1 86.4 49.7 51.6 127.0 162.0
非優先2 0.0 0.3 5.3 0.0 45.1
優先1 81.0 31.7 130 41.7 119.0
優先2 135.0 99.4 0.7 64.3 40.0
二輪車 40.7 37.9 19.1 26.1 98.5
自転車 149.4 184.3 245.7 136.0 360.2
歩行者 32.2 88.7 56.7 64.8 89.6
* 非優先1:対象車両が走行する進入路、非優先2:反対側の進入路、優先1:実験車両が走行する進入 路、優先2:反対側の進入路
2.2.実験装置
実験車両はセダンタイプの普通乗用車(ニッサンセドリック)を使用した。
ボディカラーはシルバーであり前照灯(ICHIKOH1523)を下向きで点灯した 際の最大光度は左右平均で 21,520cd である。車両には 3 台のカメラを設置し、
画面分割器を介し 30Hz で 1 本のテープに記録した(図 1)。カメラ 1 は道路前 景を撮影し、対象車両の進入行動と他の道路利用者の有無を撮影した。カメラ 2 は車速パルス信号を用いた速度計と距離計を撮影した。カメラ 3 は助手席側 外部、車両先端部より 150cm の位置に下向きに設置した CCD カメラであり路 面を撮影した。
この映像を活用し、対象車両が交差点に先に進入、または一時停止をした時 点でのラグを求めた。具体的には、あらかじめ定めた交差点入口にある横断歩 道等のマーキングがカメラ 3 で写された時点(α)と、カメラ 1 により対象車 両が進入した時点(β)(優先側道路の左側外側線の延長線を対象車両の車両 先端部が超えた時点)または停止した時点(β)(対象車両のタイヤが停止し た時点)を特定した。そして、カメラ 2 においてα -β間の距離計の値の変化 を確認し距離ラグを求めた。また映像のコマ送りによるα-β間のコマ数によ り時間ラグを求めた。対象車両が交差点内に頭を出した状態で一旦停止し、そ の後先に進入した場合は、発進をしたタイミングを基準点(β)とした。
なお、実験車両の交差点進入は交差道路の外側線の延長線上に車両先端部が 到達した時点と定義した。このため、カメラ(3)により路面のマーキングが
図1 記録映像のサンプル
写された地点とは、交差点により-0.68~2.58m の誤差がある。それゆえ距離 ラグを算出する上では補正を行った。ただし、時間ラグは、実験車両の速度に よって誤差となる距離の走行時間が異なるため補正が困難であり、そのままの 値を使用した。
2.3.手順
実験者は「合図者」「運転者」「同乗者」「観察者」により構成された。実験 車両を待機場所に停車し、発進準備ができた時点で助手席の同乗者が合図者に 携帯電話で連絡をした。待機場所は交差点への到達時間が 15~25 秒で他の交 通の妨げにならない場所である。合図者は対象車両が走行する非優先側道路上 に位置し、対象車両が規定の位置に到達した段階で同乗者へ出発の合図を出し た。規定位置は従道路を平均的な速度で走行した際に、合図者の出発直後に発 進した実験車両と交差点に到達するタイミングがほぼ同一となる地点であり、
予備調査により特定した。同乗者は合図を受け、運転者に発進の指示を出した。
指示のタイミングは合図と同時、3 秒遅れ、5 秒遅れであり、前照灯点灯有無 と組み合わせた 6 条件を順に実施した。タイミングを 3 種類としたのは、対象 車両が交差点に到達した際の位置関係が多様になるよう配慮したためである。
実験車両は発進後なるべく一定の速度で走行した。走行中、同乗者は安全確 保要員として注意を払い、交差点通過後は周回路を走行して待機場所で停車し 結果を記録した。観察者は対象交差点に位置し、対象車両の運転者、車両属性、
進入・通過待ちの別を記録すると共に、実験車両通過後に照度を計測、記録し た。観察者は可能な場合は 2 名で実施した。3 日間は 2 名の観察者が独立して 観察を行い結果の信頼性を調べた。観察項目の詳細は表2の通りである。
2.4.試行結果の区分
試行結果は、対象車両進入時における実験車両以外の交通参加者の有無によ り、(1)他の交通参加者の影響なし、(2)他の交通参加者の影響あり、(3)失敗
(実験車両が先に通過)に分類した。実路上での実験のため完全に他の交通参
加者が存在しない状況を作り出すのは困難であるため、a)交差点付近に歩行
者、自転車がいないこと、b)実験車両の後続車、対向車がいる場合は、交差
点への到達が実験車両の到達より 5 秒以上遅れていること、c)実験車両より も先に交差点に進入した車両がいる場合は、対象車両の交差点到達よりもタイ ミングが先であり、かつ実験車両の到達までに 10 秒以上時間があること、と いう3つの条件を全て満たす場合は(1)の影響なしとした。
2.5.実験日時
2004 年 9 月中旬から 10 月末の晴天時および曇天時に実施した。午前 10 時よ り開始し、一般車両が前照灯の点灯を開始するまで実施した。終了は照度が概 ね 100 ルクスになった時点であり 17~18 時の間であった。各交差点について 4 日から6日で計24日間実施した。
2.6.分析方法
実験車両のライト点灯の有無別に、対象車両のうちラグを受容して先に進入 した台数と、棄却して通過待ちをした台数を調べた。また表1に示す観察項目 が進入行動に及ぼす影響を調べるため、各観察項目と受容、棄却の関係を調べ た。観察者による観察には主観が含まれる可能性があることから、2 名の観察 者が独立して行った評定結果の一致度を求め、一致率が高い項目のみを分析に 使用した。一致率の算出には、偶然の一致を考慮した評定者間の一致の指標で あるCohenのκ係数を用いた。
表2 観察・調査項目
観察者 合図者 同乗者
時刻、車両ナンバー 運転者の性別、年代 車種、昼間点灯有無 交差点での停止状況 道路反射鏡による確認 有無
目視による確認有無 通過待ちの有無と具体 的な対象
コンフリクトの有無 その後の進行方向
時刻 車両ナンバー 車種 ボディカラー その他の特徴 運転者の性別 年代 昼間点灯有無
