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意味記憶の検索に及ぼす概念の典型性の効果

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著者 弓野 憲一

雑誌名 静岡大学教育学部研究報告. 人文・社会科学篇

巻 35

ページ 147‑156

発行年 1985‑03‑19

出版者 静岡大学教育学部

URL http://doi.org/10.14945/00008342

(2)

意味記憶の検索 に及 ぼす概念の典型性 の劾果

Typicality of Nouns that Affect the Verification Time of Sellnantic]Relations

弓 野 憲 一

Kenichi YuMINO

(昭 和 59年 10月 11日 受理

)

Abstract

ln]Exp.I, Ss verified the sentences such as̀̀a tomato is a tomato i serllantic leve1 0;

a radish is a vegetable:level l;a carrot is a food:leve1 2''in the High― Typicality of nouns corldition(H― T).In the Low一 Typicality condition(L― T),they verified the sentences such as a crown daisy is a crowrl daisy:leve1 0;a caulifloWer is a vegetable:level l;a pickling melon is a food:leve1 2''.All stimuli appeared on TV in Katakana''.The RT of H一 T

was short than that of L― T. In addition,the RT of H― T was increased linearly as a flmetion of sernantic level,contrasting with the L― T wherein the RT rerrlained flat. In Expo  Ⅱ,the same stimuli as Exp.I appeared in katakana"Or kanii".Ve● fiCation of kanJl was faster than that of katakana. From above results,lt was confimed that both typicality and farrliliarity of nouns affect the verification time.

EXP.I l問 題

`カナ リヤは鳥である″ ,` はとは動物 である″のような概念の包含関係 を表わした文の真偽 判断に要す る時間 には ,概 念 の熟知性 その ものが影響 を与 える と予想 され る。すなわち ,` カナ

リヤ ″ や ` は と ″

等の熟知性 の高い概念 は ,` ツグ ミ ″ や `ホウジロ″といった熟知性のあまり 高 くない概念 よ りも速 く検索 されそうである。 この論法でい くと ` にわ とりは鳥である″ とい う文 も速 く真偽判断が され ることになる。なぜ な ら `にわ とり″は ,わ れわれの身近か にいる 鳥であ り熟知 性は非常 に高いか らである。 ところが ,こ の文の判断 はそれほど速 くない。 Rips, Shoben,&Smith(1973)の ,Smith,Shoben,&Rips(1974)り は上の矛盾 を ,概 念 の典型性

(typicality)を 理論の基盤 にすえることによって見事 に解決 した。すなわち ,熟 知性 で はな く

,

典型性が RTに 大 きな影響 を与 えるとい うのである。 ` にわ とり ″ は熟知性が高 くて も ,典 型性 か らいえば低いのである。        '

Smith etoalは 典型性効果 を説明す るために意味素性 モデル を提唱 した。このモデル において

は ,概 念 とそれを特徴づ ける意味素性同士が比較 され ,両 者が非常に似 ているかあ るいは全 く

違 う場合 には短い RTで 反応が起 き ,両 者 の類似性が中間の場合 には定義的素 性のみの比較照

(3)

合がなされ ,比 較的長い RTで 反応が起 きる と仮定 されている。

ところが このモデルにおいては ,真 偽判断 を必要 とす る文が提示 され る と ,そ の文 に含 まれ

てい る情報 を長期記憶 内で貯蔵 している部位へ と自動的 に行 なわれ るアクセス を仮定 してい る。 この仮定 は ,ほ とん ど全てのネ ッ トワークモデルにおいて も同様である。 しか しこの仮定 は大いに疑間である。 というのは ,熟 知性や典型 性の非常 に高い概念 の場合 には ,そ の表象ヘ

かな り自動的なアクセスが期待で きようが ,そ れ らの低 い場合 にはそれほ ど自動的なアクセス は期待できそうもない と思われ るか らである。それゆえ ,そ れ らの低い場合の RTは ,表 象べ のアクセスの時間 を含 んで より長 くなっている可能性 を消 し去 ることがで きない。 この場合 当 然の ことなが ら ,概 念の階層の関数 としての典型 ,非 典型な概念の真偽判断に要す る RT関 数 の形 は違 うことが予想 され る。すなわち概念 の包含関係か らなる文の真偽判断 を被験者 に求 め た場合 には ,概 念階層の関数 としての RTは ,典 型の場合 には Collins&Quillian(1969)幼 と 同 じように ,線 型が期待 され るが ,非 典型の場合 には違 った形 になることが予想 され る。 Exp.

