(株)富士通研究所
先端ワイヤレス研究部
大橋 洋二
車載用ミリ波レーダー開発最前線
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本講演の内容
富士通におけるミリ波レーダー開発の歴史
1950年代~現在までの富士通でのミリ波レーダ開発の歴史を振り返ります
レーダー低コスト化への取り組み
レーダー普及に向けて、これまでの低コスト化への取り組みについて紹介しま す
次世代レーダーの技術
次世代レーダー採用の方向で研究開発が進んでいるミリ波CMOSについて 紹介します 次世代レーダーとして期待される、79GHz高分解能レーダーと人検知技術に ついて紹介します富士通におけるミリ波レーダー開発
の歴史
車載用ミリ波レーダー開発最前線
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富士通におけるミリ波レーダー開発の歴史
1970年代 1980年代 1990年代 黎明期 50GHz 開発期 開発中断 1974年 車載実験 1982年 V型レーダー 1997年 60 GHzレーダーの実用化 1998年 60GHz メカス キャン方式 60GHz 76GHz 写真提供: 富士通テン(株) Gunn, SBD HEMT 導波管回路 MIC MMIC 周波数割り当てられず 日本で割当 日米欧で割当 2000年代 セ ン サ 開発 周波数 フリップチップ ワイヤボンディング 多層MMIC 1999年 76GHz メカス キャン方式 実用化期 デバイス ・ 実装 24GHz 2003年 76GHzレーダー ホンダ インスパイア に搭載 79GHz 将来 SiGe 2010年代 普及期 2006年 後方監視レーダー レクサスLS460に 搭載 2010年 76GHz 電子 スキャン方式 2009年 前側方レーダー トヨタ クラウン マ ジェスタに搭載 CMOS 2006年 76GHz モノパ ルス方式 2012年 76GHz 3次元 スキャン方式 日欧で割当1950年代~70年代:レーダー開発黎明期
1951年国産レーダー開発解禁
戦後制限されていた国産レーダー開発が解禁 富士通テンの前身である神戸工業にて船舶用レーダーの 開発を開始 南極観測船「宗谷」に搭載
1972年車載用レーダー開発開始
50GHz帯でレーダーを試作 1974年車載走行実験 1982年V型レーダーの試作
技術
局部発振器にGunnダイオード、受信はショットキーバリア ダイオードを使用 サイズも大きく、コストも高かった為、製品化には至らずCopyright 2014 FUJITSU LABORATORIES LTD.
1982年V型レーダ 1972年車載レーダ開発開始 1957年 南極観測船「宗谷」 と「国産レーダー」開発者 1974年車載実験 5 http://www.fujitsu-ten.co.jp/corevalue/intelligent/mwr02/index.html
1980年代: HEMTの発明と高周波製品適用
1979年富士通研究所でHEMT(High
Electron Mobility Transistor)が発明される
高純度GaAs層とドーピングされたAlGaAs層を超 格子接合させると、GaAs層の界面に電子が高速 に移動可能な電子走行層ができる性質を利用 • 従来のGaAs MESFETが不純物を含んだドーピング 層を電子が走行するのに比べ、HEMTは不純物を含 まないGaAs層を電子が走行するので、電子移動度 が高く、高周波動作と低雑音化が可能になった 衛星通信や衛星放送用の低雑音増幅器の雑音 とコストを大幅に低減 電波天文に応用することで、新しい星間物質の発 見に貢献 衛星放送受信機の小型化と普及に貢献 • 東欧の自由化の契機となった!
1980年代後半には、HEMTのMMIC化が
進む
http://www.ssken.gr.jp/MAINSITE/download/newsletter/2008/20081023-joint/lecture-2/ppt.pdf1990年代:車載レーダー再挑戦
ミリウェイブ(1991-1996、NEC・富士通等が参
画)にて60GHz帯の通信機器開発
60GHz帯のMMICの開発 60GHz帯で156Mbpsの無線機を試作 車載レーダーに応用できるのでは?
