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金時ニンジン根部の着色に及ぼす各種栽培条件の影響

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Academic year: 2021

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Ⅰ 緒   言  西日本の中山間地域における簡易ハウスを利用し たホウレンソウ周年栽培において,夏期に病害や生 理障害が多発し作付けが困難となっている地域が見 られる.また,夏期以外のホウレンソウの栽培が容 易な時期では,産地間の競合により価格が低迷して いることから,ホウレンソウに代わる新規作物の導 入が検討されている.一方,2013 年 12 月に和食が ユネスコ無形文化遺産に登録されたことから,和食 材への需要が高まっている.  そこで近畿地方の一部の地域では新規作物とし て,東洋系ニンジンの一種である金時ニンジンの栽 培が試みられている.金時ニンジンは根が赤色を呈 することが大きな特徴であり,その着色程度が出荷 規格の一つとなるなど,根色が重要な品質構成要素 となっている.しかし,夏期の金時ニンジンの栽培 では,根が赤色に着色せずに橙色傾向を示すなど, 根の着色が安定しないことが問題となっている.  東洋系ニンジンである金時ニンジンの根の赤色は 主にリコペン(lycopene)によるもので,また,西 洋系ニンジンの根の橙色は主にβ - カロテン(β -carotene)によるもので,いずれもカロテノイド (carotenoid)と総称される色素物質の一つである. β - カロテンはリコペンを前駆体として合成され, 生合成経路も明らかにされている5).近年は,抗酸 化作用等を持つ機能性物質として,カロテノイドは 注目されている3).リコペンを多く含む野菜として は赤色系のトマトがあり,トマトのリコペンに関す る研究は多数見られるが,ニンジン根のカロテノイ ドに関する研究は少ない.特に,カロテノイド含量 に対する土壌や環境要因,施肥の影響に関する報告 はほとんどない.  そこで,金時ニンジン根部の着色不良の原因とな る土壌・環境要因について明らかにするとともに, これを改善する耕種的手法を検討した. Ⅱ 材料および方法 1 農家ニンジン栽培圃場から採取した土壌調査  東洋系ニンジンである金時ニンジンの一種「京か んざし」の京都府内の産地(京丹波町 6 圃場,南丹 市 3 圃場,計 9 圃場)において土壌調査を行った. 栽培終了後の 2017 年 1 月に,根色の良い圃場(5 圃 場)と悪い圃場(4 圃場)の作土層より土壌を採取し, 定法に従って土壌分析(十勝農業協同組合連合会農 産化学研究所に分析依頼)を行った. 2 圃場栽培試験 1)供試作物と品種,供試圃場  供試作物には,東洋系ニンジンである金時ニンジ ン(Daucus carota var. Kintoki)を利用し,品種は「本 2019 年 7 月 26 日受領 2019 年 12 月 3 日受理 Correspondence: [email protected] 〔原著論文〕

金時ニンジン根部の着色に及ぼす各種栽培条件の影響

徳田進一・生駒泰基・伊藤陽子

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター

Higher Soil Temperature Diminishes Root Coloration of Carrot ‘Kintoki’

