米国トランプ政権の政策
(核不拡散、核セキュリティ、原子力等)
日本原子力研究開発機構
核不拡散・核セキュリティ総合支援センター
政策調査室
大統領、副大統領
参考:足立正彦、「トランプ次期政権高官人事分析資料」、住友商事グローバルリサーチ、URL: https://www.scgr.co.jp/report/survey/2016121421714/•1959年生まれ、58歳。インディアナ州出身。
•インディアナ大学法科大学院修了。弁護士。
•2000年の下院議員選挙で初当選、2001~13年まで下
院議員を歴任。共和党保守派に属し、ティーパーティ運動
にも参加。2013年1月からはインディアナ州知事を務め、
大規模な減税を導入、また財政黒字を達成。
•共和党主流派に属し、下院議長のポール・ライアン氏(ウィ
スコンシン州)とは盟友であることから、トランプ氏と議会の橋
渡し役となることが期待されている。
第48代副大統領:マイク・ペンス
第45代統領:ドナルド・トランプ
•1946年生まれ、71歳。ニューヨーク州出身。
•ペンシルバニア大学ウォートン校卒業、トランプ・オーガナイ
ゼーションの会長兼社長、全米でホテルやカジノを経営。
•2015年6月、2016年大統領選挙へ共和党からの出
馬を表明。メキシコとの国境の壁の建設、TPPからの脱退
やパリ協定からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の
再交渉、日韓の核武装の是認、イランとの核合意の破棄
等の発言、またワシントンのエスタブリッシュメントを批判す
る発言等はマスコミから脚光を浴びた。
•政治や軍人の経験がない初めての大統領で、また歴代
米国大統領の中で、最高齢での大統領就任である。
大統領の就任演説と政策課題
就任演説の主要ポイント • 国民(People)による統治: 私が大統領となった今日、この場所から、政府が国民により統治されるという変革が始まる。 • 米国第一主義: 今日、この日から、米国はひたすら米国第一主義(America First)に徹する。 米国の企業、雇用、国境を守らなければならない。保護こそが偉大な繁栄と強さをもたらす。 • 新しい同盟関係の構築: 今後、米国は米国製品を買い、米国人を雇うという単純な2つのルールに従う。 世界の国々と友好的な善意の関係を築くが、それは全ての国には自国の利益を優先させる権 利があることを理解した上でのことである。そして古い同盟関係を強化し、新しいものを形づくる。 世界を結束しイスラム過激派のテロを地球上から完全に根絶させる。 写真出典: https://www.whitehouse.gov/administration/president-trump 6つの政策課題のうち、「米国第一エネルギー計画」と「米国第一外交政策」 •2017年1月20日、トランプ大統領は①米国第一エネルギー計画、②米国第一外交政策、③雇用と成長の復活、④米国の軍隊を再び強 固なものとすること、⑤法律施行コミュニティの設立、そして⑥すべての米国人のための貿易交渉、の計6つの政策課題を発表。うち、①と②の 概要は以下の通り。 米国第一エネルギー計画 •長期間に亘りエネルギー業界への重圧となり、また米国の(雇用等にとっ て)有害かつ不必要な気候行動計画や水資源保護を排除し、米国労 働者の賃金を今後7年間で300億ドル以上引き上げ •50兆ドルと見積もられ、特に連邦所有地(陸域、海域)のシェール資源 を開発し、それらのエネルギー生産からの収入で公共インフラを再建 •クリーン・コール技術に取組み、米国の石炭産業を再生 •上記により米国は石油輸出国機構(OPEC)や米国を敵視する国々から エネルギーの自立を確立する。同時に湾岸の同盟国と対テロ戦略の一つ として良好なエネルギー関係を築く •環境保護庁の本質的なミッションを再び大気と水の保護に向けさせる 米国第一外交政策 •外交政策の中心は「力による平和(Peace through strength)」 •イスラム国(ISIS)やイスラム過激派テロ組織の打破は最優先 課題。必要であれば統合及び合同軍事作戦を積極的に展 開 •米国の軍事力を再建。米国の軍事優位性は揺るがないもの でなければならず、米海軍や空軍の減少傾向を逆転させる •米国の利益に基づいた政策を推進するに当たり外交を活用74
