〔論 文〕
韓国の介護保険制度
*──施行 1 年の成果と今後の課題──
咸 日佑(ハム イル)
(社会学研究科社会福祉学専攻博士課程(後期課程))
は じ め に
2008年 7 月 1 日から施行された韓国の「老人長期療養保険制度」(以下「介 護保険制度」)が 1 周年をむかえた。韓国においては今までの 4 大保険体系が 5大保険(1) となった。世界で類のない速いスピードで進行中の高齢社会に備え るために介護ニーズを持つ高齢者への社会サービスを制度化した。さらに従来 の公的扶助受給者及び低所得層を対象とした制限的な高齢者福祉サービスを高 齢者全体に対する普遍的なサービスに切りかえたという意義も持っている。介 護保険制度は「国民の政府」(金大中政権,1998∼2003 年)の時から計画さ れ,2005 年から始まった 3 回のモデル事業(2) を経て,2008 年 7 月から施行さ れた。この制度において,保険者は健康保険の保険者である国民健康保険公団 (以下「保険公団」)であり,長期療養機関の指定は地方自治体の役割となって いる。 近年,韓国政府は介護保険制度の実施のため,関連インフラの構築に力を注 いできた。民間中心の長期療養機関の設立が奨励され,市場原理が介護保険制 度に導入された。その結果,長期療養機関はわずか 1 年で急速に増加し,量的 には顕著な成果を見せている。しかし,今後はインフラの拡充だけでなく,介 護サービスの主な担い手である療養保護士の育成,教育が必要である。 介護保険制度の施行以降,在宅サービスの問題点として療養保護士の質の問 ──────────── *2009年 7 月 30 日受付,査読審査を経て 2009 年 11 月 18 日掲載決定 ―75 ―題(イ・ジュンウ,ソムン・ジンヒ,2009),専門性の高めるための教育,資 格の管理の必要性(ジャン・ウシン,2009),雇用の安定(キム・ジュンハン, 2008)を示唆している。従来の研究では,こうした 1 年の法律施行後の現状を 詳しくみた上で課題を抽出するという作業はそれほど取り組んでこられていな い。 本稿では,以上のことを踏まえ,韓国における介護保険制度創設の背景と経 緯,介護保険制度が施行されて 1 年の成果と問題点,今後の課題について考察 することを目的としている。以下では,韓国において介護保険制度の検討が始 められた背景や法案成立に至るまでの経緯を解説し,介護保険制度の現状につ いてふれ,介護保険制度の問題点を指摘し,最後にまとめとしたい。
1.韓国における介護保険制度導入までの流れ
(1)韓国における高齢者を取り巻く状況 韓国において,高齢者の介護は子どもが行うべき親孝行とされてきた。今ま での高齢者に対する公的福祉サービスは公的扶助受給者または低所得者に限定 されており,それ以外の階層に属する高齢者の介護は,個人の問題として解決 するしかなかった。 しかし,韓国では,他の先進国以上に急速な少子高齢化が進行している。総 人口に占める 65 歳以上の者の割合である高齢化率は,1970 年の 3.1% から 2000年には 7.2% と 7% を超える高齢化社会となり,2008 年には 10.7% とな っている。高齢化率が 14%(高齢社会)に達するのは 2018 年(図表 1)であ り,独居高齢者の増加(図表 2)が見込まれている。また,女性の社会経済活 動の増加(1985 年 41.9%→2008 年 50.0%)もみられる。 また,高齢化の進展により,認知症や脳卒中等によって介護が必要な高齢者 が増加している。2004 年の推計では,要介護高齢者数は,高齢者人口の 15% の約 59 万人(2003 年)が,2010 年には 79 万人,2020 年には 114 万人に増加 すると予想された。OECD のデータからみると,韓国で長期介護を受けてい ―76 ―オーストラリア オーストリア ベルギー カナダ デンマーク フィンランド フランス ドイツ ハンガリー アイスランド アイルランド イタリア 日本 韓国 ルクセンブルク オランダ ニュージーランド ノルウェー ポーランド スペイン スウェーデン スイス イギリス アメリカ OECD平均 y = 0.749x R²=0.049 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 高齢化率(%) 長期介護率 ︵ % ︶ 図表 1 韓国の 65 歳以上高齢者人口の推移 (単位:千人,%) 1998 2000 2008 2009 2010 2018 2026 総人口 46,287 47,008 48,607 48,747 48,875 49,340 49,039 65歳以上 3,069 3,395 5,016 5,193 5,367 7,057 10,218 構成比 6.6 7.2 10.3 10.7 11.0 14.3 20.8 出所:韓国統計庁,「2006 将来人口推計(2006 年 11 月)」。 図表 2 韓国の 65 歳以上独居高齢者の推移 (単位:千人,%) 2007 2008 2009 2010 2011 全体高齢者 4,810 5,016 5,193 5,357 5,537 独居高齢者 883 931 976 1,021 1,065 構成比 18.4 18.6 18.8 19.1 19.2 注:毎年 5 万人ずつ増加を推測。 出所:韓国統計庁,「2007 年推計人口・世帯資料」。 図表 3 OECD 諸国の高齢化率と長期介護率の推定 注:高齢化率は 2005 年基準,長期介護率は以下の国以外は 2006 年のデータ。オース トラリア・スイスは 2005 年。韓国・ベルギー・イギリス・アメリカは 2004 年。 オーストリアは 2003 年。カナダは 2002 年。
出所:OECD(2008)OECD Health Data−Version : December 2008, Http : //www.oecd.org /health/healthataglanceを基に筆者作成。