1は ,こ の可能 性について検討す る。

2方 法

被験者   大学生 9名 。

材   料   概念 の包含関係か らなる真偽合わせて 120文 が ,材 料 として用い られた。各概念 とそ の上位概念 は ,Table lに 示 された ものの中 より選 んだ。

Table l

刺激文 を構成するために用いた上位 ,下 位概念名。

上 位 概 念 食     物 動     物 ス ポ ー ツ

下 位 概 念 野   菜 フ ル ー ツ

自 動 車 船

鳥 魚

木 陸 上 競 技

球   技

各下位概念 は ,そ れぞれ 12個 の事例 を含んでいた。 12個 の事例の内 , 6個 は真文 ,残 りの 6

個 は偽文 を作 るために用い られた。真文 6個 ,偽 文 6個 の内 ,典 型的な事例 と非典型的な事例 がそれぞれ半々ずつあった。

典型的な事例 と非典型的な事例の選択 は次 の ように して行 なわれた。小川 (1972)の の 52カ テ ゴリーに属す る語の出現頻度表 よ り ,高 お よび低出現頻度の事例 を数個抜 き出 し ,あ る概念 の 典型事例 もしくは非型事例 となっているか どうかを吟味 した。そ して適切 な事例 を Table lの 各下位概念 についてそれぞれ 3個 ずつ抜 き出 した。従が って ,合 計す ると 120の 事例が用い られ た ことになる。

以上の方法で事例が抜 き出されているので ,事 例の熟知性 と典型性が必ず しもはっきりと区 別されていない。典型的な事例はほぼ熟知性の高い事例であるので ,両 者を完全に区別するこ とは至難の技である。逆に非典型的な事例はほぼ熟知性が低い。鳥カテゴリーにおける ` ニワ トリ ″のように ,高 い熟知性 をもちながらかつ低い典型性の事例 も考えられるが ,こ こではそ のような事例は用いなかった。真偽判断に用いられた文は概念階層レベルが 0か ら 2で 構成さ れていた。以下に ,実 験に用いられた真文 と偽文のい くつかの例 をあげる。文はマイクロコン

ピューターのモ■ターテレビに提示 したので ,全 文カタカナであった。

(4)

