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( 8 3 )

研究報告 :秋田大学医学部保健学科紀要 1 3( 1 ): 8 3‑8 9 ,2 0 0 5

国際交流 における短期研修事業の効果的な取 り組み 一 タイの海外研修生の受 け入れ経験か ら‑

大 津 諭樹彦 工 藤 俊 輔

要 ヒ 日 ユ

当専攻では 2 0 0 4 年 9 月 2 4 日から 2 3 日間にわたりタイか ら理学療法士の研修生を受け入れた.そこで,今後の海外研 修生受け入れの体制作 りに寄与することを目的に,研修生受け入れか ら学んだ経験を紹介 し,今後の課題について提 案する.今回の研修目的は,地域での健康増進を効果的に進めるための知識と技術を習得すること,理学療法教育に ついて学ぶこと,そして日本の文化 ・慣習を理解することであった.研修終了後の評価は,研修生による講義に参加 した本専攻学生のアンケー ト結果か ら,有意義な講義であったと回答を得た.また,研修生か らのアンケー ト結果か らも,研修内容が満足い くものであったことが示された.今後の課題は,帰国後の研修成果の評価を実施 し,長期的 なフォローアップをすることである.将来的には,国立 コン・ケエン大学理学療法学専攻と本専攻間の国際交流へと 広がっていくことが期待された.

Ⅰ. は じめ に

当専攻 で は 2 0 0 4 年 9 月2 4 日か ら同年 1 0 月1 6 日までの

2 3 日間 にわ た りタイ国立 コ ン ・ケ エ ン大 学 ( Kho n Ka e nUni v e r s i t y ) か ら理学療法士 の研修生 を受 け入 れた.海外研修生 の受 け入 れ は,本保健学科 と して初 めての経験 で あ り,多 くの ことを学 ぶ機会 とな った.

海外研修生受 け入 れ は,本専攻 にお ける国際交流 ・ 協力への貢献 とい う意味か ら,今後 ます ます重要 にな

る と思 われ る. あわせ て, 「国際的視野 を持 って医療 活動 を遂行 で きる人材 の育成」 と謡 われて いる保健学 科 の基本理念 の基,本学科学生 に対す る教育的意義 も 大 きい と考 えて いる.

そ こで,今後 の海外研修生受 け入 れの効果的 な体制 作 りに寄与 す ることを 目的 に,今回の研修生受 け入 れ に際 して,筆者 らが実施 したプ ログラム と,研修生受 け入 れか ら学 んだ経験 を紹介 し,国際交流 ・協力 にお ける今後 の課題 につ いて提案 したい.

Ⅱ.研修生 の紹介

今回 の研修生 は, タイ東北部 の コ ン ・ケエ ン県 にあ る国立 コン ・ケエ ン大学理学療法学専攻所属 の理学療 法士 で あ った.研修生 の専門分野 は筋骨格系理学療法 領域で,臨床ではク リニ ックでのスポーツ リハ ビリテー シ ョン,地域 にお ける高齢者 の健康増進 に携 わ って い た. また, タイマ ッサー ジ協会 の メ ンバ ー と して, タ イ マ ッサ ー ジの指 導 的 立 場 に もあ った. さ らに,

Co mmuni t yBa s e dRe ha b i l i t a t i o n ( 地 域 社 会 に根 ざ した リ‑ ビ リテ ‑ シ ョン :以下 CBR l )とす る) に 関わ り,地域保健 サ ー ビスの向上 に従事 して いた.

コン ・ケエ ン大学 は 1 9 6 4 年 に設立 された国立大学で, 医学部,看護学部 などの医学系の学部 の他 に,農学部, 建築学部 な ど 1 6 の学部 と大学院 を持 っ, タイ東北部 の 中核大学 であ る.

研修生 の所属す る理学療法学専攻 で は,大学院 を設 置 して い る. また,農村部 にお ける CBR プ ログ ラム の推進 など,地域住民 の健康増進 に大 きな役割 を果 た

秋田大学医学部保健学科理学療法学専攻 Ke yWo r ds : 国際交流

タイ

海外研修生

(2)

して い る.

