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Academic year: 2021

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はじめに

著者 小池 洋一, 川上 桃子

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア 経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp

シリーズタイトル 経済協力シリーズ 

シリーズ番号 201

雑誌名 産業リンケージと中小企業 : 東アジア電子産業の

視点

ページ iii‑v

発行年 2003

出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL http://hdl.handle.net/2344/00014028

(2)

は じ め に

本書は,アジア経済研究所経済協力研究部が,2002年度に実施した「東ア ジア中小企業の新局面」研究会の成果をとりまとめたものである。本研究会 は,同じメンバーが参加した2001年度の「東アジアにおける新たな中小企業 の発展」研究会に続いて,東アジアの中小企業の現状把握とその発展に向け た課題の抽出を目的として,組織された。

東アジアにおいて,中小企業の育成は常に重要な開発課題の一つであった。

それは単に中小企業が支配的な企業形態で社会的に重要な役割を果たしてい るからだけではない。中小企業とりわけサポーティング・インダストリーと しての中小企業が,低賃金労働による組立を基本とする東アジア製造業の発 展の持続と飛躍にとって不可欠であるとの認識からであった。そこで東アジ ア諸国は,ほとんど例外なく,加工,部品工業を担う中小企業の育成をはか ってきた。

しかし,グローバル化の進展はこれまでの一国レベルの中小企業政策の有 効性を著しく減殺することになった。中小企業はもはや局地的,閉鎖的な経 済ではなくグローバルな世界に生きている。海外との厳しい競争にさらされ ている。グローバル化時代のモノ作りの特徴は,製品の企画,デザイン,部 品・原材料の生産,組立,販売などの経済機能がチェーンのように国境を越 えて連結していることである。グローバルに編成された産業リンケージ,チ ェーンにどのように参加するかが,中小企業の発展を左右している。グロー バルな産業リンケージ,それを編成し統治する先進国企業と東アジアの大企 業の立地戦略が中小企業の発展を規定する要因として重要になっている。

グローバルな産業リンケージ,チェーンの編成のなか,東アジアでは多く 産業リンケージ はじめに  04.7.20  11:07  ページiii

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の伝統的な中小企業が淘汰され,他方で優れた経営能力,技術をもつ新しい 中小企業が誕生しつつある。勝者と敗者の出現は企業間だけではなく各国間 でも生じている。特定の経済機能,あるいは多くの経済機能が特定の国に集 中している。具体的には,中国に多くの工業製品の生産と多くの経済機能が 集中する一方で,他の東アジア諸国ではそれらが縮小しつつある。それは後 者の国々で中小企業の地位が後退することを意味する。

先に,グローバル化によって中小企業政策の有効性は著しく減殺されると 述べたが,中小企業政策の意義が失われたわけではない。東アジア工業の発 展にとって外国企業の役割は今後とも重要となるが,その立地を決定するの は,低賃金労働の存在以上に産業集積の厚さである。産業集積の厚さが外国 投資と産業発展を左右する。その意味で,加工,部品工業などの関連産業,

それらを担う中小企業の重要性はますます高まっている。中国が多数の外国 投資を吸引し生産拠点として地位を高めているのは,多様な規模の企業と産 業の集積が形成されつつあるからである。

本書は,東アジアにおける産業リンケージ再編と新たな中小企業の出現を,

成長著しい電子産業に焦点をあて,明らかにすることを目的としている。具 体的には,グローバル化に伴い電子産業でどのような産業リンケージが形成 されているのか,東アジア各国はリンケージにどのように参加しているのか,

中国の成長は他の東アジア諸国の産業にどのような影響を与えているのか,

そして産業リンケージのなかで中小企業はどのような役割を担っているか,

従来とは異なる新しい中小企業が生まれているのか,各国で電子産業と中小 企業の発展のため,どのような政策が必要かを明らかにすることを目的とし ている。

東アジアの産業リンケージを議論することは,日本の産業,中小企業,そ れらを対象とする政策を考える上でも,次のような意義がある。電子産業で は,組立工程の集積に伴い,部品生産・加工工程の中国など東アジアへの移 転が進み,日本国内の生産基盤が縮小しつつある。それは日本産業の将来に 対する危機感を醸成し,産業合理化,雇用制度見直し,果ては為替切下げ,

iv

産業リンケージ はじめに  04.7.20  11:07  ページiv

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インフレ・ターゲット論など安易で危険の高い政策へと,企業,政府を駆り 立てている。しかし,日本の産業,企業にとって重要なのは,成長著しい東 アジアをいかに自らの生産・流通体制のなかに編入するかであり,また日本 国内においていかに新製品,技術開発を行なうか,新産業を創造するかであ る。

本研究会の実施にあたっては,多くの方々にご協力をいただいた。2年間 にわたる研究会で,講師・コメンテーターとして貴重なお話をいただいた,

安部忠彦(富士通総研),天野倫文(東洋大学経営学部),金良姫(韓国・対外 経済政策研究院),黒田篤郎(経済産業省貿易経済協力局),五味紀男(立教大学 大学院ビジネスデザイン研究科),佐藤百合(地域研究第1部),野口 眞(専修 大学経済学部),平井東幸(岐阜経済大学),藤本隆宏(東京大学大学院経済学研 究科),丸川知雄(東京大学社会科学研究所)の各氏(肩書きはいずれも当時)

に,御礼申し上げる。今井健一(地域研究第1部),東 茂樹(同)の各氏に は,研究会オブザーバーとして参加していただき,多数の貴重な意見をいた だいた。また,研究会メンバーの調査にあたっては,内外の企業・関連諸機 関の方々にご協力をいただいた。心より感謝申し上げる。

東アジアの産業リンケージは常に変化をとげ,日々再編,深化している。

本書はある時期の断面を分析したものにすぎない。したがって,本書の評価 は,東アジアの産業リンケージが今後どう展開するかによって決まるが,も う一つには読者が本書をどう読むかによっても決まる。読者の方々の忌憚の ないご批判を期待したい。

2003年3月

編 者

はじめに  

v

産業リンケージ はじめに  04.7.20  11:07  ページv

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