Shin-ichi Tokuda, Hiroki Ikoma and Yoko Ito

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に間引きして,1 本立ちとした.栽培期間中は適宜 除草し,必要に応じて殺虫剤を散布した.  播種と同時に,温度計(RT-12,エスペックミック) をハウス内の入口付近と中央の 2ヶ所の畝上に設置 し,栽培期間中の地温(深さ 5 cm および 10 cm)を 測定した.地温は 2ヶ所の測定値の平均値で示した. 気温は西日本農業研究センター綾部研究拠点(京都 府綾部市上野町)に設置した気象観測装置のデータ を利用した. 3)圃場栽培試験における調査方法  播種時期に応じて播種から 60~70 日後にニンジ ンを収穫して,生育量と根部着色度を調査した.各 区の 6 条のうちの中央 4 条について,各条の中央 50 cm からすべてのニンジンを収穫した.収穫したニ ンジンは根部に付着した土壌を洗い落として水分を 拭き取った後,葉と根に切り分けた.葉は,葉重, 最大葉長,根は根重,根長,根径を測定した.根部 着色度は,京かんざし出荷用ゲージ(京かんざし研 究会作成)と比較して,0~6 の 7 段階で目視で評価 した.なお,各評点の色と日本園芸植物標準色票(富 士平工業)との対応は次の通りである;0:1 未満,1: 1604(明橙),2:1304(明橙),3:1011(濃黄桃),4: 1012(赤橙),5:0705(明橙赤),6:0706(鮮橙赤). 4) 圃場栽培試験①:リン酸施肥量が根部着色に及 ぼす影響  1 区の長さ 1.0 m,区間 35 cm として畝を 12 区に 分割し,4 処理区を 3 反復で設けた.施肥量は,N: 6 kg/10a,K2O:56 kg/10a とし,それぞれ硝安と硫 酸 カ リ を 使 用 し た. リ ン 酸 は, 基 準 施 肥 量 を 6 kgP2O5/10a として,無施肥(0P 区),6 kg(6P 区), 30 kg(30P 区),60 kg(60P 区)の 4 水準を設けた. リン酸肥料として過燐酸石灰を使用した.播種日は 9 月 13 日,収穫日は 11 月 20 日,栽培期間は 68 日 間であった. 5) 圃場栽培試験②:カリウム施肥量が根部着色に 及ぼす影響  1 区の長さ 1.0 m,区間 30 cm として畝を 12 区に 分割し,4 処理区を 3 反復で設けた.施肥量は,N: 6 kg/10a,P2O5:6 kg/10a とし,それぞれ硝安と過燐 酸石灰を使用した.カリウムは,基準施肥量を 6 kg K2O/10a として,無施肥(0K 区),10 kg(10K 区), 25 kg(25K 区),50 kg(50K 区)の 4 水準を設けた. 紅金時」(タキイ種苗)とした.種子は加工されて いない通常の市販種子を利用した.  圃場栽培試験は,農研機構・西日本農業研究セン ター・綾部研究拠点の青野圃場(京都府綾部市青野 町)に設置したプラスチックフィルムハウス(以下, ハウス)で行った.ハウスの大きさは間口 5.7 m, 奥行き 20 m で,ハウス側面には防虫ネットを展張 した.ハウス側面のフィルムは荒天時以外は常時開 放し,妻面に設置した 2ヶ所の出入口は作業時以外 は閉鎖した.妻面上部には大型換気扇を設置し,反 対側の妻面には換気窓を設置した.換気扇はハウス 内温度が 26℃以上になると自動運転させた.  ハウス内の中央に 0.7 m の通路を設け,通路の両 脇に幅 1.5 m,高さ 15 cm の畝を 2 本設置した.一 方の畝は,2017 年に圃場栽培試験③,2018 年に圃 場栽培試験②を実施し,もう一方の畝は,2017 年に 圃場栽培試験①,2018 年に圃場栽培試験④を実施し た.2017 年の栽培試験終了後に畝を崩して均した後 にハウス全体でエンバクを栽培し,生育したエンバ クは 2018 年春に根ごと引き抜いてハウスから持ち 出した.なお,ハウスにはポリオレフィンフィルム のみを展張し,その他の被覆資材は設置しなかった. 2)圃場栽培試験におけるニンジン栽培の概要  播種の当日もしくは前日に耕起・畝立てした後, 各処理区の表面に施肥し,歩行型耕耘機で深さ 15 cm 程度までの土壌と肥料を混和して畝を成形した. 施肥量は特に記載しない限り,N:P2O5:K2O = 6: 6:56 kg/10a とし,肥料として燐硝安加里と硫酸カ リを使用した.なお,K2O 施肥量が突出して多いが, 施肥基準が 6 kg/10a であるのに対し,根部着色促進 のために栽培農家は慣行的に 50 kg/10a 程度を増施 しており,この農家慣行施肥に従ったためである.  幅 1.5 m の畝に 6 条の播種溝を条間 20 cm で設け, 5 cm 間隔で 1ヶ所に 5 粒程度播種し,5~10 mm 程 度覆土・鎮圧した.条間に 2 本のかん水チューブ(エ バフローA 型,三菱ケミカルアグリドリーム)を設 置し,播種直後は 2 時間程度かん水した.かん水終 了後,畝全面を芽出しシート(寒冷紗)で覆い,1 週間後に芽出しシートを除去した.圃場栽培試験④ を除き,栽培期間中は畝表面の乾燥の程度に応じて, 1 週間に 1~2 回,1 回につき 15~30 分程度かん水 した.播種から 1ヶ月程度たって本葉が 2~3 枚の頃

