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近畿圏鉄道市場における競争の特質

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Academic year: 2021

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近 畿 圏鉄 道 市 場 にお け る競 争 の特 質

概 要 「市 場 の失 敗 」 の 典 型 例 と さ れ,自 然 独 占を 前 提 と して 規 制 ・運 営 され て き た鉄 道 事 業 に も,規 制 緩 和 の 潮 流 は 押 し寄 せ て い る。 だ が,鉄 道 事 業 が 独 占状 態 を 謳 歌 して きた 時 代 や 地 域 は,実 はお の ず と限 定 され る。 特 に,阪 神 間(大 阪 一 神 戸)お よび 京 阪 間(京 都 一 大 阪)を 軸 とす る近 畿 圏 の 鉄 道 市 場 で は,1920年 代 か ら事 業 者 間 ・路 線 間 の 競 争 が 展 開 され, これ が 市 場 全 体 の 特 質 とな って い る。 これ を 明 らか にす る こ とが 本 稿 の 目的 で あ り,ま ず は 市 場 の 地 理 的 条 件 な ら び に歴 史 的 経 緯 と,運 賃 競 争 を 中心 と した 市 場 の 現 状 を 把 握 す る こ と を 試 み る。 次 いで,ご く最 近 の 動 向 か ら,鉄 道 事 業 者 間 の 協 調 行 動 の 可 能 性 を 論 じ,近 畿 圏 鉄 道 市 場 の 今 後 の 展 望 を 示 す 。 キ ー ワー ド 鉄 道 市 場,競 争, 原 稿 受 理 日2009年6月1日 運 賃 競 争,上 限 認 可 制,協 調 行 動

Abstract Although the railway industry in general has been regulated as a natu-ral monopoly, the rail transport has often faced some forms of competition. In par-ticular, there has been direct competition within the railway market in Kansai Metropolitan Areas since 1920s. The aim of this paper is to investigate its past, pre-sent and future, with a particular focus on the price competition and cooperative behaviour.

Key words railway market, competition, price tion, cooperative behaviour

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regula-1.は じ め に 規 制 緩 和 と競 争 促 進 の 潮 流 が,国 家 や 産 業 を 超 え て 世 界 的 な もの とな って 久 しい。 そ の 潮 流 は,自 然 独 占を 前 提 と して 規 制 ・運 営 され て きた 鉄 道 事 業 に も押 し寄 せ て い る。 もっ と も,鉄 道 事 業 が 独 占状 態 を 謳 歌 して きた 時 代 や 地 域 は,実 はお の ず と限 定 され る。 旅 客 交 通 市 場 だ けを 見 て も,鉄 道 は,長 距 離 で は主 に航 空 と,短 距 離 で は主 に 自家 用 自動 車 と の 間 で,交 通 機 関 間 競 争(intermodalcompetition)に 巻 き込 まれ て きた こ と は,周 知 の 事 実 で あ る。 しか も,わ が 国 の 大 都 市 圏 で は,複 数 の 鉄 道 事 業 者 の 路 線 が 同 一 区 間 に並 行 して 走 り, 事 業 者 間 ・路 線 間 で の 直 接 的 な 競 争 が 展 開 され て きた 。 同 一 区 間 を 運 行 す る鉄 道 路 線 が 複 数 あ る場 合,理 論 的 に は過 当競 争 が起 こ り,独 占 が最 も効 率 が よ い とい う帰 結 に達 す る(1)。 これ が,冒 頭 に述 べ た,鉄 道 を 自然 独 占の 典 型 と して 規 制 す る根 拠 で あ った 。 実 際,わ が 国 の 鉄 道 で も,破 滅 的 競 争 が 危 惧 され,協 定 や 国 有 化 に よ って 独 占が 作 り出 され て 競 争 状 態 が 終 息 した例 は 見 られ た(2)。一 方 で,わ が 国 の大 都 市 圏 鉄 道 市 場 で は,事 業 者 間 ・路 線 間 の 競 争 は,区 間 に よ って は大 正 時 代(1920年 代)以 来 の 長 い歴 史 を 持 って い る。 鉄 道 事 業 者 は,破 滅 的 で な い,多 様 な 形 態 の 競 争 を 通 じて,切 磋 琢 磨 を繰 り返 して き た の で あ る。 そ の 背 景 に は,複 数 の 事 業 者 の 存 立 を 許 す だ けの 大 規 模 な 需 要 が あ る こ と は言 う まで もな い。 だ が,そ の 需 要(特 に通 勤 需 要)も また,鉄 道 事 業 者(あ る い はそ の グル ー プ企 業) が 沿 線 開 発 にお いて 競 争 を 展 開 す る こ と に よ って 創 出 して きた 部 分 が 大 き い。 本 稿 は,大 阪 一 神 戸 間(以 下 「阪 神 間 」)お よ び京 都 一 大 阪 間(以 下 「京 阪 間」)を 軸 と す る近 畿(関 西)圏 の 鉄 道 市 場 にお け る競 争 につ いて,歴 史 的 経 緯 と現 状 を 把 握 し,今 後 の 展 望 を 示 す こ とを 目的 とす る。 近 畿 圏 で は地 形 の 制 約 の た め,首 都 圏 と比 較 して も路 線 間 競 争 が 激 し くな りが ちで あ る。 ま た,JR福 知 山線 の脱 線 事 故(2005年4月)や,阪 急 電 鉄 と阪 神 電 鉄 の 経 営 統 合(2006年10月)と い った 新 た な 状 況 に直 面 して お り,競 争 の 現 状 と意 義 を 整 理 した 上 で の 議 論 が 求 め られ て い るの で あ る。 本 稿 の 構 成 は以 下 の通 りで あ る。2.で は,近 畿 圏 鉄 道 市 場 の地 理 的条 件 を 検 討 し,競 争 (1)過 当 競 争 の 理 論 的 説 明 は,例 え ば,金 本[1995]pp.75-81,小 田 切[2001]pp.55-61を 参 照 さ れ た い 。 (2)例 え ば1902年 か ら,大 阪 一 名 古 屋 間 で 官 設 鉄 道(現 ・JR)東 海 道 線 と 関 西 鉄 道(現 ・JR関 西 線)の 間 で 旅 客 と 貨 物 の 誘 致 合 戦 が 行 な わ れ た 。1904年 に 協 定 が 結 ば れ,1907年 に 関 西 鉄 道 が 国 有 化 さ れ て,競 争 は 完 全 に 終 息 した 。 和 久 田[1981]pp.38-39を 参 照 さ れ た い 。 -466(466)一

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の 歴 史 的 経 緯 を概 観 す る。3.で は,市 場 の 現 状 を,運 賃 競 争 を 中心 に把 握 す る こ とを 試 み る。4.で は,ご く最 近 の動 向 と して,阪 急 電 鉄 と阪 神 電 鉄 の経 営 統 合 お よ び,私 鉄 各 社 を 中心 と した 共 通 乗 車 カー ドの 導 入 につ いて,事 業 者 間 の 協 調 行 動 の 観 点 か ら説 明 し,近 い 将 来 に 向 け た展 望 を示 す。5.で は,本 稿 の 議 論 を ま と め,近 畿 圏鉄 道 市 場 に お け る競 争 の 特 質 を 整 理 し,今 後 の 研 究 課 題 につ いて 述 べ る。 な お 本 稿 は,高 橋[1998a]の 問題 意 識 を継 承 し,そ の対 象 を近 畿 圏 に絞 り込 ん だ上 で, 最 近10年 間 の 状 況 の 変 化 を 含 あ て 論 じる もの で あ る。

2.近

畿圏鉄道市場 の歴史 的経緯

近 畿 圏 鉄 道 市 場 の 分 析 を 始 め る に あた り,斎 藤[2002]が 挙 げて い る,近 畿 圏 の 交 通 シ ステ ムが 持 つ4つ の 特 徴 に触 れ て お きた い。 す な わ ち,① 都 市 間 交 通 シ ステ ム と都 市(都 市 内)交 通 シ ステ ムの 双 方 が 入 り組 ん だ,複 雑 な 構 造 を 持 って い る こ と,② 多 核 型 大 都 市 構 造 で あ る こ とが,早 期 の 電 気 鉄 道 ブー ムを 到 来 させ,そ の 結 果 と して 私 鉄 主 導 型 の 都 市 鉄 道 シ ステ ムが 形 成 され た こ と,③ 私 鉄 文 化 の 影 響 力 が 強 い こ と,④ 複 線 構 造 型 の 都 市 鉄 道 シ ステ ムの 構 造 に関 連 して,高 品質 の輸 送 サ ー ビス が供 給 され て き た こ と,で あ る(pp. 76-85)。 これ らの う ち① は,道 路 網 を含 め た 交 通 シ ス テ ム全 体 に 当 て は ま る が(pp.76-77),② か ら④ は私 鉄 を 中心 と した鉄 道 に特 有 で あ る。 本 節 で は,近 畿 圏 鉄 道 市 場 が 持 つ 地 理 的 条 件 と歴 史 的 経 緯 を 検 討 す る こ とで,こ れ らの 特 徴 が 顕 著 にな った 要 因 を 探 る こ と と した い。 2.1市 場 の地 理 的特 徴 は じめ に,近 畿 圏 鉄 道 市 場 が 持 つ 地 理 的 な 条 件 を 整 理 して お く。 図1は,近 畿 圏 の 鉄 道 網 の うち,主 に府 県 庁 所 在 地 ク ラ スの 主 要 都 市 を 結 ぶ 路 線(以 下 「都 市 間 路 線 」)を 示 し た もの で あ る。 大 阪 と,周 辺 の 府 県 庁 所 在 地 を 結 ぶ 全 て の 区 間 にお いて 複 数 の 鉄 道 事 業 者 が 存 在 し,そ れ 以 外 の 区 間(神 戸 一 姫 路 間 や 京 都 一 奈 良 間 な ど)に お いて も競 合 が あ る こ とが わ か る。 しか も,平 坦 空 間 が 狭 隆 で あ る と い う地 形 上 の 制 約 を 受 けて,迂 回 ル ー トの 建 設 が 難 し い た あ,競 合 路 線 同士 が 狭 い空 間 に混 在 して い る(斎 藤[2002]p.76)。 最 も典 型 的 な の は阪 神 間 で あ る。 阪 神 間 に は,北 に六 甲 山地 が,南 に大 阪 湾 が 迫 って い るた め,鉄 道 用 地 ・ 住 宅 用 地 と して 適 した平 坦 空 間 は特 に狭 隆 で あ る。 こ こに,阪 急 電 鉄 ・JR(西 日本)・ 阪 一467(467)一

