財団法人 日本サッカー協会
特集①
AFC U-17選手権 シンガポール2006
U-16日本代表、12年ぶりにアジア制覇
特集②
第61回国民体育大会
少年の部がU-16化、新たなスタート
小野剛技術委員長、上田栄治女子委員長対談
2006ナショナルトレセンU-12 スタート
Technical
news
Vol.16
特集①
AFC U-17選手権
シンガポール2006
特集②
第61回国民体育大会 少年の部
小野剛技術委員長、上田栄治女子委員長対談
2006FIFAワールドカップドイツ
JFAテクニカルレポート(GK編)
2006ナショナルトレセンU-12 スタート
連載 キッズドリル紹介・第11回 連載 What's 8対8 連載 一語一会 活動報告 目指せ世界のトップ10 GKプロジェクト活動報告 2006 U-18/U-15 GK・U-15ストライカーキャンプ JFAアカデミー福島活動報告 U-15日本女子代表、始動 「めざせクラッキ! ボールはともだち」イベント開催 各地のユース育成の取り組み 新連載 育成の現場をたずねて… JFA公認指導者研修会報告 連載 My Favorite Training 年代別指導指針⑮ JFAテクニカルスタディ JFAフィジカルフィットネスプロジェクト 連載 スポーツの社会科学 連載 審判員と指導者ともに手を取り合って… 技術委員会刊行物・販売案内A MEETING PLACE FOR READERS AND JFA
T
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chnical
news
vol.16
①U-16日本代表(AFC U-17選手権 シンガポール2006)© Jリーグフォト(株) ②第61回国民体育大会 少年の部決勝より © Jリーグフォト(株) ③「めざせクラッキ!ボールはともだち」イベントより © Jリーグフォト(株) ④2006ナショナルトレセンU-12 東海より © AGC/JFAnews ○発行人:小野 剛 ○監 修:財団法人日本サッカー協会技術委員会 ○発行所:財団法人日本サッカー協会 ○制 作:財団法人日本サッカー協会テクニカルハウス ○制作協力:エルグランツ(株) ○印刷:製本:サンメッセ(株) ※本誌掲載の記事・図版・写真の無断転用を禁止します。 本誌はJFA指導者登録制度において、所定の手続きを行ったJFA公認指導者の方に無償で配布されています。 2 50 7 1 0 57 1 4 1 6 1 7 1 8 20 22 28 30 3 1 32 36 37 38 40 42 44 46 48 60 62 1 2 3 42005年1月のチーム立ち上げ当初から打 ち出してきたチームコンセプト(表1)を追 求しながら幅広く選手を発掘する、という チームづくりを1次予選(2005年11月)以 降も継続した。2006年3月までは中学3年生 が受験期に入り、まとまった活動がなく、 新しい選手の発掘が非常に難しい状況であ った。スケジュールから逆算し、遅くとも 2006年6月あたりまでに発掘は終えておか ないとチームへの合流が難しいと考えてい たため、従来のメンバーと新メンバーとい う組み合わせで2つのグループを編成してフ ランス遠征(モンテギュー国際大会)、イラ ン遠征を行った。 また、6月末にはチーム活動および国体強 化試合の視察から新たにピックアップした
【報告者】城福 浩(U-16日本代表監督)
16歳以下のアジアナンバー1を決する大会「AFC U-17選手権」が2006年9月3日∼17日、シンガポ
ールで開催され、U-16日本代表が12年ぶり2度目の優勝を果たしました。また、FIFA U-17ワールドカッ
プ(2007年8月18日∼9月9日/韓国)の出場権を3大会ぶりに獲得しました。
AFC U-17選手権 シンガポール2006
U-16日本代表、12年ぶり2度目のアジア王者に!
2007年FIFA U-17
ワールドカップ出場権獲得
1.AFC U-17選手権 1次予選以降 ∼最終予選の取り組み 12年ぶり2度目のアジア制覇を成し遂げたU-16日本代表© Jリーグフォト㈱ 表1.チームコンセプト 表2.AFC U-17選手権 1次予選以降の記録活動 イニシアティブを握るために Mobility (モビリティ) 人とボールが動く 状況に応じたサポート 攻守の切り替え ダイナミックな動き 世界基準に Aggressive (アグレッシブ) ボールを奪いにいく&ゴールを奪いにいく 判断することを恐れない アクションを起こすことを躊躇しない 起こしたアクションに周囲が反応する 流通経済大学West、 Middle West、 U-16USA-South、U-15スペイン代表 清水エスパルスユース、清水東高校、ジュビロ磐田ユース U-16ポルトガル代表、U-16コートジボワール代表、U-16 イタリア代表、U-16イングランド代表 U-16イラン代表、U-16シリア代表、U-16サウジアラビア 代表、U-16イラク代表、U-16中国代表 草津東高校、阪南大学、びわこ成蹊大学 前橋育英高校、尚美大学 U-16チェコ代表、U-16アメリカ代表、U-16韓国代表 U-16北海道代表、ミュンヘン1860(ドイツ)、コリンチャ ンス(ブラジル) アメリカ 静岡(Jステップ) フランス(モンテギュー) イラン 滋賀 埼玉 愛知(豊田) 北海道 福島(Jヴィレッジ) 大会 キャンプ 大会 大会 キャンプ キャンプ 大会 大会 キャンプ 7日間 6日間 12日間 15日間 7日間 5日間 7日間 6日間 6日間 2005年12月 2006年 3月 4月 5月 5月∼6月 6月∼7月 8月
メンバーを加え、最後の発掘キャンプを実 施し、7月のキャンプ、8月の2つの国際大 会(豊田国際ユース、北海道国際ユース) でチームづくりと最終予選メンバーの選考 を行った(表2:1次予選以降の代表活動)。 各々の活動は個人のレベルアップ、チー ムとしての経験になったが、特に最終予選 という観点から見た場合、5月のイラン遠征 は大変有効なシミュレーションとなった。 アジアの強国、しかも普段接することのな い中東を知ることができたことにより、自 分たちが最終予選を戦っていく上でのイメ ージが作れたことは大きかった。今年に入 って大学とも何度か練習試合をやっていた だいたが、自分たちを上回るスピード、パ ワーに接していたことが、朝鮮民主主義人 民共和国(DPR KOREA)との決勝戦に役 立ったと感じている。チーム強化にご協力 いただいた大学、高校、Jクラブユースチー ム関係者にあらためて感謝したい。 また、国体のU-16化に伴う各県の強化が 本格化してきた4月以降でピックアップした 選手が最終メンバーに残ったことは、われ われも予想していないことであった。U-15、 16年代の取り組みが各県の努力によりさら に充実していくであろう今後は、各都道府 県の育成強化から代表へという流れが出て くることを予感させるものであった。 ①チームコンセプトである「人とボールが動 く」「ボールを奪う」「セットプレーを早く する」を追求する ⇒これまでやってきたことを表現すること、 自分たちの強みを出すことが、最大のアジ ア対策と考えていたため ②1人が2つ以上のポジションをこなす ⇒大会期間中のアクシデント(けが、出場停 止等)に対応する。また、メンバーを変え ずに戦い方に変化を持たせるため ③システム、組み合わせのオプションを持つ ⇒対戦相手の強みを消す。弱点を突くための マイナーチェンジをしながら自分たちの強 みを出し続けることを可能にするため ④レギュラーを固定しないチームづくり ⇒競争意識を刺激し全体のレベルアップを図 ろうとしたため。