Ⅲ . タ イ の 概 要

タ イ は東 南 ア ジ ア に位 置 し, ラオ ス, カ ンボ ジ ア, ミ ャ ンマ ー , マ レー シ ア に 囲 ま れ て い る. 国 土 面 積 は 51 万 4 千 km

2

で , 人 口 は 63. 5 百 万 人 で あ る. 言 語 は タ イ語 を 使 用 し宗 教 は 95% が 仏 教 で あ る. 主 要 輸 出 産 業 は, コ ン ピ ュ ー タ ー, 集 積 回 路 等 の 工 業 で あ るが , 就

表 1 タイ と 日本 の医療,保健 ,福 祉 の比較

タ イ 日 本

乳 児 死 亡 率 ( 出生 千 対) 2 0 3 平 均 寿 命 ( 年)男/女 6 5. 3 /7 3. 5 7 7. 9 /8 5 . 1 初等教育就 学率 ( %)男/ 女 1 0 0 /9 6 1 01 /1 01 人 口 ( 百万人)

理 学 療 法 士 数

医 師 数

看 護 師 数

6 3. 5 1 2 7 . 8 7 5 0 2 0, 0 0 0 2 2, 7 3 0 2 4 8, 61 1 9 4, 0 4 8 9 8 5, 8 21 文献 3 ), 4) より作成

業 人 口 の 約 4 割 を 農 業 が 占 め て い る

2)

. 一 人 当 た り の 国 民 総 所 得 ( GN I ) は, 6, 680 米 ドル で , 日本 の 26, 07 0 米 ドル と比 較 して 低 く3 ) , 医 療 , 保 健 , 福 祉 の 状 態 も

日本 に比 べ 低 い状 況 に あ る ( 表 1).

コ ン ・ケ エ ン県 が 位 置 す る東 北 地 域 は, タ イ の 中 で も特 に経 済 状 況 が 悪 く, 医 療 , 保 健 の 向 上 に コ ン ・ケ エ ン大 学 の果 た す 役 割 は大 き い.

タ イ の 理 学 療 法 士 協 会 は ア ジ ア理 学 療 法 連 盟

5)

に 加 盟 して お り, 2002 年 に ア ジ ア理 学 療 法 連 盟 学 会 が タ イ で 開 催 さ れ た . そ の 学 会 に筆 者 らが 参 加 した こ とが , 今 回 の 研 修 生 受 け入 れ の き っか け と な っ た .

Ⅳ. 研 修 プ ロ グ ラ ム の 概 要

今 回 の 研 修 に要 した経 費 は, 日本 理 学 療 法 士 協 会 の 運 営 す る海 外 研 修 生 奨 学 金 制 度

6)

か ら拠 出 さ れ た .

日本 理 学 療 法 士 協 会 の海 外 研 修 生 奨 学 金 制 度 は 拍〕 2 年 に設 立 され , これ ま で 韓 国 , パ キ ス タ ン, ラオ ス. ,

タ イ, ベ トナ ム等 か ら 1 2 名 を 受 け入 れ て き た. 過 去 の 研 修 生 の 受 け入 れ 機 関 は, 関 東 , 関 西 な ど都 市 部 の 病

表 2 研修 プ ログ ラムの スケ ジ ュール

修 内 容 宿 泊

9月 2 4 日 ( 金) 成 田国際空港着,秋 田市 着 9月 2 5 日 ( 土) 本学 公 開講座 にて紹介 9月 2 6 日 (日) 秋 田市 内観光

9 月 2 7 日 ( 月) 研修 スケ ジュールの打 ち合 わせ,大学 内 の説 明, 秋 田県 の医療 ・保健 ・福祉事情 の説 明

9月 2 8 日 ( 火) 秋 田大学 医学部付属病 院見学 専攻 内英 文抄読会参加 ,歓迎会 9 月 2 9 日 ( 水) レポー ト作成

9 月 3 0 日 ( 木) ケア タウ ンたか のす見学

1 0 月 1 日 ( 金) 介護老人保健施設 ニ コニ コ苑見学 ,適所 リ‑見学 1 0 月 2 日 ( 土) 自由

1 0 月 3 日 (冒) 秋 田市 内観光

1 0 月 4 日 ( 月) 理学 療法 教育 につ いて の意見交換, 秋 田大学 医学部付属病 院見学 1 0 月 5 日 ( 火) 秋 田市保 健所機能訓練事 業見学