•1948年生まれ、メリーランド州出身。 •エール大学法科大学院修了。弁護士。 •ブッシュ(父)政権で、1989~93年に 国務次官補(国際機関局担当) •ブッシュ(子)政権で、2001~05年に 国務次官(軍備管理・国際安全保障 担当)、05~06年に国連大使を歴任。 •退任後は、米保守系シンクタンクのアメリ カン・エンタープライズ政策研究所・上級 研究員を務める。 •2018年4月から現職。 •北朝鮮への先制攻撃やイラン爆撃を支持 するタカ派の論客として注目される。 写真出典: https://www.whitehouse.gov/people/john-r-bolton/
大統領補佐官、国務長官、エネルギー長官
リック・ペリー エネルギー長官
ジョン・ボルトン大統領補佐官
(国家安全保障担当)
マイク・ポンペオ国務長官
•1963年生まれ、カリフォルニア州出身。 •1986年にウェストポイントの陸軍士官学 校を首席で卒業し、退役後、ハーバード 大学法科大学院を卒業。弁護士。 •2010年に下院議員(共和党、カンザス 州)に初当選(ティーパーティ運動の一 人)、2017年1月まで6年間、下院議 員を務める。 •2017年1月~2018年4月にCIA長官 を務め、2018年4月から現職。 •対北朝鮮、対イラン強硬派として知られ る。写真出典: https://www.state.gov/r/pa/ei/biog/281217.htm •1950年生まれ、テキサス州出身。 •テキサスA&M大学卒業後、1997年まで 米国空軍に在籍。 •1984年に下院議員、1999年にテキサス 州副知事に当選。2000年に、ブッシュ( 子)の大統領選挙当選/知事辞任により、 同州知事に昇格。2017年1月まで知事。 •2015年の大統領選に出馬表明も撤退。 •2017年3月から現職。 •米国経済への影響を懸念し、地球温暖化 対策には懐疑的な立場。原子力復興を明 言し、特にSMR及び使用済燃料中間貯 蔵施設の建設に注力。 写真出典:https://www.energy.gov/contributors/rick-perryトランプ政権の政策(不拡散、核セキュリティ等)
項目
トランプ大統領・関連閣僚のこれまでの発言や行動
NPT・核不拡散体制 NPT体制の維持・強化が重要と言及 北朝鮮の核問題 (北朝鮮の非核化) •2018年6月12日の米朝首脳会談以前:国連総会で北朝鮮を「ならず者国家」と非難。オバマ大統 領の「戦略的忍耐」戦略を改め、「あらゆる選択肢」として経済制裁の強化や軍事力行使を検討。 •米朝首脳会談後:「もはや北朝鮮の核の脅威はなくなった」、「北朝鮮との非核化交渉に期限は設け ておらず、急いではいない」旨を発言。経済制裁を継続しつつも、米韓合同軍事演習を停止。 •2018年8月23日にポンペオ国務長官がスティーブン・ビーガン(米フォード社副社長)を北朝鮮特使 に任命。翌日にトランプ大統領が「非核化の進展がない」として長官の第四回目となる訪朝中止を指示。 イラン核合意 (包括的共 同作業計画、JCPOA) •JCPOAからの離脱に反対していたティラーソン国務長官を更迭。その後、タカ派で対イラン強硬派のジョ ン・ボルトン氏を大統領補佐官に任命、マイク・ポンペオCIA長官を国務長官に指名。 •2018年5月6日、JCPOAからの離脱を表明。 •2018年8月7日、大統領令で対イラン制裁の一部を再開(イランによるドル紙幣購入や金などの貴金 属取引、工業用金属の売買に関する制裁等)。 •8月16日、ポンペオ国務長官がブライアン・フック国務省政策企画局長をイラン担当特別代表に任命。 国家安全保障 ・国防戦略やミサイル防衛システムの強化計画を策定、『核態勢の見直し(NPR)』を2018年に改定。 ・『国家安全保障戦略』では、4つの柱として「米国第一主義」の下、①「国民と国土の防衛」、②「米国 の繁栄の促進」、③「力による平和の維持」、④「米国の影響力の拡大」を掲げ、とりわけミサイル防衛の 強化、中・露といった「修正主義勢力」に対抗するための軍事力の近代化と能力の向上の必要性を訴 える。アジア地域については、領有権問題の平和的解決や朝鮮半島の非核化への取り組みを主張。 軍備管理・軍縮 ••オバマ大統領の「核兵器のない世界」を追求する政策を見直す方向。国防費の「歴史的な拡大」の必要性を主張し、FY2019国防関連予算額はFY2017実施予算額と 比べて800億ドルの増額を要求。 日本の安全保障との関係 ••大統領就任以前:日本や韓国の核武装を是認する発言、米軍駐留費用等への財政支援を要請。大統領就任後:安倍首相との電話会談で、日米関係は卓越したパートナーシップであり、この特別な関 係を更に強化していきたい旨を言及 国際原子力機関(IAEA) •IAEAの核不拡散(及び核セキュリティ、原子力安全)の確保に係る役割を評価。任意拠出金も継続。76
項目
トランプ 大統領の大統領就任以前及びその後の発言等
包括的核実験禁止条約
(CTBT)の批准 •2018年の『核態勢の見直し(NPR)』上でCTBT批准に向けた議会手続きを行わないことを表明。ただし、CTBTO準備委員会の国際監視制度(IMS)等への支援は継続。
エネルギー戦略
•オバマ前大統領の「全方位的エネルギー戦略(all-of-the-above energy strategy」から、 「エネルギー自立(Energy Independence)」と「エネルギー支配(Energy Dominance)」 を目指す 米国エネルギー(石炭火力、石油、天然ガス)の世界輸出により、雇用を創出、米国の友 好国、パートナー国、同盟国のエネルギー安全保障を確保 オバマ大統領が課してきたエネルギー開発を阻害してきた規制を除去し、インフラ開発を進 める 地球温暖化対策 •オバマ前大統領が打ち出した「気候変動行動計画」の撤回と、気候変動に係るパリ協定から の離脱を表明。 •2019年の予算教書で、EPA予算の約3分の1削減や気候変動関連プログラム及び関連研 究の中止を提案。 核セキュリティ •テロ対策との絡みから、核セキュリティの確保を重要視。ただし、ポスト核セキュリティ・サミット後の活動には特段の言及なし PMDA(米露間での解体核余剰 Puの処分) •余剰解体核兵器からのPuの処分につき、MOX燃料製造施設(MFFF)の建設を終了させ、 処分方法として「希釈・処分オプション」を選択。 ※議会はFY2019国防授権法でMFFFの最低限の建設費用として2億2千万ドルを賦与。 放射性廃棄物処分場、使用済 燃料中間貯蔵 •ヤッカマウンテン(YM)許認可申請書の審査の再開、使用済燃料中間貯蔵施設の建設推進。 ただし、議会上下両院協議会は、2019NDAA案からYMに係る予算を削除。
トランプ政権の政策(エネルギー戦略等)
トランプ政権の政策(エネルギー、原子力)
トランプ大統領及びペリーDOE長官のエネルギー、原子力に係る発言 “米国のエネルギー支配(American Energy Dominance)”
トランプ大統領 • 政府が主導するエネルギー開発推進により、米国産エネルギーを世界に輸出 • 「米国のエネルギー自立」と「米国のエネルギー支配」を達成する6つの新しいイニシアティブ(ただしメインは、天然 ガス、石油の輸出促進と関連する国内インフラの整備、規制の撤廃など) • イニシアティブの1つとして、原子力エネルギーを再活性化させる新しい方法を見い出すため、原子力政策の徹 底的なレビューを実施することを言及 • 2018年6月、原子力発電所及び石炭火力発電所の運転停止が国家及び経済安全保障上の問題であり、 運転停止を阻止するための緊急措置を準備するようDOE長官に対し命令。 ペリーDOE長官
• 原子力を再びクールなものにする(To make nuclear cool again!)
