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GBRC Vol.41 No 軍艦島の最古の建物はこの191年に建設された30号 表-1 軍艦島構造物の概要 階数 補修歴 増設歴 号棟 年代 用途 B B1 +1B浴場 派出所

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1.はじめに

軍艦島は長崎港から南西約19kmの海上に浮かぶ、東 西160m、南北480m、周囲1.2kmの人工の島である(図 -1)。正式名称は「端島」であり、その形が軍艦に似て いた(写真-1・図-2)ことから「軍艦島」と呼ばれるよ うになった。以下本報では、軍艦島と記す。 明治23年(1890年)から三菱の経営により海底炭坑 の島として開発が進められ、炭鉱の開発に伴い、従業員 のための住宅建設が盛んに行われた。大正5年(1916年) に国内最初の鉄筋コンクリート造高層集合住宅である 30号棟が建設され、その後は集合住宅、公共施設を含 め70棟を超えるRC構造物が建設された。最盛期には人 口が5000人を超え、高密度な住環境を有する島となっ たが、国の石炭から石油へのエネルギー政策の転換によ り、昭和49年(1974年)に閉山し、現在は無人島とな っている。 小さな島に人々が高密に生活していたことや、RC造 黎明期からの集合住宅群が残っていることから、近年軍 艦島は文化財・観光資源としての価値に注目されてお り、その保存の可能性や方法の検討が行われている。ま た、潮風・高波・台風等過酷な外部環境に曝されている 構造物の劣化状態を知ることが出来る点においても大変 貴重な研究資源である。軍艦島構造物の建築年代および 概要を表-1に示す。 日本建築学会軍艦島コンクリート構造物劣化調査ワー キンググループ(主査:野口貴文東京大学大学院教授) は、長崎市の委託を受け、軍艦島に存在するコンクリー ト構造物等の劣化の状況を科学的に調査・分析し、「端 島炭坑等調査検討委員会」が検討する炭坑及び構造物等 の文化財指定に関する資料を作成することを活動の目的 として材料施工本委員会下に設置された。 建築後、劣化外力の激しい海洋環境下において長期間 経過したコンクリート構造物の実態およびコンクリート 構造物に直接作用する劣化外力の実態を把握し、現状の 構造物の状態とその劣化メカニズムを把握し、今後、コ ンクリート構造物の延命化や適切な維持保全のあり方を 探るための資料を蓄積することが調査の目的であるが、 本稿はその概要について紹介する。 図-1 端島(軍艦島)の位置 写真-1 軍艦島全景 図-2 軍艦島構造物群の配置

今本 啓一*

1

、下澤 和幸*

2

、吉田 夏樹*

3

Deterioration mechanism and academic value of concrete structures in Gunkan Island

軍艦島の構造物群の劣化メカニズムと

その学術的価値

*1 IMAMOTO Kei-ichi:東京理科大学工学部建築学科 *2 SHIMOZAWA Kazuyuki:(一財)日本建築総合試験所 *3 YOSHIDA Natsuki:(一財)日本建築総合試験所

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軍艦島の最古の建物はこの1916年に建設された30号 棟(住戸数140)である(写真-2)が、下記の変遷から みても日本最古期の鉄筋コンクリート造建築物であるこ とが分かる。一方、この30号棟は下図に示されるよう(図 -3)にロの字型の平面計画が取られており、採光ついて も一定の配慮がなされている(写真-3)。 なお軍艦島は、2014年1月に「明治日本の産業革命遺 産 九州・山口と関連地域」としてユネスコ世界遺産セ ンターに推薦書が提出され、2014年10月に軍艦島炭鉱 跡が「高島炭鉱跡」として国史跡に登録された。そして 2015年7月に明治日本の産業革命遺産の構成資産として 世界文化遺産に登録されたことは記憶に新しい。

