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和歌山におけるアカジソ在来遺伝資源

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Academic year: 2021

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2017 年 3 月 11 日受理 連絡責任者:堀端 章([email protected]

和歌山におけるアカジソ在来遺伝資源

堀端 章・松川哲也

近畿大学生物理工学部(〒 649-6493 和歌山県紀の川市西三谷 930) 要旨:和歌山県の紀の川流域で古くから栽培されてきた薬用のアカジソ遺伝資源を地域の特産品として活用しよ うとしているが,そのためには類似の特徴をもつ他のシソ品種との間の優位性を明らかにしておく必要がある. そこで本研究では,強いシソ特有の香りを特徴とする和歌山県の在来シソ 2 系統と,「芳香性」をうたう市販の 3 品種,および,一般的なチリメンジソ 1 品種を供試して,形態的特徴および機能性成分含有量の調査を行って, 和歌山県の在来シソ系統の遺伝的および商業的優位性の評価を行った.その結果,和歌山県の在来シソ系統はア カジソであったが,「芳香性」シソ 3 品種はいずれもチリメンジソであった.和歌山県の在来シソ系統は,供試し た「芳香性」シソ品種よりも多くの機能性香気成分を含んでおり,この点で商業的有意性が認められた.もう一 方の機能性物質である水溶性ポリフェノールの含有量については,生葉では供試した品種・系統間で差がみられ なかったが,乾燥葉では品種間差が拡大した.乾燥期間中にも水溶性ポリフェノールの生合成が行われているこ とが示唆された. キーワード:シソ,遺伝資源,芳香性,商業的優位性,機能性物質

緒言

シソ(Perilla frutescens (L.) Britton var. crispa (Thunb.) H. Deane)には,葉の色や縮れの有無によって区分される複 数の品種群があるが,品種群間の生殖障壁は低く,相互に 交配することが可能である.しかしながら,葉の色や形態 によって利用法が異なるため,栽培品種では古くから異な る作物として区分されてきた.このため,栽培品種におい ては,各品種群が独自の遺伝的背景をもつと考えられる. 葉の両面が緑色で縮れのないアオジソ(P. frutescens (L.) Britton var. crispa (Benth.) W.Deane f. viridis (Makino) Makino)および葉の両面が緑色で縮れのあるチリメンアオジ ソ(P. frutescens var. crispa (Benth.) W.Deane 'Viridi-crispa') は,刺身のツマや天ぷらなど,青果物として用いられる. 葉の両面が赤紫色で縮れのあるチリメンジソ(P. frutescens var. crispa f. crispa (Thunb.) Makino)および葉の表が緑色 で葉の裏が赤紫色で縮れの少ないマダラジソ(P. frutescens (L.) Britton var. crispa (Thunb.) H.Deane f. rosea (G.Nicholson) Kudô)は,梅干し,柴漬けなどの着色用に

利用される.葉の両面が赤紫色で縮れのないアカジソ(P.

frutescens (L.) Britton var. crispa (Benth.) W.Deane f. purpurea (Makino) Makino)は,生薬「ソヨウ」あるいは「ソ

シ」の原料として利用される.第一七改正日本薬局方(厚 生労働省 2016)によれば,生薬として利用できるのは, アカジソまたはチリメンジソの葉または枝先であって,乾 燥葉におけるペリルアルデヒドの含有量が 0.08 %以上の ものと規定されているが,実際には,チリメンジソが用い られることはほとんどなく,専らアカジソが用いられてい る.なお,これらの分類(米倉・梶田 2003)は,作物と しての特性によって便宜的に分けられたものであり,交雑 によって容易に中間型を生じるため,典型例を示すことは できても,全ての系統について決定的な分類を行うのは困 難である. 我が国へのアカジソの伝来は,遣隋使・遣唐使にまで遡 ると伝えられており,その栽培の歴史は古い.しかしなが ら,安価な輸入品に押されて経済生産はほぼ無くなり,漢 方製薬会社 1 社の委託栽培としてわずかに残る程度であ る.近畿大学生物理工学部の位置する紀の川中流域でも, 十数年前までは薬用のアカジソが経済生産されていたが, 現在は生産が途絶えている.矢田農園(和歌山県海南市) では,近隣の篤農家とともに「シソ研究会」を立ち上げ, この遺伝資源を保存するとともに,新しい経済作物として 再興しようと考えて試験生産を始めた.我々は,この趣旨 に賛同し,在来遺伝資源の遺伝的評価ならびに機能性成分 の定量分析,また,在来遺伝資源の特性を発揮できる商品 の開発に参画してきた.これまでに,青色光照射によって, ペリルアルデヒドの含有量が顕著に増加すると同時に花成 抑制が起こること(堀端ら 2013)を明らかにし,さらに, シソエキスを含んだ石鹸の試作や,乾燥葉を材料とした「赤 紫蘇茶「PERILLA ROUGE」」の試作・試販を行ってきた. 和歌山県のアカジソ在来遺伝資源の商業利用を考える際 には,類似の特徴をもつ市販のシソ品種との差別化が問題 となる.これまでの研究から,本系統の機能性香気成分含 有量は,一般的なチリメンジソに比べて顕著に高いことが 明らかになっている(堀端ら 2013)が,調査の結果,本 系統と同様に「芳香性」をうたうアカジソ(後述するよう に分類上のアカジソと同一ではない可能性がある)が他に も存在することが明らかになった.そこで本研究では,和