• 原子力の役割:原子力無くしてはクリーン・エネルギーのポートフォリオは完成しない。原子力は新たな可能性を 切り開くゲーム・チェンジャーになり得る • 米国の役割:米国は、原子力開発の主導的役割を果たす 原子炉の輸出やSMR支援を含む原子力産業界の再活性化を支援 使用済燃料中間貯蔵施設の推進 • 大統領が言及した原子力政策のレビュー:エネルギー生産と原子炉建設コストの評価を含む、米国の原子力開 発計画等 • 新規原子力発電所の建設:許認可プロセスを簡素化し、規制を大幅に緩和すべきことを主張 • 既存の原子力発電所の運転維持への対応 上記トランプ大統領が命じた緊急措置に係り、報道によればDOEは地域の送電事業者に石炭火力及び原 子力発電所から電気の購入を義務付けること等を含む草案を作成したと報じられている。 上記に対する米 国原子力協会 (NEI)の反応 米国内外で「原子力エネルギーの優位性」を達成したいなら既存の原子炉維持、先進の展開、海外への原子炉 輸出を支援・刺激すべき
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大統領の国家安全保障戦略、一般教書演説、核態勢の見直し
国家安全保障戦略(2017年12月18日発表)の主要ポイント • 国家安全保障上の脅威と優先課題: 米国の国家安全保障に重大な影響を与える課題は、中国や露国、イランや北朝鮮、テロリスト。これらへの対応方策として、「米 国第一主義」に基づいて強い米国を実現するとし、「国民と国土の防衛」、「米国の繁栄促進」、「力による平和の維持」、そして 「米国の影響力の拡大」を優先的課題として提示。 • 具体的な方策: 核兵器(備蓄核弾頭、核戦力の三本柱)、老朽化する核兵器関連インフラ(指揮管理システム等)、核兵器関連事業 の維持及び近代化 テロ対策及び大量破壊兵器拡散対抗に係る措置の強化と国際支援 原子力技術(特に次世代原子炉)向上により、エネルギー分野の技術的優位を進展 核態勢の見直し報告書(2018年2月2日発表)の主要ポイント • トランプ政権の核態勢の見直しの特徴: 「核兵器なき世界」を持論としたオバマ前政権に比し、中国や露国、イランや北朝鮮、テロリストによる核の脅威の増大に対抗す るため「柔軟かつ多様な核戦力」の必要性を強調 • 具体的な方策: 核戦力の三本柱の近代化、新型核兵器(潜水艦発射型弾道ミサイルに搭載可能な低威力核弾頭、海洋発射型核巡 航ミサイル)の研究開発 核弾頭維持管理関連インフラの能力向上、核指揮統制通信システムのサイバー攻撃等からの防護強化 核テロ対策、核不拡散、核セキュリティの強化と国際支援(核・放射性物質、技術及び知識の不法移転の検知と阻止能 力の強化、盗取に対する脆弱性の低減、核鑑識/輸出管理/保障措置の強化等) 国際原子力機関、包括的核実験禁止条約機構準備委員会、国際監視体制、国際データセンターへの支持継続 一般教書演説(2018年1月29日発表)の主要ポイント • 一般教書演説の特徴(国家安全保障、外交政策等に係る点): 国家安全保障戦略(上記参照)、国家防衛戦略(2018年1月19日発表)、核態勢の見直し報告書(下記参照)の草 案の文言を引用 核兵器の近代化を進め強固な軍隊を維持するため、議会に対して十分な予算を国防費に配賦するよう主張 米国が北朝鮮やイランといった「ならず者国家」やテロ組織、米国の国益や経済及び価値観に挑戦する中国や露国といったラ イバル国と対峙しており、比類ない力こそが防衛の最も確実な手段となる 将来いつか世界中の国々が核兵器廃絶に向け団結するという魔法のような瞬間が訪れるだろうが、現在はその状況には無い 写真出典: https://www.whitehou se.gov/sotu/National Security Strategy