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特集 鉄道会社と沿線まちづくりの課題と将来 次世代まちづくりに向けた阪急電鉄 阪急不動産の取り組み Approach to build more attractive areas by Hankyu Corporation and Hankyu Realty Co.,Ltd. 阪急電鉄株式会社経営企

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Academic year: 2021

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⃝特集「鉄道会社と沿線まちづくりの課題と将来」

次世代まちづくりに向けた阪急電鉄・阪急不動産の取り組み

Approach to build more attractive areas by Hankyu Corporation and Hankyu Realty Co.,Ltd.

阪急電鉄株式会社経営企画部部長

木内 徹

阪急不動産株式会社マンション事業企画部部長

鈴木 裕二

1. はじめに

我が国に初めて鉄道が開業して 140 余年、鉄道は豊か で活力ある国づくりを支える重要な役割を果たしてき た。その中で私鉄は本業の鉄道事業に加え、住宅・商業・ 観光やメディア・エンターテイメントなど幅広い事業を 展開し、地域の特性を活かした魅力ある沿線づくりに力 を発揮してきた。 阪急電鉄は、鉄道敷設と同時に住宅地を開発し、住宅 開発からの利益を享受するとともに、鉄道利用を促すと いう先駆的な事業手法を展開してきた。我が国初のター ミナルデパートの開業、宝塚歌劇の創設、大学の誘致な どにも取り組み、私鉄経営のビジネスモデルのパイオニ アとしてその名を知られている。 1910 年開業から一世紀にわたり、阪急電鉄は子会社 の阪急不動産とともに、阪急沿線のまちづくりに取組ん できた。その結果、阪急沿線は交通至便で環境に恵まれ た、関西でも人気のある魅力あるエリア1)となり、人 口減少に転じた関西圏の中で、いまだに人口増加を継続 している状況にある。しかしながら、阪急沿線において も少子高齢化は着実に進展しており、いずれは沿線人口 も減少に転じると考えられる。 このような現状を踏まえ、阪急阪神ホールディングス グループでは、 ①梅田地区をはじめとする沿線の価値向上:末永く住み 続けたい沿線・何度も訪れたいと思われる沿線づくり ②中長期的な成長に向けた新たなマーケットの開拓:首 都圏での事業拡大や海外での新たな事業展開への着手 の2つを事業戦略として掲げている。 本稿では、この事業戦略のもと、阪急電鉄及び阪急不 動産が取組む次世代につながるまちづくりの取組事例に ついて紹介する。

2. 沿線の価値向上~新たな沿線価値創造の

取組

(1)ハードの整備による取組 ①拠点開発 西宮北口は大阪梅田と神戸三宮のほぼ中間に位置し、 特急に乗車すれば梅田まで 12 分、三宮まで 14 分と交通 利便性の高いエリアである。阪急神戸線と同今津線によ り駅周辺は4つのエリアに分断され、それぞれのエリア の魅力にも欠けることから、以前は住宅地としての評価 はそれほど高くなかった。しかし、1995 年の阪神淡路 大震災以降、被災地の再開発事業や行政による文化施設 の建設、そして阪急電鉄グループによる野球場跡地の大 規模商業開発(阪急西宮ガーデンズ。賃貸面積 10.8 万㎡。 2008 年開業。百貨店(阪急百貨店)、GMS(イズミヤ)、 シネマコンプレックス(TOHO シネマズ OS)、専門店 で構成。)や駅直結のタワーマンションを含むマンショ ン開発(共同事業含み阪急不動産分譲マンション 計 9 1) Major7(大手マンションデベロッパー 7 社)による住んでみたいまちアンケート(関西)の 2016 年度調査結果では、1 位の西宮北口を筆頭に、 上位 10 位のうち 9 位までを阪急電鉄とグループの沿線(8 位のみ子会社の北大阪急行沿線)が独占する結果となっている。 図1 阪急阪神沿線の人口の推移 ※国勢調査・住民基本台帳人口より阪急電鉄が推計 ※阪急阪神沿線は阪急電鉄・阪神電気鉄道の駅のある市区町