意味記憶の検索に及ぼす概念の典型性の効果

〈 概念間の包含関係か らなる文

*〉

ニ ンジン ハ ショクモツ デス。 タクシー ハ ノ リモノ デス。ヤキュウ ハ スポーツ デス。

スズメ ハ ドウブツ デス。等。

概念階層 レベル 1:真 文 :典

ダイコン ハ ヤサイ デス。バ ス ハ ジ ドウシャ デス。タンカー ハ フネデス。ツバメ ハ ト リ デス。 タイ ィヽサカナ デス。等。

概念階層 レベル 0:真 文 :典

トマ ト ハ トマ ト デス。ブ ドウ ハ ブ ドウ デス。ヨッ ト ハ ヨッ ト デス。ワシ ハ ワシ デ ス 3サ ケ ハ サケ デス。等。

概念階層 レベル 2:真 文 :非 典型

ウ リ ハ ショクモ ツ デス。レンターカー ハ ノ リモノ デス。スイキュー ハ スポーツ デス。

ウズラ ハ ドウブツ デス。等。

概念階層 レベル 1:真 文 :非 典型

カ リフラワー ハ ヤサイ デス。アンズ ハ フルーツ デス。ホッケー ハ キュウギ デス。ペ ンギン ハ トリ デス。等。       

概念階層 レベル 0:真 文 :非 典型

シユンギク ハ シュンギク デス。ネーブル タヽネドブル デス。サンダン トビ ハ サ ンダ ン   

トビ デス。 ウナギ ハ ウナギ デス。等。

概念階層 ンベル 2:偽 文 :典

ハ クサイ ハ ノ ミモノ デス。リンゴ ハ ノ ミモノ デス。 トラック ハ イシ デス。サ ッカー ハ ジュウタク デス。等。

概念階層 レベル 1:偽 文 :典 型

キャベ ツ ハ メンルイ デス。ナシ ハ ホウセキ デス。パ トカー ハ ブンガク デス。ハ ト ハ ワフク デス。等。

概念 階層 レベル 0:偽 文・ :典

レタス ハ ウ ドン デス。モモ ハ ノー ト デス。ボー リング ハ ラグビー デス。タカ ハ エ ンピツ デス。等。

概念階層 レベル 2:偽 文 :非 典型

サ ラダナ ハ ノ ミモノ デス。 トロールセ ン ハ ヨウフク デス。 ブル ドーザー ハ ゲイジュ ツ デス。 ゴルフ ハ ホン デス。等。

概念階層 レベル 1:偽 文 :非 典型

イチジク ハ ホウセキ デス。グンカン ハ ヒコーキ デス。ヤ リナゲ ハ ム シ デス。ハゼ ハ コンチュウ デス。等。

概念 階層 レベル 0:偽 文 :非 典型

マイクむバ ス ハ トケイ デス。レンラク セ ン ハ オー トバイ デス。ガチ ョウ ハ トンボ デ ス。 アナ ゴ ハ ギター デス。等。

手続 き   実験 は個別 に行 なわれた。被験者 はモニターテレビの前 に座 り ,画 面 にあ らわれ る

*刺 激材料は ,高 梨恵実(1981:昭和 55年 度静岡大学心理学科卒業論文 )よ リー部を変更して使用した。

(5)

文 に対 して yes,Ilo真 偽判断 を行 なった。概念間の包含関係か らなる 120文 が ,1文 ずつマイク

ロコンピューターのモニターテレビ上 に `ブ■″とい う音 の後 に0.5秒 して提示 された。文 は被 験者が反応す るまで提示 された。 1秒 して ,次 の試行が開始 された。 RTは 記 憶され ,全 ての 試行の終了後 にプ リンターに打 ち出された。

装   置  NEC PC‑8001マ イクロコンピュター。

計   画  A(概 念階層 レベル :3)× B(yes一 nO)× S(被 験者 )の 要因計画が用いられた。

3  結果 と考察

概念の包含関係か らなる真文の平均 RTを ,Fig.1に 示す。偽文の下位概念 は ,全 く違 った

カテゴ リーの組 み合わせ によって構成 され ,真 文 と同 じ意味の階層関係 にはなってはいないの で ,こ こで は省略す る。誤反応率 は典型条件 ,非 典型条件 ともに非常 に低 く ,両 者 ともに 2%

以下であつた。 RTの 計算 には誤反応 は除外 されている。

Fig。 1の 典型条件 は ,非 典型条件 よ りも速 く ,か つ意味階層 レベルの関数 として直線的に R

Tが 伸 びているも これに対 して ,非 典型条件 の方 にはそのような伸 びはない。 この結果 はどの ように解釈 されるであろうか。 Collins&Quillian(1969)"の 意 味ネッ トワー クモデルか らは

,

典型条件の RTは 説明で きて も非典型条件のそれは説明で きない。なぜな ら ,非 典型条件の階 層 レベル 1と 2の RTは ほぼ等 しいのでネ ッ トワークモデル上 においては重な り合 って しまう か らである。

一方 ,Smith,Shoben&Rips(1974)り の意味素性モデルか らは ,Fig。 1の 結果 は一見 した と ころうまく説明で きるようにみえる。すなわち ,典 型条件の RTが 非典型条件 よ りも短 いの は