1 0 月 6 日 ( 水) タイマ ッサ ー ジの講義 ,森岳温泉病 院見学 1 0 月 7 日 ( 木) 太平 療育 園見学

レポー ト作成

1 0 月 8 日 ( 金) 授業参加 ,意 見交換, 秋 田県 内の研修 の ま とめ 1 0 月 9日 ( 土) 角館観光

1 0 月 1 0 日 (日) 国際 フェステ ィバ ル参 加 1 0 月 1 1日 ( 月) 東京移動

1 0 月 1 2 日 ( 火) 東京大学 医学 部付属病 院見学 1 0 月 1 3 日 ( 水) けや きの家見学

1 0 月 1 4 日 ( 木) 第 31 回国際福 祉機器展 参加

1 0 月 1 5 日 ( 金) 横浜市総 合 リ‑ ビ リテ‑ シ ョンセ ンター見学 1 0 月 1 6 日 ( 土) 成 田国際空港発

秋 田大学学術交流 会館 秋 田大学学術交流会館 ホ ー ム ス テ イ ホ ー ム ス テ イ ホ ー ム ス

ホ ー ム ス テ イ

ホ ー ム ス テ イ

ホ ー ム ス テ イ

ホ ー ム ス テ イ

ホ ー ム ス テ イ

秋 田大学学 術交 流会館

秋 田大学学術交 流会館

秋 田大学学術交流 会館

秋 田大学学術交流 会館

秋 田大学学術交流会館

秋 田大学学術交流会館

秋 田大学学術交流会館

ホ ー ム ス テ イ

ホ ー ム ス テ イ

ホ ー ム ス テ イ

ホ ー ム ス テ イ

成 田 空 港 周 辺 ホ テ ル

(3)

大津諭樹彦/国際交流 における短期研修事業 の効果的な取 り組 み

院 ・T )‑ ビ リテ‑ シ ョンセ ンターで あ ったが,今 回 は じめて地方都市 の大学 にて研修生 を受 け入 れ ることと な った.

今 回 の研修 目的 は,主 に地域 での健康増進 を効果 的 に進 め るた めの知識 と技術 を習得 し, タイの CBR の 発展 に寄与 す る ことで あ った.加 えて 日本 の理学療法 教育 につ いて学 び, コ ン ・ケエ ン大学 の教育 に活用 し て い くことで あ った. また, 日本 の文化 ・習慣 を理解 す る こと も研 修 目的 に含 まれて いた.

研修 に向 けて の準備 は,研修生 が来 日す る前 か ら電 子 メールを利 用 して始 め られ,研修生 の研修 目的 を確 認 しっっ,研修 プ ログ ラムを立案 した.研修生 との渡

図 1 タイマッサージの実演を熱心に見学する学生

( 85 )

航前 の電子 メールのや りとりは, 2 0 回以上 にわた った.

研修 プ ログ ラムは表 2 に示 す とお りで あ る.秋 田県 の医療 ・保健 システムの理解 を 目的 に,病 院,介護老 人保健 施設,保健所 ,適所 リハ ビ リテー シ ョンの見学 を主 に,研修 内容 と して組 み立 てた. さ らに, 医療 ・ 保健 の地域差 を把握 す る目的で,関東地域 での病 院, 小児施設の見学 を研修後半 に取 り入 れた. また,医療 ・ 福祉機 器 の知識 を深 め る目的で,第 3 1 回国際福祉 機器 展 へ の参加 をプ ログ ラムに取 り入 れ た.

理学療法教育 の理解 には,本専攻教員 との意見交換, 授業 へ の参加 を取 り入 れ た.加 えて,本専攻 の学生 が 国際的視野 を広 げ る機会 にな る ことを期待 して,研修 生 によるタイマ ッサー ジの講義 と実演 を行 った ( 図 1) .

今 回 の研修 で は,研修生 か ら研修後 に レポー トの提 出を課 す ことで,受 け身 にな りが ちな研修 を,積極 的 な研修参加 へ と促 せ るよ うに工夫 した. また,研修 の 最終 日には, 当大学 か ら研修修 了証 明書 を研修生 に授 与 し, 研修生 の業績 に も繋 が るよ うに配慮 した.

そ して,本学教員宅 へ の ホームステイによ って, 冒 本文化 の体験 と理解 を深 め られ るよ うに工夫 した.