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た,栽培期間中の日平均地温は,深さ 5 cm におい ては最高:26.5℃,最低:11.2℃,平均:19.1℃,深 さ 10 cm においては,最高:27.1℃,最低:12.2℃, 平均:19.7℃ であった.  葉と根の生育量(データ省略)と根部着色度(第 1 図)は,処理区間に有意差は認められなかった. 3 カリウム施肥量が根部着色に及ぼす影響  施肥直後の土壌の交換性カリウム含量(mg K2O/ 100g 乾土)は,0K 区:26.1,10K 区:27.7,25K 区: 37.6,50K 区:45.8 であった.また,栽培期間中の 日平均地温は,深さ 5 cm においては最高:33.4℃, 最低 24.5℃:,平均:29.5℃,深さ 10 cm においては, 最高:33.2℃,最低:24.3℃,平均:29.3℃ であった. カリ肥料として硫酸カリを使用した.播種日は 7 月 3 日,収穫日は 9 月 5 日,栽培期間は 64 日間であっ た. 6) 圃場栽培試験③:播種時期が根部着色に及ぼす 影響  2017 年 6 月 28 日から播種日を 2 週間ずつずらし て 5 回栽培する 5 処理(6 下(6 月下旬播種,以下同), 7 中,7 下,8 中,8 下)を設けた.1 区の長さ 1.0 m, 区間 15 cm として畝を 15 区に分割し,5 処理区を 3 反復で設けた. 7) 圃場栽培試験④:かん水量が根部着色に及ぼす 影響  1 区の長さ 5.0 m,区間 2.0 m として畝を 2 区に分 割して処理区を設けた.処理区の反復は設けなかっ た.  播種直後は均一にかん水し,芽出しシート撤去後 の栽培中のかん水量に違いを設けた.かん水量は 2 水準とし,おおむね,高水分区は 1 週間に 2 回,低 水分区は 1 週間に 1 回,圃場の乾き具合に応じて 15 ~30 分間かん水した.かん水終了から 24 時間後に, 各処理区内の 3ヶ所から土壌を,0~5 cm,5~10 cm,10~15 cm の深さ別に採取して,土壌の水分含 量を測定した.水分含量は 110℃ で 12 時間程度乾 燥させた時の減量から計算し,ヒルガード法1)で測 定した最大容水量に対する割合で示した.調査はそ れぞれの処理区内の 3ヶ所において,中央 4 条の長 さ 50 cm からニンジンを採取して調査した.播種日 は 9 月 27 日,収穫日は 12 月 3 日,栽培期間は 67 日間であった. Ⅲ 結   果 1 現地圃場から採取した土壌調査  いずれの分析項目ともに有意差は認められなかっ たが,平均値で比べると,着色不良圃場は着色良好 圃場に対して可給態リン酸(トルオーグリン酸)の 含量が 2.95 倍高かった(第 1 表). 2 リン酸施肥量が根部着色に及ぼす影響  施肥直後の土壌の可給態リン酸(トルオーグリン 酸)含量(mg P2O5/100g 乾土)は,0P 区:19.5,6P 区:21.6,30P 区:32.8,60P 区:49.5 であった.ま 分 析 項 目* 2 着 色 良 好 圃 場 ( A ) 着 色 不 良 圃 場 ( B ) B / A p H ( H2O ) 6 . 2 ( 0 . 8 9 ) 6 . 6 ( 0 . 2 4 ) 1 . 0 6 可 給 態 リ ン 酸* 3 , 4 1 6 6 ( 6 0 . 6 ) 4 8 9 ( 2 5 7 . 4 ) 2 . 9 5 交 換 性 カ リ ウ ム* 4 1 2 8 ( 3 7 . 9 ) 1 5 2 ( 4 4 . 1 ) 1 . 1 9 交 換 性 カ ル シ ウ ム* 4 8 2 7 ( 2 8 7 . 5 ) 6 6 8 ( 1 1 3 . 0 ) 0 . 8 1 交 換 性 マ グ ネ シ ウ ム* 4 1 1 6 ( 3 9 . 6 ) 1 3 9 ( 5 5 . 0 ) 1 . 2 0 硝 酸 態 窒 素 3 0 ( 2 2 . 2 ) 1 4 ( 9 . 7 ) 0 . 4 7 ア ン モ ニ ア 態 窒 素 1 . 5 ( 1 . 0 8 ) 1 . 1 ( 0 . 2 7 ) 0 . 7 3 第 1 表 現地農家圃場の土壌分析結果* 1 * 1:数値は平均値と括弧内は標準偏差(n = 5(A),4(B)) * 2:pH 以外の項目の単位は mg/100g 乾土 * 3:トルオーグリン酸 * 4:酸化物(P2O5,K2O,CaO,MgO)相当 0 1 2 3 4 0P 6P 30P 60P 根部着色度 処理区 第 1 図  ニンジン根部着色度に及ぼすリン酸施肥量の影 響 縦軸の根部着色度は出荷ゲージに基づく評点 0~6 の 7 段階の目 視評価結果,横軸の処理区名はリン酸施肥量を示す エラーバーは標準偏差を示す(n = 120(0P),121(6P),124(30P), 131(60P))

