前月のharatax通信では、老人ホームに入居していた場合の小規模宅地等の特例の改正についてご 紹介しました。 今月のharatax通信では、今年の 1 月 1 日から改正されている小規模宅地等の特例の改正のうち、も う一つの改正である二世帯住宅の取扱いについてご紹介いたします。 このテーマについては昨年の 7 月のharatax通信でも取り上げましたが、その間に通達が改正され、国 税庁から情報が公表されるなど、取扱いがだいぶ整理されてきました。 今月のharatax通信では、二世帯住宅に居住していた場合の小規模宅地等の特例の改正についてご 紹介いたします。 1. 特定居住用宅地等 お亡くなりになった方(被相続人)が住んでいた自宅の敷地を①配偶者、②被相続人の同居親族、 ③配偶者および同居親族がなく、自己所有の家屋に住んでいないなど一定の要件を満たす非同居親 族が相続した場合には、その土地(以下、「特定居住用宅地等」という。)の課税価格を一定の限度面 積まで80%減とする「小規模宅地等の特例」という規定があります。 お亡くなりになった方の配偶者が自宅敷地を相続すれば基本的に80%減となりますが、配偶者に 先立たれている場合、同居していた親族または③に該当する親族が相続しない限り、基本的に自宅敷 地の評価減はありません。 2. 改正前の取扱い (1) 基本的な考え方 措置法通達 69 の 4-21 で、同居親族とは相続開始の直前においてその家屋で被相続人と共に 起居していた者をいい、その建物が構造上数個の部分に区分される1棟の建物で、被相続人がその 独立部分の一に居住していた場合には、その独立部分において被相続人と共に起居していた者をい うと定めていました。 つまり、構造上区分された二世帯住宅で各独立部分に被相続人と相続人が別々に居住している 場合には、原則として、共に起居していたことにならず、同居親族には該当しませんでした。 (2) 同居として認められる場合 措置法通達 69 の 4-21 のなお書きにおいて、次の要件を満たし、被相続人の居住用家屋に居住 していた者に当たるとして申告があった場合には、同居していたものと認めるとの規定がありました。 川崎市中原区小杉御殿町1-868 電話 044-271-6690 Fax044-271-6686 E-mail:[email protected] URL:http://www.haratax.jp
haratax 通信
二世帯住宅と小規模宅地等の特例
2014 年 4 月 17 日 第 65 号(3) 同居として認められる場合の二世帯住宅のイメージ 2F 親族が居住 (長男夫婦) 1F 被相続人が居住 (母のみ) 敷地 240㎡ 上記の場合、措置法通達なお書きのすべての要件を満たすため、 2Fに居住している親族が敷地を相続した場合には、同居親族と認め、 敷地全体が80%減となりました。 玄 関 玄 関 要件1 建物全部を被相 続人またはその 親族が所有 要件2 親族は被相続人が居住してい た独立部分以外の独立部分に 居住している 要件3 被相続人が居住していた 独立部分に配偶者または一 緒に居住していた相続人が いないこと (4) 改正前の取扱い 構造上区分された二世帯住宅で各独立部分に被相続人と相続人が別々に居住している場合、基 本的に同居と認められませんが、(2)の要件を満たす場合のみ、同居しているものとして小規模宅地 等の特例を適用することができました。 逆にいうと、(2)の要件をすべて満たせない限りは、同居として認められませんでした。 配偶者がいる状況で二世帯住宅の敷地を子に相続させたいなど、(2)の要件を満たせなくなる可 能性があるときは、あらかじめ内階段を設け、内部で行き来できる体裁をとるなど、完全独立型の二 世帯住宅に該当しないように対策を講じていました。 1. その構造上区分された数個の部分の各部分(以下「独立部分」といいます)を独立 して居住その他の用途に供することのできる建物の全部を被相続人または被相続 人の親族が所有していること 2. 小規模宅地等の適用を受ける親族は、被相続人が相続開始の直前において居住 の用に供していた独立部分以外の独立部分に居住していること 3. 被相続人の配偶者または被相続人が居住の用に供していた独立部分にともに起 居していた被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかっ たものとした相続人)がいないこと。
3. 改正後の取扱い (1) 租税特別措置法施行令 (2) 建物の区分所有等に関する法律 (3) 法令解釈通達 (4) 改正後の取扱い 政令の規定によると、建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する区分所有建 物以外である場合には、被相続人およびその親族の居住の用に供されていた部分に対応する 土地が特定居住用宅地等の対象となりますが、区分所有建物である場合には、被相続人の居 住の用に供されていた部分に対応する土地のみが対象になるとされています。 69 の 4-7 の 3(建物の区分所有等に関する法律第 1 条の規定に該当する建 物) 措置法令第 40 条の 2 第 4 項及び第 10 項に規定する「建物の区分所有等に 関する法律第1条の規定に該当する建物」とは、区分所有建物である旨の登記 がされている建物ということに留意する。(注書き省略) 建物区分所有に関する法律第1条(建物の区分所有) 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又 は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各 部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることがで きる。 租税特別措置法施行令第 40 条の 2 第 4 項 その居住の用に供されていた部分が被相続人の居住の用に供されていた一棟 の建物(建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物を除く。) に係るものである場合には、その一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等 のうちその被相続人の親族の居住の用に供されていた部分を含む。 租税特別措置法施行令第 40 条の 2 第 10 項 特定居住用宅地等にかかる法第 69 条の 4 第 3 項第 2 号イに規定する政令で 定める部分は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める部分と する。 ①被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が建物の区分所有等に関 する法律第1条の規定に該当する建物である場合 当該被相続人の居住の用 に供されていた部分 ②前号に掲げる場合以外の場合 被相続人又は当該被相続人の親族の居住 の用に供されていた部分