1995年日本で60GHz帯がレーダー用に割当
60GHz帯は酸素の吸収バンドがあるために、遠くまで 飛ばず、電波干渉が起きにくいという特徴がある 1997年ダンプトラック向け60GHzレーダーを実用化 • 無線操縦の超大型ダンプトラックにメカスキャン方式の 60GHz帯レーダを搭載
国際的には60GHz帯はレーダー用には割り当
てられず、76GHzが車載レーダー用に割り当て
られる
76GHz帯レーダー開発にシフトCopyright 2014 FUJITSU LABORATORIES LTD.
1997年
60 GHzレーダの実用化
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2000年代:車載レーダー製品化開始
1999年メルセデスベンツにADCの76GHz帯レーダーが搭載
富士通でも1999年の製品化に向けて開発を進めていたものの、残念ながら
世界初の乗用車への製品化は先を越された
2003年ホンダ インスパイアに76GHz帯レーダーが搭載
ACC(Adaptive Cruise Control)とPre-crashセンサーとして使用
メカスキャン方式
2006年レクサス LS460に後方監視用モノパルスレーダーが搭載
2009年トヨタ クラウン マジェスタに前側方監視用レーダーが搭載
その他にも多数のメーカ・車種にレーダ搭載が進む
ただし、まだ高級車にオプション搭載されるにとど
まり、オプション価格も当初25万円ほどするので、
本格的な普及はまだ進まなかった
2003年 76GHzレーダ ホンダ インスパイアに搭載2010年代:車載レーダーは普及期へ
ミリ波レーダーの低コスト化進む
オプション価格で数万円レベルに
デバイスはGaAs HEMTから SiGeにシフト
実装基板はセラミック+メタルシャーシから樹脂基板に変化
制度面での環境
ヨーロッパでは商用車( 2013年11月より新型車、2015年11月より全ての新 車)へAEBを義務化 EuroNCAPでの5つ星の条件にAEB搭載が必須になる 日本でも衝突被害軽減ブレーキが3.5t以上の貨物・10人乗以上のバスで義 務化(2014年11月~2021年11月)、減税も適用
一方で画像・レーザ等との競争も激化
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http://www.europarl.europa.eu/sides/getAllAnswers.do?reference=E-2011-011477&language=EN
AEB: Advanced Emergency Braking system、Autonomous Emergency Braking
レーダー低コスト化への取り組み
ミリ波MMICの開発
MIC(Microwave integrated circuits)
個別半導体とセラミック基板の回路を組み合わせてミリ波回路を構成
組み立ての自動化が困難
寸法ばらつきによって高周波特性が変化し、調整工程が必要
MMIC(Monolithic microwave integrated circuits)
半導体基板上にミリ波回路の主要部分を形成して、自動実装、無調整化を実
現することでコスト低減
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単機能回路の MMIC化 複数機能 の1チップ化 MIC 個別半導体の組み合わせで ミリ波回路を構成
デバイスの低コスト化
回路設計技術の向上により、GaAs・SiGe・CMOSいずれでもミリ
波レーダーを作ることが可能になっている
レーダー数量増大と低コスト化に伴い、デバイスをGaAsからより大
量生産可能なSiGeに移行
今後はデジタル回路とも融合したCMOSへの移行も進めていく
デバイス GaAs HEMT SiGe Bipolar CMOS
コスト 少量時 ○ △ × 大量時 ○ ◎ ◎ 利得 ◎ ◎ ◎ 出力電力 ◎ ◎ ○ 雑音指数 ◎ ○ ○ 位相雑音 ○ ◎ ○ デジタル × △ ◎ ×:適用困難 △:望ましくない ○:適用可能 ◎:最適
高周波基板の低コスト化
樹脂基板の採用
アルミナセラミックが高周波損失が小さく、寸法精度も高いので、高周波特性
に優れるが、多少高周波特性が悪くて、寸法精度が悪くても安い樹脂基板を 採用することで低コスト化を実現