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 葉と根の生育量は,処理区間に有意差は認められ なかった(データ省略).一方,根部着色度は 0K 区 に比べてカリ施肥により有意に増加するものの(p < 0.01),10K 区,25K 区,50K 区の間では有意差 は認められなかった(第 2 図). 4 播種時期が根部着色に及ぼす影響  栽培期間中の日平均気温は,最高,最低,期間平 均ともに,播種日が遅くなるにつれて低くなった(第 2 表).また,最高と最低の差はいずれの処理区でも 9℃程度であった.  深さ 5 cm の日平均地温は,最高は 6 下区のみが 1.1℃高いが他の処理区はすべて同じであった.一 方,最低と期間平均は播種時期が遅くなるにつれて 低くなった.最高と最低の差は播種時期が遅くなる につれて大きくなり,6 下区では 6℃ であったが,8 下区では 14.6℃ であった.  深さ 10 cm の日平均地温は,最高は深さ 5 cm に 比べるとやや変動が大きいものの,播種時期による 大きな違いはなかった.最低は播種時期が遅くなる と低下するが,7 月下旬播種以降で違いはなかった.  生育量は葉,根いずれも,6 下区が他の処理区よ りも有意に低くなった(p < 0.05)が,他の処理区 間では大きな違いは認められなかった(データ省 略).一方,根部着色度は処理区によって異なり, 播種時期が遅いほど着色度は有意に優れた(p < 0.01)(第 3 図).  5 つの処理区の根部着色度を目的変数とし,第 2 日最 高 気 温 日 最 低 気 温 日 平 均 気 温 5 cm 日最高 地 温 5 c m 日 最 低地 温 5c m 日 平 均 地 温 10c m 日最高 地 温 1 0 cm 日 最 低 地 温 10 c m 日 平 均 地 温 6下 区 6月 28 日 8月 29 日 6 2 3 2. 7 2 3 .5 27 . 2 3 2. 8 2 6 .8 30 . 2 30. 7 2 1 .5 27 . 3 7中 区 7月 12 日 9月 12 日 6 2 3 2. 1 2 2 .8 26 . 6 3 1. 7 2 5 .4 29 . 5 30. 1 1 7 .0 25 . 7 7下 区 7月 26 日 9月 27 日 6 3 3 0. 5 2 1 .2 25 . 0 3 1. 7 2 1 .7 28 . 1 29. 3 1 1 .1 23 . 1 8中 区 8 月 9 日 10月1 1 日 6 3 2 8. 6 1 9 .2 23 . 1 3 1. 7 1 9 .2 26 . 3 32. 8 1 1 .1 21 . 3 8下 区 8月 23 日 10月2 5 日 6 3 2 5. 9 1 7 .2 20 . 8 3 1. 7 1 7 .1 24 . 0 33. 5 1 1 .1 21 . 2 0. 85 9 8 0. 9 00 9 0 .8 8 64 0. 50 9 0 0. 9 77 1 0 .8 7 08 0.413 6 0. 9 01 6 0 .9 9 29 栽 培 期 間 中 の 平 均温度(℃ ) 根着色 度 と の決 定 係 数 ( R 2 ) 処理 区 播 種 日 調 査 日 栽 培 期 間 (日 ) 第 2 表 異なる播種時期の圃場栽培試験における気温・地温と根部着色度との関係 0 1 2 3 0K 10K 25K 50K 根部着色度 処理区 a b b b 第 2 図 ニンジン根部着色度に及ぼすカリ施肥量の影響 縦軸の根部着色度は出荷ゲージに基づく評点 0~6 の 7 段階の目 視評価結果,横軸の処理区名はカリ施肥量を示す エラーバーは標準偏差を示す(n = 94(0K),112(10K),110(25K), 118(50K)) 異なる英小文字間で有意差あり(p < 0.01)