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{豆都 駅 ・四 唖珂 原町 JR山 陽線 呈

埴 踏 山陽電鉄 阪急 神戸 線 神戸 〔三 官jJR東 海道 線 阪神本線 キ 釧 悔田 ・詮 厘椙} 大 阪 ミ† ……峨 注・玉王 寺

麺 藩

近鉄奈良線 近 鉄 京 都 線 J R 奈 良 線 棄 且 JR関 西線

ll

和 歌 山 ※ ・ はJRを、+一ト ←は私鉄を表す。 図1近 畿 圏 鉄 道 市 場 に お け る 都 市 間 路 線 と そ の 競 合 神 電 鉄 の3事 業 者 が,東 西 に並 行 して 路 線 を 持 って お り,特 に西 半 分 に あた る西 宮 市 か ら 神 戸 市 三 宮 にか けて は,3路 線 の 駅 勢 圏 が 重 な る場 合 も多 い。 さ らに,大 阪 側 の ター ミナ ル が 梅 田(JR大 阪駅),神 戸 側 の タ ー ミナル が 三 宮(JR三 ノ宮 駅)で あ る と こ ろ も3路 線 の 共 通 点 で あ る。 こ の よ う な厳 しい地 理 的 条 件 の 下 で,複 数 の 事 業 者 ・路 線 に よ る競 争 は,い か に して 「破 滅 的 競 争 」 に陥 らず に 機 能 しえ た の か。 以 下,本 節 で は,近 畿 圏鉄 道 市 場 の歴 史 的 経 緯 を,図1に 示 した 路 線 ・事 業 者 を 中心 に概 説 し,競 争 の 展 開 過 程 を 整 理 した い。 2.2市 場 の生 成 と競 争 の展 開 わ が 国 初 の 鉄 道 は,周 知 の 通 り1872年 に開 通 した 新 橋 横 浜 間 の 官 設 鉄 道 で あ る。 近 畿 圏 で は,1874年 に は 阪神 間 に,1877年 に は京 阪 間 に 官設 鉄 道 が 開 業 した(3)。これ らの 路 線 は,現 在 のJR東 海 道 線 とな って い る こ とか ら も明 らか な よ うに,首 都 圏 と近 畿 圏 を結 ぶ, わ が 国 全 体 に と って 重 要 な 幹 線 鉄 道 の 一 部(い わ ば先 行 開 業 区 間)で あ った 。 この こ ろ, 幹 線 鉄 道 の 建 設 を 進 め た の は,政 府 だ けで はな か った 。 民 間 資 本 もまた,官 設 鉄 道 に対 比 され る私 設 鉄 道 と して,全 国 各 地 に幹 線 鉄 道 を 整 備 して い った の で あ る。 近 畿 圏 で は,阪 堺 鉄 道(現 ・南 海 本 線)難 波 一 大 和 川 間 が1885年 に開 業 し,そ の後 和 歌 山 を 目指 した の が, 私 設 鉄 道 の さ きが けで あ った(4)。そ の 後,山 陽 鉄 道(現 ・JR山 陽 線)兵 庫 姫 路 間 が1888 年 に 開 業,奈 良 鉄 道(関 西 鉄 道 等 を 経 て,現 ・JR奈 良 線)が1896年 に 全 通,阪 鶴 鉄 道 (3)以 下,明 治30年 頃 まで の 幹 線 鉄 道 の整 備 につ いて は,中 西[1979]第2章 お よ び 和 久 田[1981] 第2章 を 主 に参 照 した 。 (4)阪 堺 鉄 道 か らそ の 後 の 南 海 鉄 道 を 経 て,現 在 の 南 海 電 鉄 に至 る歴 史 的 経 緯 は,武 知[1995]が 詳 しい 。 -468(468)一

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(現 ・JR福 知 山 線)と 関 西 鉄 道 湊 町(現 ・JR難 波)一 名 古 屋 間(現 ・JR関 西 線)が1901 年 に 全 通 す る な ど,近 畿 圏 の 都 市 間 路 線 の 原 形 は,明 治30年 代 ま で に 整 備 さ れ つ つ あ っ た 。 1905年 に は,営 業 キ ロ で 見 る と,官 設 鉄 道 は2,562キ ロ,私 設 鉄 道 が32社 で5,231キ ロ で あ り,私 設 鉄 道 が 官 設 鉄 道 以 上 に 全 国 に ネ ッ ト ワ ー ク を 張 り め ぐ ら せ て い た こ と が わ か る (斎 藤[1993]p.14)。 だ が,そ の 翌 年(1906年)に は 鉄 道 国 有 化 法 が 施 行 さ れ,さ ら に そ の 翌 年(1907年)に か け て 私 設 鉄 道 の 買 収 ・国 有 化 が 進 め られ た(5)。上 記 の 山 陽 ・阪 鶴 ・ 関 西 の 各 鉄 道 は そ の 対 象 と な り,こ れ が 現 在 のJRに 引 き継 が れ る の で あ る。 も っ と も, 上 記 の32社5,231キ ロ の う ち,実 際 に 国 有 化 さ れ た の は17社4,527キ ロ に 留 ま っ た 。 こ れ は, 鉄 道 国 有 化 法 第1条 に お い て,「 一 般 運 送 の 用 に 供 す る 鉄 道 は 総 て 国 の 所 有 とす,但 し一 地 方 の 交 通 を 目 的 と す る 鉄 道 は こ の 限 り に あ ら ず 」 と 規 定 さ れ た た め で あ る 。 「一 地 方 」 と は ど の 範 囲 を 指 す の か,結 局 は 恣 意 的 で は あ っ た が,1903年 に 難 波 一 和 歌 山 市 間(現 ・南 海 本 線)を 全 通 さ せ た 南 海 鉄 道 や,1905年 に 阪 神 間(出 入 橋 一 神 戸)を 電 化 開 業 した 阪 神 電 鉄 は,国 有 化 の 対 象 と は さ れ な か っ た 。 鉄 道 国 有 化 以 後,明 治 末 期 か ら大 正 に か け て,近 畿 圏 で は,上 記 の 阪 神 を き っ か け と し た 私 鉄 ブ ー ム が 起 こ っ た 。 鉄 道 事 業 者 の 数 は,か え っ て 増 え 続 け た の で あ る 。 こ の ブ ー ム を 財 務 的 に 支 え た の は,豊 富 な 資 本 蓄 積 と 活 発 な 資 本 市 場 で あ り(斎 藤[2002]p.77), 法 制 度 的 に 支 え た の は 「軌 道 」 の 制 度 で あ っ た 。 軌 道 は,道 路 上 に 敷 設 さ れ る の が 当 初 の 原 則 で あ り,道 路 を 管 轄 す る 内 務 省 が 監 督 した 。 阪 神 は,軌 道 の 概 念 を か な り拡 大 解 釈 し た こ と か ら,道 路 上 に 敷 設 さ れ た 「併 用 軌 道 」 は 開 業 当 初 か ら わ ず か で あ り,実 質 的 に 「鉄 道 」 と何 ら変 わ り は な か っ た 。 しか も そ の 車 両 や 技 術 は,当 時 の ア メ リ カ の 都 市 間 電 車 (interurban)に 匹 敵 す る 最 新 の も の を,開 業 当 初 か ら採 用 して い た(和 久 田[1981]pp. 44-45,小 川[2005a]pp.28-35)。 こ の よ う に して,蒸 気 機 関 車 に よ っ て 運 行 さ れ て い た 幹 線 鉄 道(国 有 化 さ れ た もの を 含 む 官 設 線)に 対 し,私 鉄 で は 電 化 開 業 ・電 車 運 行 に よ っ て,運 転 本 数 や 駅 の 数 と い っ た サ ー ビ ス 面 の み な らず,運 賃 面 で も官 設 線 を 凌 駕 した と さ れ る(6)。 こ の よ う に して,私 鉄 ブ ー ム を 通 じ,近 畿 圏 に は 私 鉄(電 車)に よ る 都 市 間 路 線 網 が 整 備 さ れ て い っ た の で あ る(7)。1910年 代 ま で に 建 設 ・開 業 さ れ て い っ た 路 線 の う ち,図1に (5)鉄 道 国 有 化 法 な ら び に,同 法 に よ る 幹 線 鉄 道 の 国 有 化 に つ い て は,中 西[1979]第3章,和 久 田[1981]pp.47-51,武 知[1986]第2章,桜 井 ・石 井[1986]が 詳 し い 。 (6)一 例 と し て,阪 神 が 官 設 東 海 道 線 に も た ら し た 影 響 に つ い て,中 西[1979]pp.273-278お よ び 小 川[2005b]pp.59-60を 参 照 さ れ た い 。 (7)中 に は,国 有 化 を 免 れ た 南 海 鉄 道 の よ う に,1911年 に 難 波 和 歌 山 市 間 の 電 化 を 完 成 さ せ,幹/ -469(469)一

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引 き継 が れ る路 線 を 開 業 順 に ま とめ た もの が 表1で あ る。 表1明 治末期か ら大正期 に建設 され た近畿圏 の私鉄(都 市間路線) 事業者名 南海鉄道 阪神電鉄 京阪電鉄 箕面有馬電軌 大阪電軌 区 間 大 阪(難 波)一 和 歌 山(市 駅) 大 阪(出 入 橋)一 神 戸(三 宮) 大 阪(天 満 橋)京 都(五 条) 大 阪(梅 田)一 宝 塚 大 阪(上 本 町)一 奈 良 現在 の路線名 南海本線 阪神本線 京 阪本線 阪急宝塚線 近鉄奈良線 開通年 1903 1905 1910 1910 1914 電化年 1911 電化開業 表1の 路 線 の 中で 例 外 的 な 位 置 づ けで あ るの は,箕 面 有 馬 電 気 軌 道(現 ・阪 急 宝 塚 線) で あ る。 他 の 路 線 が,府 県 庁 所 在 地 レベ ル の 主 要 都 市 を 結 び,途 中で 街 道 沿 い(例 え ば, 阪 神 間 の 西 国 街 道,京 阪 間 の 京 街 道)の 町 村 に も駅 を 設 けた 都 市 間 路 線 で あ るの に比 べ, き ゆ う 箕 有 は そ の 沿 線 も終 点 も 田園 が 多 く,人 口 や産 業 の 集 積 も他 の沿 線 と比 較 して 小 規 模 で あ った 。 箕 有 は,も と もと前 述 の 阪 鶴 鉄 道 の 子 会 社 と して 設 立 され,社 名 の 通 り大 阪(梅 田)か ら箕 面 だ けで な く,温 泉 地 と して 古 くか ら有 名 な 有 馬(現 在 の 神 戸 市 北 区)を 目指 す 予 定 で あ った 。 阪 鶴 鉄 道 が,社 名 の とお り大 阪(瀬 戸 内 側)と 舞 鶴(日 本 海 側)を 結 ぶ 幹 線 鉄 道 と して 国 有 化 され た 後,箕 有(企 業 組 織 お よ び,開 業 予 定 の 路 線 免 許)は 私 鉄 と して残 され た。 三 井 銀 行 か ら,国 有 化 直 前 の 阪 鶴 鉄 道 に監 査 役 と して 送 り込 ま れ た 小 林 い ちぞ う 一 三(1873-1957)は ,箕 有 の 実 質 的 な 創 業 者 と し て,沿 線(現 在 の 大 阪 府 池 田 市 な ど) に 住 宅 地 を,終 点(宝 塚)に 娯 楽 施 設(遊 園 地 ・歌 劇 場)を 開 発 し た(8)。こ う し た 私 鉄 に よ る 多 角 化 戦 略 は,首 都 圏 ・近 畿 圏 の み な らず 全 国 各 地 の 私 鉄 に 広 が っ て い っ た(9)。 1920年 代 以 降 も私 鉄 ブ ー ム は 形 を 変 え て 続 い て い っ た 。 箕 有 は,社 名 を 阪 神 急 行 電 鉄 (阪 急)と 改 め(1918年),阪 神 間 に 新 規 参 入 して 十 三 一 上 筒 井 間 を1920年 に 開 業 し た(1①。 こ れ に よ り,阪 神 と 阪 急 は 直 接 的 な 競 合 関 係 に 立 っ た(小 川[2005c]pp.115-116)。 ま た, 京 阪 間 に お い て は,淀 川 左 岸 の 京 街 道 沿 い を 走 る 京 阪 電 鉄 が,京 阪 間 を 高 速 の 電 車 で 直 結 す る 目 的 で,淀 川 右 岸 に 「新 京 阪 鉄 道 」 を 建 設 し,天 神 橋(現 ・天 神 橋 筋 六 丁 目)一 西 院 間 を1928年 に 開 業 し た(11)。大 阪 一 和 歌 山 間 に お い て は,新 た に 阪 和 電 鉄 が 天 王 寺 一 阪 和 束 \線 鉄 道 か ら本 格 的 な 私 鉄 ・都 市 間 路 線 に脱 皮 して い った もの もあ る。 (8)小 林 一 三 とそ の 鉄 道 経 営 ・多 角 化 戦 略 に 関 す る文 献 は 数 多 いが,さ しあ た り津 金 澤[1991], 作 道[1995],原[1998]を 参 照 さ れ た い。 斎 藤[2002]が 指 摘 す る,近 畿 圏 の 交 通 シ ス テ ム の 特 徴 で あ る私 鉄 文 化 は,小 林 が 創 り上 げ た と こ ろが 非 常 に大 きい 。 (9)私 鉄 に よ る多 角 化 戦 略 の 研 究 成 果 と して,斎 藤[1993]お よ び正 司[2001]を 参 照 され た い 。 ⑩ これ が 現 在 の 阪 急 神 戸 線 で あ る。 阪 急 に よ る阪 神 間 へ の 進 出 につ い て は,宇 田[1995]pp.15-21が 詳 しい。 (ll)新 京 阪 鉄 道 は,1930年 に京 阪 に吸 収 され,京 阪 新 京 阪 線 とな った 。 さ ら に後 述 の よ う に,現 在 は 阪 急 京 都 線 にな って い る。 -470(470)一