2.(鉄筋)コンクリートの歴史

鉄筋コンクリートの歴史を辿るとおおよそ以下のよう になる。 B.C.7000年頃:イスラエル、建物の床(イフタフ遺跡) B.C.:2500年頃:エジプト、ピラミッドの目地材 B.C.27~ A.D.395年:帝政ローマ、建造物 756年:水硬性石灰の発見(イギリス) 1824年:ポルトランドセメントの発明 1853年:アメリカ、Hyatt(ハイアット)による鉄筋コ ンクリート理論、橋の桁の補強鉄筋の提案 1867年:フランス、Joseph Monierによるモニエ式配筋 の発明(鉄網で補強したモルタル製の植木鉢) 1905年:佐世保港内:潜水器具庫、主体構造は鉄筋コ ンクリート(柱間は煉瓦積み) 1908年:神戸和田岬の東京倉庫㈱、全て鉄筋コンクリ ート造、平屋建て 1916年:端島30号棟鉱員社宅、鉄筋コンクリート造7階 建て(竣工当時4階建て) 25 1931 5+B1 30 1916 7+B1 31 1957 6+B1 21 1954 5 22 1953 5 39 1964 3 48 1955 5+B1 51 1961 8+半地下 16 1918 9(8+高床) 17 1918 9(8+高床) 18 1918 9(8+高床) 19 1922 9(8+高床) 20 1922 6(5+高床) 2 1950 3+半地下 3 1959 4+半地下 14 1941 5 56 1939 3 57 1939 4 59 1953 5+B1 60 1953 5+B1 61 1953 5+B1 66 1940 4+B1 67 1950 4 68 1958 2 69 1958 4 65(北) 1945 9+B1 65(東) 1949 9+B1 65(南) 1958 10 70 1958 7(RC6+S1 号棟 年代 階数 住居 住居 1925年 住居+1B浴場 住居+派出所 住居 公民館 住居+1B商店 住居+半地下商店 ) 住居 1951年 ) 住居 1951年 ) 住居 1932年 1951年 ) 住居 1932年 1951年 ) 住居 1951年 住居 住居 住居 住居 住居+1F商店 住居+1B商店 住居+1B商店 住居+1B浴場 住居+1B浴場 住居 病院 病院 住居 1947年 住居 1952年 住居 1) 学校 1961年 用途 年5~7階増設 1928年 1954年 年ペントハウス増設 1937年      1951年 年ペントハウス増設 1937年      1951年 年7~9階増設 年ペントハウス増設 1937年 1951年 年7~9階増設 年ペントハウス増設 1937年 1951年 年ペントハウス増設 1937年 1951年 1958年 1958年 年8,9階増設 1958年 年屋上に幼稚園増設 1958年 年7階(S造)増設 1958年躯体そ 増設歴 柱梁補強、外壁に防水モルタル 地階~4階鉄筋入替工事 海側ファサードを煉瓦・炭殻ブ 柱の巻き立て補強 柱梁補強工事(増し打ち) 海側ファサードを煉瓦・炭殻ブ 柱の巻き立て補強 柱梁補強工事(増し打ち) 柱の巻き立て補強 柱梁補強工事(増し打ち) 柱の巻き立て補強 柱梁補強工事(増し打ち) 柱の巻き立て補強 柱梁補強工事(増し打ち) 火災、建て替え 火災、建て替え 68,69号棟の火災の延焼を受け 68,69号棟の火災の延焼を受け 68,69号棟から火災、 のまま内外装のみ再工事 補修歴 ル塗布 ロックで充填 ロックで充填 けた けた 表-1 軍艦島構造物の概要 写真-2 30号棟の外観 図-3 30号棟の平面図1) 写真-3 30号棟の内部

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3.軍艦島の生活と歴史

「1.はじめに」でも述べたように、軍艦島のピーク時 の人口は5000人超であり、東京の人口密度の約9倍に相 当する世界最高の人口密度をほこっていた(写真-4)。 また島には、学校、派出所、店舗、病院、寺院(宗派を 問わない全宗寺)、映画館、遊園地が整備され、島内に おいてほぼ完結した都市機能を整備していた(写真-5)。 鉱員の賃金は高く、都心より家電製品(テレビ・ラジ オ・ステレオ・洗濯機)の普及が早いことも写真から伺 える(写真-6)。島での最大の課題は水の確保であった。 これは後述するコンクリート中の高濃度塩化物イオンと も関連するが、水の確保は大きく以下の3つの時代に分 類される。 ①蒸留水の時代(明治24年から昭和6年):島内には湧 水なし。水の確保は重要課題。海水を蒸留して飲料水を 確保していた。 ②給水船の時代(昭和7年から昭和32年):三島丸(235t) による一日一往復の給水。戦後は朝顔丸(298t)によ る一日三往復の給水。海が荒れると欠航。給水船欠航時 は、共同浴場は海水風呂となる。 ③日本初の海底水道(昭和32年10月):長崎市三和町か ら高島・端島をつなぐ海底水道の敷設。一日5000tonの 送水が可能となる。