時刻 点灯条件 タイミング条件 試行結果
実験車両進入時の減速 有無
実験車両減速・停止時 の対象車両の影響
次に、受容したラグ、棄却したラグの大きさについて平均値と中央値をライ ト点灯の有無別に算出した。距離ラグは実験車両の走行速度によって同一の距 離であっても意味合いが異なることから、交差点までの到達時間である時間ラ グを使用した。
同様に時間ラグを用い、ラグの受容と棄却の閾値である臨界ラグの推定を 行った。推定には多くの方法が提案されているが、これらの比較を行った Brilon, et al.(1999)を参考にプロビットモデルへの当てはめによる推定を 行った。これは各運転者の受容ラグの対数が平均値μと標準偏差σをパラメー タとする正規分布にしたがうというモデルであり、次式であらわされる。
P= Φ(logD-μ / σ)= Φ(α+β logD)
ここで、Φは標準正規分布関数、P はラグ受容率、D はラグ時間である。こ のモデルでは受容率が50%に相当するラグ時間が臨界ラグとなる。
臨界ラグの推定をライト点灯別に他者の影響がない試行を対象として実施し た後、照度別、時間帯別にも推定を行った。
3.結果
1,795 試行中、他者の影響がない試行が 1,205 試行、影響のあった試行が 408 試行であった。他に、対象車両とのタイミングがあわず、対象車両が交差点に 到達する前に実験車両が先に進入してしまった試行や、観察者や同乗者の記録 項目に不備があった試行が合計 182 試行あり、失敗扱いとした。また、1,205 試行中 200 試行は対象車両の停止のタイミングが映像から特定できなかった。
このためこれらを除外した1,005試行分のデータをもとに分析を進めた。
観察者の観察結果について Cohen のκ係数を用いて一致度を調べたが、こ
の指標は0.75以上であれば非常に高い一致度であり、0.45以上であれば良く一
致しているという基準値がある(Fleiss, et al., 2003)。各観察項目について個
別にκ係数を算出した結果、表1に示す観察者の観察項目のうち、道路反射鏡
による左右確認有無のみκ =0.25となったが、それ以外の項目については0.45
を上回った。このため、本研究では道路反射鏡の確認有無については分析から
除外する。
3.1.ラグの受容状況
実験車両のライト点灯別に、ラグを受容した台数と、棄却した台数を調べた。
点灯条件は受容が277台、棄却が231台、非点灯条件ではそれぞれ286台、211 台であった。χ
2検定の結果は有意ではなく(χ
2=0.93, df=1, p>.05)、ライト 点灯により受容や棄却の台数に偏りは見られなかった。
次に、各観察項目につき、ラグ受容の有無とのクロス集計を行い、χ
2検定 を行って双方の関連を調べた。χ
2検定の結果が有意であったのは車種(χ
2=22.55, df=3, p<.01)、交差点での停止状況(χ
2=558.86, df=2, p<.01)、目 視による左右確認(χ
2=14.31, df=1, p<.01)であり、対象車両運転者の年代、
性別等の他の観察項目は有意ではなかった。また、実験を行った5つの交差点 も有意(χ
2=86.99, df=4, p<.01)であった。多重比較の結果、以下の結果が 得られた。
・ 事業用貨物車が、自家用乗用車、自家用貨物車、タクシーと比較して棄却 が多く、受容が少ない
・ 交差点でタイヤが完全に停止した場合は棄却が多く、タイヤが完全に停止 しない場合や減速のみの場合は受容が多い
・ 目視による左右確認を行った場合は棄却が多く、行わない場合は受容が多 い
・ 交差点 c、e では受容が多く、棄却が少ない。交差点 a、d では棄却が多く 受容が少ない(表3)
3.2.ラグの平均値・中央値・臨界値
ラグの大きさにより進入行動は変化する。時間ラグが9秒を超えると受容率 は 100%になったことから、ラグが 9 秒未満の試行を対象に、受容、棄却した
表3 交差点別の受容・棄却台数
受容 棄却 合計
交差点a 交差点b交差点c 交差点d交差点e
66 124126 15295
136 7670 10753
202 200196 202205
合計 563 442 1005
ラグの平均値、中央値をライト点灯の有無別に示したのが表4である。ライト 点灯により差が見られるかどうかを調べるため、t 検定および中央値検定を実 施した。その結果、受容(t=0.178, df=442, p>.05; χ
2=0.327, df=1, p>.05)、
棄却(t=0.518, df=440, p>.05; χ
2=0.587, df=1, p>.05)のいずれも有意な差 は見られなかった。
次に受容数を基準変数、点灯の有無を説明変数、時間ラグを共変量としてプ ロビットモデルへの当てはめを行った。Pearsonの適合度検定の結果は良好で あり、臨界ラグは点灯条件で4.61秒、非点灯条件では4.48秒となった。
3.3.照度・時間帯と進入行動
実験は10時から100ルクス程度になるまで継続しており、その間に照度が大 きく変化している。そこでライト点灯の有無別に照度と臨界ラグの関係を調べ た。照度を細かく区切ると各照度帯における対象車両の台数が減少し、分析結 果の信頼性が低下するため、各照度における車両の台数が200台程度を目安と
表4 点灯条件別受容、棄却時間の平均値・中央値
受容 棄却
平均 中央値 平均 中央値
非点灯点灯 5.59秒
5.62秒 5.57秒
5.63秒 2.73秒
2.66秒 2.53秒 2.33秒
図2 プロビットモデルへの当てはめによる臨界ラグの推定
して、(1)4,000 ルクス以下、(2)4,000~9,000 ルクス、(3)9,000~15,000 ルクス、
(4)15,000~55,000 ルクス、(5)55,000~100,000 ルクスの 5 つに分類した。図 3 は照度の区分ごとにプロビットモデルへの当てはめを行い、臨界ラグを推定し た結果を示したものである。4,000 ルクス以下、15,000~100,000 ルクスではラ イトを点灯していた場合の方が臨界ラグの値が大きいが、4,000~15,000 ルク スでは非点灯の場合に臨界ラグが大きい、または両者の間に明確な差が見られ なかった。
