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2007, JAPT石油技術協会誌 第 72 巻 第 2 号 (平成 19 年 3 月)
JOURNAL OF THE JAPANESE ASSOCIATION FOR PETROLEUM TECHNOLOGY VOL. 72, NO. 2(March, 2007)
講 演 1. は じ め に 私は今年の3 月まで 3 年間インドのゴアに駐在してお り,4 月に日本へ戻って来てからは排出権関連の仕事に 携わっている。 本日の講演では,京都議定書に関する基本的な内容の 説明と,弊社三井物産㈱の排出権に関連する活動状況な どを中心に述べる。 本日の話題はトピックスを大きく3 つに分け説明す る。まず1 つめが地球温暖化と京都議定書という観点, 2 つめが CDM(クリーン開発メカニズム)の現状,最 後に弊社三井物産㈱のCDM に関する取り組みについて 紹介する。 2. 地球温暖化と京都議定書 2.1 地球温暖化 まず最初に,過去のヒストリカルな温暖化ガスの発生 状況について説明する。 産業革命の起こった1750 年頃から,以降ずっと CO(二2 酸化炭素)の排出量は増え続けている。100 年単位でこ れを見ると,最初の100 年間についてはさほど CO2の排 出量は増えていないが,これが次の100 年間で増加量が 次第に大きくなって,その後,CO2の排出量は特に最近 は加速度的に増加している。化石燃料の大量消費,森林 の伐採というようなものが要因となり,大気中のCO2の 急激な上昇がもたらされ,地球上の平均気温の上昇につ ながっていると考えられる。 太陽光が地表を暖め,これが地表から赤外線というか たちで放射されて,熱が大気中に放出される際,通常大 気圏外に徐々に発散していくものが,温暖化ガスの存在 により熱が大気中にとどまってしまうというのが問題で あり,いろいろな悪影響が出てくる。 例えば,異常気象の増加,水資源への影響,農業や食 料への悪影響,生態系の破壊,海面上昇による沿岸部へ * 平成 18 年 10 月 31 日,平成 18 年度石油技術協会秋季講演会「地 球環境にやさしいエネルギー開発技術」(∼石油開発における 環境保全への取り組み∼)にて講演 This paper was delivered at the 2006 JAPT Autumn Meeting entitled “Environment & Energy Development – Challenges for Environmental Management in the Oil Industry” held in Tokyo, Japan, October 31, 2006. ** 三井物産㈱ Mitsui & Co., Ltd.
京都議定書を取巻く環境と
CDM 事業
*穂 刈 猛
**(Received March 9, 2007:accept March 9, 2007)
Kyoto Protocol and Circumstances of CDM Activities
Takeshi Hokari
Abstract: Kyoto Protocol, which was adopted in December 1997, ratifi ed by Russia in November 2004, has
been effective since February 2005.
In Kyoto Protocol, the epoch-making Mechanism called Kyoto Mechanism to control six types of greenhouse gases has been incorporated in order to prevent global warming.
Up to now, many types of emission reduction projects to create carbon credits have been considered and developed in the world, among those projects, the most typical projects called CDM projects are forecasted and general framework of the CDM such as rules, procedures, type of projects etc. are explained in this presentation.
In addition to the abovementioned topics, activities of Mitsui & Co., Ltd. regarding carbon credit business are also explained. Some of ongoing CDM projects developed by Mitsui & Co., Ltd are introduced in the presentation.