特定の選手の調子に左右 されないチームづくりを目指したため ほとんどの選手がけが以外の問題を抱え ずに心身ともにフレッシュな状態で合流し てくれた。所属チームの配慮に感謝したい。 大会を戦っていく中で、原則チョイス不可 能な選手がいなかったため、試合のクオリ ティや相手に集中することができた。また 所属チーム関係者、シンガポールのアルビ レックスSなど、さまざまな方々の現地で のサポートがチームにとって力になった。 Jヴィレッジキャンプでは最終メンバーに 残ったという選手の安堵感から始まり、け がによるメンバー変更、シンガポール入り してからの体調不良やけが、その他細かな ことを含めて試合以外のさまざまなことに 直面した。そのたびにスタッフが各々の持 ち場でプロフェッショナルな仕事をしたた めにアクシデントをチーム結束の糧にでき た。あらためてスタッフワークの大切さを 痛感した。 また、これまで最終予選を経験した監督、 コーチが身近にいたことにより、さまざま な話を聞けていたことが自分自身の精神的 な準備にもなった。 (1)チームの特徴 スイーパーシステムの守備 シリア、タジキスタン、イラク、イエメ ン等 コンパクトを意識した守備 日本、韓国、サウジアラビア、中国、 DPR KOREA、シンガポール等 ポゼッションで主導権を握ることを目指す 攻撃 日本、韓国、イラン、ネパール、サウジ アラビア等 リトリートして速攻を狙う攻撃 DPR KOREA、中国、タジキスタン、シ ンガポール等 (2)会場、時間 ①ジャランベサルスタジアム(人工芝)と ビシャンスタジアム(天然芝)の2会場 ②17:00キックオフ(気温30∼32℃、湿度 90%前後)と20:00キックオフ(気温26∼ 7℃、湿度85%前後)で消耗度には相当な 差があった。 (3)組み合わせ、結果 ※上表参照 2.日本の戦い方 (大会に向けての準備) AFC U-17選手権 シンガポール2006 ■グループリーグ ■決勝トーナメント ■3位決定戦 グループA 韓国 日本 ネパールシンガポール勝点 勝 分 敗 得点 失点 差 順位 韓国 日本 ネパール シンガポール 3 ○ 2 0 ● 2 1 ● 3 2 ● 3 0 ● 6 1 △ 1 2 ○ 0 6 ○ 0 0 △ 0 3 ○ 1 1 △ 1 0 △ 0 6 7 1 2 2 2 0 0 0 1 1 2 1 0 2 1 7 10 0 2 4 3 8 4 3 7 -8 -2 2 1 4 3 グループB PK8-7 1 1 2 1 2 0 4 2 3 0 1 2 1 0 延長 延長 優勝:日本 イラン イラク タジキスタンイエメン勝点 勝 分 敗 得点 失点 差 順位 イラン イラク タジキスタン イエメン 0 △ 0 2 ○ 1 0 ● 1 0 △ 0 1 ○ 0 1 △ 1 1 ● 2 0 ● 1 3 ● 4 1 ○ 0 1 △ 1 4 ○ 3 4 2 9 1 1 0 3 0 1 2 0 1 1 1 0 2 2 1 7 4 2 2 4 6 0 -1 3 -2 2 3 1 4 グループC DPR KOREAミャンマー サウジアラビア 勝点 勝 分 敗 得点 失点 差 順位 朝鮮民主主義 人民共和国 ミャンマー サウジアラビア 2 ● 6 2 ○ 1 6 ○ 2 5 ○ 0 1 ● 2 0 ● 5 3 0 6 1 0 2 0 0 0 1 2 0 7 2 7 4 11 1 3 -9 6 2 3 1 グループD 中国 バングラデシュ ベトナム シリア 勝点 勝 分 敗 得点 失点 差 順位 中国 バングラデシュ ベトナム シリア 0 ● 5 3 △ 3 0 ● 1 5 ○ 0 2 ○ 0 7 ○ 0 3 △ 3 0 ● 2 2 ○ 0 1 ○ 0 0 ● 7 0 ● 2 7 0 4 6 2 0 1 2 1 0 1 0 0 3 1 1 9 0 5 9 3 14 5 1 6 -14 0 8 1 4 3 2 日本 イラン PK5-4 2 2 シリア タジキスタン シリア サウジアラビア 中国 朝鮮民主主義人民共和国 タジキスタン 韓国 グループリーグ第3戦vsU-16韓国代表より© Jリーグフォト㈱ 3.大会概要
(4)トピックス ①タジキスタンの快進撃・・・イラン、イラク、 イエメン、韓国を破る。 ②ネパールのポゼッション・・・ポゼッション により主導権を握りうるスキルと握ろう とする意欲を持ち合わせていた。 ③拮抗した準々決勝・・・日本1-1イラン(延 長PK)、シリア2-1サウジアラビア、DPR KOREA2-1中国(延長) 、タジキスタン1-0韓国 ④オーバーエイジ対策・・・ラオス不参加、各 チーム指名された選手がMRIを撮る。 グループリーグ第1戦 日本 6-0 ネパール ネパールの技術がハイレベルであること はトレーニングを見て認識していたが、試 合でどれだけやるかは未知数のままで臨ん だ。 ネパールのポゼッション力は驚きであっ たが、相手がゴールに近づき、時間とスペ ースが少なくなった中で打開するまでの技 術はなかったので、日本は失点せずにすん だ。日本はチャンスに確実に得点できたの で大差がついたが、ゲーム自体は点差ほど 差のあるものではなかった。 グループリーグ第2戦 日本1-1 シンガポール 地元シンガポールのオーガナイズされた 守備陣形をなかなか崩せなかった。決定的 なシーンも相手の身体を張ったプレーで決 められず、レフェリーのジャッジの基準に 戸惑いながら時間が経過していった。精神 的な焦りが助長され、自分たちのサッカー を見失うという典型的な試合であった。終 了間際にPKを取 られ同点とされ たが、試合の流 れからして、負 けてもおかしく ない試合であっ た。 グループリーグ 第3戦 日本 3-2 韓国 自力で準々決勝に進出するには引き分け 以上が必要な試合となった。第2戦の反省か ら今まで取り組んできたことを追求するこ とを確認して試合に臨んだ。 この試合でイエローカードをもらうと累 積警告のため次の試合(準々決勝)に出場 できなくなることも念頭に置きながらのメ ンバー編成であったが、相手に自由にプレ ーさせない守備、イニシアチブをとる中盤、 ゴールへの意識と今大会で最高レベルのチ ームパフォーマンスを発揮できた。 準々決勝 日本 1-1 PK 8-7 イラン 勝てば2007年FIFA U-17ワールドカップ出 場が決まる特別な重圧のかかった試合であ った。対戦相手のイランはグループリーグ ではチームとして本調子ではなかったが、 個人の力はトップレベルであった。 自分たちのサッカーをやるベースの中で いかに相手の強みを消して弱みを突くか、 をこれまで以上に強く意識して臨んだ。前 半と後半でマークのとり方を変更しながら、 守備はほとんどペナルティーエリア内に入 れずにゲームを運べたが、1つのミスで同点 に追いつかれた。90分の中で2点目を奪う チャンスが何度かあったにもかかわらず、 加点できなかったことも延長戦、PKまでも つれ込んだ大きな要因であった。PK方式は 12人目で決着がついたが、日本が先行だっ たため、失敗した4本のうち3本がイラン選 手が決めたら終わりというシーンがあった。 PKには5月のイラン遠征時に撮ったビデオ からの情報をGKに渡して臨んだが、それ以 前にGKがPK対策としてトレーニングして いたことが有効であった。 準決勝 日本 2-0 シリア 世界の切符をかけて戦うという特別な重 圧から解き放たれた後の試合ということも あり、コンセプトの追求を前面に押し出し て臨んだ。 中東特有の直線的にボールにアタックに 来る守備、ルーズボールの強さがあるシリ アに対して中盤は支配するもののアタッキ ングエリアで潰されて苦しんだ。後半相手 の深いディフェンスによってできたギャッ プにボールがしっかり収まり始め、前向き でスピードアップしてゴールに向かう場面 が増え、2点を奪うことができた。 決勝 日本 4-2(延長) DPR KOREA DPR KOREAは、半数程度が同じカテゴ リーとは思えないフィジカルの強さを持っ ており、技術的にしっかりしてアイデアの ある選手とのコンビで最少人数でフィニッ シュまで持っていく力があった。 前半相手に2点先取されたが、ポゼッショ ンからフィニッシュまで、という自分たち の形はつくれていた。後半さらに相手を縦、 横に広げるような人とボールの動きがある 程度続けられたため、得点機を多くつくれ るようになった。延長戦に入ってからも自 分たちがイニシアチブをとって進められて いたため、相手より疲労感は少なく動きき ることができた。 グループリーグ第2戦vsU-16シンガポール代表より© Jリーグフォト㈱ 4.日本戦大会経過