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和 歌 山(現 ・JR和 歌 山)を1930年 に 開 業 した(現 ・JR阪 和 線)。 こ の 時 点 で 既 に,運 賃 ・ サ ー ビ ス(特 に 運 転)・ 路 線 拡 張 ・副 業(兼 業)の4つ の 側 面 で,鉄 道 事 業 者 間 あ る い は 路 線 間 の 競 争 が 展 開 さ れ て い た(中 西[1979]pp.446-452)。 さ ら に1930年 代 に は,官 設 線(「 鉄 道 省 の 路 線 」 ゆ え 「省 線 」 と 呼 ば れ た)で も電 化 が 進 み,東 海 道 ・山 陽 線 で は,吹 田 須 磨 間 が1932年,京 都 明 石 間 が1937年 に 電 化 さ れ た 。 阪 神 間 で は,省 線 が 電 化 を 機 に5つ の 電 車 専 用 駅(塚 本 ・立 花 ・甲 子 園 口 ・六 甲 道 ・元 町) を 設 け た こ と で(小 川[2005c]pp.118-120),省 線 ・阪 神 ・阪 急 が 「電 車 」 同 士 で 三 つ 巴 の 競 争 を 展 開 した 。 こ う して,図1で 見 た 都 市 間 路 線 の 「複 線 構 造 」 は,1930年 代 初 頭 ま で に ほ ぼ 現 在 の 姿 を 現 す の で あ る 。 こ れ らの 路 線 は,開 業 時 期 や 目 的 な ど か ら,表2の よ う に4種 類 に 分 類 で き る もの と 考 え られ る 。 こ の 類 型 は,本 節 の こ れ ま で の 記 述 に 基 づ い た 仮 説 で あ り,今 後 様 々 な 検 証 を 経 る べ き もの で あ る 。 表2近 畿圏 にお ける都市間路線の類型 類 型 幹 線 型 街 道 型 郊 外 型 直 結 型 特 徴 ・1870年 代 ∼1900年 代 に か け,幹 線 の 一 部 と し て 非 電 化 開 業 ・私 設 線 は1906∼07年 に 国 有 化(南 海 を 除 く) ・1930年 代 に 一 部 電 化(南 海 は1911年 完 成) ・1900∼10年 代(私 鉄 ブ ー ム期)に ,軌 道 として電 化 開 業(実 態 は 鉄 道) ・近 畿 圏 内 の 中核 都 市 間 を 結 ぶ と と も に,街 道筋の 町 村 を 結 ぶ ・1920年 代 に開 業(私 鉄 ブー ム 期) ・沿 線 ・終 点 の 郊 外 開 発 中 心 ・同 時 期 に開 業 した 首 都 圏 の 私 鉄(例:現 在 の 東 急 の 前 身 で あ る 目黒 蒲 田電 鉄 ・東 京 横 浜 電 鉄)に 近 い状 況 ・1930年 代 に開 業(後 発) ・カー ブの 多 い街 道 型 と異 な り,中 核都市間を直結 し高 速 運 転 ・幹 線 型 ・街 道 型 路 線 と も路 線 ・駅 勢 圏 が 重 複 現 在 の 事 業 者 ・路 線 名 JR:東 海 道 ・山 陽(京 都 ・神 戸)線 ・関 西(大 和 路)線 ・福 知 山(宝 塚)線 ・奈 良 線 南 海:本 線 阪 神:本 線 京 阪:本 線 山陽:本 線 阪 急:宝 塚 線 近 鉄:奈 良 線 ・京 都 線 阪 急:神 戸 線 ・京 都 線 JR:阪 和 線(旧 阪 和 電 鉄) 2.3戦 中 ・戦 後 の事 業 者 再 編 戦 前 期 にお け る都 市 ・地 域 交 通 市 場 で の 競 争 激 化 は,近 畿 圏 の 鉄 道 の み な らず 全 国 各 地 で 見 られ た 。20世 紀 初 頭 に登 場 した バ ス(乗 合 自動 車)や タ ク シー は,全 国 各 地 の 都 市 ・ 地 域 交 通 市 場 にお いて,そ れ ぞ れ の 事 業 者 間(交 通 機 関 内)の 競 争 だ けで な く,交 通 機 関 一471(471)一

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間 競 争 を 展 開 す る よ う にな った の で あ る。 競 争 激 化 へ の 政 策 的 対 応 と して,政 府 は鉄 道 市 場 へ の 介 入(交 通 調 整)を 意 図 した 。 近 畿 圏 で は,既 に1914年 頃 か ら,阪 神 が 箕 有 あ る い は京 阪 と合 併 す る こ とが 画 策 され て いた (小川[2005b]pp.83-86)。1920年 の 阪 急 神 戸 線 の 開通 を き っか け に,阪 神 と阪 急 の 合 併 の 機 運 が 再 び起 こ り,1930年 代 前 半 に は,逓 信 省 や 鉄 道 省 か ら も合 併 の 勧 告 が な され た の で あ る(小 川[2005c]pp.120-121)。 この と き は,近 畿 圏 の 私 鉄 間 の 合 併 は実 現 しな か った が,1930年 代 半 ば以 降,挙 国 一 致 の 戦 時 体 制 に突 入 す る と,交 通 調 整 は戦 時 統 制 の 色 合 いを 強 め て い った 。 近 畿 圏 の 私 鉄 各 社 は,1934年 に 自発 的 な 統 制 機 関(大 阪 電 鉄 連 合 会)を 結 成 し,事 業 者 統 合 の 具 体 案 を 検 討 した 。1938年 に は,陸 上 交 通 事 業 調 整 法 が 施 行 され,特 に多 くの 交 通 事 業 者 が 存 在 した 東 京 ・大 阪 ・富 山 ・香 川 ・福 岡 が 対 象 とな った た め,鉄 道 省 は,近 畿 圏 で も大 阪 を 中心 に 事 業 者 統 合 を 積 極 的 に推 進 した 。 図2で は,左 半 分 にお いて,戦 時 中の 事 業 者 統 合 の 進 行 状 況 を ま とめ て い る。 1939年 1941年 1943年 1945年 1947年 1949年 阪神 電鉄 阪急電鉄 京 阪神急行 電鉄 京 阪電鉄 京阪電鉄 大阪電軌 関西急行 鉄道 近畿 日本鉄道 参宮急行 大阪鉄道 南海 鉄道 阪和電鉄 南海電鉄 省線 阪和線 国鉄阪和線 ※ 宇 田 ほ か[1986]pp.253,254お よ び 高 橋[1998a]p.32よ り 作 成 。 図2近 畿 圏 大 手 私 鉄 の 戦 中 ・戦 後 に お け る 事 業 者 再 編 同 じ く図2の,右 半 分 に あ る よ う に,こ う した 戦 時 中の 事 業 者 統 合 は,戦 後 の1947年 頃 か ら解 体 が 進 ん だ 。 これ に よ り,近 畿 圏 の 大 手 私 鉄5社 体 制 が 成 立 した 。 もっ と も,戦 前 と戦 後 で の 相 違 点 もい くつ か 見 られ る。 阪 和 線(以 前 の 阪 和 電 鉄 ・南 海 山手 線)は 戦 時 国 有 化 され た ま ま国 鉄(日 本 国 有 鉄 道)に 移 行 した 。 阪 急 新 京 阪 線 は阪 急 の 手 許 に残 され て 阪 急 京 都 線 とな った が ⑫,そ の 理 由 と して,阪 急 の 太 田垣 士 郎 社 長(当 時)は,阪 急 は 国 ⑫ 図2に あ る よ う に,京 阪 と阪 急 は1943年 に 合 併 し,「京 阪 神 急 行 電 鉄 」 が 発 足 して い た。 新 京 阪 線 と阪 急 宝 塚 ・神 戸 線 との 間 は,合 併 前 か ら京 阪十 三 線(十 三 一 淡 路 間)で つ な が って い た が, 合 併 後 の1944年 に は,新 京 阪 線 が 阪 急 梅 田 駅 に乗 り入 れ るた め の 改 良 工 事 が 完 成 した 。 -472(472)一

