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山口 聡

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(1)

ポスト壁キャビティ付誘電体スラブを装荷した定在波型導波管 シリーズスロットアレーアンテナ

山口 聡

a)

高橋 徹

荒巻 洋二

大塚 昌孝

小西 善彦

澤谷 邦男

††

A Series-Slotted Waveguide Array Antenna Covered by a Dielectric Slab with a Post-Wall Cavity

Satoshi YAMAGUCHI

a)

, Toru TAKAHASHI

, Yoji ARAMAKI

, Masataka OHTSUKA

, Yoshihiko KONISHI

, and Kunio SAWAYA

††

あらまし 導波管スロットアレーアンテナの設計では,放射スロットの寸法を適切に調節することによってア ンテナ入力端の整合を図り,かつ所望の励振分布が得られるようにする.ただし,スロットがシリーズ型の場合 はその長さしかパラメータがないので,共振特性は得られても,放射量をスロット形状のみで制御することは困 難である.本論文では,定在波型導波管シリーズスロットアンテナにおいて,スロットの前面に導体のスペーサ を設け,その先にポスト壁キャビティ付誘電体スラブを装荷する構造を提案する.本構成によってシリーズ型ス ロットのインピーダンスを調整しつつ放射パターンを成形できることを示す.実際にアンテナを試作評価し,提 案構造の有効性を示している.

キーワード 導波管,スロットアレーアンテナ,誘電体スラブ,ポスト壁キャビティ

1.

ま え が き

高周波帯でも低損失なアンテナとして導波管スロッ トアレーアンテナ

[1]

[4]

が広く知られている.導波 管へのスロット配置は,導波管内を流れる電流の遮り 方によって,

(i)

シリーズ型(管軸方向電流を遮るよ うにスロットを配置),

(ii)

シャント型(管幅方向電流 を遮るようにスロットを配置),

(iii)

コンパウンド型

(管軸及び管幅方向電流の両者を遮るようにスロットを 配置)の

3

種類に大別される.導波管スロットアレー アンテナの設計では,放射スロットの寸法を適切に調 節することによってアンテナ入力端の整合を図り,か つ所望の励振分布が得られるようにする.このうち,

シャント型及びコンパウンド型は,スロットの長さと

三菱電機株式会社,鎌倉市

Mitsubishi Electric Corporation, 5–1–1 Ofuna, Kamakura- shi, 247–8501 Japan

††東北大学,仙台市

Tohoku University, 6–6–5 Aramaki Aza Aoba, Aoba-ku, Sendai-shi, 980–8579 Japan

a) E-mail: [email protected]

管軸からのオフセット量の二つのパラメータを適切に 選ぶことで容易に設計が可能である.主にスロット長 で共振周波数(スロットのリアクタンス)を,管軸か らのオフセット量で放射量(スロットの放射抵抗)を 調節することができる.

一方,スロットがシリーズ型の場合は,基本的にス ロット長しかパラメータがないので,共振特性は得ら れても,放射量をスロット形状のみで制御することは 困難である.そこで従来は,進行波励振型アレーアン テナにおいて,スロットの長さを様々に変えた非共振 スロットを用いてスロットからの放射量を制御し,素 子間隔を

λ

g

λ

gは導波管の管内波長)から若干ずら すことでスロットからの反射波を打ち消すようにして 整合を図っている.この場合,主ビーム方向が導波管 の法線方向にはならずチルトしてしまう.この問題に 対しては,素子間隔を

λ

gとし,スロットの近傍に整 合用のスロット

[5]

やポスト

[6]

を隣接して配置するこ とでスロットからの反射を抑圧し,所望の特性が得ら れるようにした例が報告されている.

これに対し,定在波励振型のシリーズスロットア

(2)

の管軸に平行な偏波を有するアンテナ等を導波管の励 振タイプによらずに実現できるようになり,導波管ス ロットアレーアンテナの選択の幅が広がるといえる.