の影響,気候変動に伴う疫病地域の拡散などの影響もあ る(図1)。 CO2排出量を時系列的に示した図2 を参照されたい。 前述のとおり,1750 年から最初の 100 年間,ほとんど CO2の発生量は増えていないが,次の100 年間で徐々に 発生量が増えてきて,第二次世界大戦以後,急激に二酸 化炭素の排出量は増えている。 この排出の主要なものは石炭であったが,ある時点か らは石油・ガスからの排出量も増加していることが分か る。現在の世界全体の排出量のレベルが大体250 億トン 前後となっている。 図3 は CO2排出量の国別分布を示したものである。1 番の排出国はアメリカで,全体の4 分の 1,その次に中国, ロシア,日本と続き,上位4 カ国で世界中の排出量の大 体半分ぐらいを占めている状況である。 2.2 京都議定書 次に京都議定書の概要について簡単に説明する。ご存 じのとおり,1997 年 12 月の京都議定書採択後,2001 年 にアメリカの離脱,2004 年 11 月にロシアの批准という ような大きな動きを経て,2005 年 2 月に京都議定書は 発効した(図4)。 京都議定書では,温暖化防止のために具体的な温室効 果ガス削減目標を設定している。対象となるガスは6 種 類あり,CO2(二酸化炭素),CH4(メタン),N2O(一酸 化二窒素),HFC(ハイドロフルオロカーボン),PFC(パー フルオロカーボン),SF6(六フッ化硫黄)の6 種類のガ スが温暖化ガスとして京都議定書に定められている。こ のガスについて2008 年から 2012 年の 5 年間,各国が決 められた割合を削減することになっている。 基準年が1990 年となり,これがベースになって,こ こから何パーセント削減するのかというのが国別に決 まっている。日本は6 パーセントの削減が義務付けられ 図1 地球温暖化による影響 図2 世界の CO2排出量(燃料別) 図3 世界の CO2排出量(国別)
ている。 6 種類のガスの特徴をまとめたのが図 5 である。 「地球温暖化係数」とは,二酸化炭素換算でどれ ぐらいの温室効果があるかということを規定したもの で,二酸化炭素が基準になっており,これが1 倍,メタ ンは21 倍になっている。これは,例えばメタンを 1 ト ン削減する排出権プロジェクトでは,メタン1 トン削減 に対してクレジットが21 トン,それだけの削減効果が 得られるということであり,ほかのガスも同様である。 2.3 京都メカニズム 京都議定書では,各国の数値目標を達成するための補 助的手段として,市場原理を活用する京都メカニズムが 導入されており,その京都メカニズムでは3 つのスキー ムが用意されている。 1 つめが排出権取引(Emission Trading:エミッション ト・レーディング),2 つめが共同実施(JI:ジョイント・ インプリメンテーション),3 つめがクリーン開発メカニ ズム(CDM:クリーンディベロプメントメカニズム)で ある。この3 つのスキームの概略について順次説明する。 2.3.1 排出権取引 排出権取引(Emission Trading)は基本的に政府対政 ■ 概 要 目的 地球温暖化を防止するために具体的な温室効果ガス削減目標値を設定 対象ガス CO2,CH4,N2O,HFC,PFC,SF6(温室効果ガス) 対象期間 2008 年∼ 2012 年の 5 年間(第 1 約束期間) 基準年 1990 年(ただし,HFC,PFC,SF6は1995 年とすること可能) 数値目標 附属書I 国(*)の温室効果ガス排出量を基準年比少なくとも 5%削減すること (日本▲6%,米国▲ 7%,EU ▲ 8%) * 附属書 I 国 (Annex I 国 ):国連気候変動枠組条約で定められている 41 カ国・ 地域( →先進国および旧東欧諸国 ) 京都 メカニズム ①排出権取引(EmissionsTrading) ②共同実施(JI :Joint Implementation)