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棟)、阪急今津線高架化事業によるエリア分断緩和等グ ループの総力をあげたまちづくりにより駅周辺の姿は一 変し、関西でもっとも人気の高い住宅地となった。 Major7 の住んでみたいまちアンケートでは、西宮北口 に住みたい理由として、交通の便がよい、商業施設が充 実、日常生活に便利、街並みがきれいという回答が上位 にあり、住みたいまちとしての高い評価に阪急電鉄が寄 与していることがうかがえる。こうしてまちが活性化し た結果として、西宮北口駅の乗降人員(平日一日平均) も阪急西宮ガーデンズ開業前の 2007 年の約 7.6 万人か ら 2015 年の約 10 万人に大きく増加することとなった。 他の阪急電鉄の駅周辺にはまとまった未利用地は決し て多くはないが、既存都市施設の機能再編やリニューア ル、新駅設置を契機にした周辺開発等により、今後も駅 周辺エリアのポテンシャルアップに努めていきたい。 ②マンション建替え・リノベーション 戦後、急速な住宅需要と関連する法整備のもと、民間 不動産会社や公社・公団により数多くのマンションが分 譲された。半世紀以上が経ち、これらのマンションの陳 腐化・老朽化が進み、マンション建替え需要はますます 高まっている。 阪急不動産においても、このような需要の高まりに対 応し、千里ニュータウンなどでマンション建替え事業を 展開している。所有者の資産活用が目的とはいえ、新た な人口流入や景観・環境対策・防災機能の強化改善が図 られ、また建替え前の住民コミュニティがベースにある ため、建替え後においても管理組合の運営が円滑に進ん でいるという効果がみられるなど、まち全体の活性化に 大きく貢献している。 さらに阪急不動産では、マンション建替え事業だけで はなく、社宅などを買い取り一棟まるごと改修するリノ ベーション事業を展開している。既存建物を再利用する ことで、周辺地域やそこに住む住民に与える影響が小さ く、建替えや新築と比べ事業期間が短いという利点があ る。専有部には新築マンション同様の品質を提供し、共 用部においては充実したセキュリティ機能を備えるなど 安全で快適な住まいを追及している。事業機会の拡大と 新規顧客の獲得を図る新たな分譲マンション事業として 2005 年より取り組んでいる。 (2)ソフトを主体とした取組 まちづくりにおいては、ハード整備だけでなくソフト が重要であることは言うまでもない。しかし、財政面の 問題から行政サービスは昨今制約が大きくなっており、 事業採算ベースにのらないサービスは一般の民間企業も 供給しないため、地域に存在する多くの社会的な課題が 放置されたままの状況にある。阪急電鉄のような地域密 着の企業グループにおいては、様々な事業・サービスを 全体的な視点でとらえることで、地域に残された社会的 な課題の解決を図ることができる可能性がある。以下、 そのような取組事例を紹介する。 ①住宅におけるコミュニティ活動促進 人間関係の煩わしさが避けられる傾向はますます顕著 となり、既存の住宅地等では自治会の加入率低下も問題 になっている。一方、防災や高齢者の見守りなどさまざ まな観点でコミュニティの重要性は増しており、従来型 図2 西宮北口周辺の開発 図3 マンション建替え事例(ジオ千里中央) 図4 リノベーション事例(ブロド高槻) エントランスを新たに設置したリノベーション例

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ではない新たなコミュニティ活動の構築が必要とされて いる。このような状況を踏まえ、ニュータウンやマンショ ン開発において住民らのコミュニティ形成・醸成のため の活動を展開している。 1)彩都(国際文化公園都市) 彩都は、大阪府北部丘陵に位置する大規模ニュータウ ンであり、まちのビジョンに「持続可能(サスティナブ ル)なまちづくり」を挙げている。そこで阪急電鉄・阪 急不動産では、「開発してお終い」ではなく、今の子ど もたちから次の子どもたちへと受け継がれるまちを育て ていくことを目指したコミュニティ活動を支援してい る。一般社団法人コミュニティ彩都を立ち上げ、例えば 旧住民の農家の方と新住民の方とが協力しあって農業体 験を実施するなど、ニュータウンとその周辺地域で人々 が触れ合うコミュニティ溢れるまちづくりを進めている。 このようなコミュニティ活動は、将来にわたっての継 続性が非常に重要であり、次を担う世代への継承に努力 しているところである。 2)MUSE たかつき(JR 高槻駅北東地区開発事業) MUSE たかつきは、JR 高槻駅周辺にひろがる 9.3ha の広大な土地に、阪急不動産が分譲した 4 棟 1,300 戸超 のマンションのほか、商業施設、大学、病院が立地する 大規模複合開発である。 開発にあたっては、事業者らからなる「まちづくり協 議会」(会長:阪急不動産)が発足され、ここからまち づくりに関する検討や提案がされた。地区内の歩道、緑 地、デッキなどは官民双方の用地にまたがるため、管理 組織「MUSE たかつき管理協議会」が一体的に維持管 理しており、その結果、まち全体としての統一的で質の 高い都市環境が維持されている。さらにマンション入居 者のコミュニティ活動を支援するタウンマネジメント組 織「MUSE たかつき倶楽部」が継続的にまちの活性化、 魅力づくりのための活動を行っている。 ② 沿線地域でのコミュニティ活動支援~沿線コミュニ ティベース「Stajimo」 阪急電鉄は、前述の阪急西宮ガーデンズ(2(1)①)) に、2015 年 4 月沿線コミュニティベース「スタジモに しのみや」をオープンした。スタジモにしのみやは、登 録団体が使用できる貸し会議室を中心とする施設であ り、集まる場「ステーション」、つながる場「ステージ」、 つくる場「スタジオ」をみんなの地元(ジモト)で、の 意味を込めたネーミングの通り、地元で活動されている 様々なコミュニティのための人と情報が集まる場である。 公民館のような行政施設の中の会議室とは異なり、商 業施設の中に立地し、買い物目的で来訪した市民を対象 としたイベント開催等も可能なことが好評を博し、開業 からの2年間に、登録団体は、子育て、シニア、アート、 起業、地域活性化など様々なテーマで 180 団体を超え、 活発な活動が行われている。最近では、登録団体との協 働プロジェクトの立ち上げや、地域で新しいコミュニ ティを創造するイベントの開催に取り組むなど、グルー プにとっても地域コミュニティを通じた新しい顧客接点 の場として、沿線価値創造におけるプラットフォームモ 図5 彩都におけるコミュニティ活動 彩都周辺に広がる棚田での農業体験 図7 沿線コミュニティベース Stajimo 図6 MUSE たかつき(全景)