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鉄(東 海 道 線)と の 競 争 に 専 念 し,淀 川 左 岸 は 京 阪 に 任 せ る た め と 説 明 して い る(京 阪 神 急 行 電 鉄[1959]pp.27-29,京 阪 電 気 鉄 道[1980]pp.86-88)。 2.4戦 後 に お け る都 市 化 の進 展 戦 後,特 に高 度 経 済 成 長 期(一 般 に1955∼73年)は,国 土 全 体 の 都 市 化 が 進 み,大 都 市 圏 で の 人 口増 加 が 特 に著 しい時 期 で あ った 。 大 都 市 圏 の 地 理 的 な 拡 大 と,鉄 道 沿 線 の 開 発 も,戦 前 に増 して 進 ん だ 。 そ の 結 果 大 都 市 圏 で は,鉄 道 沿 線 に住 宅 地 が 切 れ 目な くつ な が る,都 市 の 連 坦(conurbation)が 進 ん だ の で あ る。 近 畿 圏 で は,阪 神 間 ・京 阪 間 を 軸 と して 連 坦 が 進 み,都 市 圏 が 重 複 す る よ う にな った ⑬。 こ う した 都 市 圏 構 造 の 変 化 は,鉄 道 の 役 割 に も大 きな 影 響 を 与 え た 。 戦 前 に建 設 され た 都 市 間 路 線 で も,中 間 駅 の 利 用 者 が 増 加 し,都 市 間 の 利 用 者 の 重 要 性 が 相 対 的 に下 が った の で あ る。 鉄 道 事 業 者 は,都 市 間 で の 競 争 よ り も,中 間 駅 で の 沿 線 開 発 と利 用 者 対 応 に注 力 す る よ う にな った と いえ よ う。 例 え ば,私 鉄 の 都 市 間 路 線 の 優 等 列 車(特 急 な ど)が, 中間 駅 に多 く停 車 す る よ う にな り,都 市 間 を 最 速 で 直 結 す る こ とが 優 先 され な くな った の で あ る。 この よ うな 変 化 の 中で,事 業 者 間 の 競 争 は緩 和 され,中 間 の 独 占区 間 を 守 り,囲 い込 む こ と に鉄 道 経 営(不 動 産 を は じあ とす る グル ー プ経 営 を 含 む)の 重 点 が 移 って い っ た と考 え られ る。 2.5国 鉄 分 割 ・民 営化 と競 争 促 進 1987年4月,国 鉄 の分 割 ・民 営 化 が実 施 さ れ てJRグ ル ー プが 発 足 し,近 畿 圏 の 路 線 は JR西 日本(西 日本 旅 客 鉄 道)の 管 轄 とな った。JR西 日本 は,三 島会 社(北 海 道 ・四 国 ・ 九 州)よ りは需 要 面 で 恵 まれ て お り,財 務 的 に安 定 す る と考 え られ た がω,本 州 三 社 の 中 で は,首 都 圏 を抱 え るJR東 日本 や,東 海 道 新 幹 線 を 持 つJR東 海 と比 べ る と,中 国 地 方 で ロー カル 線 を 多 く抱 え るな ど,不 利 な 条 件 が 多 い と考 え られ た 。 ⑬ た だ し,標 準 大 都 市 雇 用 圏(StandardMetropolitanEmploymentArea)の 考 え 方 に よれ ば, 首 都 圏 は圏 内 にお いて も東 京 へ の 一 極 集 中 が 進 ん で い るの に対 し,近 畿 圏 で は,京 都 ・大 阪 ・神 戸 の そ れ ぞ れ が 都 市 圏 を形 成 して い る 「多 核 型 大 都 市 圏」 で あ る こ とが 統 計 的 に 明 ら か に な る (山 田 ・徳 岡[1983],山 田[1986])。 標 準 大 都 市 雇 用 圏 と は,人 口5万 人 以 上 か つ 昼 夜 間 人 口比 が1.0以 上 の都 市 を 中心 都 市 と し,全 体 の 人 口が10万 人 以 上 の 圏 域 で あ る。 市 町 村 が,あ る圏 域 の 郊 外 と して 含 まれ る に は,中 心 都 市 へ の 通 勤 者 数 が 常 住 就 業 者 数 に 占め る割 合 が10%以 上 で,鉱 業 を 除 く非 第1次 産 業 就 業 者 数 が 常 住 就 業 者 数 に 占め る割 合 が75%以 上 で あ る,と い う条 件 を 満 た さな けれ ば な らな い 。 ω 実 際,2004年 に は,JR西 日本 は完 全 民 営 化(全 株 式 の民 間へ の売 却)を 果 た して い る。 -473(473)一

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そ の 中 で,近 畿 圏 の 都 市 輸 送 が,需 要 の 豊 か な 市 場 と して 注 目 さ れ た 。 も と も と,国 鉄 の 近 畿 圏 の 路 線 は,首 都 圏 の 国 鉄 ・私 鉄 や 近 畿 圏 の 私 鉄 と 比 べ て,サ ー ビ ス や 運 賃 の 面 で 劣 っ て い る と さ れ て い た 。 例 え ば,関 西 線 ・福 知 山 線 ・片 町 線 な ど で は,電 化 ・複 線 化 が 完 成 した の は1970∼80年 代 に か け て で あ り,そ れ ま で は 通 勤 輸 送 に 十 分 に 対 応 で き て い な か っ た 。 そ こ でJR西 日本 は,民 営 化 直 後 に 近 畿 圏 の 都 市 通 勤 路 線 網 を 「ア ー バ ンネ ッ ト ワ ー ク 」 と 総 称 し,新 型 車 両 の 導 入 ・ス ピー ドア ッ プ ・増 発 ・新 駅 設 置 と い っ た サ ー ビ ス 改 善 を 進 あ た(間 崎[2003],JR西 日本[2008]pp.82-85)。 図3-A輸 送 人 員 の 推 移(1987年 二100) 図3-B輸 送 人 員 の 推 移(実 数)

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+JR +私 鉄 図3-C輸 送 人 キ ロ の 推 移(1987年=100) -+私 鉄 '→-JR 図3-D輸 送 人 キ ロ の 推 移(実 数) ※ 図3-A・B・C・Dと も,JR西 日 本[2008]p.84よ り 作 成 。 ※ 図3-A・Bで は,私 鉄(5社 合 計)は 決 算 短 信 に よ り,JRは 大 阪 周 辺 の 電 車 特 定 区 間 で 計 上 し て い る 。 ※ 図3-C・Dで は,私 鉄 は 『鉄 道 統 計 年 報 」 等 に よ り,JRは 京 都 ・大 阪 ・神 戸 の3支 社 で 計 上 し て い る 。 そ の結 果,図3-A・B・C・Dに 見 られ る よ うに,私 鉄 の輸 送 実 績 が 減 少 傾 向 に あ る 一 方 で,JRの 輸 送 実 績 は堅 調 で あ る。 近 畿 圏全 体 で人 口お よ び鉄 道 利 用 者 数(輸 送 人 員) が 減 少 傾 向 に あ る こ とを 考 慮 す る と,今 後JRの 輸 送 実 績 が 飛 躍 的 に伸 び る可 能 性 は低 い と見 られ る。 だ が,か つ て は 「私 鉄 王 国 」 と称 され た 近 畿 圏 鉄 道 市 場 にお いて,1990年 代 一475(475)一

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後 半 以 降,JRの 存 在 感 と利 用 習 慣 が 定 着 した とい え よ う⑮。 これ に よ り,近 畿 圏 鉄 道 市 場 にお け る現 在 の 競 争 は,「JR対 私 鉄 」 と い う構 図 で 捉 え る こ とが で き る。JRは2005年4 月25日 に福 知 山線 塚 ロー 尼 崎 間 にお いて,死 者106名(運 転 士 を 除 く)・ 負傷 者562名 を 出す 大 きな 脱 線 事 故 を 起 こ し,そ の 安 全 性 と企 業 体 質 が 問 題 視 され た 。 本 稿 で は,事 故 の 原 因 な ど に関 す る言 及 は控 え るが ⑯,マ ス コ ミを 中心 に,私 鉄 との 競 争 の激 化 や これ に 対 応 し た ス ピー ドア ップ ・増 発(過 密 ダ イ ヤ)が 事 故 の 一 因 で あ る と指 摘 す る声 もあ った こ と は 確 か で あ るq7)。 3.運 賃 競 争 の 現 状 前 節 で 検 討 した 歴 史 的 経 緯 を 踏 まえ る と,近 畿 圏 の 鉄 道 市 場 にお いて 現 在 展 開 され て い る競 争 は,表3の よ う に非 価 格 競 争 と価 格 競 争 と い う2つ の 要 素 に分 類 で き る。 こ こで,非 価 格 競 争 にお いて は,近 接 性 ・安 全 性 ・頻 多 性 ・速 達 性 ・快 適 性 と い った 多 くの 要 素 が,イ ンフ ラ投 資 に よ る輸 送 力 増 強 の 状 況 に依 存 して い る こ とが わ か る。 だ が, 近 畿 圏 の 鉄 道 市 場 にお け る事 業 者 間 の 投 資 競 争 は,戦 前 は前 述 の 路 線 拡 張 競 争 と い った 形 で 展 開 され て いた と は いえ,現 在 で は期 待 で きな い。 イ ンフ ラ整 備 は現 在 で は,鉄 道 事 業 者 に よ る投 資 戦 略 と い う よ り も,公 的 補 助 ・出資 の あ り方 と い った 交 通 政 策 の 範 躊 と捉 え るべ き部 分 が 多 い 。 端 的 に い え ば,事 業 者 は こ れ ま で に整 備 さ れ た イ ンフ ラを 所 与 と し て,そ の活 用 を通 じて非 価 格 競 争 に対 応 して い る の で あ る。 先 に見 たJRの サ ー ビス改 善 は,「 国鉄 時 代 の 歴 史 的経 過 」 に よ り残 って い る と され る 「効 率 改 善 お よ び サ ー ビス 向 上 へ の 経 営 資 源 の ス ラ ック」(正 司[2001]p .59)が 活 用 され る よ う に な った とい う こ とで あ ろ う。 例 え ばJRに は,前 述 の よ うに,も と も と幹 線 と して建 設 さ れ た 「幹 線 型 」 の 路 線 が 多 い。 この た め,並 行 す る私 鉄 に比 べ て カー ブが 少 な くス ピー ドア ップを 図 る余 地 が あ った こ と,駅 間 距 離 が 比 較 的 長 か った た め 新 駅 を 設 置 す る こ とで 「近 接 性 」 を 改 善 す る 余 地 が あ った こ とな どが 指 摘 で き る。 ⑮1990年 代 後 半 と いえ ば,阪 神 ・淡 路 大 震 災(1995年1月17日)の 影 響 も大 きい と考 え られ る。 震 災 に よ って 阪 神 間 の 鉄 道 路 線 が 不 通 にな った 後,4月 に最 も早 く復 旧 したJRに 利 用 者 が 乗 り 慣 れ,復 旧 が6月 まで か か った 阪 神 ・阪 急 か らの 需 要 の 移 転 が 起 こ った こ とが 指 摘 され て い る(斎 藤[1998]p.12)○ ⑯ この 事 故 の 公 式 な 調 査 結 果 と して,航 空 ・鉄 道 事 故 調 査 委 員 会[2007]を 参 照 され た い 。 ⑰ 例 え ば,『 朝 日新 聞 」2005年5月4日 付 社 説,あ るい は,安 部[2005]pp。53-54を 参 照 され た い 。 また,こ の 事 故 を き っか け と した サ ー ビス 改 善 ・競 争 を め ぐ る議 論 と して,原 ・川 島[2005] は 論 点 が 明 確 で あ る。 -476(476)一