,

典型事例 と 2つ の上位概念間の意味素 性が よ く似ているので ,文 が提示 された時 に被験者 はそ の事例 と上位概念 の意味素性の類似性 を比較照合す るのみで直 ちに反応できた。すなわち ,彼

らのモデル上の段階 1の 判断のみで反応できたので ,RTが 短 かった。 これに対 して ,非 典型 条件の方 は ,事 例 と上位概念間の意味素 性の類似性が幾分低 いので ,か な り精密な意味素性間 の比較 照合が必要であった。 したがって彼 らのモデルにおける段階 2の 判断が必要 にな り ,反

応潜時が典型条件 に比べて少 し長 くなった。 この ように説明で きそうである。

ところが ,概 念階層 レベルの関数 としての両条件の反応潜時パ ター ンの違 いに注 目す ると

,

上で述べた解釈が誤 っていることが判明す る。 とい うのは ,典 型条件 ,非 典型条件 ともに使 用

されている上位概念 は同 じである。両条件の違いは ,事 例が典型か非典型か ,す なわち事例 の 意味素性が上位概念 によ く似ているか比較的そうで はいか ,と い うところにある。それゆえ典 型条件 において概念階層 レベルの関数 として RTが 直線的に伸びるのであるな らば ,非 典型条 件 おいて もその ようにな らなけれ ばならない。なぜな ら ,こ のモデルに立つ と ,典 型条件の概 念階層 レベル 1, 2間 の RTの 差 は ,レ ベル 1の 概念 と 2の 概念 の意味素性がかな り違 うこと を示 した結果 とうけとれ る。そうす ると非典型条件のレベル 1と 2に は同 じ概念が使われてい るので ,レ ベル 1と 2の 間 にも RTに 差がなければな らない。 しか し実際 には非典型条件の レ ベル 1と 2間 には差がない。 したがって ,意 味素 性モデルか ら Fig。 1の 結果 は説明できない こ

とになる。

以上のような訳で ,Collinsら のネ ッ トワークモデル も ,Smithら の意味素性モデル も Exp.

1  で得 られたデータを十分 に説明で きない。それゆえ第 3の モ デルが必要 にな る。恐 ら く

Collins&Loftus(1975)つ によって提唱されたモデルが結果 をうまく説明す るであろう。 この

(6)

意味記憶の検索に及ぼす概念の典型性の効果

(包 含 関係 の判‐ 断

)

VenfiCation of inclusive Felationship

非典型 Low・ typical

カ リフラワーは野菜です A carliyf10weF iS a vegetable

うりは食物です

A picklng me10n is a foOd

︵ 父 ︶ あ 9 ョ

︼一 3 日 0 o ● o

春菊 は春菊 です A shungiku is a shungiku

にん じんは食物です A caFrOt iS a food

だい こんは野菜です A radish is a vegetable

と ま とは とま とで す

A tomato is a tomtO

ILeve1 0f cOn,ceptual hieraFChy

Fig.1.  Reaction tirne taken to‐ verify vari.Ous sentences that aire consisted of hligh and low typiiCality of nOuns.

モデルは基本 的には Collinsi&Quillian(1969)2)を 踏襲 しなが ら ,概 念 とそれ を特徴づ ける意 味属性 1間 のネッ トワーク上の距離に種々違 いがあることを認めてお りまた比較照合過程 に意味 素性モデル と 1同 じような LLu過 程 を組み込 んでいる。従が つて このモデルか らは ,意 味記憶研 究か ら得 られた多 くのデータが説明で きる ことになる。 しか しあまりに柔軟 にモデル を構成 し ているために ,実 験によってモデルの是非を検討することが難かしし yと いう難点ももっている。

ここではモデルの是非についてはこれ以上立ちいらず ,Exp.2に おいて再度議論することにす

る。

(7)

