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高強度鋼用の複半月充填ボルト接合法に関する基礎的研究

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(1)

長崎大学工学研究科研究報告

高強度鋼用の複半月充填ボルト接合法に関する基礎的研究 その 4 充填ボルト支圧接合継手の載荷実験

玉井 宏章

,桐山 尚大

**

,山下 祥平

***

On New Fastener using Half Moon Shaped Bolt for High Strength Members Part 4 Loading Test on Bearing Joint using New Bolts

by

Hiroyuki TAMAI

*

, Takahiro KIRIYAMA

**

and Shohei YAMASHITA

***

The authors have presented the half-moon shaped bolts for a fastener of high-strength steel members. In previous paper, influence of a self fastening effect on flexural rigidity of their beam joint by using of the half-moon shaped bolts was shown. We were prepared to manufacture the half-moon shaped bolts by 14T bolt and manufacture a specimen using H-SA700 high-strength plate for the bearing capacity bonding method. This paper showed a effectiveness and performance of the bolt joint and mechanical properties of bearing failure through loading test and analysis results. . Key words : Bearing Bolt, Built-up Member, H-SA700A, High-Strength Steel, Beam Flange Joint.

1 はじめに

建築構造で利用するための普及型高強度鋼が開発さ れ,その利用技術に関する研究が多くの研究者によって 行われている1).高強度鋼部材の接合では,超高力摩擦 ボルト接合を行っても,かなり多くのボルト本数を必要 とすることが既往の研究で明らかとなっている 2).提唱 する乾式組立材1)を普及させるためには,接合方法をよ り耐力が高くかつ簡便にすることが必要と考えられる.

著者らは,溶接を行わない場合の接合方法,特にボル ト接合のせん断伝達に関して,この問題を解決する新た な接合形式として,複半月テーパ充填ボルト接合法を提 案している2)

この支圧接合法について14Tボルトから充填ボルトを

H-SA700高強度板を用いて中板・添板を製作して,支圧

接合継手試験体を用意して,引張試験を行うとともに併 せて有限要素法解析を行って,力学的特性を検討したの で報告する.

2 充填ボルト接合の概要

複半月ボルトを用いた充填ボルト接合法と,そのボル トを図1に示す.この接合方法は,半月形断面のボルト

(鋼種は 14T)が,ボルト孔を荷重方向にギャップをなく

すように充填するので,複半月テーパ充填ボルトと呼ん でいる.

4 枚の皿バネ型ワッシャーはボルトの締め付け力によ って軸方向に弾性変形で縮んでいる.繰り返し荷重に対 して,ボルトねじとナットには緩みは生じず,ずれが生 じてボルト孔が拡径されても,ワッシャーの弾性変形が 復元され,充填ボルト2が入り込むため,せん断方向ボ ルトの緩みは生じない.この自己充填機能を複半月充填 ボルトは有している.複半月テーパ充填ボルト接合は,

リベット接合と同等程度(0.2mm 以内)にギャップは解消 されるため,従来の高力ボルト支圧接合の問題点を解決 でき,かつ,ボルト鋼種を14Tとしているので高強度性 能をボルトせん断力として発揮できるので,板厚が厚く,

高強度の鋼材に対して効率のよい接合が期待できる.テ

平成 25 年 12 月 17 日受理

* システム科学部門(Division of System Science)

** 工学研究科(Graduate School of Engineering)

*** 工学部構造工学科(Department of Structural Engineering)

13 長崎大学大学院工学研究科研究報告 第44巻 第82号 平成26年1月 

(2)

表2 素材試験結果

図2 支圧ボルト継手の載荷試験 体

図1 複半月充填ボルト図

表3 応力・歪関係数値モデル(べき乗則)