5.4 3.6 6.3 4.2 5.4 2.2 3.7 3.1 6.7 3.9 3.0 0.4 4.3 6.9 8.2 5.6 0.9 2.1 6.8 6.5 4.2 3.9 4.6 3.3 19.3 7.4 12.9 7.4 6.0 6.6 11.0 3.1 9.8 0.7 5.9 13.112.5 17.0 6.0 9.8 12.3 6.9 8.9 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 長期施設介護 公共政策で支援される在宅介護 日本 韓国 OECD平均 る 65 歳以上の高齢者の割合は 1.13%(2004 年)で OECD 諸国の長期介護率 の平均 13.5% を大幅に下回っている(図表 3, 4)。 (2)政策的背景(3) 韓国における介護保険制度導入の検討は,こうした状況を背景として 2001 年 8 月,金大中前大統領が「老人療養保障制度導入」を明示し,2002 年 7 月 に「老人保健福祉総合対策」に介護保険制度の構築と施行を提示した。2003 年 2 月に介護保険制度の導入が提案され,盧武鉉政権が 2003 年「公的老人療 養保障推進企画団」を設置した。 2004年 2 月,介護保険制度について検討を進めてきた審議会が報告書をと りまとめ,制度試案が固まった。報告書では,介護保険導入の必要性として, ①核家族化,女性の社会参加,高齢者単独世帯の増加等により家族による介護 の限界,②中産家庭が利用できる施設の不足,③老人医療費の急増による健康 保険財政の圧迫,④現行の福祉予算では福祉サービスの拡大が困難であり,医 療面でも社会的入院や自己負担などといった問題が存在することなどがあげら 図表 4 65 歳以上人口における施設での長期介護または公的支援による在宅介護を受 けている人の割合(%) 注:図表 1 の資料より長期介護サービス率を長期施設介護と公共政策で支援される在 宅介護に区分 カナダ・アイスランド・アイルランド・アメリカ(施設介護のみ),フランス・ イタリア(在宅のみ)。
出所:OECD(2008),Long-term Care for Older People, forthcoming, OECD, Paris. を基 にして筆者作成。
れている(公的老人療養保障推進企画団,2003)。 この報告書を踏まえ,具体的な制度設計にあたる組織として,2004 年 3 月 に「同制度の実務企画団」と「同制度の実行委員会」(以下「実行委員会」)が 作られ,その運営を始めたのである。実行委員会は,保健福祉部の次官と車興 奉教授(前保健福祉部長官)を共同委員長として,学界・専門家,老人関連団 体,市民団体,公務員等 21 人で構成された。この実行委員会は 2005 年 2 月ま で活動しながら,7 回の全体会議を開催した。ここで,介護保険制度における 適用対象,給与範囲,財源調達方式,サービス提供体系等に対する様々な議論 がなされた。その主な内容をまとめると以下の通りである。 まず,給付対象については,市民団体,労働団体,一部の学識者による,障 害者を含む長期療養が必要なすべての国民を対象にすべきであるという主張に 対し,政府(保健福祉部,企画予算処)は主に高齢者に限定することを主張し た。このような論議の結果,高齢者を主な対象とする老人長期療養制度が誕生 した。 給付範囲においては,議論の初期段階では医療サービスを多く取り入れ,現 物給付だけでなく原則的に現金給付も認めるべきであるという学界の主張があ った。しかし,結果的に医療サービスの範囲は狭まり,現金給付は制限的に認 めることで修正された。 財源調達方式においては,議論の初期段階で労働団体,経済団体,市民団体 が健康保険に介護保険料をかけて賦課する社会保険方式に,基本的には同意し ていた。しかし,国庫と本人の負担割合に関しては企画予算処の意見が受け入 れられて,健康保険と同一の本人負担 20% に決定された。この点は市民団 体,労働団体から国民に負担を転嫁させようとする意図があると批判を受ける ことになった。 管理運営主体においては,政府(保健福祉部,企画予算処,行政自治部), 労働団体,保険公団は管理運営の効率性を重視し,健康保険公団が担当するこ とを主張した。一方,一部の市民団体,学界,医療界は地方自治体が多くの役 割を担当することを主張した。結局,国会法案審議過程の中で,地方自治体が ―79 ―
一定部分一緒に参加することで修正された。しかし,運営面においては,健康 保険制度をまず活用するのか,独立の制度を作るのか,保健福祉部内で,深刻 な論争が起きた。主務部署の老人政策官室は,まず健康保険制度内で施行した 後,独立の制度を作るべきであるという主張をした。一方,健康保険局は,健 康保険財政を不安定にさせ,加入者を説得しにくいという理由で健康保険制度 内の実施に猛反対し,新たに独立の制度を作ることを主張した(朴夏政, 2008)。 ここまで,韓国の介護保険制度の導入過程における政策的背景を述べてき た。要約すると,保健福祉部主導の下で,政府案を作る過程で,行政的実現の 可能性のみを重視することで,給付対象と給付水準が限定された結果になっ た。管理運営方式も過度に効率性が重視され,学界や市民団体等から批判を受 けることとなった。そこで,国会議員が 6 件の議員立法(4) を発議し,政府の立 場とは別に国会で主導権を持って法案を審議し,また内容が修正されることに なった。このような 2 年にわたる保健福祉部の企画団と実行委員会を中心にし た議論の構造は全般的に協力的な関係であった。特に,学界・専門家,市民団 体,労働団体,保険公団は緊密に資料を共有し,同じ立場を取った(ジョギョ ンエ,2007)。 しかし,韓国における介護保険制度は政府主導で行われてきた点において, いくつかの課題をかかえている。長期介護の問題が社会問題として一般市民に 認識されないまま取り上げられた点,市民団体が政府や政党に対策を要求する プロセスなしに一方的に進められてきた点である。これから介護保険施行とサ ービス利用において一般市民とともに解決していく必要がある。
2.介護保険制度の現状
(1)介護保険制度の利用現状 2008年 4 月 15 日から 2009 年 5 月末まで 47 万 2,647 人が要介護認定を申請 した。これは 65 歳以上の高齢者人口の約 9.1% にあたる。また,対象者別申 ―80 ―請率では,一般階層が 7.2%,公的扶助受給者が 29.8%,低所得者が 19.3% で ある。これは給付利用の際,自己負担が免除または軽減される公的扶助受給者 と低所得者の人口対比申請者の申請率が高いことを示している(図表 5)。 また,2009 年 5 月現在,要介護認定等級(1∼3 等級)(5) を受けた者は 25 万 9,456人であり,要介護認定等級判定を終えた 40 万 8,552 人のうち 63.5% を占 める数値である。介護認定申請受付の開始直後の 2008 年 6 月頃に同比率は 78.4% に達したが,2008 年 9 月以後から順次ゆるやかな減少傾向を見せてい る。既存の施設入所者など重症者の申請および等級判定件が制度施行の初期段 階に集中したが,それ以来,軽症者の申請比重が増加したのが主な要因である だろう。 