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容水量の 44~55%(平均 50%)で変動は小さかっ たが,低水分区では同 31~50%(平均 40%)と変 動が大きかった(第 4 図).栽培期間の後半は高水 分区よりも低水分区が 10%程度低い値を維持してい た.0~5 cm,5~10 cm,10~15 cm の深さによる土 壌水分含量の違いはほとんど認められなかった.ま た,栽培期間中の日平均地温は,高水分区では深さ 5 cm においては最高:26.0℃,最低:10.9℃,平均 17.4℃:,深さ 10 cm においては,最高:25.4℃, 最低:11.9℃,平均:18.0℃ であった.一方,低水 分区では深さ 5 cm においては最高:26.1℃,最低: 11.2℃,平均:17.7℃,深さ 10 cm においては,最高: 21.5℃,最低:3.3℃,平均:14.7℃ であった.  葉の生育量は最大葉長,葉重ともに高水分区が低 水分区よりも有意に優れたが,根の生育量には処理 区間で有意差は認められなかった(第 3 表).一方, 根部着色度は低水分区が高水分区よりも有意に優れ た. Ⅳ 考   察 1 リン酸の影響  金時ニンジン栽培農家の圃場から採取した土壌の 分析結果から,着色不良圃場はリン酸の蓄積が顕著 であったことから,可給態リン酸の過剰蓄積が着色 不良の原因の一つではないかと考えられた.後述の 通り,土壌の化学性の他にも多くの要因が根の着色 に影響すると考えられる.特に温度が着色に強く影 響するという結果が本試験で得られたため,調査圃 場の立地条件に起因する温度の影響も想定される. しかし,いずれの圃場も詳細な温度データはないが, 近接する市町内に位置しているため温度条件の違い 表に示した温度を説明変数として,両者の関係を単 回帰分析すると,根部着色度は最高値との相関は低 く,最低値や平均値との相関が高くなり,栽培期間 中の深さ 10 cm の平均地温との決定係数(R2)が 0.9929 と最も高かった(第 2 表). 5 かん水量が根部着色に及ぼす影響  栽培期間中の土壌水分含量は,高水分区では最大 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 6下 7中 7下 8中 8下 根部着 色 度 処理区 第 3 図 ニンジン根部着色度に及ぼす播種時期の影響 縦軸の根部着色度は出荷ゲージに基づく評点 0~6 の 7 段階の目 視評価結果,横軸の処理区名は播種時期を示す エラーバーは標準偏差を示す(n = 55(6 下),95(7 中),108(7 下),120(8 中),103(8 下)) 0 10 20 30 40 50 60 10/7 10/27 11/16 12/6 %MWHC 土壌採取月日 高水分0-5cm 高水分5-10cm 高水分10-15cm 低水分0-5cm 低水分5-10cm 低水分10-15cm 第 4 図 試験 2 の栽培期間中の土壌水分の変化 MWHC:最大容水量 処 理 区 最 大 葉 長 ( c m ) 葉 重 ( g ) ( c m ) 根 長 根 重 ( g ) ( c m ) 根 径 根 着 色 度 低 水 分 区 ( 6 . 5 1 ) 3 9 . 4 ( 7 . 1 7 ) 1 6 . 7 ( 2 . 9 2 ) 1 9 . 3 ( 4 . 5 5 ) 1 2 . 9 ( 2 . 0 9 ) 1 4 . 7 ( 0 . 8 4 ) 2 . 9 5 高 水 分 区 ( 6 . 7 4 ) 5 6 . 9 ( 1 3 . 3 6 ) 3 4 . 2 ( 2 . 4 8 ) 1 9 . 7 ( 6 . 1 3 ) 1 3 . 6 ( 2 . 8 0 ) 1 5 . 0 ( 0 . 9 0 ) 2 . 4 2 P < 0 . 0 1 P < 0 . 0 1 n s n s n s P < 0 . 0 1 第 3 表 ニンジンの生育および根部着色度に及ぼす土壌水分の影響 *数値は平均と括弧内は標準偏差(n = 98(低水分区),143(高水分区)) *着色度は出荷ゲージに基づく評点 0~6 の 7 段階の目視評価結果