表1 実験シリーズと実験・解析・評価結果

Bolt Type Grade e1 K Py Pu δu F.P. K Py Pu δu Py Y.P. Pu F.P. Py Pu Py Pu Py Pu

H/O S/M/A mm kN/mm kN kN mm - kN/mm kN kN mm kN - kN - - - - - - -

H M 20 65 78.6 100.8 4.7 S 225 56.9 111.4 6.0 70.8 S 101.2 S 0.90 1.00 1.25 0.91 0.72 1.10

" " 50 370 132.6 224.9 17.8 S 228 100.4 266.0 18.5 101.2 R 242.9 S,R 0.76 1.08 1.01 0.91 0.76 1.18

" " 80 370 108.9 238.3 10.2 R,B 208 103.6 369.1 19.9 101.2 R 242.9 R 0.93 1.02 0.98 0.66 0.95 1.55

" " 100 200 76.0 219.4 9.1 R,B 225 101.4 300.1 15.1 101.2 R 242.9 R 1.33 1.11 1.00 0.81 1.33 1.37

O " 20 600 66.4 111.3 6.3 S 271 56.3 111.4 5.9 70.8 S 101.2 S 1.07 0.91 1.26 0.91 0.85 1.00

" " 30 800 101.2 163.4 10.5 S 296 82.4 169.7 9.7 101.2 S,R 151.8 S 1.00 0.93 1.23 0.89 0.81 1.04

" " 40 800 119.7 210.1 13.0 S 286 99.3 219.9 15.2 101.2 R 202.4 S 0.85 0.96 1.02 0.92 0.83 1.05

H A 20 200 110.7 148.0 4.1 S 250 124.2 165.1 2.9 144.3 S 155.6 S 1.30 1.05 1.16 0.94 1.12 1.12

" " 30 150 184.4 236.4 6.5 S 270 175.4 250.5 8.3 155.6 R 233.3 S 0.84 0.99 0.89 0.93 0.95 1.06

" " 40 240 195.2 303.0 9.1 S 288 174.4 322.1 13.6 155.6 R 311.1 S 0.80 1.03 0.89 0.97 0.89 1.06

" " 60 300 119.5 335.7 7.1 R.B 289 166.9 368.0 11.0 155.6 R 367.8 B 1.30 1.10 0.93 1.00 1.40 1.10

" " 80 300 132.5 327.2 9.1 R,B 288 169.8 351.2 9.0 155.6 R 367.8 B 1.17 1.12 0.92 1.05 1.28 1.07

H: Half Moon Shaped Bolt, O: Ordinary Bolt, S:SN400,M: SM490, A:H-SA700, K: Initial Stiffness, Py: Yield Strength, Pu Maximum Strength, T: Tension failure, S: Shear failure, B: Bolt failure, R: Bearing failure, du: Deformation at Peak Load, F.P: Failure Pattern, Y.P.: Yield Pattern

Cal./Exp. Cal./F.E.M. F.E.M./Exp.

Experimental F.E.M. Calculated

Parameters

sy ep*st e0* n* C n

N/mm2 % % - N/mm2 %

SM490 397 1.37 0.66 5.0 2.31 0.16

H-SA700 808 - -1.60 5.0 1.39 0.078

14T 1454 - -0.70 1.0 1.41 0.075

図3 公称応力-公称ひずみ関係の実験値と 数値モデル

図4 継手の構成要素と充填ボルトの半領域要素分別

sy su est eu ei

N/mm2 N/mm2 % % %

SM490 382 546 1.63 20.1 18.0

H-SA700 795 862 - 11.7 6.6

14T 1476 1584 - 20.4 6.5

(3)

長崎大学工学研究科研究報告

ーパ部の付け根は応力集中が起きないようにRがとって あり,テーパ角度は4枚(5mm)のワッシャー厚に対して 1mmの勾配としている.

3 載荷試験の概要

複半月ボルトを用いた支圧接合継手の基本性状を調 査するために行った,載荷実験の概要を以下に示す.ボ ルト1本タイプの支圧接合継手について,中板の端抜け から支圧破壊ついでボルトの破損に至るように設計し た試験体について載荷実験を行った.

ボルト接合継手の載荷装置を図2に示す.上部治具と 添板は,十分な強度を持つように中板と同鋼種で板厚を 2.5倍程度以上大きく作られている.

上部治具は板厚 9mm の鋼板を隅肉溶接して,つかみ 部を増厚している.

この上部接合治具と2枚の添板は,F10T M22高力摩 擦ボルト3本で接合されている.中板は,幅W=100mm,

板厚 t=9mm,で,16.5mm の孔が端あき距離 e1が 20~100mmであけられている.鋼種はH-SA700とSM490 とした.この中板を添板に挿入し14T M16の複半月充填

ボルト(図 1)を差し込んで締付力を導入する.載荷は

2000kN容量のアムスラー試験機で行う.

計測方法は,荷重はアムスラー試験機から荷重:Pを 変位は添板と中板との 100mm区間 Lの変位:dを図 2 に示す変位計測治具で,試験左右位置で計測して平均し て求めた.

載荷プログラムは,静的単調載荷とした.