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表3鉄 道市場 にお ける競争の要素 非価格競争 価格競争 基 本 的 サ ー ビ ス 近 接 性 拡 張 的 サ ー ビ ス 運 賃 安 全 性 正 確 性 頻 多 性 速 達 性 快 適 性 ト 利便性 生理的 心理的 わ か り や す さ ト利 用 の しや す さ 連 続 性 付 帯 的 サ ー ビ ス (乗客 の 便 宜) 種別の設定 割 引 運 賃 乗 継 運 賃 加 算 運 賃 路 線 ・駅 の 設 定,ア クセ ス 交 通 の 提 供 料 金 利 用 者 の 安 全,無 事 故 ダ イ ヤ の 遵 守 列 車 本 数 の 確 保 ・増 発,運 行 時 間 拡 大 急 行 運 転,列 車 の 速 度 上 昇,高 加 減 速 車 両 の導 入, カ ー ブ ・ポイ ン トの 通 過 速 度 上 昇 混 雑 緩 和,車 両 冷 房 化,冷 暖 房付 き待 合 室,ホ ー ム 上 屋,階 段 の エ ス カ レー タ ー ・エ レベ ー タ ー 化,座 席 指 定 車 の 導 入,リ ク ラ イ ニ ング シ ー ト,禁 煙 の 実 施, 車 内 補 助 椅 子 車 両 デ ザ イ ン向 上,駅 デ ザ イ ン向 上,ク ロ ス シー ト 化,窓 の 拡 大,前 面 展 望 シ ー ト,車 内 照 明 向 上,清 潔 な トイ レ,車 内 放 送 簡 素 化,発 車 合 図 の メ ロデ ィ 化,BGMの 導 入 列 車 案 内 情 報 の 向 上(電 光 掲 示 板 導 入 等),沿 線 案 内 情 報 の提 供,車 内 放 送 の充 実,女 性 車 掌 ・係 員 の 配 置,イ ン フ ォメ ー シ ョ ンセ ンタ ー,車 内文 字 情 報 の 提 供 プ リペ イ ド ・ICカ ー ド導 入,特 急 券 自動 販 売 機,予 約 シス テ ム,往 復 乗 車 券,大 晦 日の 終 夜 運 転 緩 急 接 続 ダ イ ヤ,乗 換 ・乗 継 通 路 の エ ス カ レ ー タ ー ・ エ レ ベ ー タ ー 化 車 内 トイ レ,車 内 販 売 ・自 動 販 売 機 の 設 置,駐 輪 場, コ イ ン ロ ッ カ ー 普 通/定 期,区 間(距 離 帯)・ 時 間帯 ・曜 日別 運 賃, 回 数 券,貸 切 運 賃 な どの 設 定 定 期 運 賃 ・回 数 券 の 割 引 率 設 定,特 殊 割 引 他 事 業 者 ・他 の 交 通 機 関 との 連 携 新 線 開 業 ・整 備 工 事 に伴 う加 算 特 急 料 金 ・グ リー ン料 金 な どの 設 定 ・区 分 ※ 三 上 ・斎 藤 ・綿 貫[1996]pp.43-44, 成 。 く ら し の リサ ー チ セ ン タ ー[2004]pp.155-170な ど よ り 作 一 方 で,価 格 競 争 は,イ ンフ ラお よ び輸 送 力 の 状 況 を 所 与 と した 路 線 間 競 争 にお いて, 重 要 な 要 素 で あ り続 けて い る と考 え られ る。 近 畿 圏 の 競 合 路 線 にお け る運 賃 を 比 較 した も の が,表4で あ る。JR・ 私 鉄 と も,1997年4月 の消 費 税 率 上 昇 時 以 降,運 賃 改 定 を 行 な っ て いな いた めq8),運賃 競 争 は沈 静 化 して い る よ う に見 え るが,現 在 の 運 賃 は,政 府 に よ る従 来 の 運 賃 規 制 の み な らず,事 業 者 に よ る運 賃 戦 略 や,国 鉄 末 期 の 運 賃 政 策 な どの 組 み 合 わ せ を 通 じて 決 定 され て お り,競 争 へ の 対 応 が 垣 間 見 られ る。 本 節 で は 以 下,高 橋[1998b, 1999]を 再 検 討 す る形 で,JRと 私 鉄 の 間 の運 賃 競 争 を,制 度 と戦 略 の両 面 か ら検 討 す る。 ⑱ 厳 密 に は,新 線 開 業 時 に,加 算 運 賃 を 含 め て 改 定 が 行 な わ れ る こ とが 多 い。 な お,消 費 税 率 と 無 関 係 に運 賃 改 定 が最 後 に行 な われ た の は,JR西 日本(当 時 は 国鉄)が1986年4月,関 西 大 手 私 鉄 が1995年9月 で あ る(く ら しの リサ ー チ セ ン ター[2004]pp.180-181)。 -477(477)一

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表4近 畿 圏 に お け るJR・ 私 鉄 運 賃 の比 較 都市 間 大 阪 一 神 戸 大 阪 一 京 都 大 阪 一 奈 良 大 阪 一 和 歌 山 大 阪 一 宝 塚 京 都 一 神 戸 京 都 一 奈 良 事業者 JR 阪急 阪神 JR 阪急 京 阪 JR 近鉄 JR 南海 JR 阪急 JR 阪急 JR 近鉄 区 間 大 阪一 三 ノ宮 梅 田 三宮 梅 田一 三 宮 大 阪 一 京 都 梅 田一 河 原 町 淀 屋 橋 一 三 条 JR難 波 一 奈 良 大 阪難波一奈良 天 王 寺 一 和 歌 山 難 波 一 和 歌 山市 大 阪 一 宝 塚 梅 田一 宝 塚 京 都 一 三 ノ宮 河 原 町一 三 宮 京 都 一 奈 良 京都 奈良 キ ロ 程 (km) 30.6 32.3 31.2 42.8 47.7 49.3 41.0 32.8 61.3 64.2 25.5 24.5 73.4 75.2 41.7 39.0 普 通 運 賃 (円) 390 310 310 540 390 400 540 540 830 890 320 270 1,050 600 690 610 通 勤 定 期 運 賃 (1ケ 月,円) 11,960 12,480 12,480 16,070 15,070 14,990 16,070 19,060 24,750 25,050 9,760 11,010 30,150 18,620 19,650 20,030 ※ 高 橋[1998b]p.223,高 橋[1999]p.65,く ら し の リ サ ー チ セ ン タ ー[2004]p.169,運 輸 政 策 研 究 機 構[2008]p。119お よ び 各 社 時 刻 表 ・ハ ン ド ブ ッ ク 等 よ り 作 成 。 ※JRは 全 て,大 都 市 特 定 運 賃 で あ る 。 3.1運 賃 制 度 の 現 状:総 括 原 価 主 義 の 下 で の 上 限 認 可 制 近 畿 圏 の 鉄 道 で は,競 争 的 な 要 素 が 多 く見 られ る と は い え,わ が 国 の 鉄 道 一 般 と 同 様, 独 占 を 前 提 と した 総 括 原 価 主 義 に 基 づ い た 運 賃 規 制 が 行 な わ れ て い る 。 運 賃 水 準 に つ い て は,地 域 独 占 の 事 業 者 が 複 数 存 在 す る こ と を 前 提 と して,規 制 当 局 が 各 事 業 者 の 費 用 水 準 を 査 定 して 運 賃 水 準 の 規 制 に 活 用 す る と い う,法 制 度 上 の ヤ ー ドス テ ィ ッ ク 競 争(4幻 膨 yardstickcompetition)が 行 な わ れ て い る こ と が 特 徴 で あ る⑲。 総 括 原 価 主 義 で 決 定 さ れ た 運 賃 水 準 を 前 提 と して,運 賃 体 系 に つ い て は,1997年 か ら上 限 認 可 制(price-ceilingregulation)が 導 入 さ れ て い る 。 こ れ は,個 別 の 運 賃 に つ い て 総 括 原 価 を 下 回 る 運 賃 の 設 定 を 認 め,「 上 限 運 賃 に よ る 総 収 入 ≦ 総 括 原 価 」を 認 可 の 条 件 と す る もの で あ る ⑫①。 こ こ で は,事 業 者 が 需 要 の 価 格 弾 力 性(priceelasticityofdemand)に ⑲ 現 行 の 鉄 道 運 賃 規 制 に お け る 法 制 度 上 の ヤ ー ド ス テ ィ ッ ク 競 争(ヤ ー ド ス テ ィ ッ ク 方 式)に つ い て は,岡 部[1997]pp.15-19お よ び,く ら し の リサ ー チ セ ン タ ー[2004]pp.146-151を 参 照 さ れ た い 。 ⑳ 鉄 道 運 賃 の 上 限 認 可 制 の 制 度 設 計 に つ い て は,藤 井[1996,2005],高 橋[1998b,1999]を,導 入 直 後 の 事 業 者 に よ る 活 用 状 況 に つ い て は 運 輸 省[1998]p.233を 参 照 さ れ た い 。 ま た,上 限 認 可 制 は,2002年 に 乗 合 バ ス の 運 賃 規 制 に も 導 入 さ れ て い る(高 橋[2006]pp.114-122)。 -478(478)一

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対 応 して,路 線 ・区 間,季 節,曜 日,時 間 帯 な ど に よ っ て 区 分 さ れ る 個 別 サ ー ビ ス ご と の 運 賃 を 値 下 げ し,増 収 に 向 け た 試 行 錯 誤 を 行 な う 余 地 を 事 業 者 に 対 して 保 証 して い る 。 理 論 的 に は,ラ ム ゼ イ 価 格 設 定(Ramseypricing)に 似 た 価 格 差 別(pricediscrimination) が 実 行 で き る と い え る ⑫1)。 も っ と も,上 限 認 可 制 に は い くつ か の 制 限 が 設 け ら れ て お り,「 相 互 格 差 制 限 」 は そ の 一 つ で あ る。 こ れ は,路 線 ・区 間 ご と の 運 賃 の 相 互 格 差 を2割 以 内 に 制 限 す る も の で あ り, 競 争 の 激 し い 路 線 で 略 奪 的 価 格 設 定(predatorypricing)が 行 な わ れ た り,そ の た め に 過 度 の 内 部 補 助 が 行 な わ れ た り して 利 用 者 間 に 不 公 平 が 生 じ る こ と を 防 ぐ こ と が 目 的 で あ る 。 3.2私 鉄 の運 賃 戦 略:遠 距 離 逓 減 の活 用 総 括 原 価 主 義 に よ る伝 統 的 な 運 賃 規 制 の 下 で も,関 西 私 鉄 は競 争 に対 応 した 運 賃 を 設 定 して きた と考 え られ る。 そ の 一 つ が,遠 距 離 逓 減 の 活 用 で あ る。 遠 距 離 逓 減 と は,乗 車 距 離 が 長 くな る に した が って キ ロ あた り運 賃 が 低 下 して い く運 賃 体 系 で あ る。 関 西 私 鉄 の う ち数 社 で は,他 の 事 業 者 との 競 合 区 間 が 比 較 的 遠 距 離 で あ る こ とを 利 用 し て,遠 距 離 逓 減 の 度 合 いを 強 あ,遠 距 離 の 競 合 区 間 にお いて 低 廉 な 運 賃 を 設 定 して い る。 例 え ば,京 阪 の キ ロあ た り運 賃 は,JRや 阪急 と競 合 す る京 阪 間(淀 屋 橋 一 三 条)で は8.1 円,競 合 が な い 淀 屋 橋 枚 方 市 で は20.1円 で あ る(斎 藤[1998]p.12)。 も う一 つ例 を 挙 げ る と,阪 急 は1965年 頃,初 乗 り運 賃20円,阪 神 間(梅 田一 三 宮)の 運 賃 は140円 で あ っ た が,現 在 は 初 乗 り140円,阪 神 間310円 で あ り,そ の差 は7倍 か ら2.5倍 に縮 ま っ て い る (正 司[2001]p.78)。 こ う した運 賃 設 定 は,区 間 ご との 需 要 の 価 格 弾 力 性 に応 じた ラ ムゼ イ 的 な 運 賃 体 系 と解 釈 す る こ とが で き る(斎 藤[1998]pp.12-14)。 これ ら運 賃 額 は,上 限 認 可 制 が 導 入 され る前 に,厳 格 な 総 括 原 価 主 義 の 下 で 「確 定 運 賃 」 と して 認 可 され た も の で あ り,上 限 認 可 制 に移 行 して も 「上 限 運 賃 」 に相 当 す る。 そ の た め,前 述 の 相 互 格 差 制 限 に は抵 触 しな い。 今 後 の 運 賃 改 定 にお いて も,従 来 どお り上 限 運 賃 と して 存 続 す る可 能 性 が 高 い。 ⑳ ラ ム ゼ イ 価 格 設 定 と は,収 支 均 衡 を 前 提 と し て 消 費 者 余 剰 の 最 大 化 を 図 る も の で あ り,そ の 結 果,そ れ ぞ れ の 財 ・サ ー ビ ス に つ い て 価 格 が 限 界 費 用 か ら 乖 離 す る 割 合 が,需 要 の 価 格 弾 力 性 と 反 比 例 す る 。 ラ ム ゼ イ 価 格 設 定 の 詳 細 に つ い て はZajac[1978]Ch。3,前 田[1988]pp.155-161, Train[1991]Ch.4を,上 限 認 可 制 と ラ ム ゼ イ 価 格 設 定 の 理 論 的 な 異 同 に つ い て は 高 橋[1998b] pp.220-222,高 橋[1999]pp.64-65,高 橋[2006]pp.115-117を 参 照 さ れ た い 。 -479(479)一