論 文

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歌山県のアカジソ在来遺伝資源とともに,「芳香性」を特 徴とする入手可能なアカジソまたはアカチリメンジソの品 種を近畿大学生物理工学部(和歌山県紀の川市)の実験圃 場内で栽培し,その形態的特徴および機能性成分含有量を 調査して,和歌山県のアカジソ在来遺伝資源の遺伝的評価 および商業的優位性の評価を行った. シソの葉に含まれる機能性成分には,ペリルアルデヒド のほかに,リモネン,ロスマリン酸,カフェ酸などがある. このうち,ペリルアルデヒドとリモネンには中枢神経抑制 作用(菅谷ら 1981,Brown et al. 2002)があり,さらにペ リルアルデヒドには抗鬱作用(Takagi et al. 2005)も知ら れている.これらの作用は経鼻吸収でも効果を示し,「赤 紫蘇茶」のリラックス作用を期待させる.また,ペリルア ルデヒドには,血管拡張作用(Ito et al. 2008)も報告され ており,飲用する場合に血圧上昇を抑制する効果が期待さ れる.一方,ロスマリン酸とカフェ酸は,シソ科植物に多 く含まれるポリフェノールであり,それぞれ抗酸化作用が 報告されている(佐々木ら 2005,Nardini et al. 1998).さ らに,ロスマリン酸には,血糖値上昇抑制作用(東野ら 2011),抗鬱作用(Takeda et al. 2002),アトピー性皮膚炎 の軽減作用(三木本ら 2002)も報告されている.これら のポリフェノールの作用は,「赤紫蘇茶」に血糖値スパイ クの軽減やアンチエイジング効果を期待させるものであ る.このため,本研究では,これら 4 種の機能性成分の含 有量を調査した.