実験シリーズを表1に示す.中板はSM490鋼種で9mm 板厚で幅は 100mm とし実験はボルトに,複半月充填ボ ルトを用い,端あき距離e1を20,50,80,100mmと変 化させるシリーズと通常ボルトを用い,端あき距離 e1

を 20,30,40mm と変化させるシリーズ及び中板は

H-SA700鋼種で前述と同様の9mm板厚で幅は100mmと

し,ボルトに複半月充填ボルトを用いて,端あき距離を 20,30,40,60,80mmと変化させるシリーズ計12ケー スとした.中板及び,14T ボルトの素材試験結果を表 2 に示す.

最大荷重の1/5~1/10の時点の荷重P-変形d関係から,

初期剛性K,スロープファクター法を用いて,剛性が初

期剛性の1/3に、まで低下した時の荷重(降伏荷重と定義 する) Pyと最大耐力Pu,最大耐力時変位duと破壊性状(有 効断面引張破断T,端抜けせん断破断 S,支圧による破

壊R,ボルトの破損B)を調査する.

4 解析方法の概要

接合部の降伏荷重は,剛性の低下率から,最大耐力は,

ボルトが破損するか中板,添え板が大変形して引きちぎ られるかで決められる.

その挙動を究明するためには,

1) 鋼板のボルト穴が大変形で拡がりつつ耐力が上昇す る,複合非線形の効果と支圧破壊性状と,

2) 充填ボルトが接触しながら,せん断破断する特性を 検討する必要がある.

これらを解決するために行った複合非線形有限要素 法解析のモデル化を示す.こてらは,列挙すると,

1) 大変形大歪問題用の鋼素材応力-歪関係モデル 2) アドバンシングフロント法及びテトメッシュ法に

よるリゾーニング手法 3) 接解,離間問題の解法 4) 摩擦のモデル化

5) 体積ロッキング回避のための要素選定となる.

4.1 素材特性数値モデル

○n 乗硬化則の概要

素材特性としては正確を期すため,真応力s-対数ひ ずみe* 関係を取り扱うことになる.一方,通常のクーポ ン試験では,公称応力s-公称ひずみe が用いられる.

公称応力s-公称ひずみ関係eから,真応力s*-真ひず み関係e*を換算して利用する.

降伏棚を除くひずみ硬化領域での真応力-対数ひず み関係は,次のべき乗則が良好に成立することが知られ ている.

 

* * * * * *

, 0

epepst  s sy C epe n (1.a)

* * * *

0epepst, s sy (1.b) ここに,s*yは降伏応力,e*pは塑性ひずみ,e*0は修正ひ ずみ,e*pstは硬化開始ひずみの塑性成分,C,nは実験定 数である.軟鋼の場合,Cは2.0~3.0,nは0.15~0.30の 値をとる.

塑性ひずみの定義から,

*

* * * s *

e ei ep ep

E (2) 真応力と公称応力,対数ひずみと公称ひずみとの間に は次式が成り立つ.

* *

exp( ) 1, ln(1 )

e e   e  e (3.a,b)

* * *

/ exp( ), (1 )

s s e  s s e (3.c,d) e*pを定めると(1.a,b)式から真応力s* が決まり,対応す る対数ひずみは(2)式で得られる.(3.a,b)の変換式から,

真応力,対数ひずみに対応する,公称応力-公称ひずみ関 係が弾性範囲を除いて得られることになる.

○材料定数の決定法

素材試験で公称の降伏応力sy,引張強さsu,一様伸び eiがわかればn乗硬化則の材料定数n,Cは次式で求ま る.

* *

=ln(1+ )ei e0

n (4.a) 15 高強度鋼用の複半月充填ボルト接合法に関する基礎的研究 その4充填ボルト支圧接合継手の載荷実験   

(4)

図6 ボルトのせん断荷重-せん断変位関係の解析値 (a) 初期メッシュ (b) 相当塑性ひずみ

(a) SM490中板

図7 中板の支圧荷重-支圧変位関係の解析値

(a) 全体 (b) 初期

図8 中板の支圧荷重-支圧変位関係の解析値

(b) H-SA700中板 図5 中板の平面初期要素分布とe1=80mm,

d=12mmの時の相当塑性ひずみ分布

(5)

長崎大学工学研究科研究報告

(a) 全体

図9 充填ボルトとSM490中板の場合の実験値,解析値及び評価値 (b) 初期

図10 充填ボルトとH-SA700中板の場合の実験値,解析値及び評価値

(a) 全体 (b) 初期

(c) 全体 (d) 初期

17 高強度鋼用の複半月充填ボルト接合法に関する基礎的研究 その4充填ボルト支圧接合継手の載荷実験   

(6)

0*

exp e

s s

 

n

u y

n n

n

(4.b)

また,(1.b)式中のs*yは(3.d)式を用いて求める.

