173 ひとりが自分の将来の職業生活を具体的にイメージで きるようにすることにある。作成された『中学生が 作った職業ガイドブック』は,河合塾の協力と支援も あって本格的な冊子(カラー表紙,本格的装丁)とし て仕上げられていることもあり,生徒たちからはこの 冊子を書店で売れるのではないかとの期待もあったと いう。また,そのことが,教師の想像以上に,生徒た ちのやる気を喚起したとの報告は,金銭・金融教育に 関する動機づけにおいて興味深いことであったためか, それに関する質問がフロアーから多くなされた。ちな みに冊子の原価は一部 500 円(300 部で印刷代 15 万 円)で,河合塾の教育支援による費用で全額賄ったと のことであった。 (文責:宇佐見義尚) 第 6 分科会 第 1 報告は斎藤清会員(兵庫県立大学)による 「データでみる東日本大震災の経済教育実践」であっ た。斎藤会員は,東日本大震災を受けて,当初のシラ バスにそった教育課題を圧縮し,6,7 月は大震災に 内容を特化して授業を進めた。大災害を前にして,前 期のほぼ半分の 2 ヶ月を,震災を中心とした授業に急 きょ変更したことは驚きである。 斎藤会員開発の XCAMPUS がそれを可能にした。 経済諸変量の比率と規模のグラフィカルな理解が,研 究のみでなく,経済教育を前進させている。これが画 期的な経済教育実践を可能にした。教育と研究を同時 に進められてきた斎藤会員だからこそ可能な教育実践 である。 第 2 報告は小森治夫会員(京都橘大学)の「7 回連 続特別講義「エネルギー問題」に取り組んで」であっ た。この報告は原子力を中心とした様々な映像資料を 素材とした授業実践の報告である。この授業実践の特 徴のひとつは,そのあつかう範囲の広さである。あつ かった題材の一部を列挙すれば,チェルノブイリの原 発事故,東京電力の過去の原発事故隠し,東海村の臨 界事故,自然エネルギー,原発と地域経済,原発労働 者などである。 この授業実践は 2001 年から始まった試みの延長線 上にあるとともに,小森会員自身の 1999 年からの川 内原発の研究を承けたものである。そのため,原子力 発電をめぐる問題をきわめて多面的にアプローチする 授業となっている。 研究を教育に反映させることと,地道に一貫性を もって,実践をつづけることが実を結んだ教育実践と いうことができる。 第 3 報告は高橋勝也会員(東京都立桜修館中等教育 学校)の「中学校・高等学校『道徳』と高等学校『公 民科』の狭間で─便乗値上げを例に課題を探る ─」であった。東日本大震災後の燃料不足から生じ たガソリン価格の便乗値上げを,単なる興味本位では なく,どのように「道徳」・「公民科」の授業のなかで 取り上げていくかという課題を問題としたものであっ た。 報告者が,生徒・学生に対してアンケート調査を行 い,消費者としての感情面にも配慮しながら,教材を 仕上げていく過程が報告された。そして,便乗値上げ が,単なる個人の抜け駆けではなく,経済学的現象と しても把握されるうることを生徒に理解させた。「効 率と公正」,「幸福,正義,公正」などの理解を求めら れ始めた中高社会科教育の発展における,経済学の視 点の重要性を指摘している。大学の経済学教育にとっ ても学ぶべき点が多い。 第 4 報告は,岩田年浩会員(大阪経済法科大学)の 「大震災を 3,4 年生のゼミで取り組んで」であった。 報告は「震災に関わる小中学生の素朴な疑問に経済学 は答えることができているか?」という問題提起から はじまり,刺激的だった。 初めは,プレゼンテーション能力や基本的な学ぶ姿 勢に問題のある学生が,プレゼン報告会にむけて実践 的に準備を進めていく中で,飛躍的な成長をとげたこ とが報告された。 素朴な疑問を軽視せずに,かつ,ゼミナールという 実践的・集団的な活動を通じて,研究と教育の統一を 実現させているところに学ぶべき点があった。 (文責:大坂洋,増田和夫) 第 7 分科会 第 7 分科会は,中国からの報告者が不参加となった ために,「諸外国の経済・金融教育」という共通テー マの下に,日本より 1 件,フィリピンから1件,韓国 から 2 件の報告がなされた。 第 1 報告は,「経済倫理・金融倫理調査は何を示す か?:日米比較を通して」というテーマで,弘前大学 の猪瀬武則会員,三重大学の山根栄次会員,信州大学 の栗原久会員,新潟大学の高橋桂子准教授の共同研究 として,猪瀬会員によって報告がなされた。同研究グ ループは 2010 年に,全国 15 大学の 1,714 名に対して, イリノイ州立大学のトーマス・ルーシー教授によって The Japan Society for Economic Education
第6分科会(分科会報告,大会報告 会務報告)
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