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デルとなることを目指している。 そこに行けば何かが見つかる、ここに来れば仲間に会 える、ここから新しいことが始まる、ここでの交流と創 造が、相互につながり、地域を活性化し、阪急沿線への 愛着を育み、地域の魅力を高めていくことを願って、協 働の可能性を探っていきたい。 ③子育て・女性の就労支援 保育所の待機児童問題は女性の就労継続の障害となっ ており、阪急沿線でも住民が流入し人口が増加している エリアで特に問題となっている。未就学児の待機児童ほ ど注目はされていないが、小学生を対象にした学童保育 にも問題が多い。未就学児の保育施設には手厚い補助制 度もあり、ビジネスモデルが確立していることから、保 育事業を手掛ける社会福祉法人や民間企業は数多いが、 学童保育に対しては補助制度もなく、関西では学童保育 を事業として営む民間企業はきわめて少ない。このため、 公立小学校に設置された公設の学童保育が小学生の預か りニーズの主な受け皿となっているが、公設学童の制約 (預かり時間が短い、低学年しか受入れない、フルタイ ム勤務でなければ利用できない等)から就労継続をあき らめる女性も少なくなく、この問題は「小 1 の壁」と言 われている。従来、環境に恵まれた郊外での子育てが好 まれる傾向があったが、近年は都心を選択する子育て世 代が多くなってきた背景のひとつに、職住近接でなけれ ば子育てと就労継続が両立できない、という側面もある ものと推察される。 このような問題に対応し、共働き世帯の郊外での子育 てを支えるサービスとして、阪急電鉄では小学生を放課 後に預る民間学童保育「アフタースクール Kippo」を 2015 年 4 月に開始した。駅の改札周辺など通勤帰りの お迎えに便利な場所に店舗を開設し、最大 21 時までの 預かりや学校へのお迎えサービスに加え、阪急グループ のネットワークを活かした多様な体験アクティビティを 提供することで、次世代の育成に寄与している。現在豊 中、西宮北口、池田の 3 店舗で営業している。 また、2016 年 11 月には子どもを連れてそばで働ける キッズスペース付きオフィス「mama square」の運営 を行う「株式会社ママスクエア」に出資2)をした。キッ ズスペース付きオフィスは、こどもを保育園に預ける必 要なく、オフィスに併設したキッズスペースで子どもを 遊ばせながら、オフィスで就労できるというもので、今後 グループの不動産物件での展開についても検討していく。 ④空家サポート 我が国の空家数は 820 万戸(総務省「平成 25 年度土地・ 住宅調査」)を超え、空家問題は本格的に現実化・深刻 化してきている。空家率(二次的利用除く)は、東京都、 神奈川県、埼玉県など首都圏では 10%前後にとどまっ ているのに対し、大阪府では 14.5%と高い数値となって いる。中には遠隔地に所有者が居住している場合もあり、 空家を適切に維持管理していくことがますます困難に なっていくものと思われる。阪急不動産では、これから 増えていく空家の適切な管理や流通・利活用を促すこと を目的に、2016 年「阪急の空家サポート」を立ち上げた。 このサービスでは、空家を適切に維持管理することで阪 急阪神沿線の良好な住環境を保つとともに、オーナーと の接点を維持する中で、仲介、リフォーム、植栽管理を はじめ、民泊・駐車場への転用など総合的なワンストッ プサービスを展開し、さらには阪急阪神グループ各社・ 提携会社のビジネスチャンスにもつなげている。