材料および方法

供試品種・系統 矢田農園が入手したアカジソ在来系統(以後,KK と略 記する)は,高野山に起源をもつ奈良県五條市の薬種問屋 によって管理されてきた薬用紫蘇遺伝資源と伝えられてお り,遣唐使などによって中国から伝来した薬用紫蘇として の初期の特徴を強く残す系統と推察される.また,みなべ 町の南部川上流域のウメ栽培農家である平野誠氏より,平 野氏のウメ園地で半栽培されていたアカジソ在来系統(以 後,KM と略記する)の供与を受けた.平野氏によれば, この系統と同じ特徴をもつシソは,南部川上流域のなかで もこの地域内にのみ存在し,隣接する地域にはみられない とのことである.第 1 図は,平野氏のウメ園地で本系統が 半栽培されている様子を示している. 一方,筆者がこれまで供試したチリメンジソは芳香性を 示さなかった(堀端ら,2011,2013)が,「芳香性」で赤 紫色の葉をもつシソを探索したところ,複数の系統を見出 した.中原採種場株式会社(福岡県福岡市)が販売してい る 天神赤しそ (以後,HT と略記する)には,『梅で有 名な天神さまを祀る,太宰府天満宮の近在で昔から栽培さ れて,門外不出だった芳香性赤しそ.シソ特有の強い香り をもつ.葉は濃赤紫色で,縮みと光沢があり,肉厚の大葉 で柔らかい.』と記されていた(中原採種場株式会社ホー ムページ,http://www.nakahara-seed.co.jp/).高野山に比肩 される歴史をもつ太宰府を起源とすることから,和歌山県 のアカジソ在来系統に近い特性をもつ可能性があると考え られた.なお,品種名には『赤しそ』と記されているもの の,その説明文にあるとおり,葉に縮れがあるため,品種 群としてはチリメンジソに含まれると予想される.同じ中 原採種場株式会社が販売している 芳香赤しそ (以後, HH と略記する)には,『シソ独特の芳香をもつ赤シソ. 葉色は濃い鮮紫色で,葉縁の切れ込みは浅く,葉面の縮緬 は少なく,葉肉は厚目の大葉.』との記載があった(中原 採 種 場 株 式 会 社 ホ ー ム ペ ー ジ,http://www.nakahara-seed. co.jp/).また,松永種苗株式会社(愛知県江南市)によっ て育成された芳香性チリメンジソ品種である 永交赤ちり めんしそ紫香 (以後,HS と略記する)には,『梅干し漬 けに最適な縮緬の赤しそ.その鮮やかな赤紫の発色の良さ は他品種の追随を許しません.加えて味の良さと香りの高 さが梅漬けを最高に仕上げます.』との記載があった(松 永種苗株式会社ホームページ,http://www.msk-net.co.jp/). 本研究には,この和歌山県のアカジソ在来系統 2 系統, 市販の芳香性シソ 3 品種に,対照として加えた,クラギ株 式会社(三重県松阪市)のチリメンジソ系統 赤ちりめん しそ (以後,CA と略記する)の 6 品種・系統を供試した. 栽培試験と形態調査 2015 年 4 月 28 日,セルトレー用培土を充填した 110 穴 のセルトレーを用いて,品種・系統ごとに,55 セルに各 3 粒から 4 粒の種子を播種し,無加温のガラスハウス内で 3 ∼ 4 cm の大きさになるまで育てた.発芽が揃った頃,各 セル 1 本の苗を残して間引いた.2015 年 6 月 11 日,KM については 40 個体,ほかの 5 品種・系統については 20 個 体の平均的に成長した個体を選抜して,それぞれ 12 cm の 第 1 図 みなべ町の南部川上流域で発見されたアカジソ系統.     平野誠氏の圃場で半栽培されている状況.     (2015 年 8 月 18 日撮影)