ところで,アンテナを風雨や塵などの外部環境か ら保護するため,スロットの前面には誘電体のカバー

(レドーム)が装着されるのが一般的である.このと き,誘電体の厚さや誘電率,スロットと誘電体の距離 に応じてスロットのインピーダンスが変化すること が報告されている

[7]

[13]

.そこで,誘電体の効果を 利用すれば,導波管シリーズスロットアンテナのイン ピーダンスを任意に制御できることが期待できる.た だし,誘電体の厚さや誘電率は自由には選べず,また,

スロットの前面に誘電体を保持する具体的な構造を明 確にする必要がある.更に従来の報告では,誘電体を スロットに近接して装荷した場合の放射指向性に関す る記述は見当たらない.

これらを背景として,本論文では定在波型導波管シ リーズスロットアンテナにおいて,共振長スロットの 低インピーダンス化を図り,アンテナの整合性を向上 させる方法を示す.その方法として,シリーズスロッ トの前面に導体のスペーサを設け,その先にポスト壁 キャビティ付誘電体スラブを装荷する構造を提案する.

本提案構造はアンテナの放射パターンを成形できるこ とも示す.また,スロットをアレー化する際は素子間 隔を

λ

gとするが,中空導波管では

λ

g

> λ

0

λ

0:自由 空間波長)となるため,管内波長を短縮する構造が必 要になる.そこで管内波長短縮構造として,導波管の 幅広面に山形状に並べたポストを設ける構造を提案す る.この管内波長短縮構造によってもシリーズスロッ トのインピーダンスを調整できることを示す.最後に,

提案構造の有効性をアンテナ試作により評価する.

2.

アンテナ構成

2. 1 2

層構造導波管スロットアレーアンテナ

本論文で提案するアレーアンテナは,最終的に図

1

に示すような

2

層構造の導波管スロットアレーアンテ ナに適用することを目的とする.放射導波管の背面に

1 2層構造導波管スロットアレーアンテナの例 Fig. 1 Example of 2 layer slotted-waveguide array

antenna.

給電用導波管が備えられ,両者は結合スロットを介し て接続された構造である.このような多層構造の導波 管スロットアレーアンテナは,アンテナの広帯域化や 導波管のレイアウトの点で優れていることから広く検 討されている

[14]

[16]

2

層構造定在波型導波管スロットアレーの設計では,

スロット素子の放射インピーダンスを放射導波管の 特性インピーダンスで規格化したものを

Z

と表すと,

放射導波管内の規格化素子インピーダンスの総和が

2 (ΣZ = 2)

となるようにする

[17]

.この条件を満たす とき,放射導波管から給電導波管への反射がゼロとな り,放射部と給電部を各々独立に設計することができ る.図

1

の例では,放射導波管内のスロットが

7

素子 であるので,スロット

1

素子当りの規格化放射抵抗は

R = 2/7 = 0.29

となるようにすればよい.しかしな がら,シリーズスロットの規格化放射抵抗は共振時に

R 1

程度の高い値を有するので,上記条件を満足す るためには

R

を小さくする必要がある.

2. 2

提 案 構 造

提案するアンテナ構成を図

2

に示す.この図は図

1

の放射導波管のうち,結合スロットから

6

素子側を見 たものに相当しており,導波管の一端より給電し,先 端は短絡されている.導波管シリーズスロットアンテ ナの前面に導体のスペーサを設け,その上に誘電体ス ラブを設ける.誘電体は両面が導体フィルムで被膜さ れており,アンテナの開口部のみ方形状に導体が取り 除かれている.また,平行平板モードが基板内を伝わ ることを防ぐために,開口部周囲に沿ってポスト壁が 設けられている.従来のように誘電体スラブを密着 させて,スラブの厚さと誘電率の値でスロットのイン ピーダンスを調整してもよいが,一般に厚さと誘電率 は自由には選べない.そこで,提案構造では使用する

(3)

(a)見取図

(b)側面図 2 アンテナ構成 Fig. 2 Antenna configuration.

誘電体の種類を固定し,導体スペーサの高さとスロッ ト長によってインピーダンスを調整する.

中空導波管においてシリーズスロットを

λ

0 以下で 配列するために,本論文では導波管の管内波長短縮構 造として,図

2

に示すような複数のポストが山形状に 導波管の幅広面から突出する構造を提案する.図

2

は山形状ポスト列は各放射スロットの間に,底側の導 波管幅広面に設けられているが,上側の幅広面に設け ることもでき,後述するようにこの設置位置によって もスロットのインピーダンスを調整できる.