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3.3JRの 運 賃 戦 略:大 都 市 特 定 運 賃 これ に対 してJRも,私 鉄 との 競 争 が あ る区 間 につ い て,「 大 都 市 特 定 運 賃 」 とい う競 争 に対 応 した運 賃 を設 定 して い る。 も っ と もこ れ は,JRの 意 思 とい うよ り も,国 鉄 末 期 の 運 賃 政 策 が,分 割 ・民 営 化 後 の 運 賃 改 定 時 期 を な る べ く遅 らせ よ う とす る 目的(斎 藤 [2000]p.60)と 合 わ せ て 引 き継 が れ て い る もの と評 価 で き る。 国 鉄 で は,運 賃 法 定 主 義 の た め に値 上 げが 困 難 で あ り,そ れ が 多 額 の 債 務 を 抱 え る一 因 とな った 。 国 鉄 末 期 にお いて は この こ とが 認 識 され,1977年 に は,国 鉄 運 賃 は一 定 範 囲 内 の 条 件 つ きで 運 輸 大 臣 の 認 可 制 に置 か れ た 。 そ の 直 後,1978年7月 に行 な わ れ た 運 賃 改 定 で,近 畿 圏 の 私 鉄 並 行 区 間 に お いて 大 都 市 特 定 運 賃 制 度 が 導 入 され た⑳。 現 在 で は,JR東 日本 が 首 都 圏 の110区 間,JR東 海 が 名 古 屋 とそ の 周 辺 の31区 間,JR西 日本 が近 畿 圏 の114 区 間 にお いて 特 定 運 賃 を 設 定 して い る(く ら しの リサ ー チ セ ンタ ー[2004]p.169)。 表4 で 見 たJRの 運 賃 は,全 て この特 定 運 賃 で あ る。 特 定 運 賃 が近 畿 圏 で最 初 に導 入 さ れ,現 在 で も首 都 圏 よ り多 くの 区 間 で 適 用 され て い る こ と は,近 畿 圏 の 鉄 道 市 場 にお け る競 争 の 激 しさを 端 的 に物 語 って い る。 特 定 運 賃 が 導 入 さ れ た理 由 と して,く ら しの リサ ー チ セ ン ター[2004]は,「 運 賃 の 格 差 が あ るた あ 競 争 力 を 失 く して いた 大 都 市 圏 の 民 鉄 との 並 行 区 間 で,輸 送 力 の 有 効 活 用 を 図 り,利 用 者 に と って は利 便 の 向上 が 図 られ,増 収 が 期 待 され る」(p.169)と 説 明 して い る。 確 か に,毎 年 の よ う に運 賃 が 値 上 げ され て いた 国 鉄 末 期 に は,私 鉄 との 運 賃 の 格 差 は 拡 大 傾 向 に あ った 。 中で も,「輸 送 力 の有 効 活 用 」が 重 要 な キ ー ワー ドで あ った と考 え られ る。 当 時 の 近 畿 圏 鉄 道 市 場 は 「私 鉄 王 国 」 の 呼 び声 が 高 く,国 鉄 の 電 化 ・複 線 化 等 が 非 常 に遅 れ て い た こ とは,既 に指 摘 した とお りで あ る。 この状 況 下 で運 賃 格 差 が 拡大 す る と,利 用 者 が私 鉄 に流 れ 過 ぎ,混 雑 を 激 化 させ る恐 れ さえ あ った と考 え られ る㈱。 イ ン フラ投 資 の 飛 躍 的 な拡 大(例 え ば複 々線 化)が 望 め な い 中で,輸 送 力 に関す る国 鉄 ・私 鉄 間 の相 互 依 存 を 踏 ま え,運 賃設 定 を通 じて双 方 が輸 送 力 の 有 効 活用 を 目指 す べ き と され た といえ よ う。 もっ と も,JRの 大 都 市 特 定 運 賃 は,こ の よ うに30年 もの歴 史 を持 って い る とは い え,上 限 認 可 制 の 制 度 設 計 か らす れ ば,「 既 存 不 適 格 」 な もの と見 な され うる。 表5は,特 定 運 ⑳ 斎 藤[2000]p.53を 参 照 され た い 。 な お,国 鉄 の 全 国 一 律 運 賃 制 度 は1984年 に 廃 止 され,こ れ がJR各 社 に 引 き継 が れ て 現 在 に 至 るが,そ の き っか けは この 大 都 市 特 定 運 賃 で あ った と考 え ら れ る(斎 藤[2000]p.37)。 ㈱ 極 端 な 例 で あ るが,福 知 山 線 事 故 の 後2ケ 月 近 くにわ た り,阪 急 へ の 振 替 輸 送 が 実 施 され た 際 阪 急 各 線 の混 雑 は非 常 に激 しか った 。JRの 安 全 性 と企 業 体 質 は極 め て 問題 視 さ れ た が,実 際 の 沿 線 で は,福 知 山 線 の 迅 速 な 運 転 再 開 を 求 あ る声 もあ った と見 られ る。 この こ とは,競 合 路 線 間 にお け る輸 送 力 の 相 互 依 存 関 係 を 浮 き彫 り に した の で あ る。 -480(480)一

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賃 の 例 を 前 掲 の 表4よ り詳 細 に掲 げ る と と もに,各 区 間 の 所 定 額(同 じ距 離 を 利 用 した 場 合 の,電 車 特 定 区 間 あ る い は幹 線 で 計 算 した 運 賃 額)を 示 し,所 定 額 か らみ た 特 定 運 賃 の 割 引 率 を 示 した もの で あ る。 こ こで,割 引 率 が2割 を 超 え,前 述 の 相 互 格 差 制 限 に抵 触 す る区 間 が 多 い こ とが わ か る。 表5近 畿 圏におけるJR大 都市特定運賃 の割引率 区 間 大 阪 一 三 ノ宮 大 阪 一 元 町 大 阪 一 神 戸 大 阪 一 京 都 大 阪 一 高 槻 JR難 波 一 奈 良 天 王 寺 一 奈 良 天 王 寺 一 和 歌 山 大 阪 一 宝 塚 京 都 一 三 ノ宮 京 都 一 奈 良 京 都 一 城 陽 京 都 一 新 田 キ ロ 程 (km) 30.6 31.4 33.1 42.8 21.2 41.0 37.5 61.3 25.5 73.4 41.7 20.2 18.1 特 定 運 賃 (円) 390 390 390 540 250 540 450 830 320 1,050 690 350 280 所 定 額 (円) 540 540 540 690 380 690 620 1,050 480 1,210 740 400 320 割 引 率 (%) 27.8 27.8 27.8 21.7 34.2 21.7 27.4 21.0 33.3 13.3 6.8 12.5 12.5 並行私鉄 運賃(円) 310 430 430 390 270 540 480 890 270 600 610 340 290 ※ 高 橋[1998b]p.223,高 橋[1999]p.65,く ら し の リ サ ー チ セ ン タ ー[2004]p.169,運 輸 政 策 研 究 機 構[2008]p.119お よ び 各 社 時 刻 表 ・ハ ン ドブ ッ ク 等 よ り作 成 。 ※ 所 定 額 と は,そ れ ぞ れ の 大 都 市 特 定 運 賃 区 間 と 同 距 離 のJR電 車 特 定 区 間 を 利 用 し た 場 合 の 運 賃(た だ し,京 都 奈 良 間 は 電 車 特 定 区 間 で な い た め,同 距 離 の 幹 線 運 賃)。 だ が,こ れ も前 述 の よ う に,相 互 格 差 制 限 の 主 な 目的 が 略 奪 的 価 格 設 定 の 防 止 で あ るの に対 し,競 合 路 線 間 の 輸 送 力 の 相 互 依 存 は明 白で あ り,略 奪 的 価 格 が 設 定 され る可 能 性 は 低 い。 こ う した 点 か ら,大 都 市 特 定 運 賃 の 正 当 性 が 評 価 され るの で あれ ば,今 後 の 運 賃 改 定 の 可 能 性 を 考 慮 に入 れ た と き,上 限 認 可 制 との 整 合 性 を 高 め る こ とが 必 要 で あ る。 上 限 認 可 制 に大 都 市 特 定 運 賃 を 組 み 込 む 場 合,そ の 最 も単 純 で 規 制 コ ス トが か か らな い 方 法 は,相 互 格 差 制 限 を 緩 和 す る こ とで あ ろ う。 具 体 的 な 数 値 を 定 め る こ と は非 常 に難 し いが ⑳,表5の 割 引率 を 追 認 す る こ とが望 ま しい。 ま た,略 奪 的 価 格 が設 定 さ れ る可 能 性 が 今 後 も低 い とす れ ば,相 互 格 差 制 限 そ の もの を 撤 廃 して も支 障 はな い,と い う考 え 方 も 成 り立 つ 。 最 終 的 に は,輸 送 力 の 制 約 の もとで,そ の 有 効 活 用 を 追 求 す る こ と は,事 業 者 の 経 営 戦 略 の み な らず,交 通 政 策 と して も引 き続 き大 きな 課 題 とな ろ う。 例 え ば,近 畿 圏 にお け る人 口お よ び鉄 道 利 用 者 数 の 減 少 傾 向 は,全 国 的 な 少 子 ・高 齢 化 と相 ま って 加 速 す る と考 え られ る。 通 勤 輸 送 が 減 少 した 分,オ フ ピー クの 時 間 帯 にお け る高 齢 者(特 に ア ク ⑳ そ もそ も,相 互 格 差 制 限 の 「2割 」 とい う数 字 の 根 拠 も,明 確 に示 され て は い な い 。 -481(481)一