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育苗ポットに移植し,引き続き無加温のガラスハウス内で 栽培した.さらに,15 cm 程度に生育した 2015 年 7 月 11 日, KM については 20 個体,ほかの 5 品種・系統については 10 個体の平均的に成長した個体を選抜して,20 cm のポッ トに定植し,引き続き無加温のガラスハウス内で栽培した. これらのポットに充填した培土は,与作 N-150(ジェイカ ムアグリ株式会社,東京都千代田区,N:150 mg/L,P:1500 mg/L,K:150 mg/L,20L)2 袋,バーク堆肥(有限会社ニッ トウバーク産業,和歌山県御坊市,N:1.2 %/DW,P:0.5 %/ DW,K:0.3 %/DW,40L)1 袋,および,システムソイル 101 号(イワタニアグリグリーン株式会社,東京都台東区, N:80 ∼ 200 mg/L,P:1000 mg/L,K:100 ∼ 150 mg/L,50L) 1 袋を混合したものである.灌水は,朝・夕の 1 日 2 回行っ た.ハダニの食害を防ぐコロマイト(三井化学アグロ株式 会社,東京都中央区),ヨトウムシの食害を防ぐアディオ ン(住化アグロ製造株式会社,山口県下松市)および水道 水を 1:1:1000 の比に混合した薬液を適宜散布した. 農林水産省のシソ品種登録審査基準にしたがって形態形 質の調査を行った.品種登録審査における基準品種が入手 できなかったため,供試 6 品種・系統相互の比較によって 評価値を付した.幼苗期には,発芽直後の子葉と胚軸にお けるアントシアニン着色程度と,本葉が約 1 cm となった 時期の子葉表のアントシアニン着色程度と子葉の大きさを 評価した.10 節目の葉が完全に展開した成熟期には,10 節目の葉について,葉の形,葉の大きさ,葉の切れ込み程 度,鋸歯の形,鋸歯の先端部の形,小型鋸歯の出現度およ び葉のちぢみの程度ついて目視による評価を行った.また, 収量性の指標として,葉の密度,葉柄の長さおよび節間長 について目視による評価を行った. 機能性成分含有量の定量分析 成熟期の形態形質の調査と同時に,機能性成分含有量を 定量するためのサンプルを採取した.供試品種・系統ごと に,健全に生育している平均的な 3 個体を選び,選抜した 3 個体の主枝および側枝から,葉長が 1.0 cm を越える葉が ついた最上位の節を起点に数えて 2 節下の葉を 6 ∼ 7 枚採 取した(個体を区別せずに混合採取した).採取した葉の うち,2 ∼ 3 枚は直ちに− 30 ℃の冷凍庫に入れて冷凍し, 残りの 3 ∼ 4 枚はシリカゲルを入れたデシケーター内で乾 燥させた. 6 品種・系統ごとに,生葉(冷凍葉)は液体窒素温度下で, 乾 燥 葉 は 常 温 下 で, ミ キ サ ー ミ ル(Retsch,Haan, Germany,MM-301)を用いて粉砕した(25 往復 / 秒,1 分間). 生葉の香気成分の分析では,粉末試料 2.0 g 程度を精秤 して 15 mL ガラス遠心管に入れ,5 mL のジエチルエーテ ルを加えて冷蔵庫内で 24 時間静置して香気成分を抽出し た.一方,乾燥葉の分析では,粉末試料 0.2 g 程度を精秤 して 2 mL マイクロチューブに入れ , これに 1 mL のジエチ ルエーテルを加えてボルテックスで 10 秒間攪拌し , 軽く 遠心した後,冷蔵庫内で 24 時間静置して抽出した.いず れの場合も,24 時間経過後に,ボルテックスで攪拌して から遠心分離を行い,得られた上澄みを孔径 0.2 μm のシ リンジフィルターで濾過して GLC 分析に供した.GLC 定 量分析における標準サンプルには,ジエチルエーテル 1 mL に 1 μL のペリルアルデヒド(以後,PA と略称する) と 1 μL のリモネン(以後,Lim と略称する)を加えたも のを用いた.標準サンプルは劣化しやすいため,測定日に 新しいものを作成した.GLC 分析の条件は,第 1 表に示 すとおりである.標準サンプルから得られたクロマトグラ ムの PA および Lim に相当するピークのエリア面積を基準 に,精秤した試料の重量で補正しながら各試料に含まれる PA および Lim の含有量を算出した.再現性を担保するた め,1 試料につき 2 回の測定を行い,平均値を求めた. 第 1 表 GLC の分析条件 ⿦⨨ *&%䠄ᓥὠ〇సᡤ䠅 ᳨ฟჾ ),' 䝕䞊䝍ฎ⌮⿦⨨ &KURPDWR352 䠄ᰴᘧ఍♫䝷䞁䝍䜲䝮䜲䞁䝇䝒䝹䝯䞁䝖䠅 䝣䝳䞊䝈䝗䝅䝸䜹 䜻䝱䝢䝷䝸䞊䜹䝷䝮 4XDGUH[䠄ᮾி໬ᡂᰴᘧ఍♫䠅 㛗䛥P䠈ෆᚄ PP䠈⭷ཌ ȝP  F\DQRSURS\O PHWK\OSRO\VLOR[DQH 䜹䝷䝮 ᗘ  Υ䠉 Υ䠄 ศ䛛䛡䛶᪼ 䠅 ヨᩱᑟධ㒊 ᗘ  Υ ᳨ฟ㒊 ᗘ  Υ 䜻䝱䝸䜰䜺䝇䠄+H䠅ᅽຊ N3D 䝯䜲䜽䜰䝑䝥䜺䝇ᅽຊ N3D ✵Ẽᅽ N3D Ỉ⣲䜺䝇ᅽຊ N3D 385*( ὶ㔞 P/PLQ 63/,7 ὶ㔞 P/PLQ 63/,7 ẚ  䜻䝱䝸䜰䜺䝇⥺㏿ᗘ FPVHF ポリフェノールのロスマリン酸(以後,RA と略記する) およびカフェ酸(以後,Caf と略称する)の定量分析に関 しては,生葉の粉末試料では 1.0 g 程度,乾燥葉の粉末試 料では 0.2g 程度をそれぞれ精秤し,15 mL ガラス遠心管 に入れて 50% エタノールを 10 mL 加えて軽く撹拌した後, 12 時間静置して抽出した.12 時間経過後に,ボルテック スでよく攪拌してから遠心分離を行い,孔径 0.2 μ m のシ リンジフィルターで濾過して HPLC 分析に供した.HPLC 定量分析における標準サンプルとして,RA および Caf を 各 50.0 mg/L 含む 50% エタノール溶液を用意した.HPLC の分析条件は,第 2 表に示すとおりである.標準サンプル から算出された RA および Caf に相当するピークのエリア 面積を基準として,精秤した試料の重量で補正しながら各 試 料 に 含 ま れ る RA お よ び Caf の 含 有 量 を 算 出 し た. HPLC 分析における再現性は高かったので,1 試料の測定 回数は 1 回とした.

