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英語科教育分科会

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Academic year: 2021

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英語科教育分科会

 英語科における教科教育研究の主題としては,研究所のアンケート結果とにらみあわせ て,「教科内容の研究」に一応焦点をしぼりはしたが,問題の性質上,数度にわたる話合 いの中で論ぜられたことは,時には「英語教育の本質と目的」にさかのぼり,時には「関 連諸科学」に及び,さらには具体的な「指導方法研究」にまで発展する場合もあり,あら ためて教科教育に期待する学問的性格の複雑さに思いをいたした次第である。分科会とし てまとまった結論はまだ何も得ていない現時点では,話合いの中から浮かび上った「教科 内容の研究」をめぐる間題点なり,研究方向なりを列記して,分科会の報告としたい。

 (一一一一t) 新しい言語理論と英語教育

 2っの国語を学習することによって,ことばのしくみ・はたらきに関心をもたせ,言語 に対する意識を深めさせることに外国語教育の目標の一・面があるとすれば,少くとも外国 語教育にたずさわる者が,言語とは何か,という問題を避けて通ることは許されない。教 科内容の編成・構造・精選,あるいは教科研究の本質・方法など,すべてこの言語観の確 立につながるものである。もちろん従来ともそれぞれの学問の分野で,それぞれの解釈が 言語に対して与えられてはいるが,われわれは外国語教育という観点からあらためて言語 のもつ特質を検討し,それを教科内容とどうからみあわせて考衆るか,ということから討 議を出発させた。

 園を海外の言語理論に転ずると,わずか過去10年あまりの問に,アメリカの構造主義言 語学から,:N.Chornskyの変形生成文法,さらにバイクやラムの理論と,新しい言語学の 成果が目まぐるしいまでに次々と紹介され,わが国の英語教育界にも大なり小なりそれぞ

れの影響を及ぼしている現状である。・

 われわれとしては,「言語学が英語教育に対してなしうる寄与は間接的なものであり,

この寄与自体,過大に評価されてはならない」(安井稔:「現代英語教育」Feb.1969)と する指摘は当然であり,次々に出現する新しい言語理論に英語教育がいたずらに追随する 愚を厳にいましめたい。と同時に,教科教育学の樹立を希求するわれわれの当面の課題と しては,常に内外の言語理論の動向を検討し,普遍的なものは何かを追求しわが国独自の 英語教育の領域に体系化と科学性をもたらすような方向に研究を進めていきたい。

(二) 心理学からのアプローチ

「教科内容の研究」は当然「言語習得過程の研究」につながるものであり,学習心理学

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138 教育研究所紀要第一号

的研究の収集は欠かすことのでぎない基盤である。最近のめざましいpsycholinguisticsの 研究成果は,われわれに幾多の示嵯をもたらした。ことばと人闘の心のはたらきの結合の 諸相,特に言語発達と言語体系の関係や,国語発達に及ぼす教育効果の研究,経験的関連

(Reference to Experience)・洞察(Insight)学習転移(Transfer)e動機づけ(Motivation)

の原理等々,外国語としての英語教育の面にいろいろな形ですでに深く浸透してきつつあ る。従って分科会の研究方向としては,B. F. Skinnerを中心とするS−R理論から再吟味 して,audio−lingwal methodの基本的な前提の幾つかに心理学的考察をくわえていこう としている。

 具体的作業としては,John:B. CarrolのThe Study of:Languageを基本テキストにして 討議iを重ねているが, 。A langua.ge is a structured system of arbitary voca王sounds and sequences of sou.nds which is used, or can be used, in interpersonal communi−

cation by an aggre.g ation of human beings, and which rather exhaustively catalogs the things, events ca nd processes in the human environme!ユt。  とする彼の言語の定 義から,「構造化された体系(system)としての言語」「対人関係におけるコミュニケイ ションの手段としての言語」 「音声を基本とする言語」 「恣意的(arbitary)な習慣をも つ言語」といった言語の諸相を確認する初歩的段階から,Audio−Lingtial Habit Theory 批判にまで達するには,今後相当の討議回数を重ねる必要があろう。