4.軍艦島構造物の目視劣化調査

島内において構造物の柱、梁部材を目視評価した。損 傷は主として鉄筋腐食・錆汁の状況を5段階で評価し た。鉄筋にひび割れおよび錆汁が見られるものをグレー ドⅠ、腐食した鉄筋が露出しているものをグレードⅢ、 鉄筋が朽ちてその痕跡しか存在しないものをグレードⅤ とした(図-4、5参照)。また中間的な劣化状態をそれぞ れグレードⅡおよびⅣとした。 65号棟3階の劣化度分布図を図-6、16 ~ 20号棟(以下、 日給社宅と記述する)3階の劣化度分布図を図-7、65号 棟の外観を写真-7に示す。65号棟は終戦前後にわたって 建設された島内最大の建物であり、物資の不足する混乱 期の中で建設された点で特筆される建物の一つである。 用途は住宅であり、北棟が1945年、東棟が1949年そし て南棟が1958年の順に建設され、建設年代による劣化 の差が顕著に見られる。 写真-4 当時の様子(長崎市より提供) 写真-5 島内の様子(長崎市より提供) 図-5 軍艦島と一般構造物の劣化グレード 図-4 劣化グレード 写真-6 家庭内の様子(長崎市より提供)

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5.材料詳細調査

5. 1 調査対象と調査箇所

表-2に調査対象と調査箇所を示す。島内で最も古い30 号棟から、比較的新しい3号棟までの計6棟を選定した。 た だ し、 測 定 箇 所16外1F_N1お よ び16内3F_M1は、 1951年に増し打ち工事が実施された箇所である。また、 16内3F_N1は増設箇所であり、工事年は不明である。 日給社宅(写真-8)では、16号棟はその他の棟と比較 して構造体の劣化が進行しているが、屋内においても構 造体の劣化が著しい。劣化が著しいのは建物の北面側の 屋外面および開口に近い屋内の部材であり、中庭に面す る南面側では著しい劣化は少ない。これは取り付けられ ていた木製の雨戸や引き戸などが、風雨などで破損した ことにより、室内へ雨水や潮風が浸入し部材の劣化を進 行させたと考える。巻き立て補強が施された大廊下の柱 や、各棟の廊下に位置する柱は劣化の進行も少なく、比 較的健全なものが多いが、同様の補強が施された大廊下 と各棟を繋ぐ位置にある柱のみが劣化の進行が著しい。 一方、17号棟では、梁が柱よりも劣化の進行が著しい 範囲があり、同じ環境下でも隣り合う部材に劣化度の違 いがある。詳細な調査によってその原因を明らかにする ことが今後の課題である。 写真-7 65号棟(長崎市より提供) 図-6 65号棟の劣化グレード 写真-8 日給社宅(長崎市より提供) 図-7 日給社宅の劣化グレード 棟番 号 建設年 30 1916 16 1918 1951 補修 (1918) 1918 1951 補修 1918 1951 補修 50 1927 25 1931 57 1939 65 北 1945 65 東 1949 67 1950 65 南 1958 69 1958 3 1959 仕上げ 標高 [m] 無(N) 9 無 6 無 12 モルタル(M)約 10mm 12 無 17.5 タイル(T) 6 モルタル約 10mm 18 モルタル約 20mm 12 モルタル約 10mm 6 モルタル約 20mm 6 モルタル約 10mm 6 モルタル約 20mm 6 モルタル約 20mm 6 テラゾー約 10mm 7.5 モルタル約 30mm 36 調査箇所名称(棟番 号・内外・階_仕上げ) 図 30 外 1F_N1 16 外 1F_N1 16 内 3F_N1 16 内 3F_M1 16 内 5F_N1 50 外 1F_T 25 外 1F_M 57 外 1F_M 65N 外 1F_M1 65N 外 1F_M2 65E 内 1F_M1 67 外 1F_M1 65S 内 1F_M 69 内 1F_T 3 内 1F_M 図 8 における 調査位置 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ 表-2 調査部位の概要

