( 8 3 )
研究報告 :秋田大学医学部保健学科紀要 1 3( 1 ): 8 3‑8 9 ,2 0 0 5
国際交流 における短期研修事業の効果的な取 り組み 一 タイの海外研修生の受 け入れ経験か ら‑
大 津 諭樹彦 工 藤 俊 輔
要 ヒ 日 ユ
当専攻では 2 0 0 4 年 9 月 2 4 日から 2 3 日間にわたりタイか ら理学療法士の研修生を受け入れた.そこで,今後の海外研 修生受け入れの体制作 りに寄与することを目的に,研修生受け入れか ら学んだ経験を紹介 し,今後の課題について提 案する.今回の研修目的は,地域での健康増進を効果的に進めるための知識と技術を習得すること,理学療法教育に ついて学ぶこと,そして日本の文化 ・慣習を理解することであった.研修終了後の評価は,研修生による講義に参加 した本専攻学生のアンケー ト結果か ら,有意義な講義であったと回答を得た.また,研修生か らのアンケー ト結果か らも,研修内容が満足い くものであったことが示された.今後の課題は,帰国後の研修成果の評価を実施 し,長期的 なフォローアップをすることである.将来的には,国立 コン・ケエン大学理学療法学専攻と本専攻間の国際交流へと 広がっていくことが期待された.
Ⅰ. は じめ に
当専攻 で は 2 0 0 4 年 9 月2 4 日か ら同年 1 0 月1 6 日までの
2 3 日間 にわ た りタイ国立 コ ン ・ケ エ ン大 学 ( Kho n Ka e nUni v e r s i t y ) か ら理学療法士 の研修生 を受 け入 れた.海外研修生 の受 け入 れ は,本保健学科 と して初 めての経験 で あ り,多 くの ことを学 ぶ機会 とな った.
海外研修生受 け入 れ は,本専攻 にお ける国際交流 ・ 協力への貢献 とい う意味か ら,今後 ます ます重要 にな
る と思 われ る. あわせ て, 「国際的視野 を持 って医療 活動 を遂行 で きる人材 の育成」 と謡 われて いる保健学 科 の基本理念 の基,本学科学生 に対す る教育的意義 も 大 きい と考 えて いる.
そ こで,今後 の海外研修生受 け入 れの効果的 な体制 作 りに寄与 す ることを 目的 に,今回の研修生受 け入 れ に際 して,筆者 らが実施 したプ ログラム と,研修生受 け入 れか ら学 んだ経験 を紹介 し,国際交流 ・協力 にお ける今後 の課題 につ いて提案 したい.
Ⅱ.研修生 の紹介
今回 の研修生 は, タイ東北部 の コ ン ・ケエ ン県 にあ る国立 コン ・ケエ ン大学理学療法学専攻所属 の理学療 法士 で あ った.研修生 の専門分野 は筋骨格系理学療法 領域で,臨床ではク リニ ックでのスポーツ リハ ビリテー シ ョン,地域 にお ける高齢者 の健康増進 に携 わ って い た. また, タイマ ッサー ジ協会 の メ ンバ ー と して, タ イ マ ッサ ー ジの指 導 的 立 場 に もあ った. さ らに,
Co mmuni t yBa s e dRe ha b i l i t a t i o n ( 地 域 社 会 に根 ざ した リ‑ ビ リテ ‑ シ ョン :以下 CBR l )とす る) に 関わ り,地域保健 サ ー ビスの向上 に従事 して いた.
コン ・ケエ ン大学 は 1 9 6 4 年 に設立 された国立大学で, 医学部,看護学部 などの医学系の学部 の他 に,農学部, 建築学部 な ど 1 6 の学部 と大学院 を持 っ, タイ東北部 の 中核大学 であ る.
研修生 の所属す る理学療法学専攻 で は,大学院 を設 置 して い る. また,農村部 にお ける CBR プ ログ ラム の推進 など,地域住民 の健康増進 に大 きな役割 を果 た
秋田大学医学部保健学科理学療法学専攻 Ke yWo r ds : 国際交流
タイ
海外研修生
して い る.
Ⅲ . タ イ の 概 要
タ イ は東 南 ア ジ ア に位 置 し, ラオ ス, カ ンボ ジ ア, ミ ャ ンマ ー , マ レー シ ア に 囲 ま れ て い る. 国 土 面 積 は 51 万 4 千 km
2で , 人 口 は 63. 5 百 万 人 で あ る. 言 語 は タ イ語 を 使 用 し宗 教 は 95% が 仏 教 で あ る. 主 要 輸 出 産 業 は, コ ン ピ ュ ー タ ー, 集 積 回 路 等 の 工 業 で あ るが , 就
表 1 タイ と 日本 の医療,保健 ,福 祉 の比較
タ イ 日 本
乳 児 死 亡 率 ( 出生 千 対) 2 0 3 平 均 寿 命 ( 年)男/女 6 5. 3 /7 3. 5 7 7. 9 /8 5 . 1 初等教育就 学率 ( %)男/ 女 1 0 0 /9 6 1 01 /1 01 人 口 ( 百万人)
理 学 療 法 士 数
医 師 数
看 護 師 数
6 3. 5 1 2 7 . 8 7 5 0 2 0, 0 0 0 2 2, 7 3 0 2 4 8, 61 1 9 4, 0 4 8 9 8 5, 8 21 文献 3 ), 4) より作成
業 人 口 の 約 4 割 を 農 業 が 占 め て い る
2). 一 人 当 た り の 国 民 総 所 得 ( GN I ) は, 6, 680 米 ドル で , 日本 の 26, 07 0 米 ドル と比 較 して 低 く3 ) , 医 療 , 保 健 , 福 祉 の 状 態 も
日本 に比 べ 低 い状 況 に あ る ( 表 1).
コ ン ・ケ エ ン県 が 位 置 す る東 北 地 域 は, タ イ の 中 で も特 に経 済 状 況 が 悪 く, 医 療 , 保 健 の 向 上 に コ ン ・ケ エ ン大 学 の果 た す 役 割 は大 き い.
タ イ の 理 学 療 法 士 協 会 は ア ジ ア理 学 療 法 連 盟
5)に 加 盟 して お り, 2002 年 に ア ジ ア理 学 療 法 連 盟 学 会 が タ イ で 開 催 さ れ た . そ の 学 会 に筆 者 らが 参 加 した こ とが , 今 回 の 研 修 生 受 け入 れ の き っか け と な っ た .
Ⅳ. 研 修 プ ロ グ ラ ム の 概 要
今 回 の 研 修 に要 した経 費 は, 日本 理 学 療 法 士 協 会 の 運 営 す る海 外 研 修 生 奨 学 金 制 度
6)か ら拠 出 さ れ た .
日本 理 学 療 法 士 協 会 の海 外 研 修 生 奨 学 金 制 度 は 拍〕 2 年 に設 立 され , これ ま で 韓 国 , パ キ ス タ ン, ラオ ス. ,
タ イ, ベ トナ ム等 か ら 1 2 名 を 受 け入 れ て き た. 過 去 の 研 修 生 の 受 け入 れ 機 関 は, 関 東 , 関 西 な ど都 市 部 の 病
表 2 研修 プ ログ ラムの スケ ジ ュール
研