成 果
相手を近くでつかむこと ボールを奪いに行く意識 セットプレーで相手の隙を突く、相手 を休ませない 主導権を握るポゼッション お互いのコミュニケーション 得点を多く取れたこと課 題
ポジションが深すぎる場面もあり、す べての場面で切り替えが早かったわけ ではない ディフェンスライン、中盤でもっと楽に 動かせた場面あり アタッキングエリアでの精度 ・ドリブルしている選手が選択肢を持つ ・周りの選手がより選択肢を持たせる ・相手がいる中での技術の精度 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 開催年 1985 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 開催地 カタール カタール タイ UAE サウジアラビア カタール タイ カタール ベトナム UAE 日本 シンガポール 優勝 サウジアラビア 韓国 サウジアラビア カタール 中国 日本 オマーン タイ オマーン 韓国 中国 日本 2位 カタール カタール バーレーン UAE カタール カタール タイ カタール イラン イエメン DPR KOREA DPR KOREA 3位 タイ・イラク サウジアラビア 中国 中国 サウジサラビア オマーン バーレーン バーレーン 日本 中国 カタール タジキスタンAFC U-17選手権・過去の主な成績
5.大会での日本の成果と課題昨年1月の立ち上げ時から総勢140名あま り招集した候補選手は、Jリーグ下部組織、 地域クラブ、中体連と育った環境は多岐に わたる。彼らがお互いに切磋琢磨していく 中でレベルアップしていき、中学3年生だっ た者はJユースや高校に進み、さらに違う環 境で頭角を現す選手が出てくるという、ま さに育成年代の変化を目の当たりにした1年 9カ月であった。その中で今回の代表チーム がチームとしてレベルアップした大きな要 因と思われることを一つ挙げたい。 この年代は彼らから見た「うまい選手」 を特別な存在として、彼らのやり方で尊重 する傾向がある。しかしそれは必ずしも全 員に対しての公平なものではなく、チーム としてプラスにならない場合が多い。事実、 このチームもそうであった。代表活動の中 でチームとして良いプレー、良くないプレ ーを公平に伝え続けていく中で、選手各々 のレベルアップやチーム内競争を経て、公 平と尊重の基準が選手自身の中で変わって きた確信があった。故にお互いに要求し合 える雰囲気ができてきて、特別な存在と扱 われていた選手とチームメイトの関係に変 化が出てきたことが双方に良い方向に働き、 チーム力のアップにつながっていったと感 じている。 140名あまりの選手たちはジュニア年代、 ジュニアユース年代、ユース年代とそれぞ れに情熱を持った指導者に接し、しっかり したサッカーへの姿勢を持って代表という 場で挑戦していた。今回シンガポールに行 ったのは21名だったが、彼らが勝ち取った 世界への切符は一緒に切磋琢磨した仲間の ものであり、育成年代に携わっている指導 者全員のものである。あらためて高校、中 学、Jクラブ、地域クラブ、地域のトレセン コーチの方々、そして礎を築いたジュニア の指導者に感謝するとともに次の目標に向 かってお互い切磋琢磨したいと思う。 来年8月のFIFA U-17ワールドカップ(韓 国)で日本の良さを全面的に出したチャレ ンジングな試合をすること、その上で1試合 でも多くの試合をすることが目標である。 それにはさらなる人材発掘、個人のレベル アップが必要であることは明白であり、所 属やトレセンスタッフと連携をとりながら 選手の成長を促していきたいと考えている。 引き続きご協力のほどよろしくお願いいた します。 (1)8月23日∼28日/Jヴィレッジ 事前キャンプ (2)8月29日∼9月17日/シンガポール AFC U-17選手権(大会期間:9月3日∼17日) 廣永遼太郎(FC東京U-18)、原裕太郎(サ ンフレチェ広島ユース)、大畑拓也(ジュビ ロ磐田ユース)の3名。 チームとして、FIFA U-17ワールドカップ (2007年韓国)のアジア予選を兼ねたAFC U-17選手権で、世界大会への出場権獲得と、 この大会での優勝を目標に掲げた。そのた めに、われわれが継続してきた「人とボー ルが動くサッカー」に取り組んだ。その上 で、GKはGKプロジェクトが取り上げてい る育成年代のGKが意識すべき3つのテーマ 「積極的なゴールキーピング」「良い準備」 「DFとの連携」に加えて、本大会でもこれ までと同じように『効果的な攻撃参加』を テーマに掲げた。 また、技術的な部分のテーマに関しては、 これまでと同様にシュートストップ、クロ スの守備での「つかむか、弾くかの判断」 の精度向上に取り組んだ。FIFA U-17ワール ドカップと同様に、今回のAFC U-17選手権 でも人工芝のピッチが試合会場に使用され た(日本はすべての試合を人工芝で行った)。 特に東南アジア特有のスコールと人工芝と いう条件でGKにとって難しいことが予想さ れ、この判断を伴う技術の精度向上に取り 組んだ。 大会に臨むにあたり、まずJヴィレッジで 選手の心身にわたるコンディションを整え ることと、チームとして最終的な確認を行 うために8回のトレーニングと、流通経済大 学との練習試合を行った。トレーニングで はシュートストップ、クロスの守備での 「つかむか、弾くかの判断」を重点的に行っ た。また、大会での大きな鍵となるリスタ ートでは、CKやFKの守備を確認しつつ、豊 田国際ユース大会から取り組んでいるPKも チームがキッカーのトレーニングを行う際 に取り組んだ。 PKの守備に関してはGKプロジェクトが 作成したPK場面を集めた映像をGKミーテ ィングで見せ、キッカーの利き足、ポジシ ョン、助走の距離、角度、スピードにより、 PK練習の際にコースの予測を立てるトレー ニングを行った。 ①8月27日、Jヴィレッジ人工芝ピッチ(35 分×3本) 2-3(1本目0-1、2本目1-1、3本目1-1) 流通経済大学Bチーム GK 1本目:廣永、2本目:原、3本目: 大畑 大学生の中でもトップレベルの流通経済 大学との練習試合では、攻守にわたる素早 い切り替えと、アプローチやパススピード の速さ、強いボディコンタクトを人工芝の ピッチ上で体験できたことが良い経験とな った。 ②8月30日、(20分×2本) 0-0 アルビレックスシンガポール GK 廣永20分、大畑、原 各10分 8月29日にシンガポールに移動した。こ こでは、開幕戦までの5日間で5回のトレー ニングを行った。また、その中で開幕3日前 に、試合会場であるジャランベサルスタジ アムでアルビレックスシンガポールと20 分×2の練習試合を行った。この練習試合で は、日本より球の走る堅い人工芝ピッチで の試合に慣れることと、アルビレックスシ ンガポールの早いプレッシャーの中でどれ だけ自分たちのサッカーができるかにチャ レンジした。GKもスリッピーな人工芝での シュートストップや、フィールドプレーの 難しさを体験できたことは、本番に向けた 良い準備となった。 (1)グループリーグ ①9月3日 6-0 ネパール GK:廣永 初戦のネパール戦はスコアこそ6-0という 大差がついたが、試合内容は決して大勝で はなかった。GKもなかなかプレーする機会 がない中、ボールが来たときはピンチとい う難しい試合だった。 ②9月5日 1-1 シンガポール GK:廣永 大会のホスト国のメンツにかけて大敗を 6.おわりに 1.期間 4.直前の準備 6.AFC U-17選手権 5.練習試合 3.大会でのテーマ 2.参加GK GK報告 【報告者】川俣 則幸 (U-16日本代表GKコーチ)