Ⅴ. 研修 の評価

今 回 の研修 を評価 す る目的で, タイマ ッサ ー ジの講 義 に参加 した 2 年生への無記名の 5 段階評価 のア ンケー トと,研修生 へ の ア ンケー トとイ ンタ ビューを実施 し た.

表 3 タイマッサージに関する学生のアンケー ト結果 自由記載のコメン トから抜粋 今回のテーマはあなたにとって興味深いもので したか ?

・テレビで しか見たことがなかったので, タイマッサージを実際に見 られて良かった.

・日本で行なわれている徒手療法 とどのように違 うのかに興味がある.

・タイに興味がわいた.

今回の講義を受けて,タイの理学療法について興味を持ちましたか ?

・タイマッサージの他に,どのような点が日本の理学療法 と違 うのか気になった.

・理学療法士が土地によってどのような工夫,やり方をしているのか興味を持 った.

・タイの文化に基づいた技術を取 り入れていて面白か った.

今回の講義はあなた自身の国際的な視野を広めることに役立ちましたか ?

・タイについて少 し知 ることが出来た し, もっと様々な国の特徴を知 りた くなった.

・語学の必要性を感 じた.

・いろいろな国の文化に触れることは, とてもいい刺激になる.

・理学療法の手技についていろいろな国の方法を見ることは勉強になる.

今後 も海外の理学療法について,講義を受けたいと思いましたか ?

・日本だけでな く各国の理学療法を学ぶことで,視野が広がると思 う.

・もっと自分の視野を広げたい.

・ヨーロッパやアメ リカの理学療法について知 りたい.

・戦争,特に地雷による被災者への リ‑ ビリテーションについて知 りたい.

・スポーツ障害に対する各国の理学療法について知 りたい.

(4)

1 .学生 によるタイマ ッサ ー ジ講義の評価

タイマ ッサージの講義 に参加 した学生 1 8 名のアンケー ト結果か ら,大多数 の学生 が今回の タイマ ッサー ジの 講義 を有意義 な ものと受 け止 めていた ことが分か った.

質問項 目の 「 今回のテーマはあなたに とって興味深 い もので したか」では, とて も興味深 い もの と答 えた 学生が 1 6 名 で全体 の 8 9 % を 占め,少 し興味があ ったが 2 名 ( 1 1 %) であ った. 「 今 回の講義 を受 けて, タイ の理学療法 につ いて興味を持 ちま したか」 の質問 に対 して は,おおいに興味を持 ったが 1 0 名 の 5 6 % ,少 し興 味 を持 ったが 8 名 ( 4 4%) で あ った. また, 「今回 の 講義 はあなた 自身 の国際的 な視野 を広 げることに役立 ちま したか」 には,おおいに役立 ったが 1 1 名 ( 6 1 %) , 少 し役立 ったが 7 名 ( 3 9 %) で,「 今後 も海外 の理学 療法 について,講義 を受 けたいと思 いますか」 につい て は, 1 8 名 ( 1 0 0 %) 全 てが おお いに思 うと答 えて い た. いずれの回答 にも,興 味を持てなか った,役立 た なか ったとす る回答 は 0名 (0 %)であ った.

ア ンケー トの各質 問に対 す る, 自由記載 の結果 を表

3 に示 した.今 回の講義 をきっかけに, タイやその他 の国の理学療法 について, 知見 を深 めていきたいとい う意見が多 く見 られた.学 内教育 における海外研修生 と学生 との交流か ら, グローバルな視点 が育 まれ るこ とが報告 されてお り

7)

,今回の講義 も同様 に,学生 の国 際的視野を広 げる大 きな機会 になったことが示 された.

2. 研修生 による研修の評価

研修生 自身への研修 内容 に関す るア ンケー トと, ア ンケー ト結果 に基づ いたイ ンタ ビューか ら,今回の研 修 の成果 と課題 が明 らかにな った. ア ンケー トの結 果 か らは,概ね研修 内容が研修生 にとらて,満足 い くも のであ ったことが示 された ( 表 4) .