EXP.Ⅱ 4  問   題

Exp.1で 議論 した 3つ のモデルのいずれにおいて も ,刺 激文が提示 され る と ,そ の文で表現 された長期記憶 内の事例お よび上位概念 に探索が到達で き ,そ こでネ ッ トワーク内の探索 ある いは意味素性 の比較照合が行 なわれ ると仮定 されている。 この仮定 は正 しいであろうか ,熟 知 性・ 典型性 の高い事例 においては ,そ の ような ことが期待 され ようが ,熟 知性 0典 型性 ともに 低 い事例 においては ,必 ず しもその ような長期記憶 内での直接的なアクセスは期待で きそ うも ない。すなわち ,熟 知性・ 典型 性 ともに低 い事例 においては ,長 期記憶 内でその事例が貯蔵 さ れている ところにアクセスす るために ,か な りの時間が必要なのではないか。それが Fig.1の 非典型条件 の RTを 必要以上 に押 し上 げているのではないか。 とい うような疑念が生 じる。

Exp.Ⅱ で はごの疑間 について検討す るために ,刺 激文の提示方法 に Exp.Iと 同 じカタカナ 条件の他 に ,漢 字かな じり条件 を設 け ,両 条件 を比較す る。両条件 は文の意味 としては全 く同 じであるが ,提 示様式が違 うことによって文の熟知性がかな り違 った ものになる。 もしこの提 示様式の違 いによって RTが 大幅 に影響 をうけるのであれば ,Smith,Shoben&Rips(1974)°

が意味素性モデル を構築す るに当た り考慮 した ` 典型 性″と共に ,` 熟知性 ″ も考慮 したモデル が必要 になる と思われる。なぜなら ,非 典型事例 は `ニフ トリ″等の僅かな例外 を除 き ,殆

が低熟知性であるか らである。 Exp.Ⅱ はこの点 について議論す る。

5方 法

被験者   大学生 11名 。

材   料  Exp.Iで 用い られた文 と数個 を除いて同 じものが用い られた。事例名 の読 みが長す ぎて読 みづ らい ものが変更 された。カタカナ条件では ,モ ニターテレビに映 しだされる文 は

,

全てカタカナであ り ,漢 字かな条件では ,漢 字 ,か な ,カ タカナによって表記 されていた。漢 字かな条件では ,外 来語 または通常 その表記がカタカタの事例 は,力 タカナで表記 されていた。

120文 の内 ,60文 がカタカナ ,残 りの 60文 が漢字かなの第 1リ フ トと ,カ タカナ と漢字 を入れ替 えた第 2リ ス トが作 られた。各被験者 は , 1リ ス トのみについて反応 した。

手続 き   実験 は数字 を用 いた30試行 の練習セ ッションと文 を用 いた 120試 行 の本 セ ッション とか ら成 っていた。そして実験 は 2つ の小集団に分 けて実施 された。集団 1は リス ト1に つい て反応 し ,集 団 2は リス ト 2に ついて反応 した。刺激 リス トの提示順序 は乱数 によって決 め ら れた。被験者 は 2台 のテ レビの前 に分かれて座 り ,テ レビに提示 され る刺激 に yes,■ oの 真偽 判断 を行 なった。 テレビには ` ブー″という Beep音 の後 に

,。

5秒 して文が瞬時 に現われた。 そ の後 3秒 間が RTの サ ンプ リング時間 として とられた。 1秒 して次の Beep音 が鳴 った。 RT

は記憶 され ,全 反応終了後 にプ リンターに打 ち出され る とともに ,条 件毎 にコンピュターで処 理 された。

装    NEC  マイクロコンピューター P C8801と 自作 1/0イ ンターフェイスならび に反応キー。この装置は一度に7人 の RTを ms∝ オーダーで計測できるようにプログラムさ れていた。

計   画  A(カ タカナー漢字かな )XB(典 型一非典型 C(概 念階層 レベル :,)XD(yes

no)× S(被 験者 )の 要因計画が用い られた。 しか し D要 因の no反 応 には ,材 料 の構成 に複

(8)

意味記憶の検索に及ぼす概念の典型性の効果

カ タカナ・ 非典 型 Katakana・ Low‐ typical

6 8 T 喜 軍 口 o

・ ︻ち

● o に

1.6

1.5

1.4

1.3

1.2

1.1

1.0

0.9

0.8

0.7

Level of Semantic hierarchy

Fig.2.  Reaction tirne taken to verify various sentences that are consiSted of high and loW typiCality of nouns in ̀̀Katakana'' and  Kanii"

conditions.