③クリーン開発メカニズム(CDM:Clean Development Mechanism) ■ 発効要件 以下の両方の条件を満たした後,90 日後に発効 ①気候変動枠組条約の締結国55 カ国以上の批准 ②批准した附属書I 国の 1990 年の CO2排出量が,附属書I 国総 CO2排出量の55%以上になること →2004 年 11 月のロシアの批准で発効要件を満たし,2005 年 2 月 16 日に発効 図4 京都議定書の概要 ■ 温室効果ガス(GHG:Greenhouse gas)と定義されているのは以下 6 種類のガス。 温室効果ガス 地球温暖 化係数 性 質 用途,排出源 二酸化炭素(CO2) 1 代表的な温室効果ガス 化石燃料の燃焼など メタン(CH4) 21 天然ガスの主成分で,常温で気体。よく 燃える。 稲作,家畜の腸内発酵、 廃棄物の埋め立てなど 一酸化二窒素(N2O) 310 数ある窒素酸化物のなかで最も安定した 物質。ほかの窒素酸化物(例えば二酸化 窒素)などのような害はない。 燃料の燃焼,工業プロセ スなど オゾン層を破壊 しないフロン類 HFC(ハイドロフ ルオロカーボン類) 140 ∼ 11,700 塩素がなく,オゾン層を破壊しないフロ ン。強力な温室効果ガス。 スプレー,エアコンや冷 蔵庫などの冷媒,化学物 質の製造プロセスなど PFC(パーフルオ ロカーボン類) 6,500 ∼ 9,200 炭素とフッ素だけからなるフロン。強力 な温室効果ガス。 半導体の製造プロセスな ど SF6(六フッ化硫黄) 23,900 硫黄とフッ素だけからなるフロンの仲間。 強力な温室効果ガス。 電気の絶縁体など オゾン層を破壊 するフロン類 CFC,HCFC 類 数千から 1 万程度 塩素などを含むオゾン層破壊物質で,同 時に強力な温室効果ガス。モントリオー ル議定書で生産や消費を規制。 スプレー,エアコンや冷 蔵庫などの冷媒,半導体 洗浄など ■ GHG 排出権は,二酸化炭素換算トン(Metric Ton-CO2)を単位として取引される 図5 温室効果ガス
府の排出権取引である。これは京都議定書を批准した政 府同士の取引である。この取引は京都議定書のアネック スワン(附属書1)のリストに載っている国同士の取引 が基本になる。例えば,排出枠が設定されている京都議 定書締結国間で,排出枠の一部を排出権として取得し, 取得した排出権を自国の数値目標達成のために使用する というのが排出権取引のスキームである。 2.3.2 共同実施 次に共同実施(JI:Joint Implementation)について説 明する。これはアネックスワン国同士において,前述同 様に温暖化ガスの削減プロジェクトを実施して,そこか ら生じる排出権を,削減目標達成に使用するという制度 である。JI の場合は,基本的には 2008 年以降の削減活 動が対象になる。JI に関しては,どちらも削減義務を負っ た国同士の取引になるため,世界全体での排出総量に変 化はない。 2.3.3 CDM CDM(クリーン開発メカニズム:Clean Development Mechanism)は前述のアネックスワンの国とノンアネッ クスワン(非附属書1)の国,簡単な言葉で言い換える と先進国と発展途上国間で,実施される温暖化ガスの削 減プロジェクトを指す。CDM では,発展途上国側が先 進国側から資金,技術の移転を受けることができる。 このCDM のスキームから創出された排出権は,2000 年以降の削減活動が対象となり,第一約束期間である 2008 ∼ 2012 年の期間に使用することができる。排出権 はCDM 理事会と呼ばれる国連の組織が発行する。 先進国から途上国に対して資金,技術の移転を行って, 途上国でプロジェクトを実施し,同プロジェクトを投 資国側,ホスト国側,この両政府が承認をした後,国連 に対しプロジェクトの登録を行う。登録されたプロジェ クトが動き出し,排出削減が行われた事実がモニタリン グによって捉えられ,モニタリング結果が第三者機関に よって検証,認証され,最終的に国連のCDM 理事会が CER(サーティファイ・エミッション・リダクション) と呼ばれる排出権を発行するという流れになる。 3. CDM の現状 CDM プロジェクトの現状について述べる。