GK報告
【報告者】川俣 則幸 (U-16日本代表GKコーチ) PK対策の練習から避けたいシンガポールは、3ラインをきっち り形成しリトリートした形でゴール前を厚 くする守備でなかなか日本にゴールを割ら せなかった。逆にシンガポールの徹底した 守備からのカウンターに日本がひやひやす る場面が見られた。特に後半19分に相手FW に走られ、GKがペナルティーエリア外で身 体を止めたシーンは、レフェリーはファウ ルをとらなかったが、警告を受けても仕方 がないプレーだった。 ③9月7日 3-2 韓国 GK:廣永 決勝トーナメント進出をかけて宿敵韓国 との戦いでは、先制するが追いつかれると いう展開で、大会に入って初めて互いに攻 め合う試合となった。 GKも守備機会が増え、シンガポール戦で できていなかったメンタルコントロールの 成否が勝負の鍵となった。失点場面は相手 FW⑨のシュートがうまかったこともあり、 この年代のGKではストップすることは難し かった。そうした中、失点で動揺せず、1試 合を通じて安定したプレーを継続できたこ とが大会を通したパフォーマンスの安定に つながった。 (2)決勝トーナメント ①1回戦 9月11日 1-1(PK8-7) イラン GK:廣永 決勝トーナメント1回戦、FIFA U-17ワー ルドカップの出場権をかけてイラン代表と 戦った。5月のイラン国際ユース大会では、 今回とはメンバーが違うとはいえ、3-4で敗 れている相手。GKは、これまで試合前のウ ォーミングアップでのパフォーマンスもあ まり良くなく、試合でのプレーにもやや不 安の残る状態だったが、この試合のアップ では今までで一番良いパフォーマンスを見 せ、しっかり準備ができていることが見て 取れた。実際に試合中のプレーも、課題で あったDFとGKの間のボールのジャッジな どもしっかり行い安定していた。 惜しいことには後半終了間際、失点につ ながるDFの連携の部分で明確な強い指示の 声がほしかった。結局、30分の延長戦でも 決着がつかずPK方式となった。ここでは5 月に日本も参加したイラン国際ユース大会 でイランのキッカーの特徴をデータとして 持っていたことに加えて、PK方式に向けて 継続的な準備を行ってきたことが勝敗の鍵 となった。 ②準決勝 9月14日 2-0 シリア GK: 廣永 世界の切符を手に入れたこと、相手が予 想していたサウジアラビアでなかったこと、 連戦の疲労などにより、立ち上がりからペ ースの上がらない難しい試合となった。な かなかゴールを奪えず、攻めきれない中、 GKも守備陣とともによく集中力を持続して プレーできたことが無失点、そしてチーム の勝利につながったと言える。 ③決勝 9月17日 4-2(延長) DPR KOREA GK廣永 今回の台風の目となったタジキスタンを 3-0と撃破し、この16歳としては驚異的なパ ワーとスピードを誇るDPR KOREAとの対 戦。決勝に先立って行われた3位決定戦が延 長、PK方式にもつれ込んだ関係で、ピッチ でのアップはもとより屋外でのウォーミン グアップができない状況でキックオフを迎 えた。5月のイラン国際ユースでも同様の経 験があったので、選手たちに動揺は見られ ず、できる範囲のことをしっかりやって試 合に臨めたが、その立ち上がり、雨上がり のスリッピーなピッチと相手の鋭い出足に 慣れる前にミドルシュートを2本決められ、 非常に不利な立ち上がりとなってしまった。 しかし、ここで精神的に切れずに集中力を 持続させて3点目を取られなかったことが、 その後の反撃での同点、さらに延長戦で2点 を挙げて4-2での勝利につながった。この試 合でのGKのプレーは終始安定していた。 (1)成果 まず、タイトルをかけた真剣勝負6試合で 負けなかったこと。そして失点を6に抑えら れたことは評価できる。またさまざまなプ レッシャーの中、常に試合に出続け安定し た精神状態で臨めたことは大きく評価でき る。その上で、これまで取り組んできたこ とを、いつもと同じように試合の中で積極 的に発揮していくことに、トライする姿勢 を持ち続けられたことも評価できる。 技術的な部分ではシュートストップでの 「つかむ・弾く」の判断は、試合の中でもし っかり発揮できていた。他国のGKがこぼれ 球から失点をする場面が見られたが、日本 にはそういったシーンは見られなかった。 試合に出場はできなかったが第2GKの原、 そしてバックアップメンバーに回った大畑 の2名は常にポジティブな態度でトレーニン グに臨み、チームの縁の下の力持ちになっ てくれた(この2名以外はすべて試合出場し た)。 表彰式にはADの関係でピッチに降りられ なかった大畑を、表彰式後にチーム全員が ピッチに迎え、城福監督から金メダルを首 にかけてもらって皆で喜び合った姿が印象 的であった。 (2)課題 試合の流れに応じたプレーがまだまだで きていないこと。特に大会序盤では、チー ムにとって有効なプレーは何かという認識 が薄く、時としてピンチを招いていたこと は今後の課題である。 また、時間帯を考えたディストリビュー ションの判断、DFラインとGKの間にラフ に蹴りこまれたボールに対してのジャッジ、 リスタートにおける相手選手の変化への対 応などがまだまだ不十分である。これらは、 フィールドプレーヤーのほとんどが所属チ ームの主力として主要な大会に出場してい るのに対し、GKは3名ともレギュラーポジ ションを獲得できず、試合経験を積めてい ないことも影響していると考えられる。 また、技術的にはクロスの守備ではつか むか弾くかの判断がまだまだ甘く、コンタ クトプレーの際にレフェリーの笛に助けら れている場面もあった。以上の課題には今 後も継続的に取り組み、来年8月の世界大会 に向けてさらなるレベルアップを図りたい。 決勝トーナメントに残った8チームは比較 的安定したGKを配していた。目立った1人 はシリアのGKで、身長は170㎝後半で絶対 的な高さはないが、ポジショニングと判断 が良く、日本戦ではシュートストップ、ク ロスの守備で高い守備能力を見せた。もう1 人はイランのGKで、身長は184㎝程度で、 日本とのPK戦では実に5本のシュートをセ ーブした(このうち2本は早く動いたとの判 定でやり直しになった)。 他国のGKも高さはないがバランスの取れ たGKを起用する傾向にあり、190㎝台のGK を起用する世界のトップクラス(2005年 FIFA U-17世界選手権など)とは、歴然とし た差が存在する。そうした中で184㎝の廣 永は高さとキック力を武器に、今大会でも トップクラスのパフォーマンスを見せたGK の1人であった。 7.成果と課題 8.トピックス 他国のGK 決勝トーナメント・準々決勝vsU-16イラン代表より© Jリーグフォト㈱ 決勝トーナメント・決勝vsU-16DPR KOREA代表より© Jリーグフォト㈱