3.

3. 1

伝送線路モデルを用いた誘電体スラブの反射 係数の評価

本アンテナでは,誘電体スラブからの反射波を積極 的に利用することでスロットのインピーダンスを制御 する.そこでまず,簡単な伝送線路モデルを用いて,

誘電体スラブからの反射波がスロットに及ぼす影響を 簡易的に見積もる.伝送線路モデルを図

3

に示す.ス ロットの前面に高さ

H

の導体スペーサと厚さ

t

の誘

3 伝送線路モデル Fig. 3 Transmission line model.

電体スラブが順に接続され,その先が波動インピーダ ンス

Z

L

= 120π [Ω]

で終端されている.各々の線路の 特性インピーダンスと位相定数は,

⎧ ⎪

⎪ ⎨

⎪ ⎪

Z

sp

= η

0

1

0

/2a

sp

)

2

β

sp

= 2π

λ

0

1

0

/2a

sp

)

2

(1)

⎧ ⎪

⎪ ⎩

Z

di

= η

0

ε

r

β

di

= 2π λ

0

ε

r

(2)

で表される.ここで,

a

spは導体スペーサの辺の長さ であり,式

(1)

a

spを幅広面寸法とする導波管の基 本モードである

TE

10モードについて表したものであ る.また,

η

0

= 120π [Ω]

は真空の波動インピーダン スであり,

ε

rは誘電体スラブの比誘電率である.次に,

各伝送線路の

F

マトリックスは,

[F

i

] =

A

i

B

i

C

i

D

i

(3)

⎧ ⎪

⎪ ⎪

⎪ ⎪

⎪ ⎪

⎪ ⎪

⎪ ⎩

A

i

= cos β

i

l

i

B

i

= jZ

i

sin β

i

l

i

C

i

= j 1

Z

i

sin β

i

l

i

D

i

= cos β

i

l

i

(4)

で表される.ここで,

i = sp

di

,すなわち

l

sp

= H

l

di

= t

である.層全体の

F

マトリックス

F

Tはこれ らの積をとることにより,

[F

T

] = [F

sp

][F

di

] (5)

で与えられる.最後に,反射係数の規格化インピーダ ンスを

Z

0とすると,反射係数

Γ

は,

Γ = (A

T

Z

L

+ B

T

) (C

T

Z

L

+ D

T

)Z

0

(A

T

Z

L

+ B

T

) + (C

T

Z

L

+ D

T

)Z

0

(6)

(4)

4 誘電体スラブ厚さtに対する反射係数振幅 Fig. 4 Amplitude of reflection coefficient as a

function of dielectric slab thicknesst.

5 導体スペーサ高さHに対する反射係数位相 Fig. 5 Phase of reflection coefficient as a function of

conducting spacer heightH.

から求められる.反射係数

Γ

の位相基準は,図

3

に 示すようにスロットとスペーサ領域の境目である.

(6)

において

Z

0

= Z

spとしたときの反射係数 の計算例を図

4

,図

5

に示す.図

4

は誘電体スラブ の厚さ

t

を変数としたときの反射係数の振幅の変化 を示しており,固定するパラメータは

a

sp

= 0.73λ

0

H = 0.15λ

0である.比誘電率

ε

r

2.94

4.5

9.2

3

ケースを示している.図

4

の横軸は,誘電体の 実効波長を考慮して,

t

ef f

=

ε

r

t

である.図より,

t

ef f

= 0.25λ

0 で反射係数が極大,

t

ef f

= 0.50λ

0で 反射係数が極小になり,この関係を繰り返すよく知 られた結果が得られている.誘電体スラブからの反 射波を最大限に利用するためには,誘電体の厚さが

t

ef f

= 0.25λ

0となるように選べばよい.また,より大 きな効果を得たい場合には,

ε

rが大きい材料を選べば よい.なお,反射係数の極小値が約

−16 dB

となって

で与えられる.前述のとおり,

Z

L

= 377 [Ω]

Z

0

= Z

sp で あ り,

Z

sp は 式

(1)

a

sp

= 0.73λ

0 か ら

Z

sp

= 516 [Ω]

と求められるので,式

(7)

から反射 係数は

−16.1 dB

となる.