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 ニンジンのカロテノイドに対するカリウムの影響 については報告が見当たらないが,トマトについて はいくつか報告がある.カリ施肥がトマトのカロテ ノイド特にリコペン合成を活性化して含量を高める ことが報告されており2),これはリコペン合成の前 駆体であるフィトエン(phytoene)合成酵素の活性 を高めることによると結論づけられている6).カリ ウムは植物細胞内の様々な酵素反応において触媒と して機能し,酵素を活性化することが知られている. 本試験でカリ施肥により根部着色度が改善されたの は,リコペンの合成が活性化されて濃度が高まった ためと考えられる.  その一方で,10~50 kgK2O/10a の間では根部着色 度に有意差は認められなかったことから,施肥基準 を大幅に超えるカリ施肥の根部着色への貢献は小さ いと考えられる.また,現地農家圃場から採取した 土壌分析の結果によると(第 1 表),土壌の交換性 カリウム含量は本試験でカリ施肥量が最も大きかっ た処理区と比べて,着色良好圃場で 2.8 倍,同不良 圃場では 3.3 倍となる.早どり金時ニンジン栽培に おいては 50 kgK2O/10a を超えるカリ施肥が根色改善 のために推奨されている.しかし,日本は国内にカ リ資源を持たず,カリ肥料の原料となるカリ鉱石の ほとんどを輸入に依存しており,過剰施肥は肥料の 無駄となる.また,カリ肥料の過剰施肥は施設栽培 においては塩類集積の原因となることからも,土壌 診断に基づく適正施肥が望まれる. 3 温度の影響  西洋ニンジンのカロテン含量(α -,β - カロテ ンの総量)は収穫時期によって異なり,春夏(4~ 10 月)や冬(11~3 月)に収穫したニンジンに比べ て秋(8~10 月)に収穫したニンジンの方が高いこ とが報告されている7).トマトの場合,リコペン生 合成は 12℃以下と 32℃以上で抑制されることが知 られており2),収穫時期によってニンジンのカロテ ン含量が異なるのは生育期間の温度の影響と考えら れる.そこで本試験でも播種時期をずらすことに よって栽培期間中に暴露される温度が異なる環境と し,温度と根部着色度との関係を検討した.  6 月 28 日の第 1 回目の播種以降,ほぼ 2 週間ごと に 8 月 23 日まで合計 5 回播種して栽培した場合の はほとんどないと考え,土壌中の肥料成分等に着目 して比較することとした.  ところが,栽培試験の結果からは,リン酸施肥量 が 0~60 kgP2O5/10a の間では,根の着色度に違いは 認められなかった.これは着色不良圃場の可給態リ ン酸含量の平均が 489 mgP2O5/100g 乾土であるのに 対し,本試験で設定した施肥基準の 10 倍にあたる 60 kgP2O5/10a の施肥量でも土壌中の可給態リン酸含 量が 49.5 mg P2O5/100g 乾土と低かったためと考えら れる.一般的に,施肥されたリン酸の多くは土壌中 で難溶性リン酸に変化し,可給態リン酸として土壌 中に存在する割合は低い.そのため,土壌の可給態 リン酸含量を高めるにはリン酸多肥を数年に渡って 継続する必要があり,農家圃場の実態に相当するリ ン酸の影響を検討するには,リン酸蓄積圃場の作成 から始める必要がある.  一方,金時ニンジンの培養細胞を利用した試験に おいて,培養細胞の増殖速度はリン酸濃度が高まる ほど増大するとともに,カロテノイドの生成量も増 加することが報告されている8).また,トマトの水 耕栽培においても,水耕液のリン酸濃度の増加はト マトのリコペン含量を高めることが報告されている 2).本研究においても,第 1 図に示すとおり,有意 差は認められなかったが,平均値で比べるとリン酸 施肥量が多いほど根の着色度が優れる傾向が認めら れた.細胞培養の培地や水耕栽培の水耕液のリン酸 濃度と土壌の可給態リン酸含量を比較することは難 しいが,リン酸施肥はリコペン含量を高めて着色度 を高める可能性がある.しかし,日本はリン酸肥料 の原料となるリン鉱石のすべてを輸入に依存してお り,2008 年には世界的な需要増大等によるリン鉱石 の価格高騰が大きな問題となったことから,リン酸 の適正施肥が強く求められている.すなわち,農家 は土壌診断を行った上で適正なリン酸施肥を心がけ る必要があると言える. 2 カリウムの影響  カリ肥料の 10 kgK2O/10a の施肥(施肥直後の土壌 の交換性カリウム含量は 27.7 mgK2O/100g 乾土)は 無施肥(同 26.1 mgK2O/100g 乾土)に比べて有意に 根部着色を改善したことから,カリ施肥により根部 着色を改善させることが可能であると考えられた.