対象者別要介護認定者比率をみると,公的扶助受給者(66.3%)及び低所得 者(61.2%)が一般階層(84.9%)に比べて,低いという傾向がみられる(図 表 6)。 2009年 5 月末現在全体認定者 25 万 9,456 人の中 20 万 2,492 人(78%)が介 護サービスを利用している。特に,自己負担がない公的扶助の利用者の利用率 が 85.6% で,全体平均利用率の 78% より高かった。 在宅給付の利用者は全体認定者の 53.5%,利用者の 68.6% で利用者の大多 数が在宅給付を利用していることがわかる(図表 7)。 認定者数に対する利用者の比率は 2008 年 7 月 52.2% から 2009 年 5 月末現 図表 5 65 歳以上の高齢者人口対申請者数 (単位:人) 区分 65歳以上の高齢者人口(a) 申請者数(b) b/a 計 5,176,242 472,647 9.1% 一般階層 4,714,165 339,890 7.2% 公的扶助 417,087 124,085 29.8% 低所得者 44,990 8,672 19.3% 注:給付の中自己負担率 −一般階層:施設 20%,在宅 15% −公的扶助者:介護保険料とサービスの自己負担が無料 −低所得者:施設 10%,在宅 7.5%(2009 年介護保険改正により自己負担が軽減) 出所:老人長期療養保険施行 1 年の主要統計現状,保健福祉家族部(2009 a)。 ―81 ―
在 78% で持続的に増加し,日本の介護保険施行の 2 年目の利用率の 80% に近 い数値である。介護インフラの拡充,国と保険公団の制度の広報活動及び国民 の被保険者としての権利意識の向上の結果であると言えるだろう。 一方,給付種別の利用者の推移をみると,在宅給付の利用者数は 2009 年 5 図表 6 要介護等級別認定者の現状 (単位:人) 区分 等級判定 者数(a) 介護認定者(b) 等級外者 b/a 計 1等級 (最重症) 2等級 (重症) 3等級 (中等症) 計 326,018 259,456 (100%) 59,680 69,099 130,677 66,652 79.6% 一般階層 233,961 198,649 (76.6) 46,968 54,726 96,955 35,312 84.9% 公的扶助者 86,874 57,578 (22.2) 11,861 13,513 32,204 29,296 66.3% 低所得者 5,237 3,229 (1.2) 851 860 1,518 2,044 61.2% 注:医師診断書の未提出者など却下者除外。 出所:老人長期療養保険施行 1 年の主要統計現状,保健福祉家族部(2009 a)。 図表 7 介護給付の利用現状 (単位:人,%) 区分 認定者 合計 施設給付 在宅給付 家族給付 計 259,456 202,492 (78.0%) 62,677 (24.2%) 138,811 (53.5%) 1,004 (0.4%) 一般階層 198,649 150,959 (76.0) 40,128 (20.2) 110,019 (55.4) 812 (0.4) 公的扶助者 57,578 49,312 (85.6) 22,029 (38.3) 27,103 (47.1) 180 (0.3) 低所得者 3,229 2,221 (68.8) 520 (16.1) 1,689 (52.3) 12 (0.4) 1等級 59,680 45,718 (76.6) 23,324 (39.1) 22,305 (37.4) 89 (0.1) 2等級 69,099 56,863 (82.3) 26,158 (37.9) 30,509 (44.2) 196 (0.3) 3等級 130,677 99,911 (76.5) 13,195 (10.1) 85,997 (65.8) 719 (0.6) 注:施設給付及び在宅給付は給付契約内訳の通報件数基準。 出所:老人長期療養保険施行 1 年の主要統計現状,保健福祉家族部(2009 a)。 ―82 ―
146,643 166,598 183,065 194,456 205,361 214,480 222,700 232,230 242,080 251,290 259,456 76,476 100,285 114,624 127,921 139,048 148,749 157,046 167,119 185,530 195,197 202,492 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 08.7月 8月 9월 10月 11月 12月 09.1月 2月 3月 4月 5月 施設給付 在宅給付 家族給付 認定者数 利用者数 月現在,13 万 8,811 人で給付開始時点の 2008 年 7 月の 2 万 9,874 人に比べ,4 倍以上の増加をみせている。また,施設給付及び家族給付の利用者数はゆるや かな増加で,施設給付は 1.4 倍,家族給付は 2 倍以上の増加率を見えている。 利用者の給付種別の推移は在宅サービス利用者は 2008 年 7 月 39.1% から増 加して 2009 年 5 月は全体利用者の 68.6% である(図表 8, 9, 10)。 図表 8 介護給付の利用者の推移 (単位:人) 08年7月 8 月 9月 10月 11月 12月 09年1月 2 月 3月 4月 5月 認定者数 (a) 146,643 166,598 183,065 194,456 205,361 214,480 222,700 232,230 242,080 251,290 259,456 利用者数 (b) 76,476 100,285 114,624 127,921 139,048 148,749 157,046 167,119 185,530 195,197 202,492 利用率(b/a) 52.2% 60.2% 62.6% 65.8% 67.7% 69.4% 70.5% 72.0% 76.6% 77.7% 78.0% 施設(c) 46,114 51,029 52,228 53,610 55,224 56,370 57,056 58,092 61,652 62,514 62,677 c/b 60.3% 50.9% 45.6% 41.9% 39.7% 37.9% 36.3% 34.8% 33.2% 32.0% 30.9% 在宅(d) 29,874 48,638 61,543 73,420 82,905 91,431 99,027 108,068 122,885 131,686 138,811 d/b 39.1% 48.5% 53.7% 57.4% 59.6% 61.5% 63.1% 64.7% 66.2% 67.5% 68.6% 家族給付 (e) 488 618 853 891 919 948 963 959 993 997 1,004 e/b 0.6% 0.6% 0.7% 0.7% 0.7% 0.6% 0.6% 0.6% 0.5% 0.5% 0.5% 出所:老人長期療養保険施行 1 年の主要統計現状,保健福祉家族部(2009 a)。 図表 9 介護給付の利用者の推移 出所:図表 8 を基に筆者作成。 ―83 ―