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テ ィ ブ ・シニ ア)の 鉄 道 利 用 が 促 進 で きれ ば,ピ ー クの 平 準 化 を 通 じた 輸 送 力 の 有 効 活 用 につ な が る と見 込 まれ る。 4.競 争 と 協 調 の 展 望 本 節 で は,近 畿 圏 鉄 道 市 場 に お け る 最 近 の 動 向 を 取 り上 げ,今 後 の 展 望 を 示 す こ と と し た い 。 こ こ で と りわ け 注 目 さ れ る の は,一 つ は 阪 急 と 阪 神 の 経 営 統 合(2006年10月),も う 一 つ は 共 通 乗 車 カ ー ド(特 にICカ ー ド)の 普 及 と 活 用 で あ る 。 以 下 で は,こ う した 事 象 を 概 観 す る の み な らず,前 節 に 引 き 続 き 運 賃 設 定 へ の イ ンパ ク トを 検 討 す る こ と と した い 。 4.1阪 急 ・阪 神 の 経 営 統 合 阪 急 と 阪 神 の 経 営 統 合 の き っ か け は,元 通 商 産 業 省 の 村 上 世 彰 氏 が 中 心 と な っ た 投 資 フ ァ ン ド(通 称 「村 上 フ ァ ン ド」)が,阪 神 の 株 を 買 い 占 め た こ と で あ っ た ㈱。 村 上 フ ァ ン ドは,そ れ ま で も多 くの 企 業 に 対 し敵 対 的 買 収 を 仕 掛 け,購 入 した 株 を そ の 企 業 や 関 係 者 に 高 値 で 買 い 戻 さ せ る グ リー ン メ イ ラ ー(greenmailer)と して 行 動 して い た 。 村 上 フ ァ ン ドに 経 営 を 掌 握 さ れ る こ と を 恐 れ た 阪 神 は,村 上 フ ァ ン ドが 保 有 す る 株 を 買 い 取 っ て く れ る ホ ワ イ トナ イ ト(whiteknight)を 探 し,そ れ が 阪 急(当 時 の 阪 急 ホ ー ル デ ィ ン グ ス)で あ っ た 。 阪 神 と 村 上 フ ァ ン ドの 交 渉 の 途 上 で,2006年6月 に 村 上 氏 が 証 券 取 引 法 違 反 の 容 疑 で 逮 捕 さ れ た こ と が,経 営 統 合 の 決 定 打 と な っ た と 考 え られ る 。 阪 神 株 を 阪 急 が 買 い 戻 して くれ た と い う 意 味 で は,グ リー ン メ イ ラ ー と して の 村 上 フ ァ ン ドの 意 図 は 達 成 さ れ た と い え る 。 以 下 で は 特 に,阪 神 間 の 鉄 道 市 場 に お け る 競 争 と い う 観 点 か ら,今 回 の 経 営 統 合 の イ ン パ ク トを 整 理 す る こ と と し た い ⑳。 こ こ で 注 意 す べ き は,阪 神 と 阪 急 は1920年 代 以 来 の ラ イ バ ル で あ っ た が 伽,阪 神 ・淡 路 大 震 災 か ら の 復 旧 後,JRに 対 抗 す べ く協 調 行 動 を 取 る よ ㈲ 経 営 統 合 の 経 緯 につ い て は,佐 藤[2006]pp。51-53,宮 本[2006]pp.32-36を 参 照 され た い 。 ⑳ い う まで もな く,今 回 の 経 営 統 合 は,従 来 の 阪 急 東 宝 グル ー プ ・阪 神 グル ー プの 各 社 に も及 ん で い る。 交 通 で い え ば,西 宮 市 ・芦 屋 市 にお け るバ ス 事 業 や タ ク シー 事 業 で 連 携 が 進 ん で い る。 流 通 で は,阪 急百 貨 店 と 阪神 百 貨 店 が2007年10月 に経 営統 合 し,「 エ イ チ ・ツ ー ・オ ー ・リテ イ リン グ」 が発 足 して い る(田 中[2007]第3章)。 今 回 の 経 営 統 合 は,グ ル ー プ経 営 全 体 の 観 点 か らの 評 価 が 不 可 欠 で あ り,今 後 の 課 題 と した い 。 ⑳ 鉄 道 事 業 は,長 い 間 独 占禁 止 法 の 適 用 除 外 で あ った が,今 回 の 経 営 統 合 にあ た って は,公 正 取 引 委 員 会 が企 業 結 合 審 査 を 行 な った 。 そ の結 果,他 に競 争 す る事 業 者(JRを 指 す と見 られ る) が あ る こ とか ら,「一 定 の 取 引 分 野 にお け る競 争 を 実 質 的 に制 限 す る こ と と はな らな い 」と い う判/ 一482(482)一

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う にな って いた こ とで あ る。 今 回 の 経 営 統 合 は,こ う した 協 調 行 動 を 進 展 させ るた め の 呼 び水 にな る と考 え られ る。 こ こで は協 調 行 動 の 例 と して,通 勤 定 期 券 の 相 互 利 用 お よ び, 神 戸 高 速 鉄 道 へ の 相 互 乗 り入 れ の 見 直 しにつ いて 検 討 す る。 通 勤 定 期 券 の 相 互 利 用 は,1997年10月 か ら実 施 され て い る。 これ は,梅 田一 三 宮 間 を 含 む 通 勤 定 期 券 を 持 って いれ ば,そ の 定 期 券 で 阪 急 ・阪 神 ど ち らの 梅 田駅 ・三 宮 駅 で も乗 降 可 能 と い う もの で あ る。 阪 神 で は,2009年3月 に な ん ば線 が 開 業 した と き に 同 様 の 制 度 (愛称 「OSAKAど っ ち も定 期 」)を導 入 し,阪 神 本 線 か ら開 通 区 間(西 九 条 大 阪難 波 間) の 間 の 通 勤 定 期 券 を持 って い れ ば,阪 神 梅 田駅 で も乗 降 が 可 能 とな って い る。 こ の 制 度 は,阪 急 神 戸 線 に は 適 用 され て い な い が,将 来 的 に は2つ の制 度 を組 み合 わ せ,例 え ば 「阪 神 三 宮 一 阪 神 梅 田の 定 期 券 を 持 って いれ ば,阪 神 三 宮 一 大 阪 難 波 に も阪 急 三 宮 一 阪 急 梅 田 に も乗 車 で き る」 と い った 仕 組 み を 作 る こ と は,技 術 的 に は可 能 と推 測 され る。 神 戸 高 速 と の相 互 乗 り入 れ の見 直 し も,経 営 統 合 以 前 か ら実 施 さ れ て い る。 神 戸 高 速 は,神 戸 市 な らび に私 鉄 各 社(阪 急 ・阪 神 ・山 陽 電 鉄 ・神 戸 電 鉄)が 出 資 す る第 三 セ ク タ ーで あ る㈱。 そ の 路 線 は図4の とお りで あ り,軌 間 が 同 じ阪 急 ・阪 神 ・山 陽 は,1968年 に神 戸 高 速 東 西 線 が 開 通 した 際 に レー ル が 繋 が り,神 戸 高 速 を 介 した 相 互 乗 り入 れ を 開 始 した 。 また,前 述 の 通 勤 定 期 券 の 相 互 利 用 は,神 戸 高 速 線 内 の 高 速 神 戸 阪 急 三 宮 ・阪 神 三 宮 間 の 各 駅(図4の ◎ で 示 した 駅)に も適 用 され て い る。 例 え ば,高 速 神 戸 か ら梅 田 に 神 戸電鉄 阪急三宮 阪急梅 田 山陽電鉄 山陽姫路 西代 湊川 新開地 高速 神戸

花隈

β

阪 急 神 戸 線 区厄袖 太 綿   西元 町 元 町 阪神三宮 阪神梅 田 ※ ◎ の 駅 は通 勤 定 期 券 相 互 利 用 の 対 象 。 図4神 戸高速鉄道路線図 \ 断 が 下 さ れ た(公 正 取 引 委 員 会[2007]pp.67-72)。 な お,阪 急 と 阪 神 の 経 営 統 合 は,も と も と 村 上 フ ァ ン ド側 が 提 案 し た も の で あ り(佐 藤[2006]p.52),阪 神 は 京 阪 と の 経 営 統 合 を 模 索 し て い た と い う(宮 本[2006]p.35)。 ⑳ 神 戸 高 速 は,上 下 分 離(列 車 の 運 行 と 鉄 道 イ ン フ ラ の 建 設 ・運 営 の 分 離)の 概 念 が 明 確 に な る 前 か ら こ れ を 実 現 し て い た と い え,近 年 い わ れ る 公 民 連 携(Public-PrivatePartnerships)の 先 駆 と も 評 価 さ れ て い る 。 詳 細 は 正 司[2005]を 参 照 さ れ た い 。 一483(483)一

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向 か う場 合,阪 急 ・阪 神 の いず れ か の 定 期 券 を 持 って いれ ば,ど ち ら も利 用 で き る と い う 仕 組 み で あ る。 1998年2月 の ダイ ヤ改 正 で は,阪 急 と阪 神 の 両 社 が 神 戸 高 速 ・山陽 へ の 乗 り入 れ に関 し て 調 整 を 行 な い,役 割 分 担 を 明 確 に した 。 つ ま り,阪 急 が 神 戸 線 を8両 編 成 に,運 転 区 間 を 阪 急 梅 田 新 開 地 間 に統 一 して 山陽 へ の 乗 り入 れ を 中止 し,新 開 地 で の 神 戸 電 鉄(阪 急 グル ー プ)と の 乗 換 え を 強 化 した 。 一 方 で,阪 神 と 山陽 が 神 戸 高 速 を 介 して 行 な う相 互 乗 り入 れ は強 化 され,阪 神 梅 田 山陽 姫 路 間 で 「直 通 特 急 」 の 運 転 を 開 始 した 。 さ らに,今 回 の 経 営 統 合 を き っか け と して,阪 急 阪 神 グル ー プ にお け る神 戸 高 速 の 位 置 づ け に も変 化 が あ った 。 前 述 の よ う に神 戸 高 速 は第 三 セ ク ター で あ り,神 戸 市 が40%の 株 式 を 保 有 して いた が,2009年4月 にそ の 一 部 を 阪 急 阪 神 ホー ル デ ィ ング ス に売 却 した 。 こ れ に よ り,表6に 示 す よ う に,神 戸 高 速 の 株 式 の75%を 阪 急 阪 神 ホー ル デ ィ ング ス あ る い はそ の 傘 下 の 事 業 者 が 保 有 す る こ と とな った 。 これ に伴 い,阪 急 阪 神 グル ー プ と して,企 業 経 営 の み な らず 運 賃 制 度 の 一 体 化(具 体 的 に は,乗 継 運 賃 引 き下 げ に よ る 割高 感 の緩 和) が 進 む 可 能 性 が 出て きた と いえ る。 表6神 戸高速鉄道の持株比率 阪 急 ・阪 神 経 営 統 合 前 神 戸 市40% 阪 急 電 鉄10.7% 阪 神 電 鉄10.7% 山 陽 電 鉄10.7% 神 戸 電 鉄(阪 急 グル ー プ)7.9% 経営統合後 神戸市40% 阪 急 電 鉄9.95% 阪 神 電 鉄9.95% 神 戸 電 鉄7.9% 山陽 電 鉄12.2% 2009年4月 以 降 神 戸 市25% 阪 急 阪 神 ホ ー ル デ ィ ン グス15% 阪 急 電 鉄9。95% 阪 神 電 鉄9.95% 神 戸 電 鉄7.9% 山陽 電 鉄(阪 急 阪 神 が 筆 頭 株 主)12.2% 今 回 の 経 営 統 合 は,あ くまで も村 上 フ ァ ン ドの 出現 が き っか けで あ り,近 畿 圏 鉄 道 市 場 全 体 の 再 編 に繋 が る可 能 性 は低 い と考 え られ る。 と は いえ,阪 急 と阪 神 の 協 調 行 動 の 基 盤 が 作 られ た こ と も確 か で あ る。 「JR対 私 鉄 」 とい う競 争 の構 図 に お い て,今 後JRに 対 し 両 社 が 「包 囲 網 」 の 構 築 を 試 み る可 能 性 もあ る。 この よ うな 形 で 近 畿 圏 鉄 道 市 場 の 活 性 化 が 進 む こ とを 期 待 した い。 4.2協 調 の プ ラ ッ トフ ォー ム と して の共 通 乗 車 カ ー ド 私 鉄 が 連 携 してJRに 対 抗 す る可 能 性 と合 わ せ て,JRを 含 め た全 て の鉄 道 事 業 者 が 連 携 す る可 能 性 も指 摘 して お きた い。 そ れ は,本 稿 冒頭 で 触 れ た,自 家 用 自動 車 との 交 通 機 関 間 競 争 に対 応 した もの で あ る。 周 知 の とお り,自 家 用 車 に よ るモ ー タ リゼ ー シ ョ ンは, -484(484)一