雑 な要因が入 り組 んでいるので ,こ こでは分析か ら除外す る。

6結 果

Fig.2に 平均 RTを 示す。各条件 について 3要 因の分散分析 を行な うと ,A要 因では漢字か 漢字・非典型

KaniiOLOw‐ typical

カ タカ ナ・ 典 型 Katakana・

High̲typical

漢字・ 典 型

Kanii・ High‐ typical

(9)

な条件がカタカナ条件 に比べて速 く (F(.10=64。 82,p<.01),B要 因では典型が非典型 より

速 く (F(1,1の =43.85,p<。 01)ま た C要 因で は概念階層 レベルの関数 として RTが 増加 して

いた (F。 ,20=39。 29,p<。 01)。 一方 ,交 互作用 も Bが 有意であ り (F(1,10=7.16,p<.

05),AXCも 有意であ り (Fo,20=4.04,p<。 05),ま BXCも 有意であった (Fo,20=

8。  10, p<。 o5)。

AXBの 交互作用が有意であったので ,単 純効果の検定 を行 なうと (Bl)典 型 における Aは

有意でなかった (F(L10=3。 78,nos。 )が ,(B2)非 典型 にお ける Aは 有意であった。 (F(1,10=

17.0,p<。 01)。 またカタカナ (Al)に お ける Bは 有意であった (F(1,1の =15。 63,p<.

01)が ,漢 字かな (A2)に お ける Bは 有意で はなかった (F(1,10=3.15,nos。

)。

AXCの 交互作用で は ,Cl(概 念階層 レベル 0)に お ける Aは 有意で はなか った (F(2,2の =30,

nos。

)が ,C2(同 1)に おける Aは 有意であ り (F。 ,20=4。 43,p<.05),C3(同 2)に お け る Aも 有意であった (F(2,2の =5.75,p<.05)。 また Al(カ タカナ )に お ける Cは 有意であっ た (F(2,20=12。 14,p<。 01)が ,A2(漢 字かな )に お け Cは 有意で はなかった (F(2,2の =2.

25,ILS。

)。

BXCの 交互作用では ,Clと C3に お ける Bは それぞれ有意ではなかった (F(2,2の =2.70,

nos.),(F。 ,20=1。 35,n.s.),と ころが C2に お ける Bは 有意であった (F(2,2の =14,30,p<。

01)。 また Blに お ける C,B2に お ける Cは それぞれ有意であった (F。 ,20=10。 87,p<。 01), (F(2,20)=16.78, p<。 01)。

各条件の誤反応率 は ,カ タカナ 0非 典型 23%,カ タカナ・ 典型 15%,漢 字・ 非典型 21%,漢

字・ 典型 10%で あらた。誤反応 は ,分 析 か ら除外 されている。

7考 察

まず主効果 について考察 しよう。期待 されたように漢字かな条件が,カ タカナ条件 よ りも 150 msec程 速 い。この ことは ,文 に書かれた意味 を読 み とるのに ,表 記法 に関 して熟知性 の低 いカ タカナ条件が より長 い時間を要 した ことを意味す る。 また典型性 に関 しては ,Exp.15と 同 じ ように ,典 型条件が非典型 に比べて約 msec速 かった。概念階層 レベルに関 しては ,レ ベル 0と