次 に ,

a

sp

= 0.73λ

0

ε

r

= 2.94

t = 0.06λ

0

(t

ef f

= 0.1λ

0

)

とし,導体スペーサの高さ

H

を変 数としたときの反射係数の位相の変化を図

5

に示す.

H

に応じて反射係数の位相は線形に変化することが確 認できる.前述したように,シリーズスロットのイン ピーダンス

Z

は共振時において高い放射抵抗を有す るため,アンテナを設計する際には

Z

を低くしたい場 合がほとんどである.ゆえに,入射波に対して誘電体 スラブからの反射波の位相を逆相にすることによりス ロット上の電界を弱めてインピーダンスを減少させる ことができる.したがって,図

3

における反射係数

Γ

の位相が逆相となる領域で使用することが望ましい.

以上より,この伝送線路モデルを用いることにより,

誘電体スラブの厚さ

t

と比誘電率

ε

r,及び導体スペー サの高さ

H

の組合せに対する反射係数

Γ

の振幅,位 相の傾向を把握することができる.アンテナ設計の開 始段階でこれらの関係を踏まえておけば,以降の設計 の見通しをよくすることができる.

3. 2

ポスト壁キャビティ付誘電体スラブの効果 本節では電磁界シミュレータ

HFSS

を用いることに より,提案構造の効果を具体的に調べる.簡単のため に,図

6

に示すようなアンテナ単素子を考え,山形状 ポスト列波長短縮構造をここでは省略する.固定のパ ラメータは表

1

のとおりである.また,誘電体の厚さ は

t = 0.06λ

0

(t

ef f

= 0.1λ

0

)

である.先に述べたよ うに

t

ef f

= 0.25λ

0のときに誘電体スラブ装荷の効果 が最も強く現れるが,誘電体基板を市販品カタログの 中から選ぶ都合上この寸法を選んだ.

なお,本節以降で述べる放射インピーダンス(放射 抵抗),入力インピーダンス(入力抵抗)は全て放射 導波管の特性インピーダンスで規格化した値である.

はじめに,シリーズスロットの放射インピーダンス

Z

を評価する.図

6

において,導波管の両端を給電

(5)

(a)見取図

(b)側面図 6 素子アンテナ構成 Fig. 6 Configuration of slot element.

1 アンテナの寸法(寸法の単位:λ0 Table 1 Dimension of slot element. (unit:λ0)

導波管サイズ 0.90×0.47

スロット幅 0.07

スロット壁厚 0.04

スペーサ開口寸法asp 0.73 ポスト壁キャビティ寸法apw 0.95 誘電体比誘電率εr 2.94 誘電体誘電正接 0.0012

誘電体厚t 0.06

ポートとして

2 × 2

の散乱行列

S

を計算する.このと き,散乱行列の位相基準をシリーズスロットの直下に シフトさせる.そして,得られた散乱行列を用いて,

放射インピーダンス

Z

を,

S

11

S

12

S

21

S

22

= 1

Z + 2

Z 2

2 Z

(8)

の関係より求める.

導体スペーサの高さ

H

を変数としたときのスロッ トの放射抵抗

R

の変化を図

7

に示す.

H = 0

は導体 スペーサがない状態,すなわち誘電体スラブがスロッ トに密着していることを表す.比較のために,図

8

示すようなスラブのみ(導体フィルムとポスト壁なし,

導体スペーサあり;

Slab Only with Spacer

)とスロッ

7 導体スペーサ高さHに対するスロットの規格化放 射抵抗

Fig. 7 Normalized resistance of slot element as a function of conducting spacer heightH.

8 比較するアンテナモデル Fig. 8 Antenna models for comparison.

9 導体スペーサ高さHに対するスロット共振長 Fig. 9 Resonant slot length as a function of

conducting spacer heightH.

トのみ(導体スペーサもなし;

Slot Only

)の場合も 併せて示す.これらは各々共振する(リアクタンスが ゼロとなる)ようにスロット長

L

を調整した結果であ り,対応するスロット長を図

9

に示す.図

7

より,導 体スペーサの高さ

H

を変化させることにより広い範 囲で放射抵抗の値を制御できることが確認できる.ま

(6)

10 指向性利得パターン Fig. 10 Directivity pattern of slot element.