小野 私は1998年FIFAワールドカップ後、 ユースの代表とユース育成ダイレクターを 任されていましたが、そのときに多くの 方々と将来ビジョンの青写真を描いていま した。その後、JFAを離れている4年間に、 当時の青写真がかなり具現化されました。 これはJFAの取り組みもありますが、むし ろ各地域の方々や学校の先生、クラブ関係 者など、日本中の多くの方々の情熱が成就 させた成果だと感じています。この4年間の 成長は大きかったので、率直に驚きでした。 上田 私はなでしこジャパンの監督をして (2004年9月退任)、その後約2年、JFAから 離れていましたが、小野技術委員長が言っ たように、技術委員会の活動もかなり当時 と変わってきたなという感じがしました。 女子委員会の中でもスーパー少女プロジェ クトなど、いろいろな改革が行われてきま した。 また、なでしこリーグ(L・リーグ/日本 女子サッカーリーグ)でも多くの観客が足 を運ぶようになり、関心の高さがうかがう ことができます。TEPCOマリーゼの試合で は、多いときに1万人もの観客が集まると聞 いています。 それとやはりJFAアカデミー福島が開校 したことには非常に驚かされました。 小野 まず、今回の2006FIFAワールドカッ プ ドイツで少しもやもやした雰囲気があっ たということは認識しています。しかし、
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前 編
これからは「打って出る」
。
そうしないと世界のトップ10には
なれない。
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©Jリーグフォト㈱ ©Jリーグフォト㈱ ―小野技術委員長は4年ぶり、上田女子委員 長は2年ぶりにJFAへ戻られましたが、この間 日本サッカー協会(JFA)ではいろいろな変化 がありました。お二人がJFAへ復帰されて驚い たことなどがあればお聞かせください。 ―日本サッカーは代表チームに象徴されるわ けですが、現在の世界における日本の位置、そ して今後どのような方向に進んでいくのか、ど のような方向へ持って行きたいか、お二人の意 見をおうかがいしたいと思います。“世界”から見た日本への視点は少し異なる のです。今年9月にFIFAとUEFAのカンファ レンス(各国代表の監督、テクニカルダイ レクターが参加)に行ったとき、「これだけ 短いスパンでよく成長した。サプライズな 国」と多くの方から話しかけられました。 日本は、世界の中で近年急激に伸びた国と いうふうに認識されているのだと感じまし た。 これは今まで日本が“世界”を分析し、 その内容を代表チームだけではなくユース 育成、指導者養成等を通じて共有し、日本 全体で地道に取り組んできた一つの成果だ と思うのです。ただ、世界のトップをベン チマークし、各国の育成システムやサッカ ーそのものに対して何とか「追いつこう」 とがんばってきたのですが、それだけだと 限界が見えてしまう。背中が見えて追いつ くところまでは、スピードアップして他の 国が100年かかるところを20年でできるか もしれない。しかし、JFAが「世界のトッ プ10」を目指すのであれば、世界のトップ を「追い越す」気持ちがなければ、絶対に その壁を突き破れないと思うのです。 これからは、「打って出ていく」というこ とが必要になります。「打って出る」とはど ういうことかというと、「こういうところが 足りないから、それをどう補おうか」とい うことではなく、「俺たちはすばらしい、俺 たちは日本人だ」という誇りを持つという ことです。サッカーに限らず、日本人がト ップになった分野には、何らかの必然がそ こにあるわけなのです。われわれはそうい うことを成し遂げられる民族だという誇り を持って、そこを生かして「打って出る」 ということを、ここから先の大きな流れに していかなければいけないと思います。 上田 女子は現在FIFAランキングで13位 (2006年11月1日現在)ですが、これは妥当 だと思いますし、トップ10というのは、手 の届くところにあると感じています。 ただ、女子の場合、トップ10で満足する のではなく、世界大会に出場したらベスト4 を目指す、それくらいの意気込み、目標を 持っていいのではないかと思います。これ から、なでしこジャパンの戦いぶりを見て、 さらなる目標を掲げたいと思います。 小野 これに関して二通りあります。一つ は現在の代表チームでこの先、「打って出て いく」、つまりは日本人の良さをとことん出 していくという意味では、現在、オシム監 督がじっくり考えて日本代表チームを一歩 ずつ育ててくれています。ですから、オシ ム監督の持っている考えや情報をできるだ け引き出せる周辺の環境、人的な環境を整 えることが大切です。Jクラブとの連携やマ ッチメイクの方法なども含めて、さまざま な部分でコミュニケーションが図れるよう に環境を整えていきたいと思います。 もう一つの要素として、「代表を集めて、 いざ強化」だけでは絶対に世界には勝てな いし、打って出るというのは言葉だけにな ってしまいます。日本代表チームとできる だけ同じ方向性を持ちながら各カテゴリー の代表選手たちを育てていきたい。それと 同時に、そこからすそ野を広げてユース育 成についても、指導者の皆さんの情熱を一 つにして、最後は大きな流れになるように 代表チームを後押しできるようにしていき たいと考えています。とにかく、日本全体 で大きな力を結集できるかどうかというこ とが、一つの大きなキーワードになるかと 思います。 上田 女子は基本的に男子と方向性は変わ りません。私がなでしこジャパンの監督を やっていたときから「男子に学んで、男子 に近づけ」と選手に伝えていました。です から、男子の発展過程を学んで女子に応用 していくという考えが大事だと思います。 上田 女子は、なでしこジャパン、U-20、 U-17とそれぞれ世界大会があります。やは りユース年代から育てていかなければ、代 表チームで勝つことはできません。ですか ら、なでしこジャパンのコンセプトを一貫 して共有しつつ、年代ごとの活動を充実さ せていかなくてはなりません。 私が女子委員長に就任する以前、昨年に ナショナルトレセン女子U-15がスタートし、 その年代の強化も始まっています。しかし、 その上の年代の育成システムがないので、 ナショナルトレセンのようなスタイルを確 立させるなど、もう一つ上のカテゴリーの 強化も必要ではないかと思います。 小野 男子は代表チームに関していえば、 例えば反町康治U-21日本代表監督が日本代 表のコーチも兼任していますが、そこを重 ね合わせることによって、日本が目指すと ころをより明確して、コミュニケーション を密にするということを今後も続けていき たいと思っています。それ以上に、日本人 の良さを引き出せるような指導者、スタッ フの人選も非常に重要だと考えています。 あとは、FIFAワールドカップはわれわれ のゴールでもあり、出発点で、それをしっ かり分析することによって、世界のサッカ ーの流れをつかみ、その方向性に対してわ
小野剛技術委員長、上田栄治女子委員長に聞く
指導者一人ひとりの
情熱を大きな流れに