1, 2の 間 には有意差がみ られ るが , 1‑2間 には差がない。 この結果 も Exp.15と 同 じであ る。概念階層 レベル 0の 文 においては

,ヽ

事例 と概念 の意味素性の比較 は特 に必要ではな く ,外

的な文字パ ターンの照合のみで も真偽判断で きるので ,こ の ような短い RTに なった もの と思 われ る。      ,

次 に交互作用効果 について考察 しよう。 AXBの 交互作用の うち ,典 型条件 においては RT

に差がみ られず ,非 典型条件ではカタカナ条件が漢字かな条件 よ りも RTが 長かった。 この結 果 は何 を意味す るであろうか。カタカナの読 みに くさが RTに 直接関係 しているのであれば

,

典型条件 において もカタカナ条件 の RTが 伸 び るはずで ある。 しか しデータはその ようには なっていな くて ,非 典型条件の RTの みが ,カ タカナ条件 において伸 びている。 この結果 はど のように解釈 されるのであろう .か 。や は り問題設定の ところで とりあげた ように ,非 典型 0低 熟知性の事例 は典型・ 高熟知性の事例 に比べて ,長 期記 憶内の貯蔵場所ヘアクセスす るのによ

り長い時間がかかったので はなかろうか。すなわち ,典 型的な事例 は高熟知性 ゆえに ,カ タカ ナで表記 されていて も短期間で必要な表象ヘアクセスで きる。 これに対 し非典型な事例 は ,熟

知性 が低いゆえにカタカナ表記の文字パ ター ンが意味 してい る事例が ,通 常 の漢字表記法の ど

(10)

意味記憶の検索 に及ぼす概念の典型性の効果

の事例 を意味 しているかを特定化す るのに時間がかかっている と思われる。 また この方法で事 例ヘアクセスす るのに失敗 した場合 には ,上 位概念 を使 って記憶 内を探索 した後 に ,や っ と反 応でき時間がかかっているのか も知れない。

以上の ような訳で ,非 典型事例 の真偽判断時間 には典型性 とは別 に熟知性がか らんでいると 思われる。残念 なが ら ,当 実験 は典型性 と熟知性 を区別 して取 り扱 っていない。従が って非典 型条件の RTに ,ど の程度熟知性 による時間が含 まれているのかを特定す ることはで きない。

しか しなが ら,Smith et.al(1974)り のモデルでは取 り扱われていない熟知性 も ,RTに 大 きく 関与 していることが窺われる。それゆえ ,典 型性 と熟知性 の 2次 元 を考慮 したモデルが必要 と なろう。

AXCの 交互作用 について考察 しよう。概念階層 レベル 0に お けるカタカナー漢字かな間 に は差がみ られず ,レ ベル 1, 2で は漢字かな条件がカタカナ条件 よ りも速かった。 レベル 0で は ,上 にも述べた ように ,意 味素性 の比較 は必要 としないので表記法の違 いは ,RTに 影響 を 及 ぼさなかった もの とみ られ る。 これに対 して レベル 1, 2で は ,事 例 と概念間の意味素性の 比較が必要であるために ,内 的表象ヘアクセスす る必要がある。 このアクセスに要す る時間が 漢字かな条件 に比べてカタカナ条件の方が余計 にかかった と推測 され る。 AXB交 互作用の分 析 において明 らか になった ように ,典 型事例 における漢字かな一カタカナ間 に差がな く ,非 典 型事例 においてそれ らの間 に差がみ られた事か ら ,AXC交 互作用のレベル 1, 2で カタカナ 条件が漢字かな条件 に比べて遅 いのは ,主 として非典型事例のカタカナ条件がその原因 となっ ていると考 えられ る。

‐方 ,漢 字かな条件では 3つ の概念階層 レベル間に差がみ られなかった。なぜ この ような事 が起 きたのであろうか。文 を漢字かな表記す ることによって概念階層 レベルが消 えた ようであ る。 Fig。 2の 典型条件 において この傾向が著 しい。 もしこの現象が繰 り返 し日本語 において観 測 されるのであるな らば ,日 本語 にお ける意味記憶の検索過程 は外国語のそれ とは違 った もの であるか も知れない。今後検討す る必要のある問題である。カタカナ条件ではレベル 0と 1,