次に、時間帯別に臨界ラグを調べた。照度と同じく、対象車両の台数の減少 による分析結果の信頼性の低下を防ぐため、各時間帯における車両の台数が最 低でも200台を目安として、(1)10時~12時、(2)12時~14時、(3)14時~16時、
(4)16 時~18 時の 4 つに区分した。図 4 は各時間帯における臨界ラグをライト 点灯の有無別に示したものである。10 時~14 時、16 時~18 時ではライトを点 灯していた場合の臨界ラグが大きいが、14 時~16 時については非点灯の場合 の方が値が大きかった。
図3 照度別、ライト点灯有無別の臨界ラグ
ライトを点灯した場合に臨界ラグが高まらない照度と時間帯の関連を確認す るため、分析対象とした1,005試行について照度の5区分と時間帯の4区分での 内訳を調べた。表5において、太線で囲んでいる範囲がライト点灯時の臨界ラ グが高まらなかった領域であるが、照度と時間帯の双方に該当する表中の網掛 け部分の台数は他と比較しても多く、両者の間には一定の関係が見られる。
ただし、臨界ラグの大小が照度や時間帯以外の要因によってもたらされた可 能性もあることから、表 5 の網掛け部と網掛け部以外について表 2 の観察項目 に偏りが見られるかどうかχ
2検定をそれぞれ実施した結果、いずれも有意で はなかった。ただし、交差点については有意であり(χ
2=19.30, df=4, p<.01)、
網掛け部の領域では交差点cの試行数が少なく、交差点eの試行数が多かった。
交差点の偏りが臨界ラグに影響する可能性もあることから、交差点ごとに臨界 ラグを推定した結果を示したのが図 5 である。交差点 b、c ではライト点灯時
表5 照度別・時間帯別の試行数の内訳 4,000
以下 4,000-
9,000 9,000-
15,000 15,000-
55,000 55,000- 100,000 合計
10時- 5 26 51 86 112 280
12時- 3 33 55 56 59 206
14時- 49 111 60 69 30 319
16時- 142 47 11 0 0 200
合計 199 217 177 211 201 1005 図4 時間帯別、ライト点灯有無別の臨界ラグ
の臨界ラグの方が大きいが、交差点a、d、eでは差が見られないか、非点灯時 の方が大きな値になっていた。
4.考察
分析を行った全試行を対象にすると、優先側車両のライト点灯により非優先 側運転者の交差点進入時における通過待ち台数は増加せず、受容や棄却をした 際のラグの平均値、中央値も変化しなかった。また、受容と棄却の閾値である 臨界ラグも大きく変化することはなかったが、4,000 ルクス以下の照度の場合 には、ライト点灯により臨界ラグがやや大きくなった。これは交差車両がより 遠方にいても通過待ちをすることを意味し、運転行動が安全な方向に変化した といえる。先行研究においても昼間点灯は出会い頭事故防止に効果があること が確認されており(Sparkes, et al., 1993)、点灯による検出可能距離の増大や 誘目性の向上、より接近して見えるという知覚上の特性が遠方での通過待ちに つながったと考えられる。神田・石田(2001)は無信号交差点における出会い 頭事故における非優先側運転者の進入行動は主要な6つのパターンに分類でき ることを示しているが、このうちの1つである「交差車両を発見したが、先に 進入できると判断をして交差点に進入する」という行動に対して有効な対策に なり得ると考えられる。
4,000 ルクス以上の照度に着目すると、4,000~15,000 ルクスではライトの点 灯により臨界ラグは大きくならなかったが、15,000ルクスを上回ると再度臨界
図5 交差点別臨界ラグ
ラグの増大が見られた。臨界ラグの増大が照度の影響であるならば、照度の変 化に連動して、直線的な変化をすると予測される。したがって、今回の結果は 照度以外の要因が影響した可能性を検討する必要がある。図 5 に示すように、
交差点によってライト点灯の効果が見られる場合とみられない場合があること から、まずは、それぞれの交差点の特徴との関係でライト点灯の効果について 検討する。
ライト点灯により臨界ラグが増加しなかった 4,000~15,000 ルクスと 14 時~
16 時の交点の領域は交差点 e の試行数が多く、交差点 c の試行数が少なかった。
交差点 c はライトの点灯により臨界ラグが増大したが、交差点 e では変化が見 られていないこと、他の観察項目については、この領域での増加や減少が見ら れていないことから、交差点におけるライト点灯効果の違いが、4,000~15,000 ルクスでの点灯効果の消失に影響を及ぼしたと考えられる。
ライト点灯により臨界ラグに変化が見られなった交差点a、d、eのうち、交 差点 a は優先側道路が 2 車線であり、優先側道路の交通量が最も多い。そして 他の交差点と比較して対象車両のラグ棄却が多く、そもそも非優先側の通過待 ちが多い交差点である。交差点d、eは非優先側の交通量が多く、臨界ラグも3 秒から 3.5 秒程度であり、他の交差点と比較して、優先側車両がより接近した 状況で交差点に進入している。実験車両の交差点進入速度についても、交差点 の主効果は有意であり(F(4,1000)=95.67, p<.01)、交差点 d、e は他の 3 つの 交差点と比べて低速で進入している(表6)。一方でライト点灯の効果が見られ た交差点b、cは交差点a、d、eと比較して優先側、非優先側ともに交通量が多 くない。これらを踏まえると、交差道路の交通量が多く通過待ちが多い交差点 や、自車側の交通量が多く、交差車両が比較的低速で走行しており、小さいラ グで交差点に進入する交差点においては点灯の効果が見られない可能性がある。
交差点によりライト点灯の効果が異なるもう1つの説明理論として、垂直方