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Ⅴ 摘   要  東洋系ニンジンの一種である金時ニンジンの夏期 の栽培においてしばしば問題となる根部着色不良に ついて,その原因解明と対策技術の開発を目的とし て研究を行った.  現地農家圃場の土壌分析の結果,着色不良圃場で は肥料成分特にリン酸の蓄積が顕著であった.しか し,リン酸施肥量を変えた圃場試験の結果,リン酸 施肥量は 0~60 kg P2O5/10a(施肥後の土壌のトル オーグリン酸含量が 19.5~49.5 mgP2O5/100g 乾土) の間では,根部着色度に影響しなかった.また,農 家が着色改善のために実施しているカリ肥料の増施 は,無施用に比べると 10 kgK2O/10a の施肥(施肥直 後の土壌の交換性カリウム含量は 27.7 mgK2O/100g 乾土)で根部着色度は改善したが,これ以上施肥し てもさらなる改善は見られなかった.  播種時期をずらして栽培したところ,根部着色度 は深さ 10 cm における日平均地温の栽培期間中の平 均値と強い相関(R2= 0.9929)を示し,地温が高い ほど着色度は低下した.かん水量を制限して栽培期 間中の土壌水分含量を低く抑えると根部着色度は改 善されたが,これはかん水制限により地温が低く推 移したことが一因と考えられた. 謝   辞  現地農家圃場の土壌採取にあたっては,農事組合 法人妙楽ファームにご協力いただいた.また,ニン ジンの栽培方法と根部着色度の評価については,栽 培農家である野村諭司氏にご教授いただいた.圃場 試験における栽培管理にあたっては,西日本農業研 究センター技術支援センター業務第 1 科(綾部)の 皆さまにお世話になった.ここに記して感謝の意を 表します. 引 用 文 献 1) 土壌環境分析法編集委員会編:土壌環境分析法・ 第 2 刷,50-52,博友社,2000.