* (1 )

sysy e (4.c) 修正ひずみe*0は,実験素材試験と適合するように次式で 考える.

* *

0

e est n sy

E (4.d) ここでe*stは歪硬化開始歪である.

n*は,SM490では4程度,H-SA700では5程度を与えた.

表3には,代表的素材試験結果から求めたべき乗則数値 モデルの材料定数C,n,s y,e*pst,e*0を示す.図3には,

公称応力-公称歪の数値モデルと定数値M490,H-SA700 および14Tについて示す.以降の有限要素解析の素材特 性は,表3のパラメータを持つ数値モデルを用いる.

4.2 領域分割した分散型解法

実験挙動を追跡するためには,解析対象の対称性を考 慮して図4のたん半領域について解かなくてはならない.

2つの部分の充填ボルト1組,中板1枚と添板2枚の半 領域が対象となる.

2枚の添板は弾性変形のみが生じ,中板と充填ボルト が強塑性状態となる.これらの構成要素の変形と荷重の 関係を力が釣り合うように,1度に解くと立体なので多 大の計算時間を要することとなる.

これを以下の過程を導入して計算を大幅に縮減する.

1) 添板は十分に耐力があり塑性化しない.

2) ボルトの接触断面は円形を保ち,その接触面の変形 は小さい.

3) ボルト中心から,中板100mm位置までの相対変位d はボルトせん断と中板のボルト接触位置からの伸び の和として表せる.

写真1 中板の最終状況

(HA60試験体)

(a) 実験値 (b) 解析値 (a) 実験値 (b) 解析値

写真2 充填ボルトの破断状況

(HA60試験体)

写真3 充填ボルトの破断状況

(HM80試験体)

写真4 試験後の添付の変形状況

(HM80試験体)

(7)

長崎大学工学研究科研究報告

4) 中板の端抜け挙動は,板厚の塑性化に伴う盛り上が りの影響を受けない.

構造モデルを2つの領域に分割する.

1つは,勾配1/5のテーパ面を持つ充填ボルト軸部に 中板・添板の剛体に摩擦を生じる接触をし,充填ボルト は2面せん断の3次元応力状態で立体要素を用いる領域 とする(図4参照).

もう1つは,ボルトは剛体とし中板とボルトが摩擦を 生じる接触をし,中板自体は平面応力状態の2次元要素 を用いる領域とする(図5(a)参照).

これら2つの領域は剛体の境界を介して次の力の釣り合 い条件と変位の適合条件を満足する.

( )

p p

PQ d (5.a)

b( )b

PQ d (5.b)

p b

d d d (5.c) ここに,P:継手の荷重,d:ボルト中心から中板100mm 位置の変位,Q b,d b:ボルトのせん断荷重とせん断変形

(剛体中板の反力と変位(図4参照)),Q p,dp:中板の 支圧荷重と支圧変形(剛体ボルトの反力と変位である

(図5(b)参照)).(6.a~c)式からPとdbを消去すると,

( ) p( p) b( p) 0

f xQ d Q d d  (6) dを与え,(6)式を満足するdpを求めて(5.a)式よりP を求めると,継手の荷重Pと変位dが求まることになる.

(6)式の解法には,regular-falsi法を適用する.Qb(db)及

Qp(dp)の関数は耐力劣化を伴う非線形関数なので,

regular-falsi法を適用する際の初期解を良好に選定する

必要がある.Qb及びQpの最大値の大きい方の関数は0 から最大荷重時変位までに解が存在し,その変位までが 単調増加関数であれば,その範囲に初期値を取ることに より一意に解が得られる.これにより,大規模な問題を 2つの領域に分けて,個別に分散して解き,継手の複合 非線形の問題を簡単に解くことができる.

4.3 リゾーニング手法と接触解析

中板には,実験結果から明らかにようにボルト孔が拡 大して初期形状から大きく異なる.初期メッシュのまま だと,要素にゆがみが甚大となり解の誤差が大きくなる ため,10ステップごとに,リゾーニングを計20回行っ た.リゾーニングには2次元アドバンシングフロント法 を用いた.