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第 2 表 HPLC の分析条件  +3/& ⿦⨨ /&$'93䠄ᓥὠ〇సᡤ䠅 ᳨ฟჾ 63'$9䠄ᓥὠ〇సᡤ䠅 䝕䞊䝍ฎ⌮⿦⨨ &KURPDWR352 䠄ᰴᘧ఍♫䝷䞁䝍䜲䝮䜲䞁䝇䝒䝹䝯䞁䝖䠅 䜹䝷䝮 &06ϩ䠄䝘䜹䝷䜲䝔䜽䝇䠅 㛗䛥PP䠈ෆᚄ PP 䜹䝷䝮 ᗘ  Υ ⛣ື┦ &+&1P0.+32  ⛣ື┦䛾ὶ㏿ P/PLQ

結果

和歌山県のアカジソ在来系統の形態的特徴 発芽直後では,供試 6 品種・系統の全てにおいて,葉の 表が緑色,葉の裏および胚軸が赤紫色であり,品種 ・ 系統 間に差は認められなかった.本葉が約 1 cm を超えた時期 には,第 3 表に示すように,子葉の表面の着色程度と子葉 の大きさに関して品種・系統間の差が認められた.子葉の 表面の着色程度に関しては,KK と CA がほぼ完全な赤紫 色であったのに対して,KM と HS は緑色の部分をかなり 残していた.HT と HH は両者の中間にあった.子葉の大 きさに関する分散分析を行った結果,品種・系統間の差は 高度に有意であった(P = 3.1 × 10-10 ).品種・系統間の 差を Tukey の多重検定によって求めたところ,HH と他の 5 品種 ・ 系統との間にのみ 5%水準の有意差が認められた. 和歌山県のアカジソ在来系統である KK と KM との間で は,子葉の表面のアントシアニン着色程度の差が見られた が,子葉の大きさに関する差は見られなかった. 第 2 図は,供試した 6 品種・系統の成熟期における葉の 形態を示し,第 4 表は,成熟期の葉の形態形質に関する評 価値を示す.成熟期の葉の形態には,品種 ・ 系統間に顕著 な差が認められた.和歌山県のアカジソ在来系統(KK お よび KM)は,いずれも葉に縮れのないアカジソであった のに対して,残りの 4 品種・系統は葉に顕著な縮れのある チリメンジソであった.また,KK と KM を比較すると, KM の葉は KK に比べてやや長く,葉縁の切れ込みが浅かっ た.KK の鋸歯が五角形であるのに対して,KM の鋸歯は 三角形であった.このように,KK と KM の間でも形態形 質に関する差は明瞭であり,同じアカジソに属していても 遺伝的に同一ではないと考えられた. 䜰䜹䝆䝋ᅾ᮶⣔⤫䠄..䠅㻌 㻌 䜰䜹䝆䝋ᅾ᮶⣔⤫䠄.0䠅     ኳ⚄㉥䛧䛭䠄+7䠅 ⰾ㤶㉥䛧䛭䠄++䠅      Ọ஺㉥䛱䜚䜑䜣䛧䛭⣸㤶䠄+6䠅㻌  ㉥䛱䜚䜑䜣䛧䛭䠄&$䠅 第 2 図  供試 6 品種・系統の成熟期における葉の形態.(2015 年 8 月 11 日撮影) 第 3 表  本葉が約 1 cm を超えた時期における子葉表の着色程度 と子葉の大きさ ရ✀ ⣔⤫ ㄪᰝ ಶయᩘ Ꮚⴥ䛾⾲㠃䛾䜰䞁䝖 䝅䜰䝙䞁╔Ⰽ⛬ᗘ Ꮚⴥ䛾኱䛝䛥䠄PP䠅 “ ᶆ‽೫ᕪ KK 84 ⃰ 4.19 ± 0.65 KM 30 ῐ 4.37 ± 0.72 HT 72 ୰ 4.51 ± 0.67 HH 97 ୰ 5.34 ± 0.72 HS 95 ῐ 4.44± 0.75 CA 85 ⃰ 4.42± 0.71 第 4 表 供試 6 品種・系統の成熟期における葉の形態形質 ᙧ㉁䠸ရ✀䞉⣔⤫ .. .0 +7 ++ +6 &$ ⴥ䛾ᙧ ୰a㛗 㛗 ୰ ୰ ୰ ୰ ⴥ䛾኱䛝䛥 ୰a኱ ኱ ᑠ ୰ ᑠ ୰ ⴥ䛾ษ䜜㎸䜏⛬ᗘ ୰ ὸ ῝ ῝ ୰a῝ ୰ 㗬ṑ䛾ᙧ ஬ゅᙧ ୕ゅᙧ ஬ゅᙧ ୕ゅᙧ ஬ゅᙧ ୕ゅᙧ 㗬ṑ䛾኱䛝䛥 ኱ ኱ ᑠ ᑠ ኱ ኱ ᑠᆺ㗬ṑ䛾ฟ⌧ᗘ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ⴥ㠃䛾⦰䜜 ↓ ↓ ᙉ ୰aᙉ ᙉ ୰