60.3% 50.9% 45.6% 41.9% 39.7% 37.9% 36.3% 34.8% 33.2% 32.0% 30.9% 39.1% 48.5% 53.7% 57.4% 59.6% 61.5% 63.1% 64.7% 66.2% 67.5% 68.6% 0.6%0.6% 0.7%0.7%0.7% 0.6%0.6%0.6% 0.5%0.5%0.5% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 08年7月 8月 9月 10月 11月 12月 09年1月 2月 3月 4月 5月 施設給付 在宅給付 家族給付 介護保険の事業所としての指定を受けた入所施設(老人療養施設)の数は, 2009年 5 月現在 1,480 ヵ所で,全国的には需給が見合っているというが,ソウ ル市では,近隣首都圏の施設またはショートステイの利用など(待機者 2,000 図表 10 介護給付の利用率の推移 出所:図表 8 を基に筆者作成。 図表 11 要介護者の入所施設 (単位:ヵ所,人) 区 分 2008年 7 月 2008年 12 月 2009年 5 月 施設数(供給) 1,395 1,717 2,016 定員(供給) 58,425 68,581 76,216 利用者数 46,114 56,370 62,677 出所:2009 年 5 月老人長期療養保険制度月報,国民健康保険公団(2009)。 図表 12 在宅サービス提供機関 (単位:ヵ所) 区 分 2008年 7 月 2008年 12 月 2009年 5 月 訪問介護 2,823 4,362 6,031 訪問入浴 1,654 3,006 4,271 訪問看護 461 626 688 デイサービス 641 806 925 ショートステイ 397 691 1,020 福祉用具 364 733 880 計 6,340 10,224 13,815 出所:2009 年 5 月老人長期療養保険制度月報,国民健康保険公団(2009)。 ―84 ―
人),都市部においてさらに整備促進が必要となっている(図表 11)。 在宅サービス提供施設の場合,制度導入の初期に比べ 2 倍以上設置され,入 所施設に比べ,地域間の数の格差問題は少ないと判断されている(保健福祉 部,2009)。特に,訪問介護・訪問入浴・訪問看護サービスは利用者の満足度 が高く,サービス提供機関が増加している(図表 12)。 (2)サービス提供者の養成 療養保護士(6) の養成機関は 2009 年 4 月現在,1,137 ヵ所が設立され 2008 年 1 月の 101 ヵ所と比較すると 11 倍以上増加し,過剰設立が問題になっている状 況である。 療養保護士の需要が増加するという予測と養成機関設置が申告制で運用され た点など複合的な要因によって,大きく増加したと分析される。療養保護士の 資格取得者も持続的に増加し,2009 年 4 月現在,45 万人以上養成され,女性 と中高齢者層に適合した仕事として認識されつつある。 療養保護士の需要に対して,養成機関が急増し,療養保護士の養成が急ピッ チで進められている。そのため,不当・不法行為(出席管理の問題,養成機関 の設備不備及び講師の資格基準違反,受講料基準違反)など副作用も少なくな いのが事実である。その点については,療養保護士の養成機関および資格制度 の改善が必要な部分である。 図表 13 療養教育機関と療養保護士の推移 (単位:ヵ所) 区分 08年1月 08年2月 08年3月 08年4月 08年5月 08年6月 08年9月 08年12月 09年4月 養成機関 101 490 819 941 981 1,009 1,065 1,080 1,137 増減 − ↑389 ↑329 ↑122 ↑40 ↑28 ↑56 ↑15 ↑57 資格取得者 − − 2,235 9,952 33,963 70,355 224,568 333,984 456,633 増減 − − − ↑7,717 ↑24,011 ↑36,392 ↑154,213 ↑109,416 ↑122,649 注:療養保護士の資格証は’08 年 3 月から交付。 出所:老人長期療養保険施行 1 年の成果と今後の課題,保健福祉家族部(2009 b)。 ―85 ―
(3)制度導入に対する国民の満足度 保健福祉家族部は,制度実施以来,2008 年 8 月下旬と 2009 年 6 月上旬の 2 回にかけて「利用者満足度調査」を実施した。 2008年 8 月下旬の調査(韓国ギャラップ,調査対象者 514 人,利用者の保 護者を対象)によると,療養施設の満足度は 75%,訪問介護の満足度は 83% と,高い水準の数値となった。評価項目別にみても,「職員の説明の十分さ」, 「説明のわかりやすさ」,「親切さ」等,高い数値となっている。その中で比較 的低い項目は,「費用の適切さ」であり,療養施設では 50%,訪問介護では 72 %,デイサービス・ショートステイでは 51% の満足度となっている(保健福 祉家族部,2008)。 2009年 6 月上旬の調査(韓国ギャラップ,調査対象者 1,000 人,利用者の保 護者を対象)によると,40.2% が健康を回復したと回答,介護認定更新者の 24 %が介護度好転,79.8% が介護環境がよくなったと回答,80.8% がより計画的 かつ専門的サービスを利用できるようになったと回答,91.7% が心理的負担が 減少したと回答した。在宅サービスのうち訪問介護の満足度は 43.8% で,デ イサービス・ショートステイ(40.8%),施設入所(36.0%)より満足度が高か った。介護保険制度が一番役に立ったと思う側面は「心理的な負担感の軽減」 が 49.4%,「社会・経済的な活動及び余裕の増加」が 19.0%,「高齢者の介護環 境の改善」が 16.9%,「経済的負担の軽減」が 14.2% の順であった(保健福祉 家族部,2009 d)。 つまり,2 つの調査で明らかになったことは,「費用の適切さ」と「経済的 負担の軽減」においての満足度が低いことであった。 この 2 つの問題と関連している介護保険料も多くの課題を抱えているが, 2008年 7 月から新たに介護保険料の徴収が始まったことで,被保険者の反発 から徴収率の低下を懸念していた。しかし,7 月の健康保険の徴収率(韓国で は介護保険料は医療保険料と同時に徴収する)は 90.3%(2009 年 3 月 96.5 %)と,2008 年 6 月までの月平均徴収率 90.8% と同様の水準であるので,保 険料徴収面での問題も生じていない。なお,2008 年 7 月分の徴収率をサラリ ―86 ―