表6 実験車両の交差点への進入速度(km/h)交差点a 交差点b 交差点c 交差点d 交差点e 28.9 30.1 26.9 23.7 24.6
向の照度の影響が考えられる。今回は道路上に設置した照度計により照度測定 を行った。すなわち道路に対して水平方向の照度を計測した。しかし、日常の 運転場面を考えてみると、夕方に西日をまぶしく感じる時間帯がある。つまり 走行する方位によりライト点灯の効果が変化する可能性がある。方位の影響を 調べるためには、水平方向の照度のみでなく、道路に対して垂直方向の照度も 調べる必要がある。当該実験期間中には垂直方向の照度は測定していないため、
実験後に東西南北の各方位について垂直方向の照度計測を行った。計測をした のは 8 月中の晴天時である。結果は図 6 であるが、水平方向の照度は正午付近 に最も高くなり、この図では90,000ルクス程度に達し、その後は時間の経過に 伴い低下している。水平方向の照度と同様の変化を示すのは南方向であるが、
照度は最大でも60,000ルクス程度である。東方向は午前中に若干照度が高い時 間があるが、午後からは 10,000 ルクス程度で推移し、北方向は常に 10,000~
20,000ルクスで推移している。西方向は午後に急激に照度が高まっており、今 回ライト点灯の効果が見られなかった 14 時~16 時の時間帯は照度が高く、西 日をまぶしく感じる時間帯になっている。
今回は水平方向の照度が15,000ルクス以上の場合に、ライト点灯により臨界 ラグが増大したが、方位によっては垂直方向の照度はそれほど高くない場合が あり、それがライト点灯の効果につながった可能性がある。実験を行った5つ
図6 各方位の垂直方向の照度変化
の交差点における対象車両と実験車両の進行方向を方位で表現すると、ライト 点灯により臨界ラグが変化しなかった交差点 a、d、e のうち、a では対象車両 が西向きに走行しており、午後になると前方の照度が高くなる。また、交差点 d は対象車両が南向きに走行しており他の方位と比較して前方の照度が高い。
実験車両も西から東方向に走行しており、対象車両の運転者は西方向を確認す る必要がある。ライトを点灯した際に臨界ラグが増大した交差点b、cのうち、
交差点bは対象車両が南西に向かって走行し、実験車両は北西から南東に向け て走行しており、照度が高い方位が対象車両の進行方向正面からずれている。
交差点cでは対象車両は東方向に走行しており、実験車両は北から南方向へ走 行している。前方及び実験車両の走行する道路はいずれも垂直方向の照度が低 い方位である。
実験期間中に垂直方向の照度を測定していないことから、実際の照度は明確 ではないが、交差点におけるライト点灯の効果の違いをある程度説明可能であ り、より詳細な検討が必要である。
今回の実験は実路上で実施しており、交差点への進入行動には複数の要因が 影響する。ライト点灯の効果には交差点の影響がある可能性が示唆されており、
照度以外の影響も含まれるが、図 3 より 4,000 ルクスまでは点灯の効果が見ら れていることから、仮説1、仮説2とも認められたといえる。4,000ルクスとい う照度は、今回の実験期間中の照度変化からみると、晴天時では日没の 40~
60 分前、曇天時では 14 時半頃から見られる照度である。夕暮れ時の事故防止 対策の一環として、日没の1時間前からの前照灯の早め点灯の実施が推進され ているが(警察庁, 2020)、この有効性を裏付ける結果にもなった。
5.本研究の限界と今後の課題
本研究では照度や時間帯の区分を車両の台数に基づいて行っており、照度に おける 5 段階の区分や時間帯における 4 段階の区分に明確な根拠があるわけで はない。ライト点灯効果が見られる照度として 4,000 ルクスという基準を示し たが、前後の照度下におけるデータ収集を継続的に行うことで、この基準の妥 当性について検証する必要がある。
また、対象車両や観察対象車両が走行する方位により進入行動が影響を受け
る可能性を示したが、垂直方向の照度が、交差車両のライト点灯時における交 差点進入行動に及ぼす影響については、実際の照度計測を行った上での詳細な 検討が必要である。
今回は実験車両の前照灯の点灯を操作したが、2016 年には保安基準の改正 があり、昼間走行灯が採用され光度の基準が定められた。昼間走行灯と前照灯 では光度が異なることから、本研究の結果を昼間走行灯を使用した場合にその まま適用できるかどうかは検討の余地があり、昼間走行灯を用いた同種の研究 も必要である。
付記
本論文は、日本交通心理学会第 71 回大会において発表したデータを再分析 したものである。
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研究論文
CSCEプロセスにおけるフィンランドの役割
─ 北東アジア安全保障枠組における中立国の役割 ─ 玉井 雅隆
1.はじめに
モンゴルとフィンランドは、どちらもロシア(ソ連)の隣国であるという地 理的条件が共通している。また安全保障環境に関しても、モンゴルは中ロ両大 国に挟まれた国家であり、またフィンランドは大国であるロシアに隣接すると いう条件があり、そのような地理的・安全保障的環境から中立国であることを 選択している。しかしながら、両国を取り巻く安全保障の面から検討した場合 には、異なった状況にある。
冷戦期の欧州は東側、西側と非同盟・中立諸国の三陣営に分かれており、特 に東西両陣営はイギリスの元首相チャーチル(Winston Churchill)が言うよ うに、「シュテッチンからトリエステまで」鉄のカーテンが下ろされている状 況であり、欧州大陸の真ん中で分断されていた。この状況は東欧革命によって 東側諸国の共産主義体制が崩壊し、ソ連が消滅したことによって変化した。現 在ではワルシャワ条約機構諸国のうち CIS 諸国以外は EU や NATO に加盟し、
民主主義・人権並びに法の支配に関する共通規範を有するに至っている。