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第 3 図は,供試した 6 品種・系統の開花前の全草形態で ある.和歌山県のアカジソ在来系統(KK および KM)は, 市販の 4 品種(HT,HH,HS および CA)に比べて,節間, 葉柄の長さがともに長く,全体的に葉が疎らに着生する傾 向にあった.市販の 4 品種よりも背が高く,大型ではある が,葉が疎らに着生しているために収量性は低いと推察さ れた. 機能性成分含有量 第 4 図は,同一環境で栽培した供試 6 品種・系統の生葉 および乾燥葉について,GLC 分析で得られた PA 含有量お よび Lim 含有量を示している.本実験では,品種・系統 ごとに任意の 3 個体から採取した葉を混合して分析に用い たため,各品種・系統の標準偏差の算出および系統間差の 統計学的検定はできなかった.まず,生葉についてみると, 和歌山県のアカジソ在来 2 系統の PA 含有量が 1.02 ∼ 1.71 μL/gFW であったのに対して,ほかの 4 品種は 0.50 μL/ gFW 以下であった.また,Lim の含有量は,アカジソ在 来 2 系統では 0.17 ∼ 0.29 μL/gFW であったのに対して, ほかの 4 品種では 0.07 μL/gFW 以下であった.このように, 2 種の香気成分について,和歌山県のアカジソ在来系統の 生葉における含有量は,ほかの 4 品種の 2 倍以上であった. この結果は,生葉を原料として用いる商品では,『芳香性』 に関して,和歌山県のアカジソ在来系統に商業的優位性が あることを示唆している.また,たとえ『芳香性』をうた う品種であっても,チリメンジソにはアカジソを超える香 気成分を有するものがないことがあらためて示された.一 方,乾燥葉では,PA,Lim ともに生葉よりも含有量が増 加した.和歌山県のアカジソ在来 2 系統の PA 含有量が 4.50 ∼ 5.38 μL/gDW であったのに対して, 天神赤しそ (HT) では 3.67 μL/gDW, 永交赤ちりめんしそ紫香 (HS)では 2.48 μL/gDW と,その差は生葉の場合と比べて縮まった. シソの葉の乾燥過程では,揮発性の PA や Lim の一部は揮 散する.生葉から乾燥葉への加工の過程で,品種・系統間 差が縮まるというこの結果は,乾燥過程における香気成分 の損失に品種・系統間差がある可能性を示唆している.こ の違いは,葉の厚さなど,組織学的な差異に起因する可能 性があり,今後の育種目標になるかも知れない.生葉にお ける香気成分含有量が少なくても,乾燥葉における香気成 分含有量が高ければ,シソ茶などの乾燥葉を原料とする場 合には,商業的優位性があると判断される.和歌山県のア カジソ在来 2 系統は,乾燥葉においても,ほかの 4 品種よ りも PA および Lim の含有量が高く,商業的優位性がある と判断された. 1.02 1.71 0.50 0.46 0.44 0.31 0.17 0.29 0.06 0.07 0.06 0.06           KK KM HT HH HS CA 4.50 5.38 3.67 1.58 2.48 0.95 0.72 0.87 0.49 0.19 0.34 0.11     KK KM HT HH HS CA 3$ ࠾ࡼࡧ /LP ྵ ᭷㔞㸦 —/J': 㸧  3$ ࠾ࡼࡧ /LP ྵ ᭷㔞㸦 —/J ): 㸧  ⏕ ⴥ ஝⇱ⴥ 第 4 図 供試 6 品種・系統の生葉および乾燥葉における     ペリルアルデヒドおよびリモネンの含有量 ڧ䠖䝨䝸䝹䜰䝹䝕䝠䝗䠄3$䠅㻌ڦ䠖䝸䝰䝛䞁䠄/LP䠅 第 5 図は,同一環境で栽培した供試 6 品種・系統の生葉 および乾燥葉について,HPLC 分析で得られた RA 含有量 &$ ++ +6 +7 .. .0 第 3 図 供試 6 品種・系統の開花前の全草形態.(2015 年 8 月 11 日撮影)