2間 に差があった。 しか しレベル 1, 2の RTは ほぼ同 じであった。典型 性 (B)を こみにし た場合 には ,レ ベル 1, 2間 には RTの 差がない ことになる。 しか し後 の BXCの 交互作用の 分析で明 らかになるように ,典 型事例 の場合の RTの 伸び と非典型事例 の場合のそれは全 く異 なったパ ターンを示す。

BXC交 互作用の考察 をしよう。典型 ,非 典型 ともに概念階層 レベルの関数 として RTは 伸 びている。 しか し典型が直線的に伸びているのに対 して ,非 典型 はレベル 2の 方がかえってレ ベル 1よ り RTが 短い。 この結果 は Exp.1で 得た結果 と全 く同 じパ ターンである。従が って

,

かな り安定 した現象 といえる。それゆえなぜ典型 と非典型では RTは 異 なったパ ター ンを とる のかの説明が必要 になる。 この現象に関 して ,Exp.1の 考察の ところの議論 を ,も う一度 む し か えそう。

Smith et.al(1974)い のモデルでは ,典 型条件 における結果 はうまく説明できるが ,非 典型条 件 のそれは説明で きない。 とい うのは ,こ のモデルが仮 に正 しくて ,典 型条件 において RTが

直線的に伸びるのであれ ば ,非 典型条件 において もその ようになるはずである。なぜ な ら ,両

条件の違いは事例が典型か非典型か とい うことのみである。典型条件 において ,概 念 階層 レベ

ル 2の RTが レベル 1よ り長 くなった とい うことは ,こ のモデルに合わせて説明す るとダ レベ

ル 1の 概念 の意味素 陛が レベル 2の 意味素性 よ りも事例 の意味素性 と共通す る素 性を多 くもつ

(11)

ということを意味する。そして意味素性数に関していえば ,上 位概念であるレベル 2の 方が

,

より抽象をうけているので ,レ ベル 1の それよりも通常は少ない。他方 ,非 典型事例 も典型事 例 と同じ上位概念間の包含関係の判断が求められている。非典型事例 といえども ,あ る上位概 念に包含されているので ,当 然のことながら上位概念 と共有する意味素性 をもっている。少な くとも ,非 典型事例においても被験者が正 しい判断を下せた ということは ,事 例 と上位概念間 で共有する素性がかなりの i程 度存在するということになる。 もしそうであるならば ,非 典型条 件においても RTは 直線的に増加するはずである。 しかしデータはそうはなっていない。 とぃ

うことは s面 ithら の意味素性モデルは限界があるということになる。

Exp.1,2で 得 られた結果より ,こ こで取 りあげたような意味記憶検索過程には ,概 念の典型 性 とともに熟知性 も― 関係 していることが明 らかになった。

引用 文献    

1)COllins,A.M.,&Lof ,E.F.1975 A spreding― act市 ation theory in semarluc memory.

暴 勿

=中 υ″鶴 82,407‑428.

2)Collins,A.M.,&QtiliaL M.R.1969 RetFieVal time from semantic memory.」 aZ%′ 0/厖 乃α ′ 二 物 姥 〃 降 効α′ι′ 滋 υあろ 8,240‑248.

3)小 川嗣夫  1972 52カ テゴ リーに属 す る語 の出現頻度表   人文研究 ,22, 1‑68。

4)Rips,LoJ。 ,ShOben,E.J.,&Smith,EE。 1973 Sonantic distance and the ve五 fication of semantic CatiOns。 レ 物

z′

び 力 乃α′ι a 吻″ な ″ ん 滋 ′ &滋 υあち 12,1‑20。

5)Smith,E.E。 ,Shob(九 E.J。 ,&Riぃ ,LJ。 1974 Stmcture and process in semadc mernory:A

featural model for sematic decidons。 詢 chiOま d Rθ υ勿 ,81,214‑241.

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