他方アジア地域においては、ロシア研究の第一人者である下斗米が指摘する ように「アジアには冷戦構造が残存して」おり、南北朝鮮や中国・台湾の政治 的・軍事的対立や、尖閣諸島をめぐる日中対立、竹島をめぐる日韓対立や中国 が進出を行っている南シナ海など、欧州のような対立構造は世界的な冷戦が終 結して 30 年が経過した今もって残存している
1。さらに市場経済、民主主義、
法の支配を基本的な価値規範とみなす日本、韓国、台湾及びモンゴルと、共産 主義国である中国、北朝鮮や権威主義国家に分類することが可能であるロシア など、政治体制や政治規範に関しても様相を異にしている。
冷戦期の欧州では現在の北東アジアと同じ状況であった。特にフィンランド
1 下斗米伸夫(2004)『アジア冷戦史』中央公論新社。この他、従軍慰安婦問題や徴用工問題など、歴 史問題もしばしば国家間の主要な対立要素になる。
はソ連からの外交的な圧力が存在していたが、東西間の緊張緩和のために欧州 安全保障協力機構(CSCE)構想を推し進めた。1960年代にフィンランドは東 西間の対話のために元々ソ連提案であった東西の対話組織構想に注目し、1975 年のヘルシンキ宣言に至った。
アジアにおいても中国は 2001 年に、1996 年に設置された上海ファイブを改 組した上海協力機構(SCO:Shanghai Cooperation Organization)設立の音頭 を取った。OSCE と SCO はどちらも地域的国際機構であり、国家間の協調を 目的としている。しかしながら SCO がアジアの全ての国を加盟国としていな いことなどから、OSCEと異なった要素を有している。
本稿では、CSCEにおけるフィンランドの役割に関して分析した後、北東ア ジアにおける協調的安全保障の可能性やモンゴルの果たしうる役割に関して分 析を行う。
2.CSCEプロセスにおけるフィンランドの役割
1975年8月1日にアルバニアを除く全欧州諸国、アメリカ及びカナダの35カ 国の代表がヘルシンキに集まり、ヘルシンキ最終議定書(Helsinki Final Act)
に署名した。最終議定書署名に至る前には、西側と東側諸国の仲介役として フィンランドが関与していた。本章では、CSCE交渉におけるフィンランドの 役割に関して論じていく。
地理的には、フィンランドは大国であるソ連や現在のロシアが隣国として存 在し、政治的にも 1919 年の独立までフィンランドはロシア皇帝をフィンラン ド大公とするフィンランド大公国であった。また、西側の国境に隣接するス ウェーデンは独立当初はオーランド諸島の帰属を巡り紛争が発生、国際連盟理 事会に提訴する事態になるが、国際連盟による裁定後には関係は改善された。
しかしながらスウェーデンは中立政策をとっており、フィンランドにとっては 安全保障面では関係性がなかった。そのために、フィンランドは単独で隣国の ソ連、ロシアに安全保障上の政策面の配慮を必要とした。
実際に、ソ連はフィンランド内戦(Finnish Civil War、1918 年)をはじめ として冬戦争(Winter War、1939 年~1940 年)、継続戦争(Continuation War、
1941 年~1944 年)など数度にわたりフィンランドと交戦しまたは干渉してい
た
2。戦後もフィンランドに対しては、「覚書危機」などのような内政干渉をし ばしば行っていた
3。このような状況を踏まえ、フィンランドの外交方針は西側 体制に組み込まれたデンマーク、アイスランドとノルウェー、中立のスウェー デンと並んでソ連寄りの中立方針を採用していた
4。即ちフィンランドの外交方 針はソ連を刺激しない、という点に特徴があった。
特に安全保障問題に関しては、フィンランドは自国を経由してソ連に侵攻す る軍事力を自国のみで排除することで、ソ連の内政や安全保障政策への介入を 防止すると同時に、ソ連の安全保障に関する「不安感」を払拭する政策を自国 の安全保障政策の根幹とした
5。ソ連もそのようなフィンランドの方針に関して は尊重し、基本的にはフィンランド内政に関しては他の善隣友好条約を締結し た東欧諸国とは異なって、先に上げた「覚書危機」以外は不干渉政策をとった。
また、フィンランド外交の第一目的は、東西両陣営の対話並びにその仲介で あった。
この状況下において東西両陣営のデタントによる緊張緩和は、フィンランド 外交のフリーハンドを増やすことになったが、同時にアメリカおよびソ連に よって自国の関与しない安全保障の「ディール」が行われる可能性も存在して いた。先にあげた冬戦争では、フィンランドは汎スカンジナビア主義に基づく スウェーデンやノルウェーなどの他のスカンジナビア諸国や、国際連盟の理事 国である英仏が集団的安全保障体制に基づく介入を行うことを期待していた。
しかし実際にはソ連の国際連盟からの追放にとどまり、他のスカンジナビア諸 国からは義勇兵の派遣にとどまることとなった。また、冬戦争終結後も英仏は 対ナチス・ドイツ戦の同盟国としてのソ連との協力を選択し、そのためにフィ ンランドはドイツと同盟を締結した上で失地回復のために継続戦争を行うこと となった。換言すると、フィンランドの頭越しに欧州の大国であった英仏とソ
2 この点に関しては、百瀬宏(1972)「フィンランドの対ソ関係 , 1940-1941 年 : 「継続戦争」前史に関 する覚書」『スラヴ研究』16、 209-249頁参照。
3 この点に関しては、近年の研究では髙木道子(2014)「転換期フィンランド外交の論理と実践─ コイ ヴィスト外交再評価」『法政論集』(名古屋大学)253、89-144頁参照。
4 これは「ノルディック・バランス」と呼ばれるものである。
5 1948 年に締結されたフィンランド・ソ連友好協力相互援助条約は、同じ枢軸国であったハンガリー やルーマニアと締結された同様の条約とは異なり、フィンランドを経由したドイツ並びに同盟国の 攻撃に際してソ連は支援するというものであった。すなわち、ソ連が攻撃を受けた場合に自動的に フィンランドに参戦義務を課すものではなく、軍事同盟ではなかった。