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および Caf 含有量を示している.香気成分の分析と同様, 採取した葉を混合して分析に用いたため,各品種・系統の 標準偏差の算出および系統間差の統計学的検定はできな かった.生葉の RA 含有量は 0.28 ∼ 0.84 mg/gFW の範囲に, Caf 含 有 量 は 0.42 ∼ 0.74 mg/gFW 範 囲 に 収 ま り,KK の RA 含有量がやや低く,KM の RA 含有量がやや高いほかは, 品種・系統間の差は小さかった.ところが,乾燥葉では, KK,KM および HS の RA 含有量が 32.2 ∼ 39.0 mg/gDW と, 20.6 mg/gDW 以下の残りの 3 品種よりも顕著に高くなっ た.一方,Caf 含有量は,乾燥葉でも 6.1 ∼ 9.3 mg/gDW の範囲にあり,品種・系統間の差は小さかった. 0.28 0.84 0.51 0.41 0.44 0.44 0.42 0.69 0.53 0.66 0.66 0.74           KK KM HT HH HS CA 33.5 32.2 15.6 12.0 39.0 20.6 6.1 7.9 9.3 6.3 8.5 8.1      KK KM HT HH HS CA 5$ ࠾ࡼࡧ &DI ྵ᭷㔞㸦 PJ J ' : 㸧  5$ ࠾ࡼࡧ &DI ྵ᭷㔞㸦 PJ J ) : 㸧 ⏕ ⴥ ஝⇱ⴥ 第 5 図 供試 6 品種・系統の生葉および乾燥葉における     ロスマリン酸およびカフェ酸の含有量 ڧ䠖䝻䝇䝬䝸䞁㓟䠄5$䠅㻌ڦ䠖䜹䝣䜵㓟䠄&DI䠅 ここで,乾燥過程において,RA や Caf の合成または分 解 が な い と す れ ば, 生 葉 中 の 揮 発 成 分( 含 水 率 85 ∼ 95%,その他の揮発性成分 1%以下)が全て乾燥によって 失われた場合の RA および Caf の濃縮率は 10 ∼ 20 倍と見 積もることができる.第 5 表に示すように,Caf の濃縮率 は 10 ∼ 17 倍であり,概ね想定される範囲に収まった.こ れに比べて,RA の濃縮率は 29 ∼ 118 倍であって乾燥に ともなう濃縮のみでは説明できなかった. 第 5 表 シソの葉の乾燥過程における RA および Caf の濃縮率 ⃰⦰⋡ ရ✀䡡⣔⤫ KK KM HT HH HS CA RA 118 38 31 29 89 47 Caf 15 11 17 10 13 11