た,図

5

と対比すると,反射係数

Γ

の位相が逆相と なる条件で

R

が低くなり,同相となる条件では

R

高くなることが確認できる.特に放射抵抗をスロット

のみの

R = 0.89

よりも小さくできる点で大きな利点

を有している.なお,本図からはポスト壁キャビティ の有無の差は見られないので,

3. 1

で述べた簡易評価 が図

6

のポスト壁キャビティ付構造にも適用できると いえる.

次に,

H = 0.15λ

0 の場合の放射パターンを図

10

に示す.正面方向の指向性利得は,スロットのみが

5.17 dBi

,スラブのみで

8.02 dBi

であり,図

6

の構造

では

9.42 dBi

である.導体スペーサを装着すること

によって,ビームが絞られて利得が向上することが分 かる.図

6

の構造の場合に最も高い利得が得られた のは,ポスト壁によって誘電体を伝わる不要な成分が 減ったためと考えられる.

3. 3

山形状ポスト列波長短縮構造の効果

シリーズスロットアレーの素子間隔を

λ

0 以下とす るために,導波管に図

11

のような山形状ポスト列か らなる管内波長短縮構造を設ける.導波管の管内波長 短縮構造としてはコルゲート構造やリッジ構造なども 考えられるが,導体突出部が比較的少なくコンパクト な形で実現するものとして本構造を考案した.山形状 ポスト列の設計に際しては,ポストの平均的な高さで 位相回転量を制御し,中央と両端の高さの違いで不連 続部(ポスト)の反射を打ち消すようにする.図

11

に示す山形ポスト列を含む導波管の

1

区間当りの位相 差を図

12

に示す.ただし,スロットアレーの素子間 隔を

λ

g

= 0.95λ

0 と想定し,この

g区間の位相差 を表している.また,比較のためにストレート導波管

11 山形状ポスト列管内波長短縮構造(寸法単位:λ0 Fig. 11 Phase adjustment structure. (unit:λ0)

12 1λg区間の位相差 Fig. 12 Phase difference between ports.

(1λ

g

= 1.20λ

0

)

の結果も併せて示す.中心周波数で同 相となる所望の特性が得られており,

λ

g

< λ

0を実現 した.また,区間内の反射係数は約

−30 dB

であり十 分小さいことが確認できた.

次に,図

13

のようにシリーズスロットの両側に山 形状ポスト列を設けたモデルで,前節と同様に導体ス ペーサ高さ

H

を変数としたときのスロットの放射イ ンピーダンス

Z

を調べた.ただし,図

13

は導波管内 部に山形状ポスト列を含んでいるので,位相基準を給 電ポートと同じ面にして散乱行列

S

を計算し,式

(8)

より

Z

を求めた.中心周波数において,山形状ポスト 列を含む区間の管内波長は

λ

gであるため,等価回路

は図

13 (b)

の右に示す形で表すことができる.これよ

り,シリーズスロットから給電ポートまでの長さによ る位相差を含まない形で

Z

を評価できるものと考え られる.

山形状ポスト列の設け方は導波管の底面(

Lower

Side

:図

13

の構造),あるいは上面(

Upper Side

スロットと同じ面)の

2

種類が考えられるので,底

(7)

(a)見取図

(b)側面図

13 山形状ポスト列付素子アンテナ構成 Fig. 13 Configuration of slot element with phase

adjustment structure.

14 導体スペーサ高さHに対する山形状ポスト列装荷 時のスロットの規格化放射抵抗

Fig. 14 Normalized resistance of slot element with phase adjustment structure as a function of conducting spacer heightH.

面だけでなく上面の場合も計算した.スロットのみ の場合と提案構造のそれぞれに対する結果を図

14

示す.ただし,低姿勢化の観点から実用上有用となる

H < 0.25λ

0の範囲を示している.これらは各々共振 するようにスロット長

L

を調節した結果である.誘電

15 入力インピーダンスの比較

Fig. 15 Comparison of calculated input impedance between w or w/o proposed structure.

体スラブの効果に加え,山形状ポスト列の設置位置に 応じてより広い範囲で放射抵抗を制御できることが分 かる.これは山形状ポスト列の存在によって導波管の 上下方向の対称性がくずれ,幅広面上を流れる表面電 流分布が異なっているためである.