中板と充填ボルトの接触,充填ボルト同士の接触につ いては,節点で接触・離間を判定し,接触面接線方向に ついては,次式のクーロン摩擦力を生じるものとした.

t n

f     f t (7) 複合非線形解析の解法として,変位増分法とフルニュ

ートン・ラプソン法による反復法を併用した.連立1次 方程式のソルバーは非正定値解法を採用した.ここに,

:摩擦係数,ft:接線方向に作用する力,fn:法線方向 の反力,t:相対速度方向の接線ベクトル.

r r

t V

V ,Vr:相対滑り速度.

中板と充填ボルトとの間の摩擦係数は加力のままで

,充填ボルトのテーパ面の摩擦係数は実測値の

とした.

5 実験結果及び解析結果と考察

結果を図6~10,表1及び写真1~3に示す.

図6は通常ボルト及び充填ボルトについて,ボルト端 部の最大せん断荷重評価値で無次元化したボルトのせ ん断荷重Qb /Q buとボルト軸径で無次元化したせん断値 db/dの関係を図7は,(a)SM490中板について,支圧耐 力評価値で無次元化した,中板の支圧荷重Qp/3dtsuと計 測区間で無次元化した支圧変形dp /Lとの関係を,SM490 中板では,端あき距離e1を20, 30, 40, 60, 80及び100mm について,H-SA700中板ではe1を20, 30, 40, 60及び80mm についての解析値を示す.

図8には,支圧耐力評価値で無次元化した継手の荷重 P/3dtsuと計測区間で無次元化した継手の変形d/Lとの関 係を通常ボルトとSM490中板の場合の実験値,解析値及 び評価値を(a)全体の変形領域,(b)初期の変形領域につい て示す.

図9には,充填ボルトとSM490中板の図8と同様の関 係を,図10には,充填ボルトとH-SA700中板の場合に ついて図8と同様の関係を示す.

表1には,各試験体継手について実験値は,初期剛性 K,降伏荷重Py,最大耐力Pu,最大耐力値変形duと破壊 形式を有限要素解析値については,K,Py,Pu,duを,

評価値は,Pyと降伏形式,Puと破壊形式を示し,実験値 に対する評価値の比,有限要素解析値に対する評価値の 比及び実験値に対する有限要素解析値の比を示す.

写真1, 2には,充填ボルトが破損したH-SA700中板の 端あき距離e1が60mmの試験体(HA60試験体)について,

中板の最終状況を写真1に,充填ボルトの変形性状を写 真2に示す.写真3, 4には,同じく充填ボルトが破損し

たSM490中板の端あき距離が80mmの試験体(HM80試

験体)についてボルトの最終状況を写真3に添板の最終 状況を写真4にそれぞれ示す.

これらの結果からわかることを項目ごとに整理して 示す.

○充填ボルトの変形性状

1) 図6より充填ボルトのせん断荷重とせん断変形関係 は,降伏初期おいては通常ボルトのそれと比べて耐 荷力は小さいものの破断近傍のピーク荷重はほぼ等

19 高強度鋼用の複半月充填ボルト接合法に関する基礎的研究 その4充填ボルト支圧接合継手の載荷実験   

(8)

しい.

2) 写真2のように充填ボルトは2面せん断状態となり,

その耐力は でほぼ評価できる.

○中板の耐力

1) 図7より端あき距離e1が20~40mmまでは,e1を大き くするに従って面最大耐力と耐力低下までの変形量 は大きく,せん断破断したが,e1が60mm~80mmと なると初期の荷重-変形曲線は同一となり,降伏荷 重は限界がある.

2) e1が80mm~100mmの範囲ではH-SA700,SM490のい づれの鋼種でも変形に伴って耐力上昇と大きな変形 性能を発揮する.

○有限要素解析の精度

1) 図8より,接触問題と複合非線形問題を取扱う本解 法により支圧ボルト継手の荷重-変位関係は,中板 の最大耐力・変形能力及び耐力低下特性を含めて工 学上十分な精度で解析することができる.

2) 初期剛性の実験値は,ばらつきが大きい.