ーマン(職域)と自営業者等(地域)とに分けると,前者は 95.5%(2009 年 3 月 99.2%),後者は 74.3%(2009 年 3 月 88.9%)であるが,いずれも 6 月まで の数値と比較をして変化はない。しかし,介護保険料は,2008 年の介護保険 制度改正で介護保険料の水準は,2008 年の健康保険料の 4.05% が,2009 年に は 4.78% となり,0.73% 増加した。介護保険がスタートし,1 年の間に予想以 上の利用者の増加し,介護保険料と健康保険料を上げる原因となった。しか し,実際に保険料を負担している現役世代の支持を得られるかどうかは,今後 の,大きな課題である。 制度が国民にあまり知らされず,施行後の国民の不満や苦情が多く寄せられ るのではないかと心配されていたが,苦情の件数は 1 日平均 20∼30 件であっ て,国民年金などの他の制度導入当時の件数に比べて低くなっている。
3.介護保険制度の課題
以上では,介護保険施行の 1 年間の現状を確認しながら,様々な問題点もみ られた。社会サービスは社会保険や公的扶助とは異なって直接的な所得移転の 代わりに家族の機能を補完して代わることを通じて,所得水準に関係なく,サ ービスを受けられるようにすることが目標である。すなわち,人間らしい生活 の保障を通した他の世帯構成員の経済活動保障,雇用創出にも寄与できるとい う点で所得保障政策よりはるかに多様な影響を持つことができる社会政策であ る。 しかし,制度導入過程で要介護サービスのプログラムの準備,提供体系構 築,公共療養機関構築など基本的な政策代案なしに施行されることによって, さまざまな問題が散在している。 (1)制度とサービス内容の不備 現在,政府では介護給付費用に関する告示改正案立案予告を通じて,今まで 問題になってきたサービスの質を向上させると発表している。しかし,サービ ―87 ―スの質が改善されるためには良質のサービスを提供する人材をどの程度確保す るかが核心である。また入所施設と在宅サービス提供機関も単に受け入れでな く対象者のリハビリと生活の質を考慮した改善策が議論されなければならな い。先進国の事例に基づいた良質のサービス人材数と配置基準,標準的な施設 基準などが再設定されるべきで,これを実際事業所で適用できる政策手段が開 発されなければならない。 高齢者の介護サービスは単純に入浴や排せつサービスだけでない高齢者の人 生と関連した全般的な質の改善プログラムを開発しなければならない。現在の 制度は機能を改善するために必要なリハビリ及び介護予防サービス,住宅改造 サービスなどは除外されており,医療に関連した内容も除外されている。 現在,高齢者の健康管理の体系と保健福祉の体系は各々運営されており,医 療サービスに集中している。高齢者の健康と福祉ニーズは急性期の医療サービ ス,リハビリサービス,地域社会サービス,施設介護サービスなど多様に存在 して,これらを包括できる保健医療福祉サービスの包括的プログラムと体系が 用意されなければならない。 (2)介護サービスの民営化の問題 介護保険制度はサービスの市場化を取り入れることでサービス質の向上を目 標とするという市場化,営利化の原則を明確にしている。介護保険は既存の 4 大保険体系の他に新しい社会保険制度を新設して,要介護サービスの財政確保 と執行に達する全過程を新しく確立する政策である。その過程で政府が選んだ 方式は介護保険のサービス提供を営利法人と市場に任せるということだった。 問題は要介護サービスが市場の主導で成り立つことがサービスの質向上と対象 者の満足度を高めにくいということである。 現在,長期療養施設の設立は個人でも施設基準により申告だけすれば可能に なっており,営利的運営,零細機関の乱立にともなうサービス水準の下落が発 生している。サービス対象者を獲得するための自己負担の割引,収入確保のた めの不当請求,労働者の賃金搾取,劣悪なサービス内容など不法,違法的行為 ―88 ―
が蔓延し,それによって,サービス質の低下と療養保護士の労働条件の悪化, 財政の浪費などの問題が生じている(ジャン・ウシン,2009)。長期療養機関 は小規模零細機関の乱立を防いで公共性を維持するために非営利団体や法人に 制限して,長期療養提供機関指定基準および取り消し基準と長期療養機関の人 材規定の強化が必要である。 (3)制度利用へのアクセシビリティ 現制度は制度利用にあたって障害者を排除して高齢者を中等症まで(介護認 定等級 1∼3 等級)に制限している。韓国保健社会研究院は介護が必要とされ る高齢者を全体高齢者人口の 12.1% で推計したが,制度初期の予測には全体 高齢者人口の 3% 水準で需要者の 25% 程度しか包括していない。2009 年 5 月 現在,5% に達し,予想よりは高い水準であるが,いずれにしても拡大してい く必要がある。 特に介護サービスは適切な療養を通じて,在宅復帰できる対象者全体を包括 するサービス制度に拡張されなければならない。現制度は適用対象を回復自体 が不可能である対象者に限定することによって,制度を利用して身体的及び社 会的機能を回復し,復帰できる機能になっていない。軽症度の高齢者と障害者 まで包括できる対象者の拡大と財政確保方案が用意されなければならない。 (4)サービスの地域格差 サービスの供給の側面では,介護サービス供給インフラが不足した状態で, さらに地域間施設供給の不均衡問題も存在している。特に療養サービスを提供 する公共インフラはほとんどないのが事実である。その結果,在宅介護サービ ス提供機関が営利企業中心となり,収益中心の運営でサービスの質の低下によ り利用者からの不満が少なくない。一方,公共療養施設のサービス水準と快適 性,利用者に対する親切な姿などが広がって,公共老人療養施設に対する人気 が高まっている(保健福祉家族部,2009 d)。 しかし,地方自治体が直接に設立した施設は 48 の市郡区で 59 ヵ所に過ぎ ―89 ―