そうすると、区分所有登記ができる建物であっても、あえて区分所有登記をしていない場合に どうなるかという点について、税理士の間でもいろいろな意見がありました。 その後、昨年 11 月に公表された法令解釈通達 69 の 4-7 の 3 において、「建物の区分所有 等に関する法律第1条の規定に該当する建物」とは、区分所有建物である旨の登記がされてい る建物をいうこととされました。 これにより、区分所有登記ができる建物であっても、区分所有登記をしていなければ、被相続 人およびその親族の居住の用に供されていた部分に対応する土地が特定居住用宅地等の対象 となることが明確になりました。 4. 平成 26 年 1 月 15 日付で国税庁から公表された情報の設例 事例 1 区分所有建物の登記がされていない 1 棟の建物の敷地の場合 問 被相続人甲は、自己の所有する宅地の上に一棟の建物を所有し、甲とその配偶者乙及び生計を 別にする子丙の居住の用に供していた(建物は、区分所建物である旨の登記がなく、甲単独の名義 である。) 配偶者乙、子丙は、当該当宅地の2分の1の持分を各々相続により取得し、申告期限まで引き続き 所有し、かつ居住の用に供している。 甲の所有していた宅地は、特定居住用宅地等に該当するか。 乙が引き続き居住 丙が引き続き居住 乙が居住の用に供している。 丙が居住の用に供している。 〔 乙と丙は2分の1共有持分を相続 〕 被相続人甲と配偶者乙が居住 生計を別にする子丙が居住 甲の居住の用に供されていた部分(A部分) 丙の居住の用に供されていた部分(B部分) 〔 土地(200㎡) 〕 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の判定 甲の居住の用に供されていた一棟の建物の敷地には、 被相続人甲の居住の用に供されてい た部分(以下「A部分」 という 。) と、生計を別にする親族丙の居住の用に供されていた部分(以下 「B部分」 という。) がある。 当該一棟の建物は、 区分所有建物である旨の登記がされていないことから、 生計を別にして いた親族丙の居住の用に供されていた部分についても、 被相続人等の居住の用に供されていた
宅地等の部分に含まれることとなる (措置法令40 条の2 ④)。 したがって、敷地の全体が、措置法第69 条の4 第1 項に規定する被相続人等の居住の用に 供されていた宅地等に該当することとなる。 事例 2 区分所有建物の登記がされている 1 棟の建物の敷地の場合 問 被相続人甲は、自己の所有する宅地の上に子丙と一棟の建物を所有し、甲とその配偶者乙及び生 計を別にする子丙の居住の用に供していた(建物は、区分所建物である旨の登記があり、甲及び丙 はそれぞれの占有部分について、区分所有権を登記し、居住の用に供している。) 配偶者乙、子丙は、当該当宅地の2分の1の持分を各々相続により取得し、申告期限まで引き続き 所有し、かつ居住の用に供している。 甲の所有していた宅地は、特定居住用宅地等に該当するか。 乙が引き続き居住 丙が引き続き居住 乙が居住の用に供している。 丙が居住の用に供している。 〔 乙と丙は2分の1共有持分を相続 〕 被相続人甲と配偶者乙が居住 生計を別にする子丙が居住 甲の居住の用に供されていた部分(A部分) 丙の居住の用に供されていた部分(B部分) 〔 土地(200㎡) 〕 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の判定 甲の居住の用に供されていた一棟の建物の敷地には、 被相続人甲の居住の用に供されてい た部分(以下「A部分」という。) と、生計を別にする親族丙の居住の用に供されていた部分(以下 「B部分」という。) がある。 甲の居住の用に供されていた一棟の建物は、 区分所有建物である旨の登記がされているこ とから、生計を別にする丙の居住の用に供されていた部分 ( B部分) は、措置法第69 条の4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の部分に含まれないこととなる (措置法令40 条の2 ④)。 したがって、一棟の建物の敷地のうち、 A部分だけが、措置法第69 条の4 第1 項に規定す る被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当することとなる 。
5. まとめ 平成 26 年 1 月 1 日以後に相続または遺贈により取得した二世帯住宅の敷地については、上 記の設例のとおり、区分所有建物の登記がされているかどうかで、小規模宅地等の特例の対象面 積が変わることになります。 こうなると聞かれるのが、すでに区分所有登記をしている二世帯住宅について、小規模宅地等 の特例を最大限受けたいので、どうにかできないかという相談です。 土地家屋調査士の方に確認したところ、区分所有登記をしている建物を区分所有登記でなくす るためには、各区分の所有者および所有割合が同じであり、抵当権等は同一日付で同一の受付番 号である必要があるということです。 建物の贈与または譲渡などにより建物の所有権を同一にすることはできますので、現実的には、 各区分で別々にローンを組んでいるかどうかがポイントになりそうです。 また、紙面の関係で省略しましたが、小規模宅地等の特例は、その土地が被相続人等の居住 の用に供されていた宅地等に該当するのかの判断のほかに、その土地を相続する側の要件があり ます。 その土地を引き継ぐ相続人が被相続人と生計を一にしていたか、家なき子に該当するかなどに より、特例を適用できる面積が変わってきますので、実際に適用されるときは、税理士に個別で相 談することをおすすめします。