CDM プロ ジェクトとして認められるためにはどのような基本条件 が必要なのかについてまとめたものが図6 である。 まず,プロジェクト実施国がノンアネックスの国で, 京都議定書を批准していることが大前提になる。 次に,実際に温室効果ガスを削減していることであ り,この削減方法には直接削減と間接削減の2 つの方法 がある。直接削減とは,プロジェクトから温室効果ガス が出ているものを,それ自身を回収して破壊するような プロジェクトがこれに該当する。他方,間接削減とは, 例えば風力発電のように化石燃料を使用しない発電によ り,火力発電のようなCO2の発生源となる発電を代替し, 間接的に削減ができるというようなものである。 3 点めとしてホスト国承認の取得が必要であること。ホ スト国とはプロジェクトを実施する発展途上国側のこと で,ホスト国政府がプロジェクトを承認する必要がある。 4 点めとしてホスト国において,法令や規制等により 温室効果ガス削減の義務が課されていたり,プロジェク トの実施が義務付けられたりしていないことで,もし義 務付けられている場合には,排出権プロジェクトにはな らない。 5 点めとして追加性があること。これは CDM がなく ても,何もしなくてもプロジェクトそのものが成立する ような場合,これは排出権プロジェクト化することがで きない。 最後に方法論が必要であること。方法論とは,排出削 ■ プロジェクト実施国(ホスト国)である非付属書Ⅰ国が京都議定書を批准していること ■ 温室効果ガスを削減すること ■ 直接削減・・工場などから発生する温室効果ガスの回収,削減 ■ 間接削減・・省エネや再生可能エネルギー発電により,化石燃料による発電量が 削減→化石燃料 ■ ホスト国の承認を取得できること
■ ホスト国DNA(Designated National Authority)がプロジェクト承認の基準を設定 ■ ホスト国の法律・規制により温室効果ガスの排出削減や当該案件の実施が義務付けられて いないこと ■ 追加性があること ■ CDM を適用しなければ起こったであろう状況(ベースライン) ≠ CDM のケース ・・CDM を適用しても,しなくても実施したプロジェクトは“Business As Usual”と 見なされる ■ 方法論が必要 図6 CDM プロジェクトの条件
減の計算方法や測定方法を定めたもので,この方法論に 基づいて排出権が計算される。国連によって認められた 方法論でなければ適用できない。この方法論があること がプロジェクト成立の大前提である。 3.1 CDM の手続き 図7 は CDM のプロジェクトが成立してから,最終的 にCER,つまり京都議定書適格の排出権が発行される までの手続きを簡単にまとめたものである。 まず最初に,どのようなプロジェクトをCDM の対象 にするのかについてPDD(プロジェクト・デザイン・ ドキュメント)という設計書を作成する。このPDD は すべての手続きの大前提となる書類で,プロジェクト実 施者が作成する必要がある。 次に,そのPDD の内容に関し投資国側とホスト国側 の2 つの国の政府承認を受ける必要がある。同時に,バ リデーション(Validation)と呼ばれる有効化の作業を 行う必要がある。これは前述のPDD がきちんとした形 で作成されているかどうか,検証されるべきものがき ちんと検証されているかを,第三者の認定機関が内容 チェックを行い,当該プロジェクトが有効であることを 認める作業である。 投資国,ホスト国承認を取り付けて,バリデーション 作業が完了すると,国連に対してプロジェクトの登録申 請を行うことができる。最終的にプロジェクトが国連に 登録され,そのあとプロジェクトの削減活動が開始され る。この削減活動に関しては,どれぐらいの削減があっ たかを正確に計測する必要があり,プロジェクト実施者 側がモニタリングと呼ばれる作業を通じて,計測を行う ことになる。このモニタリング結果は,モニタリングリ ポートというかたちで書類化されて,再度また別の第三 者認定機関に内容確認をさせる必要がある。これが一般 的にベリフィケーション(Verification)と呼ばれます検 証作業である。