連が手を握り、フィンランドは安全保障の名目で自国領土を割譲することと なった。
この様な自国の頭越しでの取引を阻止し、かつ東西両陣営の対話を実施する ために1967 年には、フィンランドはソ連との間で会合を持った。その主要議題 はソ連がフィンランドの中立の地位を承認することであった。即ち中立の地位 を確認することで、東西間の仲介者としての立場を確保することが目的であっ た。善隣条約(Agreement of Friendship, Cooperation, and Mutual Assistance
(FCMA)) 第 2 条をめぐり両国は対立するものの、最終的にはブレジネフ書記 長は1967年4月24日に仲介者としての中立国の立場を承認するに至った
6。 このようなソ連の承認を受けフィンランドは1969年5月にCSCE構想の呼び かけを、他の欧州に位置する中立国であるオーストリア、スイスとスウェーデ ンに行った。先にも検討したように、オーストリアは比較的好意的であったも のの、スイスは懐疑的見解をフィンランドに対して示した。しかしながら、ど ちらの国も共通して安全保障に関して関与することには賛同を示しており、東 西両陣営の「ディール」による安全保障の「ミュンヘン化」の阻止を図る点に おいては利害が一致していた。これら中立国の同意を得たのちに、同月にはア メリカ、カナダと東西ドイツを含めた全欧州諸国に対してフィンランド外務省 は覚書(Finnish Memorandum)を送付した。この覚書の中には、フィンラン ド政府は多国間交渉(Multilateral Talks)のホスト国になる用意がある旨記 されていた。
このようなフィンランド政府の努力を諒とし、1972 年にはヘルシンキ郊外 のディポリ市において、フィンランド駐在の各国大使のお茶会という形で準備 会合(Dipoli Talks, Multilateral Consultations)が開始された。その後、ジュ ネーブに舞台を移し、詳細な交渉が行われることとなった。この交渉が最終的 には、1975年のヘルシンキ最終議定書に結実することになる
7。
6 Thomas Fischer(2009)Neutral Power in the CSCE: The N+N States and the Making of the Helsinki Accords 1975, Baden-Baden: Nomos Verlagsgesellschaft,pp.100-101.
7 John J.Maresca(2016)Helsinki Revisited, Ibidem-Verlag, Jessica Haunschild U Christian Scho; UK ed. Edition,pp.19-49.,Patric G.Vaughan(2008)Zbigniew Brzezinski and the Helsinki Final Act,in Leopoldo Nuti(2008)The Crisis of Détente in Europe: From Helsinki to Gorbachev 1975-1985, Routledge,pp.11-25.
3.フィンランドとCSCE再検討会議
CSCEプロセスの一つの特徴は、ヘルシンキ最終議定書に関してその履行状 況を確認する、再検討会議(FUM:Follow-up Meeting)がベオグラード、マ ドリッドとウィーンにおいて開催されたことである。次にこの再検討会議にお けるフィンランドの役割に関して検討を行っていこう。
ヘルシンキ最終議定書署名後、CSCEプロセスでは再検討会議の他にもハン ブルク科学フォーラム(CSCE Hamburg Scientific Forum)やストックホルム 軍 縮 会 議(CSCE Stockholm Meeting of the Conference on Confidence and Security Building Measures and Disarmament in Europe)などが開催され るが、フィンランドでは 1985 年に、ヘルシンキ首脳会議 10 周年を記念した CSCE10 周年記念首脳会議(CSCE 10
thAnniversary Meeting)が開催された のみであった。
表1.主なCSCE各種会合
開催年 会議名
首脳会議など
1973-1975 ジュネーブ準備会議(Geneva Preparation Meeting)
1975 ヘルシンキ首脳会議(Helsinki Summit Meeting)
1985 ヘルシンキ最終議定書10周年記念首脳会議
(Commemorative Meeting on the 10thAnniversary of the Final Act)
再検討会議
1977-1978 ベオグラード再検討会議(Belgrad Follow-up Meeting)
1980-1983 マドリッド再検討会議(Madrid Follow-up Meeting)
1986-1989 ウィーン再検討会議(Vienna Follow-up Meeting)
1992 ヘルシンキ再検討会議(Helsinki Follow-up Meeting)
専門家会合
1978 モントルー紛争の平和的解決に関する専門家会議
(Montreux Experts Meeting on the Peaceful Settlements of Disputes)
1979 ヴァレッタ紛争の平和的解決に関する専門家会議
(Valletta Experts Meeting on the Peaceful Settlements of Disputes)
1984 アテネ紛争の平和的解決に関する専門家会議
(Athens Experts Meeting on the Peaceful Settlements of Disputes)
1985 オタワ人権専門家会議(Ottawa Experts Meeting on the Human Rights)
1986 ベルン人的接触専門家会議(Bern Expert Meeting on Human Contacts)