研修期間につ いて は, 2 3 日間では短か った と回答 さ れていた.研修期間 は,研修生 自身 の研修計画 に沿 っ て決定 された ものの,保健,医療事情 の理解 と,理学 療法教育 の システムの理解 を十分 に図 るには,期間的 な制限があったことも事実である. しか し現実的には, 奨学金 の資金的制限 によ り長期研修 が困難であ り, ま た当専攻で研修 に関われ る人員数 に制限があ った. こ の ことか ら,受 け入 れ機関である本学専攻 と して はり 妥 当な研修期間であ ったと考 えている.

研修 目的の到達度 に対す る質問で は, おおいに達成 された と回答 されて いた.研修生へのイ ンタビューで は, 日本 の,特 に秋 田県 の保健,医療,福祉 の状況 に つ いて,多 くの施設見学や当専攻教員 との議論 を通 し て,理解 を深 めることがで きた と高 く評価 していた小 今回 は高齢者 に関わ る施設見学 を主 に取 り入 れた、 こと か ら,高齢化が進 む タイ

8)

に とって,非常 に参考 にな

る研修 内容であ った と述べていた.

また,秋 田県 と関東地域での施設見学がで きた こと で, タイの農村地域 と都市部 との対比 の視点か ら,研

表 4 研修生へのアンケー ト結果 1.研修期間は十分でしたか.

= 短かった 2)ちょうど良かった 3 )長かった 2.今回の研修は満足するもので したか.

1 )まったく 2 )あまり 3 )どちらとも 4)すこし 3. 今回の研修であなた自身の研修目的は達成されましたか.

1 )まったく 2 )あまり 3 )どちらとも 4)すこし

4. 当大学の設備には満足 しましたか.

1 )まったく 2 )あまり

=

とても満足 した

おおいに達成された

どちらとも 4 )すこし 5 ) とても満足 した

5. 宿泊先には満足 しましたか

1 )まったく 2 )あまり 3 )どちらとも 4) すこし

6. 日本の食事で問題はありましたか.

1 )あった

I なかった

7.日本の文化について学ぶことができましたか.

1 )まったく 2 )あまりL 3 )どちらとも 4) すこし

とても満足 した

おおいに学べた アンケー ト結果は日本語に訳 した.

回答番号の○は研修生の回答 した箇所である

..

(5)

大津諭樹彦/国際交流における短期研修事業の効果的な取 り組み

修経験を タイに応用で きると述べていた.

理学療法教育 の理解 に関す る研修 目的の達成度 は, 授業見学が 1 回だけだ った こともあ り, さ らに多 くの 授業見学 を希望す る発言が聞かれた. この ことにつ い ては,研修期間の制限か ら,研修内容 を保健,医療 シ ステムの理解 に絞 っていた こと,そ して本専攻の授業 自体が 日本語 で進め られてお り,常時通訳 しなが ら授 業を進めることの困難か ら,授業見学数 の制限が生 じ た. また研修期間が秋季休業 と重 な った ことも,授業 見学 の回数 に影響 していた.今後,理学療法教育 の理 解 を主 とす る研修生 に対 しては,言語や適切な研修時 期 などの対策 が必要 と考え られた.

当専攻 の設備 についての満足度 の質問では, どち ら 七 もいえないという回答であった.今回 は研修生の レ ポー ト作成 のためなどに,当専攻の一室 を利用 し,常 設の コンピューターを使用 して もらった. しか しなが ら, タイか ら持参 した コンピューター周辺機器が 日本 の コンピューターに対応せず,データの保存や加工が で きない事態 も発生 した. この点 について は,今後 の 研修生の受 け入れに際 して, 自国か ら持参 した周辺機 器が機能 しない場合 もあることを事前 に伝えるなど, 対策が必要 と考え られた.

その他,宿泊先の満足度 や 日本文化 の理解 について の質問では,非常 に高 い評価が得 られた.特 に今回は, ホームステイを取 り入れた ことで, 日本文化の理解 に 大 き く寄与す ることがで きた と述べてお り,今後 も研 修生 の受 け入れに際 しては,積極的に検討 したい.

さ らに今回 は食事 に関す る問題 は生 じなか ったが, 海外研修生 の受 け入れに際 しては,大 きな問題 に発展 す ることもある.研修生 の宗教や文化的慣習 に気 を配 り,今後 も トラブルが発生 しないよ うに配慮 してい く ことが重要 である.