2006FIFAワールドカップ ドイツ(日本vsクロアチア)© Jリーグフォト㈱ ―今後、日本代表、なでしこジャパンという 日本サッカートップのチームを、委員長として どのような形でかかわっていくのか。また、ど のような形でサポートしていくのかお聞かせく ださい。 ―小野技術委員長の話にもありましたが、下 のカテゴリーとのつながりも大事な要素になっ てきます。今後、何か新たにトライしていきた いというお考えはありますか。れわれが持っているストロングポイントを 発揮していく。この考え方を日本全体で共 有できれば、代表チームだけという枠組み を飛び出して、日本全体に波及することが 可能になってくるのではないかと思います。 ビジョンの共有というと、システムをまね する、あるいはトレーニングメニューをそ のままコピーするといった誤解が生じてい ていますが、そうではありません。考え方 や方向性を持つということを皆さんと確認 したいと思っています。 しかし、何かをやろうとしたら当然、負 の副産物というのはどうしてもついてきて しまいます。そういったところはある程度 進んだら、必ず振り返ってみて、何か誤解 は生じていなかったかとか、あるいはやろ うと思っていたことではない副産物が出て はいないかといった検証する必要がありま す。ですから、例えば5歩進んだとしたら2 歩戻りながら、それらを丁寧に取り払って いくということをしていきたいと思います。 全国の指導者の方々のさまざまな努力で 急速にここまで来ただけに、今後はそうい う部分をきっちりと丁寧なコミュニケーシ ョンで進んでいきたいと思っています。 上田 目標として「女子サッカーをメジャ ースポーツに」ということがあります。 1999年ロサンゼルス宣言で、女子選手の登 録選手数を全体の10%にということがうた われました。現在のJFA登録選手数は約88 万人で、そのうち女子選手は、約3万4000 人 で す か ら 、 約 4%です。しかし、 2000年の数字と比 較すると40%くら い増えています。 女子サッカーを メジャースポーツ にするということ から考えると、登 録人数を増やして いかなければなり ません。しかし、 年代ごとの女子登 録選手数の推移を 見ると、中学生年代で激減して、高校でま た増えていくという独特のカーブを描いて います。ですから、小学生年代でサッカー に親しむ機会、環境を多くつくって登録選 手数を多くしながら、部活動が少ない中学 生年代での受け皿を増やしていくことが非 常に大事だと思います。この問題について は、これまでU-15女子チーム創出制度など の取り組みで少しずつ増えてきました。ま た、女子委員会でも施策を考えていますが、 CHQ(キャプテンヘッドクォーターズ)で も考えていますし、キッズプロジェクトで も連携する部分があるので、技術委員会全 体で取り組んでいけると思います。 また、JFAでは指導者養成事業が活発に 実施されています。多くの指導者たちが、 いずれは中学校で女子選手の指導をすると いう流れが出てくるのではないかと思いま すし、期待もしています。JFAからこの部 分についても積極的にアプローチしていき たいと思います。 小野 以前、われ われが多くの方と 描いていた青写真 が、現在具現化し てきている中で、 一つの大きな変化 はリーグ化です。 例えば、2種だっ たら高校だけのリ ーグやクラブだけ のリーグではなく、 連盟間の垣根を取 って、それで切磋琢磨できる拮抗したリー グを何とか行いたいと思っていたので、 JFAプリンスリーグがスタートして、本当 に良い環境が整ったと思います。 これまでは中学3年生の夏で活動を止め て、高校1年生であまりゲームの機会がない、 このブランクが育成上かなり致命的でした。 しかし、地道に中・高の種別間で連携を図 って努力し、今年度から国体少年の部をU-16化することができました。U-16になった 最初の国体でも、すばらしいサッカーを展 開してくれました。以上の2つだけをとって も、これはものすごく大きな前進だと思い ます。「リーグ化」がクラブと高校の垣根だ としたら、「U-16国体」では中学と高校の垣 根を取ったわけです。いろいろな形で選手 たちにとってプラスな面が出てきて、強化 が良い形でできるようになりました。 しかし、今後はこれまで分かれていた組 織を統括する組織や人材が必要になってき ます。大きな改革があったがゆえに、多少 の混乱が生じていることも事実だと思いま す。前進したゆえの混乱であって、その副 産物というのは丁寧に取り払っていけば、 必ず選手にとって不利益にならない形で、 さらに前進することができると思います。 各地域、各都道府県とうまくコミュニケー ションをとっていくことで、それが次の大 きなステップになっていくと確信していま す。JFAが強いリーダーシップでリーグを ある程度定着させてきたら、今度は各地域 の特色に応じた形で、地域が主体になって やっていく。地域の中の育成で2種、3種と いう枠組みにこだわらず、統括するような 組織、人がますます重要になっていくと思 います。 (次号へ続く)
日本サッカーの今後について語る
描いてきた青写真が具現化
2005年にスタートしたナショナルトレセン女子U-15© Jリーグフォト㈱ 高円宮杯第17回全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会(準決勝・滝川第二vsガンバ大阪ユース)より© Jリーグフォト㈱ ―次に普及・育成についておうかがいしま す。現状の課題、問題点としてどのようなこと が挙げられますか。 ―男子については、プリンスリーグの実施や 国体のU-16化など、ここ数年でさまざまな変化 がありました。(1)ボールによる影響 今大会、使用されるボールが2004年大会 時の「ロテイロ」から「2006チームガイス ト」になったことで、プレー全般に非常に 大きな影響があったと言える。まず、新し い2006チームガイストは、ボールに対する 空気抵抗がより少なく、真球に近い球状に なったため、ボールのスピードが向上し、 正確なキックかつ大きな変化を伴うキック が可能となった。そのため、特にグループ ステージで、ミドルシュートを多用する選 手が多く見られた。また、デザインに関し て、回転の認知がしづらいものとなってお り、ゴールキーパー(以下GK)にとって、 対応の難しいボールであった。象徴的なシ ーンとして、準決勝のポルトガルvsフラン スでポルトガルの⑰クリスティアーノ・ロ ナウドが蹴ったFKをフランスGK⑯ファビ アン・バルテズがすくい上げるようにセー ブしたシーンが挙げられる。 (2) 天候に恵まれた大会 雨が少なかったことにより、GKのファン ブルが少なかったと言える。 (3) クロスの精度の向上 特にアーリークロスの精度が高く、GKを 含めた守備側としては対応がより困難にな ってきている。 (4)GKに対するカバーリング、プロテクシ ョン ボールの進化やキックの質の向上により、 シュートやクロスへの対応が困難になって きていると言えるが、フィールドプレーヤ ーのGKに対してのカバーリング、プロテク ションの意識が非常に高く、チームでシス テム化しているようにも見受けられた。 (5)ディストリビューションの確実性の向上 キックやスローイングの精度が高いGK は、ディストリビューションによって、得 点のチャンスを演出していた。しかし、相 手守備陣形が整ったと判断すると、安全確 実に味方につなぐプレーをしていた。代表 的なGKとしては、①ロベルト・アボンダン シエリ(アルゼンチン)、①ペトル・ツェフ (チェコ)、⑯ファビアン・バルテズ(フラ ンス)、①ジーダ(ブラジル)、①ポール・ ロビンソン(イングランド)などが挙げら れる。 (6)PKへの対応 試合中、もしくはPK方式において、シュ ートコースを外すGKが少なかったと言え る。このことは、コースの見定めの良さ、 事前のスカウティングによる成果と言える のではないだろうか。 (1)GKの大型化 190cm以上のGKが多く、GKの大型化が より進んでいると言えるだろう(大会登録 全GK96人中、190cm以上のGK36人)。 (2)「弾く」技術の質が高い シュートに対してのディフレクティング、 クロスの状況下でのパンチングなど、弾く 技術の質が高い。シュートに対するディフ レクティングでは、タッチラインまで弾き