Copyright 2014 FUJITSU LABORATORIES LTD. 13 特性 記号 単位 セラミック 樹脂 京セラA443 MEGTRON4 FR-4 誘電率 εr 9.6 3.8 4.3 誘電正接 tanδ 0.0005 0.005 0.016 ガラス転移温度 Tg ℃ - 176 170 線膨張係数(x) ppm/℃ 6.9 12-14 11-13 線膨張係数(z) ppm/℃ 6.9 35 60 寸法精度 μm 15 50 75
パッケージの低コスト化
セラミックパッケージの低コスト化
GaAsは保護膜の形成温度が低くて、保護膜があまり強くできないので、信頼 性確保のためには気密封止が望ましいので、セラミックパッケージが必要 従来はメタル・セラミック複合パッケージであったのを、単層セラミックでパッ ケージを形成して、低コスト化
樹脂パッケージ
SiGe・CMOSは保護膜が強固なので、 樹脂パッケージでも信頼性確保が容易 FO-WLP(Fan out wafer level package) が今後の主流に
次世代レーダーの技術
車載用ミリ波レーダー開発最前線
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ミリ波CMOS
ミリ波レーダやミリ波通信の製品化を目指して、CMOSチップ開発
を進めている
設計パラメータの抽出・モデル化 回路トポロジーの改良による低損失化 複数の回路を集積化して、より高機能なシステムを実現していく 1. 2 m m 2.4 mm 76GHzトランシーバ Area: 600 x 700 mm2 IN OUT 1 .1 mm 1.6 mm PD Ref 1/N Frequency code 40 GHz VCO Digital 49 MHz Xtal 80 GHz X2 Isolation transformer GND separated 76~81GHz PLL発振器 76GHz低雑音増幅器 ※ 総務省委託研究「電波資源拡大のための研究開発」 「79GHz帯レーダシステムの高度化」で開発中 ※ ISSCC2009にて発表 ※ APMC2011にて発表 ※ APMC2012、EuMIC2013にて発表CMOS vs GaAs HEMT
Si技術での高周波回路実現への課題
・低損失な伝送線路とモデル化
・Trのアナログ性能(ゲイン)向上
CMOS
GaAs HEMT 3層Au配線 半絶縁性基板 (GaAs)GaAs HEMT
ゲート材料:Au 導電率:4.1x107 S/m ゲート材料:Poly-Si 導電率:4.0x106 S/m 導電性基板 (Si) n-MOS 10層Cu配線 p-MOS 17マイクロストリップ線路構造 (Z0 = 50 W)
l/4λ= 2.6 mm @10GHz l/4λ= 4.8 mm @10GHz GaAs 150um W = 100um er = 12.6 t = 1umGaAs
Si W = 12um t = 1um er = 3~4Si
6um・なるべく配線の短くなる整合回路が望ましい。
精度と小型化を両立する設計技術
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整合回路において、移相量の大きい部位はインダクタ、移相
量が少なく精度の必要な部位は伝送線路
0 0.5 1 1.5 0 20 40 60 移相量と面積の関係 面積 ( x 1 0 4 mm 2 ) 移相量 (度) インダクタ 伝送線路 移相量:大 移相量:小 伝送線路 (設計精度) インダクタ (面積小)1ch 送受信回路 (ISSCC2009)
1 .2 m m 2.4 mm ブロック図 チップ写真 X2 Pdiss 920 mW PA LNA Mixer VCO 送信部 - 出力パワー : 3.3 ~ 6.3 dBm - 消費電力 : 390 mW 受信部 - 変換利得 : 2±1.5 dB - ノイズ指数(LNA) : 6.8 dB (@77 GHz) - 消費電力 : 260 mW 基準信号発生部(VCOのみ) - チューニングレンジ : 73.5 ~ 77.1 GHz - 位相雑音 : -83 dBc/Hz(@1 MHz離調) : -63 dBc/Hz(@100kHz離調) - 消費電力 : 270 mW77GHz低雑音増幅器 (APMC2011)
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Gain: 9.4 dB @77GHz Power dissipation: 9.7 mW Area: 600 x 700 mm2 IN OUT NF: 6.7 dB @77GHz -40 -20 0 20 40 60 80 100 Frequency (GHz) S21 , S 1 1 , S22 ( dB ) S21 S11 S22