3. 新たなマーケットの開拓

鉄道や不動産等基幹となる事業は基本的に阪急沿線で の展開にとどまってきたが、2000 年前後より一部事業 を首都圏や海外で展開するなど新たなマーケットの開拓 に取組んでいる。 2) 阪急電鉄㈱と㈱サンブリッジコーポレションがベンチャー企業育成を目的として 2015 年3月に組成した「梅田スタートアップファンド1号」が 出資。 図8 アフタースクール Kippo 阪急電鉄駅員も参加したカリキュラム 図9 マスコットキャラクター 左 : すまいるん 右 : すまいりん

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(1)首都圏での不動産事業 2000 年代初頭から、新たなマーケットとして、阪急 沿線よりも人口増加の顕著な首都圏に進出した。 住宅事業については、すでに 50 棟以上の分譲マンショ ンを提供してきており、関西では馴染みのマンションブ ランド「ジオ」の浸透を積極的に図るとともに、首都圏 における年間供給戸数を増やしていく予定である。 不動産賃貸事業についても、つくばエクスプレスの秋 葉原駅ビル開発に参画してきたほか、URの施行する四 ツ谷駅前再開発の事業パートナーであるSPCへの出資 による事業参画等の取組を行っている。 (2)海外での不動産事業 首都圏は人口が増加しているとはいえ、少子高齢化の 進展する日本では、住宅を取得する世帯の減少は今後避 けられない。このため、今後も人口増加を見込むことが でき、所得水準の向上も著しい ASEAN 地域に着目し、 培ってきた技術、ノウハウを活かして、海外での住宅事 業に取り組んでいる。 ①ベトナム ホーチミン市において、阪急不動産は西日本鉄道株式 会社とベトナムの大手デベロッパーとの3社で、マン ション事業等を共同展開している。2015 年3月に第1

号プロジェクト「FLORA ANH DAO」を立ち上げ、現 在、第2号プロジェクト「FLORA FUJI」、第3号プロ ジェクト「FLORA KIKYO」を実施中であり、阪急不 動産が事業参画するマンション事業は、第1号プロジェ クトから累計で 1,500 戸に達する。 ②タイ 2016 年 12 月、タイの不動産デベロッパーと合弁会社 を設立した。今後、タイ国内において分譲マンション事 業を進めていく予定である。

4. おわりに

本稿では、阪急電鉄・阪急不動産の次世代につながる まちづくりの取組の一部を紹介した。これらの取組は、 時代や社会の要請、深刻化している諸問題に直結した事 業である。ハードで時間や費用がかかる大がかりな事業 だけではなく、既存の駅を活用し、沿線に暮らし働き訪 れる人々に愛着のある、企業イメージが十分浸透してい る鉄道会社ならではの事業である。 加えて長い歴史の中で培ってきた技術、ノウハウを もって、新たな市場を求め、そこでも多くの人々に愛さ れるまちづくりを進めていきたいと考えている。 今後は、都市のリニューアル、例えばすでに野村不動 産株式会社とともに「京成立石駅南口東地区第一種市街 地再開発事業」(東京都葛飾区)への参加組合員予定者 として事業参加しているが、このような再開発事業や土 地区画整理事業といった中長期的な事業に取り組むこと やまちの魅力づくり・活性化のためのタウンマネジメン ト・エリアマネジメント、官民連携した事業展開など、 刻々と変化する社会ニーズに柔軟に対応していくことも 必要とされるだろう。 また、阪急阪神ホールディングスグループでは、社会 貢献活動「阪急阪神未来のゆめまちプロジェクト」を推 進している。このプロジェクトでは、「阪急阪神沿線を 中心に、私たち一人ひとりが関わる地域において、『未 来にわたり住みたいまち』をつくることを目指します。」 という基本方針を掲げ、「未来へつなぐ『環境づくり』 と『人づくり』」を重点領域として、阪急阪神沿線のさ まざまなステークホルダーとともに、地域社会の発展に 向けたさまざまな取組を行っている。地域をよくしてい きたいという思いを共有する方々とともに、事業活動や 社会貢献活動を通じて今後もよりよい阪急阪神沿線とな るような取組を継続していきたい。 図 10 ジオグランデ元麻布 図 11 FLORA KIKYO 完成イメージ

参照

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