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5. 2 調査方法

表-2および図-8に示した箇所においてφ80㎜のコアを 採取し、EPMAによる塩化物イオン量測定を行った。 EPMAにより、コア断面で深さ1mm毎の区間にあるピ クセルのCl-量平均値を計算し、塩化物イオンプロファ イルを得た。また、中性化深さ測定については、JIS A 1152に準じて測定を行った。

5. 3 調査結果と考察

5. 3. 1 塩化物イオン量分布 塩化物イオン量分布の測定結果を図-9に、構造物の建 設年とJASS5における塩分規制との関係を図-10に、建 設年と内在塩化物イオン量との関係を図-11に示す。設 計上、鉄筋の腐食発生限界濃度は1.2kg/m3とされてお り、65号棟、69号棟、3号棟、16号棟5階以外は、いず れの深さでもこの値を超えている。塩分濃縮や骨材量の 影響により分布はばらついている。表面から60-85mm の内部における塩化物イオン量を、コンクリートの初期 から存在する内在塩分とすると、3つの傾向、すなわち、 平均20kg/m3と極めて高いもの(30号棟)、3 ~ 10㎏ /m3 程度のもの(16、25、50、57号棟)、そして、約0.5 ~ 1.0kg/m3程度の少ないもの(65、69、3号棟)に分類で きる。骨 材に海 砂もしくは海 砂 利( 骨 材 量:700kg/ m3+1000 kg/m3、含水率10%(吸水率3%+表面水率7%)、 海水の塩分濃度4%と仮定)が使用されていた場合、約3 ~ 7kg/m3の塩分量となる。さらに海水が使用されていた 場合(単位水量を200 kg/m3と仮定)、8 kg/m3の塩分量 が加わり、15 kg/m3以上となることも推測される。内在 塩分についてはJASS5の塩分規制との関連性も認められ る(図-11)。 図-8 軍艦島構造物の調査対象と調査箇所 図-11 建設年代と内在塩化物イオン量 図-9 塩化物イオン量の分布 図-10 JASS5における塩分規制の変遷

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(3) 含水率測定 各調査対象の鉄筋位置付近からコンクリート片を採取 し、質量含水率を測定した。 表-3に調査結果を示す。内在塩化物イオン量は、コア 表面から60 ~ 80mm地点のものとした。また、コンク リート内部の湿度は年間を通してほぼ一定である。 建物外部では、30外1F_N1、16外1F_N1、50外1F_ T1、25外1F_M1、57外1F_M1、65N外1F_M1、65N外 1F_M2、67外1F_M1、建物内部では、16内3F_N1と16 内3F_M1で腐食発生限界濃度を超えていた。しかし、 鉄筋が完全に腐食していたもの(写真-9)は、30外1F_ N1、65N外1F_M1の2箇所のみであり、他は軽微な腐 食のもの(写真-10)ばかりであった。この要因として、 かぶり厚さの大きさが挙げられる。かぶり厚さが大きく、 鉄筋がコンクリート内部に位置するほど、鉄筋腐食の原 因である酸素が供給されにくく、鉄筋腐食の進行が緩や かになると考えられる。また、雨掛りの有無も理由のひ とつと考えられる。雨掛りのある場所においては、コン クリートに供給される水分が多いため、鉄筋腐食が進行 しやすいと考えられる。表-3から、かぶり厚さが40mm と小さい箇所で、コンクリート内部の湿度が86%以上(後 述の図-13の含水率4 ~ 5%以上に相当)の時、鉄筋の腐 食が認められる。コンクリートの含水率は3.5%以上に なると鉄筋が腐食環境に入る2)とされており、今後は、 この付近の数値の閾値としての妥当性を検証したい。