PLLシンセサイザ(APMC2012)
1 .1 m m 1.6 mm X2 Phase Detector Frequency Dividers Mod. Controller 49 MHz 水晶発振子 ブロック図 チップ写真 変調波形 81G 76G 雑音特性 Pdiss 253 mW -84.2(@100kHz)、-84.9(@1MHz)GND分離設計
GNDからの雑音抑制
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PD Ref 1/N
Noise
Digital Signal Distributor 分周器 出力 VCO アイソレーショントランスフォーマーPLLシンセサイザ(EuMIC2013)
ミリ波 発振器 今回開発した カスケード型 位相差検出回路 基準信号源 分周器 周波数 2逓倍回路 1.5 mm 1. 0 m m (nc = 6) 1/(128 to 144) 40-GHz 発振器 周波数 2逓倍回路 CMOS 回路 80 GHz 294 MHz 分周信号 49-MHz 基準信号源 分周器 カスケード型 位相差検出回路カスケード型位相差検出回路
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位相差 検出回路 分周器 ミリ波発振器 ミリ波信号 基準発振器 (水晶) 比較信号 差信号 基準信号 フィードバック フィルタ 位相差 検出回路 遅延 回路 位相差 検出回路 遅延 回路
複数の位相差検出回路
を用いた新しい回路構成
比較信号 基準信号 差信号 位相差検出回路が発生する雑音 基準信号の一周期あたりの比較回数を増 やすことにより、位相差検出回路が発生す る雑音に対して比較結果の差信号を大きく できる。 雑音の影響低減ミリ波信号の雑音特性(位相雑音)
位相差検出回路 が発生する 雑音を抑制 オフセット周波数 100Hz 1kHz 10kHz 100kHz 1MHz 10MHz 位相 雑音 [d B c /H z ] 基準信号 APMC2012 EuMIC2013 信号の周波数 信号 パ ワ ー周波数変調特性(実測)
UWB operation with 5-GHz modulation
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76.0 GHz
81.0 GHz
BW = 5 GHz
UWB FMCW synthesis was realized covering
both 77-GHz band and 79-GHz band
Time
Frequency
高出力増幅器 (EuMC2012)
INCombiner: 0.8 x 2.1 mm
2Total: 2.4 x 3.1 mm
2CMOS
OUT PA Module (single PA) PA module (4 PAs) @77 GHz 5.5 dBPin-Pout
PAと再配線実装技術
SoC
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on PCB board
PCB
PA PA CMOS 小型(L/S < 1 mm) 導体損(配線が薄いため) 薄膜配線、絶縁体 Line/Space > 100 mm モジュールサイズ大
WLP
CMOS 低損失 小型再配線によるウエハレベルパッケージ
再構成されたウエハ
6 inch
再配線
モールド樹脂
CMOS PA
デバイス A
デバイス C
デバイス B
2層再配線
ミリ波レーダ間の干渉シミュレーション技術
異なる形式のミリ波レーダ間の干渉をシミュレーション
車載レーダとインフラレーダ間の干渉を回避する手法を開発
• 総務省委託研究「電波資源拡大のための研究開発」で開発中
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SSレーダーによるFM-CWレーダーへの干渉 (干渉波の帯域内への影響は殆ど無い) FM-CWレーダー間での干渉発生状態 FM変調の位相をずらして干渉を回避 (受信帯域(赤枠)内の干渉(青線)が低減) FM-CWレーダーによるSSレーダーへの干渉 (干渉波は時間的にランダムに変動) 31 (2013年10月30日プレスリリース)
79GHzレーダーの開発(ITS世界会議2013)
周波数帯域の広さ(最大4GHz)を生かして、距離分解能を向上
76GHzレーダーでは1~2m程度の距離分離性能であったのを、79GHzレー
ダーでは20cm程度まで向上させることが可能に