定在波型アレーでは一つの放射導波管に設けるス ロット数は一般に

3

10

素子程度であり,これに対応 する規格化放射抵抗の所望値は

R = 0.2

0.7

程度と なるので,山形状ポスト列を底面側に設けた構造が適 していると考えられる.また,スロットのみの構造に山 形状ポスト列を底面側に設けただけでは

R = 0.4

程度 が限界であるが,誘電体スラブを装荷することでより 低い放射抵抗

R = 0.2

0.4

を実現することができた.

3. 4

アレーアンテナの設計

本節ではアレーアンテナの設計結果を示す.本論文 の目的は,最終的に図

1

2

層構造の導波管シリーズ スロット

7

素子アレーの整合を図ることである.図

1

の構成要素のうち,結合スロットから見て放射導波管の

6

素子アレー側を取り出し,これにポスト壁キャビティ 付誘電体スラブと山形状ポスト列を適用したものが図

2

であった.以降では,図

2

を検討用のサブアレーとし てアンテナの設計を行う.

2. 1

でも述べたように,ス ロット素子の放射抵抗を

7

素子アレー用に

R = 2/7

することを前提にするので,図

2

6

素子アレーの入 力抵抗の設計目標値は

R

in

= 6 × 2/7 = 1.71

となる.

入力インピーダンスの計算結果を図

15

に示す.こ こで導体スペーサの高さは

H = 0.15λ

0,スロット長

(8)

16 放射パターンの比較(E面)

Fig. 16 Comparison of radiation pattern inE-plane between w or w/o proposed structure.

は全ての素子で同一で

L = 0.48λ

0である.比較のた め,スロットのみの場合を併せて示す.スミスチャー ト中の周波数ポイントは

f

0を中心とした

±1.2%

の比 帯域分を表している.スロットのみの場合は目標値に 対して高抵抗な特性を有しており,また,周波数特性 が非常に大きいことから,アレーアンテナとして整 合を図ることが困難であることが分かる.一方,提 案構造の入力インピーダンスは中心周波数において

Z

in

= 1.60 j0.06

であり,ほぼ目標どおりの結果が 得られている.

E

面放射パターンの比較を図

16

に示す.素子間隔

0.95λ

0と比較的広いため,スロットのみの構造では 広角側にグレーティングローブの一部が現れてしまう のに対して,提案構造では大きく改善している.これ は,図

10

で示したようにポスト壁キャビティ構造に よりスロット素子のビームが絞られた効果であり,こ れによりアンテナの正面方向の利得も約

3 dB

向上す る結果を得た.なお,誘電体スラブの損失は

0.16 dB

と小さいことを確認している.

4.

実 測 結 果

前章までの検討結果をもとに,図

2

6

素子一端給 電アレーを実際に試作して評価を行った.設計周波数 は

Q

帯である.導波管スロットアレーは複数の層に分 けて各々をアルミ切削加工し,ロウ付けした.誘電体 基板の接着には導電性接着剤を用いた.

規格化入力インピーダンスの実測値と計算値の比較 を図

17

に示す.実測値は

Z

in

= 1.84 j0.01

であり,

計算値によく一致した結果が得られた.次に,放射パ

17 入力インピーダンスの設計値と実測値の比較 Fig. 17 Comparison of calculated and measured

input impedance.

18 放射パターンの設計値と実測値の比較 Fig. 18 Comparison of calculated and measured

radiation pattern inE-plane.

2 アンテナ損失の見積り Table 2 Estimation of antenna loss.

動作利得(実測値) 16.57 dBi 反射損(実測値) 0.40 dB 指向性利得(計算値) 17.57 dBi アンテナ損失(推定値) 0.60 dB

ターンの比較を図

18

に示す.放射パターンの形状は 両者ともよく一致していることが確認できる.

得られた結果をもとにアンテナ損失を見積った結果 を表

2

に示す.中心周波数において,動作利得の実測 値は

16.57 dBi

であった.この値から,図

17

から求め られる反射損

0.40 dB

を補正すると,アンテナの利得 は

16.97 dBi

である.指向性利得の計算値は

17.57 dBi

であり,図

18

においてパターン形状がよく一致して

(9)

3 損失の内訳 Table 3 Loss budget.