1990 ソフィア環境保護専門家会議
(Sofia Meeting on the Protection of the Environment)
フォーラム
1981 ハンブルク科学フォーラム(Hamburg Scientific Forum)
1985 ブダペスト文化協力フォーラム
(Budapest the Forum on Cultural Co-operation)
1990 ロンドン情報フォーラム(London Information Forum)
(冷戦期に開催されたもの、フィンランド関係は冷戦後のものも掲載)
しかしながらフィンランドは安全保障問題に関し、いくつかの提案を再検討 会議に提出している。冷戦期の各種会合においてホストになることはないが、
それでもフィンランドは CSCE プロセスに関与する意思を示し続けたのであ る
8。表2ではCSCEプロセスの一つの転換点であったウィーン再検討会議(1986 年~1989年)におけるフィンランド提案である
9。様々な提案が出されているが、
オーストリアやスイスなどの他の非同盟・中立諸国とともに提案したもののほ か、デンマークなど他の北欧諸国と共に提出した提案、また東ドイツやポーラ ンドと共に提出した提案など、共同提案の相手は多岐に渡っている。冷戦期の CSCE交渉では、東側、西側、非同盟・中立諸国はそれぞれの陣営の国家と共 同提案を行うことが多い。そのために、このフィンランドの多岐に渡る共同提 案国に関しては、フィンランドのソ連からの相対的な外交的フリーハンドの獲 得という目的がCSCE交渉においてある程度達成されていると考えることが可 能であろう。
8 フィンランドの見解としては、Klaus Krokfors(1986)Finland’s activity in the CSCE, in Kari Möttölä
(1986)Ten Years After Helsinki:The Making of the European Security Regime, Routledge, pp.147- 166.
9 ウィーン再検討会議冒頭の外相級会合において、新思考外交を展開していたシュワルナゼ(Eduard Amvrosievich Shevardnadze)ソ連外相が人権再検討会議のモスクワ招請を表明し、外交団を驚か せた。Stefan Lehne(1991)The Vienna Meeting of the Conference on Security and Co-operation in Europe, 1986-1989, Boulder : Westview Press, p.127. このシュワルナゼ演説(CSCE/WT/VR.3)に 関しては、西側諸国のうちアメリカは単なるソ連によるアピール戦略の一環とみなし、冷淡な反応 であった。イギリス、カナダ及びフランスも同様の見解を抱いていたが、西ドイツは好意的に見て いた。当初アメリカは傍観の態度をとったが、1987 年に入りソ連がユダヤ人の出国を認め、政治犯 の釈放や家族の再結合に関して積極的な姿勢を見せてからは、このソ連の姿勢を評価するようになっ ていった。なお、この演説は後にCSCE/WT.2(1986年12月10日提出)として、正式に提案化された。
アメリカの姿勢に関しては、Commission on security and co-operation in Europe, From Vienna to Helsinki:Reports on the inter-sessional meeting of the CSCE process, p.14も参照
表2.ウィーン再検討会議におけるフィンランド提案 Doc.No 日程 提案国
WT.15 環境保護の将来への発展 1987年
2月3日 デンマーク フィンランド アイスランド
ノルウェー スウェーデン
WT.16 ECEの枠組における大気汚染への対処方法の将来への発展 1987年
2月3日 デンマーク フィンランド アイスランド
ノルウェー スウェーデン
WT.17 海洋環境の汚染に関する防止と保護努力の将来への発展 1987年
2月3日 デンマーク フィンランド アイスランド
ノルウェー スウェーデン
WT.18 オゾン層の保護に関する予防的方策に関して 1987年
2月3日 デンマーク フィンランド アイスランド
ノルウェー スウェーデン
WT.44
1987年
2月13日 オーストリア キプロス フィンランド
リヒテンシュタイン マルタ サンマリノ
スウェーデン スイス ユーゴスラヴィア
WT.98 少数的言語によって著された文学作品の翻訳、出版および普及の促進 1987年
2月27日 フィンランド ハンガリー デンマーク
ギリシア アイスランド ノルウェー
ポーランド スウェーデン トルコ
WT.110 人権と基本的自由に関する情報の普及並びに人権侵害時の救済に関して 1987年
3月10日 オーストリア フィンランド スウェーデン
スイス
WT.125 紛争の平和的解決 1987年
4月10日 オーストリア キプロス フィンランド
リヒテンシュタイン マルタ サンマリノ
スウェーデン スイス ユーゴスラヴィア
WT.126 テロリズム 1987年
5月22日 オーストリア キプロス フィンランド
リヒテンシュタイン マルタ サンマリノ
スウェーデン スイス ユーゴスラヴィア
WT.128
死刑廃止
1987年
6月5日 オーストリア デンマーク フィンランド
西ドイツ アイスランド ルクセンブルク
ノルウェー ポルトガル スペイン
スウェーデン
WT.135 ウィーン再検討会議の継続に関して 1988年
3月4日 オーストリア キプロス フィンランド
リヒテンシュタイン マルタ サンマリノ
スウェーデン スイス ユーゴスラヴィア
WT.137 ウィーン再検討会議の最終文書 1988年
5月13日 オーストリア キプロス フィンランド
リヒテンシュタイン マルタ サンマリノ
スウェーデン スイス ユーゴスラヴィア