2) Dumas, Y., Dadomo, M., Di Lucca, G. and Grolier, P.: 栽培期間中の気温,5 cm と 10 cm の平均地温は播種 時期が遅くなるにつれて低下したが,最高気温には 大きな違いがなかったことから,最低温度が低下す ることにより平均温度も低下したと考えられる.  播種時期が遅くなるほど,すなわち,栽培期間中 に暴露される温度が低くなるほど,着色度は高まっ たことから,金時ニンジンの根部着色には温度が強 く影響していることが示唆された.さらに,着色度 は気温,地温ともに最高温度よりも最低温度との相 関が高く,深さ 10 cm の栽培期間中の平均地温との 相関が最も高くなった.以上のことから,日中の気 温が高くても夜温が低くなる地域では根部着色が優 れることが期待される.すなわち,夏季においても 夜温が低下しやすい中山間地が金時ニンジンの栽培 に適していると考えられる. 4 土壌水分の影響  根部着色度は,栽培期間中の土壌水分が少ないほ ど優れる結果となった.トマトでは土壌水分の制限 によりリコピン含量が増加するとの報告がある2,9) しかしながらそのメカニズムは解明されておらず, トマト果実の成熟を促進する作用を持つエチレンの 生成が水分制限によって高まることが一つの要因で はないかと推察されている4).ニンジンの根部着色 が水分ストレスによって促進される現象やそのメカ ニズムに関する報告は見当たらないが,本試験では, 根部着色度との相関が高いことが明らかとなった深 さ 10 cm の地温は,高水分区に比べて低水分区ほど 最高,最低,平均ともに日平均地温が低くなったこ とから,土壌水分の制限によって地温が低下したこ とが根部着色促進の一因となったと考えられる.  一方,根の生育に土壌水分は影響せず,葉の生育 は逆に土壌水分が多いほど優れた.早どり金時ニン ジンは葉が付いたままのニンジンとして流通するこ とから,葉の生育も重要な品質構成要素である.そ の出荷規格では,葉長 30~40 cm,根長 15~20 cm, 全長 60~75 cm 程度となっている.本試験において は,高水分区では根の生育に比べると葉の生育が旺 盛で,葉の大きさや重さが出荷規格を上回る個体が 多く見られた.早どり金時ニンジンとしての出荷を 想定した場合,生育,根色ともに低水分条件での栽 培が望ましいと考えられる.

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Fruit Lycopene by Potassium Is Cultivar Dependent. Hortscience, 43, 159-165, 2008. 7) 田中 彰・田中常雄・山木一史・中野敦博:ニ ンジンの品種別食品成分値と季節変動,北海道 立食品加工研究センター研究報告,4,31-34, 2000.

8) Yoshida, A., Okamura, S., Sugano, N. and Nishi, A.: Effect of Phosphate Concentration on Growth and Carotenoid Synthesis of Carrot Cells in Suspension Culture, Environ. Control in Biol., 13, 47-53, 1975. 9) 圖師一文・松添直隆:土壌水分制限が大果系ト

マトのビタミン C,糖,有機酸,アミノ酸およ びカロチン含量に与える影響,園芸学会雑誌, 67,927-933,1998.

Effects of Environmental Factors and Agricultural Techniques on Antioxidant Content of Tomatoes, J. Sci. Food Agric., 83: 369-382, 2003.

3) 小泉次郎・細川雅史:食品中のカロテノイド類, 農業および園芸,92,875-880,2017. 4) 松添直隆・圖師一文・城島十三夫:土壌水分制 限が赤・桃および黄色型ミニトマトの着色とカ ロチン形成に与える影響,園芸学会雑誌,67, 600-606,1998. 5) 三沢典彦:植物におけるカロテノイドの生合成 とバイオテクノロジー,生物工学,93,403-406,2015.

6) Taber, H., Perkins-Veazie, P., Li, S., White, W., Rodermel, S. and Xu, Y.: Enhancement of Tomato

参照

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