考察

形態形質調査の結果,供試した 6 品種・系統のうち,和 歌山県のアカジソ在来系統のみがアカジソ品種群に属し, ほかの 4 品種はチリメンジソ品種群に属すると推察され た.既述のように,和歌山県のアカジソ在来系統 KK は, 奈良県五條市の薬種問屋で管理され,紀の川流域で栽培さ れてきた系統であり,KM は,南部川上流の隔離された地 域で半栽培されてきた系統であって,両者の栽培地域は直 線距離で約 50km 離れている.吉野から高野山を経て熊野 に至るこの地域は,大峰山や熊野三山などの修験道の聖地 を中心として発展してきた地域であって,古くから人的交 流があり一般に高野文化圏と称される.同一の地域内で栽 培され,互いによく似た形質を示すこの 2 系統は,基本的 には単一の遺伝資源に由来するのではないかと考えられ た.なお,KK と KM の間には,形態形質や機能性成分含 有量に関する差があり,互いに分化していると思われる. 太宰府も歴史的には高野山と同程度に古い.しかし,太宰 府に伝わったと伝承される 天神赤しそ (HT)は,形態 的にはチリメンジソに分類された.HT は,通常のチリメ ンジソ(CA)に比べると香気成分がやや多いものの,和 歌山県のアカジソ在来系統には及ばない.和歌山県のアカ ジソ在来系統と 天神赤しそ は,古くは同一であったか も知れないが,平野部に位置する太宰府では地理的隔離が 不十分であり,1000 年以上にわたって維持される過程で チリメンジソに変容したのではないかと考えた. 一方,機能性成分含有量では,和歌山県のアカジソ在来 系統は,市販品種に比べて,生葉の PA 含有量および乾燥 葉の RA 含有量において優れることが明らかになった.和 歌山県のアカジソ在来系統の生葉と乾燥葉について RA 含 有量を比較すると,乾燥過程における脱水のみでは説明で きないレベルで RA の含有量が増加していた.このことは, 乾燥過程においても RA の生合成が行われている可能性を 示唆する.特に,KK と HS では RA の濃縮率が 80 倍を超 え,29 ∼ 47 倍のほかの品種・系統とは明らかに異なった. 両群の間には,乾燥期間中のロスマリン酸の生合成に関わ るような遺伝的差異がある可能性がある.

謝辞

本研究の一部は,近畿大学生物理工学部戦略的研究課題 「紀州在来薬用紫蘇遺伝資源の地域ブランド化に関する研 究」として行ったものである.

引用文献

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米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデッ クス」(YList),http://ylist.info/ (2017 年 2 月 25 日)

Germplasms of Red Perilla Native to Wakayama Prefecture, Japan

Akira Horibata, Tetsuya Matsukawa

Faculty of Biology-Oriented Science and Technology, Kindai University (930, Nishi-mitani, Kinokawa, Wakayama 649-6493, Japan)

Summary:A native variety of red perilla (Perilla frutescens (L.) Britton var. crispa (Thunb.) H. Deane) with an extremely

fi ne fragrance had been cultivated in the Kinokawa river basin, Wakayama Prefecture, Japan, since ancient times up to about 10 years ago. We hope to promote this germplasm as a regional specialty product; thus, it is necessary to clarify the superiority of the germplasm to other commercial red perilla varieties with similar characteristics. In this study, we compared the morphological characteristics and functional substance content of two germplasms native to Wakayama with those of three commercial varieties of aromatic red perilla and the common variety chirimen-jiso (red perilla with frilly leaves). The morphological characteristics showed that the native Wakayama germplasms are classifi ed as aka-jiso (red perilla with smooth leaves), whereas all three aromatic varieties are classifi ed as chirimen-jiso. Quantitative analysis of the aromatic substances perillaldehyde and limonene showed that native Wakayama germplasms contain more than twice the amount of aromatic substances compared with the aromatic varieties. Thus, the native Wakayama germplasms should be commercially superior. There were no differences between the cultivars in the content of the water-soluble polyphenols rosmarinic acid and caffeic acid, which are the most important functional substances in perilla, in the fresh leaves, although there were greater differences in the dried leaves. This result suggests that the biosynthesis of water-soluble polyphenols continued as the leaves dried.

Key Words:aromaticity, commercial superiority, functional substance, germplasm, perilla

Journal of Crop Research 62: 11-17 (2017) Correspondence: Akira Horibata ([email protected])

参照

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