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鉄 道 や バ ス と い った 公 共 交 通 の 経 営 に大 きな 影 響 を 与 え て い るが,そ れ は鉄 道 が 高 度 に発 達 した 近 畿 圏 で も例 外 で はな い。 そ の 中で,複 数 の 鉄 道 事 業 者(さ らに いえ ば,バ ス等 を 含 め た 全 て の 公 共 交 通 事 業 者)が 連 携 し,自 家 用 自動 車 との 交 通 機 関 間 競 争 に対 応 す る必 要 性 が,日 増 しに高 ま って い るの で あ る。 つ ま り,近 畿 圏 鉄 道 市 場 にお け る事 業 者 間 ・路 線 間 の 競 争 は,自 家 用 自動 車 を も含 あ た 「合 従 連 衡 」 の 段 階 に突 入 して い る と いえ る。 そ の 中で 大 きな 役 割 を 果 た しつ つ あ るの が 共 通 乗 車 カー ドで あ る。 これ は もと もと は, 自動 改 札 機 の 導 入 ・更 新 に合 わ せ て 導 入 され た 磁 気 式 の プ リペ イ ドカー ドを,複 数 の 事 業 者 間 で 共 通 運 用 す る もの で あ る。 近 畿 圏 で は,阪 急 が1992年 に導 入 した シ ステ ムを 拡 大 す る こ とで,1996年 に は 「ス ル ッ とKANSAI」 が 阪急 ・阪 神 ・北大 阪 急 行 ・能 勢 電 鉄 ・大 阪 市 交 通 局 の5事 業者 に導 入 さ れ た⑳。 そ の後,ス ル ッとKANSAIは 近 畿 圏 の私 鉄 お よ び バ ス事 業 者 の 間 で 急 速 に普 及 し,私 鉄(パ スネ ッ ト)と バ ス(共 通 バ ス カー ド)で 別 々 に 標 準 化 が進 ん だ首 都 圏 と比 べ て も,利 便 性 は 高 か った と い え る(高 橋[2006]p.29)。 な お,JR西 日本 は 別途,プ リペ イ ド方 式 のICカ ー ド(ICOCA)を2003年 に導 入 した。 そ の 後,ス ル ッとKANSAIの 普 及 が 一一巡 し,初 期 に導 入 した 事 業 者 にお いて 自動 改 札 機 等 の 更 新 の 時 期 が 到 来 す るの に合 わ せ て,ICカ ー ドに よ る共 通 乗 車 シス テ ム 「PiTaPa」 が,2004年 か ら導 入 され た。PiTaPaは,プ リペ イ ド方 式 で な く後 払 い(ポ ス トペ イ)方 式 を 採 用 して い るの が 特 徴 で あ る。 そ の た め,チ ャー ジ機 や 精 算 機 が 不 要 で あ り,費 用 の 節 減 を 図 る こ とが で き る⑳。 また,定 期 券 を 設 定 せ ず,利 用 者 が 指 定 した 区 間 に対 し,一 定 期 間 内 に あ る程 度 以 上 の 回 数 を 利 用 した 場 合 に,請 求 額 を 定 期 運 賃 と同 額 と して 精 算 す る こ と も可 能 とな って い る。 さ らに,先 に見 た 上 限 認 可 制 の 制 約 の 下 で は あ るが,様 々な 割 引 を 実 施 し,他 の 事 業 者 あ る い は 自家 用 自動 車 との 競 争 に 対 応 す る こ と も可 能 で あ ろ う。 例 え ば,買 い物 客 に 対 し,購 入 金 額 に応 じて 駐 車 料 金 を 割 引 す る商 業 施 設 は当 た り前 に見 られ るが,同 様 に して 鉄 道 や バ スの 運 賃 を割 引す る事 例 は い ま だ少 な い。PiTaPaは,こ う した 事 例 の 出 現 を 妨 げて い た技 術 的 な 問 題 を 解 決 す る もの で あ り,運 賃 規 制 の 緩 和 が さ らに進 め ば㊨1),ポス ト ㈲ スル ッ とKANSAIの 導 入 過 程 と意 義 に つ い て は,正 司[2001]pp。66-68を 参 照 され た い。 e① 椎 橋[2008]p.178の 指 摘 に よ る。 な お,ス ル ッ とKANSAIの 導 入 後,利 用 者 は駅 で 切 符 を 購 入 す る手 間 が 省 け る と同 時 に,事 業 者 は 券 売 機 の 設 置 台 数 を 減 ら し,そ の 空 間 を 商 業 施 設(い わ ゆ る 「駅 ナ カ」)に 転 用 す る こ とが 可 能 にな った 。PiTaPaの 普 及 が 進 ん で チ ャー ジ機 や 精 算 機 の 設 置 台 数 が 減 れ ば,同 様 の 効 果 も期 待 で き る。 el)こ う した 割 引 措 置 が 今 まで 出現 しな か った の は,技 術 的 問 題 も さ る こ とな が ら,「特 定 の 旅 客 に 対 し不 当 な差 別 的 取 扱 い をす る もの」(鉄 道 事 業 法 第16条)に 当 た る と され て き た た め と考 え ら れ る。 言 い換 え れ ば,前 節 で 見 た 「利 用 者 間 の 不 公 平 」 を 防 ぐた め の 規 制 の 一 環 で あ る。 も っ と も,何 を も って 「不 当 な 差 別 的 取 扱 い」 「不 公 平」 と見 な され る か は,判 例 が 積 み 重 ね られ て い/ -485(485)一

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ペ イ 方 式 を 活 用 した 様 々 な 割 引 や 創 意 工 夫 が 出 現 す る と 期 待 さ れ る(土 井[2008]p.96, 高 橋[2009]p.53)。 も っ と も,PiTaPaと そ の ポ ス トペ イ 方 式 は,専 門 家 か ら も,「 た しか に 画 期 的 な カ ー ド だ が,少 し進 み す ぎ て い る」「ポ ピ ュ ラ ー に な る に は,ま だ 少 し時 間 が か か る 」(椎 橋[2008] p.180)と 判 断 さ れ て い る。 「進 み す ぎ て い る 」 ゆ え に,ポ ス トペ イ 方 式 な らで は の 利 点 そ の もの が 十 分 に 探 索 さ れ て お らず,そ の た め に 普 及 が 進 ん で い な い もの と 考 え られ る 。 5.お わ り に 5.1近 畿 圏鉄 道 市 場 に お け る競 争 の意 義 以 上 本 稿 で は,近 畿 圏 鉄 道 市 場 にお け る競 争 につ いて,1920年 代 以 来 の 歴 史,運 賃 競 争 を 中心 と した 現 状,協 調 行 動 を 中心 と した 展 望 を 整 理 した 。 一 般 に競 争 が 起 こ りえ な い と され る鉄 道 市 場 にお いて,競 争 が 行 な わ れ るた め に は,複 数 の事 業 者 が存 立 して い る こ と が 最 大 の条 件 で あ り,こ れ が 世 界 に 類 を見 な い特 徴 で あ る。 そ して そ の 背 景 に は,近 畿 圏 特 有 の 地 理 的 条 件 と,鉄 道 国 有 化 以 来 の 歴 史 的 な 要 因 が 作 用 して い る。 そ の 中で,近 畿 圏鉄 道 市 場 にお け る競 争 が,「JR対 私 鉄 」 「公 共 交 通 対 自家 用 自動 車 」 に局 面 を 変 化 させ つ つ も,長 年 存 続 して きた 理 由 と して,以 下 の 二 つ が 考 え られ る。 第 一 に,複 数 の 事 業 者 が,「 両 端(都 市 間)で は 切 磋 琢 磨 し,途 中(中 間駅)で は 沿 線 を 独 占 して い る(囲 い込 ん で い る)」 と い う状 態 で あ る。 これ は 先 に見 た,区 間別 の ラ ム ゼ イ 的 運 賃 体 系 に も象 徴 され よ う。 言 い換 え れ ば,独 占区 間 を 確 保(さ らに,沿 線 開 発 等 で そ れ を 拡 大)す る こ とで 経 営 基 盤 を 強 化 す る一 方 で,都 市 間 にお いて 競 争 を 展 開 す る こ とで,近 畿 圏 の 鉄 道 市 場 全 体 にお いて サ ー ビス水 準 の 全 般 的 な 向 上 が 達 成 され て い る と考 え られ る。 第 二 に,複 数 の 事 業 者 間 で 輸 送 力 の 相 互 依 存 が あ り,そ の 有 効 活 用 が 求 め られ て い る こ とで あ る。 今 後,人 口減 少 が 進 め ば,破 滅 的 競 争 や 事 業 者 の 撤 退 が 起 こ る可 能 性 は,皆 無 と は いえ な い もの の,10年 か ら20年 程 度 先 で は まだ 低 い と推 測 され る。 また,そ う した 状 況 に陥 る前 に,各 事 業 者 は,沿 線 の 再 開 発 を 進 め るな ど,人 口 と鉄 道 利 用 者 を 維 持 す べ く 努 力 す るで あ ろ う。 近 畿 圏 鉄 道 市 場 にお け る競 争 は,互 いの 存 在 を 認 あ 合 った 上 で の 競 争 で あ る と いえ,そ の 実 態 を 理 論 的 に も実 証 的 に も明 らか に して い く余 地 は,多 く残 され て \ な い こ と も あ り 不 明 で あ る 。 一486(486)一

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