ベリフィケーション後,サーティフィケー ションと呼ばれる認証の作業が同第三者認定機関によっ て行われ,最終的に結果が国連にリポートされ,国連が 同内容に基づいてCER と呼ばれる排出権を発行すると いうような流れになっている。 4. CDM プロジェクトの実際例 次にCDM プロジェクトの実際例を紹介する。まず, どのようなプロジェクトがCDM のプロジェクトとして 認められるかを例を挙げて説明する。 メタンガスの回収・利用。このようなプロジェクト はCDM プロジェクトとして成立する可能性が極めて高 い。例えば,炭鉱から発生するメタンガスを回収して燃 焼,もしくは有効活用すれば,このようなプロジェクト はCDM 案件として成立する。メタンガスの発生源とし ては,炭鉱のほかに,例えばごみ処理場,養豚場,下水 処理場などがある。 省エネ案件。これは化石燃料を使用する,例えば発 電所などの発電効率を改善し,化石燃料の消費を抑えて CO2の発生を抑えるようなものである。 燃料転換。これは発電用の燃料を変えることによって CO2の発生量を抑えるようなもので,例えば石炭火力を ガスでの発電に切り替えるというようなケースである。 N2O 削減。N2O はアジピン酸や硝酸製造時に発生する 温暖化計数310 倍のガスで,これを触媒を使って分解す るプロジェクトである。これも排出権プロジェクト化が 図7 一般的な CDM の手続き
可能である。 フロン系ガスの削減。HFC・PFC などが発生するプラ ントにおいて,これらを分離・回収し分解するプロジェ クトも排出権プロジェクトとして成立する。 以上のほか,植林,再植林による吸収源CDM のよう なものもある。 5. 石油関係の CDM 石油関係のCDM の実例を紹介する。これには CO2の 地中貯留,随伴ガスの有効活用,オペレーションフレア 削減などがある。 5.1 CCS CO2の地中貯留はCCS はカーボン・ダイオキサイド・ キャプチャー・アンド・ストレージと呼ばれ,Carbon Dioxide Capture and Storage の 略 で あ る。 具 体 的 に は, CO2を分離回収して,それらを帯水層や炭層など,地中 の地層にCO2を隔離して留める,そのようなプロジェ クトである。CCS は方法論がまだ確立していないが,将 来方法論が確立した場合には非常に大きな潜在性のある プロジェクトだといわれている。 ここでキーポイントとなるのは,高濃度のCO2をき ちんと分離できるようなプロジェクトでなければ,地中 貯留する際に,効率化の観点から非常にコスト高となる という点であり,高濃度のCO2が存在することが大事な 条件である。これは一般的に非常に高コストだといわれ ており,CO2を地中貯留するためには,トン当り大体25 ∼30 ドル程度のコストがかかるといわれている。 5.2 随伴ガスの有効利用 随伴ガスを回収して,例えばパイプラインで既存の発 電所に接続して,その発電所においてその随伴ガスを活 用する。これによって,今まで発電所で使っていた化石 燃料の使用削減をすることができると,これはCDM プ ロジェクトとして成立する。 同じく随伴ガスの有効活用の例であるが,フレアし ているガスをそのまま燃焼せずに回収して,コンプレッ サーで圧縮して,さらに圧縮したあとのガスをまた地中 に戻すというようなものである。これによって,フレア の随伴ガスの燃焼から発生しているCO2を削減するこ とができる。これはオペレーションフレア削減と呼ばれ ているものである。 6. CDM 案件 次にCDM 案件の国連登録の状況について数字で示し たものをご紹介する。 図8 の数字は今年の 9 月 1 日時点のデータから取った ものであるが,本日(10 月 31 日)最新のデータをチェッ クしたので,それらを併せて説明する。9 月 1 日の時点 で国連に登録されていた案件は280 件であったが,本日 現在386 件が国連登録済みである。ここ 2 カ月で 100 件 近く登録が増加したことになり,現況を感じとる1 番よ く分かる非常にいい例と思われる。つまり,足下国連に 登録されるCDM 案件数が急速に増加しているというこ とである。 ちなみに,どのような国の案件が多いかということ については,この9 月の時点では,1 番がインド,2 番 めがブラジル,3 番めがメキシコ,4 番めが中国である。 これは案件の数で作った分類であり,必ずしも実際の削 減量を示したものではない。インド,ブラジル,メキシ コ,中国,この上位4 カ国がプロジェクトの数としては 非常に多い国で,これは最新のデータでも傾向に変わり 図8 国連登録済み CDM 案件−非附属書Ⅰ国の内訳