Ⅵ.本短期海外研修事業のステージ別の対応

本研修で は, 2 3 日間の短期研修 とい うこともあ り, 円滑 な研修 を進めるために,研修 プ ログラムを大 きく 準備期,実施期,終了期のステー ジに分 けて, それぞ れで適切 な対応 に努 めた.

まず,準備期 には,研修生 と受 け入れ機関が明確 な 目的を共有 し,事前 のプ ログラム把握 を徹底す ること に努 めた.電子 メールでの頻回のや りとりは,お互 い の研修 に対す る目的意識 を構築す る上で重要 な過程 に な った.

また,研修が開始 された実施期 には, プログラムの 確認作業 とフィー ドバ ックに努めた. プ ログラム開始 に際 しては,全体のプログラムの確認か ら始 ま り, そ

( 87 )

の後 は 1 週間のプ ログラムの確認,翌 日のプログラム の確認 と, プログラム内容の確認を綿密 に行 な った.

さ らに, 1 日の終わ りには研修内容 について, フィー ドバ ックを行 ない, コ ミュニケーションを図 った.

そ して,研修 の最終 にあたる終了期 には,研修生か らの研修 レポー ト提 出やア ンケー トなどを通 して,研 修 に対す る評価 を実施 し,研修 の成果 と課題 を明確 に した. この ことで,研修生が 自分 自身で研修 の内容 を 整理す る作業 に繋が り, また受 け入れ機関 も今後 に経 験 を繋 げ られ る作業 にな った.

Ⅶ. 国際交流 ・協力 に関する今後の課題

海外研修生受 け入れの研修成果 は,研修生が帰国 し てか ら, いかに研修か ら得 た知見を本国に応用 してい けるかが重要である

9,10)

. この点 につ いて は,帰 国後 に研修生の所属す る大学で研修報告会 を行 うことで, 知見の共有化 を図 ることを確認 した.今後 もフォロー ア ップを行 いなが ら,本研修 の長期的な効果 につ いて 検討 していきたい.

また, 日本の システムをそのまま タイに導入す るこ とは困難であることか ら, タイの事情 に合わせた形で 研修成果を応用 してい く必要性があ ることが, イ ンタ ビューで述べ られていた.海外研修生受 け入れは,逮 上国か らの受 け入れが主 となるため, 日本 との技術格 差 によ り研修 による習得技術が途上国で役 に立たない こともある

11)

. よ って, 日本 の技術 を研修生 の国で利 用で きる適正技術へ と転換す るなど,研修内容の開発

も必要であることが分か った.

さ らに,海外研修生受 け入れは,学術的な成果だけ でな く,研修生の国の文化理解 と日本文化の紹介など, 文化的交流 の場 に もなる.今回 は,教員 との関わ りを 通 した文化交流が中心であったが,今後 は研修生 のカ ン トリー レポー ト 1 2 )などを通 して,学生 との交流 をさ らに深 め られ るよ うに,働 きか けていきたいと思 う.

今回の研修生受 け入れを機 に,将来的 にはコン ・ケ エ ン大学理学療法学専攻 と本専攻問の国際交流‑ と広 が って い くことが期待 され る.特 に CBR に関わ る共 同研究 を視野 に入れ,友好関係 を深 めていきたい と考 えている.

また,学生 の交換留学や学生間の国際交流1 3 ) ,海外

研修‥ 与 ,海外臨床実習1 5 )など,学生 の国際的視野 の育

成 に も努めていきたい.

(6)

ⅦⅠ .おわ リに

今回の研修 は,期間的制約,対応人員数 の制限など の課題 を抱 えなが らも,研修生 の研修 目的に合わせて プログラムを遂行す る努力が図 られたと考える.また, 受 け入れ機関 と しての大学 のメ リッ トも活か され,地 域 のネ ッ トワークを利用 した幅広 い見学 をプログラム に取 り込む ことができたと考 え られた.

ア ンケー ト結果か らは,良好 な評価 を得 られたが, 幾っかの課題 も指摘 された.

今回の研修を通 して,我 々 も日本の医療,保健 シス テムを再確認す る機会 にな った.そ うい う意味で,宿 外研修生受 け入れは,相互 の良 い学習機会 になったと 考え る.

今後 は,今回の経験 を活か し, よ り充実 した海外研 修生 の受 け入れを展開 していきたい.