5. 3. 3 コンクリート内部温湿度とEPMAおよび鉄筋腐食

表-2および図-8に示した箇所において、以下の測定を 行った。 (1) EPMAによる塩化物イオン量測定 φ80㎜のコアについて、EPMAによりコア断面で深さ 1mm毎の区間にあるピクセルのCl-量平均値を計算し、 分布を作成する。ただし、粗骨材の多い区間ではCl- は少なく計算されるため、断面の粗骨材量の影響を考慮 した。 (2) コンクリート内部の湿度の計測 2011年10月31日から2013年4月15日まで、コンクリ ート内部の湿度を1時間毎に測定した。測定には、ボタ ン電池型の超小型温湿度データロガーを使用し、コンク リート表面から5 ~ 6cmのかぶり厚程度の深さに設置 し、湿度を測定した。 5. 3. 2 塩化物イオン量分布と中性化深さの関係 図-12に各測定箇所の塩化物イオン量分布と中性化深 さの一例(16号棟、50号棟、3号棟)を示す。 塩化物イオン量が中性化領域においては少なく、その 内部において突出して高くなるのは、中性化によるフリ ーデル氏塩の解離・濃縮現象と思われる。中性化は、多 くのケースでかぶり厚さに達していないことから、構造 物の劣化の主要因ではなく、塩分濃縮を引き起こしてい る点で付加的要因として位置付けられると推定される。 なお、タイル仕上げ(50号棟:50外1F_T:タイル仕上 げ)については全く中性化していない。タイル仕上げを 施した50号棟は海沿いに位置しているにも関わらず、 同様の立地条件の30号棟や66号棟号棟と比較して、塩 化物イオンの浸透量が少ないことから、タイルによるコ ンクリートの劣化抑制効果がうかがえる。 図-12 塩化物イオンの分布と中性化深さ 建物 30 外 1F_N1 16 外 1F_N1 16 内 3F_N1 16 内 3F_M1 16 内 5F_N1 50 外 1F_T1 25 外 1F_M1 57 外 1F_M1 65N 外 1F_M1 65N 外 1F_M2 65E 内 1F_M1 67 外 1F_M1 65S 内 1F_M 69 内 1F_T 3 内 1F_M1 かぶり厚 [mm] 鉄筋位置塩化 物イオン量 [kg/m3] 湿 A [ 40 16.08 8 60 3.19 8 30 3.55 8 70 2.48 7 40 0.35 70 2.01 11 70 3.21 10 50 1.44 40 10.23 9 90 3.05 9 110 0.29 80 0.38 8 100 0.25 90 0.21 120 3.74 9 湿度 Ave [%] 含水率 [%] 総細孔量 [mm3/g] 6.0 - 84.0 4.0 4.57 117.2 2.2 2.83 45.1 7.9 3.12 129.1 - - 113.8 17.2 - 76.9 04.9 6.09 78.9 - - 113.5 8.9 7.62 135.1 6.7 8.90 129.6 - - 100.6 9.6 5.63 72.6 - - 94.4 - - 130.5 3.3 5.54 108.6 鉄筋 腐食 完全 腐食 軽微 軽微 軽微 軽微 軽微 軽微 軽微 完全 腐食 軽微 軽微 軽微 軽微 軽微 軽微 表-3 調査結果一覧 写真-9 完全腐食鉄筋の例 写真-10 腐食軽微鉄筋の例

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6.軍艦島の局所環境

図-13に吸着等温線およびコア試験体のコンクリート 内部湿度と質量含水率の比較結果を示す(なお、図中の 「湿度30%および60%チャンバー」は、試験長さ10cmに 切断した採取コア試験体を、表面から5 ~ 6cmのかぶり 厚さ程度の深さまで削孔し、前述の超小型温湿度データ ロガーを設置し、その試験体を庫内温度20℃、湿度30% と60%の簡易環境チャンバー内に常置したコア試験体内 部の結果である)。また、測定箇所16外1F_N1のコンク リート試験片から、水蒸気等温吸着試験を実施した。こ の時、試料を0.15mm以下に微粉砕し、105℃乾燥機に よる絶乾状態から試験を行った。 図より、各棟の相対湿度と質量含水率は、吸着等温線 の吸着側に沿う形となり、コンクリート内部湿度と質量 含水率には高い相関が認められる。すなわち、この島の 構造物群は、長期間を経て、局所環境としての相対湿度 とコンクリートの含水率の関係としての「壮大な吸着等 温線」を創り上げていたことを示している。軍艦島全域 の他の構造物が、全てこの曲線上にプロットされるか否 かは今後の調査を待たねばならないが、鉄筋腐食の重要 な要因となる含水率を、相対湿度と材料の吸着等温線か ら評価できる可能性を示すものであると考える。 図-13 相対湿度と質量含水率と等温吸着曲線