誘電体スラブ(計算値) 0.16 dB 導波管スロットアレー(計算値) 0.10 dB 変換器損,製造誤差 0.34 dB

いることから実測値のそれも同一であるとみなすと,

アンテナの損失は

0.60 dB

と見積もられる.損失の内 訳を表

3

に示す.前述したとおり誘電体スラブの損失 の計算値は

0.16 dB

であり,またアルミ部材による導 波管スロットアレー本体の損失の計算値は

0.10 dB

ある.残りの

0.34 dB

は測定器との接続に用いた変換 器と製造誤差の影響と考えられる.誘電体スラブの分 だけ損失が若干増加してしまうものの,スロットの低 インピーダンス化による整合性の大幅な向上,及びこ れに伴う広帯域化,ロバスト化といった利点が得られ るので,提案構造は実用上有効であると考えられる.

5.

む す び

本論文ではポスト壁キャビティ付き誘電体スラブを 装荷した導波管シリーズスロットアンテナを提案した.

誘電体スラブを設け,導体スペーサの高さを調節する ことにより,シリーズスロットのインピーダンスを比 較的自由に制御できることを示した.これにより従 来は困難であった定在波型導波管シリーズスロットア レーアンテナの広帯域化が期待できる.実際にアンテ ナを試作評価したところ,設計値によく一致した良好 な結果が得られることを確認し,提案構造の有効性を 実証した.

文 献

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(平成24105日受付,25117日再受付)

山口 聡 (正員)

11東北大・工・通信卒.平13同大大 学院修士課程了.同年三菱電機(株)入社.

以来,レーダ,ミリ波通信等のアンテナに 関する研究に従事.現在,同社通信機製作 所技術部に勤務.平19本会学術奨励賞受 賞.IEEE会員.

(10)

荒巻 洋二

11九大・工・情報卒.平13同大大 学院修士課程了.同年三菱電機(株)入社.

以来,マイクロ波・ミリ波帯分波回路,分 配回路等のアンテナ給電回路の研究に従事.

現在,同社情報技術総合研究所知的財産セ ンターに所属.平18本会学術奨励賞受賞.

IEEE会員.

大塚 昌孝 (正員)

62早大・理工・電子通信卒.平元同 大大学院修士課程了.同年三菱電機(株)

入社.以来,レーダ,衛星通信,移動体衛 星通信,携帯電話等のアンテナ,アンテナ システムに関する研究に従事.現在,同社 情報技術総合研究所開発戦略部に所属.博 士(工学).IEEE会員.

小西 善彦 (正員:フェロー)

57早大・理工・電子通信卒.昭59 大大学院修士課程了.同年三菱電機(株)

入社.以来,レーダ,衛星通信等のアンテナ の研究に従事.昭63(株)ATR光電波通 信研究所に出向.通信用アクティブアレー アンテナの研究に従事.平3三菱電機(株)

に復帰.現在,同社情報技術総合研究所アンテナ技術部長.博 士(工学).平元篠原記念学術奨励賞,2001R&D100賞,第58 回電気科学技術奨励賞,第22回電波功績賞総務大臣賞,2011 本会論文賞受賞.IEEEシニア会員.

澤谷 邦男 (正員:フェロー)

46東北大・工・通信卒.昭51同大大 学院博士課程了.現在同大学院工学研究科 通信工学専攻教授.プラズマ中のアンテナ,

プラズマ加熱用アンテナ,超伝導アンテナ,

電磁波の散乱・回折理論,移動通信用アン テナ,アレーアンテナの研究に従事.工博.

IEEEシニアメンバー,映像情報メディア学会会員.昭56 会学術奨励賞,昭63同論文賞,平18同通ソ論文賞,平21 喜安善市賞受賞.

図 5 導体スペーサ高さ H に対する反射係数位相 Fig. 5 Phase of reflection coefficient as a function of
図 8 比較するアンテナモデル Fig. 8 Antenna models for comparison.
図 12 1 λ g 区間の位相差 Fig. 12 Phase difference between ports.
図 13 山形状ポスト列付素子アンテナ構成 Fig. 13 Configuration of slot element with phase
+2

参照

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