JFAテクニカル
レポート
ゴールキーパー編
2006FIFAワールドカップ
ドイツ大会
「2006FIFAワールドカップドイツ
大会 JFAテクニカルレポート」の
内容を一部抜粋の形で掲載します。
詳細はテクニカルレポートをご参照
ください。
2006FIFAワールドカップ
ドイツ大会
ジャンルイジ・ブッフォン(イタリア)©Jリーグフォト(株)JFAテクニカル
レポート
1.大会全般の特徴
2.GKの特徴
出すGKもいた。 (1)ジャンルイジ・ブッフォン (イタリア/190cm・83kg) イタリア優勝の大きな立役者であったと 言えるだろう。試合中の集中力が非常に高 く、シュートストップにおいてすばらしい 対応を見せていた。 (2)イェンス・レーマン (ドイツ/190cm・87kg) 準決勝のコーナーキックで見せたように、 クロスへの守備範囲が広く、安定した対応 を見せていた。また、1対1において、確実 な対応を見せていた。 (3)ペトル・ツェフ (チェコ/197cm・87kg) 至近距離からのシュートに対して、非常 に速い反応を見せ、シュートをセーブして いた。ディストリビューションにおいては、 ロングキックの距離、正確性に秀でている。 (4)エドウィン・ファンデルサール (オランダ/197cm・84kg) チームの一員、そしてチームのリーダー としての役割を明確に行っていたと言える だろう。フィールドプレーの質が高く、ビ ルドアップに有効に参加していた。 (5)ロベルト・アボンダンシエリ (アルゼンチン/186cm・89kg) ディストリビューションにおいて、非常 に精度の高いGKキックを発揮していた。 (1)シュートストップ <今大会の特徴> シュートエリアが広がったことにより、 GKはボールの位置がゴールから離れたとこ ろにあっても、周到に準備をすることが必 要であった。世界のトップレベルの選手に おいては、そのようなポジショニングや構 えがやはり安定していた。また、無回転シ ュートも増えており、「つかむ」のか「弾く」 のかの判断を適切に行え、その判断に基づ く、より安全確実にシュートを処理する技 術が求められていた。加えて、GKが弾いた シュートに対するカバーリング、プロテク ションを確実に行っているチームが多く見 られた。 <今後の課題> まず、これまで同様、GKの姿勢(構え)、 ポジショニングという基本要素を徹底する とともに、キャッチングおよびディフレク ティング技術とその判断を高めていくこと が必要である。 2つ目に、守備範囲を広げるために、反応 スピードやプレースピード(スピードやパ ワー)といったフィジカル的側面を向上さ せていくことが不可欠である。 3つ目に、チーム戦術としてのGKに対す るプロテクション、カバーリングを徹底し ていくことが必要である。最後に長期的な 側面から、サイズの面で大型の選手を発掘 して育成していくということも重要である といえるだろう。 (2)ブレイクアウェイ <今大会の特徴> グループステージにおいては、ボールが 奪われた瞬間のファーストディフェンダー がなかった際に、一瞬の隙を突くダイレク トプレーのパスが出され、ペナルティーエ リアぎりぎりのボールへの対処が見られた。 しかし、全般的には、守備がしっかり組織 化されているのと同時に、個の守備能力が 高く決定的な場面を招くことは少なかった といえる。 次に、1対1の状況において、トップレベ ルのGKは、良いポジションをとり続け、簡 単に倒れずに最後までしっかりと対応でき ていた。このことにより、相手に対し大き なプレッシャーを感じさせるとともに、チ ームに安定感を与え、ゲームを引き締めて いたといえる。 チームでの対応としては、GKとDFとの 連携(プロテクション&カバーリング)に より、GKが安全確実にボールを処理するシ ーンが多く見られた。このことは、GKを含 めたDFの組織が確立されているためといえ る。しかし、中には、フィールドプレーヤ ーとGKとの連携が確立されてなく、GKに 簡単に任せてしまい、GKがコンタクトを受 けたり、接触ぎりぎりのプレーになってい るシーンが見られた。GKとDFとの連携に よって、失点を防ぐということにつながる だけではなく、衝突などによる試合中のGK のけがの可能性を少なくし、万が一、GKが ファウルを犯してしまった場合でも、ゴー ル方向にカバーリングの選手が入っていれ ば警告で収まるといったことにつながるの である。 <今後の課題> ①ブレイクアウェイの状況下における判断 の速さ、そして決断後のプレースピードの 向上が挙げられる。この課題と同時に、試 合の状況を把握した上での予測能力の向上 が不可欠であるといえる。 ②1対1の状況下において、「すぐに倒れない」 ことの徹底が重要である。 ③GKの決断の声の徹底、その声のタイミン グ、質の向上が挙げられる。併せて、GKに 対するプロテクション、カバーリングの徹 底も必要である。 ④常にGKがゲームにかかわり、GKを含め た守備組織を構築し、GKとDFがより連携 を深めていくことが挙げられる。 (3)クロス <今大会の特徴> GKやDFの大型化のため、単純にゴール 前に入ってくるクロスに対しては、GKのキ
3.世界基準のGK
4.状況別のGKプレー分析
フ ラ ン ス ポ ル ト ガ ル 5 19 15 16 17 9 20 図3-7 シュートストップ フランスのGK⑯ファビアン・バルテズがポルトガルの⑳デコの放ったミド ルシュートを確実にセービングしディフレクティングするが、十分ではなく、 味方DF2人のうち1人が相手FWとボールの間に身体を入れプロテクション し、もう1人がボールを処理するというように非常に連携のとれた守備をし た。 ド イ ツ イ タ リ ア 3 21 3 13 3 17 1 図3-8 ブレイクアウェイ イタリアの③ファビオ・グロッソのドリブル突破に対して、ドイツGK①イェ ンス・レーマンがあわてて飛び込まず、簡単に倒れないで、冷静にシュー トコースをふさぎながら対応し、最終的に身体に当ててシュートを防いだ。 しっかりと1対1でボールに対応している。ャッチ、もしくはDFのクリアによって確実 に処理されていた。しかし、クロスの質が 向上し、スピードの速いカーブのかかった クロスやDFとGKの間のスペースに流し込 むアーリークロスが増え、GKを含めたディ フェンスの対応が非常に難しくなってきて いるといえる。トップレベルのGKは、キャ ッチングはもちろん、質の高いパンチング 技術を発揮しており、特に、混戦の中でコ ンタクトを受けながら、パワーを持ったパ ンチングを見せていた。また、安全確実な アーリークロスへの対応を行っていた。 <今後の課題> ①クロスの状況への対応がより困難になっ てきているが、まず、クロスに対するGK 自身の判断の質、そして、スピードの向 上が必要であると言える。 ②パンチング技術の質の向上、そして、コ ンタクトプレーへの強さを身につけてい くことが重要な要素となってくる。 ③DFとの連携が挙げられる。具体的には、 クロスが上げられる前に、ゴール前の状 況把握、そして、DFへの適切な指示(デ ィフェンスの組織化)を行い、実際のク ロスに対して、GKとDFとのコミュニケ ーション、GKに対するプロテクション、 カバーリングということを習慣化すると いうことが重要になってくる。長期的な 視点から考えると、大型のGKを発掘する ということも非常に重要なことであると 言えるだろう。 (4)セットプレー <今大会の傾向> 今大会、守備の強化により 流れの中での得点は減少傾向 にあった(大会総得点147点、 2002年大会は161点)。