WT/H.4 若者の教育に関する協力 1987年
2月23日 ハンガリー フィンランド 東ドイツ WT/E.11
1987年
6月25日 オーストリア キプロス フィンランド
リヒテンシュタイン マルタ サンマリノ
スウェーデン スイス ユーゴスラヴィア
ウィーン文書では、CSCE プロセスのうち人権に関する再検討会議(CHD : CSCE Conference on Human Dimension)が 1989 年パリ、1990 年コペンハー ゲン、1991 年モスクワ、1992 年ヘルシンキにて開催された。このうち、パリ CHD では東西対立が残存していたものの、コペンハーゲン CHD、モスクワ CHD、ヘルシンキCHDでは冷戦終結後でもあり、東西間の人権規範に関する 対立はもはや存在しなかった
10。
そのためこれまでとは異なり、コペンハーゲン CHD ではフィンランドは東 側、西側、非同盟・中立諸国の提案に賛同することに対しバランスを考慮する 必要はなくなり、人権分野で西側諸国との共同提案に賛同することが多くなっ ている。
10 しかしながら、モスクワ CHD では同性愛の権利に関する提案に対してバチカンが反対するなど、
新たな対立軸も生じていた。
表3.コペンハーゲン人的側面会議におけるフィンランド提案 Doc.No 日付 提案国
CHDC.1 CHDメカニズム
6月5日
オーストリア キプロス フィンランド リヒテンシュタイン マルタ サンマリノ
スウェーデン スイス ユーゴスラヴィア
Add.1 6月19日 ポルトガル CHDC.13 死刑廃止
6月8日
オーストリア デンマーク フィンランド アイスランド アイルランド サンマリノ Add.1 6月15日 スイス
CHDC.16 自由に関する法の支配
アイルランド/EC オーストリア ブルガリア
カナダ CSFR フィンランド
東ドイツ ハンガリー リヒテンシュタイン
モナコ ノルウェー ポーランド
ルーマニア サンマリノ トルコ
ソ連 ユーゴスラヴィア モナコ
Add.1 6月26日 マルタ
Corr.1 6月14日 キプロス スイス CHDC.25 1991年開催の少数民族専門家会議
6月14日
スイス フィンランド ハンガリー リヒテンシュタイン スウェーデン ソ連 イギリス
Add.1 6月19日 マルタ ユーゴスラヴィア Add.2 6月27日 デンマーク
CHDC.30 受刑者の移送
6月15日
アイルランド/EC CSFR フィンランド ノルウェー ポーランド サンマリノ ユーゴスラヴィア
CHDC.31 子どもの権利
6月15日
アイルランド/EC ブルガリア カナダ
CSFR フィンランド 東ドイツ
ポーランド サンマリノ スウェーデン
スイス トルコ ソ連
Add.1 6月20日 ユーゴスラヴィア Add.2 6月20日 マルタ
Add.3 6月21日 ハンガリー Add.4 6月22日 ルーマニア
CHDC.43 最終文書案 6月27日
オーストリア フィンランド ハンガリー スイス
表4.モスクワ人的側面会議におけるフィンランド提案 Doc.No 日付 提案国
CHDM.1 国家緊急事態における人権や基本的自由 9月11日 ソ連
Rev.1 9月25日 エストニア Rev.1/
Add.1 9月27日 フィンランド Rev.1/
Add.2 9月30日 アルバニア CHDM.7 CSCE人的側面メカニズムの拡大
9月19日
ノルウェー アルバニア オーストリア
ブルガリア CSFR エストニア
フィンランド ハンガリー アイスランド ラトヴィア リヒテンシュタイン リトアニア ポーランド ルーマニア サンマリノ
スウェーデン スイス ソ連
Add.1 9月23日 イタリア ルクセンブルク Add.2 9月24日 デンマーク
CHDM.13 男女平等
9月20日
カナダ CSFR デンマーク
フィンランド ハンガリー アイスランド
オランダ ノルウェー ポーランド
スペイン スウェーデン スイス
ソ連 Add.1 9月25日 トルコ
Add.2 9月26日 ユーゴスラヴィア Add.3 9月30日 アルバニア CHDM.14 先住民族の権利
9月23日
カナダ デンマーク フィンランド
アイスランド ノルウェー スウェーデン ソ連
Add.1 9月26日 ギリシア CHDM.16 多元的民主主義社会におけるNGO
9月24日
デンマーク フィンランド フランス ノルウェー
Add.1 9月26日 ユーゴスラヴィア
CHDM.34 死刑廃止
ポルトガル スウェーデン オーストリア
ベルギー キプロス CSFR
9月25日
デンマーク エストニア フィンランド
フランス ドイツ ギリシア
アイスランド イタリア ラトヴィア ルクセンブルク オランダ ノルウェー ルーマニア サンマリノ スペイン
スイス ソ連
表5.ヘルシンキ再検討会議におけるフィンランド提案
Doc.No 日付 提案国
HM.1 CSCEマイノリティ高等弁務官
4月15日
オランダ オーストリア ベルギー
デンマーク エストニア フィンランド
ドイツ ハンガリー アイスランド
アイルランド イタリア ラトヴィア リヒテンシュタイン ルクセンブルク マルタ
ノルウェー ポーランド ロシア
スウェーデン
Add.1 6月5日 アゼルバイジャン ジョージア Add.2 6月10日 スイス
Add.3 6月16日 キルギスタン Add.4 6月22日 ウクライナ HM.4 NGOの実質的関与
6月8日
オーストリア CSFR フィンランド
ハンガリー リトアニア ノルウェー
ロシア スウェーデン
HM.7 ヘルシンキ首脳会議の議題 7月3日 フィンランド HM.8 首脳会議の諸実務的事項
7月3日 フィンランド
HM/WG1/1 CSCEの枠内における平和維持活動のアウトライン
4月6日
オーストリア カナダ CSFR
デンマーク エストニア フィンランド
ハンガリー アイスランド ノルウェー ポーランド スロヴェニア スウェーデン
スイス ウクライナ
Add.1 6月16日 キルギスタン