7.今後の改修方法

一般に、有害物質を含む場合の補修方法は、それを除 去することが補修対策となる。しかしながら、文化財や 歴史遺産に相当する構造物に、この手法を当てはめるこ とは必ずしも妥当ではない。一方、鉄筋の最終的な腐食 の鍵となるのは、「水」と「酸素」の供給であることを 鑑みると(図-14)、この水分の浸入を遮断することは構 造物の保存・改修の一つには十分になりうる。そこで筆 者らは、軍艦島において、各種の表面含浸材等(図-15) について暴露試験を行い、現時点において、写真-11の ように表面含浸材等の効果を確認している。コンクリー トの外観を変化させずに水分の浸入を抑制する新たな視 点の改修方法が、今後、歴史的建造物の保存・改修の分 野で重要な技術となろう。 図-14 鉄筋の腐食メカニズム 図-15 表面含浸を塗布したコンクリートの外観 写真-11 軍艦島での暴露状況(材齢4年) 表 表 種類 主成分 アクリル・カ ム・ナトリウ 表面被覆材 水性アクリ リコン 無塗布 - シラン・シ サン シラン ケイ酸塩 表面含浸材 分 記号 SS-1 SS-2 S-1 S-2 S-3 K-1 K-2 カリウ ウム AKN ルシ E-AS N ロキ 塩 表-4 表面含浸材等の種類

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【謝辞】 本調査は、日本建築学会軍艦島コンクリート構造物劣 化調査WG他多くの関係各位により実施された。またデ ータの取りまとめにあたっては元東京理科大学大学院工 学研究科建築学専攻の楠麻希さんのご助力を得た。付し て謝意を表する。なお、写真は長崎市の特別な許可を得 て掲載したものである。

また、International Conference on the Regeneration

and Conservation of Concrete Structures (RCCS)国

際会議の開催にあたり、長崎市の絶大なるご助力をいた だくとともに、公益財団法人 前田記念工学振興財団お よび公益財団法人 大林財団の助成をいただいた。さら に24社の企業展示および6社の企業ロゴ掲示による協賛 をいただいた。ここに付して謝意を表する。 【参考文献】 1)‌‌阿久井嘉孝,滋賀秀實:東京電機大学出版局,軍艦島実測 調査資料集,1984. 2)‌‌古賀一八,林典男,平田延明:高濃度塩化物イオン含有RC 建築物の含水率および鉄筋腐食調査,コンクリート工学年 次論文集Vol.30,2008. 【執筆者】

8.軍艦島建造物の世界的な視野で捉えた場合

の建築材料学的価値

軍艦島に残存する構造物(ほぼ鉄筋コンクリート造) は、世界的にも貴重な研究資源であるといえる。これほ ど長期間、厳しい自然環境に曝され、極限まで劣化して しまった鉄筋コンクリート構造物が多数まとまった状態 で存在しているのは、世界全体でも軍艦島をおいて他に は類を見ないであろう。 臨床医学はある意味、末期患者の存在によって発展し てきた面が多分にあるが、建築学における軍艦島の位置 付けはこれに近い。すなわち、対象に試験的なアプロー チを施すことによってその反応・応答から多くの知見を 獲得するという点で臨床医学と建築学には共通性がある が、建築分野の場合、第三者への安全性などの観点から 末期に至る前にこのような状況の建物は一般に解体処理 される。これがある意味、建築物の耐久設計において究 極を目指すほどに不確定性が増す遠因かと思われる。軍 艦島を対象とした調査研究が継続されることにより、こ の分野の耐久性の研究が長足の進歩を成し遂げることは 明らかである。さらに、末期症状のRC建築物としての 軍艦島建造物を診断し、最後の活用、更正(生き返らせ ること)、ひいては安楽死のあり方を建築レベルで考察 し、その技術開発を検討することにより、建築分野の新 領域を開拓することも可能になろう。 2015年6月に、軍艦島の上陸を前提とした国際会議を 開催した(図-16)。この会議には、約250名の技術者・ 研究者が参加し、軍艦島の上陸を果たした(写真-12)。 軍艦島が、鉄筋コンクリートの耐久性に携わる全世界 の研究者・技術者の貴重な研究資産として位置づけら れ、やがて全世界の鉄筋コンクリートの耐久性研究のメ ッカになることを期待する。 図-16 軍艦島国際会議 写真-12 記念撮影(朝日新聞・池田良氏撮影) *1 今本 啓一

参照

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