一方で、 セットプレーからの得点の割 合は2002年大会の28%から 33.3%に増えている(P.60参 照)。 ここでは、セットプレーの守備を大きく 次の3つに分けてとらえた。 ①良い守備のできている場面 ②良い守備を上回る攻撃によって失点して いる場面 ③守備側の準備不足およびその場での対応 も悪く失点している場面 ①良い守備のできている場面 セットプレーはプレーの前、プレー、プ レーの後の3つの局面に分けてとらえること ができる。 ◆プレーの前 良い準備:組織、役割の徹底(GKのリー ダーシップ)、選手の配置:壁の位置、スペ ースマーカーの位置、マンマーキングの徹 底、GK自身のポジショニング(状況に応じ て変える) ◆プレー 大きく変化する新しいボール、高いキッ クの質(ボールスピード)に対して瞬時に 的確な判断が求められる。 GKの守備能力の高さ:ボール軌道の把 握、素早い移動、安全確実なプレー ◆プレーの後 役割の瞬時の切り替え、 ディフェンスラ インのコントロール ②良い守備を上回る攻撃 決勝トーナメントに入ると力の拮抗した 試合が見られ、リスタートの準備もしっか りなされていたが、それを上回る攻撃によ る失点も見られた。3つの局面で、守備側の 対応を上回るプレーにより失点を喫する場 面では、以下のような工夫を行っていた。 ◆プレーの前 組織された守備のバランスを崩す。GKの 視野を塞ぐ。 ◆プレー ボールスピード、キックの質。動き出し のタイミング。素早い移動、安全確実なプ レー。 ◆プレーの後 セカンドボールへの反応 ③守備側の準備不足 特に、守備側のプレー前の準備が不足し ていたために得点を許す場面を取り上げた。 今大会は十分な準備期間が設けられていた ので、対戦相手の情報を収集しそのための 準備をする時間はあったはずである。しか し、準備に問題がある失点も見られた。 ◆プレーの前 相手の攻撃に対する対策の不備、組織と 選手個々の役割の不徹底 ◆プレー 後手を踏む(動き出しのタイミング)。相 手に狙い通りのプレーを許す。 ◆プレーの後 セカンドボールへの反応、状況の変化に 図3-9 セットプレー オランダのCKの守備。ファーサイドへボールが流れた瞬間、ニアサイドに 立っていた⑰ロビン・ファンペルシーがゴールの中へと移動し、相手が折 り返し、ゴールへ吸い込まれるボールを胸を使いクリアした。非常にスム ーズなカバーリングであった。 移動後 1 5 17 オ ラ ン ダ コ ー ト ジ ボ ワ ー ル 移動前 1 5 17 3 13 オ ラ ン ダ コ ー ト ジ ボ ワ ー ル 図3-10 ディストリビューション オランダのGK①エドウィン・ファンデルサールが相手のロングボールをブレイ クアウェイし、味方FWをすぐさま見つけ、一気にロングフィードで相手DFライ ンの背後を狙うシーン。結局はオフサイドの判定となるが、切り替えの意識が 非常に高かった。 コ ー ト ジ ボ ワ ー ル オ ラ ン ダ 1 9 2006FIFAワールドカップドイツ準決勝(イタリア vsドイツ)©Jリーグフォト(株)
応じた役割の切り替えが遅い(無い)。 <今後の課題> ①事前準備を綿密に行う 今後の日本は、対戦相手の情報収集力の さらなる強化を図ることと、情報分析結果 から、守備戦術の工夫とその徹底をしっか り行っておくことが必要になるであろう。 特に高さに弱点を持つ日本は、他国以上に 守備戦術の徹底を図る必要がある。 ②臨機応変な対応のできる選手育成 事前の分析から対策を講じても、予想通 り相手がプレーしないことは多々ある。そ うした状況下で一番危ない場所と人を抑え にいく能力を磨くこと。また、相手の変化 を予測し、決めごとだけでなく、その場で 判断を変えられる選手を育てることも重要 になってくる。この2点に関してはリスター トに限ったことでなく、流れの中でも同様 に求められることである。 <統計資料> 大会総得点得点は147点、1試合平均ゴー ル数2.30点(90年大会の2.21に続く少ない 数字)、セットプレーからの得点は53点で 36.05%にのぼった。またPKは13点、ロン グスローインからは3点であった。 2002年大会の総得点は161点、1試合平均 ゴール数2.52点、セットプレーからの得点 は45点で28%であった(P.60資料データ参 照)。 (5)ディストリビューション <今大会の特徴> 大会全般の傾向として、攻撃から守備へ の切り替え、そして守備組織の構築が非常 に速かったと言える。ゆえに、チームとし て得点を奪うためには、相手守備組織が構 築される前の一瞬のチャンスを生かすこと が重要な要素となっていた。そのため、GK がボールを奪った局面では、前線へのGKキ ックが多く活用されていた。また、相手守 備組織が整っている状況では、ボールを確 実に保持し、攻撃を組み立てるために、味 方選手へ確実にボールをパスするシーンが 多く見られた。 一方で、相手守備組織が整っている状況 にもかかわらず、ロングキックを多用し、 簡単にボールを失うシーンが多く見られた のも事実である。これらのことは、ゴール キックについても同様のことが言え、ダイ レクトプレーの意識を持ちつつ、確実にビ ルドアップしていくプレーが見られた。 <今後の課題> これらのプレーの傾向から、GKに求めら れる要素として以下のものが挙げられる。 ①「ディストリビューションにおける適切 な判断」 これは、プレーの優先順位に基づいた判 断を下せるということ、試合の状況(得点 経過、時間帯、流れなど)を踏まえた上で の判断を下せるということを示す。 ②「技術の質」 具体的には、キックやスローイングの正 確性、距離のことである。今大会では、ア ルゼンチンのGK①ロベルト・アボンダンシ エリがサイドボレーとボレーキックを状況 に応じて使い分けており、多くのGKがロン グスローを活用していた。一方で、チーム のフィールドプレーヤーに対しては、GKが ボールを保持した際のサポートの動きが非 常に重要な要素であると言える。 (6)パス&サポート <今大会の特徴> 大会全般の傾向として、GKを利用して、 ボールを保持しようとするチームが多かっ たと言える。同時に、ペナルティーエリア 付近の低い位置にディフェンスラインを設 定するチーム、そして、チャンスには前線 からプレッシングをかけるチームが多かっ たため、GKと味方選手や相手選手との距離 が近く、Gkがプレッシャーを受けた中でプ レーしなければならないシーンが多く見ら れた。 <今後の特徴> これらのプレーの傾向から、GKに求めら れる要素として以下のものが挙げられる。 ①状況に応じた適切な判断 適切な判断を下すためには、「観る(状況 把握)」ということが不可欠である。 ②フィールドプレーヤーとしての技術・戦術 具体的には、左右両足のキック、ファー ストタッチの質のことを示す。 (1)GKとDFとの連携 今大会に出場した多くのチームでは、GK とDFとの連携(プロテクション、カバーリ ング)が徹底されていた。一方で、グルー プステージのサウジアラビアvsウクライナ で見られたように、GKに対してのDFのプ ロテクションが徹底されていないため、GK とFWの接触が起こり、GKのけがが発生す るといった状況も見られた。 (2) アクシデント グループステージ、イングランドvsパラ グアイにおいて、パラグアイの第1GK(① フスト・ビジャール)が予想外のけがによ って、前半早々に第2GK( アルド・ボバ ディージャ)と交代した。第2GKは、明ら かに準備不足であり、精神状態も落ち着き のない状況であ った。そのため、 試合に入った直 後、6秒ルール のファウルをと られてしまう。 第2GKにおいて も、試合に入る までに、しっか りとした身体と 精神面の準備が 必要であると再 認識するシーン であった。