○充填ボルトの破壊性状

図9及び写真3,4より,SM490中板で端あき距離が,

50, 80mmの場合,耐力は中板の支圧耐力(3dtsu)まで 到達したが,ボルトのせん断耐力評価値より大幅に 力ない荷重でボルト首の所で引張破断した.これは,

写真4にあるように中板が大きく支圧変形するとと もにボルトが曲げ変形し,添板が外に開いてボルト に大きな引張力が作用したためと考えられる.

○充填ボルトの耐荷性能H-SA700中板の変形能力

1) SM490中板と同様に中板がせん断破断する場合,最

大耐力と評価値は実験値と一致する.

2) 端あき距離e1が60mmと80mmと中板の耐力が大き くなると降伏荷重は限界が生じ,支圧降伏が存在す ることがわかる.この値は,Py1.25  d t suでほぼ 予測できる.

3) 添板の変形ができなければ,ボルトのせん断耐力評 価値まで,充填ボルトは14T素材でも耐力と変形性 能を保持できる.

4) 初期剛性も確保でき,ボルトの荷重-変形関係には,

充填ボルトのテーパ面にスリップバック現象は生じ ない.

5 まとめ

提案する複半月充填ボルト接合継手について中板を

SM490,H-SA700として引張試験を行うとともに,接触

問題,複合非線形問題として有限要素法解析で行ってそ の耐荷性状比較,検討して得られた知見は以下のように 要訳できる.

1) 本有限要素法解析によりボルトの折損性状最大耐力

値については,若干誤差があるもののSM490,

H-SA700中板のせん断力については工学上十分な精

度の荷重-変形問題を追跡できる.

2) 支圧耐力評価値までは,充填ボルト軸部は十分な耐 力を有しており,中板の孔に大きな変形が生じボル トに曲げ変形と添板が変形し,すると最小断面部が 引張破断する傾向にある.

3) 継手の添板に大きな変形が生じなければ,H-SA700 中板を充填ボルト接合すれば,支圧耐力評価値まで の高い接合耐力を保持しつつ,かつ初期剛性を十分 確保することができる.

今後,系統的な解析を行って様々な鋼種の中板につい ての支圧降伏耐力を求めて,その評価値を求めるととも にこの充填ボルト用の弾性接合設計法を構築する予定 である.

謝辞:本実験で使用した超高力摩擦ボルトは新日鐵住金 ボルテン(株)の 畑中 清 様より援助して頂きました.

ここに記して謝意を表する.

参考文献

1) 佐藤篤司,吹田啓一郎,井上一朗,建築構造用高強度鋼材

H-SA700A を用いた柱梁材を弾性に留める乾式接合法の開発,

日本建築学会構造系論文集,第74巻,第646号,

pp.2355-2363,2009.12.

2) 玉井宏章.高松隆夫,尾川勝彦,高強度鋼用の複半月テーパ充 填ボルト接合法に関する基礎的研究,鋼構造年次論文報告集,

第19巻,pp.201-208,2011.11.

3) 日本建築学会,鋼構造接合部設計指針,技報堂,pp.41-61,2006 年.

4) American Institute of Steel Construction: Specification for Structural Steel Buildings,2005.3.

5) 佐藤篤司,吹田啓一郎,多田裕一,支圧を考慮した高力ボル ト接合部の最大耐力評価,日本建築学会構造系論文集,第76 巻,第662号,pp.845-853,2011.4.

6) 安井信行,高力ボルト支圧接合部の降伏耐力,鋼構造年次論 文報告集,第19巻,pp.193-200,2011.11.

7) L.R.Herrmann, ’Elasticity equations for incompressible, or nearly incompressible materials by a variational theorem; J.A.I.A.A. , 3, 1896, 1965.

8) O.C. Zienkiewicz, R.L.Taylor, J.Z.Zhu; ‘The Finite Element Method: Its Basis and Fundamentals, -sixth editions, ELSEVIER, pp.383-393, 2010.

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表 2  素材試験結果  図 2  支圧ボルト継手の載荷試験体 図1 複半月充填ボルト図  表 3  応力・歪関係数値モデル(べき乗則) 表1 実験シリーズと実験・解析・評価結果
図 6  ボルトのせん断荷重-せん断変位関係の解析値(a)  初期メッシュ (b)  相当塑性ひずみ  (a)  SM490 中板 図 7  中板の支圧荷重-支圧変位関係の解析値 (a)  全体 (b)  初期 図 8  中板の支圧荷重-支圧変位関係の解析値 (b)  H-SA700 中板図5 中板の平面初期要素分布とe1=80mm, d=12mmの時の相当塑性ひずみ分布

参照

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