謝 辞

今回の研修生受 け入れに際 して, ご協力頂 いた理学療法 学専攻教員及 び関係者の方 々に,深 く感謝 申 し上 げます.

文 献

1 )中西由起子,久野研二 :障害者の社会開発.明石書店, 東京 ,1 9 9 7

2 )外 務 省 :各 国 ・地 域 情 勢 . タイ王 国. (オ ンライ ン) 入 手 先 ( ht t p: / / www. mo f a. go. j p / mo f a j / a r e a / t ha i l a nd / d a t a . ht ml ) ( 参照 2 0 0 4 ‑ 1 0 ‑ 1 2 )

3 ) 国連人 口基金 :世界人 口白書 2 0 0 4 . 家族計画国際協力

財団,東京 ,2 0 0 4

4 ) 内山靖,奈良勲 :リハ ビリテー ション各専門領域 の国 際動 向 理学療法.総合 リ‑ ビ リテ‑ ション 3 0: 5 ( ) 7 ‑ 5 1 1 ,2 0 0 2

5 ) 渡辺純 :世界の理学療法士 の動向.理学療法 白書 2 0 0 0 . 社 団法人 日本理学療法士協会, 東京, 2 0 0 0 ,p p1 9 2 ‑ 2 0 7

6 )田口順子 ' .国際ステー ジにおける理学療法士の活動 と 今後の課題.理学療法 白書 2 0 0 0 . 社団法人 日本理学療 法士協会,東京 ,2 0 0 0 ,p p 2 1 6 ‑ 2 2 5

7 )堀 内成子,有森直子 ・他 :国際協力 にむけての看護教 育.看護教育 4 4: 1 0 5 4 ‑ 1 0 5 9 ,2 0 0 3

8)中村優‑,一番 ヶ瀬康子 :タイの社会福祉.世界 の社 会福祉.旬報社,東京 ,1 9 9 8 ,p p 5 1 ‑ 1 0 2

9)村上睦子 :国際交流 一開発途上国 との看護交流‑

Pe r i n a t a lCa r e 夏季増刊 : 5 1 ‑ 5 7 ,2 0 0 1

1 0 ) 鈴木洋子 ・他 :看護職研修受 け入れ.国際保健医療協 力‑ ンドブック.国立国際医療 セ ンター編著,東京, 2 0 0 1 ,p p 2 1 6 ‑ 2 2 2

l l ) 丸井英二 :卒後研修生 の受 け入 れ. 医学教育 2 5: 7 2‑

7 4 ,1 9 9 4

1 2 ) 秋 田裕 :横浜 リ‑ セ ンターにおける海外研修生 の受 け 入れ状況.第 1 0 回記念海外技術協力セ ミナー.東京, 2 0 0 2 ,p p 3 4 ‑ 3 5

1 3 ) 安村建介 :医学生 レベルの国際交流 システム.医学教 育 2 5: 1 0 5 ‑ 1 0 7 ,1 9 9 4

1 4 ) 牧野俊郎,山本保博 :課外 に学生 を東南 アジア諸国へ.

医学教育 2 5: 9 8 ‑ 1 0 0 ,1 9 9 4

1 5 ) 田村昇,井上有希子 ・他 :卒前 カ リキュラムの一貫 と

しての海外臨床実習.医学教育 2 5: 8 4 ‑ 8 7 ,1 9 9 4

(7)

大滞諭樹彦/国際交流 における短期研修事業の効果的な取 り組み

Ef f e c t i v eAppr oac ht oSho r t ‑ Te r m Tr ai ni ngAc t i v i t i e s i nI nt e r nat i o nalExc hange

‑ Expe r i e nc ewi t haTr ai ne ef r o m Thai l and‑

Y uki hi ko OsÅ1 1 ' Å Shuns uke KUDO

Cour s eofPhys i c alThe r apy,Sc hoolofHe al t hSc i e nc e s ,Aki t aUni v e r s i t y

( 8 9)

Wer e c e i v e daphys i c alt he r apyf r o m Thai l a ndf orape r i odo f2 3daysf r om 2 4 t hSe pt e mbe r2 0 0 4.The

pur pos eoft hi spape ri st os har eoure xpe r i e nc ei nor de rt oc ont r i but et ot hede v e l opme ntofane f f e c t i v e

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参照

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