はない。 図9 は,この件数別のものを数量別に変えた図である。 こちらも9 月のデータでは,登録済みのプロジェクトの 年間ベースの排出権創出量が,8,400 万トンとなってい る。これが最新データでは,約1 億トンになっている。 ちなみに,この年間1 億トンの数量は,2012 年までの 第一約束期間中全体では,大体6 億 6,000 万トンぐらい になる。 数量別では,中国,ブラジル,韓国,インドの4 カ 国が上位4 カ国になる。特に中国と韓国の数字が大きく なっている理由は,温暖化係数の高いフロン系の案件か らの排出権創出が非常に多いことによるものである。 7. 三井物産㈱の取り組み 弊社三井物産の排出権に対する取り組み状況について 述べる。社内で排出権を取り扱っている部署はいくつか 存在するが,本部関係の部署を除けば,4 営業部門が排 出権関連の仕事に関与している(図10)。 現在,鉄鋼原料・非鉄金属本部,エネルギー本部,プ ロジェクト本部,金融市場本部の4 つの部門が排出権プ ロジェクトに関与しており,私が所属している環境事業 室という室は,鉄鋼原料・非鉄金属本部の傘下にある事 業開発部にある室である。ここで排出権プロジェクトの 開拓,全社の排出権業務に関するコーディネート,マー ケティング活動などを専任でやっている。 図 9 国連登録済み CDM 案件−国別排出権創出量(年間) 図10 社内関連組織
私どもの室で排出権関連業務を行っている背景には, 当本部の既存の顧客との関係がある。例えば電力会社, 製鉄会社などは石炭を大量に使用する大ユーザーであ り,当然ながらCO2の排出も非常に大きい顧客である。 そのような顧客に対するサービスの一環ということで, 排出権に関する取り組みをそもそも始めたという経緯が あり,排出権を専門にやっている室がこの本部に属して いるのは,このような背景によるものである。 私どもの室には,現在スタッフが12 名おり,この 12 名が世界中の排出権プロジェクトの発掘,開拓,および マーケティング活動を行っている。 弊社の取り組みには,大きく分けると3 つ活動があ り,1 つめがカーボンファンドと呼ばれる基金への出資 である。カーボンファンドへ出資・参画することによ り排出権を得るというような活動である。弊社は現在 までに世界銀行の排出権ファンド,それから国際協力銀 行と日本政策投資銀行が旗振り役となり日本で立ち上げ ているJGRF(日本温暖化ガス削減基金(JGRF:Japan Greenhouse gas Reduction Fund)というファンドにも出 資・参画している(図11)。 世界銀行のファンドは,プロトタイプ・カーボン・ファ ンドと呼ばれる世界で最初に作られた排出権のファンド で,これに弊社は出資をし,ファンド経由で排出権の調 達を行っている。また,世界銀行に対して,現在弊社よ り出向者を1 名派遣している。同様に,JGRF に対して も弊社より出資および出向者1 名の派遣を行っている。 次に,2 つめの取り組みとして,CO2e.com という,世 界でもナンバーファイブに入る大手排出権ブローカー があり,これに対し弊社は出資・参画を行っている。こ の会社は,アメリカの国債大手ブローカーであるキャン ター・フィッツ・ジェラルド社と弊社が協同出資を行う 会社である。CO2e.com を通じて,弊社は日本の市場だ けではなく,ヨーロッパやカナダの排出権マーケットに 対するアクセスを持っている。 3 つめの取り組み,これは私どもの活動の集大成であ り,本当はこの部分が一番強調したい部分である。