ず,公共インフラは非常に不足している。最近一部の市郡区を中心に地方自治 体が療養施設を設置しようとする所が増えており,保険公団でも公共老人療養 施設拡充を宣言しているが,公共療養機関の拡大は実質的な需要に間に合って いない。 介護保険は他の社会保険とは異なり,ニーズとそれにともなう給付の提供が 関連するなど初めから提供体系の構築を重要な要素に,推進されていてこれは 提供体系の構築なしに運営したその他社会サービスとは違った特徴を見せてい る。また社会保険適用徴収業務が保険公団を中心に統合されるという点も社会 サービス提供体系に重要な含意を持つものと見られる。一方,介護保険のサー ビス提供機関は営利企業が主となっていて提供体系は市場化の姿を見せてい る。すなわちサービス提供体系を見ると保険公団の役割は大きく,中央集権化 される傾向があるが実際,適用は市場にまかせることでサービスインフラの偏 りなど,サービス資源割当の非公平性問題,情報の非対称性による利用者の選 択権制限,サービスの質および価格差別化にともなう階層化問題などの市場の 失敗の副作用などが現れていると評価される。 (5)自己負担の適切性 介護給付の自己負担は入所施設の場合,給付費用の 20%,在宅の場合 15% を自己負担することになっていて,公的扶助者は免除(国家と地方自治体負 担),低所得者は 50% を軽減(2009 年の改正により)される仕組みである。 現在,1 等級高齢者が入所施設を利用する場合,自己負担は最低 50 万ウォン (現在実費療養施設の自己負担水準)水準で月 50∼60 万ウォンに達する過大な 自己負担金が発する。また食材料費,上級病室利用料,理・美容費などが非給 付になっていて,低所得層の場合は制度を利用するのが容易ではない。 実際に,低所得者の場合は,制度実施前は地方自治体予算で無償サービスを 受けた対象者が,介護保険では,自己負担が発生することになって,サービス を中断する事態などが現れる反面,中上階層の場合は,経済的な障壁が減っ て,サービス利用が増える結果になり,階層的な不平等性が現れることになっ ―90 ―
た。自己負担率を 10% 以下水準に下げるべきで,このためには国の負担を現 在より拡大しなければならない。
お わ り に
本稿では韓国における介護保険制度導入までの流れとして,高齢者を取り巻 く状況及び政策的背景,介護保険制度の現状として,利用状況,サービス提供 者の養成,制度導入に対する国民の満足度等について検討を行ってきた。 今後の課題として,第 1 に,介護サービスの主な担い手である療養保護士の 勤労条件の改善が必要である。介護サービスを提供する労働者の雇用と関連し た問題は養成過程の問題と実際のサービスを遂行する過程での雇用の不安定 性,低い賃金,劣悪な勤務条件などが生じている。2007 月に「療養保護士国 家資格」制度が新設されて以来,全国 1,137 ヵ所の療養保護士養成機関が開設 されているが,大多数の教育機関が零細で資格基準が明確でなく,教育内容の 格差が激しい。これを解決するためには療養保護士の人材に対する教育基準を 明示して,養成機関を非営利教育機関に制限することが必要である。 現在,療養保護士の需要が急増することと判断され,療養教育機関を申告制 にして教育過程だけ修了すれば資格証をあたえる制度になって,療養保護士が 急増し,高価の教育費(40−80 万ウォン)にもかかわらず,失業者が量産され ている。しかも,介護サービス労働者の雇用形態は非正規契約職で,サービス 需要により仕事の量が決まる方式で運営され,雇用の質が非常に低く,その結 果,多くの人々が資格証を取得したが,実際に仕事をしている人の割合は非常 に低い。市場原理の導入で,零細在宅サービス提供機関の激しい競争の中で, 人件費が削減されていくことで,労働者の勤労条件および賃金はますます悪化 しているのが現実である(イ・ジュンウ,ソムン・ジンヒ,2009)。 労働者に対する社会的補償体系を作っていく上で,労働者の生活の質の保障 は必要だが,サービス費用の高負担を伴うことになる。これは社会サービス提 供労働者の雇用保障に関する社会的合意が得られていないのが原因である。 ―91 ―そのためには,社会サービス分野の良い雇用創出のためには国が積極的に介 入しなければならない。国が市場に介入して,勤労条件,社会保険適用,賃金 などに対する具体的標準を提供して規制することが必要である。またサービス 労働者の専門性を高める方策が伴わなければならない。このために安定的雇用 と労働者に対する専門的教育,持続的な管理・監督が行われるサービス提供体 系の構築が必要である。 第 2 に,政府の役割強化と公共性確保が必要である。公共性を確保してサー ビスの質を向上させるための,国の責任を明確にしなければならない。サービ ス提供機関の設立条件とサービス提供の段階的な質の管理,持続的なモニタリ ングなど,政府の役割をより強化する必要がある。また公共サービスのインフ ラを構築して質の良い公共サービス提供機関を拡大し,財政において国家補助 を増やさなければならない。社会サービス分野の雇用創出も国家の責任に違い ない。療養保護士賃金ガイドラインなどを制定して,雇用の質と安定性を高め ていくためには国家補助を増やすことは当然である。 このほかでも国は,地域で利用者が中心となる包括的なサービス提供体系を 構築し,加入者団体と市民団体の参加を保障する義務がある。そして,介護サ ービスの質の向上,制度運営の公共性を確保するために保険加入者および利用 者が制度運営に参加する民主的参加構造を拡大しなければならないのは言うま でもない。包括的給付サービス拡大およびサービス質の管理のための対策も喫 緊の課題である。 今後の研究課題は次のとおりである。韓国は介護保険制度導入の際,多くの 国々の関連制度を参考にしたが,中でも日本の介護保険制度をモデルにしてい る。この点に着目して 1 年間の実施状況の日韓比較を試みることである。 謝辞:本稿の作成にあたり,貴重なアドバイスをしてくださった匿名の査読者の先生 に深く感謝申し上げます。 注 ⑴ 韓国の 5 大社会保険は産業災害保険,国民健康保険,雇用保険,年金保険,そし ―92 ―