 (三) 教室における実践的研究

 理論的研究一づ聖至1は往々にしてわれわれを国籍不明の外国語教育に引きずりこむ危険を はらんでいる。われわれは日本人学習者を対象とした英語教育を研究するのであって,外 国における実験データをそのまX適用しえないことは当然である。従って分科会において は,付属校側の,実態にもとずく多年の実証的研究の成果こそ,「教科内容」を考察する 上での基本的な視点である,として話合いを進めてきた。

 付属校側から今までに出された問題点は,「指導方法」に関するものが大部分である が,「教科内容」に関しては次の二点が当面の討議材料としてあげられている。

 ①内容の精選と拡大・発展  教材の系統性と構造化

 言語活動の面でも,言語材料の面でも,内容を精選して基本的事項をしぼっていくこと は勿論必要だが,逆に精選された内容をいかに拡大し,どこまで発展させるかについても 実践的に研究を積み上げる必要がある。語い・文型・文法事項それぞれについて,学習困 難点・難易度を適確に捉えた上で,学年的な発展段階を追求していきたい。

 ②運用力を高める教材の内容と場面溝成

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英 語:科 教 育 分 科 会 139

 RecognitionとProductionとの融合については,従来から指;導の力点としてきたが,運 用力を高めていくためにはpattern practiceのもつ問題点をほりさげて検討し,いつま でも機械的な練習の段階にとX まらず,実際にことばを使用する方向に学習活動を展開し ていく必要がある。従って今後教材の内容を組織化していく際には,その教材の扱われる 学習場面というものを適切に構成し,具体的なsituationとからみ合わせて考えていくこ

とが課題となろう。

 (四) 母国語・母国語教育との関連

 付属校からの提言にもふれられているように,従来ともすると英語教育が技術偏重にお ちいり,音素の対比訓練や基本文型の転換練習などのみに多くの労力を費し,ことばの教 育と人問形成という関係が,表面的なskil三の養成というかげにかくれがちであったこと は,「教科内容」を研究していくにあたって大事な反省点である。言語のもつ本来の機能 を重視して,四技能の調和的発展をはかると同時に,将来英語を専門としない大多数の生 徒が,外国語学習を通して,その教養的視野を広め,母国語の正しい認識と愛1青,洗練さ れた運用力を獲得するような方向に内容を編成することも研究課題の一つとなろう。

 外国語教育と母国語ないし母国語教育との関連を考察する時,最近着々とその成果をあ げつつある「日英語の比較」研究は,われわれに貴電なsuggestionを与えるものとして 重要視していきたい。日英語の音声・文法紐織・語い,さらにはその発想法なり,文化的

・社会的意味といった各分野についての比較研究は,生徒の学習困難点の克服をEilざす教 師にとって何よりの手がかりとなろう。

 比較語学の第一線に立たれる国広哲弥氏を擁する本学部としては,その「構造的意味論」

を中心として理論面の指導を受けると共に,比較対照的な言語記述を,教科教育の分野で どう受けとめていったらいいか,教材作成や指導方法を通してどう活かしていったらいい かを考察していきたい。

 (五)研究体制の問題  言語教育としてのグルーピング

 前述した母国語教育と外国語教育との関連ないし相補的関係は,教科教育の研究体制に も反映する問題である。これまで理論面でも実践の場でもほとんど交渉のなかった国語教 育と英語教育とが,言語教育という共通基盤に立って将来を展望する時,・言語教育を学に まで高めていく理論的考察に,新しい視野が開けてくるのではあるまいか。言語形成過程 の解明から学習開始時期の閲題,さらには統合カリキュラムの可能性等々,検討さるべき 課題は山積している。

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 140        教育研究所紀要第一号

 各科教育の独自の領域や他との異質性をふまえながら,芸術教育・技術教育・言語教育 といった中間組織としてのグルーピングを考えていくことが,研究体制の上で教科教育学 樹立の構想を推進していく一つの足場となりはしまいか。

 (六)そ の 他

 教科内容について研究を進める上で,能力差の問題とか,中学。高校。大学の連繋の問 題,あるいは視聴覚教育,特にLanguage Laboratoryへの期待とか,その他多くの話題 が論じられたが,紙数もつきたのでここでは省略する。

 以上英語科における教科教育研究の方向を概略報告して,関連諸教科からの御指導と御 助言をあおぎたい。

       (英文研究室 仁平有孝)

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