そ れは案件発掘から排出権マーケティングまでの一貫した サービス提供機能である。 案件の発掘とは,CDM の可能性のあるプロジェクト を世界中から見つけて来ることである。見つけて来たプ ロジェクトに対して,相応しい技術やパートナーを紹介 するというようなことをまず最初に行う。そのあと,そ のプロジェクトに対して,資金面のニーズがあれば,必 要資金のファイナンスを行い,これは出資という形態を 採ることもあれば,前渡金やローンという形で資金供与 をすることもある。それに加え,CDM に必要な諸手続 きのサポートが必要になり,これをわれわれはCDM 化 と呼ぶが,これのサポートを全般的行っている。 さらに,プロジェクトが実際に立ち上がって,そこか ら排出権が出てきた場合に,その排出権の買い取りや仲 介など,マーケティング活動を行っている。このように, 案件の開拓から最終的に出てくる排出権のマーケティン グまでを,一貫して行う体制ができているのが弊社の最 大の強みである。 図11 排出権への取組
8. プロジェクト例 これまでに私どもが案件開拓という形で関与したり, もしくは仲介で関与した案件リストを図12 に示す。リス トの上半分が開拓案件,下半分が仲介案件で,これらは いずれも新聞発表などで公表しているプロジェクトであ る。このなかからいくつかをピックアップして説明する。 8.1 プロジェクト例 1 ̶ チリの案件 この案件は,ランドフィルメタン回収といい,ごみの 埋め立て場からのメタンガスを回収して,これを燃焼さ せるというプロジェクトである(図12)。チリのサンチャ ゴで実施中のプロジェクトで,弊社の排出権プロジェク トの出資第一号案件である。プロジェクトの事業会社は アコンカグア社といい,2005 年の 11 月に同事業会社を 設立し,その後プロジェクトの建設工事が開始され,12 月に日本政府の承認,今年1 月にチリのホスト国承認を 取得し,3 月に国連へ CDM プロジェクトとして登録済 みである。プラントは今年9 月から運転を開始し,実際 に排出権のカウントがスタートしている。 8.2 プロジェクト例 2 ̶ 中国の案件 最後に,リストの上から3 番めにある四川省の炭鉱メ タン案件を紹介する。これは中国四川省の重慶にある, 松藻(ソンツァオと読む)炭鉱の,炭鉱メタンガス回収・ 有効活用プロジェクトである。松藻炭鉱で発生し大気放 出され未活用であったメタンガスを回収して,その炭鉱 の自家発電用の燃料としてガスを使うというプロジェク トである。このプロジェクトからの予想排出権数量は約 300 万トンで,このプロジェクトは現在中国の政府承認 を待っている状況にある。 以上,弊社の排出権に関する取り組み状況を紹介した。 ■ CDM プロジェクト実績 Country
Country Location ProjectProject Carbon credit Partner チリ サンチャゴ ランドフィルメタン回収 300 万 t-CO2eq Lepanto 社 インドネシア ブラン島 養豚場メタン回収 120 万 t-CO2eq Indotirta 社 中国 四川省 炭鉱メタン回収 300 万 t-CO2eq 松藻炭鉱 中国 遼寧省 炭鉱メタン回収 500 万 t-CO2eq 鉄法炭鉱 中国 江蘇省 フロン回収 1,100 万 t-CO2eq Meilan 社 /3F 社 中国 黒龍江省 N2O 削減 90 万 t-CO2eq 黒化集団 ■ 仲介実績 Country
Country Project typeProject type BuyerBuyer Carbon credit チリ 養豚場メタン回収 東京電力 200 万 t-CO2eq ホンジュラス バガス発電 東北電力 86 万 t-CO2eq インド 省エネ リコー 10 万 t-CO2eq エルサルバドル バガス発電 リコー 30 万 t-CO2eq ホンジュラス バガス発電 東京電力 30 万t -CO2eq 中国 水力発電(2 件) 関西電力 57 万 t-CO2eq 他多数案件を推進中 (※プレスリリース済案件のみ記載) 図12 CDM プロジェクト実績