て,老人長期療養保険である。 ・産業災害保険−工業化の進展に伴って急激に増加した産業災害による被害労働 者を保護するため,1964 年に導入された韓国で最初の社会保険制度である。 ・国民健康保険−韓国の医療保険制度は,当初は,保険者が公務員と職域(民間 サラリーマン),地域(自営業者等)のそれぞれの組合に分かれた方式でスタ ートしたが,1990 年代末に全組合を単一の保険者に統合することが決定され た。1989 年には国民皆健康保険が導入された。 ・年金保険−韓国は,他の産業国家から非常におくれて,1988 年に年金制度を導 入したが,他方,非常に速いスピードで年金拡充を行い,導入から 11 年(1999 年 4 月)で,皆年金時代に入った。 ・雇用保険−1995 年 7 月 1 日に導入された。その主な事業としては,雇用安定事 業,職業能力開発事業,失業給付事業,母性保護事業などがある。 ⑵ 第 1 次モデル事業(2005 年 7 月∼2006 年 3 月,9 カ月間):国民基礎生活受給者 (日本の生活保護受給者)を対象にして,評価判定基準や手続き,報酬,費用審 査,支払体系等,全般的な運営体系に対する技術的な部分の検証。全国 6 市郡区 (光州南区,水原,江陵,安東,扶余,北済州郡)において実施。第 2 次モデル 事業(2006 年 4 月∼2007 年 3 月,12 カ月間):1 次モデル事業の結果に基づい て,対象者(一般高齢者も含める)や地域を拡大して,本事業と類似な形態で運 営体系全般を検証。全国 8 市郡区(1 次モデル地域の他釜山北欧,全南莞島追加 指定)において実施。第 3 次モデル事業(2007 年 5 月∼2008 年 6 月,14 カ月 間):対象者,地域,サービス内容などを拡大し,本事業と同一に実施。 ⑶ 制度導入の経緯 日 付 主 な 内 容 1999年12月 老人長期療養保護政策企画団の設置 2003年 3 月 公的療養保障推進企画団の設置 2004年 3 月 公的療養保障実行委員会又は実務企画団の設置 2005年 4 月 老人療養保障制度運営評価委員会と示範事業運営評価団の設置 2005年 6 月 6 自治体と老人療養保障制度モデル事業実行協約を結ぶ(2005 年 7 月∼2006 年 3 月) 2006年 2 月 月内閣決議で「老人スバル保険法」が発表(2008. 7 制度施行を発表) 2006年 7 月 8 自治体と老人療養保障制度モデル事業実行協約を結ぶ(2006 年 7 月∼2007 年 3 月) 2007年 5 月 13 自治体と老人療養保障制度モデル事業実行協約を結(2007 年 5 月∼2008 年 6 月) 2007年10月 1 段階:老人長期療養保険法施行令,施行規則制定 2007年11月 老人長期療養保険料率及び報酬確定−長期療養委員会 2008年 2 月 老人長期療養保険施行のための組織構築−国民権保険公団 2008年 4 月 2 段階:老人長期療養保険法施行令,施行規則改正 2008年 6 月 情報化システム構築及び模擬テスト 2008年 7 月「老人長期療養保険制度」施行 保健福祉部,老人長期療養保険インフラ拡充案内,2007。 ―93 ―
⑷ 政府案と国会議員発議案の比較 ⑸ 韓国の介護保険制度の要介護度は,重い順に 1 等級(最重症),2 等級(重症),3 等級(中等症)の 3 段階となっていて,65 歳以上の高齢者で軽症者と障害者は対 象外となっている。 ⑹ 韓国には,日本の「介護福祉士」のような資格制度はなく,「療養保護士」とい 法律案 老人スバル保険法(政府案) 国民長期療養保険法案(鄭亨根) 国民療養保障法案(安明玉) 長期療養保険法案(金椿鎭) 適用 対象 ▶65 歳以上の老人+64 歳 以下の老人性疾患者 ▶2008 年 1−2 級,2010 年 3級まで拡大(4−5 級軽症 は除く) ▶政府案+障害者を含む ▶2008 年 1−3 級,2014 年 4級まで,2020 年 5 級まで 拡大 ▶政府案+障害者を含む ▶2008 年 1−2 級,2010 年 まで,2014 年 4 級まで, 2020年 5 級まで ▶全国民(障害者を含む) ▶2008 年 1−3 級,2014 年 4級まで,2020 年 5 級まで 拡大 給付 内容 ▶在宅給付:家族介護など 5種,福祉用具提供,訪問 リハビリテーションなど大 統領が定められたこと ▶施設給付:老人福祉法に 定められた療養施設 ▶家族給付費:島 嶼 ・ 僻 地,身体・精神上の理由に 限定 ▶療養病院介護費の一部 ▶福祉用具貸与,訪問リハ ビリテーションを在宅給付 の一種として明示 ▶その他:政府案と同じ ▶福祉用具貸与,又は住居 環境改善,訪問リハビリテ ーション,介護サービス管 理を在宅給付の一種として 明示 ▶施設給付として老人専門 病院(公共機関運営)追加 ▶その他:政府案と類似 ▶福祉用具貸与,訪問リハ ビリテーションを在宅給付 の一種として明示 ▶家族給付を包括的に認定 ▶その他:政府案と同じ 財源 負担 ▶政府支援:大統領令に委 任 ▶本人負担:20% ▶政府支援:国家 40%, 自治体 10% ▶本人負担:20% ▶政府支援:国家,自治体 40% ▶本人負担:20% ▶政府支援:国家,自治体 40% ▶本人負担:20% サー ビス 提供 体系 ▶保険者:保険公団 ▶資格管理,保険料徴収, 給付審査・支給,スバル申 請,等級判定,スバル計画 書の作成,療養施 設 の 指 定:全部保険公団が担当 ▶保険者:保険公団 ▶資格管理,保険料徴収, 給付審査・支給,スバル申 請,等級判定委員 会 の 運 営,療養施設の指定:全部 保険公団が担当 ▶療養認定申請・ 受 け 付 け,療養計画書の作成,療 養施設在宅管理:市・郡・ 区(地域療養管理 セ ン タ ー)が担当 ▶保険者:市・郡・区 ▶資格管理等あら ゆ る 業 務:市・郡・区(療養支援 センター)に一元化 ※保険料徴収,給付の審査 ・支給等保険公団に委託可 能 ▶保険者:国家 ▶資格管理等あら ゆ る 業 務:市・郡・区に一元化 ※資格管理,保険料徴収, 給付審査・支給等保険公団 に委託可能 法律案 長期療養保障法案(玄愛子) 長期療養保険法案(張香淑) 老人スバル保険法請願(高京華) 適用 対象 ▶全国民(障害者を含む) ▶2008 年 1−2 級,2010 年 3 級まで,2014 年 4 級まで,2020 年 5 級まで拡大 ▶政府案+障害者を含む ▶政府案と同じ 給付 内容 ▶福祉用具購入・貸与,居住環境の改 善,訪問リハビリを在宅給付対象に明示 ▶その他:政府案と同じ ▶政府案と同じ ▶政府案と同じ 財源 負担 ▶政府支援:国家 50% ▶本人負担:10% ▶政府支援:国家 20% ▶本人負担:20% ▶大統領令に委任 ▶本人負担:10% サー ビス 提供 体系 ▶保険者:保険公団 ▶資格管理,保険料徴収,給付審査・支 給,療養認定申請者調査,等級判定,療 養施設指定:保険公団が担当 ▶療養計画書の作成,事例管理,福祉用 具購入貸与等:市・郡・区(長期療養セ ンター)が担当 ▶保険者:保険公団 ▶政府案と同じ ▶保険者:保険公団 ▶資格管理,保険料徴収,給付審査・支 給:保険公団が担当 ▶スバル認定申請・受け付け・調査,等 級判定委員会の運営,標準スバル利用計 画書の作成,スバル施設指定:市・郡・ 区が担当(スバル支援事業所)が担当 注:2006 年 2 月政府の老人スバル保険法案が国会に提出した以降,同年 4 月から 10 月にかけて 6 件の国会議員発 議案が国会に提出。 出所:保健福祉部「老人長期療養保険制度政策資料集Ⅰ」を基に筆者作成。 ―94 ―
う資格を創設した。療養保護士は国家資格として年齢,性別,学歴制限無しで, 1級(240 時間,身体介護+家事援助),2 級(120 時間,家事援助のみ)に区分 されている。 文献 麻生裕子訳(2006)『図表でみる世界の社会問題 OECD 社会政策指標−貧困・不平等 ・社会的排除の国際比較』明石書店。 埋橋孝文・木村清美・戸谷広裕之編(2009)『東アジアの社会保障−日本・韓国・台 湾の現状と課題−』ナカニシヤ出版。 金貞任(2009)「韓国の介護保険制度」『海外社会保障研究』No.167 67−78 国立社会保 障・人口問題研究所。 公的老人療養保障推進企画団(2003)『公的老人療養保障制度導入の必要性と財政運 営方式の選択に関する公聴会』。 徐東敏・近籐克則(2009)「韓国の老人長期療養保険制度の成立背景と特徴−日韓比 較の視点から−」『社会政策』第 1 巻第 3 号 79−90。 武川正吾,イ・ヘギョン編(2006)『福祉レジームの日韓比較−社会保障・ジェンダ ー・労働市場』東京大学出版社。 増田雅暢(2005)『韓国の介護保険の動向』「月刊介護保険」2005 年 10 月・11 月号 法研。 増田雅暢編著(2008)『世界の介護保障』法律文化社。 韓国統計庁(2006)『将来人口推計』。 韓国統計庁(2007)『2007 年推計人口・世帯資料』。 国民健康保険公団(2009)『2009 年 5 月老人長期療養保険制度月報』。 キム・ジュンハン(2008)「老人長期療養保険制度におけるサービス質の向上方案− 療養保護士の養成及び専門性向上を中心に」『極東社会福祉ジャーナル』Vol.4 49 −83。 ジャン・ウシン(2009)「老人長期療養保険制度による療養保護士の教育及び管理に 関する研究」『老人福祉研究』Vol.43 263−286。 ジョギョンエ(2007)「老人長期療養保険法制定過程での市民団体の役割に関する研 究」ソンゴンヘ大学修士学位論文。 保健福祉部(2007 a)『老人長期療養保険インフラ拡充案内』。 保健福祉部(2007 b)『老人長期療養保険制度政策資料集Ⅰ』。 保健福祉家族部(2008)『老人長期療養保険制度の利用形態及び満足度調査』韓国ギ ャラップ,健康保険研究院。 保健福祉家族部(2009 a)『老人長期療養保険施行 1 年の主要統計現状』。 保健福祉家族部(2009 b)『老人長期療養保険施行 1 年の成果と今後の課題』。 保健福祉家族部(2009 c)『老人長期療養保険制度の国民認識度調査』韓国ギャラッ ―95 ―
プ,健康保険研究院。 保健福祉家族部(2009 d)『老人長期療養保険制度の利用形態及び満足度調査』韓国ギ ャラップ,健康保険研究院。 朴夏政(2008)「社会福祉政策決定過程の政策ネットワーク研究」慶熙大学博士学位 論文。 イ・ジュンウ,ソムン・ジンヒ(2009)「老人長期療養保険在宅サービスの問題点と 改善方案」『韓国老年学』Vol.29(1)149−175。
OECD(2008)OECD Health Data−Version : December 2008 http : //www.oecd.org/health/healthataglance。
Long-term care Insurance System of South Korea
──Achievements and issues at the point of one year from enforcement──Ham Ill Woo
The public long-term care insurance system of South Korea enforced from July 1, 2008, made its 1st anniversary. Some points, such as privatization, extension of the system from the restrictive service only for public assistance recipients or low in-come earners to the general service covering all the aged, and commercialization in which foundation of private long-term care institutions were promoted by the gov-ernment, are counted as the significances of this new registration.
The number of long-term medical-treatment organizations increased quickly in only one year. However, from now on, not only expanding infrastructure, but also evaluating the institutional framework is needed from the mid- and long-term view-point.
In this paper development, achievements, and problems of South Korea public long-term care insurance were discussed at the point of one year from enforcement. Firstly, background and history in the legislating process were investigated. Sec-ondly, problems were pointed out from the current situation. Last, some future issues and suggestions were presented.